(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097217
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】フランジ部を有する容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
B65D77/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000620
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 利房
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067BA07A
3E067BA10A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BC07A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB27
3E067EE59
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD07
3E067GD10
(57)【要約】
【課題】ヒートシールにより密封可能であると共に、易開封性及び密封性を兼ね備え、容器の内圧が上昇した場合にも耐圧性の低下が有効に防止されている容器を提供する。
【解決手段】開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能な表面シール層を有する容器において、前記フランジ部には、蓋材との接合位置となる環状接合部の内周よりも内側且つ該環状接合部の容器軸方向位置よりも下方に位置する環状の内側段差部が形成されており、前記環状接合部の内周縁と前記内側段差部の外周縁の間に形成される側壁部には、前記表面シール層が形成され、前記内側段差部には、前記環状接合部における表面シール層の厚みよりも薄肉の表面シール層が形成されているか或いは表面シール層が形成されていないことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能な表面シール層を有する容器において、
前記フランジ部には、蓋材との接合位置となる環状接合部の内周よりも内側且つ該環状接合部の容器軸方向位置よりも下方に位置する環状の内側段差部が形成されており、
前記環状接合部の内周縁と前記内側段差部の外周縁の間に形成される側壁部には、前記表面シール層が形成され、
前記内側段差部には、前記環状接合部における表面シール層の厚みよりも薄肉の表面シール層が形成されているか或いは表面シール層が形成されていないことを特徴とする容器。
【請求項2】
前記側壁部が、容器軸方向に延びる垂直面又は容器軸方向下方に行くに従って内径が減少する傾斜面である請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記側壁部の容器軸方向距離が、前記環状接合部における表面シール層の厚みよりも大きい請求項1又は2記載の容器。
【請求項4】
少なくとも前記環状接合部の一部には、容器天面から見て容器径方向外方に突出した、開封するための応力集中部を有する請求項1又は請求項2に記載の容器。
【請求項5】
前記環状接合部の幅方向の内周側の天面の高さが、前記環状接合部の外周側よりも低い請求項1又は請求項2記載の容器。
【請求項6】
前記フランジ部には、前記環状接合部の外周よりも外側且つ前記環状接合部の容器軸方向位置よりも下方に位置する外側段差部が形成されている請求項1又は2記載の容器。
【請求項7】
前記表面シール層が、容器を構成する基材に対して易剥離性を有する請求項1又は2記載の容器。
【請求項8】
容器を構成する基材層に表面シール層が形成された積層構造を有し、容器内面においても表面シール層が形成されている請求項1又は2記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ部を有する容器に関するものであり、より詳細には、フランジ部のシール位置の制御が容易であると共に、易開封性及び密封性の両方を有するように蓋材をヒートシールにより取付け可能なフランジ部を有する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性のある蓋材をフランジ部にヒートシールすることにより密封して成る樹脂製容器は、飲食品用の簡易な容器として広く使用されている。このような樹脂製容器においては、ヒートシールにより、高い密封性と容易に開封できる易開封性の相反する性能を有することが要求されている。
【0003】
