(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097185
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】粒子線照射システムおよびX線撮影装置配置方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 H
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000539
(22)【出願日】2023-01-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】龍頭 啓充
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC05
4C082AE03
4C082AG53
4C082AJ07
4C082AL07
4C082AP12
4C082AP13
(57)【要約】
【課題】照射ノズルの位置が変化してもX線画像の撮影の邪魔にならず、かつX線撮影装置を含めた粒子線照射システム全体の小型化を図る。
【解決手段】粒子線照射システム1は、照射ノズル10とX線撮影装置4とを備え、一方のX線管20Aと一方のフラットパネルディテクタ21Aとを結ぶ第1仮想線L1と、他方のX線管20Bと他方のフラットパネルディテクタ21Bとを結ぶ第2仮想線L2とを規定した場合に、第1仮想線L1および第2仮想線L2がアイソセンタCで交差し、かつ、第1仮想線L1および第2仮想線L2が照射ノズル10の移動の軌跡に重ならない位置に、全てのX線管20A,20Bと全てのフラットパネルディテクタ21A,21Bが配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソセンタを中心として前記アイソセンタから等距離の位置を周方向に移動し、前記周方向に移動する範囲が240度以下であり、前記アイソセンタに対する荷電粒子ビームの照射方向を変更可能な照射ノズルと、
少なくとも2つのX線管および少なくとも2つのフラットパネルディテクタで前記アイソセンタに配置された被写体のX線画像を撮影するX線撮影装置と、
を備え、
一方の前記X線管と一方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第1仮想線と、
他方の前記X線管と他方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第2仮想線と、
を規定した場合に、
前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記アイソセンタで交差し、かつ、前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記照射ノズルの移動の軌跡に重ならない位置に、全ての前記X線管と全ての前記フラットパネルディテクタが配置されている、
粒子線照射システム。
【請求項2】
前記アイソセンタを通る軸であって前記照射ノズルの前記周方向の移動の中心軸を規定した場合に、前記第1仮想線と前記第2仮想線を含む仮想面が、前記中心軸を含む面である、
請求項1に記載の粒子線照射システム。
【請求項3】
前記照射ノズルが移動する円弧を含む面で前記被写体が配置される領域を2つに分けた場合に、
一方の前記領域に、一方の前記X線管と他方の前記フラットパネルディテクタが設けられており、
他方の前記領域に、他方の前記X線管と一方の前記フラットパネルディテクタが設けられている、
請求項2に記載の粒子線照射システム。
【請求項4】
移動アームにより支持され、前記被写体を載置した状態で移動し、前記被写体を前記アイソセンタに配置する移動載置台を備え、
前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記移動アームに重ならない位置に、全ての前記X線管と全ての前記フラットパネルディテクタが配置されている、
請求項2に記載の粒子線照射システム。
【請求項5】
前記アイソセンタを通る軸であって前記X線撮影装置の前記周方向の移動の中心軸を規定した場合に、前記第1仮想線と前記第2仮想線を含む仮想面が、前記中心軸を横断する面である、
請求項1に記載の粒子線照射システム。
【請求項6】
前記照射ノズルが移動する円弧を含む面で前記被写体が配置される領域を2つに分けた場合に、
一方の前記領域に、全ての前記X線管が設けられており、
他方の前記領域に、全ての前記フラットパネルディテクタが設けられている、
請求項5に記載の粒子線照射システム。
【請求項7】
前記第1仮想線と前記第2仮想線を含む仮想面が、前記照射ノズルが移動する円弧を含む面であり、
前記照射ノズルが移動する範囲が、前記第1仮想線と前記第2仮想線のなす角の範囲内となっている、
請求項1に記載の粒子線照射システム。
【請求項8】
アイソセンタを中心として前記アイソセンタから等距離の位置を周方向に移動し、前記周方向に移動する範囲が240度以下であり、前記アイソセンタに対する荷電粒子ビームの照射方向を変更可能な照射ノズルと、
少なくとも2つのX線管および少なくとも2つのフラットパネルディテクタで前記アイソセンタに配置された被写体のX線画像を撮影するX線撮影装置と、
が設けられており、
一方の前記X線管と一方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第1仮想線と、
他方の前記X線管と他方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第2仮想線と、
を規定した場合に、
前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記アイソセンタで交差し、かつ、前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記照射ノズルの移動の軌跡に重ならない位置に、全ての前記X線管と全ての前記フラットパネルディテクタを配置する、
