(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097161
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子、リチウムイオン電池用負極、リチウムイオン電池及びリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/36 20060101AFI20240710BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240710BHJP
H01M 4/133 20100101ALN20240710BHJP
H01M 4/587 20100101ALN20240710BHJP
【FI】
H01M4/36 C
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/587
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000481
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】横溝 大悟
(72)【発明者】
【氏名】磯村 省吾
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA12
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB20
5H050EA23
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】粉体流動性が良好で(凝集度が低く)、表面粗さが小さい電極と、レート特性に優れた電池を作製することができるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子を提供する。
【解決手段】リチウムイオン電池用負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、上記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子であって、ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.85~0.95であるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、前記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子であって、
ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.85~0.95であるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子。
【請求項2】
前記第一被覆層は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル及びポリアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種の高分子化合物(P1)を含み、前記高分子化合物(P1)はガラス転移温度が20℃を超え、
前記第二被覆層は、ガラス転移温度が20℃以下である高分子化合物(P2)を含む請求項1に記載のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子。
【請求項3】
前記リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子における前記高分子化合物(P1)及び前記高分子化合物(P2)の合計重量が、前記リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として8.0~13.0重量%である請求項2に記載のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子と導電助剤とを含む非結着体からなるリチウムイオン電池用負極。
【請求項5】
請求項4に記載のリチウムイオン電池用負極を備えるリチウムイオン電池。
【請求項6】
リチウムイオン電池用負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、前記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法であって、
リチウムイオン電池用負極活物質粒子と第一被覆層組成物とを混合して第一被覆活物質を得る第一被覆工程と、前記第一被覆活物質と第二被覆層組成物とを混合した後に乾燥する第二被覆工程とを有し、
前記第二被覆層組成物は高分子化合物と溶剤とを含み、前記第二被覆層組成物における前記高分子化合物の重量割合が、前記高分子化合物及び前記溶剤の合計重量を基準として4~15重量%であり、
リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子のゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.85~0.95であるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子、リチウムイオン電池用負極、リチウムイオン電池及びリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる二次電池として、近年様々な用途に多用されている。
リチウムイオン電池を製造する方法として、ロールプレスを用いて電極活物質を圧縮成形する方法が検討されている(例えば、特許文献1及び2)。ロールプレスを用いて電極活物質を圧縮成形することで、電極作製に係る時間及びエネルギーを抑制することができる。
【0003】
特許文献1には、一対のロールと端部整流部材とで囲まれた領域に電極活物質及び結着剤を含んでなる電極材料粉末を供給し、一対のロールと端部整流部材とで囲まれた領域において供給された電極材料粉末を加圧成形することで電極層を製造する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、電極活物質、バインダ及び水を含む造粒体を一対のロール間に供給し、造粒体を一対のロールで圧縮成形することにより、電極合材層を形成する工程と、電極合材層を電極集電体上に配置する工程と、を備える電極の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5772429号
【特許文献2】特開2018-85182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1又は2に記載の方法で電極を作製する際に、ロールプレスに供給される電極活物質等の粉体の流動性が悪いために搬送時に電極組成物が凝集してしまい、その結果、圧縮成形後の電極表面が粗くなる(電極厚さにバラつきが出る)ことがあった。また、ロールプレスを用いて電極活物質を圧縮成形すると、度々電極に割れが発生するが、電極強度の向上を目的としてバインダ等の添加量を増やすと電池のレート特性(出力特性)が悪化することがあった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、粉体流動性が良好(凝集度が低く)、表面粗さが小さい電極と、レート特性に優れた電池を作製することができるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
本発明は、リチウムイオン電池用負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、上記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子であって、ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.85~0.95であるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子;上記リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子と導電助剤とを含む非結着体からなるリチウムイオン電池用負極;上記リチウムイオン電池用負極を備えるリチウムイオン電池;リチウムイオン電池用負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、上記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法であって、リチウムイオン電池用負極活物質粒子と第一被覆層組成物とを混合して第一被覆活物質を得る第一被覆工程と、上記第一被覆活物質と第二被覆層組成物とを混合した後に乾燥する第二被覆工程とを有し、上記第二被覆層組成物は高分子化合物と溶剤と導電性フィラーとを含み、上記第二被覆層組成物における上記高分子化合物の重量割合が、上記高分子化合物及び上記溶剤の合計重量を基準として4~15重量%であり、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子のゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.85~0.95であるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粉体流動性が良好で(凝集度が低く)、表面粗さが小さい電極と、レート特性に優れた電池を作製することができるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子に関する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0011】
本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子(単に被覆負極活物質粒子ともいう)は、リチウムイオン電池用負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、上記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子であって、ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.85~0.95である。ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比が上記の範囲内であると、被覆負極活物質粒子の粉体流動性が良好で凝集度が低く、表面粗さが小さい電極と、レート特性に優れた電池を作製することができる。
【0012】
本明細書において、ゆるめ嵩密度とは、容量100cm3、直径30mmの円筒容器を用い、JIS K 6219-2(2005)に準じて測定した嵩密度であり、かため嵩密度(タップ密度ともいう)とは、落下高さを5mm、タンプ(タッピング又は上下振動ともいう)回数を2000回としてJIS K 5101-12-2(2004)に準じて測定した嵩密度である。なお、ゆるめ嵩密度及びかため嵩密度は、それぞれ5回の測定の平均値を用いる。
【0013】
以下では、上述のゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比を有するリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の構成について説明する。
【0014】
