(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097211
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法、送電装置、受電装置、並びに電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20240710BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240710BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240710BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20240710BHJP
B60M 7/00 20060101ALN20240710BHJP
B60L 5/00 20060101ALN20240710BHJP
B60L 53/12 20190101ALN20240710BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F41/04 A
H02J50/10
H02J50/90
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000609
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 将人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健一
【テーマコード(参考)】
5E062
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5E062EE02
5H105AA17
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC04
5H105CC07
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC27
5H125DD02
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】平面コイルと一体化される部材からの平面コイルの浮きやずれを抑制できるコイル部品を提供する。
【解決手段】一実施の形態に係るコイル部品10は、複数のターン部11nと、複数のターン部11nのうちの少なくとも一つのターン部11nの内周縁及び/又は外周縁から延び、ターン部11nから離れるように折れ曲がる突出片11Tと、を含む第1平面コイル11と、第1平面コイル11の複数のターン部11nに接する状態で第1平面コイル11と重なる第1保持部材20と、を備える。そして、第1保持部材20は、第1平面コイル11を重ねられる第1の面20Aに溝22を含み、突出片11Tは、径方向で溝22の内面に接している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に配列される複数のターン部と、前記複数のターン部のうちの少なくとも一つのターン部の内周縁及び/又は外周縁から延び、前記ターン部から離れるように折れ曲がる突出片と、を含む第1平面コイルと、
前記複数のターン部に接する状態で前記第1平面コイルと重なる第1保持部材と、を備え、
前記第1保持部材は、前記第1平面コイルを重ねられる面に溝を含み、
前記突出片は、前記径方向で前記溝の内面に接している、コイル部品。
【請求項2】
前記ターン部は、前記溝の外側に位置する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1平面コイルを前記第1保持部材と挟み込みようにして前記第1平面コイル及び前記第1保持部材と一体化される、磁性を有する第2保持部材をさらに備え、
前記溝は、前記第2保持部材の一部によって充填される、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2保持部材に、第2平面コイルが埋め込まれ、前記第2平面コイルは、前記第1平面コイルと重なるように位置し、
前記第2平面コイルは、径方向に配列される複数のターン部と、前記複数のターン部のうちの少なくとも一つのターン部の内周縁及び/又は外周縁から延び、前記第2平面コイルの前記ターン部から離れるように折れ曲がる突出片と、を含み、
前記第2平面コイルの前記突出片は、前記径方向で前記第2保持部材に接している、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1保持部材は、前記溝から突出して前記第2保持部材に埋め込まれる突起部をさらに含み、
前記突起部は、前記第2平面コイルの前記突出片と前記径方向で向き合っている、請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1保持部材は、前記第1平面コイルを重ねられる前記面における前記溝と前記溝に対して前記径方向の内方の前記ターン部との間の部分及び前記溝と前記溝に対して前記径方向の外方の前記ターン部との間の部分のうちの少なくともいずれかに、前記第1平面コイルから離れるように突出するスペーサ部をさらに含み、前記スペーサ部は前記突起部と前記径方向で隣り合う、請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記溝は、前記複数のターン部に沿って渦巻状に延びる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記溝は、凹所を含み、
前記突出片の少なくとも一部が、前記凹所に位置する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記突出片は、前記ターン部の前記内周縁及び前記外周縁のそれぞれから延びる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記突出片は、前記ターン部の前記外周縁のみから延びる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記突出片と接続している前記ターン部は、前記突出片と前記径方向で隣り合う位置に貫通孔を有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項12】
径方向に配列される複数のターン部と、前記径方向に隣り合う前記ターン部を接続する接続部と、を含むコイル中間材を準備する工程と、
凸部が形成された金型を準備する工程と、
前記凸部に前記接続部が対面し、前記接続部で接続される隣り合う前記ターン部は前記金型における前記凸部とは異なる部分に対面するように、前記コイル中間材を前記金型に載せる工程と、
成形材料を前記コイル中間材を介して前記金型に押し付け、前記凸部が前記接続部を介して前記成形材料に相対的に押し込まれることにより、前記接続部を隣り合う前記ターン部のうちのいずれか一方から分離させるとともに、前記ターン部から離れるように折り曲げて、且つ前記成形材料に溝を形成する工程と、
前記成形材料を硬化させた後、前記金型から取り外す工程と、を備える、コイル部品の製造方法。
【請求項13】
前記金型は、前記凸部とは異なる部分から立ち上がる位置決め突起を有し、
前記接続部が接続された前記ターン部は、前記接続部と前記径方向で隣り合う位置に貫通孔を有し、
前記コイル中間材は、前記貫通孔に前記位置決め突起を通される状態で前記金型に載せられる、請求項12に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項14】
前記接続部は、断面積が局所的に小さくなる狭窄部を有する、請求項12又は13に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項15】
前記狭窄部は、前記径方向における前記接続部の中間の位置に形成される、請求項14に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項16】
前記狭窄部は、前記径方向における前記接続部の外方の端部に形成される、請求項14に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項17】
径方向に配列される複数のターン部を含む第1平面コイルと、前記複数のターン部に接する状態で前記第1平面コイルと重なる第1保持部材と、を備え、前記第1保持部材は、前記第1平面コイルを重ねられる面に溝を含み、前記溝は、隣り合う前記ターン部の間から開放するように形成され、且つ前記溝から突出する突起部をさらに含むプレコイル部品を準備する工程と、
