IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本特殊陶業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-筒状多孔質体 図1
  • 特開-筒状多孔質体 図2
  • 特開-筒状多孔質体 図3
  • 特開-筒状多孔質体 図4
  • 特開-筒状多孔質体 図5
  • 特開-筒状多孔質体 図6
  • 特開-筒状多孔質体 図7
  • 特開-筒状多孔質体 図8
  • 特開-筒状多孔質体 図9
  • 特開-筒状多孔質体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097172
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】筒状多孔質体
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/10 20060101AFI20240710BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240710BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20240710BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20240710BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240710BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20240710BHJP
   B01J 35/55 20240101ALI20240710BHJP
【FI】
B01D69/10
B01D69/00
B01D69/04
B01D71/02 500
C04B38/00 303Z
C04B38/06 B
B01J35/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000513
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】菅 洋平
(72)【発明者】
【氏名】井原 章夫
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 良仁
【テーマコード(参考)】
4D006
4G019
4G169
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006JA12A
4D006MA02
4D006MA09
4D006MC03X
4D006PB62
4D006PB66
4G019FA11
4G169AA01
4G169BA13A
4G169BC68A
4G169BC75A
4G169DA06
4G169EA06
4G169EB14X
4G169EC30
(57)【要約】
【課題】 筒状多孔質体において、強度とガス透過性とを両立させる技術を提供する。
【解決手段】 筒状多孔質体は、気孔と窪みが形成されている筒状のセラミックを備え、セラミックの中心軸を含む断面において、気孔の外形線上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第1線分とし、第1線分に直交する最も長い線分を第2線分とすると、第1線分の長さが30μm以上であり、かつ、第2線分の長さに対する第1線分の長さの比が3以上である特定気孔を複数含んでおり、窪みの外周縁上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第3線分とし、第3線分に直交する最も長い線分を第4線分とすると、第3線分の長さが30μm以上であり、かつ、第4線分の長さに対する第3線分の長さの比が3以上である特定窪みを複数含んでおり、複数の特定窪みの第3線分の平均長さは、複数の特定気孔の第1線分の平均長さの110%以上である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状多孔質体であって、
内部に複数の気孔が形成されており、表面に複数の窪みが形成されている筒状のセラミックを備え、
前記セラミックの中心軸を含む断面において、
前記気孔の外形線上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第1線分とし、
前記気孔の外形線上の2点を結ぶ線分のうち、前記第1線分に直交する線分であって、最も長い線分を第2線分とすると、
複数の気孔は、前記第1線分の長さが30μm以上であり、かつ、前記第2線分の長さに対する前記第1線分の長さの比が3以上である特定気孔を複数含んでおり、
前記窪みの外周縁上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第3線分とし、
前記窪みの外周縁上の2点を結ぶ線分のうち、前記第3線分に直交する線分であって、最も長い線分を第4線分とすると、
複数の前記窪みは、前記第3線分の長さが30μm以上であり、かつ、前記第4線分の長さに対する前記第3線分の長さの比が3以上である特定窪みを複数含んでおり、
複数の前記特定窪みの前記第3線分の平均長さは、複数の前記特定気孔の前記第1線分の平均長さの110%以上である、
ことを特徴とする筒状多孔質体。
【請求項2】
請求項1に記載の筒状多孔質体であって、