リチウムイオン電池用負極活物質粒子(単に負極活物質粒子ともいう)としては、炭素系材料[黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)、金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0015】
負極活物質粒子は、電気容量を増加させる観点から、難黒鉛化性炭素、又は、難黒鉛化性炭素と珪素系材料との混合物であることが好ましい。
【0016】
負極活物質粒子の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~60μmであることがより好ましく、2~40μmであることが更に好ましい。
本明細書において体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0017】
負極活物質粒子の重量割合は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として75~90重量%であることが好ましく、78.0~86.0重量%であることがより好ましい。
【0018】
本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子は、負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、上記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなる。
第一被覆層及び第二被覆層の組成は特に限定されないが、高分子化合物を含むことが好ましい。第一被覆層と第二被覆層を構成する高分子化合物は、同じであっても異なるものであっても良く、後述する高分子化合物(P1)等の中から適宜選択して用いればよい。
【0019】
高分子化合物としては、例えばガラス転移温度(Tg)が20℃を超える高分子化合物(P1)、Tgが20℃以下である高分子化合物(P2)等が挙げられる。本明細書において、Tgは、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定した値である。高分子化合物(P1)を用いる場合、副反応抑制の観点から、高分子化合物(P1)のTgは、好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上である。
【0020】
高分子化合物(P1)は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル及びポリアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0021】
ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られる重合体である。本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a1)が挙げられる。
エステル化合物(a1)を構成する炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノール等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステルは、下記一般式(1)で表されるエステル化合物(a2)であってもよい。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
[式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数4~12の直鎖アルキル基又は炭素数3~36の分岐アルキル基である。]
【0024】
上記一般式(1)で表されるエステル化合物(a2)について、R2は、炭素数4~12の直鎖アルキル基若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数13~36の分岐アルキル基であることが好ましい。
【0025】
(a2-1)R2が炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基である単量体
炭素数4~12の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
炭素数4~12の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基等が挙げられる。これらの中では、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0026】
(a2-2)R2が炭素数13~36の分岐アルキル基であるエステル単量体
炭素数13~36の分岐アルキル基としては、1-アルキルアルキル基[1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等]、2-アルキルアルキル基[2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等]、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基及び34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~10)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
【0027】
ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、モノマーとしてアクリル酸を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。上記単量体組成物において、アクリル酸の含有量は、単量体全体の重量を基準として90重量%を超え、98重量%以下であることが好ましい。
【0028】
高分子化合物(P1)は、モノマーとして、重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a3)を含有しないことが好ましい。
【0029】
重合性不飽和二重結合を有する構造としてはビニル基、アリル基、スチレニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
アニオン性基としては、スルホン酸基及びカルボキシル基等が挙げられる。
重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体はこれらの組み合わせにより得られる化合物であり、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
アニオン性単量体の塩(a3)を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0030】
また、ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、物性を損なわない範囲で、モノマーとして、アクリル酸、エステル化合物(a1)及びエステル化合物(a2)と共重合可能であるラジカル重合性モノマー(a4)を含有してもよい。
ラジカル重合性モノマー(a4)としては、活性水素を含有しないモノマーが好ましく、下記(a41)~(a48)のモノマーを用いることができる。
【0031】
(a41)炭素数13~20の直鎖脂肪族モノオール、炭素数5~20の脂環式モノオール及び炭素数7~20の芳香脂肪族モノオールのうち少なくとも1つのモノオールと(メタ)アクリル酸から形成されるハイドロカルビル(メタ)アクリレート
上記モノオールとしては、(i)直鎖脂肪族モノオール(トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール等)、(ii)脂環式モノオール(シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等)、(iii)芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0032】
(a42)ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(炭素数2~4)アルキル(炭素数1~18)エーテル(メタ)アクリレート[メタノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート、メタノールのプロピレンオキサイド(以下POと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート等]
【0033】
(a43)窒素含有ビニル化合物
(a43-1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3~30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N-ジアルキル(炭素数1~6)又はジアラルキル(炭素数7~15)(メタ)アクリルアミド(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド等)、ジアセトンアクリルアミド
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4~20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN-メチル-N-ビニルアセトアミド、環状アミド[ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えば、N-ビニルピロリドン等)]
【0034】
(a43-2)(メタ)アクリレート化合物
(i)ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート{3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等}
【0035】
(a43-3)複素環含有ビニル化合物
ピリジン化合物(炭素数7~14、例えば2-又は4-ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(炭素数5~12、例えばN-ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニルピロール)、ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニル-2-ピロリドン)
【0036】
(a43-4)ニトリル基含有ビニル化合物
炭素数3~15のニトリル基含有ビニル化合物、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(炭素数1~4)アクリレート
【0037】
(a43-5)その他の窒素含有ビニル化合物
ニトロ基含有ビニル化合物(炭素数8~16、例えばニトロスチレン)等
【0038】
(a44)ビニル炭化水素
(a44-1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2~18又はそれ以上のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン等)、炭素数4~10又はそれ以上のジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等)等
【0039】
(a44-2)脂環式ビニル炭化水素
炭素数4~18又はそれ以上の環状不飽和化合物、例えばシクロアルケン(例えばシクロヘキセン)、(ジ)シクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン]、テルペン(例えばピネン及びリモネン)、インデン
【0040】
(a44-3)芳香族ビニル炭化水素
