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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097174
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
G01N35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000520
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 淳夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 敬文
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CD04
2G058GA03
2G058GD03
(57)【要約】
【課題】相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる分析装置を提案すること。
【解決手段】分析装置は、測光部と、取得部と、補正部とを備える。測光部は、高さ方向の一端が開口したキュベットの幅方向における一端から他端に亘って複数の測定位置で吸光度を測定する。取得部は、ブランク液をキュベットに入れた状態で測光部により測定したブランクデータと、検体と試薬とを反応させた反応液をキュベットに入れた状態で測光部により測定した検体データとを取得する。補正部は、ブランクデータおよび検体データにおける各測定位置の相関処理に基づいて、ブランクデータおよび検体データそれぞれの測定位置を揃える補正を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向の一端が開口したキュベットの幅方向における一端から他端に亘って複数の測定位置で吸光度を測定する測光部と、
ブランク液を前記キュベットに入れた状態で前記測光部により測定したブランクデータと、検体と試薬とを反応させた反応液を前記キュベットに入れた状態で前記測光部により測定した検体データとを取得する取得部と、
前記ブランクデータおよび前記検体データにおける各測定位置の相関処理に基づいて、前記ブランクデータおよび前記検体データそれぞれの前記測定位置を揃える補正を行う補正部と
を備える分析装置。
【請求項2】
環状に並べて配置された複数の前記キュベットを環状方向に回転させる駆動部をさらに備え、
前記測光部は、
複数の前記キュベットが環状方向に回転している間に前記吸光度を測定し、
前記補正部は、
複数の前記キュベットのうち、特定のキュベットを前記相関処理の対象とする
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記特定のキュベットは、
角速度が変化している期間に前記吸光度が測定される前記キュベットである
請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記特定のキュベットは、
角速度が一定の期間に前記吸光度が測定される前記キュベットである
請求項2に記載の分析装置。
【請求項5】
前記駆動部は、
前記複数のキュベットが静止した状態である静止状態から前記環状方向に回転する回転状態を経て前記静止状態に至るシーケンスを繰り返し行い、
前記取得部は、
特定の前記シーケンスにおいて前記測光部が計測した前記ブランクデータを取得し、
前記補正部は、
前記特定のシーケンスにおける前記ブランクデータを用いて前記相関処理を行う
請求項2に記載の分析装置。
【請求項6】
前記取得部は、
第1シーケンスにおいて前記測光部が計測した第1ブランクデータと、第2シーケンスにおいて前記測光部が計測した第2ブランクデータと、を取得し、
前記補正部は、
前記第1ブランクデータと、前記第2ブランクデータとにおける各測定位置の相関処理に基づいて、前記第1ブランクデータおよび前記第2ブランクデータそれぞれの前記測定位置を揃える補正値を算出し、前記補正値により前記検体データの各測定値を補正する
請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記取得部は、
複数の前記キュベットそれぞれで測定した複数の前記ブランクデータと、複数の前記キュベットそれぞれで測定した複数の前記検体データとを取得し、
前記補正部は、
前記複数のブランクデータおよび前記複数の検体データを用いて前記相関処理を行う
請求項1に記載の分析装置。
【請求項8】
基板と、
前記基板に設けられ、前記キュベットを通過した各波長の光を受光する受光素子と、
前記基板に設けられ、前記受光素子が受光した各波長の光の信号を波長毎に増幅する複数の増幅回路と、
を備え、
前記複数の増幅回路それぞれと前記受光素子との接続距離は、
所定値未満の波長の信号を増幅する前記増幅回路の方が、所定値以上の波長の信号を増幅する前記増幅回路よりも短い
請求項1に記載の分析装置。
【請求項9】
前記接続距離は、
340nmの波長の信号を増幅する前記増幅回路が最も短い