複数の前記特定窪みの前記第3線分のそれぞれと、前記セラミックの中心軸に沿った方向とがなす角度の絶対値の平均は、31度以下である、
ことを特徴とする筒状多孔質体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状多孔質体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガスを透過可能な筒状多孔質体が知られている。例えば、特許文献1には、安定化ジルコニアからなる筒状多孔質体が開示されている。また、特許文献2には、断面における輪郭のアスペクト比が3以上の長気孔が形成されている筒状多孔質体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-113714号公報
【特許文献2】特開2022-21385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2のような先行技術によっても、筒状多孔質体において、強度とガス透過性とを両立させる技術については、なお、改善の余地があった。例えば、特許文献1に開示されている技術では、気孔率が大きいため、内部に隙間が多く、強度が不足している。また、特許文献2に開示されている技術では、筒状多孔質体の断面において、筒状多孔質体の断面積に対する長気孔の合計面積の割合が大きいため、強度が不足している。一方、気孔率や長気孔の合計面積の割合を小さくすると、強度は大きくなるものの、ガス透過性が小さくなる。
【0005】
本発明は、筒状多孔質体において、強度とガス透過性とを両立させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、筒状多孔質体が提供される。この筒状多孔質体は、内部に複数の気孔が形成されており、表面に複数の窪みが形成されている筒状のセラミックを備え、前記セラミックの中心軸を含む断面において、前記気孔の外形線上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第1線分とし、前記気孔の外形線上の2点を結ぶ線分のうち、前記第1線分に直交する線分であって、最も長い線分を第2線分とすると、複数の気孔は、前記第1線分の長さが30μm以上であり、かつ、前記第2線分の長さに対する前記第1線分の長さの比が3以上である特定気孔を複数含んでおり、前記窪みの外周縁上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第3線分とし、前記窪みの外周縁上の2点を結ぶ線分のうち、前記第3線分に直交する線分であって、最も長い線分を第4線分とすると、複数の前記窪みは、前記第3線分の長さが30μm以上であり、かつ、前記第4線分の長さに対する前記第3線分の長さの比が3以上である特定窪みを複数含んでおり、複数の前記特定窪みの前記第3線分の平均長さは、複数の前記特定気孔の前記第1線分の平均長さの110%以上である。
【0008】
この構成によれば、セラミックの内部には、ガスの通り道となる比較的細長い特定気孔が複数形成されており、セラミックの表面には、セラミックの内部へのガスの出入り口となる、比較的細長い特定窪みが複数形成されている。また、複数の特定窪みは、複数の特定気孔に比べ大きい。これにより、セラミックでは、表面のガスの出入り口が比較的大きくなる一方、気孔が3次元的に配置されやすくなり、表面から内部につながるガスの通り道が形成されやすくなる。したがって、ガス透過性を有しつつ強度も有することができるため、筒状多孔質体の強度とガス透過性とを両立させることができる。
【0009】
(2)上記形態の筒状多孔質体において、複数の前記特定窪みの前記第3線分のそれぞれと、前記セラミックの中心軸に沿った方向とがなす角度の絶対値の平均は、31度以下であってもよい。この構成によれば、セラミックの表面に形成されている特定窪みの多くは、セラミックの中心軸に沿うように形成されている。これにより、セラミックの表面において、特定窪み同士がつながることを抑制することができるため、セラミックの表面の強度を向上させることができる。したがって、筒状多孔質体の強度を向上させることができる。
【0010】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、筒状多孔質体の製造方法、筒状多孔質体を製造する装置、筒状多孔質体を備える装置、これらの装置の制御方法、筒状多孔質体の製造を実行させるコンピュータプログラム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の筒状多孔質体の全体斜視図である。
図2】筒状多孔質体の断面を説明する図である。
図3】筒状多孔質体の断面の一部を拡大した図である。
図4図3のA部を拡大した図である。
図5】筒状多孔質体の表面の一部を拡大した図である。
図6】筒状多孔質体の評価方法を説明する第1の図である。
図7】筒状多孔質体の評価方法を説明する第2の図である。
図8】筒状多孔質体の評価試験の結果を説明する第1の図である。
図9】筒状多孔質体の評価試験の結果を説明する第2の図である。
図10】筒状多孔質体の評価試験の結果を説明する第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の筒状多孔質体1の全体斜視図である。本実施形態の筒状多孔質体1は、例えば、酸素透過膜、水素分離膜などの機能性材料や触媒を支持する支持管として用いられる。筒状多孔質体1は、筒状のセラミック10を備える。セラミック10は、流路11を有する円筒形状の部材であって、セラミック10の外部と流路11との間において、ガスを透過させることが可能である。なお、セラミック10の形状について、中心軸C10に垂直な断面形状は、円形状に限定されない。楕円形状であってもよいし、矩形形状であってもよい。