炭素数8~20又はそれ以上の芳香族不飽和化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン
【0041】
(a45)ビニルエステル
脂肪族ビニルエステル[炭素数4~15、例えば脂肪族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)]
芳香族ビニルエステル[炭素数9~20、例えば芳香族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えばビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル-4-ビニルベンゾエート)、脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(例えばアセトキシスチレン)]
【0042】
(a46)ビニルエーテル
脂肪族ビニルエーテル[炭素数3~15、例えばビニルアルキル(炭素数1~10)エーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテル等)、ビニルアルコキシ(炭素数1~6)アルキル(炭素数1~4)エーテル(ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル等)、ポリ(2~4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2~6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等)]、芳香族ビニルエーテル(炭素数8~20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン)
【0043】
(a47)ビニルケトン
脂肪族ビニルケトン(炭素数4~25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン)、芳香族ビニルケトン(炭素数9~21、例えばビニルフェニルケトン)
【0044】
(a48)不飽和ジカルボン酸ジエステル
炭素数4~34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)
【0045】
ラジカル重合性モノマー(a4)を含有する場合、その含有量は、単量体全体の重量を基準として0.1~3.0重量%であることが好ましい。
【0046】
ポリアクリロニトリルは、アクリロニトリルを重合して得られたものである。ポリアクリロニトリルは、Tgが20℃以下とならない範囲で、他の単量体単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、例えば、スチレン、ブタジエン、メチルアクリレート等が挙げられる。ポリアクリロニトリルが他の単量体単位を含む場合、他の単量体単位は80モル%以下である。
【0047】
ポリアクリルアミドは、アクリルアミドを重合して得られたものである。ポリアクリルアミドは、Tgが20℃以下とならない範囲で、他の単量体単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、例えば、アクリル酸等が挙げられる。ポリアクリロニトリルが他の単量体単位を含む場合、他の単量体単位は80モル%以下である。
【0048】
高分子化合物(P1)の重量平均分子量の好ましい下限は10,000、より好ましくは50,000、更に好ましくは100,000であり、好ましい上限は1,000,000、より好ましくは800,000、更に好ましくは500,000、特に好ましくは400,000である。
【0049】
高分子化合物(P1)の重量平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)測定により求めることができる。
装置:「HLC-8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「TSKgel GMHXL」(2本)、「TSKgel Multipore HXL-Mを各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μL
流量:0.6mL/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン[東ソー(株)製]
【0050】
高分子化合物(P1)としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、エステル化合物(a1)とアクリル酸との共重合体がより好ましく、メタクリル酸メチルとアクリル酸との共重合体が更に好ましい。
【0051】
高分子化合物(P1)は、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]、パーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等}を使用して公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)により製造することができる。
重合開始剤の使用量は、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%、更に好ましくは0.1~1.5重量%であり、重合温度及び重合時間は重合開始剤の種類等に応じて調整されるが、重合温度は好ましくは-5~150℃、(より好ましくは30~120℃)、反応時間は好ましくは0.1~50時間(より好ましくは2~24時間)である。
【0052】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、例えばエステル(炭素数2~8、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(炭素数1~8、例えばメタノール、エタノール及びオクタノール)、炭化水素(炭素数4~8、例えばn-ブタン、シクロヘキサン及びトルエン)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、以下DMFと略記)及びケトン(炭素数3~9、例えばメチルエチルケトン)が挙げられ、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、その使用量はモノマーの合計重量に基づいて好ましくは5~900重量%、より好ましくは10~400重量%、更に好ましくは30~300重量%であり、モノマー濃度としては、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~90重量%、更に好ましくは30~80重量%である。
【0053】
乳化重合及び懸濁重合における分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)、軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。更に安定剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
溶液又は分散液のモノマー濃度は好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%、更に好ましくは15~85重量%であり、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及び/又はハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。
【0054】
高分子化合物(P2)としては、Tgが20℃以下の粘着性樹脂が挙げられる。粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性を有する樹脂を意味し、結着剤とは異なる材料であり、これらは区別される。負極活物質粒子の表面から粘着性樹脂は容易に分離できるが、結着剤は通常、容易に分離できない。従って、結着剤と上記粘着性樹脂は異なる材料である。
高分子化合物(P2)としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体及びスチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0055】
ウレタン樹脂は、活性水素成分(b1)及びイソシアネート成分(b2)とを反応させて得られるウレタン樹脂であることが好ましい。
ウレタン樹脂は柔軟性を有するため、負極活物質粒子をウレタン樹脂で被覆することにより電極の体積変化を緩和し、電極の膨脹を抑制することができる。
【0056】
活性水素成分(b1)としては、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール及びポリエステルジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0057】
ポリエーテルジオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(以下、PEGと略記)、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合ジオール、ポリオキシエチレンオキシテトラメチレンブロック共重合ジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-ジフェニルプロパンなどの低分子グリコールのエチレンオキシド付加物、数平均分子量2,000以下のPEGとジカルボン酸[炭素数4~10の脂肪族ジカルボン酸(例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸など)、炭素数8~15の芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸など)など]の1種以上とを反応させて得られる縮合ポリエーテルエステルジオール及びこれら2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち、好ましくはPEG、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合ジオール及びポリオキシエチレンオキシテトラメチレンブロック共重合ジオールであり、特に好ましくはPEGである。
【0058】
ポリカーボネートジオールとしては、炭素数4~12、好ましくは炭素数6~10、更に好ましくは炭素数6~9のアルキレン基を有するアルキレンジオールの1種又は2種以上と、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1~6のジアルキルカーボネート、炭素数2~6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6~9のアリール基を有するジアリールカーボネートなど)から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール(例えばポリヘキサメチレンカーボネートジオール)が挙げられる。
【0059】
