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特開2024-97181エンコーダ用スケール、その製造方法、その製造装置、及びエンコーダ用スケールを用いた制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097181
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】エンコーダ用スケール、その製造方法、その製造装置、及びエンコーダ用スケールを用いた制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
G01D5/347 110C
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000534
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】504345805
【氏名又は名称】株式会社 アルファー精工
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植竹 操
(72)【発明者】
【氏名】原田 佳治
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA04
2F103BA37
2F103CA01
2F103CA03
2F103DA01
2F103EA03
2F103EA05
2F103EA12
2F103EA14
2F103EA18
2F103EA21
2F103EB02
2F103EB06
2F103EB11
2F103EB18
2F103EB32
2F103EC12
2F103EC13
2F103ED01
2F103ED07
2F103ED21
2F103ED28
(57)【要約】
【課題】耐久性が良く高精度なエンコーダ用スケールを得る。
【解決手段】実施形態に係るエンコーダ用スケールは、金属を含む基材と、基材の表面に所定のパターンで設けられ、レーザー加工に基づく凹凸表面、及び凹凸表面の少なくとも一部に設けられた金属の酸化膜を有する複数の第1反射部と、第1反射部間に設けられ、凹凸表面よりも平滑な表面を有し、第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含む基材と、
前記基材の表面に所定のパターンで設けられ、レーザー加工に基づく凹凸表面、及び前記凹凸表面の少なくとも一部に設けられた前記金属の酸化膜を有する複数の第1反射部と、
前記第1反射部間に設けられ、前記凹凸表面よりも平滑な表面を有し、前記第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部と、
を備えるエンコーダ用スケール。
【請求項2】
前記基材は、前記エンコーダ用スケールを有するエンコーダが適用されたモーターのシャフトである請求項1に記載のエンコーダ用スケール。
【請求項3】
前記基材は、円板状である請求項1に記載のエンコーダ用スケール。
【請求項4】
前記第1反射部の反射率は、0~10%以下である請求項1に記載のエンコーダ用スケール。
【請求項5】
前記第2反射部の反射率は、60%以上である請求項1に記載のエンコーダ用スケール。
【請求項6】
前記第1反射部と、隣接する第1反射部とのピッチは、0.08mm~0.2mmである請求項1に記載のエンコーダ用スケール。
【請求項7】
前記金属は、ニッケル、鉄、モリブデン、鋼、またはステンレスのうち少なくとも1つを含む請求項1に記載のエンコーダ用スケール。
【請求項8】
金属を含む基材に、レーザー加工により所定のパターンで複数の第1反射部を形成する工程を含むエンコーダ用スケールの製造方法であって、
前記第1反射部には、レーザー加工により、凹凸表面と前記凹凸表面上に設けられた前記金属の酸化膜とが形成され、前記第1反射部間には、前記凹凸表面よりも平滑な表面を有し、前記第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部が設けられることを特徴とするエンコーダ用スケールの製造方法。
【請求項9】
前記基材は、エンコーダ用スケールを有するエンコーダが適用されたモーターのシャフトである請求項8に記載のエンコーダ用スケールの製造方法。
【請求項10】
前記基材は、円板状である請求項8に記載のエンコーダ用スケールの製造方法。
【請求項11】
前記第1反射部の反射率は、0~10%以下である請求項8に記載のエンコーダ用スケールの製造方法。
【請求項12】
前記第2反射部の反射率は、60%以上である請求項8に記載のエンコーダ用スケールの製造方法。
【請求項13】
前記第1反射部と、隣接する第1反射部とのピッチは、0.08mm~0.2mmである請求項8に記載のエンコーダ用スケールの製造方法。
【請求項14】
前記金属は、ニッケル、鉄、モリブデン、銅、またはステンレスのうち少なくとも1つを含む請求項8に記載のエンコーダ用スケールの製造方法。
【請求項15】
レーザー発振器を含むレーザー発振部と、
レーザー発振部からのレーザー光を所定の波長でエンコーダ用スケールのための、金属を含む基材に照射してレーザー加工し、所定のパターンで複数の第1反射部を形成する加工光学部と、
前記基材を載置するステージと、
前記レーザー発振部、前記加工光学部、及び前記ステージを制御するレーザー加工制御部とを備えるエンコーダ用スケールの製造装置。
【請求項16】
前記基材は、モーターシャフトである請求項15に記載のエンコーダ用スケールの製造装置。