X線撮影装置配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、粒子線照射技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照射ノズルの照射方向を変更するための回転ガントリに、X線撮影装置が支持され、回転ガントリの回転方向とともにX線撮影装置が回転し、X線画像の撮影方向を変更する技術が知られている。回転ガントリにX線撮影装置が支持されることで、任意の撮影方向から患者のX線画像が撮影可能であるが、回転ガントリは、大型な装置であり、配置場所が限られるばかりか、建設コストが嵩んでしまう。そこで、粒子線照射システムの小型化が求められている。
【0003】
また、回転ガントリが360度の全周に亘って回転せずに、その回転範囲が225度以下の所謂ハーフ回転ガントリが知られている。しかし、このようなハーフ回転ガントリは、X線撮影装置を支持する構成が無く、X線管およびフラットパネルディテクタが床面および天井に固定されている。そのため、照射ノズルが移動したときに、X線撮影装置の撮影範囲に照射ノズルが重なり、X線画像の撮影ができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0067468号明細書
【特許文献2】国際公開第2013/093020号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、照射ノズルの位置が変化してもX線画像の撮影の邪魔にならず、かつX線撮影装置を含めた粒子線照射システム全体の小型化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る粒子線照射システムは、アイソセンタを中心として前記アイソセンタから等距離の位置を周方向に移動し、前記周方向に移動する範囲が240度以下であり、前記アイソセンタに対する荷電粒子ビームの照射方向を変更可能な照射ノズルと、少なくとも2つのX線管および少なくとも2つのフラットパネルディテクタで前記アイソセンタに配置された被写体のX線画像を撮影するX線撮影装置と、を備え、一方の前記X線管と一方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第1仮想線と、他方の前記X線管と他方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第2仮想線と、を規定した場合に、前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記アイソセンタで交差し、かつ、前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記照射ノズルの移動の軌跡に重ならない位置に、全ての前記X線管と全ての前記フラットパネルディテクタが配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、照射ノズルの位置が変化してもX線画像の撮影の邪魔にならず、かつX線撮影装置を含めた粒子線照射システム全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の粒子線照射システムを示すブロック図。
【
図2】第1実施形態のノズル支持装置を示す正面図。
【
図3】第1実施形態のノズル支持装置を示す側面図。
【
図4】第2実施形態のノズル支持装置を示す正面図。
【
図5】第2実施形態のノズル支持装置を示す側面図。
【
図6】第3実施形態のノズル支持装置を示す正面図。
【
図7】第3実施形態のノズル支持装置を示す側面図。
【
図8】第4実施形態のノズル支持装置を示す正面図。
【
図9】第4実施形態のノズル支持装置を示す側面図。
【
図10】第5実施形態のノズル支持装置を示す正面図。
【
図11】第5実施形態のノズル支持装置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、粒子線照射システムおよびX線撮影装置配置方法の実施形態について詳細に説明する。まず、第1実施形態について
図1から
図3を用いて説明する。
【0010】
図1の符号1は、第1実施形態の粒子線照射システムである。この粒子線照射システム1は、治療用放射線としての炭素イオンなどの荷電粒子ビームB(
図3)を患者Pの病巣組織(がん)に照射して治療を行う所謂粒子線がん治療装置である。
【0011】
粒子線照射システム1を用いた放射線治療技術は、重粒子線がん治療技術などとも称される。この技術は、がん病巣(患部)を炭素イオンがピンポイントで狙い撃ちし、がん病巣にダメージを与えながら、正常細胞へのダメージを最小限に抑えることが可能とされる。なお、荷電粒子ビームBは、ヘリウム原子より重い重粒子線と定義される。
【0012】
重粒子線を用いるがん治療では、従来のエックス線、ガンマ線、陽子線を用いたがん治療と比較してがん病巣を殺傷する能力が高く、患者P(
図3)の体の表面では放射線量が弱く、がん病巣において放射線量がピークになる特性を有している。そのため、照射回数と副作用を少なくすることができ、治療期間をより短くすることができる。
【0013】
例えば、荷電粒子ビームB(
図3)は、患者Pの体内を通過する際に運動エネルギーを失って速度が低下するとともに、速度の二乗にほぼ反比例する抵抗を受け、ある一定の速度まで低下すると急激に停止する。この荷電粒子ビームBの停止点はブラッグピークと呼ばれ、高エネルギーが放出される。粒子線照射システム1は、このブラッグピークを患者Pの病巣組織(患部)の位置に合わせることにより、正常組織のダメージを抑えつつ、病巣組織のみを死滅させることができる。
【0014】
図1に示すように、粒子線照射システム1は、ビーム照射装置2とノズル支持装置3とX線撮影装置4と制御装置5とを備える。
【0015】
ビーム照射装置2は、イオン発生器とビーム輸送ラインとハーフ回転ガントリとを備える。これらは陽子線照射装置などで用いられるイオン発生器とビーム輸送ラインとハーフ回転ガントリと同様の構成であり、従来公知のものであるため図示を省略する。なお、イオン発生器には、イオン源と線形加速器と円形加速器などが含まれることがある。
【0016】