請求項8に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とをキュベットと呼ばれる反応容器の中で反応させることによって、検体中の成分を分析する分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の分析装置では、反応液に対して光を照射して測定した反応液の吸光度と、水等のブランク液に対して光を照射して測定したブランク液の吸光度との差分により検体中の成分を測定する。具体的には、分析装置は、反応液およびブランク液それぞれについて、複数の測定位置で吸光度を測定し、反応液およびブランク液それぞれの測定位置に対応する吸光度同士の差分を算出する。
【0003】
また、分析装置は、複数のキュベットを環状に配置したキュベットテーブルを回転させることで、各キュベットが光源を通過して吸光度を測定する。このため、例えば、キュベットテーブルを回転させるモータの回転むらや、回転軸のねじれ、回転の加減速の影響により測定位置がずれる場合がある。このような問題に対して、分析装置は、反応液およびブランク液それぞれの測定結果において、測定位置を補正してずれを解消する相関処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-80055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、相関処理による測定位置の補正精度を向上させる点で更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで、本開示では、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる分析装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示に係る分析装置は、測光部と、取得部と、補正部とを備える。前記測光部は、高さ方向の一端が開口したキュベットの幅方向における一端から他端に亘って複数の測定位置で吸光度を測定する。前記取得部は、ブランク液を前記キュベットに入れた状態で前記測光部により測定したブランクデータと、検体と試薬とを反応させた反応液を前記キュベットに入れた状態で前記測光部により測定した検体データとを取得する。前記補正部は、前記ブランクデータおよび前記検体データにおける各測定位置の相関処理に基づいて、前記ブランクデータおよび前記検体データそれぞれの前記測定位置を揃える補正を行う。
【0008】
これにより、分析装置は、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる。
【0009】
また、本開示に係る分析装置は、駆動部をさらに備える。前記駆動部は、環状に並べて配置された複数の前記キュベットを環状方向に回転させる。前記測光部は、複数の前記キュベットが環状方向に回転している間に前記吸光度を測定する。前記補正部は、複数の前記キュベットのうち、特定のキュベットを前記相関処理の対象とする。
【0010】
これにより、分析装置は、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる。
【0011】
また、本開示に係る前記特定のキュベットは、角速度が変化している期間に前記吸光度が測定される前記キュベットである。
【0012】
これにより、分析装置は、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる。
【0013】
また、本開示に係る前記特定のキュベットは、角速度が一定の期間に前記吸光度が測定される前記キュベットである。
【0014】
これにより、分析装置は、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる。
【0015】
また、本開示に係る前記駆動部は、前記複数のキュベットが静止した状態である静止状態から前記環状方向に回転する回転状態を経て前記静止状態に至るシーケンスを繰り返し行う。前記取得部は、特定の前記シーケンスにおいて前記測光部が計測した前記ブランクデータを取得する。前記補正部は、前記特定のシーケンスにおける前記ブランクデータを用いて前記相関処理を行う。
【0016】
これにより、分析装置は、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる。
【0017】
また、本開示に係る前記取得部は、第1シーケンスにおいて前記測光部が計測した第1ブランクデータと、第2シーケンスにおいて前記測光部が計測した第2ブランクデータと、を取得する。前記補正部は、前記第1ブランクデータと、前記第2ブランクデータとにおける各測定位置の相関処理に基づいて、前記第1ブランクデータおよび前記第2ブランクデータそれぞれの前記測定位置を揃える補正値を算出し、前記補正値により前記検体データの各測定値を補正する。
【0018】
これにより、分析装置は、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる。
【0019】
また、本開示に係る前記取得部は、複数の前記キュベットそれぞれで測定した複数の前記ブランクデータと、複数の前記キュベットそれぞれで測定した複数の前記検体データとを取得する。前記補正部は、前記複数のブランクデータおよび前記複数の検体データを用いて前記相関処理を行う。
【0020】
これにより、分析装置は、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる。
【0021】