【請求項17】
金属を含む基材と、
前記基材の表面に所定のパターンで設けられ、レーザー加工に基づく凹凸表面、及び前記凹凸表面に設けられた前記金属の酸化膜を有する複数の第1反射部と、
前記第1反射部間に設けられ、前記凹凸表面よりも平滑な表面を有し、前記第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部と、
を備えるエンコーダ用スケールを含むエンコーダを備えた制御装置。
【請求項18】
前記エンコーダが設けられたモーターをさらに含み、前記基材は、前記モーターのシャフトである請求項17に記載の制御装置。
【請求項19】
前記基材は、円板状であり、請求項17に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エンコーダ用スケール、その製造方法、その製造装置、及びエンコーダ用スケールを用いた制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モーターの回転速度や位相を精度よく検出する技術、及び可動物体の移動位置を精度よく検出する技術に組み込まれる機構として、エンコーダと称される機構がある。
エンコーダは、機械的な位置の変化として、回転位置または直線位置を検出装置で測定して、電気信号として位置情報を出力することができる。エンコーダには、検出装置とスケールとが用いられ、位置の検出方法により、スケールを光で検出する光学式、磁気で検出する磁気式、電磁誘導で検出する電磁誘導式などがある。
【0003】
光学式の検出装置として透過型あるいは反射型がある。透過型は、光送信器から光を出力し、スケールに定間隔で刻まれたスリットの光透過部を通過した光を光受信器で、受信する仕組みを有する。反射型は、光出力部と光受信部を含む光送受信器を有し、そして、光出力部からスケールに向けて光を出力し、スケールに定間隔で刻まれたスリットの光反射部から反射した光を光受信部で受信するという仕組みを有する。
直線と回転の位置を測定するための目盛として、直線スケール、円板スケール、及びリング状スケールなどがある。これらのエンコーダ用スケールは、例えば、エンコーダを適用するモーターの金属シャフトなどに取り付けて使用することができる。
反射型の光学式検出装置に使用されるスケールは、例えばガラス、金属板、あるいはPET等の基材に光吸収部と光反射部を形成している。金属板などの金属基材は、耐久性が良く、フォトエッチングあるいはメッキ法を使用して光吸収部と光反射部をパターン加工できる。金属基材を用いても高精度で微細なスケールを作成することが可能である。
【0004】
しかしながら、フォトエッチング及びメッキ法は、基材の洗浄、脱脂工程、レジストの露光、及び現像工程の他、メッキ工程、あるいはエッチング工程などの数多くの製造工程が必要なため効率が悪く、さらに、これらの工程から、酸や金属を含む有害な廃液が出るという課題がある。
一方、フォトエッチングあるいはメッキ法を使用することなく、スケールを設ける方法として、例えば、PETフィルムを基材としてスリットを印刷し、金属シャフト表面の一部に巻きつける方法がある。しかしながら、PETフィルムは耐久性が悪く、その巻始めと巻終わりの重なる部分のスリットの精度が良くないためエラーが出やすいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-151074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐久性が良く高精度なエンコーダ用スケールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1実施形態によれば、金属を含む基材と、
前記基材の表面に所定のパターンで設けられ、レーザー加工に基づく凹凸表面、及び前記凹凸表面の少なくとも一部に設けられた前記金属の酸化膜を有する複数の第1反射部と、
前記第1反射部間に設けられ、前記凹凸表面よりも平滑な表面を有し、前記第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部と、
を備えるエンコーダ用スケールが提供される。
【0008】
第2の実施形態によれば、金属を含む基材に、レーザー加工により所定のパターンで複数の第1反射部を形成する工程を含むエンコーダ用スケールの製造方法であって、
前記第1反射部には、レーザー加工により、凹凸表面と前記凹凸表面上に設けられた前記金属の酸化膜とが形成され、前記第1反射部間には、前記凹凸表面よりも平滑な表面を有し、前記第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部が設けられることを特徴とするエンコーダ用スケールの製造方法が提供される。
【0009】
第3実施形態によれば、レーザー発振器を含むレーザー発振部と、
レーザー発振部からのレーザー光を所定の波長でエンコーダ用スケールのための、金属を含む基材に照射してレーザー加工し、所定のパターンで複数の第1反射部を形成する加工光学部と、
前記基材を載置するステージと、
前記レーザー発振部、前記加工光学部、及び前記ステージを制御するレーザー加工制御部とを備えるエンコーダ用スケールの製造装置が提供される。
【0010】
第4実施形態によれば、金属を含む基材と、
前記基材の表面に所定のパターンで設けられ、レーザー加工に基づく凹凸表面、及び前記凹凸表面の少なくとも一部に設けられた前記金属の酸化膜を有する複数の第1反射部と、