例えば、イオン発生器(図示略)は、荷電粒子である炭素イオンのイオン源を有し、この炭素イオンによって荷電粒子ビームBが生成される。線形加速器(図示略)は、平面視で直線状を成し、イオン源で発生させたイオンを加速して荷電粒子ビームBとする。そして、線形加速器は、この荷電粒子ビームBを円形加速器(図示略)に導入する。
【0017】
円形加速器は、シンクロトロンまたはシンクロサイクロトロンであり、平面視でリング状を成し、荷電粒子ビームBをさらに加速する。ここで、荷電粒子ビームBは、円形加速器を約百万回周回する間に光速の約70%まで加速される。そして、円形加速器で加速された荷電粒子ビームBが、ビーム輸送ライン(図示略)によりハーフ回転ガントリ(図示略)まで輸送される。なお、円形加速器は、サイクロトロンの場合もある。
【0018】
粒子線照射システム1には、イオン発生器からハーフ回転ガントリまで一体的に延びる真空ダクト(図示略)が設けられている。この真空ダクトの内部が真空にされ、荷電粒子ビームBを導く輸送経路が形成されている。
【0019】
ハーフ回転ガントリは、その回転の軸が水平方向を向くように設けられ、この水平軸を中心として回転するものである。ハーフ回転ガントリは、ビーム輸送ラインから続く真空ダクトの一部と、輸送経路を形成する偏向電磁石および収束電磁石を回転可能に支持する。
【0020】
このハーフ回転ガントリは、全周回転型の回転ガントリと比較して小型の装置である。一般的な全周回転型の回転ガントリは、360度の全周に亘って回転するものであるが、ハーフ回転ガントリは、その回転範囲が全周の3分の2以下(240度以下)の装置を示す。本実施形態のハーフ回転ガントリは、その回転範囲が180度の装置となっている。
【0021】
真空ダクトは、まず、ハーフ回転ガントリの端部からその水平軸に沿って導かれる。そして、真空ダクトは、ハーフ回転ガントリの水平軸から一旦離れた後、水平軸に対して垂直な方向に向けられる。この真空ダクトの先端部が配置される照射ノズル10(
図2)は、患者Pに近接する位置に設けられている。
【0022】
図3に示すように、ノズル支持装置3は、照射ノズル10を周方向に移動可能に支持する装置である。X線撮影装置4は、撮影用放射線としてのX線を用いて、被写体としての患者PのX線画像を撮影する装置である。X線撮影装置4により取得したX線画像は、荷電粒子ビームBの照射前に行われる患者Pの位置決めに用いられる。また、X線画像は、荷電粒子ビームBの照射時に患部(内臓)の動き(動体)を追跡することに用いられる。
【0023】
図1に示すように、制御装置5は、ビーム照射装置2とノズル支持装置3とX線撮影装置4とを制御する。この制御装置5の各構成は、必ずしも1つのコンピュータに設ける必要はない。例えば、1つの制御装置5が、ネットワークで互いに接続された複数のコンピュータで実現されてもよい。さらに、ビーム照射装置2とノズル支持装置3とX線撮影装置4とがそれぞれ別個のコンピュータで制御されてもよい。
【0024】
本実施形態の制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。
【0025】
制御装置5の処理回路は、例えば、CPU、GPU、専用または汎用のプロセッサを備える回路である。このプロセッサは、制御装置5の記憶部に記憶した各種のプログラムを実行することにより各種の機能を実現する。また、処理回路は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアで構成されてもよい。これらのハードウェアによっても各種の機能を実現することができる。また、処理回路は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組み合わせて、各種の機能を実現することもできる。
【0026】
なお、本実施形態では、制御装置5が自動的に各種の装置を制御する態様を例示するが、その他の態様でもよい。例えば、制御装置5は、粒子線照射システム1のユーザ(管理者)の入力操作を受け付けて各種の装置を制御するようにしてもよい。つまり、制御装置5は、ユーザの手動操作により各種の装置を制御するための遠隔操作装置でもよい。
【0027】
次に、ノズル支持装置3とX線撮影装置4について
図2から
図3を用いて説明する。なお、
図3の紙面右側を正面側として説明する。
【0028】
図2に示すように、照射ノズル10は、ハーフ回転ガントリ(図示略)に支持された真空ダクト(図示略)の先端側に設けられている。この照射ノズル10は、荷電粒子ビームBを患者Pに向けて出射する部分である。
【0029】
照射ノズル10には、スキャニング電磁石(図示略)が設けられている。スキャニング電磁石は、荷電粒子ビームBの進行方向をZ方向とした場合に、この荷電粒子ビームBを、X方向に偏向走査するX偏向走査磁石とY方向に偏向走査するY偏向走査磁石とを有している。そして、スキャニング電磁石は、荷電粒子ビームBを制御することで、細い荷電粒子ビームBを患者Pの患部の形状に合致させて走査することができる。つまり、照射ノズル10から照射される荷電粒子ビームBは、進行方向に対して直交する2方向(X方向およびY方向)の所定の走査範囲に亘って走査される。また、照射ノズル10には、線量モニタ、位置モニタ、レンジシフタ、リッジフィルタなどが設けられてもよい。
【0030】
患者Pが配置される治療室には、荷電粒子ビームBが最も集中して照射される位置であるアイソセンタCが設定されている。治療開始前には、X線撮影装置4で撮影したX線画像などで患者Pの患部の位置を確認しつつ、患部がアイソセンタCに配置される。
【0031】
照射ノズル10は、アイソセンタCを中心としてアイソセンタCから等距離の位置を周方向に移動する。なお、アイソセンタCを通る軸であって照射ノズル10の周方向の移動の中心軸Hを規定した場合、この中心軸Hは、ハーフ回転ガントリの回転の中心である水平軸と一致している。なお、荷電粒子ビームBは、照射ノズル10から中心軸Hに対して直交する方向に照射される。
【0032】