この要求に対応する容器として、例えば下記特許文献1には、フランジ部端部にリブ部またはカール部を有する多層容器本体と、該多層容器本体のフランジ部でヒートシールされる蓋材とから成る容器において、該多層容器本体の層間接着力を該フランジ部と該蓋材との接着力よりも小さくなるように構成すると共に、ヒートシール部の内側のフランジ部に環状の切断線を設け、かつリブ又はカール部のフランジ部近傍に切欠きを設けたことを特徴とする易開封性容器が記載されている。
上記特許文献1においては、容器本体の層間接着力をフランジ部と蓋材の接着力よりも弱く設定し、フランジ部と蓋材のヒートシール部の内側に切込みを形成し、開封の際には、リブを引き上げることにより容器本体の内層をフランジ部の外側から切込みまで層間剥離させて容易に開封できることが記載されている。
【0004】
また下記特許文献2には、開口部の周縁にフランジ部を配設する多層容器であって、該容器の少なくとも内層を含む層が剥離可能に形成されており、前記フランジ部上面に2本の周状の切り込みが設けられ、前記2本の周状の切り込みのうち外側の切り込みと連接して、前記フランジ部の上面より低い部分が形成されていることを特徴とする多層容器が提案されている。
上記特許文献2においては、フランジ部の上面にフランジの上面よりも低い部分である凹部が外側の切込みに連接して形成されていることにより、ヒートシール部の外端部が外側の切込みの位置と一致して、開封時においても内層と次層との層端部に応力が集中することにより、容易に層剥離することができ、開封を好適に行うことができること、及びシール精度が悪い場合でもシールリングが凹部の内外方向に変動しても問題なくヒートシールが行えること、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-96060号公報
【特許文献2】特開2005-119692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された多層容器においては、開封に際して、フランジ部の外方からヒートシール層と基材層との間が層間剥離して、ヒートシール部よりも内側に位置する切込みに達して開封可能となるものであるが、ヒートシールの際にヒートシール樹脂が溶融してヒートシール部よりも内側の切込みに入ってしまうと容易に開封ができなくなってしまうおそれがある。また切込みを深く入れると、多層構造容器においては、ガスバリア性中間層の露出のおそれもあることから、フランジ部の厚みを厚くせざるを得ず、経済性が劣るおそれがある。
そのため上記特許文献1及び2の構成においては、ヒートシール部の位置や条件等を精度よく制御する必要があるため、製造が容易でないという問題がある。
またヒートシール部が内側の切込みに近接した位置に形成されていると、容器内圧の上昇により蓋がドーム状に変形した場合に、内側の切込み部分から層間剥離するおそれがあり、耐圧性を維持することが困難になる場合がある。
【0007】
従って本発明の目的は、上述したような問題を生じることなく、フランジ部にヒートシールにより蓋材を密封可能であると共に、易開封性及び密封性を兼ね備え、容器の内圧が上昇した場合にも耐圧性の低下が有効に防止されている容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能な表面シール層を有する容器において、前記フランジ部には、蓋材との接合位置となる環状接合部の内周よりも内側且つ該環状接合部の容器軸方向位置よりも下方に位置する環状の内側段差部が形成されており、前記環状接合部の内周縁と前記内側段差部の外周縁の間に形成される側壁部には、前記表面シール層が形成され、前記内側段差部には、前記環状接合部における表面シール層の厚みよりも薄肉の表面シール層が形成されているか或いは表面シール層が形成されていないことを特徴とする容器が提供される。
【0009】
本発明の容器においては、
(1)前記側壁部が、容器軸方向に延びる垂直面又は容器軸方向下方に行くに従って内径が減少する傾斜面であること、
(2)前記側壁部の容器軸方向距離が、前記環状接合部における表面シール層の厚みよりも大きいこと、
(3)少なくとも前記環状接合部の一部には、容器天面から見て容器径方向外方に突出した、開封するための応力集中部を有すること、
(4)前記環状接合部の幅方向の内周側の天面の高さが、前記環状接合部の外周側よりも低いこと、
(5)前記フランジ部には、前記環状接合部の外周よりも外側且つ前記環状接合部の容器軸方向位置よりも下方に位置する外側段差部が形成されていること、
(6)前記表面シール層が、容器を構成する基材に対して易剥離性を有すること、