前記第1反射部間に設けられ、前記凹凸表面よりも平滑な表面を有し、前記第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部と、
を備えるエンコーダ用スケールを含むエンコーダを備えた制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態を用いると、耐久性が良く高精度なエンコーダ用スケールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係るエンコーダ用スケールの構成を模式的に表す断面図である。
図2図1のエンコーダ用スケールの形状の一例を表す図である。
図3図2のエンコーダ用スケールの軸方向に垂直な断面を模式的に表す図である。
図4】エンコーダ用スケールの第1反射部にレーザービームが照射された状態を表す模式図である。
図5】エンコーダ用スケールの第2反射部にレーザービームが照射された状態を表す模式図である。
図6図2のスリット領域の他の一例を表す図である。
図7図1のエンコーダ用スケールの形状の他の一例を表す図である。
図8図7のエンコーダ用スケールをモーターシャフトに取り付けた様子を表わす模式図ある。
図9】第3実施形態に係るエンコーダ用スケールの製造システムの構成例を模式的に表す図である。
図10】第2実施形態に係るエンコーダ用スケールの製造方法の一例を表すフロー図である。
図11】パルス制御部の基本動作を説明するための説明図である。
図12】第4実施形態に係る制御装置の一例によるエンコーダ用スケールを使用したモーター制御システムの構成例である。
図13】第4実施形態に係る制御装置の他の一例によるエンコーダ用スケールを使用したモーター制御システムの構成例である。
図14】第1反射部と第2反射部の分光反射率を表すグラフ図である。
図15図14の第1反射部の反射率を拡大したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略することがある。
図1に、第1実施形態に係るエンコーダ用スケールの構成を模式的に表す断面図を示す。
図示するように、第1実施形態に係るエンコーダ用スケール11は、金属を含む基材10と、基材10の表面10aに所定のパターンで設けられた複数の第1反射部12と、隣接する第1反射部12との間に設けられ、凹凸表面よりも平滑な表面を有し、第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部13とを備える。第1反射部12は、レーザー加工に基づく凹凸表面12-1を有する。さらに、凹凸表面12-1上の少なくとも一部には酸化膜12-2が設けられている。この酸化膜12-2は、レーザーの加熱によりに上記基材10に用いられる金属が酸化したものである。
【0014】
使用される基材10は金属を含む。基材10の少なくとも一部が金属部材からなることができる。また、金属部材は、基材10の表面の少なくとも一部に設けることができる。
第1実施形態に係るエンコーダ用スケール11において、第1反射部12はレーザー加工により形成される。レーザー加工を用いることにより、第1反射部12及び第2反射部13を微細なピッチで作成できる。
また、第1反射部12において、基材10の表面は、レーザー加工により粗面化されて凹凸表面12-1となる。凹凸表面12-1は光を乱反射させる。凹凸表面12-1の反射率は、凹凸表面12-1よりも平滑な第2反射部13の表面13-1の反射率に対して低下され得る。
【0015】
さらに、レーザー加工により形成された凹凸表面12-1の少なくとも一部には、レーザーの加熱作用により上記金属の酸化物からなる図示しない酸化膜12-2が形成される。酸化膜12-2の表面は、酸化していない同じ金属の表面よりも、反射率が低下し得る。例えばステンレススチール(SUS)の場合、SUSの表面は光沢のある銀色であるが、SUSの酸化膜12-2は艶消しされた黒色になり、酸化していないSUSの表面よりも光吸収性が高くなる。
このように、第1反射部12では、凹凸表面12-1の形状による反射率の低下と、金属酸化膜の存在による反射率の低下により、第2反射部13の表面よりも十分に低反射加工され得る。
【0016】
図1に示すエンコーダ用スケール11では、レーザー加工に基づく第1反射部12が吸収機能(低反射機能または非反射機能)を有し、第2反射部13は反射機能を有する。
第1実施形態に係るエンコーダ用スケール11は、金属を含む基材10を使用し、レーザー加工を用いることにより、耐久性が良く高精度であり、微小な位置変位の測定が可能である。また、第1実施形態に係るエンコーダ用スケール11は、基材10にレーザー加工を行うだけで製造することが可能であり、フォトエッチングやメッキ加工のような多数の製造工程が必要ないため効率が良く、また、大量の廃液が出ないことから環境にやさしい。
【0017】
図2に、図1のエンコーダ用スケールの形状の一例を表す図を示す。
図示するように、このエンコーダ用スケール11は、例えば円柱形を有する。円柱形の基材として例えばエンコーダ用スケールを有するエンコーダが適用されたモーターのシャフト110を用いることができる。
図3は、図2のエンコーダ用スケールの軸方向に垂直な断面を模式的に表す図を示す。
【0018】
図2及び図3に示すように、基材10としてモーターのシャフト110の周面に、レーザー加工により、第1反射部12a、12b、及び12cを含む例えば10本の第1反射部12が、所定のパターンとしてエンコーダ用スケールの軸方向に平行な等間隔のストライプ形状のパターンに形成されている。互いに隣接する第1反射部12a、12b、12cを含む10本の第1反射部12の間には、それぞれ第2反射部13a、13b、13cを含む10本の第2反射部13が形成されている。10本の第1反射部12は、各々同じ幅w1,同じ長さd2を有し、10本の第2反射部13は各々幅w1と同じ幅w2、同じ長さd2を有することができる。