図3に示すように、照射ノズル10は、アイソセンタCを中心として、その周方向に移動する範囲が180度に設定されている。例えば、荷電粒子ビームBを水平方向に照射するときの照射ノズル10の位置を0度とした場合、+90度から-90度の範囲に亘って照射ノズル10が移動可能となっている。
【0033】
照射ノズル10が移動する範囲内であれば、アイソセンタCに対する荷電粒子ビームBの照射方向が変更可能となっている。例えば、照射ノズル10が+90度の位置にあるときに、荷電粒子ビームBが患者Pの直上から照射される。また、照射ノズル10が-90度の位置にあるときに、荷電粒子ビームBが患者Pの直下から照射される。
【0034】
被写体としての患者Pは、治療室に設けられた移動載置台11に載置される。この移動載置台11は、移動アーム12により支持され、患者Pを載置した状態で移動し、患者Pの患部をアイソセンタCに配置する。この移動載置台11の移動によって患者Pを荷電粒子ビームBの照射位置に移動させて位置合わせを行うことができる。そのため、患者Pの病巣組織に最適な精度で荷電粒子ビームBを照射することができる。なお、移動載置台11と移動アーム12は、制御装置5(
図1)により制御されている。
【0035】
患者Pは、アイソセンタCの位置に配置され、ハーフ回転ガントリ(図示略)を回転させることで、静止している患者Pを中心として照射ノズル10を回転させることができる。また、患者Pの向きを変更し、かつ照射ノズル10を回転させることで、患者Pの周囲のいずれの方向からも荷電粒子ビームBを照射させることができる。そのため、患者Pの負担を軽減しつつ、最適な方向から荷電粒子ビームBを正確に患部に照射することができる。
【0036】
また、X線撮影装置4は、ノズル支持装置3に支持されている。このX線撮影装置4は、アイソセンタCに配置された患者PのX線画像を撮影することができる。このようにすれば、照射ノズル10を支持するノズル支持装置3を、X線撮影装置4を支持する装置として兼用することができる。
【0037】
なお、ノズル支持装置3は、ハーフ回転ガントリ(図示略)の先端側の一部を支持する装置である。このようにすれば、ハーフ回転ガントリの先端側に在る照射ノズル10が、ノズル支持装置3に案内され、周方向に移動可能な状態で安定的に支持される。
【0038】
図2から
図3に示すように、X線撮影装置4は、2つのX線管20と2つのフラットパネルディテクタ21とを備える。例えば、一方のX線管20Aから出射されたX線は、一方のフラットパネルディテクタ21Aで検出される。他方のX線管20Bから出射されたX線は、他方のフラットパネルディテクタ21Bで検出される。
【0039】
ノズル支持装置3は、固定フレーム30と支持アーム31とC字レール32とノズル基部33とを備える。
【0040】
固定フレーム30は、支持アーム31およびC字レール32を床面Fに固定する部材である。例えば、固定フレーム30は、正面視で矩形状を成し、側面視でC字形状(U字形状)に切り欠かれた開口を有する部材である。この開口に患者Pが配置される。この固定フレーム30の中央部には、1本のC字レール32が設けられている。
【0041】
C字レール32は、側面視でC字形状(U字形状)を成し、周方向に沿って延びる部材である。ノズル基部33は、C字レール32を介して固定フレーム30に支持されている。このノズル基部33は、照射ノズル10を支持している部材である。ノズル基部33および照射ノズル10は、C字レール32に沿って移動する部材である。また、理解を助けるために図示を簡略化しているが、C字レール32は、荷電粒子ビームBの通過経路を確保したまま、ノズル基部33および照射ノズル10を移動させる構造を有している。
【0042】
なお、ノズル支持装置3は、ノズル基部33および照射ノズル10をC字レール32に沿って移動させるための駆動モータ(図示略)を備える。この駆動モータは、制御装置5により制御される。
【0043】
なお、固定フレーム30が、治療室の床、壁、天井と一体的なデザイン(色彩)にされ、かつ化粧板で覆われてもよい。このようにすれば、ノズル支持装置3を構成する部材が患者Pから見えないようになる。つまり、ノズル支持装置3が目隠しの機能を有してもよい。
【0044】
移動載置台11は、C字レール32の開いている部分から患者P(被写体)を進入させてアイソセンタCに配置することができる。例えば、
図3の矢印Dの方向から、患者Pを載せた移動載置台11を進入させることができる。このようにすれば、患者Pを適切な方向から進入させてアイソセンタCに配置することができる。
【0045】
なお、患者Pは、その身長の方向に沿って延びる体軸が中心軸Hの向きと一致するように配置される。また、患者Pの体軸は、中心軸Hの向きと一致しなくてもよい。例えば、患者Pの頭頂部が照射ノズル10に向けられた状態で配置されてもよい。さらに、患者Pの配置は、頭と足の位置が図示した向きと逆向きであってもよい。荷電粒子ビームBが照射される患部の位置に応じて、患者Pの配置が適宜変更されてもよい。
【0046】
支持アーム31は、固定フレーム30の両側部の上下に設けられている。つまり、1つの固定フレーム30の4箇所に支持アーム31が設けられている。上部側の支持アーム31には、フラットパネルディテクタ21が設けられている。下部側の支持アーム31には、X線管20が設けられている。
【0047】
第1実施形態では、それぞれのX線管20の直上に、それぞれのフラットパネルディテクタ21が配置されている。
【0048】
なお、上部側の支持アーム31に、X線管20が設けられるとともに、下部側の支持アーム31に、フラットパネルディテクタ21が設けられてもよい。
【0049】
また、固定フレーム30における一方の側部(
図2の紙面左側)の上下の支持アーム31に、X線管20が設けられるとともに、他方の側部(
図2の紙面右側)の上下の支持アーム31に、フラットパネルディテクタ21が設けられてもよい。
【0050】
ここで、一方のX線管20Aと一方のフラットパネルディテクタ21Aとを結ぶ線を第1仮想線L1と規定する。他方のX線管20Bと他方のフラットパネルディテクタ21Bとを結ぶ線を第2仮想線L2と規定する。この場合、第1仮想線L1および第2仮想線L2がアイソセンタCで交差している。
【0051】