(7)容器を構成する基材層に表面シール層が形成された積層構造を有し、容器内面においても表面シール層が形成されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の容器においては、容器フランジ部のヒートシール部となる環状接合部よりも径方向内側且つ環状接合部の上面よりも軸方向下側に位置する内側段差部が形成され、ヒートシール部内周端と内側段差部内に形成された薄肉の表面シール層との間に距離があることから、ヒートシール性樹脂が溶融して樹脂だまりが形成された場合にも、内側段差部の表面シール層に接触することが有効に防止されており、仮に表面シール層と接触した場合でも、シールヘッドによる加圧がされないため容易に樹脂だまりと表面シール層が剥離し、開封性と耐圧性に影響を与えることが有効に防止されている。
また開封時には環状接合部よりも外側から、蓋材と共に表面シール層が容器基材層から容易に剥離し、最終的に内側段差内に形成された薄肉の表面シール層を破断して開封するため、優れた開封性を発現できる。そして内側段差に容器天面から見て容器外側に突出した応力集中部を形成することにより、より少ない力で薄肉の表面シール層を破断することができ、より一層容易に開封することが可能となる。
更に内圧が上昇した場合も、ヒートシール部内周端と内側段差部内に形成された薄肉の表面シール層との間に距離があることから、内側から開封開始されることも有効に予防されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は本発明の容器の一例を示す斜視図であり、(B)は(A)のX部分の断面構造を説明するための図である。
【
図2】
図1に示す容器のフランジ部分を拡大して示す一部拡大断面図である。
【
図3】(A)は
図1に示す容器に蓋材をヒートシールした状態のフランジ部分を拡大して示す一部拡大断面図であり、(B)は(A)のY部分の断面構造を説明するための図である。
【
図4】蓋材をヒートシールした後、容器の内圧が上昇した状態のフランジ部を拡大して示す一部拡大断面図である。
【
図6】開封力の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の容器の一例の斜視図(A)及び層構造(B)を示し、
図2は
図1に示す容器のフランジ部分を拡大して示す断面図である。
全体を1で表す容器は、概略的に言って、底部2及び胴部3と、胴部3の上端から容器半径方向外方に延びるフランジ部4と、フランジ部4の外周縁から垂下する外壁5から成っている。
図2から明らかなように、容器1は、基材層6aと表面シール層6bとから成る積層体6から、表面シール層6bがフランジ部4において蓋材(図示せず)と相対する位置となる上面にとなるように、一体的に成形されている。
なお、基材層6aと表面シール層6bは互いに易剥離性を有する樹脂から形成されていることが好適であり、これにより、蓋材の開封に際して、基材層6aと表面シール層6bの間が容易に剥離することができ、開封性が向上する。
【0013】
図2から明らかなように、フランジ部4の上面には、中央部分に蓋材とヒートシールにより接合される部分である環状接合部41、環状接合部41よりも内側に内側段差部42が形成されている。また
図2に示す具体例においては、環状接合部41よりも外側に、外側段差部45が形成されている。
内側段差部42は、環状接合部41の上面の軸方向高さよりも低く、環状接合部41との間に段差(側壁部43)を形成していると共に、この内側段差部42の表面シール層6b‘の厚みが、環状接合部41の表面シール層6bの厚みよりも薄く、好適には可及的に薄肉であること(形成されていない場合も含む)が重要な特徴である。
図に示す具体例では、内側段差部42は環状接合部41よりも距離L1だけ低く、またこの距離L1は環状接合部41に形成された表面シール層6bの厚みL2よりも大きくなるように形成されている。内側段差部42の段差の軸方向距離L1が環状接合部41における表面シール層6bよりも大きいことにより、後述するように、ヒートシール層からの溶融樹脂のはみ出しにより形成される樹脂溜まり7が内側段差部42に接触することを有効に防止できる。
【0014】
また前述したように容器が基材層6aと表面シール層6bが易剥離性を有する積層体6から成る場合には、開封に際して、蓋材を容器1から容易に離脱可能にするためには内側段差部42内で表面シール層6b‘が存在しないか或いは容易に破断可能であることが必要である。このため、図に示す具体例においては、内側段差部42の表面シール層6b‘は、可及的に薄いか、好適には表面シール層6b‘が形成されていないことが望ましく、内側段差部42の内周側端縁部分(側壁部43の下端)に溝(ノッチ)44が形成されている場合には、溝44内も表面シール層6bが形成されていないか形成されていたとしても可及的に薄く形成されている。