前記径方向に配列される複数のターン部と、前記径方向に隣り合う前記ターン部を接続する接続部と、を含む第2コイル中間材を準備する工程と、
前記接続部が前記突起部に対面するように第2コイル中間材を前記第1平面コイルに重ねる工程と、
前記接続部を前記突起部に押し付けて、前記接続部を、前記接続部が接続する隣り合う前記ターン部のうちのいずれか一方から分離させるとともに、前記ターン部から離れるように折り曲げる工程と、を備える、コイル部品の製造方法。
【請求項18】
請求項1に記載のコイル部品を備える、送電装置。
【請求項19】
請求項1に記載のコイル部品を備える、受電装置。
【請求項20】
送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、請求項1に記載のコイル部品を備える、電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品及びその製造方法、送電装置、受電装置、並びに電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムが普及しつつある。
【0003】
例えば、コイルを含む共振回路に高周波の電流を流すことで、非接触で電力を伝送するシステムが知られている。
【0004】
コイルに高周波の電流が流される場合、表皮効果が生じ得る。表皮効果は、交流抵抗を増大させるため、電力伝送時の伝送効率を低下させる原因になる。これを考慮し、コイルをリッツ線で形成した場合には、表皮効果が抑制され得るため、伝送効率の低下が抑制され得る。ただし、リッツ線は、多数のエナメル線を撚り合わせて形成されるため、製造コストが高く且つ製造に手間がかかり、コイルのサイズが大きくなる程、製造の手間が大きくなる。
【0005】
一方で、渦巻形状且つ板状で、導線断面が矩形状の平面コイルを採用する技術も知られている(特許文献1参照)。このような平面コイルは、例えば板材から打ち抜かれることで形成され得る。したがって、このような平面コイルによれば、コイルのサイズによらず製造効率の向上が図れる。また、コイルを組み込む装置の薄型化及び軽量化の点でも有利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような平面コイルは、例えば樹脂を含むシート材と重なる状態でシート材と一体化されてもよい。これにより、例えば組み立て時において平面コイルを取り扱いやすくなる。
【0008】
平面コイルとシート材とを一体化する場合、平面コイルは、片面を露出させる状態でシート材に埋め込まれてもよい。この際、例えばシート材を加熱しつつ平面コイルをシート材に押し当てることで、平面コイルがシート材に埋め込まれてもよい。しかしながら、この場合、平面コイルがシート材から離れる方向に浮きやすくなることがある。このような浮きは、例えば異種の材質であることにより界面での強固な密着性が確保し難い点や、平面コイルとシート材との熱膨張率の差などに起因して生じ得る。
【0009】
上述のように平面コイルがシート材から浮いてしまうと、例えば他の部品に組み込まれる場合に、適正な組み込みができなくなる。また、浮きに起因して平面コイルとシート材との位置がずれた場合も、適正な組み込みができなくなる。
【0010】
本開示の課題は、平面コイルと一体化される部材からの平面コイルの浮きやずれを抑制できるコイル部品及びその製造方法、送電装置、受電装置、並びに電力伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の実施の形態は、以下[1]~[20]に関連する。
【0012】
[1] 径方向に配列される複数のターン部と、前記複数のターン部のうちの少なくとも一つのターン部の内周縁及び/又は外周縁から延び、前記ターン部から離れるように折れ曲がる突出片と、を含む第1平面コイルと、
前記複数のターン部に接する状態で前記第1平面コイルと重なる第1保持部材と、を備え、
前記第1保持部材は、前記第1平面コイルを重ねられる面に溝を含み、
前記突出片は、前記径方向で前記溝の内面に接している、コイル部品。
【0013】
[2] 前記ターン部は、前記溝の外側に位置する、[1]に記載のコイル部品。
【0014】
[3] 前記第1平面コイルを前記第1保持部材と挟み込みようにして前記第1平面コイル及び前記第1保持部材と一体化される、磁性を有する第2保持部材をさらに備え、
前記溝は、前記第2保持部材の一部によって充填される、[2]に記載のコイル部品。
【0015】
[4] 前記第2保持部材に、第2平面コイルが埋め込まれ、前記第2平面コイルは、前記第1平面コイルと重なるように位置し、
前記第2平面コイルは、径方向に配列される複数のターン部と、前記複数のターン部のうちの少なくとも一つのターン部の内周縁及び/又は外周縁から延び、前記第2平面コイルの前記ターン部から離れるように折れ曲がる突出片と、を含み、
前記第2平面コイルの前記突出片は、前記径方向で前記第2保持部材に接している、[3]に記載のコイル部品。
【0016】
[5] 前記第1保持部材は、前記溝から突出して前記第2保持部材に埋め込まれる突起部をさらに含み、
前記突起部は、前記第2平面コイルの前記突出片と前記径方向で向き合っている、[4]に記載のコイル部品。
【0017】
[6] 前記第1保持部材は、前記第1平面コイルを重ねられる前記面における前記溝と前記溝に対して前記径方向の内方の前記ターン部との間の部分及び前記溝と前記溝に対して前記径方向の外方の前記ターン部との間の部分のうちの少なくともいずれかに、前記第1平面コイルから離れるように突出するスペーサ部をさらに含み、前記スペーサ部は前記突起部と前記径方向で隣り合う、[5]に記載のコイル部品。
【0018】
[7] 前記溝は、前記複数のターン部に沿って渦巻状に延びる、[1]乃至[6]のいずれかに記載のコイル部品。
【0019】
[8] 前記溝は、凹所を含み、
(前記第1平面コイルの)前記突出片の少なくとも一部が、前記凹所に位置する、[1]乃至[7]のいずれかに記載のコイル部品。
【0020】
[9] 前記突出片は、前記ターン部の前記内周縁及び前記外周縁のそれぞれから延びる、[1]乃至[8]のいずれかに記載のコイル部品。
【0021】
[10] 前記突出片は、前記ターン部の前記外周縁のみから延びる、[1]乃至[8]のいずれかに記載のコイル部品。
【0022】
[11] 前記突出片と接続している前記ターン部は、前記突出片と前記径方向で隣り合う位置に貫通孔を有する、[1]乃至[10]のいずれかに記載のコイル部品。
【0023】
[12] 径方向に配列される複数のターン部と、前記径方向に隣り合う前記ターン部を接続する接続部と、を含むコイル中間材を準備する工程と、
凸部が形成された金型を準備する工程と、
前記凸部に前記接続部が対面し、前記接続部で接続される隣り合う前記ターン部は前記金型における前記凸部とは異なる部分に対面するように、前記コイル中間材を前記金型に載せる工程と、
成形材料を前記コイル中間材を介して前記金型に押し付け、前記凸部が前記接続部を介して前記成形材料に相対的に押し込まれることにより、前記接続部を隣り合う前記ターン部のうちのいずれか一方から分離させるとともに、前記ターン部から離れるように折り曲げて、且つ前記成形材料に溝を形成する工程と、
前記成形材料を硬化させた後、前記金型から取り外す工程と、を備える、コイル部品の製造方法。
【0024】
[13] 前記金型は、前記凸部とは異なる部分から立ち上がる位置決め突起を有し、
前記接続部が接続された前記ターン部は、前記接続部と前記径方向で隣り合う位置に貫通孔を有し、
前記コイル中間材は、前記貫通孔に前記位置決め突起を通される状態で前記金型に載せられる、[12]に記載のコイル部品の製造方法。
【0025】
[14] 前記接続部は、断面積が局所的に小さくなる狭窄部を有する、[12]又は[13]に記載のコイル部品の製造方法。
【0026】
[15] 前記狭窄部は、前記径方向における前記接続部の中間の位置に形成される、[14]に記載のコイル部品の製造方法。
【0027】
[16] 前記狭窄部は、前記径方向における前記接続部の外方の端部に形成される、[14]に記載のコイル部品の製造方法。
【0028】
[17] 径方向に配列される複数のターン部を含む第1平面コイルと、前記複数のターン部に接する状態で前記第1平面コイルと重なる第1保持部材と、を備え、前記第1保持部材は、前記第1平面コイルを重ねられる面に溝を含み、前記溝は、隣り合う前記ターン部の間から開放するように形成され、且つ前記溝から突出する突起部をさらに含むプレコイル部品を準備する工程と、
