IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋製罐グループホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-易開封性包装体 図1
  • 特開-易開封性包装体 図2
  • 特開-易開封性包装体 図3
  • 特開-易開封性包装体 図4
  • 特開-易開封性包装体 図5
  • 特開-易開封性包装体 図6
  • 特開-易開封性包装体 図7
  • 特開-易開封性包装体 図8
  • 特開-易開封性包装体 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097218
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】易開封性包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
B65D77/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000621
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 利房
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067AB26
3E067BA01A
3E067BA20A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BC03A
3E067BC07A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD08
(57)【要約】
【課題】ヒートシールによる優れた密封性を有すると共に、ヒートシールに起因して生じる樹脂溜まりを利用して、より少ない開封力で容易に開封可能な易開封性包装体を提供する。
【解決手段】開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能であり且つ容器を構成する基材に対して易剥離性を有する表面シール層が形成された容器と、前記フランジ部の表面シール層と接合して容器を密封する蓋材とから成る易開封性包装体において、前記フランジ部には、蓋材との接合位置の外周縁より外側に容器軸方向に延びる側壁部が形成されており、前記表面シール層が、前記接合位置の外周縁から外側方向に突出する樹脂溜まりを有すると共に、該樹脂溜まりの下方又は内側方向に開封開始箇所となる薄肉の表面シール層を有していることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能であり且つ容器を構成する基材に対して易剥離性を有する表面シール層が形成された容器と、前記フランジ部の表面シール層と接合して容器を密封する蓋材とから成る易開封性包装体において、
前記フランジ部には、蓋材との接合位置の外周縁より外側に容器軸方向に延びる側壁部が形成されており、
前記表面シール層が、前記接合位置の外周縁から外側方向に突出する樹脂溜まりを有すると共に、該樹脂溜まりの下方又は内側方向に開封開始箇所となる薄肉の表面シール層を有していることを特徴とする易開封性包装体。
【請求項2】
前記側壁部が、容器軸方向に延びる垂直面又は容器軸方向下方に行くに従って外径が増加する傾斜面である請求項1記載の易開封性包装体。
【請求項3】
前記側壁部に、容器軸方向下方に行くに従って薄くなる表面シール層が形成されている請求項1又は2記載の易開封性包装体。
【請求項4】
前記開封開始箇所が、前記接合位置の外周縁における表面シール層と容器基材の界面近傍である請求項1又は2記載の易開封性包装体。
【請求項5】
開封操作に際して、前記開封開始箇所から薄肉の表面シール層が凝集破壊し、次いで容器の基材と表面シール層の層間剥離が進行することにより開封される請求項1又は2記載の易開封性包装体。
【請求項6】
前記フランジ部には、前記蓋材との接合位置の外周縁より外側且つ前記接合位置の容器軸方向位置よりも下方に位置する外側段差部が形成されており、前記接合位置の外周縁と前記外側段差部の内周縁の間に前記側壁部が形成されている請求項1又は2記載の易開封性包装体。
【請求項7】
前記側壁部が、前記フランジ部の外周縁から容器軸方向に垂下する環状スカート部として形成されている請求項1記載の易開封性包装体。
【請求項8】
前記環状スカート部の上部に、容器軸方向下方に行くに従って外径が増加する外側傾斜面が形成されている請求項7記載の易開封性包装体。