【0013】
セラミック10は、内側に流路11を形成する筒状部12を有する。筒状部12は、例えば、ジルコニアから形成されている。なお、セラミック10を形成する材料は、ジルコニアに限定されない。アルミナ、マグネシア、ムライト、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニアなどの酸化物であってもよい。安定化ジルコニアや部分安定化ジルコニアは、安定化剤として、例えば、CaO,MgO,Y23,Sc23,Yb23などの酸化物が挙げられる。また、セラミック10は、白金(Pt)やニッケル(Ni)などの触媒が添加されていてもよい。本実施形態では、筒状部12は、例えば、外径が18mmであって、厚みが1mmである。
【0014】
筒状部12は、内部に複数の気孔が形成されている。複数の気孔は、筒状部12の内部におけるガスの通り道となる。筒状部12に形成されている気孔の特徴の詳細は、後述する。
【0015】
筒状部12は、中心軸C10に対して垂直な方向において、外側の外周面12aと、内側の内周面12bと、を有する。内周面12bは、流路11を形成する。セラミック10の外周面12aと内周面12bとのそれぞれには、複数の窪みが形成されている。外周面12aに形成されている複数の窪みは、セラミック10の外部と筒状部12の内部との間でのガスの出入り口となり、内周面12bに形成されている複数の窪みは、流路11と筒状部12の内部との間でのガスの出入り口となる。筒状部12に形成されている窪みの特徴の詳細は、後述する。
【0016】
図2は、本実施形態の筒状多孔質体1の断面を説明する図である。次に、筒状部12に形成されている気孔の特徴の詳細を説明する。図2には、筒状部12の気孔を観察するにあたって取得される、セラミック10の中心軸C10を含む断面CS1を示している。図2に示す断面CS1において、気孔が形成されている筒状部12の断面は、斜線で示す2つの部分CS10として現れる。断面CS1において、部分CS10の中心軸C10に直交する方向の大きさD10は、筒状部12の厚みである1mmである。すなわち、セラミック10は、中心軸C10に直交する方向において、厚みD10(=1mm)を有している。厚みD10は、特許請求の範囲の「所定の厚み」に相当する。
【0017】
図3は、本実施形態の筒状多孔質体1の断面の一部を拡大した図である。図3に示すセラミック10の中心軸C10を含む断面CS1には、筒状部12の外周面12aと内周面12bとの間の複数の気孔20と、外周面12aおよび内周面12bのそれぞれの複数の窪み30と、が現れている。本実施形態では、図3に示すように、断面CS1で観察できる複数の気孔20のそれぞれは、いずれも、中心軸C10に平行な中心軸方向(実線矢印Dc10が指す方向)に沿って細長い形状を有している。断面CS1に現れる複数の気孔20のいずれもが、中心軸方向Dc10に対して垂直な方向(実線矢印VDが指す方向)における気孔20の大きさが、セラミック10の厚みD10の0.06倍の長さを示すスケールバーSb1よりも小さい。すなわち、セラミック10の中心軸C10を含む断面CS1において、中心軸C10に直交する方向VDにおける気孔20の最大値が、セラミック10の厚みD10の6%以下となっている。なお、図3の断面における気孔20および窪み30が配置される位置や分散状態、数などは、一例であって、筒状多孔質体1の断面の様子は、これに限定されない。
【0018】
図4は、図3のA部を拡大した図である。図4には、図3のA部を拡大した図ととともに、図3と同様に、中心軸方向Dc10を示す実線矢印と、中心軸方向Dc10に対して垂直な方向VDを示す実線矢印と、セラミック10の厚みD10の0.06倍の長さを示すスケールバーSb1と、を示している。また、図4には、中心軸方向Dc10に沿うように、長さ30μmのスケールバーSb2と、長さ200μmのスケールバーSb3も示している。ここで、断面CS1における気孔20の形状に関して、気孔20の外形線L20上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第1線分L21とし、第1線分L21に直交する線分であって、最も長い線分を第2線分L22とする。セラミック10では、断面CS1において、複数の気孔20は、第1線分L21の長さが30μm以上であり、かつ、第2線分L22の長さに対する第1線分L21の長さの比が3以上である特定気孔を複数含んでいる。例えば、図4の断面CS1に現れている特定気孔20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20hのそれぞれがこれに該当する。
【0019】
筒状多孔質体1では、複数の気孔20のうち、断面CS1において、第1線分L21の長さが200μm以上であり、かつ、第2線分L22の長さに対する第1線分L21の長さの比が5以上である特定気孔20c,20dの合計面積は、断面CS1におけるセラミック10の面積の1%以上となっている。具体的には、図3に示す断面CS1において、断面CS1に現れている特定気孔20c,20dの合計面積は、断面CS1に現れている筒状部12の部分の面積(斜線のハッチングが施されている部分の面積)の1%以上である。さらに、セラミック10は、断面CS1において、特定気孔20c,20dのそれぞれの第1線分L21とセラミック10の中心軸C10に沿った方向(中心軸方向Dc10)とがなす角度は、17度以下となっている。