また、第1仮想線L1および第2仮想線L2が照射ノズル10の移動の軌跡に重ならない位置に、全てのX線管20と全てのフラットパネルディテクタ21が配置されている。ここで、照射ノズル10の移動の軌跡とは、C字レール32が延びる方向であって、照射ノズル10が周方向に移動したときの円弧状を成す軌跡のことである。
【0052】
なお、第1仮想線L1および第2仮想線L2がアイソセンタCで交差するときの角度は、照射ノズル10と重ならないようになる角度であればいずれの角度でもよい。本実施形態では、第1仮想線L1および第2仮想線L2が交差する角度が、10度以上、170度以下の範囲となっている。
【0053】
また、第1仮想線L1と第2仮想線L2を含む仮想面Vが、照射ノズル10の周方向の移動の中心軸Hを含む面となっている。つまり、中心軸Hが仮想面Vに沿って延びている。このようにすれば、照射ノズル10の移動の軌跡を避けつつ、適切な位置に、全てのX線管20と全てのフラットパネルディテクタ21を配置することができる。
【0054】
さらに、照射ノズル10が移動する円弧を含む面であって中心軸Hに直角に交差する横断面Qを規定する。この横断面Qは、アイソセンタCを含む面であり、アイソセンタCの部分で中心軸Hと直角に交差している。
【0055】
ここで、横断面Qで患者P(被写体)が配置される領域を第1領域R1と第2領域R2の2つに分けたとする。この場合に、一方の領域である第1領域R1に、一方のX線管20Aと他方のフラットパネルディテクタ21Bが設けられている。他方の領域である第2領域R2に、他方のX線管20Bと一方のフラットパネルディテクタ21Aが設けられている。
【0056】
特に、粒子線照射システム1の製造時において、本実施形態のX線撮影装置配置方法を適用し、X線管20およびフラットパネルディテクタ21を配置することで、運用時に照射ノズル10の位置が変化してもX線画像の撮影の邪魔にならずに済む。なお、粒子線照射システム1を製造(生産)する方法に、本実施形態のX線撮影装置配置方法が含まれている。
【0057】
第1実施形態では、患者Pの体軸が中心軸Hの向きと一致するように配置されている場合において、患者Pの体軸の両方向、例えば、患者Pの頭側から足側へ、または足側から頭側へ向かってX線画像を撮影することができる。人間の内臓の位置関係は左右非対称な場合が多く、患者Pの体軸の両方向からX線画像を撮影することで、内臓が写るX線画像を医師が確認した場合に、患者Pの体の上下方向、前後方向、左右方向の位置関係が把握し易くなる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図4から
図5を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図5の紙面右側を正面側として説明する。
【0059】
第2実施形態のノズル支持装置3Aは、側面視(
図5)において、上部側の支持アーム31が正面側にずれて配置され、下部側の支持アーム31が背面側にずれて配置されている。そして、上部側の支持アーム31には、フラットパネルディテクタ21が設けられている。下部側の支持アーム31には、X線管20が設けられている。
【0060】
第2実施形態では、それぞれのフラットパネルディテクタ21が正面側にずれて配置され、それぞれのX線管20が背面側にずれて配置されている。つまり、それぞれのX線管20の直上よりも正面側の位置に、それぞれのフラットパネルディテクタ21が配置されている。
【0061】
なお、上部側の支持アーム31に、X線管20が設けられるとともに、下部側の支持アーム31に、フラットパネルディテクタ21が設けられてもよい。
【0062】
また、固定フレーム30における一方の側部(
図4の紙面左側)の上下の支持アーム31に、X線管20が設けられるとともに、他方の側部(
図4の紙面右側)の上下の支持アーム31に、フラットパネルディテクタ21が設けられてもよい。
【0063】
ここで、第1仮想線L1および第2仮想線L2がアイソセンタCで交差している。また、第1仮想線L1および第2仮想線L2が照射ノズル10の移動の軌跡に重ならない位置に、全てのX線管20と全てのフラットパネルディテクタ21が配置されている。さらに、第1仮想線L1と第2仮想線L2を含む仮想面Vが、照射ノズル10の周方向の移動の中心軸Hを含む面となっている。
【0064】
第2実施形態では、中心軸Hを含む仮想面Vが、前述の第1実施形態とは異なり垂直方向に延びず、任意の角度で傾いている。中心軸Hを含む仮想面Vが傾くことにより、第1仮想線L1および第2仮想線L2が移動アーム12に重ならない。なお、任意の角度は、移動アーム12と重ならないようになる角度であればいずれの角度でもよい。第2実施形態では、この任意の角度が、10度以上、90度以下の範囲となっている。
【0065】
そして、第1仮想線L1および第2仮想線L2が移動アーム12に重ならない位置に、全てのX線管20と全てのフラットパネルディテクタ21が配置されている。このようにすれば、移動アーム12がX線画像の撮影の邪魔にならず、かつ、患者Pを適切にアイソセンタCに配置することができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図6から
図7を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図7の紙面右側を正面側として説明する。
【0067】
第3実施形態のノズル支持装置3Bは、正面視(
図6)において、下部側の支持アーム31が固定フレーム30における一方の側部(紙面左側)に設けられ、上部側の支持アーム31が固定フレーム30における他方の側部(紙面右側)に設けられている。つまり、1つの固定フレーム30の2箇所に支持アーム31が設けられている。
【0068】
そして、上部側の支持アーム31には、2つのフラットパネルディテクタ21が設けられている。下部側の支持アーム31には、2つのX線管20が設けられている。
【0069】
なお、上部側の支持アーム31に、X線管20が設けられるとともに、下部側の支持アーム31に、フラットパネルディテクタ21が設けられてもよい。また、上部側の支持アーム31にX線管20およびフラットパネルディテクタ21が1つずつ設けられるとともに、下部側の支持アーム31にX線管20およびフラットパネルディテクタ21が1つずつ設けられてもよい。