前記径方向に配列される複数のターン部と、前記径方向に隣り合う前記ターン部を接続する接続部と、を含む第2コイル中間材を準備する工程と、
前記接続部が前記突起部に対面するように第2コイル中間材を前記第1平面コイルに重ねる工程と、
前記接続部を前記突起部に押し付けて、前記接続部を、前記接続部が接続する隣り合う前記ターン部のうちのいずれか一方から分離させるとともに、前記ターン部から離れるように折り曲げる工程と、を備える、コイル部品の製造方法。
【0029】
[18] [1]乃至[11]のいずれかに記載のコイル部品を備える、送電装置。
【0030】
[19] [1]乃至[11]のいずれかに記載のコイル部品を備える、受電装置。
【0031】
[20] 送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、[1]乃至[11]のいずれかに記載のコイル部品を備える、電力伝送システム。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、平面コイルと一体化される部材からの平面コイルの浮きやずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1の実施の形態に係るコイル部品が適用されるワイヤレス電力伝送システムを概略的に示す図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るコイル部品の平面図である。
【
図3】
図2に示すコイル部品の一部の斜視図である。
【
図6】
図2に示すコイル部品を製造するためのコイル中間材の平面図である。
【
図7】
図2に示すコイル部品の製造方法の一例を説明する図である。
【
図8】
図2に示すコイル部品の製造方法の一例を説明する図である。
【
図9】
図2に示すコイル部品の製造方法の一例を説明する図である。
【
図10】
図2に示すコイル部品の製造方法の一例を説明する図である。
【
図11】
図6に示すコイル中間材の変形例を示す図である。
【
図12】第2の実施の形態に係るコイル部品の断面図である。
【
図13】第3の実施の形態に係るコイル部品の斜視図である。
【
図15】
図13に示すコイル部品を製造するためのコイル中間材を示す図である。
【
図16】第4の実施の形態に係るコイル部品の斜視図である。
【
図18】第5の実施の形態に係るコイル部品の斜視図である。
【
図21】
図18に示すコイル部品の製造方法の一例を説明する図である。
【
図22】
図18に示すコイル部品の製造方法の一例を説明する図である。
【
図23】
図18に示すコイル部品の製造方法の一例を説明する図である。
【
図24】
図18に示すコイル部品の製造方法の一例を説明する図である。
【
図25】
図18に示すコイル部品の製造方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら各実施の形態について説明する。
【0035】
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」などの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば「シート」は、フィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0036】
<<第1の実施の形態>>
図1は、第1の実施の形態に係るコイル部品10が適用されるワイヤレス電力伝送システムSを概略的に示す。まず、ワイヤレス電力伝送システムS(以下、電力伝送システムSと略す。)について
図1を参照しつつ説明する。なお、電力伝送システムSに第1の実施の形態とは異なる実施の形態に係るコイル部品が適用され得ることは言うまでもない。
【0037】
<ワイヤレス電力伝送システム>
電力伝送システムSは、送電装置1と、受電装置2とを備える。送電装置1は、コイル部品10と、高周波電流供給部1Aとを含む。送電装置1におけるコイル部品10は、送電コイルとして機能する。高周波電流供給部1Aは、送電コイルとしてのコイル部品10に高周波電流を供給する。
【0038】
受電装置2は、コイル部品10と、変換部2Aとを含む。受電装置2におけるコイル部品10は、受電コイルとして機能する。変換部2Aは、コイル部品10で生じる高周波電流を整形する。変換部2Aは、高周波電流を直流電流に変換する整流回路などを有する。変換部2Aは、例えば複数のダイオードを含む全波整流回路と、平滑化コンデンサーと、を備えて構成されてもよい。
【0039】
本実施の形態では、送電装置1及び受電装置2のそれぞれがコイル部品10を含む。ただし、送電装置1及び受電装置2のうちの一方のみにコイル部品10が用いられ、他方には異なる形式のコイル部品が用いられてもよい。
【0040】
送電装置1から受電装置2にワイヤレス(非接触)で電力を伝送する際には、送電装置1が、高周波電流供給部1Aから送電コイルとしてのコイル部品10に所定の周波数の高周波電流を供給する。この際、コイル部品10には、電磁誘導により磁界が生じる。そして、この磁界の影響で、受電装置2では、受電コイルとしてのコイル部品10に高周波電流が生じる。すなわち、受電装置2は送電装置1から磁界を受信して又は送電装置1での磁界の影響を受けて、電磁誘導により高周波電流を通流させる。変換部2Aは、この高周波電流を直流電流に変換し、変換した直流電流を例えば図示しないバッテリに供給する。
【0041】
図1に示す電力伝送システムSは、電力伝送方式として、磁界共鳴方式を採用している。ただし、本実施の形態に係るコイル部品10は、電磁誘導方式の電力伝送システムで用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、電気自動車にワイヤレスで電力を伝送するシステムとして構成される。この場合、送電装置1は、道路、駐車場などに設置される。受電装置2は、電気自動車に設置される。
【0042】
ただし、電力伝送システムSの用途は、電気自動車への電力伝送に限られるものではない。例えば、電力伝送システムSは、ドローンなどの飛行体、ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、海中における潜水艇や、探査ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。また、コイル部品10の用途は、ワイヤレス電力伝送システムに限られない。例えば、コイル部品10は、トランス、DC-DCコンバータ、アンテナなどに用いられてもよい。
【0043】
<コイル部品>
以下、コイル部品10について説明する。
図2は、コイル部品10の平面図である。
図3は、コイル部品10の一部の斜視図であり、詳しくは
図2のV-V線に沿って切断されたコイル部品10の一部を俯瞰した斜視図である。
図4は、
図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5は、
図2のV-V線に沿う断面図である。
【0044】
図2乃至
図5に示すように、コイル部品10は、第1平面コイル11と、第1保持部材20と、第1接続端子51と、第2接続端子52と、を備えている。
【0045】
第1保持部材20は第1平面コイル11と重なり、第1平面コイル11を保持している。すなわち、第1保持部材20と第1平面コイル11は一体化されている。なお、
図2では、第1接続端子51及び第2接続端子52が二点鎖線にて簡略的に示されている。以下、コイル部品10の各部について詳述する。
【0046】
(第1平面コイル)
第1平面コイル11は渦巻形状であり、導電材料から形成される。本実施の形態では、第1平面コイル11が銅を含む。具体的には、第1平面コイル11は銅から形成される。ただし、第1平面コイル11は、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成されてもよい。
【0047】
図2及び
図3に示すように、第1平面コイル11は板状であり、第1平面コイル11が渦巻形状に周回する方向(言い換えると渦巻形状で延びる方向)に直交する方向での第1平面コイル11の断面形状は、矩形状である。
【0048】