ポリエステルジオールとしては、低分子ジオール及び/又は数平均分子量1,000以下のポリエーテルジオールと前述のジカルボン酸の1種以上とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオールや、炭素数4~12のラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオールなどが挙げられる。上記低分子ジオールとして上記ポリエーテルジオールの項で例示した低分子グリコールなどが挙げられる。上記数平均分子量1,000以下のポリエーテルジオールとしてはポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。上記ラクトンとしては、例えばε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。該ポリエステルジオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチレンアジペートジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリカプロラクトンジオール及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0060】
また、活性水素成分(b1)は上記ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール及びポリエステルジオールのうちの2種以上の混合物であってもよい。
【0061】
活性水素成分(b1)は数平均分子量2,500~15,000の高分子ジオール(b11)を必須成分とすることが望ましい。高分子ジオール(b11)としては上述したポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール及びポリエステルジオール等が挙げられる。
高分子ジオール(b11)は、ウレタン樹脂の硬さが適度に柔らかく、また、被膜の強度が強くなるため好ましい。
また、高分子ジオール(b11)の数平均分子量が3,000~12,500であることがより望ましく、4,000~10,000であることが更に望ましい。
高分子ジオール(b11)の数平均分子量は、高分子ジオールの水酸基価から算出することができる。
また、水酸基価は、JIS K1557-1の記載に準じて測定できる。
【0062】
また、活性水素成分(b1)が高分子ジオール(b11)を必須成分とし、上記高分子ジオール(b11)の含有量が上記ウレタン樹脂の重量を基準として20~80重量%であることが望ましい。高分子ジオール(b11)の含有量は30~70重量%であることがより望ましく、40~65重量%であることが更に望ましい。
高分子ジオール(b11)の含有量が20~80重量%であると、ウレタン樹脂の電解液の吸液の点で好ましい。
【0063】
また、活性水素成分(b1)が数平均分子量2,500~15,000の高分子ジオール(b11)及び鎖伸長剤(b13)を必須成分とすることが望ましい。
鎖伸長剤(b13)としては、例えば炭素数2~10の低分子ジオール[例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコールなど];ジアミン類[炭素数2~6の脂肪族ジアミン(例えばエチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミンなど)、炭素数6~15の脂環式ジアミン(例えばイソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンなど)、炭素数6~15の芳香族ジアミン(例えば4,4’-ジアミノジフェニルメタンなど)など];モノアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミンなど);ヒドラジンもしくはその誘導体(例えばアジピン酸ジヒドラジドなど)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものは低分子ジオールであり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-ブタンジオールである。
高分子ジオール(b11)及び鎖伸長剤(b13)の組み合わせとしては、高分子ジオール(b11)としてのPEGと鎖伸長剤(b13)としてのエチレングリコールの組み合わせ、又は、高分子ジオール(b11)としてのポリカーボネートジオールと鎖伸長剤(b13)としてのエチレングリコールの組み合わせが好ましい。
【0064】
イソシアネート成分(b2)としては、従来からポリウレタン製造に使用されているものが使用できる。このようなイソシアネートには、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6~20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2~18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4~15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8~15の芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性体(カーボジイミド変性体、ウレタン変性体、ウレトジオン変性体など)及びこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0065】
上記芳香族ジイソシアネートの具体例としては、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、ジフェニルメタンジイソシアネートをMDIと略記)、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0066】
上記脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0067】
上記脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキシレン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0068】
上記芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m-又はp-キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0069】
これらのうち好ましいものは芳香族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートであり、更に好ましいものは芳香族ジイソシアネートであり、特に好ましいのはMDIである。
【0070】
ウレタン樹脂が高分子ジオール(b11)及びイソシアネート成分(b2)を含む場合、好ましい(b2)/(b11)の当量比は10~30/1であり、より好ましくは11~28/1である。イソシアネート成分(b2)の比率が30当量を超えると硬い塗膜となる。
ウレタン樹脂の数平均分子量は、40,000~500,000であることが好ましく、より好ましくは50,000~400,000である。ウレタン樹脂の数平均分子量が40,000未満では被膜の強度が低くなり、500,000を超えると溶液粘度が高くなって、均一な被膜が得られないことがある。
【0071】
ウレタン樹脂の数平均分子量は、DMFを溶剤として用い、ポリオキシプロピレングリコールを標準物質としてGPCにより測定される。サンプル濃度は0.25重量%、カラム固定相はTSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの、カラム温度は40℃とすればよい。
【0072】
ウレタン樹脂は活性水素成分(b1)とイソシアネート成分(b2)を反応させて製造することができる。
例えば、活性水素成分(b1)として高分子ジオール(b11)と鎖伸長剤(b13)を用い、イソシアネート成分(b2)と高分子ジオール(b11)と鎖伸長剤(b13)とを同時に反応させるワンショット法や、高分子ジオール(b11)とイソシアネート成分(b2)とを先に反応させた後に鎖伸長剤(b13)を続けて反応させるプレポリマー法が挙げられる。
また、ウレタン樹脂の製造は、イソシアネート基に対して不活性な溶媒の存在下又は溶媒[DMF、ジメチルアセトアミドなど]、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシドなど)、ケトン系溶媒[メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど]、芳香族系溶媒(トルエン、キシレンなど)、エーテル系溶媒(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものはアミド系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒及びこれらの2種以上の混合物である。
【0073】
ウレタン樹脂の製造の際の反応温度は、溶媒を使用する場合は20~100℃、無溶媒の場合は20~220℃であることが好ましい。
ウレタン樹脂の製造は当該業界において通常採用されている製造装置で行うことができる。また溶媒を使用しない場合はニーダーやエクストルーダーなどの製造装置を用いることができる。このようにして製造されるウレタン樹脂は、30重量%(固形分)DMF溶液として測定した溶液粘度が通常10~10,000ポイズ/20℃であり、実用上好ましいのは100~2,000ポイズ/20℃である。
【0074】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位を必須とするアクリル系重合体であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する単量体中における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の重量割合が単量体の合計重量を基準として50重量%以上である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の重量割合(重量%)は、超臨界流体中に重合体を溶解させ、得られたオリゴマー成分をガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)法で解析する等の方法で測定することができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する単量体中における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の重量割合が単量体の合計重量を基準として50重量%未満であると、適度な粘着力を有さず、電極形状の安定性が低くなる。
【0075】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、またアルキル鎖の末端に水酸基を含有する2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
また、多官能アクリレートも上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に含まれる。上記多官能アクリレートとしては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。電極形状の安定性の観点から、上記多官能アクリレートの重量割合は単量体の合計重量を基準としては0.1~3重量%であることが好ましい。
【0076】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は2種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単量体として含み、その合計含有量が構成単量体の合計重量を基準として50重量%以上であることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の好ましい組合せとして、n-ブチルアクリレートと2-ヒドロキシエチルアクリレートとアクリロニトリルの組み合わせ、2-エチルヘキシルメタクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートの組み合わせ、n-ブチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートの組合せ、アクリル酸メチルとn-ブチルアクリレートの組合せ、又は、メタクリル酸メチルとiso-ブチルメタクリレートの組合せが挙げられる。