ここで、第1反射部12、及び第2反射部13が設けられた領域をスリット領域14と称する。スリット領域14はシャフト110端部から軸に平行な方向に距離d1だけ離れた位置に形成されている。
【0019】
図2及び図3では、説明のため10本の第1反射部12及び10本の第2反射部13を用いたが、それに限定されるものではなく、例えばシャフトの内径3~20mm例えば8mm、外径4~16mm例えば10mm、シャフトの長さ50~100mm例えば100mmであるとき、第1反射部12の幅w1及び第2反射部13の幅w2は0.04~0.5mm例えば0.04mmの微細なピッチにすることができる。また、距離d1は0.04~20mm例えば15mm、長さd2は0.5~20mm例えば15mmとすることができる。なお、これらは一例であり、シャフトを利用するシステムや環境に応じて、任意に設定してもよい。
【0020】
エンコーダ用スケール11の外回りの固定位置には、エンコーダ用スケール11から間隔をおいて、レーザービーム出力器31が配置され、例えば矢印102に示すようにレーザービームをスリット領域14に照射することができる。エンコーダ用スケール11が矢印101の方向に回転すると、スリット領域に照射されたレーザービームは、第1反射部12、及び第2反射部13を、例えば第1反射部12a、第2反射部13a、第1反射部12b、第2反射部13b、第1反射部12c、及び第2反射部13cの順に、相対的に交互にスキャンすることになる。そして、第2反射部13a、13b、13c等の第2反射部13で反射したパルス状のレーザーは、例えば矢印102に示すようにエンコーダ用スケール11の外回りの他の固定位置に配置された受光器32に入光する。なお、図に示したレーザービーム出力器31と受光器32との配置状態は、原理的な説明を行ったものであり、この構成に限定されるものではない。レーザービーム送受信システムの具体的構成は、光ディスク読み取り装置等にみられるように各種のタイプがある。
【0021】
図4は、エンコーダ用スケール11の低反射の第1反射部12aに対してレーザービームが照射された状態を示し、図5は、エンコーダ用スケール11の高反射の第2反射部13aに対してレーザービームが照射された状態を示している。第1反射部12aで反射したレーザー光は、強度が弱く(強度が弱まって)反射し、第2反射部13aで反射したレーザー光は、強度が強い状態(強度が弱まることなく)で反射する。
ここで、スケール領域に入射するレーザー光の入射角θ1(基材表面に対し垂直な方向のライン33に対する入射角θ1)は、20~40度例えば35度、出射角θ2(基材表面に対し垂直な方向のラインに対する出射角θ2)は、20~40度例えば35度にすることができる。これらの角度は、このエンコーダ用スケール11が加工されるときの条件と同じであることが望ましい。
【0022】
上記の機能により、受光器32は、第1反射部と第2反射部で反射したレーザー光を、パルス状の電気信号として成型して出力することができる。
受光器32の出力パルスは、パルスカウンタに入力し、そのカウント出力が、信号処理システムにて解析される。解析結果は、エンコーダ用スケールの回転回数データ、回転角(位相)データとして利用される。
【0023】
図6に、図2のスリット領域の他の一例を表す図である。
図示するように、このエンコーダ用スケール11-1は、スリット領域14の代わりに、所定のパターンとしてのストライプ形状が,エンコーダ用スケールの軸方向に垂直なストライプ形状に形成されたスリット領域14-1を用いること以外は図2とほぼ同様の構成を有する。
【0024】
スリット領域14-1では、基材10としてモーターのシャフト110-1の周面に、レーザー加工により、第1反射部12a’、12b’、及び12c’を含む例えば10本の第1反射部12が、エンコーダ用スケールの軸方向に垂直なストライプ形状に形成されており、互いに隣接する第1反射部12a’、12b’、12c’を含む10本の第1反射部12’の間には、それぞれ第2反射部13a’、13b’、13c’を含む10本の第2反射部13’が形成され、10本の第1反射部12’及び10本の第2反射部13’は各々同じ幅を有する。この実施形態によれば、シャフト110が軸方向へ移動するのを監視する、あるいは、シャフト110の軸方向への移動位置を監視する、或は移動位置を決める、ことが必要な場合に効果的である。
【0025】
図7は、図1のエンコーダ用スケールの形状の他の一例を表す図である。
図示するように、基材110-2として、円板状の金属部材を適用してレーザー加工を行い、円板型のエンコーダ用スケール11-2を形成することができる。エンコーダ用スケール11-2は、放射状のスリット領域14-2を有し、スリット領域14-2では、基材110-2として円板状の金属部材の一方の主面110-2aに、レーザー加工により、第1反射部12a”、12b”、及び12c”を含む例えば10本の第1反射部12”が、円板の中心から放射状に形成されており、互いに隣接する第1反射部12a”、12b”、12c”を含む10本の第1反射部12”の間には、それぞれ第2反射部13a”、13b”、13c”を含む10本の第2反射部13”’が形成されている。10本の第1反射部12”及び10本の第2反射部13”は各々同じ角度で分割されており、それぞれ同じ大きさの扇形状を有する。
