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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009721
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 12/00 20230101AFI20240116BHJP
【FI】
H01L27/108 671A
H01L27/108 621C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111463
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 正恭
(72)【発明者】
【氏名】野田 光太郎
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083AD06
5F083AD24
5F083AD31
5F083GA10
5F083JA02
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA56
5F083PR21
(57)【要約】
【課題】酸化物半導体層を有する半導体装置において、酸化物半導体層に効果的に酸素を供給可能にした構成の半導体装置、及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る半導体装置は、スルーホール内に形成され、酸化物半導体で構成されたチャネルと、チャネル上に形成され、導電性を有する酸化物である第1材料で構成された第1電極と、第1電極上に形成され、金属で構成された第2電極と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホール内に形成され、酸化物半導体で構成されたチャネルと、
前記チャネル上に形成され、導電性を有する酸化物である第1材料で構成された第1電極と、
前記第1電極上に形成され、金属で構成された第2電極と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1電極は、前記第1材料を含み、
前記第1電極の周囲に形成され、前記第1材料を含み、絶縁性を有する絶縁膜をさらに備える、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1電極と、前記絶縁膜とが同一層に形成される、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1電極は、前記第2電極よりも高い酸素透過性を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1電極及び前記絶縁膜は、前記第2電極よりも高い酸素透過性を有する、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1材料は、O、In及びSnを含み、
前記絶縁膜は、前記第1材料に加え、Mg、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びBiから選択される少なくともいずれか1つの元素を含む、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、前記チャネルと電気的に接続されたキャパシタと、をさらに備える、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記チャネルの周囲に形成された絶縁膜と、
前記チャネルに電界を発生させるための制御電極と、
前記半導体基板上に形成され、前記制御電極と電気的に接続された半導体素子と、をさらに備える、
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
第1スルーホール内に、第1チャネルを構成する酸化物半導体を形成し、
第2スルーホール内に、第2チャネルを構成する酸化物半導体を形成し、
前記第1チャネル及び前記第2チャネル上の領域に、導電性を有する酸化物で構成された導電膜を形成し、
前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間の領域の前記導電膜に金属をドープし、
金属がドープされた前記導電膜に対して酸素をアニールする、
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1チャネル及び前記第2チャネル上の領域に、導電性を有する酸化物で構成された導電膜を形成することは、前記第1チャネルと前記第2チャネルとを前記導電膜を介して電気的に接続することを含み、
前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間の領域の前記導電膜に金属をドープすることは、前記第1チャネルと前記第2チャネルとを電気的に絶縁することを含む、
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化物半導体で構成されたチャネルを有する半導体装置が開発されている。例えば、酸化物半導体トランジスタを、メモリセルのスイッチングトランジスタに適用したDRAM(Dynamic Random Access Memory)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-168623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態では、酸化物半導体で構成されたチャネルに対して、アニールによる酸素供給を行いやすい構成とすることが可能な半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置は、スルーホール内に形成され、酸化物半導体で構成されたチャネルと、チャネル上に形成され、導電性を有する酸化物である第1材料で構成された第1電極と、第1電極上に形成され、金属で構成された第2電極と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、半導体記憶装置の構成例を示す断面模式図である。