また、本開示に係る分析装置は、基板と、受光素子と、増幅回路とを備える。前記受光素子は、前記基板に設けられ、前記キュベットを通過した各波長の光を受光する。前記増幅回路は、前記基板に設けられ、前記受光素子が受光した各波長の光の信号を波長毎に増幅する。前記複数の増幅回路それぞれと前記受光素子との接続距離は、所定値未満の波長の信号を増幅する前記増幅回路の方が、所定値以上の波長の信号を増幅する前記増幅回路よりも短い。
【0022】
これにより、分析装置は、電気ノイズを低減することができる。
【0023】
また、本開示に係る前記接続距離は、340nmの波長の信号を増幅する前記増幅回路が最も短い。
【0024】
これにより、分析装置は、電気ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る分析装置の概略的な構成を示す平面図である。
図2】分析装置が行う相関処理の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る分析装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図4】キュベットテーブルの間欠回転を示す図である。
図5】キュベットテーブルの間欠回転を示す図である。
図6】測光部における受光素子が配置された基板構造を示す図である。
図7】測光部の電源供給を示す図である。
図8】実施形態に係る分析装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0027】
図1は、実施形態に係る分析装置1の概略的な構成を示す平面図である。図2は、分析装置が行う相関処理の一例を示す図である。また、以下で示す分析装置1は、同一の検体に対して2種類の試薬を反応させて検体中の成分を分析する例を挙げて説明する。なお、検体に対して反応させる試薬数は、2種類に限らず、1種類、もしくは、3種類以上であってもよい。また、検体は、例えば、人の血液であり、分析する成分には、血液中の例えばALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)も含まれる。
【0028】
図1に示すように、分析装置1は、複数のキュベット2と、キュベットテーブル3と、駆動部4と、測光部5とを備える。なお、分析装置1は、キュベット2に分注される検体が格納された検体庫や、キュベット2に分注される試薬が格納された試薬庫、検体庫および試薬庫からキュベット2に検体や試薬を分注するアームをさらに有しているが、便宜上、図1では図示を省略している。
【0029】
キュベット2は、検体と試薬とを反応させる反応容器であり、例えば、透明な素材(樹脂素材やガラス素材など)で構成される。また、キュベット2は、例えば、直方体(立方体や他の形状でもよい)の形状であり、検体および試薬を分注するための開口を高さ方向(紙面奥行き方向)の一端に有する。
【0030】
キュベットテーブル3は、平面視環状に形成されており、環状方向に沿って複数のキュベット2の列が配置される。
【0031】
駆動部4は、キュベットテーブル3を回転させる駆動を行う。具体的には、駆動部4は、駆動ギヤ41と、従動ギヤ42と、ステッピングモータ(SM)43(図3参照)とを備える。駆動ギヤ41は、従動ギヤ42およびステッピングモータ43に接続される。従動ギヤ42は、駆動ギヤ41およびキュベットテーブル3に接続される。
【0032】
測光部5は、キュベットテーブル3の外周側に設けられた光源51と、キュベットテーブル3の内周側に設けられた受光素子52とを備える。光源51は、例えば、ハロゲンランプで構成され、受光素子52に向けて光を出射する。受光素子52は、例えば、フォトダイオードであり、光源51から出射された光を受光する。
【0033】
このような構成による分析装置1は、下記の通り動作する。
【0034】
具体的には、まず、駆動部4は、ステッピングモータ43を駆動させて駆動ギヤ41を回転させることにより、駆動ギヤ41の回転力を従動ギヤ42に伝達させて従動ギヤ42を回転させる。この結果、従動ギヤ42の回転力をキュベットテーブル3に伝達させてキュベットテーブル3を回転させる。なお、駆動部4は、キュベットテーブル3を静止状態と回転状態とを交互に繰り返す間欠回転を行うが、間欠回転の詳細については、図4を用いて後述する。
【0035】
そして、測光部5は、キュベットテーブル3が回転する間に測光位置5pを通過するキュベット2の反応液に光を照射して、各キュベット2を通過する光を複数の測定位置で測光することで反応液の吸光度を測定する。
【0036】
また、分析装置1は、水(純水)等のブランク液をキュベットに分注して測光したブランク液の吸光度を測定する。そして、分析装置1は、測定した反応液の吸光度と、測定したブランク液の吸光度との差分を最終的な反応液の吸光度として算出する。
【0037】
ここで、上記した差分は、複数の測定位置それぞれで算出される。具体的には、上記した差分は、反応液およびブランク液それぞれの測定位置が最も近いもの同士を用いて算出される。このため、例えば、ステッピングモータ43の回転むらや、回転軸のねじれ、回転の加減速の影響により測定位置がずれる場合がある。この結果、反応液およびブランク液それぞれの測定位置がずれてしまい、吸光度を正確に測定できなくなるおそれがあった。このような問題に対して、分析装置1は、反応液およびブランク液それぞれの測定結果において、測定位置を補正してずれを解消する相関処理を行う。
【0038】