【0026】
図8に、図7のエンコーダ用スケールをモーターシャフトに取り付けた様子を表す。
この場合、円板状のエンコーダ用スケール11-2をモーター211のシャフト212の一部例えば先端212a付近に一方の主面110-2aがモーター211に対し反対側になるように取り付けて使用することができる。エンコーダに用いられる検出装置は、円板状の基材110-2のスリット領域14-2が形成された主面110-2aに対向して設けることができる。エンコーダ用スケール11-2は矢印104の方向に回転させることができる。
【0027】
実施形態に用いられる第1反射部12,12’,12”の第1反射率は、0~10%にすることができる。
10%未満であるとセンサー側が低反射と認識しやすい傾向があり、10%を超えるとセンサー側が低反射と認識しにくい傾向がある。
また、実施形態に用いられる第2反射部13,13’13”の第2反射率は、60%以上%にすることができる。
60%未満であるとセンサー側が高反射と認識しにくい傾向があり、60%を超えるとセンサー側が高反射と認識しやすい傾向がある。
第1反射率12,12’,12”と第2反射率13,13’13”との差は50~90%にすることができる。
【0028】
例えば図2のスリット部14,図6のスリット部14-1においては、第1反射部と、隣接する第1反射部とのピッチは、0.08mm~0.5mmにすることができる。この範囲であると、高精度で微小な位置変位の測定が可能である。また、0.08mm未満であると、センサー側でスリットを認識しやすい傾向があり、0.5mmを超えるとセンサー側がスリットとを認識しにくい傾向がある。
例えば図7のスリット部14-2では、基材として直径4mm~20mmの円板状の金属部材を使用することができる。第1反射部と、隣接する第1反射部とのピッチは、0.08mm~0.5mmにすることができる。
【0029】
第1反射部12,12’,12”の表面粗さRa1は、例えば0.015~0.035nmにすることができる。
0.015nm未満であると、センサーから出される光が戻りやすい傾向があり、0.035nmを超えるとセンサーから出される光が乱反射によって光が戻りにくい傾向がある。
【0030】
第2反射部13,13’13”の表面粗さRa2は、例えば0.001~0.03nmにすることができる。
0.004nm未満であると、センサーから出される光が戻りやすい傾向があり、0.03nmを超えるとセンサーから出される光が乱反射によって光が戻りにくい傾向がある。
【0031】
また、第1反射部12,12’,12”の表面粗さRa1と第2反射部13,13’13”の表面粗さRa2の差は、例えば0.01~0.03nmにすることができる。この範囲であると、低反射部の反射率が低くなるという利点がある。
第1反射部12,12’,12”の表面粗さRa1と第2反射部13,13’13”の表面粗さRa2の差は、0.001nm未満であると、低反射部の反射率が10%以上となる傾向がある。
【0032】
第1反射部は、金属の酸化膜以外の領域は、第2反射部の組成と同様の組成を有することができる。
金属としては、金属単体、金属化合物、あるいは合金等を用いることができる。基材に用いられる金属部材としては、例えばSUS、ニッケル系、鉄系、モリブデン系、または銅等があげられる。合金として、例えば36Ni、42Ni、またはステンレス等があげられる。
【0033】
第1反射部の表面粗さRa1と第2反射部の表面粗さRa2は、使用される金属に応じてレーザー加工に用いられるレーザー波長を変更することにより調整することができる。また、レーザー加工に用いられるレーザー波長は、エンコーダに用いられる検出装置のレーザー波長に応じて変更することができる。
例えばエンコーダに用いられる検出装置のレーザー波長が450~950nmであり、金属部材としてSUSを使用するとき、エンコーダ用スケールを製造するためのレーザー加工に用いられるレーザー波長は、450~950nmにすることができる。
【0034】
レーザー加工に用いられるレーザー波長が450nm未満であると、反射率及び低反射部の反射率が要求されるセンサー側の要求値に満たない傾向があり、950nmを超える場合も反射率及び低反射部の反射率が要求されるセンサー側の要求値に満たない傾向がある。
また、基材として他の金属他の金属例えばニッケル、鉄、モリブデン、または銅等を使用する場合、レーザー加工に用いられるレーザー波長は、450~950nmにすることができる。
【0035】
第2反射部は鏡面加工され得る。レーザー加工前に基材表面を全体に鏡面加工することができる。あるいはレーザー加工後に第2反射部の少なくとも一部を鏡面加工することができる。
第2実施形態に係るエンコーダ用スケールの製造方法は、第1実施形態に係るエンコーダ用スケールを製造する方法の一例であり、金属を含む基材に、レーザー加工により所定のパターンで複数の第1反射部を形成する工程を含む。第1反射部には、レーザー加工により凹凸表面が設けられるとともに、凹凸表面に上記基材の金属の酸化膜が形成される。隣接する第1反射部間には、凹凸表面よりも平滑な表面を有し、前記第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部が設けられる。
【0036】
また、第3実施形態に係るエンコーダ用スケールの製造装置としての製造システムは、第2実施形態に係るエンコーダ用スケールの製造方法に適用可能な製造システムであり、レーザー発振器を含むレーザー発振部と、レーザー発振部からのレーザー光を所定の波長でエンコーダ用スケールのための基材に照射し、レーザー加工により所定のパターンで複数の第1反射部を形成する加工光学部と、基材を載置するステージと、レーザー発振部、加工光学部、及びステージを制御するレーザー加工制御部とを有する。