【0020】
図5は、筒状多孔質体1の表面の一部を拡大した図である。次に、筒状部12に形成されている窪み30の特徴の詳細を説明する。図5は、例えば、セラミック10の表面である外周面12aの一部を拡大した図を示している。図5には、中心軸方向Dc10を示す実線矢印と、長さ30μmのスケールバーSb2と、長さ50μmのスケールバーSb4と、を示している。ここで、窪み30の形状に関して、窪み30の外周縁L30上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第1線分L31とし、窪み30の外周縁L30上の2点を結ぶ線分のうち、第1線分L31に直交する線分であって、最も長い線分を第2線分L32とする。筒状部12に形成されている窪み30の多くは、窪み30の外周縁L30上の2点を結ぶ線分のうち、第1線分L31に直交する線分の長さが、第2線分L32に近づくにつれて長くなる形状、すなわち、略三角形状を有している。セラミック10は、外周面12aにおいて、第1線分L31の長さが30μm以上であり、かつ、第2線分L32の長さに対する第1線分L31の長さの比が3以上である特定窪みを複数含んでいる。例えば、図5の外周面12aに現れている特定窪み30a,30b,30c,30d,30e,30fのそれぞれがこれに該当する。さらに、セラミック10は、特定窪み30a,30b,30c,30d,30e,30fの第1線分L31のそれぞれと、セラミック10の中心軸C10に沿った中心軸方向Dc10とがなす角度の絶対値の平均は、31度以下となっている。第1線分L31は、特許請求の範囲の「第3線分」に相当する。第2線分L32は、特許請求の範囲の「第4線分」に相当する。
【0021】
セラミック10は、複数の窪み30のうち、第1線分L31の長さが50μm以上である窪み30を有している。例えば、図5に示す窪み30a,30e,30fのそれぞれがこれに該当する。窪み30a,30e,30fは、第2線分L32の長さに対する第1線分L31の長さの比が5以上であり、第2線分L32が、第1線分L31の中点MPとは異なる点において、第1線分L31と直交する。また、窪み30a,30eのそれぞれは、上述したように、窪み30a,30eのそれぞれの外周縁L30上の2点を結ぶ線分のうち、第1線分L31に直交する線分の長さは、第2線分L32に近づくにつれて長くなる形状を有している。なお、窪み30fは、図5に示すように、窪み30a,30eと異なった形状を有しており、第1線分L31に直交する線分の長さが第2線分L32に近づくにつれて一様に長くなる形状とはなっておらず、窪み30fのような形状の窪みも形成される場合がある。さらに、セラミック10では、複数の窪み30a,30e,30fのうち、第1線分L31とセラミック10の中心軸C10に沿った中心軸方向DC10とがなす角度の絶対値が60度より大きい窪み30eの合計面積は、複数の窪み30a,30e,30fの合計面積の32%以下となっている。なお、図5を用いて説明したセラミック10の外周面12aに形成されている窪み30の特徴は、セラミック10の表面である内周面12bに形成されている窪み30についても同じ特徴を有している。
【0022】
筒状多孔質体1は、このように、筒状部12の内部に、断面CS1において、第1線分L21の長さが30μm以上であり、かつ、第2線分L22の長さに対する第1線分L21の長さの比が3以上である特定気孔20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20hが形成されている。また、筒状部12の外周面12aには、第1線分L31の長さが30μm以上であり、かつ、第2線分L32の長さに対する第1線分L31の長さの比が3以上である特定窪み30a,30b,30c,30d,30e,30fが形成されている。本実施形態では、複数の特定窪み30a,30b,30c,30d,30e,30fの第1線分L31の平均長さは、複数の特定気孔20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20hのそれぞれの第1線分L21の平均長さの110%以上となっている。
【0023】
次に、筒状多孔質体1の製造方法について説明する。筒状多孔質体1の製造方法では、最初に、ジルコニア粉末、造孔材、メチルセルロース、可塑剤、および、純水を混合する。本実施形態では、造孔材として、成形体を焼成するとき焼失する繊維を用いる。具体的には、厚さが数十μmであって、長さが300μmから1000μm程度のレーヨン繊維やナイロン繊維などを造孔材として用いる。次に、ジルコニア粉末などが混合された材料を用いて、円筒状の押出成形を行うことで、筒状の成形体を作る。本実施形態では、押出出力を調整することで、造孔材としての繊維の配向性を調整する。また、繊維の硬さを調整することで、配向性を調整してもよい。次に、成形した筒状の成形体を焼成する。成形体を焼成するとき、造孔材が焼失することで気孔20や窪み30が形成され、筒状多孔質体1が製造される。
【0024】
次に、筒状多孔質体の評価試験について説明する。本評価試験では、筒状多孔質体の製造時に用いる造孔材の特性が、筒状多孔質体の強度とガス透過性とのそれぞれに与える影響を調べた。本評価試験では、本実施形態の筒状多孔質体1の製造方法を用いて製造した複数の筒状多孔質体のサンプルのそれぞれについて、曲げ強度とガス透過度のそれぞれについて測定を行った。