本開示では、この相関処理において、キュベット2の幅方向(キュベットテーブル3の回転方向)における一端から他端に亘る複数の測定位置を用いて相関処理を行う。かかる点について図2を用いて説明する。
【0039】
図2では、キュベット2の断面図(測光部5から見た断面)と、キュベット2の一端2aから他端2bに亘る複数の測定位置で吸光度を測定した図とを示している。なお、図2のグラフにおける各点が各測定位置を示している。
【0040】
図2に示すように、測光部5は、キュベット2の筐体部分である一端2aおよび/または他端2bを含んで吸光度を測定する。そして、図2に示すように、キュベット2の筐体部分である一端2aおよび/または他端2bの吸光度は、キュベット2の内部空間(反応液が満たされた空間)よりも吸光度が高くなる。
【0041】
そのため、本開示では、キュベット2の筐体部分である例えば一端2aおよび他端2bの両方の吸光度を使って相関処理を行う。例えば、分析装置1は、キュベット2の筐体部分である一端2aから他端2b全体に亘る複数の測定位置(第1範囲D1に含まれる測定位置)の吸光度のグラフ形状を比較し、ブランク液と、反応液との吸光度のグラフ形状が揃う位置までブランク液(もしくは反応液)のデータをずらす。
【0042】
この結果、図2の下図に示すように、相関処理後のグラフ形状について、ブランク液と、反応液との測定位置が揃った状態となる。これにより、反応液およびブランク液の差分により算出する反応液の吸光度の精度を高めることができる。
【0043】
つまり、本開示では、キュベット2の筐体部分である一端2aおよび他端2bの吸光度が高い箇所を使って相関処理を行うことで、相関処理の感度を高めることができるため、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる。
【0044】
そして、分析装置1は、相関処理に測定位置の補正が完了した反応液およびブランク液のデータに基づいて、反応液の最終的な吸光度を算出する。具体的には、分析装置1は、キュベット2の内部空間よりも小さい第2範囲D2に含まれる測定位置の吸光度を用いて反応液の最終的な吸光度を算出する。
【0045】
次に、図3を用いて、実施形態に係る分析装置1の構成例について説明する。図3は、実施形態に係る分析装置1の構成例を示す機能ブロック図である。なお、図3のブロック図では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0046】
換言すれば、図3のブロック図に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0047】
図3に示すように、分析装置1は、キュベットテーブル3と、駆動部4と、測光部5と、制御部6と、記憶部7と、表示部8とを備える。制御部6は、取得部61と、補正部62と、分析部63とを備える。記憶部7は、測光データ71を記憶する。
【0048】
ここで、分析装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0049】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部6の取得部61、補正部62および分析部63として機能する。
【0050】
また、制御部6の取得部61、補正部62および分析部63の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0051】
また、記憶部7は、例えば、半導体素子メモリや、ハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される記憶部である。かかる記憶部7には、測光データ71や、各種プログラム、制御部6の処理に必要な各種情報が記憶される。
【0052】
次に、制御部6の各機能(取得部61、補正部62および分析部63)について詳細に説明する。
【0053】
取得部61は、各種情報を取得する。具体的には、取得部61は、測光部5において測光した吸光度データを取得する。より具体的には、取得部61は、ブランク液をキュベット2に入れた状態で測光部5により測定したブランクデータと、検体と試薬とを反応させた反応液をキュベット2に入れた状態で測光部5により測定した検体データとを取得する。取得部61は、取得したブランクデータおよび検体データを測光データ71として記憶部7に記憶する。
【0054】
補正部62は、取得部61が取得したブランクデータおよび検体データにおける各測定位置の相関処理に基づいて、ブランクデータおよび検体データそれぞれの測定位置を揃える補正を行う。
【0055】
分析部63は、補正部62による補正後のブランクデータおよび検体データに基づいて、各種分析を行う。具体的には、分析部63は、ブランクデータおよび検体データの差分を算出することで、最終的な検体データの算出値を算出する。そして、分析部63は、算出した検体データの算出値に基づいて、検体に含まれる成分を測定する。そして、分析部63は、分析結果を表示部8に表示する。
【0056】
なお、補正部62は、キュベットテーブル3に配置された複数のキュベット2のうち、特定のキュベット2を対象として相関処理を行う。具体的には、補正部62は、測光位置5pを通過する際のキュベット2の角速度が所定の条件を満たすキュベット2を相関処理の対象とする。かかる点について、図4および図5を用いて説明する。
【0057】