【請求項9】
前記フランジ部には、前記接合位置の内周縁より内側且つ前記接合位置の容器軸方向位置よりも下方に位置する内側段差部が形成されており、該内側段差部には、蓋材との接合前における前記フランジ部の表面シール層の厚みに比して薄肉の表面シール層が形成されているか又は表面シール層が形成されていない請求項1又は2記載の易開封性包装体。
【請求項10】
前記容器が、基材層に表面シール層が形成された積層体から成る請求項1又は2記載の易開封性包装体。
【請求項11】
前記樹脂溜まりと蓋材の間に、蓋材のシール層に起因する樹脂溜まりが形成されている請求項1又は2記載の易開封性包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ部を有する容器及び該フランジ部にヒートシールにより密閉可能に取り付けられる蓋材から成る易開封性包装体に関するものであり、より詳細には、シール位置の制御が容易であると共に、易開封性及び密封性の両方を有するように蓋材をヒートシールにより取付け可能な易開封性包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性のある蓋材をフランジ部にヒートシールすることにより密封して成る樹脂製容器は、飲食品用の簡易な容器として広く使用されている。このような樹脂製容器においては、ヒートシールにより、高い密封性と容易に開封できる易開封性の相反する性能を有することが要求されている。
【0003】
この要求に対応する容器として、例えば下記特許文献1には、開口部の周縁にフランジ部を配設する多層容器であって、該容器の少なくとも内層を含む層が剥離可能に形成されており、前記フランジ部上面に2本の周状の切り込みが設けられ、 前記2本の周状の切り込みのうち外側の切り込みと連接して、前記フランジ部の上面より低い部分が形成されていることを特徴とする多層容器が記載されている。
この引用文献1においては、フランジ部の上面に対して低い部分が形成されていることにより、外側の低い部分に仮にシールリングが位置された場合でも、低い部分を含む切込みよりフランジ部の外側部分で蓋材とヒートシールされないか、されたとしても弱いシールとなるため開封性が損なわれないと記載されている。
【0004】
また下記特許文献2には、 表面層と表面下層を少なくとも有する積層体からなり、開口部の周縁にフランジ部を有する容器本体と、前記表面層と接着可能なシール層を少なくとも有する蓋材とを備え、前記フランジ部の前記表面層と前記蓋材の前記シール層とは環状にヒートシールされており、前記容器本体および前記蓋材のシール部のうち少なくともいずれか一方が凝集破壊することで、前記蓋材が開封可能とされる易開封性容器であって、前記フランジ部上の前記シール部の内周側に、前記容器本体の表面層、前記表面下層および前記蓋材の前記シール層の構成樹脂からなる瘤状の樹脂溜まり部が、数式(F1)で表される条件を満たすように前記開口部の全周縁に沿って形成されていることを特徴とする易開封性容器が記載されている。
この特許文献2においては、フランジ部に蓋材がヒートシールされ、容器本体の表面層が凝集破壊されることにより蓋材が開封されるため開封性に優れていると共に、容器本体の表面層、表面下層及びに蓋材のシール層の構成樹脂から成る樹脂溜まりが形成されることにより、高密封性が確保できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-119692号公報
【特許文献2】特許第5878683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1においては、開封に際して、蓋材を引き上げることにより、容器本体の内層と次層との間の層端部に応力集中させて開封開始するものであるため、流通中などに意図外に開封してしまうおそれがあることから、開封時により確実に層間剥離を開始できることが望まれている。またフランジ部上面に2本の周状の切り込みが設けられており、肉厚の薄い容器においては、ガスバリア層などの露出の懸念があるため、ガスバリア層などの適用が困難であった。
また上記特許文献2においては、樹脂溜まりを生じさせることにより、高い密封性能が得られているが、開封に際しては容器の表面層を凝集破壊させることにより蓋材を剥離するものであることから、層間剥離による剥離に比して大きな力が必要であり、開封性の点で未だ十分満足するものではない。
【0007】