【0077】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体以外の単量体として、(メタ)アクリル酸単量体を構成単量体として含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸単量体を構成単量体として含むと電池内で生成する水酸化リチウム等の副生成物を中和し、電極の腐食を防止することができる。
(メタ)アクリル酸単量体の重量割合は構成単量体の合計重量を基準として0.1~15重量%であることが好ましい。
【0078】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と共重合可能なモノビニル単量体を構成単量体として含んでいてもよい。
モノビニル単量体としては、フルオロ基、シロキサン等を含有したモノビニル単量体(ジメチルシロキサン等)を使用することができる。
【0079】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の重量平均分子量の好ましい下限は10,000、より好ましくは50,000、更に好ましくは100,000であり、好ましい上限は1,000,000、より好ましくは800,000、更に好ましくは500,000、特に好ましくは400,000である。重量平均分子量の測定は、高分子化合物(P1)と同様の方法及び条件で行うことができる。
【0080】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造は、上述の高分子化合物(P1)と同様の方法で行うことができる。
【0081】
スチレン-ブタジエンゴムとしては、例えば電池バインダ用として市販されているもの等を用いることができる。スチレン-ブタジエンゴムの市販品としては、例えば、製品名:TRD104A(JSR社製)、BM-400B(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
スチレン-ブタジエンゴムの結合スチレン量は、特に限定されないが、電極の強度を向上させる観点から、例えば10~60質量%であり、好ましくは15~55質量%である。なお、結合スチレン量は、1H-NMRにより測定することができる。
【0082】
本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子は、第一被覆層が高分子化合物(P1)を含み、第二被覆層が高分子化合物(P2)を含むことが好ましい。第一被覆層が高分子化合物(P1)を含むと、リチウムイオン電池用負極活物質粒子と電解液との副反応を抑制することができ、第二被覆層が高分子化合物(P2)を含むと、本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子を用いて電極を形成する場合、電極の強度を保持することできる。第二被覆層は被覆負極活物質粒子の最表面であり、第二被覆層に高分子化合物(P2)(粘着性樹脂)が含まれると、被覆負極活物質粒子の表面同士が可逆的に固定される。
【0083】
本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子において、第一被覆層に含まれる上記高分子化合物(P1)及び第二被覆層に含まれる上記高分子化合物(P2)の合計重量が、上記リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として7.0~15.0重量%であることが好ましく、8.0~13.0重量%であることがより好ましい。上記高分子化合物(P1)及び上記高分子化合物(P2)の合計重量が上記範囲であると、電極強度及びレート特性が適切になる。
【0084】
第一被覆層に含まれる高分子化合物(P1)の重量割合は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として5.0~6.0重量%であることが好ましい。また、第二被覆層に含まれる高分子化合物(P2)の重量割合は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として2.0~6.0重量%であることが好ましい。高分子化合物(P1)の重量割合と高分子化合物(P2)の重量割合とが上記範囲内であると、電極強度が適切になる。
【0085】
本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子において、第一被覆層及び第二被覆層には導電性フィラーが含まれていてもよい。
導電性フィラーとしては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト(薄片状黒鉛(UP))、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)及びカーボンナノファイバー(CNF)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。第一被覆層及び第二被覆層には、同じ種類の導電性フィラーが含まれていてもよいし、異なる種類の導電性フィラーが含まれていてもよい。導電性フィラーは、1種単独で用いられていてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、第一被覆層のみに導電性フィラーが含まれていてもよいし、第二被覆層のみに導電性フィラーが含まれていてもよい。
【0086】
導電性フィラーは、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子を用いたリチウムイオン電池のサイクル特性を向上させる観点から、アセチレンブラック(AB)及び/又は薄片状黒鉛(UP)であることが好ましい。
【0087】
第一被覆層に含まれる導電性フィラーの重量割合は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として4.5~7.0重量%であることが好ましい。導電性フィラーの重量割合を上記範囲とすることにより、被覆負極活物質粒子の製造過程で導電性フィラーを含む各材料にかけるせん断力を好適に調整することができ、導電性フィラーの立体構造を最適化した状態で構築することができる。同様の理由から、第二被覆層に含まれる導電性フィラーの重量割合は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として1.5~6.0重量%であることが好ましい。
【0088】
第一被覆層に含まれる導電性フィラーの重量割合は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として5.0~6.0重量%であることがより好ましい。
第二被覆層に含まれる導電性フィラーの重量割合は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として1.8~4.5重量%であることがより好ましい。
【0089】
第一被覆層に含まれる導電性フィラー及び第二被覆層に含まれる導電性フィラーの合計重量割合は、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として7.0~10.0重量%であることが好ましい。
【0090】
第一被覆層を構成する高分子化合物と導電性フィラーの比率は特に限定されるものではないが、電池の内部抵抗等の観点から、重量比率で第一被覆層を構成する高分子化合物(樹脂固形分重量):導電性フィラーが1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。第一被覆層と同様に、第二被覆層を構成する高分子化合物(樹脂固形分重量):導電性フィラーが1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。
【0091】
本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子において、第一被覆層及び第二被覆層は、更にセラミック粒子を含んでいてもよい。
セラミック粒子としては、金属炭化物粒子、金属酸化物粒子、ガラスセラミック粒子等が挙げられる。
【0092】
金属炭化物粒子としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、炭化モリブデン(Mo2C)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ジルコニウム(ZrC)等が挙げられる。
【0093】
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化インジウム(In2O3)、Li2B4O7、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li3PO4、Li2MoO4、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、Li2SiO3や、ABO3(但し、Aは、Ca、Sr、Ba、La、Pr及びYからなる群より選択される少なくとも1種であり、Bは、Ni、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Mo、Ru、Rh、Pd及びReからなる群より選択される少なくとも1種である)で表されるペロブスカイト型酸化物粒子等が挙げられる。
金属酸化物粒子としては、電解液と被覆負極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、及び、四ほう酸リチウム(Li2B4O7)が好ましい。
【0094】
ガラスセラミック粒子としては、菱面体晶系を有するリチウム含有リン酸化合物であることが好ましく、その化学式は、LixM”2P3O12(X=1~1.7)で表される。
ここでM”はZr、Ti、Fe、Mn、Co、Cr、Ca、Mg、Sr、Y、Sc、Sn、La、Ge、Nb、Alからなる群より選ばれた1種以上の元素である。また、Pの一部をSi又はBに、Oの一部をF、Cl等で置換してもよい。例えば、Li1.15Ti1.85Al0.15Si0.05P2.95O12、Li1.2Ti1.8Al0.1Ge0.1Si0.05P2.95O12等を用いることができる。
また、異なる組成の材料を混合又は複合してもよく、ガラス電解質等で表面をコートしてもよい。又は、熱処理によりNASICON型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の結晶相を析出するガラスセラミック粒子を用いることが好ましい。
ガラス電解質としては、特開2019-96478号公報に記載のガラス電解質等が挙げられる。
【0095】
ここで、ガラスセラミック粒子におけるLi2Oの配合割合は酸化物換算で8質量%以下であることが好ましい。
NASICON型構造でなくとも、Li、La、Mg、Ca、Fe、Co、Cr、Mn、Ti、Zr、Sn、Y、Sc、P、Si、O、In、Nb、Fからなり、LISICON型、ペロブスカイト型、β-Fe2(SO4)3型、Li3In2(PO4)3型の結晶構造を持ち、Liイオンを室温で1×10-5S/cm以上伝導する固体電解質を用いても良い。
【0096】