図2に示す符号C1は、第1平面コイル11の渦巻形状の中心を通る第1平面コイル11の中心軸線を示している。以下、第1平面コイル11の軸方向と言う場合、その方向は、中心軸線C1上を延びる方向又は中心軸線C1に平行な方向を意味する。また、中心軸線C1に直交する方向を第1平面コイル11の径方向と言う。第1平面コイル11は、軸方向で互いに反対となる第1の面11Aおよび第2の面11Bを含む。第1平面コイル11は、第2の面11Bで第1保持部材20と対面する。
【0049】
図2に示すように、第1平面コイル11は、複数のターン部11nにより渦巻形状をなす導電体11Eを有する。第1平面コイル11の複数のターン部11nは、渦巻形状の中心軸線C1に直交する方向(径方向)に配列される。詳しくは、当該複数のターン部11nは、渦巻形状の中心軸線C1から径方向の外方に向かって中心軸線C1から次第に離れるように接続される。そして、これにより渦巻形状が形成される。
【0050】
ターン部11nは、基本的には線状の導体部分が環状をなさずに中心軸線C1の周りを360度周回する形状である。いわゆる平面コイルである場合には、ターン部11nの両端部は、径方向にずれる。複数のターン部11nでは、或るターン部11nの径方向の外方の端部に他のターン部11nの径方向の内方の端部が接続し、他のターン部11nが中心軸線C1から離れるように延びていく。
【0051】
以下では、複数のターン部11nのうちの中心軸線C1に最も近いものを、ターン部111と称す場合がある。また、ターン部111に接続するターン部を、ターン部112と称す場合がある。本実施の形態では、複数のターン部11nが、5個のターン部111~115で構成される。以下において複数のターン部11nのそれぞれに共通となる事項を説明する際には、基本的に、ターン部11nと称す。
【0052】
本実施の形態では、ターン部11nが矩形状をなすように周回する。ただし、ターン部11nは、円形をなすように周回する形状でもよい。なお、本明細書及び本開示で言う渦巻形状とは、螺旋状に巻いた平面曲線の形を意味する。ここで言う平面曲線には、図示のような折れ線状に曲がりつつ繰り返し周回する平面パターンも含む。また、言い換えると、渦巻形状は、第1平面コイル11の中心軸線C1の周りを、次第に外側に位置するように周回する形状である。
【0053】
中心軸線C1に最も近いターン部111の径方向の内方の端部(中心軸線C1に近い端部)は、第1接続端子51と電気的に接続される。一方で、複数のターン部11nのうちの中心軸線C1から最も離れるターン部115の径方向の外方の端部(中心軸線C1から離れる方の端部)は、第2接続端子52と接続している。
【0054】
ここで、第1平面コイル11(ターン部11n)の径方向の内方とは、当該径方向において中心軸線C1に近づく方向を意味する。また、第1平面コイル11(ターン部11n)の径方向の外方とは、当該径方向において中心軸線C1から離れる方向を意味する。また、中心軸線C1は、本実施の形態では次のようにして定められる。まず、最内周のターン部111の径方向の内方の端部から最内周のターン部111と相似の形状の線状の仮想ターン部を径方向の内方に渦巻形状をなすように順次描画していく。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部が描画できるまで描画を継続する。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部の径方向の内方の領域を、渦巻形状の周方向及び径方向に直交する方向に通過する線が、中心軸線C1として定められる。
【0055】
また、
図3、
図4等を参照し、本実施の形態における第1平面コイル11は、ターン部11nの内周縁及び/又は外周縁から延び、ターン部11nから離れるように軸方向に折れ曲がる突出片11Tをさらに含む。突出片11Tは、第1保持部材20に引っ掛かる状態で接している。これにより、本実施の形態に係るコイル部品10では、第1平面コイル11が第1保持部材20に対してずれ難くなる。このような突出片11Tの詳細については、後述する。
【0056】
本実施の形態における第1平面コイル11は、一例として銅板から渦巻形状に打ち抜かれて形成される。
【0057】
第1平面コイル11の厚さ(導電体11Eの厚さ)は、例えば0.1mm以上1.0mm以下でもよい。また、第1平面コイル11の半径(中心軸線C1から径方向で最も離れた部分までの距離)は80mm以上でもよく、80mm以上450mm以下でもよい。また、断面形状が矩形となる第1平面コイル11(導電体11E)のアスペクト比は、第1平面コイル11(導電体11E)の径方向幅(径方向での幅)を第1平面コイル11(導電体11E)の厚さで割ることにより定められる。第1平面コイル11(導電体11E)のアスペクト比は、40以下でもよいし、2以上12以下でもよいし、3以上10以下でもよい。
【0058】
磁界共鳴方式で電気自動車に電力を伝送する場合、10KHzから200KHz、特に75KHz以上100KHz以下、さらに79KHzから90KHzの高周波電流の周波数帯で、1Kw以上、望ましくは5Kw以上の電力を伝送可能とすることが望ましい。この場合、銅で形成される第1平面コイル11の厚さは、0.2mm以上であることが好ましい。この観点で、第1平面コイル11の厚さの下限値が、0.2mmに設定されてもよい。また、電気自動車に電力を伝送する場合、サイズが過剰に大きいことは望まれず、サイズを制限されることがある。この観点で、第1平面コイル11は、詳しくは第1平面コイル11の導電体11Eは、一辺が800mmの正方形に収まるサイズで形成されることが好ましい。
【0059】
また、第1平面コイル11の線幅(導電体11Eの線幅)、すなわち各ターン部11nの径方向幅(径方向での幅)は、特に限られない。ただし、例えば79KHzから90KHzの高周波電流の周波数帯で、1Kw以上、望ましくは5Kw以上の電力を伝送可能とすることを考慮すると、ターン部11nの径方向幅は、2mm以上20mm以下でもよく、2mm以上16mm以下、2mm以上12mm以下、2mm以上8mm以下でもよい。また、第1平面コイル11のターン数は、4以上12以下でもよいが、特に限られない。
【0060】
(第1保持部材)
第1保持部材20は、第1平面コイル11の第2の面11Bと対面するように第1平面コイル11と重なり、第1平面コイル11を保持している。第1保持部材20は、それぞれ第1平面コイル11の径方向に延び拡がる第1の面20A及びその反対の第2の面20Bを含み、第1の面20Aは、第1平面コイル11を重ねられる面である。第1平面コイル11と第1保持部材20とが重ねられた状態では、第1平面コイル11の複数のターン部11nのそれぞれが第1保持部材20に接する状態となる。なお、第1平面コイル11を重ねられる第1の面20Aとは、第1平面コイル11と接する面と、この面と同じ方向を向く面であって、第1平面コイル11と接しない面と、を含む面のことを意味する。
【0061】
コイル部品10では、例えば電力を電送する場合、第1平面コイル11で生じる磁界を第1保持部材20に通してもよい。本実施の形態では、磁界を第1保持部材20に通すことが想定されている。したがって、第1保持部材20は、磁界を妨げないようにするため及び渦電流が発生しないようにするために、非導電性(絶縁性)且つ非磁性であることが好ましい。
【0062】
非導電性(絶縁性)且つ非磁性が好ましい点を考慮し、第1保持部材20の材料は、例えば、樹脂であり、繊維強化プラスチックでもよい。より具体的には、第1保持部材20の材料は、ガラス繊維強化ポリアミドでもよい。ただし、第1保持部材20の材料は特に限られるものではない。例えば、ガラス繊維が含まれなくてもよい。また、ポリアミド以外の熱可塑性樹脂又は熱硬化樹脂が用いられてもよい。なお、絶縁性とは、体積抵抗率が、1010Ω・m以上であることを意味する。非磁性とは、磁性を示さないことを意味する。
【0063】
第1保持部材20による第1平面コイル11の保持は、第1保持部材20と第1平面コイル11と一体化されることによりなされる。本実施の形態では、第1平面コイル11と、第1保持部材20、厳密にはその成形材料とを熱プレスすることにより、第1平面コイル11と、第1保持部材20とが一体化される。このような一体化は、例えば金属である第1平面コイル11の表面の凹凸に第1保持部材20が噛み込むことによりなされる。
【0064】
ここで、第1平面コイル11と第1保持部材20は異種の材質であるため、強固な密着性が得られない場合が生じ得る。そこで、本実施の形態における第1平面コイル11は、上述した突出片11Tを含む。そして、第1保持部材20は、第1の面20Aに溝22を含み、突出片11Tは、溝22の内面に引っ掛かるようにして接している。