従って本発明の目的は、ヒートシールによる優れた密封性を有すると共に、ヒートシールに起因して生じる樹脂溜まりを利用して、より少ない開封力で容易に開封可能な易開封性包装体を提供することである。
また本発明の他の目的は、肉厚の薄い容器であっても適用可能な優れた密封性と易開封性を有する易開封性包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、開口部の周縁にフランジ部を有し、少なくとも該フランジ部の上面には蓋材と接合可能であり且つ容器を構成する基材に対して易剥離性を有する表面シール層が形成された容器と、前記フランジ部の表面シール層と接合して容器を密封する蓋材とから成る易開封性包装体において、前記フランジ部には、蓋材との接合位置の外周縁より外側に容器軸方向に延びる側壁部が形成されており、前記表面シール層が、前記接合位置の外周縁から外側方向に突出する樹脂溜まりを有すると共に、該樹脂溜まりの下方又は内側方向に開封開始箇所となる薄肉の表面シール層を有していることを特徴とする易開封性包装体が提供される。
【0009】
本発明の易開封性包装体においては、
(1)前記側壁部が、容器軸方向に延びる垂直面又は容器軸方向下方に行くに従って外径が増加する傾斜面であること、
(2)前記側壁部に、容器軸方向下方に行くに従って薄くなる表面シール層が形成されていること、
(3)前記開封開始箇所が、前記接合位置の外周縁における表面シール層と容器基材の界面近傍であること、
(4)開封操作に際して、前記開封開始箇所から薄肉の表面シール層が凝集破壊し、次いで容器の基材と表面シール層の層間剥離が進行することにより開封されること、
(5)前記フランジ部には、前記蓋材との接合位置の外周縁より外側且つ前記接合位置の容器軸方向位置よりも下方に位置する外側段差部が形成されており、前記接合位置の外周縁と前記外側段差部の内周縁の間に前記側壁部が形成されていること、
(6)前記側壁部が、前記フランジ部の外周縁から容器軸方向に垂下する環状スカート部として形成されていること、
(7)前記環状スカート部の上部に、容器軸方向下方に行くに従って外径が増加する外側傾斜面が形成されていること、
(8)前記フランジ部には、前記接合位置の内周縁より内側且つ前記接合位置の容器軸方向位置よりも下方に位置する内側段差部が形成されており、該内側段差部には、蓋材との接合前における前記フランジ部の表面シール層の厚みに比して薄肉の表面シール層が形成されているか又は表面シール層が形成されていないこと、
(9)前記容器が、基材層に表面シール層が形成された積層体から成ること、
(10)前記樹脂溜まりと蓋材の間に、蓋材のシール層に起因する樹脂溜まりが形成されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の易開封性包装体においては、蓋材とフランジ部との接合位置の外周縁から外側方向に突出する樹脂溜まりを有すると共に、この樹脂溜まりの下方又は内側方向に開封開始箇所となる薄肉の表面シール層を有していることにより、開封開始に際して、蓋材及び容器の両方の樹脂溜まりが一体化して蓋材と共に上昇することにより、開封開始箇所となる基材層との界面に近接する薄肉の表面シール層を容易に破断することが可能となり、表面シール層及び基材層の間に容易に層間剥離を生じさせることができる。このため、大きな開封力を要することなく、開封することができる。
また接合位置よりも外周側に表面シール層が形成されていないか、或いは可及的に薄肉の表面シール層を備えた段差部又は傾斜部を有していることにより、容易に破断可能であり、優れた開封性を発現できる。
更に蓋材は接合位置で強固にヒートシールされているため密封性にも優れており、意図外の開封も防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)は本発明に用いる容器の一例を示す斜視図であり、(B)は(A)のX部分の断面構造を説明するための図である。
図2図1に示す容器のフランジ部分を拡大して示す一部拡大断面図である。
図3】(A)は図1に示す容器に蓋材をヒートシールした状態のフランジ部分を拡大して示す一部拡大断面図であり、(B)は(A)のY部分の断面構造を説明するための図である。
図4図3に示す状態から蓋材を引き上げて開封開始した状態のフランジ部分を拡大して示す一部拡大断面図である。
図5】本発明に用いる容器の一例の平面図である。
図6】本発明に用いる容器の他の一例において、フランジ部分を拡大して示す一部拡大断面図である。
図7図5に示す容器フランジ部ヒートシールのために蓋材をセットした状態を示す一部拡大断面図である。