図2図2は、半導体記憶装置の構成例の一部の断面模式図である。
図3図3は、半導体記憶装置の製造方法の例を説明するための断面模式図である。
図4図4は、半導体記憶装置の製造方法の例を説明するための断面模式図である。
図5図5は、半導体記憶装置の製造方法の例を説明するための断面模式図である。
図6図6は、半導体記憶装置の製造方法の例を説明するための断面模式図である。
図7図7は、比較例の半導体記憶装置の構成例を示す断面模式図である。
図8図8は、半導体記憶装置の製造方法の例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一または類似の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0008】
本明細書において、説明の便宜上、「上」または「下」という用語を用いる場合があるが、これらは図面における相対位置を説明するものであって、鉛直方向における上下とは異なる場合がある。
【0009】
本実施形態の半導体記憶装置は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)であり、複数のメモリセルからなるメモリセルアレイを含んで構成される。メモリセルは、電界効果トランジスタ(FET、Field-Effect Transistor)と、キャパシタとを備える。メモリセルは、行列方向に配列されることでメモリセルを形成する。メモリセルは行列方向に加え、上下方向にも複数配列されてもよい。メモリセルを構成する電界効果トランジスタのゲートは対応するワード線に接続され、ソースまたはドレインの一方はキャパシタの一方の電極に接続され、ソースまたはドレインの他方は対応するビット線に接続される。キャパシタの一方の電極は、上記のように電界効果トランジスタの一方の電極に接続される。キャパシタの他方の電極は、所定の電位を供給する電源線に接続される。メモリセルは、ワード線による電界効果トランジスタのスイッチングによりビット線からキャパシタに電荷を蓄積することでデータを保持する。なお、本実施形態の半導体記憶装置1は、本発明の半導体装置の一例である。
【0010】
図1は、本実施形態の半導体記憶装置1の構成例を示す断面模式図である。図2は、図1の一部を示す断面模式図である。図1に示すように、半導体記憶装置1は、半導体基板10と、半導体素子11と、第1キャパシタ電極21と、誘電体22と、第2キャパシタ電極23と、導電体24と、導電体25と、導電体31と、絶縁層32と、下部電極41と、酸化物半導体層42と、ゲート酸化膜43と、ワード線44と、上部電極45と、絶縁層46と、バリアメタル51と、ランディングパッド52と、絶縁膜53と、絶縁層60と、を備える。
【0011】
半導体基板10は、例えば単結晶シリコン等で形成された基板である。
【0012】
半導体素子11は、半導体基板10上に形成されたMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等であるが、その他の半導体素子であってもよい。半導体素子11は、例えば、半導体集積回路を構成する。
【0013】
第1キャパシタ電極21、誘電体22、第2キャパシタ電極23、導電体24、及び導電体25は、キャパシタ20を構成する。このキャパシタ20は、メモリセルの構成要素である。図1には、4つのキャパシタ20が図示される。キャパシタ20の数は任意に変更可能である。
【0014】
本実施形態のキャパシタ20は、いわゆるピラー型キャパシタ、またはシリンダー型キャパシタ等の3次元キャパシタである。キャパシタ20は、第1キャパシタ電極21と第2キャパシタ電極23との間に導電体24、誘電体22、及び導電体25を備え、電極間に電荷を蓄積する。
【0015】
第1キャパシタ電極21は、例えば、アモルファスシリコン等の材料を含む。第2キャパシタ電極23、導電体24及び導電体25は、例えば、タングステン(W)、または窒化チタン(TiN)等の材料を含む。誘電体22は絶縁体であって、例えば、酸化ハフニウム等の材料を含む。
【0016】
下部電極41、酸化物半導体層42、ゲート酸化膜43、ワード線44、及び上部電極45は、電界効果トランジスタ40を構成する。電界効果トランジスタ40は、キャパシタ20の上方に形成される。電界効果トランジスタ40は、メモリセルの構成要素である。図1及び図2には、4つのキャパシタ20と対になった4つの電界効果トランジスタ40が示されている。電界効果トランジスタ40の数は、キャパシタ20の数に応じて任意に変更可能である。
【0017】
下部電極41は、第1キャパシタ電極21の上に設けられ、第1キャパシタ電極21と電気的にも接続される。下部電極41は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物を含む。
【0018】
酸化物半導体層42は、下部電極41と上部電極45との間に形成されたスルーホール内に形成され、上下方向に柱状に延びる。酸化物半導体層42は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物であり、いわゆるIGZOである。酸化物半導体層42は、電界効果トランジスタ40のチャネルを形成する。
【0019】
ゲート酸化膜43は、酸化物半導体層42とワード線44との間に、酸化物半導体層42の周囲を覆うよう設けられる。ゲート酸化膜43は絶縁体であって、例えば、シリコン及び酸素を含む。
【0020】
ワード線44は、メモリセルにおけるワード線を形成するとともに、電界効果トランジスタ40のゲート電極を形成する。ワード線44は、例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、及びルテニウム(Ru)からなる群から選ばれる少なくとも1つの材料を含む導電体であり、典型的にはタングステンで構成される。ワード線44は、本発明の「制御電極」の一例である。
【0021】