【0065】
図2に示すように、溝22はターン部11nに沿って渦巻状に延びている。詳しくは、溝22は、最内周のターン部111の径方向の内方の位置からターン部111に沿って延びた後、隣り合うターン部11nの間を順次通るように延びる。径方向に切断した場合の溝22の断面形状は矩形状であり、溝22の内面は、
図3及び
図4に示すように、底面22Aと、底面22Aから立ち上がる一対の側面22Bと、を含む。ただし、溝22の形状は特に限られない。例えば本実施の形態における溝22は渦巻形状に形成されているが、例えば溝22は隣り合うターン部11nの間において周方向に間欠的に形成されてもよい。また、溝22の断面形状は、台形状や三角形状でもよい。
【0066】
(接続端子)
図2に示すように、第1接続端子51は、第1平面コイル11におけるターン部111の径方向の内方の端部に接続されている。第2接続端子52は、第1平面コイル11におけるターン部115の径方向の外方の端部に接続されている。第1接続端子51及び第2接続端子52は、例えば高周波電流供給部1A又は変換部2Aとの接続の際に用いられ得る。第1接続端子51とターン部111との接続及び第2接続端子52とターン部115との接続は、超音波接合で行われてもよい。ただし、その接続手法は限られず、例えば導電性接着剤による接続が採用されてもよい。
【0067】
<第1平面コイルにおける突出片>
以下、突出片11Tについて詳述する。
図2乃至
図4に示すように、突出片11Tは、複数のターン部11nのうちの少なくとも一つのターン部11nの内周縁及び/又は外周縁から延び、ターン部11nから離れるように軸方向に折れ曲がっている。本実施の形態では、一例として、ターン部11nの全てに突出片11Tが設けられている。
【0068】
詳しくは、最内周のターン部111では、複数の突出片11Tが外周縁のみから延びる。その他のターン部112~115では、複数の突出片11Tが、ターン部112~115それぞれの内周縁及び外周縁から延びる。各ターン部11nに設けられる複数の突出片11Tは、周方向に間隔を空けて設けられている。また、複数のターン部11nに設けられる複数の突出片11Tには、径方向に並ぶ突出片11Tの群が含まれ、図示の例では径方向に並ぶ突出片11Tの群が周方向に90度間隔で形成されている。ただし、突出片11Tの数や形成位置は特に限られない。
【0069】
なお、ターン部11nの内周縁とは、ターン部11nにおける中心軸線C1側(径方向で内方)を向く部分のことであり、ターン部11n外周縁とは、ターン部11nにおける中心軸線C1から離れる方向(径方向で外方)を向く部分のことである。
図2においては、説明の便宜のために最外周のターン部115の内周縁が符号11iによって示され、ターン部115の外周縁が符号11eによって示されている。
【0070】
突出片11Tは、上述したように溝22の内面に引っ掛かるようにして接し、詳しくは、突出片11Tは、径方向で溝22の内面に接している。本実施の形態における第1平面コイル11は、各ターン部11nが第1保持部材20における溝22が形成されない部分に接するように第1保持部材20に重なる。すなわち、各ターン部11nは、溝22の外側に位置している。この状態において、突出片11Tは、ターン部11nから一例として直角に折れ曲がって溝22の底面22Aに向かって延び、溝22の側面22Bに接している。
【0071】
より詳しくは、
図4及び
図5を対比して明らかなように、本実施の形態では溝22が側面22Bに凹所23を含み、突出片11Tの少なくとも一部(本実施の形態では全部)が、凹所23に位置する。言い換えると、突出片11Tの少なくとも一部は、凹所23に嵌め込まれ、第1保持部材20に埋め込まれている。突出片11Tと凹所23の内面とは、望ましくはアンカー効果で接合されるが、突出片11Tと凹所23は互いに接する又は近接する状態でもよい。また、溝22に凹所23が形成されなくてもよく、突出片11Tは平坦状の溝22の側面22Bに接してもよい。
【0072】
本実施の形態では突出片11Tがターン部11nから直角に折れ曲がるように延びているが、突出片11Tはターン部11nから溝22の底面22Aに向かって斜め方向に延びてもよい。また、本実施の形態では突出片11Tが底面22Aまで到達しないが、突出片11Tは、底面22Aに接する又は底面22Aに埋め込まれるように形成されてもよい。
【0073】
ターン部11nにおける第2の面11Bから突出片11Tの先端部分までの長さは、例えば1mm以上でもよく、1.5mm以上でもよく、2mm以上でもよい。第1平面コイル11と第1保持部材20との位置ずれを抑制する観点で、突出片11Tの長さは、例えば1mm以上であることが望ましいが、大きくなり過ぎると電流の通流の観点で望ましくない場合があり、例えば20mm以下でもよく、15mm以下でもよい。ただし、突出片11Tのサイズや形状は特に限られない。
【0074】
また、
図3及び
図4に示すように、ターン部11nは、突出片11Tと径方向で隣り合う位置に貫通孔11Hを有する。そして、貫通孔11Hは、第1保持部材20における溝22が形成されない部分に形成された窪み部24と重なっている。後述するが、第1平面コイル11と第1保持部材20とは金型200を用いた熱プレスにより一体化される。この熱プレスの際、第1平面コイル11の貫通孔11Hに、金型200に形成された位置決め突起204が通される。窪み部24は、位置決め突起204が第1保持部材20を形成する成形材料に埋入することで形成される、製造工程に起因する穴である。このような貫通孔11Hや窪み部24は設けられなくてもよい。
【0075】
<コイル部品10の製造方法>
以下、コイル部品10の製造方法の一例について
図6乃至
図11を参照しつつ説明する。
【0076】
図6は、コイル部品10を製造するためのコイル中間材11Mの平面図である。コイル部品10を製造する際には、コイル中間材11Mが準備される。コイル中間材11Mは第1平面コイル11の中間材に対応する部材である。第1平面コイル11は、詳しくは、銅板から打ち抜かれたコイル中間材11Mからさらに打ち抜かれることによって形成される。
【0077】
コイル中間材11Mは、径方向に配列される複数のターン部11nと、径方向に隣り合うターン部11nを接続する複数の接続部11Sと、最外周のターン部115を囲むように位置して且つターン部115の外周縁から延びる接続部11Sに接続される枠部11Fと、を含む。第1平面コイル11は、より詳しくは、コイル中間材11Mから枠部11Fが分離され、且つ接続部11Sが、これが接続する隣り合うターン部11nのうちのいずれか一方から分離されることにより、形成される。複数の接続部11Sには、径方向に並ぶ接続部11Sの群が含まれ、図示の例では径方向に並ぶ接続部11Sの群が周方向に90度間隔で形成されている。ただし、接続部11Sの数や形成位置は特に限られない。接続部11Sは、コイル中間材11Mの反りを抑えるために設けられている。
【0078】
また、コイル部品10を製造する際には、
図7及び
図8に示すように金型200が準備される。
図7は金型200の一部の斜視図を示し、
図8は金型200の断面を概略的に示している。金型200は、第1平面コイル11を載せる平坦な設置面200Sを有する板状の本体部分201を備える。本体部分201には、設置面200Sから突出し、渦巻形状で延びる凸部202が形成される。
図4及び
図5も参照し、凸部202は、第1保持部材20の溝22を形成する部分である。また、本実施の形態では、本体部分201における凸部202が形成されない部分、すなわち設置面200Sの適所に上述した複数の位置決め突起204が形成される。
【0079】
以上のようなコイル中間材11Mと金型200とが準備された後、金型200にコイル中間材11Mが載せられる。この際、本実施の形態では、
図7及び
図8に示すように、コイル中間材11Mは、金型200における凸部202に接続部11Sが対面し、接続部11Sで接続される隣り合うターン部11nが金型200における凸部202とは異なる部分(設置面200S)に対面するように、金型200に載せられる。そして、凸部202に接続部11Sが接するように第1平面コイル11が載せられることにより、ターン部11nは設置面200Sから浮いた状態になる。また、第1平面コイル11は、ターン部11nに形成された貫通孔11Hに位置決め突起204が通されるように金型200に載せられる。
【0080】
その後、