また外側段差部45も内側段差部42と同様に、環状接合部41の軸方向高さよりも低く、環状接合部41との間に段差を形成している。
【0015】
図3は、
図2に示した容器に蓋材10が接合された密閉状態を示す一部拡大断面図(A)であり、(B)は(A)のY部分の断面構造を説明するための図である。また
図4は、
図3に示した密封状態において内圧が上昇した状態を示す一部拡大断面図である。
図3に示すように、容器1のフランジ部4の環状接合部41に蓋材10がヒートシールされることにより容器は密閉状態となる。蓋材10は、
図3(B)から明らかなように、基材層10aと、容器1の表面シール層6bとヒートシール可能なヒートシール性樹脂から成るヒートシール層10bから成っている。
図3(A)に示すように、蓋材10がヒートシールヘッド等を用いた公知の方法で容器1の環状接合部41で押圧加熱されると、容器1の表面シール層6b及び蓋材10のヒートシール層10bは溶融されて環状接合部41で接合されるが、ヒートシールに際しては一般に蓋材側から加熱されることから、蓋材10のヒートシール層10bがより溶融するため、ヒートシール層の厚みやヒートシール条件等によっては、溶融樹脂が環状接合部(ヒートシール部)41の内周端41aからはみ出し、樹脂溜まり7が形成される場合がある。
【0016】
一般にヒートシール部41の内周端41aに、樹脂溜まり7が形成され、内側段差部42内と接触し接合してしまうと、一度溝44で表面シール層6bを破断しても、内側段差42内の接合部を剥離させるか、表面シール層6b‘を再度破断しなければ、開封できないが、本発明の容器においては、樹脂溜まり7は内側段差部42と接触しないことから開封性を損なうことがない。すなわち、
図2に示すように、環状接合部41に対して内側段差部42を距離L1だけ低くすることにより、樹脂溜まり7は内側段差部42内に接触することがない。また仮に接触した場合でも内側段差部においてはシールヘッドによる加圧がされないため樹脂だまり7と表面シール層6b‘が容易に剥離し、開封性を損なうことがない。
図に示す具体例においては、側壁部43が容器軸方向下方に行くに従って内径が減少する傾斜面として形成されているが、垂直面であってもよい。側壁部が垂直面の場合に、内側段差部42の段差の軸方向距離L1をより大きくとる必要はあるが、開封の際に薄肉の表面シール層6b’を破断する時には、環状接合部41の内周端41aと側壁部43の上端が変曲点となって容易に破断可能で、毛立ち等もなく外観上も良好である。
【0017】
また、開封の際に、前記環状接合部の一部に、容器天面から見て容器外側に突出した応力集中部を形成することにより、少ない力で開封することが可能となる。すなわち、
図5に示すように、天面から見た環状接合部41の形状が容器径方向外方にV字状に突出した突出部分48を有することで、開封の際の基材層6aと表面シール層6bとの層間剥離後に、溝(ノッチ)44における薄肉の表面シール層6b’が応力集中により破断しやすくなるので好ましい。このような環状突出部の他の突出形状としては、例えば、U字状又はL字状、又はこれら複数が連続した波形状でも良い。
【0018】
その一方、
図4に示すように、内圧が上昇して、環状接合部(ヒートシール部)41の内周端41aの蓋材10との界面に応力Pがかかった場合でも、表面シール層6bを有する側壁部43の長さ(距離L3)が十分に確保され、かつ、この内周端41aの表面シール層6bの厚みが薄肉となっておらず十分に厚みが確保されているため破断しにくくなり、耐圧性を向上させることが可能となる。さらに、樹脂溜まり7と内側段差部42との間に距離L1が存在するため、仮に、樹脂溜まり7が内側段差部42に接触しても、内側段差部においてはシールヘッドによる加圧がされないことから樹脂だまり7と表面シール層6b‘が容易に剥離されるため、表面シール層6b‘が基材層6aから層間剥離することもないので、内圧上昇による意図外の開封が有効に防止されている。
なお、表面シール層6bを有する側壁部43の長さ距離L3が小さければ小さいほど、溝(ノッチ)44における薄肉の表面シール層6b‘の破断による表面シール層6bと基材層6aとの層間剥離への移行が起こりやすく、L3が大きければ大きいほど溝(ノッチ)44における薄肉の表面シール層6b‘の破断による表面シール層6bと基材層6aとの層間剥離への移行が起きにくい。すなわちL3の値が小さいほど耐圧性が低く、L3の値が大きいほど耐圧性が高いと言える。よって、耐圧性の観点からL3の値は大きい方が好ましい。
【0019】