上部電極45は、酸化物半導体層42の上に設けられる。上部電極45は、導電性酸化物を含む導電体であり、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物を含む。上部電極45は、本発明の「第1電極」の一例である。
【0022】
上部電極45は、電界効果トランジスタ40のソース電極またはドレイン電極のいずれか一方として機能し、下部電極41は、電界効果トランジスタ40のソース電極またはドレイン電極のいずれか他方として機能する。
【0023】
半導体記憶装置1の電界効果トランジスタ40では、ゲート電極として機能するワード線44と、ソース電極またはドレイン電極との間に所定の電位差を生じさせることで、酸化物半導体層42のチャネル領域に電界が発生し、ソース電極からドレイン電極に向かって電流が流れる。ワード線44は、チャネルとなる酸化物半導体層42に電界を生じさせるための制御電極であるともいえる。
【0024】
バリアメタル51は、上部電極45を覆うように上部電極45の上に設けられる。バリアメタル51は、例えば、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)等の導電体により構成される。バリアメタル51は、上部電極45と比較して、酸素透過性が低くなっている。バリアメタル51は、本発明の「第2電極」の一例である。
【0025】
ランディングパッド52は、バリアメタル51上に形成され、メモリセルのビット線として機能する。ランディングパッド52は、例えば、タングステン(W)等の導電体で構成される。
【0026】
導電体31は、例えば、メモリセルと半導体素子11とを電気的に接続する。導電体31は、いわゆるビアとしての機能を有する。導電体31は、例えば銅などで構成される。
【0027】
絶縁層32は、キャパシタ20が形成された層においてキャパシタ20間を電気的に絶縁する絶縁体である。絶縁層32は、例えば、窒化シリコン(SiN)等で構成される。
【0028】
絶縁層46は、酸化物半導体層42等が形成された層に設けられた絶縁体である。絶縁層46は、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)等のガスを用いたCVD等の手段により形成された酸化シリコン(SiO)等で構成される。
【0029】
絶縁膜53は、上部電極45と同一層の、上部電極45の周囲に設けられた絶縁体であり、上部電極45間を電気的に絶縁する。絶縁膜53は、上部電極45と同様の酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物に加え、マグネシウム(Mg)、V(バナジウム)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、及びビスマス(Bi)から選択される少なくともいずれか1つの金属の元素を含む。
【0030】
絶縁膜53は、製造工程における酸化インジウムスズ等が形成された後の工程で、上記のマグネシウム等の金属がイオン注入されることで、導電体である上部電極45とは異なる絶縁体となる。すなわち、絶縁膜53は、上部電極45と物理的に連続するよう形成され、マグネシウム等の金属のドープ(注入)により絶縁体として機能するものである。絶縁膜53において、酸化インジウムスズ等の金属酸化膜に注入されるものは、上記のマグネシウム等に限定されず、金属酸化膜に注入することで金属酸化膜の電気抵抗を高めて実質的に絶縁体にできる材料であれば限定されない。
【0031】
絶縁層60は、上部電極45の上に形成された絶縁体であり、ランディングパッド52及びバリアメタル51を、隣接して配置されたランディングパッド52及びバリアメタル51と電気的に絶縁する。絶縁層60は、例えば、シリコンと酸素とを含む。
【0032】
(半導体記憶装置1の製造方法)
次に、半導体記憶装置1の製造方法において、本実施形態で特徴的な部分を説明する。以下で説明する工程以外は、従来の半導体装置の製造方法を採用可能である。
【0033】
図3は、酸化物半導体層42及び絶縁層46の上層に、上部電極45及び絶縁膜53が形成される前の状態を示している。酸化物半導体層42及びゲート酸化膜43は、絶縁層46に形成されたスルーホール内に形成される。酸化物半導体層42、ゲート酸化膜43、及び絶縁層46の上層には、導電体54が積層して形成される。このとき、導電体54が一面に形成されるため、複数の酸化物半導体層42同士が導電体54を介して電気的に接続された状態となっている。
【0034】
さらに、導電体54の上には、バリアメタル51、ランディングパッド52、被膜55、及びライナー膜56が形成される。被膜55はランディングパッド52の上に形成される。ライナー膜56は、バリアメタル51、ランディングパッド52、及び被膜55を取り囲むよう形成される。図1及び図2では被膜55を示していないが、図3と同様に被膜55を有してもよいし、被膜55を有さない構成としてもよい。
【0035】
図4は、図3に示す製造途中の半導体記憶装置を上方から見た平面図である。円状になった被膜55の周囲に、円環状のライナー膜56が形成されている。被膜55及びライナー膜56は、互い違いに配列して設けられる。
【0036】
図3及び図4に示す状態において、導電体54にドープ(注入)すべきマグネシウム等の材料を供給してイオン注入を行う。これによって、図5に示すように、上部電極45、絶縁膜53、及び被膜57が形成される。上部電極45は、マグネシウム等が注入されることなく、導電体54と同じ材料からなる。一方で絶縁膜53は、導電体54にマグネシウム等が注入されることで抵抗が大きくなり、絶縁体となる。これにより、隣接する上部電極45同士は電気的に絶縁され、酸化物半導体層42も互いに電気的に絶縁される。被膜57は、マグネシウム等が注入された被膜55及びライナー膜56である。
【0037】
ここで、導電体54に注入される材料は、酸化インジウムスズ等の金属酸化物に注入することで、この金属酸化物の電気抵抗を高めて実質的に絶縁体にできる材料であれば任意に選択されてもよい。具体的には、導電体54に注入される材料は、マグネシウム(Mg)、V(バナジウム)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、及びビスマス(Bi)から選択される少なくともいずれか1つ以上の金属元素を有する。好ましくは、導電体54にマグネシウム(Mg)を注入する。