図8に示すように、コイル中間材11Mの上に成形材料220が設置される。そして、金型200は、図示しない他の金型との間でコイル中間材11M及び成形材料220を熱プレスする。この熱プレスにおいては、成形材料220が軟化し溶融状態になる。また、成形材料220がコイル中間材11Mを介して金型200に押し付けられ、この際、凸部202が接続部11Sを介して成形材料220に相対的に押し込まれる。これにより、成形材料220に凸部202及び位置決め突起204が埋入するとともに、成形材料220が設置面200Sまで充填される。そして、この際、本実施の形態では凸部202が接続部11Sを押すことで、
図9に示すように、接続部11Sが、接続する隣り合うターン部11nのうちのいずれか一方から分離されるとともに、ターン部11nから離れるように折り曲げられる。これにより、接続部11Sが接続する隣り合うターン部11nのうちのいずれか一方から接続部11Sが分離され、この分離された接続部11Sから突出片11Tが形成される。
【0081】
本実施の形態では、接続部11Sの径方向の中間位置が切断され、これにより、隣り合うターン部11nに接続していた接続部11Sから、内側のターン部11nの外周縁から延びる突出片11Tと、外側のターン部11nの内周縁から延びる突出片11Tと、が形成される。このように接続部11Sから一対の突出片11Tを形成する場合には、金型200によって接続部11Sの径方向の中間位置を切断する必要がある。このような切断を適正に行うために、例えば
図11に示すように、接続部11Sは、断面積が局所的に小さくなる狭窄部11Saを径方向における接続部11Sの中間の位置に有してもよい。
【0082】
以上のように熱プレスを行った後、成形材料220が硬化されることで、第1平面コイル11と一体化された第1保持部材20が形成される。第1保持部材20には、成形材料220に凸部202が埋入することにより形成された溝22と、位置決め突起204が埋入することにより形成された窪み部24と、が形成される。そして、
図10に示すように、金型200から第1平面コイル11と第1保持部材20とが取り外されることで、コイル部品10が得られる。なお、以上に説明した製造方法は一例である。例えば、金型200と図示しない他の金型との間に成形材料を射出することにより、第1平面コイル11と第1保持部材20とが一体化されてもよい。
【0083】
<コイル部品の用途>
本実施の形態に係るコイル部品10は、上述したワイヤレス電力伝送システムSの送電装置1における送電コイルとして用いることができ、受電装置2における受電コイルとして用いることができる。
【0084】
送電コイルとしてコイル部品10を用いる場合、第1接続端子51及び第2接続端子52が
図1で示したような高周波電流供給部1A又は交流電源に接続される。高周波電流がコイル部品10に供給されると、電流を、第1接続端子51から、第1平面コイル11及び第2接続端子52を介して高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。また、電流を、第2接続端子52から、第1平面コイル11及び第1接続端子51を介して高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。これにより、平面コイルの中心軸線に沿う磁力線を含む磁界を発生させることができる。
【0085】
一方で、受電コイルとしてコイル部品10を用いる場合、第1平面コイル11の内側を通過するように磁力線を含む磁界を受ける又は発生させることで、第1平面コイル11に高周波電流を発生させることができる。そして、この高周波電流を、第1接続端子51又は第2接続端子52から外部の装置に供給できる。
【0086】
また、コイル部品10は、トランス、アンテナなどでも用いることができる。例えばトランスにおける一次側コイルとしてコイル部品10が機能する場合には、第1接続端子51及び第2接続端子52が交流電源に接続される。そして、高周波電流を供給されることで、平面コイルの中央側から鉄心に磁束を供給できる。
【0087】
以上に説明した本実施の形態にかかるコイル部品10は、複数のターン部11nと、複数のターン部11nのうちの少なくとも一つのターン部11nの内周縁及び/又は外周縁から延び、ターン部11nから離れるように折れ曲がる突出片11Tと、を含む第1平面コイル11と、第1平面コイル11の複数のターン部11nに接する状態で第1平面コイル11と重なる第1保持部材20と、を備える。そして、第1保持部材20は、第1平面コイル11を重ねられる第1の面20Aに溝22を含み、突出片11Tは、径方向で溝22の内面に接している。
【0088】
このコイル部品10では、突出片11Tが径方向で溝22の内面に接している。これにより、第1平面コイル11と一体化される部材としての第1保持部材20からの第1平面コイル11の浮きやずれを抑制できる。特に本実施の形態では、突出片11Tが主に製造過程で本来的な機能を発揮する部材である接続部11Sにより形成されることで、低コストで且つ効率的に突出片11Tを形成できる。また、第1保持部材20の成形する際、特に成形に使用する金型200を用いて接続部11Sの切断が行われるため、コイル部品10の製造効率を向上できる。すなわち、コイル中間材11Mの接続部11Sを切断した後、第1保持部材20の成形を行ってもよいが、本実施の形態では、このような手順による製造に対して製造効率を大幅に向上できる。
【0089】
また、突出片11Tはターン部11nの内周縁及び/又は外周縁に接続されることで、突出片11Tがターン部11nにおける電流の通流に悪影響を与えることが抑制される。したがって、本実施の形態によれば、コイル部品10の性能の低下を抑制しつつ、第1保持部材20からの第1平面コイル11のずれを抑制できる。実際上、本件発明者の実験やシミュレーションでは、突出片11Tによってコイル部品10の性能が損なわれることは確認されていない。ただし、突出片11Tの数が過剰に多くなるとコイル部品10の性能への影響が大きくなることが懸念される。この観点で、例えば1つのターン部11nにおける突出片11Tの接続部分の割合は、1つのターン部11nの全長に対して20%以下、10%以下、5%以下などに設定されてもよい。
【0090】
また、本実施の形態では、溝22が凹所23を含み、突出片11Tの少なくとも一部が、凹所23に位置する。これにより、第1平面コイル11が第1保持部材20からのずれを効果的に抑制できる。また、突出片11Tは、ターン部11nの内周縁及び外周縁のそれぞれから延びる。これによっても、第1平面コイル11が第1保持部材20からのずれを効果的に抑制できる。
【0091】
<<第2の実施の形態>>
次に、第2の実施の形態に係るコイル部品10aについて説明する。
図12は、第2の実施の形態に係るコイル部品10aの部分的な断面図である。なお、以下に説明する実施の形態における構成部分のうちの第1の実施の形態と同一又は対応するものには同一の符号を付ける。構成が同じである場合には、その詳細な説明は省略する。
【0092】
第2の実施の形態に係るコイル部品10aは、第1の実施の形態で説明した第1平面コイル11及び第1保持部材20に加えて、第2保持部材30を備えている。第2保持部材30は、第1平面コイル11を第1保持部材20と挟み込みようにして第1平面コイル11及び第1保持部材20と一体化されている。また、本実施の形態における第2保持部材30は磁性を有する。詳しくは、第2保持部材30は磁性を有し、且つ高い電気抵抗、好ましくは絶縁性を有する。ただし、第2保持部材30は絶縁性を有し、磁性を有さなくてもよい。
【0093】
第2保持部材30について詳述すると、第2保持部材30は、第1平面コイル11における第1保持部材20と接する第2の面11Bの反対の第1の面11Aに接し、シート状に延び広がる本体部分31と、本体部分31から隣り合うターン部11nの間を通り、溝22に充填される壁部分32と、を含む。第2保持部材30は全体として磁性を有しており、壁部分32も磁性を有する。このような磁性を有する壁部分32が第1平面コイル11から突出するように形成されることで、コイル部品10aの性能は向上し得る。
【0094】
第2保持部材30の比透磁率は、2.0以上であることが好ましく、2.0以上10.0以下でもよい。第2保持部材30の比透磁率は、5.0以上であることがより好ましく、5.0以上10.0以下でもよい。第2保持部材30の比透磁率は特に限られないが、大き過ぎると第2保持部材30の柔軟性や強度が不所望に損なわれる場合がある。したがって、第2保持部材30の比透磁率は200以下でもよい。
【0095】