【0037】
図9に、第3実施形態に係るエンコーダ用スケールの製造システムの構成例を模式的に表す図を示す。
図示するように、エンコーダ用スケールの製造システム800は、レーザー加工されるエンコーダ用スケールのための金属基材110と、金属基材110を含む加工ワーク114を載置するX-Yステージ200と、レーザー発振器412を含むレーザー発振部422、及びX-Yステージ200及びレーザー発振部422と接続され、レーザー加工を制御するレーザー加工制御部416とを含む。
レーザー加工制御部416は、制御電源417と、レーザー発振部422を制御するパルス制御部421と、X-Yステージ200を制御するステージ制御部420と、レーザー発振部422からレーザ光を伝送して集光し、基材に照射する加工光学部415を制御するスキャナ制御部419と、制御電源417と接続され、各制御部を制御する主制御部418とを有する。
【0038】
基材110は、モーターシャフト用基材である。基材110は、モーター111の回転軸に取り付け具112を利用して、同軸的に取り付けられている。
モーター(例えばサーボモータ)111は、レーザー加工制御部416からの電源及びレーザー加工制御部416に設けられたステージ制御部420により回転制御される。モーター111の回転状況は、モーター111にとりつけるエンコーダ113により検知される。エンコーダ113で得られた回転検知出力は、レーザー加工制御部416に設けられたパルス制御部421に入力される。パルス制御部421は、回転検知出力を用いて、モーター111の回転速度(回転位相)を検知する。回転速度の微少な変化に応じて、ステージ制御部420により駆動電圧を微調整し、モーター111の回転速度を一定に維持している。即ち、パルス制御部421、ステージ制御部420は、モーター111のフィードバック制御ループを形成している。
【0039】
モーター111は、X-Yステージ200に配置されている。X-Yステージ200は、ステージ制御部420により加工ワーク114をX方向、X方向に垂直なY方向に移動制御・位置決め制御している。
レーザー加工制御部416では、ステージ制御部420により、X-Yステージ200の移動制御、及びモーター111の回転制御を行ないながら、パルス制御部421により光スイッチ413を制御し、レーザー光をオン(解放)オフ(遮断)制御することができる。レーザー光がオンのとき基材110表面がレーザー加工されて第2反射部が形成され、レーザー光オフ(遮断)のとき基材110表面はレーザー加工されないので第1反射部となる。これにより、図1から図3で示すように、基材110の側面の一部に第1反射部12と第2反射部13が形成され、基材110の軸方向に平行なストライプ状のスリット領域14を設けることができる。
【0040】
レーザー加工制御部416は、例えばシステム制御PC601などの外部機器と接続して制御することが可能である。
レーザーは、レーザー電源411からの電源を使用するレーザー発振器412で生成され、光スイッチ413でパルスレーザに変換される。光スイッチ413から出力されたパルスレーザは、加工光学部415により、方向変換、及び集光されて基材110表面の所定の位置に入光する。レーザー発振器412としてピコレーザー発振器を使用することができる。また、加工光学部415としてガルバノスキャナを使用することができる。ガルバノスキャナを用いると0.1~5m/秒例えば7m/秒で動作可能であり、作業効率が向上し得る。ガルバノスキャナとして水冷デジタルガルバノスキャナを使用することができる。
【0041】
上記の光スイッチ413のスイッチング周波数、パルスレーザのパルスの周期は、先に説明した第1反射部と第2反射部との繰り返しパターン(パルスデューティパターン)の作成に関係している。この時のパルスデューティを設定するための制御信号は、先のパルス制御部421から出力されている。
上記のスリット領域14が形成される様子は、CCDカメラ701により監視され、カメラ観察モニタ702において、当該様子を表示することができる。PC(パソコン)モニタ602は、システム制御PC(パソコン)601が操作されるときに、その操作の状況をモニタするためのものである。電源650は、本システムの各部で使用する電源を供給する。
【0042】
システム制御PC601は、本システムを全体的に初期設定するとき、あるいは、パラメータなどを設定するとき、或はアプリケーションをインストールするとき、アプリケーションを適用する、或は設定するときなどに、ユーザにより使用される。システム制御PC601は、パルス制御部421を制御することもできるし、パラメータを設定することもできる。
なお、冷却チラー801は、レーザー発振器412を中心とするレーザー取り扱い部、CCDカメラ701周辺を冷却し、各種の部品が熱から大きく影響を受けることを抑制している。
【0043】
図10は、第2実施形態に係るエンコーダ用スケールの製造方法の一例を表すフロー図を示す。
図示するように、第2実施形態に係るエンコーダ用スケールの製造方法では、エンコーダ用スケール基材を用意し、予め、エンコーダ用スケール基材を加工するためのレーザー条件を設定する(ST1)。次に、基材の所定のワーク位置でエンコーダ用スケール基材のレーザー加工を行う(ST2)。レーザー加工後、エンコーダ用スケール基材の加工を続けるかどうか判定し(ST3)、加工を続ける場合には、エンコーダ用スケール基材を次の所定のワーク位置に移動してエンコーダ用スケールを形成するためのレーザー加工を行い(ST2)、加工を続けない場合には、レーザー加工を終了する。