上述したセラミック粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
セラミック粒子の体積平均粒子径は、エネルギー密度の観点及び電気抵抗値の観点から、1~1000nmであることが好ましく、1~500nmであることがより好ましく、1~150nmであることが更に好ましい。
【0098】
第一被覆層及び/又は第二被覆層がセラミック粒子を含む場合、セラミック粒子の重量割合は、被覆負極活物質粒子の重量を基準として0.5~5.0重量%であることが好ましい。
セラミック粒子を上記範囲で含有することにより、電解液と被覆負極活物質粒子との間で起こる副反応を抑制することができる。
【0099】
負極活物質粒子は、表面の少なくとも一部が第一被覆層で被覆されている。
負極活物質粒子は、レート特性の観点から、下記計算式で得られる第一被覆層の被覆率が30~95%であることが好ましい。
被覆率(%)={1-[第一被覆層で被覆された負極活物質粒子のBET比表面積/(未被覆時の負極活物質粒子のBET比表面積×第一被覆層で被覆された負極活物質粒子中に含まれる負極活物質粒子の重量割合+導電性フィラーのBET比表面積×第一被覆層で被覆された負極活物質粒子中に含まれる導電性フィラーの重量割合+任意で含まれるセラミック粒子のBET比表面積×第一被覆層で被覆された負極活物質粒子中に任意で含まれるセラミック粒子の重量割合)]}×100
【0100】
本発明の被覆負極活物質粒子は、第一被覆層の表面の少なくとも一部が第二被覆層で被覆されている。
本発明の被覆負極活物質粒子は、電極の強度の観点から、第一被覆層に対する第二被覆層の被覆率が30~95%であることが好ましい。第二被覆層の被覆率は、第一被覆層で被覆後のサンプルのBET比表面積と第二被覆層のBET比表面積から計算により得ることができる。
被覆率(%)={1-[第二被覆層で被覆された負極活物質粒子のBET比表面積/(第一被覆層で被覆された負極活物質粒子のBET比表面積×第二被覆層で被覆された負極活物質粒子中に含まれる負極活物質粒子の重量割合+導電性フィラーのBET比表面積×第二被覆層で被覆された負極活物質粒子中に含まれる導電性フィラーの重量割合+任意で含まれるセラミック粒子のBET比表面積×第二被覆層で被覆された負極活物質粒子中に任意で含まれるセラミック粒子の重量割合)]}×100
【0101】
本発明の被覆負極活物質粒子は、負極活物質粒子の表面に第一被覆層が形成されない部分があってもよく、負極活物質粒子の表面に第二被覆層が被覆してなる部分があってもよい。
【0102】
本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子は、例えば下記の製造方法により作製することができる。
【0103】
[リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法(以下、単に「被覆負極活物質粒子の製造方法」ともいう)は、リチウムイオン電池用負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、上記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法であって、リチウムイオン電池用負極活物質粒子と第一被覆層組成物とを混合して第一被覆活物質を得る第一被覆工程と、上記第一被覆活物質と第二被覆層組成物とを混合した後に乾燥する第二被覆工程とを有し、上記第二被覆層組成物は高分子化合物と溶剤とを含み、上記第二被覆層組成物における上記高分子化合物の重量割合が、上記高分子化合物及び上記溶剤の合計重量を基準として4~15重量%であり、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子のゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.85~0.95である。
【0104】
第一被覆工程において、リチウムイオン電池用負極活物質粒子は、被覆負極活物質粒子について上述したものが挙げられる。第一被覆層組成物は、高分子化合物と溶剤とを含み、任意で導電性フィラーとセラミック粒子を含んでいてもよい。第一被覆層組成物に含まれる高分子化合物、導電性フィラー及びセラミック粒子は、被覆負極活物質粒子の第一被覆層について上述したものが挙げられる。溶剤としては、高分子化合物を溶解可能な溶剤であれば特に限定されず、公知の有機溶剤を適宜選択して用いることができる。
【0105】
第一被覆工程では、負極活物質粒子と第一被覆層組成物とを混合して第一被覆活物質を得る。例えば、負極活物質粒子を万能混合機に入れて撹拌速度(周速)1~7m/sで撹拌した状態で、第一被覆層を構成する高分子化合物を含む樹脂溶液(被覆用高分子化合物溶液ともいう)を1~90分かけて滴下混合し、撹拌したまま50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に2~9時間保持して脱溶剤した後、任意で導電性フィラー及びセラミック粒子を混合することにより、負極活物質粒子の表面の少なくとも一部が第一被覆層で被覆された粒子を得ることができる。
【0106】
上記第一被覆工程では、負極活物質粒子と第一被覆層組成物とを混合するが、混合する順番は特に限定されない。例えば、高分子化合物を事前に溶剤に溶解して高分子化合物溶液を調製し、次いで負極活物質粒子、高分子化合物溶液、導電性フィラー、セラミック粒子を同時に混合してもよいし、負極活物質粒子と高分子化合物溶液とを先に混合し、更に導電性フィラー及びセラミック粒子を混合してもよい。
上記第一被覆工程において、第一被覆層組成物における上記高分子化合物の重量割合は、上記高分子化合物及び上記溶剤の合計重量を基準として25~40重量%であることが好ましい。より好ましくは25~35重量%である。
【0107】
第二被覆工程において、第二被覆層組成物に含まれる高分子化合物及び溶剤のうち、高分子化合物は、被覆負極活物質粒子の第二被覆層について上述したものが挙げられる。溶剤は、第一被覆層組成物について上述したものが挙げられる。第二被覆層組成物は、更に導電性フィラー及びセラミック粒子を含んでいてもよい。
【0108】
上記第二被覆工程において、第二被覆層組成物における上記高分子化合物の重量割合は、上記高分子化合物及び上記溶剤の合計重量を基準として4~15重量%である。第二被覆層組成物における高分子化合物の割合が上記の範囲であると、高分子化合物溶液の均一性が向上して造粒しやすくなり、ゆるめ嵩密度とかため嵩密度が近しい値になることで、被覆負極活物質粒子のゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)を0.85~0.95とすることができる。第二被覆層組成物における上記高分子化合物の重量割合は、好ましくは4.5~14.0重量%である。
【0109】
第二被覆工程では、第一被覆活物質と第二被覆層組成物とを混合し、乾燥を行う。例えば、第一被覆活物質を万能混合機に入れて30~500rpmで撹拌した状態で、第二被覆層組成物を1~90分かけて滴下混合し、撹拌したまま50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に10~150分保持して脱溶剤する。
【0110】
上記第二被覆工程では、混合する順番を変更することも可能である。例えば、高分子化合物を事前に溶液に溶解して高分子化合物溶液を調製し、次いで第一被覆活物質、高分子化合物溶液、導電性フィラー及びセラミック粒子を同時に混合してもよいし、第一被覆活物質と高分子化合物溶液とを先に混合し、更に導電性フィラー及びセラミック粒子を混合してもよい。この場合、高分子化合物溶液中の高分子化合物の重量割合が4~15重量%であればよい。
【0111】
負極活物質粒子と高分子化合物との配合比率は特に限定されるものではないが、重量比率で負極活物質粒子:高分子化合物=1:0.001~0.1であることが好ましい。
【0112】
[リチウムイオン電池用負極]
本発明のリチウムイオン電池用負極(以下、単に「負極」ともいう)は、本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子と導電助剤とを含む非結着体からなることを特徴とする。
【0113】
ここで、非結着体とは、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子と導電助剤とが結着剤(バインダともいう)により位置を固定されていないことを意味する。すなわち、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子と導電助剤は、それぞれ外力に応じて移動できる状態である。
【0114】
負極が非結着体からなる場合、被覆負極活物質粒子と導電助剤とが結着剤によって不可逆的に固定されていない。不可逆的な固定とは、被覆負極活物質粒子と導電助剤とが下記の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤によって接着固定されていることを意味し、接着固定された被覆負極活物質粒子と導電助剤が分離するためには被覆負極活物質粒子と導電助剤の界面を機械的に破壊する必要がある。一方、非結着体の場合は、被覆負極活物質粒子と導電助剤は不可逆的な接着固定がされていないため、被覆負極活物質粒子と導電助剤の界面を機械的に破壊することなく分離することができる。
【0115】
本発明の負極においては、溶剤乾燥型結着剤を含まないことが好ましい。
溶剤乾燥型結着剤としてはデンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化して、被覆負極活物質粒子と導電助剤同士、及び、被覆負極活物質粒子と導電助剤と集電体とを強固に固定するものである。
【0116】
本発明の負極は、被覆負極活物質粒子と、導電助剤と、電解質及び溶媒を含有する電解液とを含む負極活物質層を備えていることが好ましい。
【0117】
電解質としては、公知の電解液に用いられている電解質が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4及びLiN(FSO2)2等の無機アニオンのリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2及びLiC(CF3SO2)3等の有機アニオンのリチウム塩が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiN(FSO2)2である。
【0118】
溶媒としては、公知の電解液に用いられている非水溶媒が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン及びこれらの混合物を用いることができる。
【0119】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環(δ-バレロラクトン等)のラクトン化合物等が挙げられる。
【0120】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)及びブチレンカーボネート(BC)等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0121】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0122】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0123】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
【0124】
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