また、第2保持部材30は壁部分32を備えることにより、コイル性能を効果的に向上できる。第1平面コイル11に接続される基部から先端部までの壁部分32の高さは特に限られるものではないが、例えば0.5mm以上でもよく、1.0mm以上でもよい。壁部分32の高さは高い程、渦電流損失の抑制効果が高くなり且つ結合係数が高くなる傾向がある。一方で、壁部分32は、高くなる程、根元を起点として破損しやすくなる傾向がある。そこで、壁部分32の高さは、例えば10mm以下にしてもよい。
【0096】
本実施の形態における第2保持部材30は、一例として、樹脂と、磁性体で構成される複数又は無数の磁性体粒子と、を含む。磁性体粒子は、保持材料としての樹脂に保持される。樹脂は、非磁性且つ絶縁性である。
【0097】
磁性体粒子は、フェライト特に軟磁性材料のフェライト、ナノ結晶磁性体、ケイ素鋼、電磁軟鉄、及びアモルファス金属のうちのいずれか又は二種以上から形成されてもよい。保持材料としての樹脂は、ガラス繊維強化ポリアミドでもよい。すなわち、当該樹脂は、熱可塑性樹脂(熱可塑性材料)としてのポリアミドと、ガラス繊維とを含む材料から形成されてもよい。ただし、第2保持部材30の成形材料は特に限られるものではなく、例えば第2保持部材30に含まれる樹脂は熱硬化性樹脂でもよい。
【0098】
以上のような第2の実施の形態によれば、第2保持部材30によって第1平面コイル11の第1保持部材20からのずれが確実に抑制される。また、第2保持部材30が磁性を有することで、コイル部品10aの性能を向上させることができる。
【0099】
<<第3の実施の形態>>
次に、第3の実施の形態に係るコイル部品10bについて説明する。
図13は、第3の実施の形態に係るコイル部品10bの斜視図であって、詳しくはコイル部品10bを構成する第1平面コイル11の斜視図である。
図14はコイル部品10bの部分的な断面図である。なお、以下に説明する実施の形態における構成部分のうちの第1及び第2の実施の形態と同一又は対応するものには同一の符号を付ける。構成が同じである場合には、その詳細な説明は省略する。
【0100】
図13及び
図14に示すように、本実施の形態では突出片11Tがターン部11nの内周縁のみから延びる。図示省略するが、1つのターン部11nの内周縁からは複数の突出片11Tが延び、これら複数の突出片11Tは周方向に間隔を空けて設けられている。なお、
図13においては第1保持部材20の図示が省略されているが、実際には、
図13における第1平面コイル11の上方に第1保持部材20が位置する。
【0101】
図15は、コイル部品10bにおける第1平面コイル11を形成するためのコイル中間材11Mを示す。本実施の形態では、コイル中間材11Mにおける接続部11Sが、断面積が局所的に小さくなる狭窄部11Saを有する。狭窄部11Saは、径方向における接続部11Sの内方の端部に形成されている。
【0102】
以上に説明した実施の形態では、接続部11Sが比較的容易に形成され得る。また、1つの接続部11Sの長さを大きく確保することによる位置ずれ抑制効果が得られる。なお、本実施の形態においても、第2の実施の形態で説明した第2保持部材30が用いられてもよい。
【0103】
<<第4の実施の形態>>
次に、第4の実施の形態に係るコイル部品10cについて説明する。
図16は、第4の実施の形態に係るコイル部品10cの斜視図であって、詳しくはコイル部品10cを構成する第1平面コイル11の斜視図である。
図17はコイル部品10cの部分的な断面図である。なお、以下に説明する実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第3の実施の形態と同一又は対応するものには同一の符号を付ける。構成が同じである場合には、その詳細な説明は省略する。
【0104】
図16及び
図17に示すように、本実施の形態では突出片11Tがターン部11nの外周縁のみから延びる。図示省略するが、1つのターン部11nの外周縁からは複数の突出片11Tが延び、これら複数の突出片11Tは周方向に間隔を空けて設けられている。なお、
図16においては第1保持部材20の図示が省略されているが、実際には、
図16における第1平面コイル11の上方に第1保持部材20が位置する。
【0105】
本実施の形態における突出片11Tは、ターン部11nから溝22の側面22Bに沿って延びる第1部分11T1と、第1部分11T1の先端から折れ曲がり、溝22の底面22Aに沿って延びる第2部分11T2とを含む。第2部分11T2は底面22Aに形成された凹所に位置している。
【0106】
なお、図示省略するが、コイル部品10cにおける第1平面コイル11を形成するためのコイル中間材は第3の実施の形態と同様の接続部11Sを含み、接続部11Sには狭窄部11Saが形成される。ただし、狭窄部11Saは、径方向における接続部11Sの外方の端部に形成される。
【0107】
以上に説明した実施の形態では、第3の実施の形態と同様の効果が得られる。また、第1平面コイル11に交流電流が流される場合は、一般にターン部11nの内周縁側の部分の電流密度が外周縁側の電流密度がよりも大きくなる。したがって、本実施の形態では、突出片11Tが電流の流れに与える悪影響を効果的に抑制できる。なお、本実施の形態においても、第2の実施の形態で説明した第2保持部材30が用いられてもよい。
【0108】
<<第5の実施の形態>>
次に、第5の実施の形態に係るコイル部品10dについて説明する。
図18は、第5の実施の形態に係るコイル部品10dの斜視図である。
図19は、
図18のA-A線に沿うコイル部品10dの断面図であり、
図20は、
図18のB-B線に沿うコイル部品10dの断面図である。なお、以下に説明する実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第4の実施の形態と同一又は対応するものには同一の符号を付ける。構成が同じである場合には、その詳細な説明は省略する。
【0109】
図18乃至
図20に示すように、本実施の形態に係るコイル部品10dは、第1平面コイル11及び第1保持部材20に加えて、第2保持部材30を備えている。ただし、第1保持部材20の構成及び第2保持部材30の構成は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態とは異なっている。なお、
図18においては、説明の便宜のために、第2保持部材30の図示を省略している。
【0110】
第2保持部材30は、第2の実施の形態と同様に、第1平面コイル11を第1保持部材20と挟み込みようにして第1平面コイル11及び第1保持部材20と一体化されている。また、第2保持部材30は磁性を有する。詳しくは、第2保持部材30は磁性を有し、且つ高い電気抵抗、好ましくは絶縁性を有するが、磁性を有さなくてもよい。一方で、第2保持部材30は、第2平面コイル12を埋め込む点で第2の実施の形態と異なる。第2平面コイル12は、第1平面コイル11と重なるように位置している。本実施の形態では、第2平面コイル12における第1平面コイル11と対面する第2の面12Bの反対の面である第1の面12Aが第2保持部材30から露出するが、第1の面12Aは第2保持部材30によって覆われてもよい。
【0111】
第2平面コイル12は、第1平面コイル11と同様に、その径方向に配列される複数のターン部12nと、複数のターン部12nのうちの少なくとも一つのターン部12nの内周縁及び/又は外周縁から延び、第2平面コイルのターン部12nから離れるように軸方向に折れ曲がる突出片12Tと、を含む。そして、第2平面コイル12の突出片12Tは、径方向で第2保持部材30に接している。すなわち、突出片12Tはターン部12nから第1保持部材20に向かって折れ曲がるように延び、第2保持部材30に埋め込まれている。これにより、突出片12Tは径方向で第2保持部材30に接している。
【0112】
突出片12Tは、詳しくは、ターン部12nから第1保持部材20に向かって折れ曲がるように延びた後、第1保持部材20から離れるように湾曲して延びる。そして、突出片12Tの先端は、外部に露出するターン部12nにおける第1の面12Aと面一又は略面一になっている。
【0113】
また、本実施の形態では、第1保持部材20が、溝22から突出して第2保持部材30に埋め込まれる突起部26をさらに含む。そして、突起部26は、第2平面コイル12の突出片12Tと径方向で向き合っている。詳しくは、突起部26先端側の部分が突出片12Tの先端側の部分と径方向で向き合い、突出片12Tの先端側の部分は突起部26に沿って延びている。突起部26は、詳しくは溝22の底面22Aから隆起するように形成されるベース部27の先端面、具体的にはその中央部分から突出するように延びている。ベース部27は、溝22の深さの中間位置、詳しくは概略中点まで盛り上がり、溝22の径方向で対向する側面22B間にわたって延びている。