図4および図5は、キュベットテーブル3の間欠回転を示す図である。図4および図5では、キュベットテーブル3に50個のキュベット2が配置された例を示している。
【0058】
ここで、間欠回転について説明する。間欠回転とは、キュベットテーブル3を駆動部4により回転させる場合に、複数のキュベット2が静止した状態である静止状態から環状方向に回転する回転状態を経て静止状態に至るシーケンスを繰り返し行う動作である。図4に示す例において、初期位置における1番および2番のキュベット2に注目した場合、1シーケンスが行われると、1番および2番のキュベット2は、回転により、初期位置における35番および36番のキュベット2に移動する。すなわち、約3分の1だけ回転する。つづいて、次の1シーケンスが行われると、1番および2番のキュベット2は、初期位置における19番および20番のキュベット2に移動する。また、次の1シーケンスが行われると、1番および2番のキュベット2は、初期位置における3番および4番のキュベット2に移動する。つまり、間欠回転では、1周した際に、キュベット2個分だけ環状方向に変位していく。
【0059】
また、分析装置1は、各シーケンスにおいて、各処理位置100~105においてキュベット2に対して所定の処理が行われる。具体的には、処理位置100では、第1試薬(R1)の分注が行われる。処理位置101では、第2試薬(R2)の分注が行われる。処理位置102では、検体の分注が行われる。処理位置104,105では、反応液の撹拌が行われる。
【0060】
図5は、1番および2番のキュベット2が再び初期位置に戻るまでのシーケンス例を示している。図5に示すように、1~26シーケンスまで行うことで、1番および2番のキュベット2が再び初期位置に戻る、言い換えれば、すべてのキュベット2が処理位置100~105により処理を行って吸光度の測定を行うことができる。
【0061】
ここで、補正部62は、特定のキュベット2を相関処理の対象とする。例えば、補正部62は、キュベットテーブル3の角速度が変化している期間に吸光度が測定されるキュベット2を相関処理の対象とする。
【0062】
具体的には、図5に示す初期位置(1シーケンス)では、16番のキュベット2が測光位置5pに対応する。そして、角速度が変化する期間は、加速する期間と減速する期間とに分けられる。初期位置において、加速する期間のキュベット2は、17番のキュベット2であり、減速する期間のキュベット2は、15番のキュベット2である。この角速度が変化する期間は、測定位置がずれる可能性が高いためである。従って、補正部62は、角速度が変化する期間のキュベット2を相関処理の対象とすることで、加減速による測定位置のずれを補正することができる。
【0063】
また、補正部62は、角速度が一定の期間に吸光度が測定されるキュベット2を相関処理の対象としてもよい。これにより、例えば、回転軸のずれ等といった定常的に発生している測定位置のずれを補正することができる。
【0064】
また、補正部62は、例えば、特定のシーケンスにおいて測光部5が測光したブランクデータを使って相関処理を行ってもよい。これにより、必要以上にいくつくものシーケンスでブランクデータを取得する処理を省くことができるため、分析装置1のブランクデータ取得にかかる処理負荷を軽減できる。
【0065】
また、取得部61は、例えば、第1シーケンスにおいて測光部5が計測した第1ブランクデータと、第2シーケンスにおいて測光部が計測した第2ブランクデータとを計測する。そして、補正部62は、第1ブランクデータと、第2ブランクデータとにおける各測定位置の相関処理に基づいて、第1ブランクデータおよび第2ブランクデータそれぞれの測定位置を揃える補正値(ずらす量)を算出し、補正値により検体データの各測定値を補正してもよい。これにより、キュベット2毎にブランク液と反応液とで相関処理を行う必要がないため、相関処理に係る処理負荷を軽減することができる。
【0066】
また、補正部62は、単一のブランクデータおよび単一の検体データを用いて相関処理を行う場合に限らず、複数のブランクデータおよび複数の検体データを用いて相関処理を行ってもよい。
【0067】
例えば、補正部62は、複数のブランクデータおよび複数の検体データの各組における補正値(ずらす量)を算出し、各補正値の統計値(平均値、最頻値、中央値等)により検体データの測定位置を補正してもよい。
【0068】
上述では、分析装置1における光学ノイズ(測光部5の測定位置のずれ)の低減方法について説明した。以下では、分析装置1における電気ノイズ(設備ノイズ)の低減方法について説明する。
【0069】
図6は、測光部5における受光素子52(フォトダイオード)が配置された基板構造を示す図である。上記したALTの吸光度は、光量が小さい340nmを用いるため、透過光の光量も小さくなり、吸光度の変化量が小さくなる。このため、ALTの信号については増幅器での増幅率を大きくする必要があるため、例えば、フォトダイオード52から増幅回路201までの接続距離が長いと距離に応じてノイズが多くなってしまう。
【0070】
そこで、本開示では、フォトダイオード52と増幅回路201との接続距離を極力短くする。具体的には、基板200は、受光素子52が受光した各波長の光の信号を波長毎に増幅する複数の増幅回路201を備える。なお、図6では、複数の増幅回路201のうち、波長が最も短い340nmの波長を増幅する増幅回路201の接続例のみを図示している。