図8図6に示したセット状態からヒートシールされた状態を示す一部拡大断面図である。
図9】開封力の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に用いる容器の一例の斜視図(A)及び層構造(B)を示し、図2図1に示す容器のフランジ部分を拡大して示す断面図であり、図3は、図2に示した容器に蓋材がヒートシールされた状態のフランジ部を拡大して示す断面図である。
全体を1で表す容器は、概略的に言って、底部2及び胴部3と、胴部3の上端から容器半径方向外方に延びるフランジ部4と、フランジ部4の外周縁から垂下する環状スカート部5から成っている。図2から明らかなように、容器1は、基材層6と表面シール層7とから成る積層体から、表面シール層7がフランジ部4において蓋材(図示せず)と相対する位置となる上面にとなるように、一体的に成形されている。
なお、基材層6と表面シール層7は互いに易剥離性を有する樹脂から形成されており、これにより、蓋材の開封に際して、基材層6と表面シール層7の間が容易に剥離することができ、開封性が向上する。
【0013】
図2から明らかなように、フランジ部4の上面には、中央部分に蓋材の接合位置(ヒートシール位置)である環状接合部41、環状接合部41よりも外側に外側段差部42が形成されている。また図2に示す具体例においては、環状接合部41よりも内側に、内側段差部45が形成されている。
外側段差部42は、環状接合部41の上面の軸方向高さよりもL1だけ低く、環状接合部41との間に段差となる側壁部43を形成していると共に、この側壁部43には環状接合部41の表面シール層7aよりも薄肉の表面シール層7bが形成されている。側壁部43と外側段差部42の境界には溝44が形成されている。また同様に外側段差部42にも環状接合部41の表面シール層7aの厚みよりも薄い表面シール層7cが形成されている。
【0014】
図3に示すように、容器1のフランジ部4の環状接合部41に蓋材10がヒートシールされることにより容器は密閉状態となる。蓋材10は、図3(B)から明らかなように、基材層10aと、容器1の表面シール層7とヒートシール可能なヒートシール性樹脂から成るヒートシール層10bから成っている。
図3(A)に示すように、蓋材10がヒートシールヘッド等を用いた公知の方法で容器1の環状接合部41で押圧加熱されると、容器1の表面シール層7及び蓋材10のヒートシール層10bは溶融されて環状接合部41で接合される。ヒートシールに際して蓋材10のヒートシール層10b及び容器1の表面シール層7は溶融されて、それぞれ環状接合部(ヒートシール部)41の外周端41aからはみ出して蓋材側樹脂溜まり11及び容器側樹脂溜まり8を形成する。ヒートシールに際しては一般に蓋材側から加熱されるため、蓋材10のヒートシール層10bが容器1の表面シール層7より多く溶融し、その結果、蓋材側樹脂溜まり11は容器側樹脂溜まり8よりも大きく、蓋材側樹脂溜まり11が容器側樹脂溜まり8の上部を覆うようにして両者は一体化されると共に、容器側樹脂溜まり8の下部は、側壁部43の薄肉のヒートシール層と連続する。
【0015】
これにより、開封のために蓋材10を引き上げると、図4に示すように、開封力Pの作用点に容積の大きい蓋材側樹脂溜まり11が存在するため、蓋材10を補強しながら蓋材10を引き上げることが可能であり、しかも蓋材側樹脂溜まり11と容器側樹脂溜まり8は一体化されているので、容器側樹脂溜まり8も蓋材側樹脂溜まり11と一体となって容易に上昇する。これにより、容器側樹脂溜まり8の下部に存在する薄肉の表面シール層7b、又は容器側樹脂溜まり8の内側方向に位置するヒートシールによって薄肉化された接合部位外周端の表面シール層7aは容易に破断(凝集破壊)され、この表面シール層7b又は表面シール層7aは基材層6との界面近傍であったことから、表面シール層7と基材層6との層間剥離を容易に進行させることが可能であるため、小さい開封力で容易に初期開封操作を行うことが可能となる。
【0016】
また環状接合部(ヒートシール部)41の外周端41aからはみ出して蓋材側樹脂溜まり11と容器側樹脂溜まり8とが一体化されると共に、容器側樹脂溜まり8の下部は、側壁部43の薄肉の表面シール層と連続していれば、容易に開封可能であるが、図5に示すように、容器天面から見た環状接合部の形状が、外側段差部が容器径方向外方に突出するような形状(いわゆる烏口形状)の突出部分48を有することによって、開封の際の応力がより一層集中し、後述する内側段差部45の表面シール層7dの破断も生じやすくなることから好ましい。このような環状接合部の他の突出形状としては、例えば、U字状又はL字状、又はこれら複数が連続した波形状でも良い。
