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特開2024-97202タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097202
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20240710BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240710BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240710BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C1/00 A
C08L9/06
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000590
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 晴香
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA01
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC15
4J002AC01X
4J002AC06X
4J002AC08W
4J002AC11W
4J002AC11X
4J002DA036
4J002DJ016
4J002FB03X
4J002FB08W
4J002FB09W
4J002FD016
4J002FD096
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】優れた低燃費性を確保しつつ、旋回時の操縦安定性を向上させる。
【解決手段】スチレンブタジエン系ゴム及びイソプレン系ゴムを含有するゴム成分を含み、23℃での硬度Hsが55以上62以下であり、23℃における硬度Hsと、35℃における損失正接tanδとが、下記式(1)を満たすタイヤトレッド用ゴム組成物、ならびに当該タイヤトレッド用ゴム組成物により構成されたトレッドを備えたタイヤ。
式(1)0.240≦tanδ/Hs×100≦0.320
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有するゴム成分を含み、
23℃での硬度Hsが55以上62以下であり、
23℃における硬度Hsと、35℃における損失正接tanδとが、下記式(1)を満たす、タイヤトレッド用ゴム組成物。
式(1)0.240≦tanδ/Hs×100≦0.320
【請求項2】
カーボンブラックをさらに含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックの含有量が2質量部超、5質量部未満である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
シリカをさらに含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が60質量部超、90質量部未満である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記スチレンブタジエン系ゴムのガラス転移温度が、-80℃以上、-20℃以下である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
前記スチレンブタジエン系ゴムは、シリカ表面のシラノール基と相互作用がある官能基で変性された変性スチレンブタジエンゴムを含む、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
前記官能基が、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシシリル基、チオール基、およびハロゲン基からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項5に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物からなるトレッドを備えた、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、およびそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの低燃費性を改善する手法について、種々検討されている(例えば特許文献1参照)。タイヤの低燃費性は、転がり抵抗によって評価することができ、転がり抵抗が小さいほど、低燃費性に優れたタイヤであることが知られている。特許文献1には、タイヤのトレッドを構成するゴム組成の配合を工夫することで、転がり抵抗を低減させたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6835284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車高が比較的高い車両において、旋回時の操縦安定性がより重視されてきている。特許文献1の空気入りタイヤは、操縦安定性に関しては十分に考慮されていない。優れた低燃費性を確保しつつ、旋回時の操縦安定性を向上させることは重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物は、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有するゴム成分を含み、23℃での硬度Hsが55以上62以下であり、23℃における硬度Hsと、35℃における損失正接tanδとが、0.240≦tanδ/Hs×100≦0.320を満たす。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物によれば、タイヤの優れた低燃費性を確保しつつ、旋回時の操縦安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上記の通り、優れた低燃費性を確保しつつ、旋回時の操縦安定性を向上させることは重要な課題である。従来、優れた低燃費性を実現するために、転がり抵抗を低減させたタイヤが提案されている。しかしながら、特に車高の比較的高い車両においては、単に転がり抵抗を低減させると操縦安定性が低下し、旋回時に転倒する可能性がある。本発明者らは、優れた低燃費性を確保しつつ、旋回時の操縦安定性を向上すべく、鋭意検討した結果、硬度Hsおよび損失正接tanδを限られた範囲に設定することにより、上記目的を達成することを見出した。具体的には、23℃での硬度Hsが55以上62以下であり、23℃での硬度Hsと、35℃における損失正接tanδとが、0.240≦tanδ/Hs×100≦0.320を満たす場合に、優れた低燃費性を確保しつつ、旋回時の操縦安定性を向上させることができる。