【0070】
ここで、第1仮想線L1および第2仮想線L2がアイソセンタCで交差している。また、第1仮想線L1および第2仮想線L2が照射ノズル10の移動の軌跡に重ならない位置に、全てのX線管20と全てのフラットパネルディテクタ21が配置されている。
【0071】
第3実施形態では、第1仮想線L1と第2仮想線L2を含む仮想面Vが、照射ノズル10の周方向の移動の中心軸Hを横断する面となっている。つまり、第1仮想線L1と第2仮想線L2を含む仮想面Vが、患者Pの体軸を横断する面となっている。このようにすれば、患者P(被写体)の身長の方向に沿って延びる体軸の周囲から患者PのX線画像を撮影することができる。
【0072】
さらに、照射ノズル10が移動する円弧を含む横断面Qは、正面視(
図6)で垂直方向に延びる面となっているが、仮想面Vは、横断面Qよりも任意の角度で傾いている。仮想面Vが傾くことにより、第1仮想線L1および第2仮想線L2が移動アーム12に重ならない。なお、任意の角度は、移動アーム12と重ならないようになる角度であればいずれの角度でもよい。第3実施形態では、この任意の角度が、10度以上、90度以下の範囲となっている。
【0073】
また、横断面Qで患者P(被写体)が配置される領域を第1領域R1と第2領域R2の2つに分けたとする。そして、一方の領域である第1領域R1に、患者Pの頭が配置され、他方の領域である第2領域R2に、患者Pの足が配置されている。つまり、患者Pの上半身と下半身が横断面Qで分けられているとする。
【0074】
この場合に、第1領域R1に、全てのX線管20が設けられており、第2領域R2に、全てのフラットパネルディテクタ21が設けられている。このようにすれば、全てのX線管20が互いに近接して設けられ、かつ全てのフラットパネルディテクタ21が互いに近接して設けられるため、これらの機器の支持および配線の構成を簡素化することができる。
【0075】
なお、第1領域R1に、全てのフラットパネルディテクタ21が設けられるとともに、第2領域R2に、全てのX線管20が設けられてもよい。
【0076】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について
図8から
図9を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図9の紙面右側を正面側として説明する。
【0077】
第4実施形態のノズル支持装置3Cは、正面視(
図8)において、上部側の支持アーム31が固定フレーム30における一方の側部(紙面左側)に設けられ、下部側の支持アーム31が固定フレーム30における他方の側部(紙面右側)に設けられている。つまり、1つの固定フレーム30の2箇所に支持アーム31が設けられている。
【0078】
そして、上部側の支持アーム31には、2つのフラットパネルディテクタ21が設けられている。下部側の支持アーム31には、2つのX線管20が設けられている。
【0079】
なお、上部側の支持アーム31に、X線管20が設けられるとともに、下部側の支持アーム31に、フラットパネルディテクタ21が設けられてもよい。また、上部側の支持アーム31にX線管20およびフラットパネルディテクタ21が1つずつ設けられるとともに、下部側の支持アーム31にX線管20およびフラットパネルディテクタ21が1つずつ設けられてもよい。
【0080】
第4実施形態では、前述の第3実施形態と同様に、第1仮想線L1および第2仮想線L2がアイソセンタCで交差している。また、第1仮想線L1および第2仮想線L2が照射ノズル10の移動の軌跡に重ならない位置に、全てのX線管20と全てのフラットパネルディテクタ21が配置されている。さらに、第1仮想線L1と第2仮想線L2を含む仮想面Vが、照射ノズル10の周方向の移動の中心軸Hを横断する面となっている。さらに、仮想面Vは、横断面Qよりも任意の角度で傾いている。
【0081】
また、第4実施形態では、前述の第3実施形態と異なり、一方の領域である第1領域R1に、患者Pの足が配置され、他方の領域である第2領域R2に、患者Pの頭が配置されている。このようにすれば、第3実施形態の逆の向きで患者PのX線画像を撮影することができる。
【0082】
そして、第1領域R1に、全てのX線管20が設けられており、第2領域R2に、全てのフラットパネルディテクタ21が設けられている。
【0083】
なお、第1領域R1に、全てのフラットパネルディテクタ21が設けられるとともに、第2領域R2に、全てのX線管20が設けられてもよい。
【0084】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について
図10から
図11を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図11の紙面右側を正面側として説明する。
【0085】
第5実施形態のノズル支持装置3Dは、前述の第1実施形態のノズル支持装置3(
図2)よりも照射ノズル10の移動範囲を限定することで、小型化されている。
【0086】
この第5実施形態の照射ノズル10は、アイソセンタCを中心として、その周方向に移動する範囲が60度に設定されている。例えば、荷電粒子ビームBを水平方向に照射するときの照射ノズル10の位置を0度とした場合、+30度から-30度の範囲に亘って照射ノズル10が移動可能となっている。
【0087】
ノズル支持装置3Dは、正面視(
図10)において、固定フレーム30の中央部に、上部側の支持アーム31と下部側の支持アーム31が設けられている。つまり、1つの固定フレーム30の2箇所に支持アーム31が設けられている。
【0088】
そして、上部側の支持アーム31には、2つのフラットパネルディテクタ21が設けられている。下部側の支持アーム31には、2つのX線管20が設けられている。
【0089】