【0125】
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0126】
電解液中の電解質の濃度は、1.2~5.0mol/Lであることが好ましく、1.5~4.5mol/Lであることがより好ましく、1.8~4.0mol/Lであることが更に好ましく、2.0~3.5mol/Lであることが特に好ましい。
このような電解液は、適当な粘性を有するので、被覆負極活物質粒子間に液膜を形成することができ、被覆負極活物質粒子に潤滑効果(被覆負極活物質粒子の位置調整能力)を付与することができる。
【0127】
本発明の負極は、上述した被覆負極活物質粒子の第一被覆層及び第二被覆層中に含まれていてもよい導電性フィラーとは別に、導電助剤を含んでいる。第一被覆層及び第二被覆層中に含まれていてもよい導電性フィラーが被覆負極活物質粒子と一体であるのに対し、導電助剤は被覆負極活物質粒子と別々に含まれている点で区別できる。
導電助剤は、第一被覆層及び第二被覆層に含まれる導電性フィラーと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明の負極が含む導電助剤としては、導電性フィラーとして例示したものと同じものを用いることができる。
【0128】
負極活物質層が導電助剤を含む場合、負極中に含まれる導電助剤と第一被覆層中及び第二被覆層中に含まれる導電性フィラーの合計含有量は、特に限定されないが、負極活物質層から電解液を除いた重量を基準として0.5~20重量%であることが好ましい。
【0129】
本発明の負極において、負極活物質層の厚みは、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0130】
本発明の負極は、例えば、被覆負極活物質粒子と、導電助剤と、電解液とを含む負極スラリーを集電体に塗布した後、乾燥させることによって作製することができる。具体的には、負極スラリーを、集電体上にバーコーター等の塗工装置で塗布後、不織布を活物質上に静置して吸液すること等で、溶媒を除去し、必要によりプレス機でプレスする方法等が挙げられる。
【0131】
本発明の負極において、集電体を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等が挙げられる。導電性高分子材料で形成されてなる集電体を樹脂集電体ともいう。
集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。
集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
【0132】
このように、本発明の負極は、集電体を更に備え、上記集電体の表面に上記負極活物質層が設けられていることが好ましい。
【0133】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、樹脂に導電剤を添加したものを用いることができる。
導電性高分子材料を構成する導電剤としては、第一被覆層及び第二被覆層の導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、更に好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
樹脂集電体は、特開2012-150905号公報及び再表2015/005116号等に記載された公知の方法で得ることができる。
【0134】
[リチウムイオン電池]
本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池用負極を備えることを特徴とする。
【0135】
本発明のリチウムイオン電池は、対極となる電極を組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することで得られる。
また、集電体の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成してバイポーラ(双極)型電極を作製し、バイポーラ(双極)型電極をセパレータと積層してセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでも得られる。
本発明の負極を用いることにより、本発明のリチウムイオン電池が得られる。
【0136】
セパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。
【0137】
なお、本明細書には以下の発明が記載されている。
〔1〕リチウムイオン電池用負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、上記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子であって、ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.85~0.95であるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子。
〔2〕上記第一被覆層は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル及びポリアクリルアミドからなる群から選択される少なくとも1種の高分子化合物(P1)を含み、上記高分子化合物(P1)はガラス転移温度が20℃を超え、上記第二被覆層は、ガラス転移温度が20℃以下である高分子化合物(P2)を含む上記〔1〕に記載のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子。
〔3〕上記リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子における上記高分子化合物(P1)及び上記高分子化合物(P2)の合計重量が、上記リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の重量を基準として8.0~13.0重量%である上記〔2〕に記載のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子。
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子と導電助剤とを含む非結着体からなるリチウムイオン電池用負極。
〔5〕上記〔4〕に記載のリチウムイオン電池用負極を備えるリチウムイオン電池。
〔6〕リチウムイオン電池用負極活物質粒子の表面の少なくとも一部を第一被覆層で被覆してなり、上記第一被覆層の表面の少なくとも一部を第二被覆層で被覆してなるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法であって、リチウムイオン電池用負極活物質粒子と第一被覆層組成物とを混合して第一被覆活物質を得る第一被覆工程と、上記第一被覆活物質と第二被覆層組成物とを混合した後に乾燥する第二被覆工程とを有し、上記第二被覆層組成物は高分子化合物と溶剤とを含み、上記第二被覆層組成物における上記高分子化合物の重量割合が、上記高分子化合物及び上記溶剤の合計重量を基準として4~15重量%であり、リチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子のゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)が0.85~0.95であるリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子の製造方法。
【実施例0138】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
<Tg測定法>
セイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定した。
【0139】
[第一被覆層に用いる高分子化合物(P1)の作製]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF150部を仕込み、75℃に昇温した。次いで、アクリル酸91部、メタクリル酸メチル9部及びDMF50部を配合した単量体組成物と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF30部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。
次いで、80℃に昇温して反応を3時間継続し、樹脂濃度30%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して150℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行い、DMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の高分子化合物(P1)を得た。得られた高分子化合物(P1)の分子量をGPCにて測定したところ、58,000であった。また、得られた高分子化合物(P1)のTgを測定したところ、105℃であった。
【0140】
[第二被覆層に用いる高分子化合物(P2)の作製]
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口コルベンに、2-エチルヘキシルアクリレート30部、2-エチルヘキシルメタクリレート60部、アクリル酸5部、n-ブチルメタクリレート4.5部、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート0.5部、トルエン390部を仕込み75℃に昇温した。トルエン10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.200部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.200部を混合した。得られた単量体混合液をコルベン内に窒素を吹き込みながら、重合開始剤混合液を滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.800部をトルエン12.4部に溶解した溶液を滴下ロートを用いて、重合を開始してから6~8時間目にかけて連続的に追加した。更に、重合を2時間継続し、トルエンを488部加えて樹脂濃度10重量%の高分子化合物(P2)溶液を得た。得られた高分子化合物(P2)の分子量をGPCにて測定したところ、Mwは510,000であった。得られた高分子化合物(P2)のTgを測定したところ、-21℃であった。
【0141】
実施例1
[被覆負極活物質粒子の作製]
(第1被覆工程)
高分子化合物(P1)1部をDMF3部に溶解し、高分子化合物(P1)溶液を得た。
負極活物質粒子(ハードカーボン粉末、体積平均粒子径25μm、JFEケミカル(株)製)79.0部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、周速2.6m/sで撹拌した状態で、高分子化合物溶液22.0部(固形分換算で5.5部)を2分かけて滴下し、更に60分撹拌した。
次いで、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を4時間維持して揮発分を留去し、第一被覆層を形成した。
その後、撹拌した状態で導電性フィラーであるグラファイト(UP)[薄片状黒鉛、体積平均粒子径4.5μm]5.5部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
【0142】
(第2被覆工程)
上記で得られた高分子化合物(P2)溶液の樹脂濃度を13重量%に調整した。