【0008】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、単にゴム組成物という)は、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有し、23℃での硬度Hsが55以上62以下であり、硬度Hsと、35℃における損失正接tanδとが、0.240≦tanδ/Hs×100≦0.320を満たす。
【0009】
ゴム組成物の23℃における硬度Hsは、55以上、62以下である。硬度Hsが55より小さくなると、グリップ力が増加し、旋回時に車両が浮き上がりやすくなり操縦安定性が低下する。また、硬度Hsが62より大きくなると、グリップ力が低下し、通常走行時に車両が滑りやすくなり操縦安定性が低下する。なお、本発明において、23℃における硬度Hsとは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載したJIS K6253に準拠した方法で測定した値である。
【0010】
ゴム組成物の23℃における硬度Hsの下限値は、55であればよいが、好ましくは56、より好ましくは57である。この場合、旋回時の操縦安定性の向上がより顕著になる。ゴム組成物の23℃における硬度Hsの上限値は、62であればよいが、好ましくは61、より好ましくは60である。この場合、通常走行時の操縦安定性の向上がより顕著になる。
【0011】
ゴム組成物の23℃における硬度Hsに対する、35℃における損失正接tanδの比率(tanδ/Hs×100)は、0.240以上、0.320以下の条件を満たす。この条件を満たす場合に、優れた低燃費性を確保しつつ、操縦安定性を向上させたタイヤを実現できる。tanδ/Hs×100は、0.245以上であることが好ましく、0.250以上であることがより好ましい。この場合、操縦安定性の向上がより顕著になる。また、tanδ/Hs×100は、0.315以下であることが好ましく、0.310以下であることがより好ましい。この場合、低燃費性がより優れたタイヤを実現できる。
【0012】
ゴム組成物の35℃における損失正接tanδは、0.240≦tanδ/Hs×100≦0.320を満たせばよいが、より優れた低燃費性を実現する観点から、0.190以下であることが好ましく、0.180以下であることがより好ましい。また、損失正接tanδは、操縦安定性を向上させる観点から、0.140以上であることが好ましい。よって、損失正接tanδの好適な範囲の一例は、0.140以上、0.190以下である。なお、本発明において、35℃における損失正接tanδとは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載した温度35℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hzの条件で測定した値である。
【0013】
ゴム組成物の300%モジュラスは、旋回時の操縦安定性を向上させる観点から、8.0MPa以上であることが好ましく、9.0MPa以上であることがより好ましい。また、ゴム組成物の300%モジュラスは、通常走行時の操縦安定性を向上させる観点から、12.0MPa以下であることが好ましい。よって、300%モジュラスの好適な範囲の一例は、8.0MPa以上、12.0MPa以下であり、操縦安定性を重視する場合は、9.0MPa以上、12.0MPa以下である。なお、本発明において、300%モジュラスとは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載したJIS K6251に準拠した方法で測定した値である。
【0014】
ゴム組成物は、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有するゴム成分を含む。これら2種類のゴムを含有することで、本発明の効果を発揮しつつ、加工性が向上したゴム組成物を得ることができる。
【0015】
スチレンブタジエン系ゴム(SBR)は、スチレン系単位およびブタジエン系単位を有するゴムであれば特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等が挙げられる。なお、スチレンブタジエン系ゴムは、ゴム100質量部中のスチレン系単位およびブタジエン系単位の合計含有率が、例えば、95質量部以上であり、98質量部以上でも、100質量部でもよい。これらのスチレンブタジエン系ゴムは、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用することが好ましい。
【0016】
スチレンブタジエン系ゴムは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよいが、変性SBRを含むことが好ましい。変性SBRとしては、シリカ表面のシラノール基と相互作用がある官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBRや、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖および末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBRや、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0017】
上記官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシシリル基、チオール基およびハロゲン基からなる群から選択された少なくとも1種が挙げられる。
【0018】
スチレンブタジエン系ゴムとしては、例えば、住友化学(株)、(株)ENEOSマテリアル、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0019】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部中のスチレンブタジエン系ゴムの含有量は、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。スチレンブタジエン系ゴムの含有量を30質量部以上にすることで、良好な低燃費性能が得られる傾向がある。また、スチレンブタジエン系ゴムの含有量は、80質量部以下とすることが好ましい。スチレンブタジエン系ゴムを多量に使用することで、加工性が悪化することが懸念されるが、スチレンブタジエン系ゴムの含有量を80質量部以下とすることで、加工性の悪化を抑制できる。よって、スチレンブタジエン系ゴムの含有量の好適な範囲の一例は、30質量部以上、80質量部以下である。