なお、上部側の支持アーム31に、X線管20が設けられるとともに、下部側の支持アーム31に、フラットパネルディテクタ21が設けられてもよい。また、上部側の支持アーム31にX線管20およびフラットパネルディテクタ21が1つずつ設けられるとともに、下部側の支持アーム31にX線管20およびフラットパネルディテクタ21が1つずつ設けられてもよい。
【0090】
ここで、第1仮想線L1および第2仮想線L2がアイソセンタCで交差している。また、第1仮想線L1および第2仮想線L2が照射ノズル10の移動の軌跡に重ならない位置に、全てのX線管20と全てのフラットパネルディテクタ21が配置されている。
【0091】
第5実施形態では、第1仮想線L1と第2仮想線L2を含む仮想面Vが、照射ノズル10が移動する円弧を含む横断面Qと同一の平面上に設けられている。つまり、仮想面Vは、横断面Qを含む面である。この仮想面Vは、正面視(
図10)で垂直方向に延びる面であり、照射ノズル10の周方向の移動の中心軸Hを横断する面となっている。この仮想面Vは、中心軸Hに直角に交わっている。
【0092】
ここで、第1仮想線L1と第2仮想線L2のなす角θを規定する。第5実施形態では、照射ノズル10が移動する周方向の範囲が、第1仮想線L1と第2仮想線L2のなす角θの範囲内となっている。なお、仮想面Vが長方形の場合(
図11)には、なす角θが2つ存在するが、いずれか大きい方のなす角θを例示する。この大きい方のなす角θが、照射ノズル10に対向して開いている。第5実施形態では、なす角θが120度となっている。そして、照射ノズル10が周方向に移動する範囲が60度となっている。
【0093】
照射ノズル10が移動する周方向の範囲がなす角θの範囲内であることで、第1仮想線L1および第2仮想線L2が照射ノズル10の移動の軌跡に重ならない位置に、全てのX線管20と全てのフラットパネルディテクタ21を配置することができる。また、患者P(被写体)の身長の方向に沿って延びる体軸の周囲から患者PのX線画像を撮影することができる。さらに、ノズル支持装置3Dの小型化およびコンパクト化を図ることができる。
【0094】
なお、第5実施形態では、第1仮想線L1と第2仮想線L2のなす角θのうち、大きい方のなす角θが例示されているが、その他の態様でもよい。例えば、小さい方のなす角θが、照射ノズル10に対向して開くようにし、照射ノズル10が移動する周方向の移動範囲が、このなす角θの範囲内であってもよい。
【0095】
以上、粒子線照射システム1およびX線撮影装置配置方法が第1実施形態から第5実施形態に基づいて説明されているが、いずれかの実施形態において適用された構成が他の実施形態に適用されてもよいし、各実施形態において適用された構成が組み合わされてもよい。
【0096】
前述の実施形態の制御装置5は、FPGA、GPU、CPUおよび専用のチップなどのプロセッサを高集積化させた回路装置と、ROMおよびRAMなどの記憶装置と、HDDおよびSSDなどの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスおよびキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。この制御装置5は、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0097】
なお、前述の実施形態の制御装置5で実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。追加的または代替的に、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶されて提供される。
【0098】
また、この制御装置5で実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータに格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、この制御装置5は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用回線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0099】
なお、前述の実施形態は、X線撮影の被写体として、人間である患者Pを例示しているが、その他の態様でもよい。例えば、犬、猫などの動物が被写体でもよい。これらの動物に対して放射線治療を施す際に粒子線照射システム1が用いられてもよい。また、被写体の体軸は、人間の場合は身長方向に延びる軸であり、犬、猫などの動物の場合は体長方向に延びる軸である。
【0100】
なお、前述の実施形態は、2つのX線管20と2つのフラットパネルディテクタ21が設けられる態様を例示したが、その他の態様でもよい。例えば、1つのX線管20と1つのフラットパネルディテクタ21が設けられる態様でもよい。さらに、3つ以上のX線管20と3つ以上のフラットパネルディテクタ21が設けられる態様でもよい。
【0101】
なお、前述の実施形態において、軸(線)を含む面は、同じような作用効果を奏する範囲内で、面が軸(線)に対して若干傾いてもよい。また、「同一」であることは、同じような作用効果を奏する範囲内で、「ほぼ同一」であることを含む。さらに、「直角」であることは、同じような作用効果を奏する範囲内で、「ほぼ直角」であることを含む。
【0102】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、第1仮想線L1および第2仮想線L2が照射ノズル10の移動の軌跡に重ならない位置に、全てのX線管20と全てのフラットパネルディテクタ21が配置されていることにより、照射ノズル10の位置が変化してもX線画像の撮影の邪魔にならず、かつX線撮影装置4を含めた粒子線照射システム全体の小型化を図ることができる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