【0025】
図6は、筒状多孔質体の評価方法を説明する第1の図である。第1の評価方法としてのサンプルの曲げ強度の測定方法を説明する。サンプルの曲げ強度の測定では、最初に、製造したサンプルから、幅が10mmで厚みが1mmの平板形状の試験片Pt1を切り出した。切り出した試験片Pt1に対して、図6に示すように、一方の面Pts1上の2か所の位置のそれぞれに支持部材P1,P2を接触させ、他方の面Pts2上の1か所の位置であって、支持部材P1と支持部材P2との間の位置に加圧部材P3を接触させた。図6に示す状態から、加圧部材P3に力を作用させて、試験片Pt1に対して3点曲げ試験を行った。本実施形態では、3点曲げ試験において破断したときの荷重を「曲げ強度(N)」として、10回の3点曲げ試験の結果の平均値を算出し、算出した平均値をサンプルの曲げ強度とした。
【0026】
図7は、筒状多孔質体の評価方法を説明する第2の図である。第2の評価方法としてのサンプルのガス透過度を測定する方法を説明する。ガス透過度の測定では、図7に示す試験装置70を用いる。最初に、製造したサンプルから切り出した、中心軸方向に沿った長さが50mmの筒状の試験片Pt2の一方の端部Pt21にキャップ71を接合し、試験片Pt2の他方の端部Pt22にパイプ72を接合した。パイプ72が接合された試験片Pt2の内側には、パイプ73を挿入した。キャップ71およびパイプ72,73は、ガスを透過させない材料から形成されている。パイプ73の内側に窒素ガスを入れる(図7の点線矢印N1)と、窒素ガスはキャップ71に当たることで、折り返して試験片Pt2とパイプ73との間を流れる(図7の点線矢印N2)。試験片Pt2とパイプ73との間を流れる窒素ガスの一部は、試験片Pt2を通って外部に漏れ出す(図7の点線矢印N3)。試験片Pt2を透過しなかった窒素ガスは、パイプ72とパイプ73との間を通って、排出される。サンプルのガス透過度の測定では、パイプ73と試験片Pt2との間の窒素ガスの圧力と、筒状の試験片Pt2の外側の窒素ガスの圧力と、の差圧が0.05MPaとなるようにパイプ73に入れる窒素ガスの流量を設定した。試験装置70は、摂氏15~25度の温度に保った室内に配置した。サンプルの「ガス透過度(cc/s/m2/Pa)」は、以下の式(1)を用いて算出した。
ガス透過度=ガス透過量/(差圧×透過面積×時間)・・・(1)
ガス透過量(cc):試験片Pt2を通って試験片Pt2の外側に漏れ出した窒素ガス(点線矢印N3)の総量を標準状態(大気圧0.1013MPa、温度摂氏0度、相対湿度0%)に換算した値
差圧(Pa):パイプ73と試験片Pt2との間の窒素ガスの圧力と、筒状の試験片Pt2の外側の窒素ガスの圧力との差の値(=0.05MPa=50000Pa)
透過面積(m2):試験片Pt2の内周面Pt23の面積
時間(s):測定時間
【0027】
本評価試験では、サンプルのそれぞれについて、サンプルを製造するときに用いる造孔材の種類と、セラミックに対する添加割合(体積基準)とを変えることで、内部に形成されている気孔と表面に形成されている窪みのそれぞれの特性を調整した。各サンプルにおける造孔材の種類と、セラミックに対する添加割合は、個別に説明する。
【0028】
図8は、筒状多孔質体の評価試験の結果を説明する第1の図である。第1の評価試験では、気孔に関する3種類の特性と、「曲げ強度」および「ガス透過度」との関係について検討を行った。図8に示すサンプル1~6のそれぞれを製造するときに用いられた造孔材の種類、および、セラミックに対する添加割合は、以下の通りである。
サンプル1:(造孔材)直径60μmのアクリル樹脂 (添加割合)7.5体積%
サンプル2:(造孔材)厚み20μm×長さ100μmのレーヨン
(添加割合)7.5体積%
サンプル3:(造孔材)厚み20μm×長さ1000μmのレーヨン
(添加割合)7.5体積%
サンプル4:(造孔材)厚み20μm×長さ500μmのレーヨン
(添加割合)7.5体積%
サンプル5:(造孔材)厚み20μm×長さ1000μmのナイロン
(添加割合)7.5体積%
サンプル6:(造孔材)厚み20μm×長さ500μmのナイロン
(添加割合)7.5体積%
【0029】
サンプル1~6のそれぞれは、それぞれの中心軸を含むように切断し、切断面を研磨したのち、走査電子顕微鏡を用いて、気孔の特性を測定するためのサンプルの切断面のSEM画像(撮像範囲:1mm×1.2mm,加速電圧:15kV,倍率:100倍)を撮像した。第1の評価試験では、撮像した切断面のSEM画像から、気孔に関する以下の3種類の特性を測定した。なお、サンプルに形成されている気孔の「第1線分」および「第2線分」の定義は、本実施形態の筒状多孔質体1の気孔20における定義と同じである。
Sp/Tb(%):サンプルの中心軸に直交する方向における、サンプルの厚みに対する気孔の大きさの最大値の割合に100を乗した値
Asp/Ab(%):サンプルの面積に対する、第1線分の長さが200μm以上であり、かつ、第2線分の長さに対する第1線分の長さの比が5以上である気孔の合計面積の割合に100を乗した値
Ang1(度):第1線分の長さが200μm以上であり、かつ、第2線分の長さに対する第1線分の長さの比が5以上である気孔の第1線分とサンプルの中心軸に沿った方向とがなす角度
【0030】