【0020】
スチレンブタジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果が良好に得られるという観点から、-80℃以上、-20℃以下であることが好ましい。ここで、スチレンブタジエン系ゴムのガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温温度:20℃/分にて(測定温度範囲:-150℃~50℃)測定される。
【0021】
イソプレン系ゴムは、イソプレン系単位を主たる単位とする重合体であれば特に限定されず、例えば、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム、天然ゴム(NR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量は、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましい。
【0023】
ゴム成分には、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴム以外の他のゴム成分が含まれていてもよい。他のゴム成分としては、例えば、ブタジエン系ゴム(BR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらのゴム成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
ブタジエン系ゴム(BR)は、ブタジエン系単位を主たる単位とする重合体であれば特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、低シス含量のBR等を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本実施形態では、補強性充填剤として、カーボンブラックおよびシリカが用いられる。
【0026】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。例えば、カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(NSA)(JIS K6217-2)が70~150m/gであるものを用いることが好ましい。具体的には、SAF級(N100番台),ISAF級(N200番台),HAF級(N300番台)のカーボンブラックが例示される。これら各グレードのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部未満であることが好ましい。カーボンブラックの配合量を5質量部未満とすることで、タイヤの硬度Hsを55以上62以下にすることが容易になり、操縦安定性が向上する。また、カーボンブラックの配合量の下限は、例えば、2質量部超である。よって、カーボンブラックの配合量の好適な範囲の一例は、2質量部超、5質量部未満である。
【0028】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。シリカのBET比表面積(JIS K6430に記載のBET法に準じて測定)は、特に限定されず、例えば90~250m/gでもよく、150~220m/gでもよい。
【0029】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましい。シリカの配合量を60質量部超にすることで、旋回時の操縦安定性が向上する。また、シリカの配合量は、90質量部未満であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましい。シリカの配合量を90質量部未満にすることで、通常走行時の操縦安定性が向上する。よって、シリカの配合量の好適な範囲の一例は、60質量部超、90質量部未満である。
【0030】
本実施形態のゴム組成物には、上記成分の他に、シランカップリング剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックス、老化防止剤、オイル、加硫促進剤、加硫剤など、タイヤトレッド用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0031】
シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシラン等の公知のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカの配合量の2質量部以上、20質量部以下であることが好ましく、5質量部以上、15質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
オイルとしては、一般にゴム組成物に配合される各種オイルを用いることができる。例えば、鉱物油、即ちパラフィンオイル、ナフテンオイル、およびアロマオイルからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物油を用いてもよい。オイルの含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して40質量部以下でもよく、30質量部以下でもよい。
【0033】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上、5質量部以下でもよく、0.5質量部以上、3質量部以下でもよい。
【0034】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、およびグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加硫促進剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上、5質量部以下でもよく、0.5質量部以上、3質量部以下でもよい。
【0035】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、カーボンブラックおよびシリカとともに、加硫剤および加硫促進剤以外の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤および加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0036】
このようにして得られるゴム組成物は、空気入りタイヤの接地面を構成するトレッドゴムに用いられる。空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤでもよく、トラックやバスなどの重荷重用タイヤでもよい。実施形態の一例として、サマータイヤのトレッドに用いてもよい。ここで、サマータイヤとは、一般的に車に使われるタイヤで、冬用に特化したタイヤであるスタッドレスタイヤやスノータイヤなどのウインタータイヤ以外のタイヤのことを指す。