第一被覆層を形成した負極活物質粒子に、撹拌した状態で樹脂濃度13重量%の高分子化合物(P2)溶液46.2部(固形分換算で6.0部)を2分かけて滴下し、更に5分撹拌した。次いで、周速2.6m/sで撹拌した状態で導電性フィラーであるアセチレンブラック(AB)[デンカ(株)製、商品名「デンカブラック」、体積平均粒子径35nm]4.0部を分割しながら2分間で投入し、60分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を2時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き106μmの篩いで分級し、表1に示す組成の被覆負極活物質粒子を作製した。
【0143】
実施例2~5、比較例1~2
負極活物質粒子、高分子化合物(P1)、UP、高分子化合物(P2)及びABの使用量、並びに、高分子化合物(P2)溶液の樹脂濃度を表1に記載の数値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして被覆負極活物質粒子を作製した。
【0144】
実施例1~5及び比較例1~2で得られた被覆負極活物質粒子のゆるめ嵩密度及びかため嵩密度について、下記に記載の手順で測定し、ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比(ゆるめ嵩密度/かため嵩密度)を算出した。結果を表1に示す。
<ゆるめ嵩密度の測定>
JIS K 6219-2(2005)に準じ、容量100cm3、直径30mmであり重量既知の円筒容器に実施例1~5及び比較例1~2で得られた被覆負極活物質粒子をそれぞれ円筒容器の縁から300mmの高さから、円筒容器の縁の上に三角錐を形成するまで注ぎ込んだ。次いで、直定規を容器の縁に垂直に当て垂直方向に移動して円筒容器の縁の上にある被覆負極活物質粒子を払い落とした。次いで、被覆負極活物質粒子の入った円筒容器の合計重量を量り、空の円筒容器の重量と円筒容器の容量とから円筒容器内の被覆負極活物質粒子の密度を計算し、これを5回測定した計算値の平均値をゆるめ嵩密度とした。
<かため嵩密度の測定>
JIS K 5101-12-2(2004)に準じ、100gの被覆負極活物質粒子を直径30mmの測定用シリンダに入れ、タッピング式密充填かさ密度測定器[筒井理化学器械(株)製 Model TPM-3A]を用いて、落下高さ5mmで2000回タッピングし、タッピング後の被覆負極活物質粒子の体積を測定することにより、タッピング後のシリンダ内の被覆負極活物質粒子の嵩密度を測定し、これを5回測定した計算値の平均値をかため嵩密度とした。
【0145】
【0146】
実施例1~5及び比較例1~2で得られた被覆負極活物質粒子の凝集度を算出し、流動性を評価した。
<流動性評価(凝集度の算出)>
アルミラミネートの袋内に被覆負極活物質粒子100gを入れてヒートシールした後に、1.2kPaの圧力がかかるように重りを乗せ、室温(20℃)、湿度70%の環境で1日保管した。保管後の被覆負極活物質粒子を3種類の目開きの篩(それぞれ424μm、212μm、106μmの目開きの篩を目開きの小さいものが下になるように重ねたもの)にかけて、振動させた。振動時間Tは以下の式から算出した。
ρa:ゆるめ嵩密度
ρp:かため嵩密度
Cp:圧縮度=(ρp-ρa)/ρp×100
ρw:動的嵩密度=(ρp-ρa)Cp/100+ρa
T:振動時間=20+(1.6-ρw)/0.016
振動停止後、上中下段それぞれの篩に残った被覆負極活物質粒子の質量を測定し、以下の式から凝集度Chを算出した。凝集度Chが40未満のものを〇、40以上のものを×として表2に記載した。
w1:424μmの篩に残った被覆負極活物質粒子の質量
w2:212μmの篩に残った被覆負極活物質粒子の質量
w3:106μmの篩に残った被覆負極活物質粒子の質量
w:投入量(g)(本実施例では100g)
Ch:凝集度=(w1/w+w2/w×3/5+w3/w×1/5)×100
【0147】
[電解液の作製]
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSO2)2(LiFSI)を2mol/Lの割合で溶解させた溶液を電解液とした。
【0148】
[リチウムイオン電池用負極の作製]
電解液42部とグラファイト(UP)[薄片状黒鉛、体積平均粒子径4.5μm]1.3部及び炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・ミルドS-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]0.9部とを遊星撹拌型混合混練装置(あわとり練太郎[(株)シンキー製])を用いて2000rpmで5分間混合し、続いて上記電解液30部と上記の実施例1~5及び比較例1~2で作製した被覆負極活物質粒子をそれぞれ97.8部追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで2分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液を2.3部追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間行い、負極活物質層用スラリーを作製した。
得られた負極活物質層用スラリーを目付量が80mg/cm2となるよう、金属集電体(銅箔、商品名「HS1200」、JX金属(株)製)の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、実施例1~5及び比較例1~2のリチウムイオン電池用負極を作製した。実施例1~5及び比較例1~2のリチウムイオン電池用負極はそれぞれ、厚さが340μm、形状は190×90mmの長方形であった。
【0149】
[被覆正極活物質粒子の作製]
正極活物質粒子(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末、体積平均粒子径4μm)90.12部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、高分子化合物(P1)溶液12.56部(固形分換算3.14部)を2分かけて滴下し、更に5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電性フィラーであるアセチレンブラック[デンカ(株)製デンカブラック(登録商標)]3.14部及びガラスセラミック粒子(商品名「リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスLICGCTMPW-01(1μm)」[株式会社オハラ製])2.10部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆正極活物質粒子を得た。
【0150】
[リチウムイオン電池用正極の作製]
電解液42部とケッチェンブラック[商品名「EC300J」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]0.5部及び炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・ミルドS-243]1.0部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、続いて上記電解液30部と上記の被覆正極活物質粒子98.5部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで2分間混合し、上記電解液20部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液を2.3部更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間混合して、正極活物質層用スラリーを作製した。得られた正極活物質層用スラリーを目付量が80mg/cm2となるよう、厚さ50μmのカーボンコートアルミ箔の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、厚さが340μmのリチウムイオン電池用正極(190cm×90cm)を作製した。
【0151】
<電極表面粗さの測定>
実施例1~5及び比較例1~2のリチウムイオン電池用負極の表面を超深度形状測定顕微鏡[VK-8500(株)キーエンス製]を用いて拡大観察し、任意の2点間の平均厚み・偏差を測定した。測定を10回行い、平均した値を用いて以下の式で表面粗さ(%)を算出した。
表面粗さ(%)=偏差/平均厚み×100
表面粗さが3%以下の場合を〇、3%を超える場合を×として表2に記載した。
【0152】
上記で作製したリチウムイオン電池用正極及び実施例1~5及び比較例1~2のリチウムイオン電池用負極のいずれかにセパレータを組み合わせて封止し、実施例1~5及び比較例1~2のリチウムイオン電池を作製した。セパレータとしては、セルガード製#3501を用いた。得られた実施例1~5及び比較例1~2のリチウムイオン電池について、レート特性を測定した。結果を表2に示す。
【0153】
<リチウムイオン電池のレート特性の測定>
45℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法により負極評価用リチウムイオン電池の評価を行った。
定電流定電圧充電方式(CCCVモードともいう)で0.1Cの電流で4.2Vまで充電し、その後20分間の休止した後、0.01Cの電流で2.5Vまで放電した。
次いで、0.1Cの電流で4.2Vまで充電し、その後20分間の休止した後、0.2Cの電流で2.5Vまで放電した。
その後、0.1Cの電流で4.2Vまで充電し、その後20分間の休止した後、0.23Cの電流で2.5Vまで放電した。
更に0.1Cの電流で4.2Vまで充電し、その後20分間の休止した後、0.25Cの電流で2.5Vまで放電した。
最後に0.1Cの電流で4.2Vまで充電し、その後20分間の休止した後、0.33Cの電流で2.5Vまで放電した。
0.33Cの電流で2.5Vまで放電した時の放電容量と最後に0.01Cの電流で2.5Vまで放電を行った時の放電容量から、以下の式でレート特性(0.01Cでの放電容量と0.33Cでの放電容量の比率)を算出した。なお、レート特性の値が大きいほど容量の低下が少なく優れた電池特性を有することを意味する。
[レート特性(%)]=[0.33Cにおける放電容量]÷[0.01Cにおける放電容量]×100
【0154】
【0155】
実施例1~5のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子、負極及び電池は、比較例1~2と比較して、凝集度が小さく、電極表面粗さが小さく、かつ、レート特性が高かった。ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比が0.95を超える比較例1の被覆負極活物質粒子を用いた場合は、実施例1~5と比較して凝集度Chが大きく、レート特性が低かった。ゆるめ嵩密度とかため嵩密度との比が0.75以下の比較例2の被覆負極活物質粒子を用いた場合は、実施例1~5と比較して凝集度Chが大きく、電極表面粗さが大きかった。
本発明のリチウムイオン電池用被覆負極活物質粒子、及び、リチウムイオン電池用負極は、特に、定置用電源、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用等に用いられるリチウムイオン電池を作製するために有用である。本発明のリチウムイオン電池は、特に、定置用電源、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用のリチウムイオン電池として有用である。