1…粒子線照射システム、2…ビーム照射装置、3,3A,3B,3C,3D…ノズル支持装置、4…X線撮影装置、5…制御装置、10…照射ノズル、11…移動載置台、12…移動アーム、20,20A,20B…X線管、21,21A,21B…フラットパネルディテクタ、30…固定フレーム、31…支持アーム、32…C字レール、33…ノズル基部、B…荷電粒子ビーム、C…アイソセンタ、D…矢印、F…床面、H…中心軸、L1…第1仮想線、L2…第2仮想線、P…患者、Q…横断面、R1…第1領域、R2…第2領域、V…仮想面。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソセンタを中心として前記アイソセンタから等距離の位置を周方向に移動し、前記周方向に移動する範囲が240度以下であり、前記アイソセンタに対する荷電粒子ビームの照射方向を変更可能な照射ノズルと、
少なくとも2つのX線管および少なくとも2つのフラットパネルディテクタで前記アイソセンタに配置された被写体のX線画像を撮影するX線撮影装置と、
を備え、
前記アイソセンタを通る軸であって前記照射ノズルの前記周方向の移動の中心軸に対して直行する方向から前記被写体が前記アイソセンタに向けて進入可能であり、
一方の前記X線管と一方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第1仮想線と、
他方の前記X線管と他方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第2仮想線と、
を規定した場合に、
前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記アイソセンタで交差し、かつ、前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記照射ノズルの移動の軌跡に重ならない位置に、全ての前記X線管と全ての前記フラットパネルディテクタが固定的に配置されている、
粒子線照射システム。
【請求項2】
前記第1仮想線と前記第2仮想線を含む仮想面が、前記中心軸を含む面である、
請求項1に記載の粒子線照射システム。
【請求項3】
前記照射ノズルが移動する円弧を含む面で前記被写体が配置される領域を2つに分けた場合に、
一方の前記領域に、一方の前記X線管と他方の前記フラットパネルディテクタが設けられており、
他方の前記領域に、他方の前記X線管と一方の前記フラットパネルディテクタが設けられている、
請求項2に記載の粒子線照射システム。
【請求項4】
移動アームにより支持され、前記被写体を載置した状態で移動し、前記被写体を前記アイソセンタに配置する移動載置台を備え、
前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記移動アームに重ならない位置に、全ての前記X線管と全ての前記フラットパネルディテクタが配置されている、
請求項2に記載の粒子線照射システム。
【請求項5】
前記中心軸が前記X線撮影装置の前記周方向の移動の前記中心軸でもあり、前記第1仮想線と前記第2仮想線を含む仮想面が、前記中心軸を横断する面である、
請求項1に記載の粒子線照射システム。
【請求項6】
前記照射ノズルが移動する円弧を含む面で前記被写体が配置される領域を2つに分けた場合に、
一方の前記領域に、全ての前記X線管が設けられており、
他方の前記領域に、全ての前記フラットパネルディテクタが設けられている、
請求項5に記載の粒子線照射システム。
【請求項7】
前記第1仮想線と前記第2仮想線を含む仮想面が、前記照射ノズルが移動する円弧を含む面であり、
前記照射ノズルが移動する範囲が、前記第1仮想線と前記第2仮想線のなす角の範囲内となっている、
請求項1に記載の粒子線照射システム。
【請求項8】
アイソセンタを中心として前記アイソセンタから等距離の位置を周方向に移動し、前記周方向に移動する範囲が240度以下であり、前記アイソセンタに対する荷電粒子ビームの照射方向を変更可能な照射ノズルと、
少なくとも2つのX線管および少なくとも2つのフラットパネルディテクタで前記アイソセンタに配置された被写体のX線画像を撮影するX線撮影装置と、
が設けられており、
前記アイソセンタを通る軸であって前記照射ノズルの前記周方向の移動の中心軸に対して直行する方向から前記被写体が前記アイソセンタに向けて進入可能であり、
一方の前記X線管と一方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第1仮想線と、
他方の前記X線管と他方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第2仮想線と、
を規定した場合に、
前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記アイソセンタで交差し、かつ、前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記照射ノズルの移動の軌跡に重ならない位置に、全ての前記X線管と全ての前記フラットパネルディテクタを固定的に配置する、
X線撮影装置配置方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の実施形態に係る粒子線照射システムは、アイソセンタを中心として前記アイソセンタから等距離の位置を周方向に移動し、前記周方向に移動する範囲が240度以下であり、前記アイソセンタに対する荷電粒子ビームの照射方向を変更可能な照射ノズルと、少なくとも2つのX線管および少なくとも2つのフラットパネルディテクタで前記アイソセンタに配置された被写体のX線画像を撮影するX線撮影装置と、を備え、前記アイソセンタを通る軸であって前記照射ノズルの前記周方向の移動の中心軸に対して直行する方向から前記被写体が前記アイソセンタに向けて進入可能であり、一方の前記X線管と一方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第1仮想線と、他方の前記X線管と他方の前記フラットパネルディテクタとを結ぶ第2仮想線と、を規定した場合に、前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記アイソセンタで交差し、かつ、前記第1仮想線および前記第2仮想線が前記照射ノズルの移動の軌跡に重ならない位置に、全ての前記X線管と全ての前記フラットパネルディテクタが固定的に配置されている。