【0044】
レーザー加工は、レーザー発振器412として例えばピコレーザー発振器を使用し、ピコ秒レーザーの特性を生かすため、例えば移動速度7m/秒の速度で動作可能なガルバノスキャナで行なうことができる。
レーザー加工では、まず、基材110を含む加工ワークをワーク架台としてのX-Yステージ200に配置した後、PC画面602でワーク吸着をONしてワーク110を取り付け具112に真空吸着することができる。個々の加工品の配置位置情報を入力する。PC画面602で加工部冷却用のアシストガスを流すことができる。レーザー加工を開始し、描画加工により、所定のパターンを描画した後、加工を終了する。ここでは、基材110に熱影響が起きないように、ワーク表面に微小凹凸を形成する。加工終了後は予め設定された次のワーク位置に移動し、描画加工を繰り返して、1本の基材110に複数のエンコーダ用スケールを形成することができる。所定の回数の描画加工を終了後、X-Yステージ200は初期のワーク加工位置に移動する。エンコーダ用スケールのパターン毎に、順次基材110の切断加工を実施する。切断時には、ワーク変形が起こらないよう、高速重畳加工が行われる。切断終了後ステージをワークセット位置に戻す。ステージ動作終了後、ワーク搬出を行う。
【0045】
図11は、パルス制御部421の基本動作を説明するための説明図である。
図11の6Aは、モーター111の回転を検出しているエンコーダ113からのパルスであるものとする。図11の6Bは、パルス制御部421内のカウンタがエンコーダからのパルスをカウントし、光スイッチ413に対する制御パルス(図6の6C)を生成するタイミングを示している。6B-1はレーザー光出力オン期間、6B-2はレーザー光出力オフ期間の計数を示す。6Cは、パルス制御部421の光スイッチ413オンのときのパルスを示す。6Dは、光スイッチ413オンのときのレーザパルスを示す。
例えば加工前の基材110の1周に対して、100パルスが使用されるものと考える。ここでその中の50パルス分をレーザー光出力オン期間とすると、レーザー光出力オフ期間は、50パルス分がレーザー光出力オフ期間となる。
【0046】
さらに、オン期間を5パルスとし、オフ期間を5パルスとして、繰り返した場合、図11に示すタイミングチャートとなる。この場合、(50パルス/5パルス)=10個の低反射部(第1反射部)と(50パルス/5パルス)=10個の高反射部(第2反射部)が、加工前軸110に形成されることになる。
上記は説明を分かり易くするために簡単な数値を用いて説明した。しかし、加工前軸110の外周は、種々の外周長(直径の異なるもの)がある。そのために、タイミングを変更することなく、径の小さい加工前軸を加工する場合は、レーザパルス数を減らしても(粗に設定しても)よく、径の大きい加工前軸を加工する場合は、レーザパルス数を増やしも(密に設定しても)よい。レーザパルスの数は、種々の変形例が可能である。
【0047】
本システムにおいて、レーザー光の出力期間のオンオフを決める基準となる数値は、360度とし、この360度に偶数のパルス数(N)を割り当てて、レーザパルスの出力期間としては(N/2)パルス数、停止期間(N/2)パルス数として設計すると便利である。
なお、上記の説明では原理を分かり易くするために、エンコーダ113の出力パルスをそのまま利用した例を説明した。しかし、これにかぎらず、エンコーダ113の出力パルスを高周波発振器の同期パルスとして利用し、高周波発振器の発振パルスを例えばプログラマブル分周器で分周し、図11のパルス6Bを生成してもよい。このような構成であると、光スイッチ413のレーザー光出力オン期間に出力するパルス数として、種々の数を選択可能となる。これは低反射部の太さ(ピッチ)を変更したい場合、或は、径の異なるモーターシャフトを加工する場合に有効となる。
【0048】
上記のような各種設定は、システム制御PC601からユーザが各種パラメータを与えることにより、実現される。
上記のように作成されるエンコーダ用スケールは、加工の後、エンコーダ用スケール付モーターシャフトとして使用することができる。エンコーダ用スケールを切り離して使用することも可能である。
上記した軸110に対するレーザパルスの照射角度は、図2図4図5で説明した照射角度と同じであることが望ましい。
【0049】
本実施形態によるエンコーダ用スケールは、各種の利用分野がある。ロボットの腕や脚に使用されているモーターの軸の回動位置の検出、各種現場におけるリフト駆動モータの軸の回動位置の検出などである。
また、本実施形態によるエンコーダ用スケールは、有用な特徴を備えるものであり、レーザー加工により凹凸表面が設けられるとともに、凹凸表面に上記基材の金属の酸化膜が形成される。これにより、単なる凹凸による低反射現象のみならず酸化膜による作用も加わり、低反射が効果的に表れる。さらに、受光器に対して、高反射と低反射の光の強弱が明瞭となり、受光器の読み取りが正確となる。
【0050】
第4実施形態に係る制御装置は、第1実施形態に係るエンコーダ用スケールを適用した制御装置であり、金属を含む基材と、基材の表面に所定のパターンで設けられ、レーザー加工に基づく凹凸表面、及び凹凸表面に設けられた金属の酸化膜を有する複数の第1反射部と、第1反射部間に設けられ、凹凸表面よりも平滑な表面を有し、第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部とを含むエンコーダ用スケールを有するエンコーダを備える。