図8に示す第1の評価試験の結果より、サンプルの厚みに対する気孔の大きさの最大値の割合(Sp/Tb)が6%以下のサンプル2~6は、Sp/Tbが8%のサンプル1に比べ、曲げ強度が大きくなることが確認された。ここれは、サンプル2~6では、中心軸に直交する方向において、サンプルの厚みに対する気孔の大きさの最大値の割合が比較的小さく、サンプルの内部は、隙間が小さい構造となることから、破壊されにくくなるためである。特に、Sp/Tbが6%以下になることで、サンプルの曲げ強度が大きくなることが確認された。
【0031】
図8に示す第1の評価試験の結果より、サンプルの面積に対する比較的細長い気孔の合計面積の割合(Asp/Ab)が1%以上のサンプル3~6は、Asp/Abが0%のサンプル2に比べ、ガス透過度が大きくなることが確認された。また、サンプルの中心軸に対する比較的細長い気孔の第1線分の角度(Ang1)が20度のサンプル6は、Ang1が17度以下のサンプル3~5に比べ、ガス透過度は大きいものの、曲げ強度が小さくなることが確認された。したがって、曲げ強度とガス透過性とを高いレベルで両立させるためには、サンプル3~5のように、サンプルの中心軸に対する比較的細長い気孔の第1線分の角度が17度以下であることが望ましい。
【0032】
図9は、筒状多孔質体の評価試験の結果を説明する第2の図である。第2の評価試験では、窪みに関する3種類の特性と、「曲げ強度」および「ガス透過度」との関係について検討を行った。図9に示すサンプル1~6のそれぞれを製造するときに用いられた造孔材の種類、および、セラミックに対する添加割合は、以下の通りである。
サンプル7: (造孔材)直径20μmのアクリル樹脂 (添加割合)7.5体積%
サンプル8: (造孔材)直径60μmのアクリル樹脂 (添加割合)7.5体積%
サンプル9: (造孔材)厚み20μm×長さ1000μmのレーヨン
(添加割合)7.5体積%
サンプル10:(造孔材)厚み20μm×長さ1000μmのレーヨン
(添加割合)15.0体積%
サンプル11:(造孔材)厚み20μm×長さ500μmのレーヨン
(添加割合)7.5体積%
サンプル12:(造孔材)厚み20μm×長さ300μmのレーヨン
(添加割合)7.5体積%
サンプル13:(造孔材)厚み20μm×長さ1000μmのナイロン
(添加割合)7.5体積%
【0033】
第2の評価試験では、サンプル7~13のそれぞれについて、走査電子顕微鏡を用いて、窪みの特性を測定するためのサンプルの表面のSEM画像(撮像範囲:1mm×1.2mm,加速電圧:15kV,倍率:100倍)を撮像した。第2の評価試験では、撮像した表面のSEM画像から、窪みに関する以下の3種類の特性を測定した。なお、サンプルに形成されている窪みの「第1線分」および「第2線分」の定義は、本実施形態の筒状多孔質体1の窪み30における定義と同じである。
Ac/As(%):表面のSEM画像における、表面の面積に対する、第1線分の長さが50μm以上、第2線分の長さに対する第1線分の長さの比が5以上、かつ、第2線分が第1線分の中点とは異なる点において第1線分と直交する窪みの合計面積の割合に100を乗した値
Ctr(-):窪みの外周縁上の2点を結ぶ線分のうち、第1線分に直交する線分の長さが第2線分に近づくにつれて長くなる窪みの有無
Asc60/Asc(%):第1線分の長さが50μm以上、第2線分の長さに対する第1線分の長さの比が5以上、かつ、第2線分が第1線分の中点とは異なる点において第1線分と直交する窪みの合計面積に対する、第1線分の長さが50μm以上、第2線分の長さに対する第1線分の長さの比が5以上、かつ、第2線分が第1線分の中点とは異なる点において第1線分と直交する窪みであって、第1線分とサンプルの中心軸に沿った中心軸方向とがなす角度の絶対値が60度より大きい窪みの合計面積の割合に100を乗した値
【0034】
サンプル7,8では、造孔材として、球形のアクリル樹脂を用いているが、直径を変えても、曲げ強度とガス透過性とを両立することは難しいことが確認された。一方、繊維状の造孔材を用いたサンプル9~13では、窪みの形状は、第1線分に直交する線分の長さが第2線分に近づくにつれて長くなる、略三角形状となっており、曲げ強度とガス透過性とを比較的両立しやすいことが確認された。また、サンプル9~13では、第1線分の長さが50μm以上であって第2線分の長さに対する第1線分の長さの比が5以上の比較的細長い窪みが形成されている。これにより、サンプル9~13では、ガスが細長い窪みを通ってサンプルの外部と内部との間でガスが出入りしやすいことから、例えば、サンプル8と比べると、曲げ強度が12Nより大きいにも関わらず、ガス透過度が0.5cc/s/m2/Pa以上となっている。さらに、第1線分と中心軸方向とがなす角度の絶対値が60度より大きい窪みの合計面積の割合(Asc60/Asc)が32%以下のサンプル9~12は、曲げ強度が17Nのサンプル7よりも曲げ強度が大きくなることが確認された。
【0035】
図10は、筒状多孔質体の評価試験の結果を説明する第3の図である。第3の評価試験では、気孔と窪みとが関係する特性および窪みの特性と、「曲げ強度」および「ガス透過度」との関係について検討を行った。図10に示すサンプル14~20のそれぞれを製造するときに用いられた造孔材の種類、および、セラミックに対する添加割合は、以下の通りである。
サンプル14:(造孔材)直径20μmのアクリル樹脂 (添加割合)7.5体積%
サンプル15:(造孔材)直径60μmのアクリル樹脂 (添加割合)7.5体積%
サンプル16:(造孔材)厚み20μm×長さ300μmのレーヨン
(添加割合)7.5体積%
サンプル17:(造孔材)厚み20μm×長さ500μmのレーヨン
(添加割合)7.5体積%
サンプル18:(造孔材)厚み20μm×長さ1000μmのレーヨン
(添加割合)7.5体積%