【0037】
空気入りタイヤの製造方法は、特に限定されない。例えば、上記ゴム組成物を、常法に従い、押出加工によって所定の形状に成型して未加硫のトレッドゴム部材を作製し、該トレッドゴム部材を他の部材と組み合わせて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製した後、例えば140~180℃で加硫成型することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例0038】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合量(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄および加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0040】
・SBR1:(株)ENEOSマテリアル製「SBR0122」(Tg=-40℃の未変性ESBR)
・SBR2:(株)ENEOSマテリアル製「HPR350」(Tg=-33℃の変性溶液重合SBR)
・SBR3:(株)ENEOSマテリアル製「HPR850」(Tg=-25℃の変性溶液重合SBR)
・SBR4:、旭化成(株)製「Tuf1834」(Tg=-70℃の溶液重合SBR)
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」
・NR:RSS#3
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・シリカ:エボニックインダストリーズ社製「UltrasilVN3」
・シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製「Si69」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3種」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・老化防止剤2:川口化学工業(株)製「アンテージRD」
・オイル:アロマオイル、JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・樹脂:C5/C9系の脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂、東ソー(株)製「ペトロタック90」(ガラス転移温度:65℃、軟化点:95℃)
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤2:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
【0041】
得られた実施例1~4および比較例1,2の未加硫各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成型することにより試験用空気入りタイヤ(タイヤサイズ:225/65R17 102H)を作製した。なお、当該タイヤのトレッドパターンは、タイヤ周方向に延びる4本の主溝と、主溝で区画されたリブ状のブロックを備え、ブロックには、タイヤ周方向またはタイヤ軸方向に延びる複数の細溝が形成されている。得られた試験用空気入りタイヤを下記により評価した。
【0042】
<硬度Hs>
JIS K6253に準拠し、デュロメータタイプAを用いて、各ゴム試験片の温度23℃での硬度Hsを測定した。なお、各ゴム試験片は、各試験用タイヤのトレッド部のゴム層内部から切り出したものを用いた。
【0043】
<300%モジュラス>
各試験用タイヤのトレッド部のゴム層内部から、タイヤ周方向が引張方向となるように切り出した厚さ1mmのダンベル状3号形の試験片を作成した。そして、JIS K6251に準拠し、23℃の雰囲気下で、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施し、300%延伸時のモジュラス(MPa)を測定した。なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とした。
【0044】
<損失正接tanδ>
東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、温度35℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hzの条件で損失正接tanδを測定した。
【0045】
<転がり抵抗>
転がり抵抗測定ドラム試験機を用いて、空気圧230kPa、荷重450kgf、温度23℃、80km/hの条件で各タイヤの転がり抵抗を測定し、比較例1の値を100として指数評価で示した。指数が小さいほど、低燃費性に優れることを示す。
【0046】
<操縦安定性>
タイヤサイズが225/65R17 102Hの試験タイヤを空気圧230kPaで標準リムに装着して走行速度80km/hで、ロードインデックスの最大荷重の70%、および100%でタイヤに荷重を与えた状態で、フラットベルト・コーナリング試験機を使用し、蛇角を徐々に大きくしていったときのコーナリングフォースの最大値(Cfmax)を測定して、コーナリングフォースの最大値について評価試験を行った。比較例1の結果を100として指数評価で示した。指数が小さいほど、旋回時の操縦安定性に優れることを示す。
【0047】
【表1】
【0048】
結果は表1に示す通りである。実施例1および実施例4は、比較例1および比較例2に対し、同等の転がり抵抗を確保しつつ、コーナリングフォースの最大値の値が減少している。また、実施例2および実施例3は、比較例1および比較例2に対し、転がり抵抗およびコーナリングフォースの最大値の値が減少している。以上の試験結果から、硬度Hsが55以上62以下であり、23℃での硬度Hsと、35℃における損失正接tanδとが、0.240≦tanδ/Hs×100≦0.320を満たす場合に、優れた低燃費性を確保しつつ、旋回時の操縦安定性を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施例においては、周方向に延びる4本の主溝と、主溝で区画されたリブ状のブロックとを備えるトレッドパターンを用いたが、トレッドパターンはこれに限定されない。例えば、主溝の本数が4本超、または4本未満のトレッドパターン、横溝が形成されたトレッドパターンであっても本発明の効果を発揮できる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。