【0017】
また図に示す具体例では、前述した通り、環状接合部41の内側に傾斜部46を介して内側段差部45が形成されている。この内側段差部45の表面シール層7dは、環状接合部41の表面シール層7aよりも薄く、好適には形成されていないことが望ましい。内側段差部45の外周側端縁部分(側壁部46の下端)に溝(ノッチ)47が形成されている場合には、溝47内も表面シール層7が形成されていないか形成されていたとしても可及的に薄く形成されている。
なお、環状接合部41の内周端41bにおいては蓋材側樹脂溜まり11’及び容器側樹脂溜まり8’が形成されていないことが好ましい。すなわち容器の内圧が上昇した際、一体化されたこれらの樹脂溜まりが存在すると、これらが蓋材の上昇とともに引き上げられ、内周端41bにおける樹脂溜まり下の表面シール層7aが破断されて、内側から開封してしまうおそれがあるからである。従って外周端41aでは容器側樹脂溜まり8と蓋材側樹脂溜まり11が一体となって存在し、内周端41bでは樹脂溜まりが形成されていないか、もしくは蓋材側樹脂溜まり11のみ存在していることが好ましい。
【0018】
外周端41aでは容器側樹脂溜まり8と蓋材側樹脂溜まり11が一体となって形成することを実現する最も単純な方法は、例えば、ヒートシール前の容器の環状接合部を外周側が高く、内周側が低い形状にすることである。これにより蓋材10をフラット形状のシールヘッドでヒートシールすると一番高い外周側が優先的に溶融され、外周端41aでは容器側樹脂溜まり8と蓋材側樹脂溜まり11が一体となって形成され、内周端41bでは蓋材側樹脂溜まり11のみ形成される。またヒートシール前の環状接合部が外周側と内周側の高さが同じフラット形状の場合は、テーパ形状のシールヘッドを用いることによって同じ効果を発現できる。さらにヒートシール前の環状接合部が外周側と内周側の高さが同じフラット形状で、フラット形状のシールヘッドであっても、容器のフランジ受けを片持ちの構造にして、内周側に圧力がかかりにくい構造にすることによっても同じ効果を発現できる。
【0019】
図6図8は、本発明の易開封性包装体の他の態様を示す図であり、図6は、使用される容器の一例のフランジ部分を拡大して示す一部拡大断面図であり、図7は、図6に示す容器フランジ部に蓋材をヒートシールするためにセットした状態を示す一部拡大断面図であり、図8は、図7に示したセット状態からヒートシールされた状態を示す一部拡大断面図である。
この態様においても、容器は、概略的に言って底部(図示せず)及び胴部3と、胴部3の上端から容器半径方向外方に延びるフランジ部4と、フランジ部4の外周縁から垂下する環状スカート部5から成っている。またこの態様においても、容器1は、基材層6と表面シール層7とから成る積層体から、表面シール層7がフランジ部4において蓋材(図示せず)と相対する位置となる上面となるように、一体的に成形されている。
【0020】
図6から明らかなように、この態様においては、フランジ部4は、外周側において、上方に突出した外側突出部51を形成しており、外側突出部51の外周端と環状スカート部5上部の境界部分において、下方に行くに従って外径が増加する外側傾斜面52を有している。また中央部分よりも内周側においても上方に突出した内側突出部53が、中央部分から内側傾斜面54を介して形成されている。
図6及び図7から明らかなように、フランジ部4の表面に形成された表面シール層7は、容器の外側突出部51から中央部分の接合位置(ヒートシールヘッド60の設置位置)41まで、用いる積層体の表面シール層7の厚みとほぼ同等の厚みを有しているが、接合位置41の内周端41bから内側突出部53の内側傾斜面54の下端までの距離L2の位置においては、その厚みが内方に行くに従って減少している。また外側突出部51の外周端と環状スカート部5上部の境界部分に形成される外側傾斜面52も、非常に薄い表面シール層7bが形成されている(或いは表面シール層は形成されていない)。更に内側傾斜面54においても、非常に薄い表面シール層7dが形成されている(或いは表面シール層は形成されていない)。
【0021】