また前述した通り、ヒートシールに際しては一般に蓋材側から加熱されることから、蓋材10のヒートシール層10bがより溶融するため、ヒートシール層の厚みやヒートシール条件等によっては、溶融樹脂が環状接合部(ヒートシール部)41の内周端41aからはみ出し、蓋材10のヒートシール層10b由来の樹脂溜まり7が形成される場合があるが、容器1の表面シール層6b由来の樹脂だまりも発生する場合がある。その場合、蓋材側から加熱されるため、蓋材10のヒートシール層10bが容器1の表面シール層6bより多く溶融し、その結果、蓋材側樹脂溜まり7は容器側樹脂溜まりよりも大きく、蓋材側樹脂溜まり7が容器側樹脂溜まりの上部を覆うようにして両者は一体化されると共に、容器側樹脂溜まりの付け根は、環状接合部41の内周端又は側壁部43の表面シール層と連続する。そのため内圧が高まり、環状接合部内周端に内側から蓋材10を引き上げる力が作用すると、力の作用点に容積の大きい蓋材側樹脂溜まり7が存在するため、蓋材10を補強しながら蓋材10は引き上がる。しかも蓋材側樹脂溜まり7と容器側樹脂溜まりは一体化されているので、容器側樹脂溜まりも蓋材側樹脂溜まり7と一体となって容易に上昇する。これにより、容器側樹脂溜まりの下部に存在する表面シール層6bが破断(凝集破壊)され、この表面シール層6bは基材層6aとの界面近傍であったことから、表面シール層6bと基材層6aとの層間剥離を容易に進行する。すなわち、より低い内圧で内側から開封してしまうおそれがある。従って環状接合部41の内周端においては容器側樹脂だまりが発生しないことが好ましい。
このような問題を解決するためには、例えば、環状接合部41の上面を外周側が高く、内周側が低い傾斜面として形成することにより、容器側樹脂だまりの形成を抑制することもできる。
【0020】
前述した通り、図に示す具体例においては、環状接合部41の外側に外側段差部45が形成されており、段差(側壁部46)及び外側段差部45においては、表面シール層6bが環状接合部41の表面シール層6bよりも薄肉に形成されている。また環状接合部41側の端部において溝(ノッチ)47が形成されている。
また、
図3(A)に示すように、環状接合部41の外周端41bにおいても内周端41aと同様に、表面シール層の厚みやヒートシール条件等によって外側樹脂溜まり7’が形成される場合があり、この外側樹脂溜まり7’が外側段差部45の表面シール層6bと接触すると開封性が低下することから、外側段差部45の上面45aは外側樹脂溜まり7’が接触しないように環状接合部41の上面より軸方向位置が低くなるような段差が形成されている。
その一方、外側樹脂溜まり7’が表面シール層に連続して形成されていると、外側段差部の側壁部46の上方で外側樹脂溜まり7’が薄肉の表面シール層6bと連続することから、開封時の蓋材10の引き上げに際して表面シール層6bと基材層6aの剥離が容易になるので、開封性が向上される。外側樹脂溜まり7’が側壁部46の上方のみで一体化されるためには側壁部46の略垂直或いは下方に行くに従って外径が増加する傾斜面を形成していることが好適である。
【0021】
本発明においては、環状接合部の表面シール層の厚み(L1)は、表面シール層を構成する樹脂の種類や環状接合部の幅等に応じて適宜設定することができるが、10~80μmの範囲にあることが好適である。また環状接合部の表面シール層の厚み(L1)の範囲にある場合、内側段差部の段差(L2)は0.1~0.5mmの範囲にあることが好適である。また外側段差部の段差は0.1~0.5mmの範囲にあることが好適である。
【0022】
本発明の容器においては、
図1~
図4に示した具体例に限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、図に示した具体例では環状接合部よりも外側に外側段差部が形成されていたが、必ずしも形成されていなくてもよく、フランジ部の外周端と環状接合部の外周端が合致する態様であってもよい。
またフランジ部が、フランジ部の外周端から垂下する外壁5を有することがフランジ部の機械的強度等を向上する上で好ましいが、フランジ部の厚みなどによっては、外壁が形成されていなくてもよい。
更に、図に示した具体例では、容器は基材層及び表面シール層を備えた積層体から一体成形されており、容器内面にも表面シール層が形成された態様であったが、フランジ部にのみ表面シール層が形成されていてももちろんよい。
【0023】
本発明の容器はカップ型であることが好適であるが、これに限定されず、フランジ部を有する限り、トレイ形状であってもよい。また
図1及び
図5では丸型の容器形状であるが、角型容器であってもよく、その他多角形容器や楕円型の容器であってもよい。
本発明の容器に対応可能な蓋材としては、可撓性を有するシート状の蓋材のほか、落とし蓋形状の成形蓋であってもよい。
【0024】