サンプル19:(造孔材)厚み20μm×長さ1000μmのレーヨン
(添加割合)15.0体積%
サンプル20:(造孔材)厚み20μm×長さ1000μmのナイロン
(添加割合)7.5体積%
【0036】
第3の評価試験では、サンプル14~20のそれぞれについて、サンプルの切断面と表面とのそれぞれのSEM画像(撮像範囲:1mm×1.2mm,加速電圧:15kV,倍率:100倍)を撮像した。第3の評価試験では、サンプルの切断面のSEM画像を用いて気孔に関する特性を測定し、サンプルの表面のSEM画像を用いて窪みに関する特性を測定し、以下の2種類の特性を算出した。サンプルに形成されている気孔の「第1線分」と窪みの「第1線分」の定義は、本実施形態の筒状多孔質体の気孔20または窪み30における定義と同じである。
Lc/Lp(%):複数の気孔の第1線分の平均長さに対する複数の窪みの第1線分の平均長さの比に100を乗じた値
Ang2(度):窪みの第1線分とサンプルの中心軸に沿った中心軸方向とがなす角度の絶対値の平均値
【0037】
第3の評価試験の結果より、気孔の第1線分の平均長さに対する複数の窪みの第1線分の平均長さの比(Lc/Lp)が110%以上となっているサンプル16~20は、Lc/Lpが87%のサンプル15と比較すると、同程度以上のガス透過度を有しつつ、曲げ強度が16N以上の大きい値を示すことが確認された。これは、繊維状の造孔材によって形成される気孔と窪みにおいて気孔の大きさが窪みの大きさに比べて小さいと、表面のガスの出入り口が比較的大きくなる一方、気孔が3次元的に配置されやすくなり、表面から内部につながるガスの通り道が形成されやすくなるためである。これにより、Lc/Lpが110%以上のサンプルでは、外部と内部との間でガスが出入りしやすいことからガス透過度が大きくなるとともに、曲げ強度も大きくなることが確認された。
【0038】
図10に示す第3の評価試験の結果より、窪みの第1線分とサンプルの中心軸に沿った中心軸方向とがなす角度の絶対値の平均値(Ang2)が31度以下のサンプル16~18の曲げ強度は、ガス透過度が小さいサンプル14の曲げ強度より大きくなることが確認された。これは、製造時に添加される繊維状の造孔材が成形体の内部において中心軸に沿う方向に沿って配置されるため、サンプルの内部は、中心軸に直交する方向において、隙間がさらに小さい構造となるためである。このように、Ang2が31度以下のサンプル16~18は、破壊されにくく、ガス透過度も大きい値となることが確認された。
【0039】
以上説明した、本実施形態の筒状多孔質体1によれば、複数の特定窪み30a,30b,30c,30d,30e,30fの第1線分L31の平均長さは、複数の特定気孔20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20hの第1線分L21の平均長さの110%以上となっている。すなわち、総じて、特定窪み30a,30b,30c,30d,30e,30fは、特定気孔20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20hに比べ大きい。これにより、セラミック10では、表面のガスの出入り口(窪み30)が比較的大きくなる一方、気孔20が3次元的に配置されやすくなり、表面から筒状部12の内部につながるガスの通り道が形成されやすくなる。したがって、ガス透過性を有しつつ強度も有することができるため、筒状多孔質体の強度とガス透過性とを両立させることができる。
【0040】
また、本実施形態の筒状多孔質体1によれば、窪み30a,30b,30cの第1線分L31のそれぞれと、セラミック10の中心軸C10に沿った中心軸方向Dc10とがなす角度の絶対値の平均は、31度以下となっている。このように、筒状多孔質体1では、セラミック10の表面に形成されている窪み30の多くは、セラミック10の中心軸C10に沿うように形成されている。これにより、セラミック10の表面において、窪み30同士がつながることを抑制することができるため、セラミック10の表面の強度を向上させることができる。したがって、筒状多孔質体1の強度を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態の筒状多孔質体1によれば、筒状のセラミック10の筒状部12に形成されている複数の気孔20は、セラミック10の中心軸C10を含む断面において、中心軸C10に直交する方向における大きさの最大値が、セラミック10の所定の厚みD10の6%以下となっている。これにより、セラミック10は、中心軸C10に直交する方向において隙間が小さい構造となるため、強度を有しつつ、複数の気孔20によってガス透過性を有することができる。したがって、筒状多孔質体1の強度とガス透過性とを両立させることができる。
【0042】