【0038】
例えば、「R&D 神戸製鋼技報 Vol.48 No.3 P.39~ 『酸化インジウムの電子状態に及ぼす不純物の影響』」には、InにMgをドープすることでアクセプタ準位が形成されることが示唆されている。「APPLIED PHYSICS LETTERS 101, 102107 (2012), Mg acceptor doping of In2O3 and overcompensation by oxygen vacancies」には、InにMgを注入することで抵抗率の上昇が確認されたことが記載されている。名古屋大学の研究グループによって、イオン化エネルギーがInに比較的近いGaNにおいて、Mgを注入することによりp型結晶を作成することに成功した研究結果も報告されている(https://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20190528_imass001.pdf
【0039】
本願の発明者らによる調査及び検討に加え、上記の研究結果等からも、Inに対してMgを注入することで抵抗率が上昇し、絶縁体として機能させられることが判る。
【0040】
また、「Physics Review B 79.165202 (Published 8 April 2009), Electronic structure, donor and acceptor transitions, and magnetism of
3d impurities in In2O3and ZnO」及び「Physics Review Materials 3, 034605 (Published 15 March 2019), Enabling visible-light absorption and p-type doping in In2O3by adding Bi」によれば、上記のMgに代えて、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びBiを用いた場合でもアクセプタとして機能させることができると推測される。すなわち、本願の発明者らによる調査及び検討に加え、上記の研究結果からも、InにV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びBiから選択される少なくともいずれか1つ以上の元素を注入した場合であっても、絶縁体として機能させられることが判る。
【0041】
図6は、図5に示す製造途中の半導体記憶装置を上方から見た平面図である。被膜57の下には導電体54が形成され、被膜57の周囲には絶縁膜53が形成される。
【0042】
図6の状態から、酸化物半導体層42に酸素を供給してアクティブにするため、加熱による酸素アニールが行われる。
【0043】
このとき、絶縁膜53を有さない図7の比較例の構成の場合は、バリアメタル51が酸素を透過しないため、酸化物半導体層42に供給される酸素の経路が上部電極45の側壁からのみになる。この上部電極45の側壁は、例えば5nm程度の高さであるため、供給される酸素が限定的となり、酸化物半導体層42に十分な酸素を供給するのに長時間を要する。
【0044】
一方で、図2に示す本実施形態の構成では、絶縁膜53が酸素を透過可能であるため、酸化物半導体層42に供給される酸素の経路が、絶縁膜53及び上部電極45となる。これにより、上記図7の比較例の構成に比べて酸化物半導体層42に対して効率的に酸素を供給することが可能となり、酸化物半導体層42に十分な酸素を供給するのに要する時間を短縮できる。
【0045】
図6の状態で酸素アニールを行った後、被膜55及び被膜57を除去し、絶縁層60、第1ビット線61、及び第2ビット線62を形成する。これにより、図8に示す半導体記憶装置1を製造できる。
【0046】
図8において、第1ビット線61は、例えば、窒化チタン等の導電体で構成される。第2ビット線62は、例えば、タングステン等の導電体で構成される。
【0047】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0048】
例えば、本発明の構成は、実施形態の半導体記憶装置1に限定されるものではなく、スルーホール内に形成され、酸化物半導体で構成されたチャネルとして機能する酸化物半導体層42と、このチャネル上に形成され、導電性を有する酸化物である上部電極45と、上部電極45上に形成されたバリアメタル51とを備える半導体装置であってもよい。すなわち、必ずしも記憶装置である必要もない。
【0049】
実施形態における積層構造は一例にすぎず、例えば、上部電極45と、上部電極45上のバリアメタル51と、上部電極45に隣接して設けられた絶縁膜53であって、上部電極45と同じ材料に加え、何らかの元素を注入されることで絶縁体となった絶縁膜53を有する、実施形態と異なる積層構造を採用してもよい。
【0050】
実施形態の半導体記憶装置1は、積層方向にキャパシタ20及び電界効果トランジスタ40を複数形成した半導体装置としてもよい。
【0051】
実施形態の半導体記憶装置1は、記憶装置として機能させるためにキャパシタ20を備える構成としているが、キャパシタ20を備えない半導体装置としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…半導体記憶装置
10…半導体基板
11…半導体素子
20…キャパシタ
21…第1キャパシタ電極
22…誘電体
23…第2キャパシタ電極
24…導電体
25…導電体
31…導電体
32…絶縁層
40…電界効果トランジスタ
41…下部電極
42…酸化物半導体層
43…ゲート酸化膜
44…ワード線
45…上部電極
46…絶縁層
51…バリアメタル
52…ランディングパッド
53…絶縁膜
54…導電体
55…被膜
56…ライナー膜
57…被膜
60…絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8