【0071】
図6に示すように、複数の増幅回路201と受光素子52との接続距離は、340nmの波長の信号を増幅する増幅回路201が最も短くなるようにする。具体的には、複数の増幅回路201のうち、340nmの波長の信号を増幅する増幅回路201が受光素子52に最も近くなるように配置する。言い換えれば、所定値未満の波長の信号を増幅する増幅回路201の方が、所定値以上の波長の信号を増幅する増幅回路201よりも短くなるようにする。これにより、接続距離に応じて重畳する電気ノイズを抑えることができる。
【0072】
次に、図7は、測光部5の電源供給を示す図である。図7では、測光部5が有する第1基板200と、第2基板300と、第3基板400とを示している。第1基板200は、図6で示したように、受光素子52および増幅回路201が配置された基板である。第2基板300は、第1基板200から入力される信号を増幅およびAD変換を行う基板である。第3基板400は、第2基板300から入力される信号に基づいて、吸光度を算出する基板である。
【0073】
図7に示す例において、第3基板400および第1基板200は、第1バラ線500によって接続される。また、第1基板200および第2基板300は、スタッキングコネクタ510によって接続される。また、第2基板300および第3基板400は、第2バラ線520によって接続される。
【0074】
このような構成において、第3基板400は、第1基板200に対して所定の電源電圧である第1の電圧を供給する。そして、第1基板200は、第1の電圧を、第1の電圧よりも低い第2の電圧に降圧して、各種回路を動作させる。また、第1基板200は、第2の電圧に降圧した電源電圧を第2基板300へ供給する。そして、第2基板300は、第2の電圧を、さらに当該第2の電圧よりも低い第3の電圧に降圧して各種回路を動作させる。このように、本開示では、第1基板200および第2基板300が必要な電圧に自身で降圧させるレギュレータとして機能することで、第3基板400から電源電圧を供給される場合に比べて電気ノイズを低減することができる。
【0075】
次に、図8を用いて、実施形態に係る分析装置1が実行する処理の手順について説明する。図8は、実施形態に係る分析装置1が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【0076】
図8に示すように、まず、制御部6は、ブランク液をキュベット2に分注した状態でブランク液の吸光度であるブランクデータを取得する(ステップS101)。
【0077】
つづいて、制御部6は、反応液をキュベット2に分注した状態で反応液の吸光度である検体データを取得する(ステップS102)。
【0078】
つづいて、制御部6は、ブランクデータと検体データとの相関処理により測定位置の補正処理を行う(ステップS103)。
【0079】
つづいて、制御部6は、補正処理後の検体データおよびブランクデータの差分を算出することで最終的な検体データの吸光度を算出する(ステップS104)。
【0080】
つづいて、制御部6は、算出した検体データの吸光度を表示部8に表示し(ステップS105)、処理を終了する。
【0081】
以上説明したように、本開示の一実施形態によれば、分析装置1は、測光部5と、取得部61と、補正部62とを備える。測光部5は、高さ方向の一端が開口したキュベット2の幅方向における一端から他端に亘って複数の測定位置で吸光度を測定する。取得部61は、ブランク液をキュベット2に入れた状態で測光部5により測定したブランクデータと、検体と試薬とを反応させた反応液をキュベット2に入れた状態で測光部5により測定した検体データとを取得する。補正部62は、ブランクデータおよび検体データにおける各測定位置の相関処理に基づいて、ブランクデータおよび検体データそれぞれの測定位置を揃える補正を行う。これにより、分析装置1は、相関処理による測定位置の補正精度を向上させることができる。
【0082】
また、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0083】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0084】
また、本発明は上記実施形態に係る限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、処理内容を矛盾させない領域で上述の実施形態を適宜組み合わせて得られる形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述の実施形態のフローチャート及びシーケンス図に示された各ステップは、適宜順序を変更することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 分析装置
2 キュベット
2a 一端
2b 他端
3 キュベットテーブル
4 駆動部
5 測光部
5p 測光位置
6 制御部
7 記憶部
8 表示部
41 駆動ギヤ
42 従動ギヤ
43 ステッピングモータ
51 光源
52 受光素子
61 取得部
62 補正部
63 分析部
71 測光データ
200 基板
201 増幅回路
300 第2基板
400 第3基板
500 第1バラ線
510 スタッキングコネクタ
520 第2バラ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8