【0114】
第2平面コイル12は、第1平面コイル11を形成するコイル中間材11Mと同様の後述の第2コイル中間材12M(
図22参照)から形成される。第2コイル中間材12Mは、コイル中間材11Mの接続部11Sと同様の接続部12Sを含む。突起部26は、製造過程において接続部12Sを切断するための部材である。
【0115】
また、第1保持部材20は、第1平面コイル11を重ねられる第1の面11Aにおける溝22と溝22に対して径方向の内方のターン部11nとの間の部分及び溝22と溝22に対して径方向の外方のターン部11nとの間の部分のうちの少なくともいずれかに設けられるスペーサ部28を含む。スペーサ部28は、第1平面コイル11から離れるように突出している。本実施の形態では、スペーサ部28が、第1の面11Aにおける溝22と溝22に対して径方向の内方のターン部11nとの間の部分及び溝22と溝に対して径方向の外方のターン部11nとの間の部分の両方に形成されている。
【0116】
スペーサ部28は突起部26と径方向で隣り合う位置に形成される。また、スペーサ部28が形成される部分には、第1平面コイル11の突出片11Tは位置しない。スペーサ部28は、突出片12Tが第1平面コイル11に近づくように折れ曲がるのを制限している。また、スペーサ部28は、溝22の側面22Bに沿って延びる連結部29によりベース部27と接続されている。また、第1平面コイル11の突出片11Tと第2平面コイル12の突出片12Tは、互いに重ならず周方向にずれている。
【0117】
本実施の形態では、突起部26と連結部29との間であって、ベース部27と突出片12Tとの間に空間が形成され、この空間に第2保持部材30の一部が充填されている。この空間に充填された第2保持部材30の一部は、壁部分32の一部である。
【0118】
以上に説明した第1保持部材20における突起部26、ベース部27及びスペーサ部28は、
図7及び
図8に示した金型200の凸部202において凹み、穴を形成することによって形成され得る。すなわち、本実施の形態では、突起部26、ベース部27及びスペーサ部28が第1保持部材20において一体に成形されるが、これら突起部26、ベース部27及びスペーサ部28を含む治具を形成し、当該治具が溝22に嵌め込まれてもよい。また、第1保持部材20における突起部26の周辺の形状は種々変更可能であり、例えばベース部27は無くもよい。
【0119】
以下、
図21乃至
図25を参照しつつコイル部品10dの製造方法の一例について説明する。
【0120】
まず、
図21に示すプレコイル部品10Pが準備される。プレコイル部品10Pは、第1の実施の形態に係るコイル部品10と同様の製造工程により製造され、同様の構造を備えるが、突起部26等を備える点で異なる。詳しくは、プレコイル部品10Pは、第1平面コイル11及び第1保持部材20を備える。一方で、プレコイル部品10Pでは、第1保持部材20が第1平面コイル11を重ねられる第1の面11Aに溝22を含み、溝22は、隣り合うターン部11nの間から開放するように形成される。第1保持部材20はさらに、溝22から突出する突起部26を含む。突起部26は、溝22から第1平面コイル11を越えるように突出する。言うまでもないが、第1保持部材20はベース部27及びスペーサ部28を含む。
【0121】
また、
図22に示すように第2コイル中間材12Mが準備され、プレコイル部品10Pに第2コイル中間材12Mが重ねられる。第2コイル中間材12Mは、径方向に配列される複数のターン部12nと、径方向に隣り合うターン部12nを接続する接続部12Sと、を含む。詳しくは、第2コイル中間材12Mは、接続部12Sが突起部26に対面するようにプレコイル部品10Pにおける第1平面コイル11に重ねられる。なお、本実施の形態では、より詳しくは
図23に示すようにプレコイル部品10Pに第2成形材料230が設置された後に、第2成形材料230を介して第2コイル中間材12Mが重ねられる。第2成形材料230は、本例では液状又はシート体である硬化前の熱硬化性樹脂であるが、第2成形材料230は熱可塑性樹脂でもよい。
【0122】
その後、
図23に示すように対向金型240が、第2コイル中間材12Mと向き合うように配置される。対向金型240は、第2コイル中間材12Mと対面する面に複数の切断補助突起部241を含む。本実施の形態では、対向金型240が、第1保持部材20における突起部26の数の2倍の数の切断補助突起部241を含む。複数の切断補助突起部241には、互いに近接して位置する2つの切断補助突起部241でなる複数のペアが含まれ、切断補助突起部241のペアは、対向金型240がプレコイル部品10Pに近づけられた際に、その間に突起部26を受け入れ可能であり、且つ各切断補助突起部241が溝22内に進入することが可能となる位置関係で形成されている。なお、
図23では、説明の便宜のために突起部26、ベース部27及びスペーサ部28に対応する部分にハッチングを付けていない。
【0123】
そして、対向金型240とプレコイル部品10Pとの位置関係が、対向金型240とプレコイル部品10Pが重なる方向で見たときに、切断補助突起部241のペアの間に突起部26が位置し且つ各切断補助突起部241が溝22及び接続部12Sに重なる状態になるように調整された後、
図24に示すように、切断補助突起部241が接続部12Sに押し付けられる。これにより、突起部26が相対的に接続部12Sに押し付けられる。この際、接続部12Sが、接続する隣り合うターン部12nのうちのいずれか一方から分離され、ターン部12nから離れるように折り曲げられる。これにより、第2平面コイル12の突出片12Tが接続部12Sから形成される。
【0124】
この際、本実施の形態では、接続部12Sは切断補助突起部241により溝22側に押される一方で、突起部26の押し付けにより切断される接続部12Sの中央側部分は、溝22から離れる方向に曲げられる。これにより、突出片12Tは、ターン部12nから第1保持部材20に向かって折れ曲がるように延びた後、第1保持部材20から離れるように湾曲して延びる。また、接続部12Sは切断補助突起部241により溝22側に押される際には、接続部12Sはスペーサ部28によって曲げを制限されることにより、接続部12Sが第1平面コイル11に過剰に近づく状態が回避される。
【0125】
その後、第2成形材料230が加熱されて硬化されることにより、第2保持部材30が形成される。これにより、
図25に示すようにコイル部品10dが得られる。
【0126】
以上に説明した第5の実施の形態に係るコイル部品10dでは、突出片12Tが径方向で第2保持部材30に接している。これにより、第2平面コイル12と一体化される部材としての第2保持部材30からの第2平面コイル12のずれを抑制できる。特に本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した第1平面コイル11の突出片11Tと同様に、突出片12Tが主に製造過程で本来的な機能を発揮する部材である接続部12Sにより形成されることで、低コストで且つ効率的に突出片12Tを形成できる。
【0127】
以上、本開示の各実施の形態を説明したが、上述の実施の形態には種々の変更を加えてもよい。このような変形例も、本開示の技術的範囲に含まれ得る。
【符号の説明】
【0128】
S…電力伝送システム
1…送電装置
1A…高周波電流供給部
2…受電装置
2A…変換部
10, 10a,10b,10c,10d…コイル部品
10P…プレコイル部品
11…第1平面コイル
11A…第1の面
11B…第2の面
11n…ターン部
11T…突出片
11T1…第1部分
11T2…第2部分
11H…貫通孔
11M…コイル中間材
11S…接続部
11F…枠部
12…第2平面コイル
12A…第1の面
12B…第2の面
12n…ターン部
12T…突出片
12M…第2コイル中間材
12S…接続部
20…第1保持部材
20A…第1の面
20B…第2の面
22…溝
22A…底面
22B…側面
23…凹所
24…窪み部
26…突起部
27…ベース部
28…スペーサ部
30…第2保持部材
200…金型
200S…設置面
201…本体部分
202…凸部
204…位置決め突起
220…成形材料
230…第2成形材料
240…対向金型
241…切断補助突起部
C1…中心軸線