【0051】
図12は、第4実施形態に係る制御装置の一例によるエンコーダ用スケールを使用したモーター制御システムの構成例を示している。
モーター制御システム600において、100はエンコーダであり、スケール11、検出装置300を含む。スケール11は、モーターシャフト110の一部であり、モーター600により回転駆動される。検出装置300は、電源301、光送受信器302、増幅器303、パルス処理回路304を含む。
スケール11は、例えばモーター600のモーターシャフト110の端部より少し内側の周面に直接形成されており、その周面には、モーターシャフト110の軸方向に平行な等間隔のストライプ形状のパターンに第2反射部としての光反射部(高反射部)と第1反射部としての光吸収部(低反射部)とが交互に配置されている。
【0052】
光送受信器302は、例えばLED(或いはレーザ)からの光をハーフミラー(プリズム)、レンズを介して前記回転面に照射し、この回転面から反射してきた光をハーフミラー(プリズム)を介して受光素子で受ける。受光素子から出力した検出信号(光電変換パルス)は、増幅器303にて増幅され、パルス処理回路304に入力する。
パルス処理回路304は、検出信号の波形整形、計数、計数値変化の検出、計数値のアナログ変換などを行い、必要とされる信号(或いはデータ;エンコーダ用スケールに対する光送受信器の相対位置データ)をモーター制御装置500に与える。モーター制御装置500は、受け取った信号(或いはデータ)を制御プログラムに従って処理し、モーター600の回転速度の増減、停止などを実施する。
上記エンコーダ100において、光送受信器302は、モーターシャフト110のスケール11のモーター側、端部側へ移動できるように構成されていてもよい。
【0053】
図13は、第4実施形態に係る制御装置の他の一例によるエンコーダ用スケールを使用したモーター制御システムの構成例を示している。
図示するように、モーター制御システム601において、100-1はエンコーダであり、モーターシャフトの一部であるスケール11の代わりに、モーターシャフトに直接取り付け可能な回転盤のスケール11-2を用いること、スケール11-2は、その回転面には、放射状に第2反射部としての光反射部(高反射部)と第1反射部としての光吸収部(低反射部)とが交互に配置されていること以外は、図12のモーター制御システム601と同様の構成を有する。
【0054】
実験例
以下に、実施形態に使用される第1反射部と、第2反射部の反射率に関する実験例を示す。
まず、20mm×20mm、厚さ0.1mmの大きさのSUS板を2枚用意した。
次に、1枚のSUS板の一方の面の全面をレーザー加工により荒らして、表面粗さRaが0.046の第1反射部としての低反射部を作成した。また、もう1枚の未加工のSUS板の一方の面を第2反射部としての高反射部とした。
続いて、第1反射部と第2反射部について、それぞれ島津製作所製 ダブルビーム方式 紫外可視近赤外分光光度計 SolidSpec-3700DUVを用いて、分光反射率(正反射率)を各々3回ずつ測定した。このとき、入射角θは25°、入射光は45°偏光とした。反射率は、3回の反射率の測定値の平均値とした。その結果、第2反射部の反射率は、可視光の範囲で、58.0~69.1%であり、第1反射部の反射率は、0.4~1.1%であった。
【0055】
得られた結果に基づいて、波長に対する反射率を表すグラフを作成した。
図14に、第1反射部と第2反射部の分光反射率を表すグラフ図を示す。
また、図15に、図14の第1反射部の反射率を拡大したグラフ図を示す。
図中、501は第2反射部の場合、502は第1反射部の場合をそれぞれ示す。
図示するように、レーザー加工に基づく凹凸表面、及び凹凸表面の少なくとも一部に設けられた金属の酸化膜を有する第1反射部は0.4~1.1%で、第1反射部の反射率よりも高い反射率を有する第2反射部は58.0~69.1%で、それぞれ安定した反射率を示すことがわかった。
【0056】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の各実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。また、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施形態及び各変形例で挙げた構成を取捨選択すること、及び他の構成に適宜変更することが可能である。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
10…基材、11,11-1,11-2…エンコーダ用スケール、12,12a,12b,12c…第1反射部、13,13a,13b,13c…第2反射部、14…スリット領域、31…レーザービーム出力器、32…受光器、
110…加工前軸、111…モーター、112…取り付け具、
200…X-Yステージ、201…Xステージ、202…Yステージ、221…軸受け、223…Xステージ駆動モーター、
411…レーザー電源、412…レーザー発振器、413…光スイッチ、414…光路変換器、415…レンズ、
500…パルス制御装置、550…モータドライバ、
601…システム制御PC、602…PCモニタ、
701…CCDカメラ、702…カメラ観察モニタ、800…エンコーダ用スケールの製造システム、600,601…モーター制御システム、801…冷却チラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15