また、本実施形態の筒状多孔質体1によれば、セラミック10の筒状部12には、中心軸C10を含む断面において、第1線分L21の長さが200μm以上であって、第2線分L22の長さに対する第1線分L21の長さの比が5以上の比較的細長い気孔20c,20dが形成されている。気孔20c,20dの合計面積は、断面におけるセラミック10の面積の1%以上となっており、筒状部12では、気孔20c,20dによってガスが透過しやすい。これにより、筒状多孔質体1のガス透過性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の筒状多孔質体1によれば、気孔20c,20dのそれぞれの第1線分L21とセラミック10の中心軸C10に沿った方向とがなす角度は、17度以下となっており、比較的細長い気孔20c,20dが中心軸C10に沿うように配置されている。これにより、筒状多孔質体1は、中心軸C10に直交する方向において強度を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態の筒状多孔質体1によれば、セラミック10の表面(外周面12aと内周面12b)には、第1線分L31の長さが50μm以上であって、第2線分L32の長さに対する第1線分L31の長さの比が5以上であり、第2線分L32が、第1線分L31の中点MPとは異なる点において、第1線分L31と直交する窪み30a,30e,30fが形成されている。すなわち、セラミック10の表面には、比較的細長い略三角形状を有する窪み30a,30e,30fを含む複数の窪み30が形成されている。複数の窪み30のそれぞれは、セラミック10の外部と筒状部12の内部との間でのガスの出入り口となることから、セラミック10の表面から筒状部12の内部につながるガスの通り道となりやすい略三角形状を有する窪みを有することで、セラミック10の強度を維持しつつ、ガス透過性を発揮することができる。したがって、筒状多孔質体1の強度とガス透過性とを両立させることができる。
【0045】
また、本実施形態の筒状多孔質体1によれば、窪み30は、窪み30の外周縁L30上の2点を結ぶ線分のうち、第1線分L31に直交する線分の長さが、第2線分L32に近づくにつれて長くなる形状を有している。すなわち、窪み30は、より三角形に近い形状を有している。これにより、セラミック10の表面から筒状部12の内部につながるガスの通り道がさらに形成されやすいため、ガスは、セラミックの外部と筒状部12の内部との間でさらに出入りしやすくなる。したがって、筒状多孔質体1は、ガス透過性をさらに向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の筒状多孔質体1によれば、窪み30a,30e,30fのうち、第1線分L31とセラミック10の中心軸C10に沿った中心軸方向DC1とがなす角度の絶対値が60度より大きい窪み30eの合計面積は、複数の窪み30a,30e,30fの合計面積の32%以下となっている。すなわち、窪み30の多くは、セラミック10の中心軸C10に沿うように形成されている。これにより、セラミック10は、中心軸C10に直交する方向において隙間が少ない構造となるため、筒状多孔質体1の強度を向上させることができる。
【0047】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
[変形例1]
上述の実施形態では、特定窪み30a,30b,30c,30d,30e,30fの第1線分L31のそれぞれと、セラミック10の中心軸C10に沿った中心軸方向Dc10とがなす角度の絶対値の平均は、31度以下となっているとした。特定窪みの第1線分とセラミックの中心軸方向とがなす角度は、31度より大きくてもよいが、特定窪みの第1線分とセラミックの中心軸方向とがなす角度は小さい方が、セラミック10の表面において、窪み30同士がつながることを抑制することができるため、セラミック10の表面の強度を向上させることができる。
【0049】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0050】
(適用例1)
筒状多孔質体であって、
内部に複数の気孔が形成されており、表面に複数の窪みが形成されている筒状のセラミックを備え、
前記セラミックの中心軸を含む断面において、
前記気孔の外形線上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第1線分とし、
前記気孔の外形線上の2点を結ぶ線分のうち、前記第1線分に直交する線分であって、最も長い線分を第2線分とすると、
複数の気孔は、前記第1線分の長さが30μm以上であり、かつ、前記第2線分の長さに対する前記第1線分の長さの比が3以上である特定気孔を複数含んでおり、
前記窪みの外周縁上の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を第3線分とし、
前記窪みの外周縁上の2点を結ぶ線分のうち、前記第3線分に直交する線分であって、最も長い線分を第4線分とすると、
複数の前記窪みは、前記第3線分の長さが30μm以上であり、かつ、前記第4線分の長さに対する前記第3線分の長さの比が3以上である特定窪みを複数含んでおり、
複数の前記特定窪みの前記第3線分の平均長さは、複数の前記特定気孔の前記第1線分の平均長さの110%以上である、
ことを特徴とする筒状多孔質体。
(適用例2)
適用例1に記載の筒状多孔質体であって、
複数の前記特定窪みの前記第3線分のそれぞれと、前記セラミックの中心軸に沿った方向とがなす角度の絶対値の平均は、31度以下である、
ことを特徴とする筒状多孔質体。
【符号の説明】
【0051】
1…筒状多孔質体
10…セラミック
12…筒状部
12a…外周面
12b…内周面
20…気孔
20a,20b,20c,20d,20e,20f,20g,20h…特定気孔
30…窪み
30a,30b,30c,30d,30e,30f…特定窪み
C10…(筒状多孔質体の)中心軸
CS1…断面
L20…外形線
L21…(気孔の)第1線分
L22…(気孔の)第2線分
L30…外周縁
L31…(窪みの)第1線分
L32…(窪みの)第2線分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10