また、前述した通り、容器の基材層と表面シール層は、層間剥離により剥離するものであることが好適であるが、易剥離性を発現可能である限り、凝集剥離、界面剥離であってもよい。また蓋材側の基材層とヒートシール層が易剥離性を発現するものであってもよい。
密封性能及び易開封性能の両方を満足するために好適な剥離強度としては、
図6に示すように、蓋の把持部にプッシュプルゲージを取り付け、これを蓋に対して45度の方向に引き上げることによって測定した開封力(剥離強度)が、0.3~3.0Kgfの範囲にあることが好ましく、0.5~2.5Kgfの範囲にあることがより望ましい。
【0025】
このような剥離強度を発現可能な樹脂の組み合わせとしては、ヒートシール性があり且つ相溶性のない2種以上の熱可塑性樹脂を適宜組み合わせることができる。
容器の基材層は、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等、その他、従来より樹脂製容器の成形に用いられていた、従来公知の熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、基材層をプロピレン系重合体から構成する場合、表面シール層をエチレン系重合体とプロピレン系重合体のブレンド物から構成することにより、密封性を確保しつつ易開封性を保持することができ、ブレンド物のブレンド比を適宜変更することにより剥離強度を調整することができる。
【0026】
上記プロピレン系重合体としては、ホモポリプロピレンの他、プロピレンとエチレンもしくは他のα-オレフィン、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等とのブロック共重合体やランダム共重合体等を挙げることができる。また上記エチレン系重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中・高密度ポリエチレン(MDPE、HDPE)等のエチレンの単独重合体、もしくはエチレンと、例えば1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の他のα-オレフィンや、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、酢酸ビニル、スチレン等のビニル系単量体等との共重合体、或いはアイオノマー等を挙げることができる。
【0027】
またブレンド物としては上記オレフィン系重合体同士の組み合わせ以外にも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらイソフタレート変性された共重合体、等の熱可塑性ポリエステル樹脂や、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等と、上記オレフィン系重合体との組み合わせ等も使用することができる。
ブレンド物としてプロピレン系重合体とエチレン系重合体を使用する場合に、ブレンド物から成るフランジ部材がプロピレン系重合体から成る容器本体との良好な剥離性を発現するためには、プロピレン系重合体とエチレン系重合体を重量比で、5:5~9.5:0.5の範囲でブレンドしたブレンド物を好適に使用することが好ましい。
【0028】
また容器成形時に薄肉の表面シール層を好適に形成するためには、表面シール層を構成する樹脂が後述するロケーターの加圧に応じて流動性を発現し得るように、ロケーターの温度や表面シール層のMFRを適宜調整することが好ましい。
容器は上述した基材層及び表面シール層を有する2層構成の積層体の一体成形によるものであってもよいが、基材層間に中間層としてガスバリア性中間層を有する多層構成であってもよい。また前述した通り、容器のフランジ部のみに表面シール層を形成したものであってもよい。
本発明の容器は、フランジ部が上述した構成を満足する限り、その製造方法は問わないが、好適には、積層体を真空成形、プラグアシスト圧空成形等の熱成形により一体的に成形することが好適である。この方法によれば、成形時にロケーター(フランジ押え)によりフランジ部の上面に環状接合部及び内側段差部に対応する凹凸を容易に成形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の容器は、易開封性に優れていると共に、密閉状態で内圧が上昇した場合の体圧性能にも優れており、レトルト殺菌等の熱殺菌が必要な内容物を充填密封するための容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 容器、2 底部、3 胴部、4 フランジ部、5 外壁、6a 基材層、6b 表面シール層、7 蓋材側樹脂溜まり、10 蓋材、41 環状接合部(接合位置)、42 内側段差部、43 側壁部、44 溝(ノッチ)、45 外側段差部。