図8に示すように、蓋材10がヒートシールヘッド等を用いた公知の方法で容器1の接合位置(ヒートシール部)41で押圧加熱されると、容器1の表面シール層7及び蓋材10のヒートシール層10bは溶融されて接合位置41で接合される。この態様においても、ヒートシールに際して蓋材10のヒートシール層10b及び容器1の表面シール層7は溶融されて、それぞれ外側突出部51から外側傾斜面52の方向にはみ出して蓋材側樹脂溜まり11及び容器側樹脂溜まり8を形成し、容器側樹脂溜まり8よりも大きい蓋材側樹脂溜まり11が容器側樹脂溜まり8を覆うようにして両者は一体化されると共に、容器側樹脂溜まり8の下部は、外側傾斜面52の薄肉のヒートシール層と連続する。
【0022】
これにより、開封のために蓋材10を引き上げると、図4に示した場合と同様に、開封力の作用点に容積の大きい蓋材側樹脂溜まり11が存在するため、蓋材10を補強しながら蓋材10を引き上げることが可能であり、しかも蓋材側樹脂溜まり11と容器側樹脂溜まり8は一体化されているので、容器側樹脂溜まり8も蓋材側樹脂溜まり11と一体となって容易に上昇する。これにより、容器側樹脂溜まり8の下部に存在する外側傾斜面52の薄肉の表面シール層7bは容易に破断(凝集破壊)され、次いで基材層6と表面シール層7の層間剥離を進行させることが可能であるため、小さい開封力で容易に初期開封操作を行うことが可能となる。更に基材層6と表面シール層7の剥離が進行し、ヒートシール部41の内周端41bに達すると、表面シール層7cが徐々に薄くなり、内側傾斜面54においては非常に薄い表面シール層7d或いは表面シール層が存在しないので、表面シール層7はスムーズに基材層6から離脱して、蓋材10を容器から取り除くことが可能となる。
【0023】
本発明においては、外側段差部の段差(L1)はこれに限定されないが、0.1~0.5mmの範囲にあることが好適であり、この範囲にあることにより、樹脂溜まりの外側段差部への接触が有効に予防できる。また、第2の態様における接合位置41内周端41bから内側傾斜面54までの距離L2は0.5~5.0mmであることが好ましく、これにより、表面シール層と基材層の層間剥離から最終的な表面ヒートシール層の容器からの離脱をスムーズに行うことが可能となる。
【0024】
本発明の容器においては、図1図8に示した具体例に限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、図1~5に示した具体例では環状接合部よりも外側に外側段差部が形成されていたが、必ずしも形成されていなくてもよく、フランジ部の外周端と環状接合部の外周端が合致する態様であってもよい。同様にノッチ等の存在によりヒートシール層が容器から完全に離脱可能である限り、内側段差部も必ずしも形成されていなくてもよい。
また接合位置の外周縁から外側に容器軸方向に延びる側壁部は、図に示す具体例ではほぼ垂直であったが、容器軸方向下方に行くに従って外径が増加する傾斜面であってもよい。
フランジ部が、フランジ部の外周端から垂下する環状スカート部5を有することがフランジ部の機械的強度等を向上する上で好ましいが、フランジ部の厚みなどによっては、環状スカート部が形成されていなくてもよい。
更に、図に示した具体例では、容器は基材層及び表面シール層を備えた積層体から一体成形されており、容器内面にも表面シール層が形成された態様であったが、フランジ部にのみ表面シール層が形成されていてももちろんよい。
【0025】
本発明の容器はカップ型であることが好適であるが、これに限定されず、フランジ部を有する限り、トレイ形状であってもよい。また図1及び図5では丸型の容器形状であるが、角型容器であってもよく、その他多角形容器や楕円型の容器であってもよい。
本発明の容器に対応可能な蓋材としては、可撓性を有するシート状の蓋材のほか、落とし蓋形状の成形蓋であってもよい。
【0026】
また、前述した通り、容器の基材層と表面シール層は、層間剥離により剥離するものであることが好適であるが、易剥離性を発現可能である限り、凝集剥離、界面剥離であってもよい。また蓋材側の基材層と表面シール層が易剥離性を発現するものであってもよい。
密封性能及び易開封性能の両方を満足するために好適な剥離強度としては、図9に示すように、蓋の把持部にプッシュプルゲージを取り付け、これを蓋に対して45度の方向に引き上げることによって測定した開封力(剥離強度)が、0.3~3.0Kgfの範囲にあることが好ましく、0.5~2.5Kgfの範囲にあることがより望ましい。
【0027】
このような剥離強度を発現可能な樹脂の組み合わせとしては、ヒートシール性があり且つ相溶性のない2種以上の熱可塑性樹脂を適宜組み合わせることができる。
容器の基材層は、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等、その他、従来より樹脂製容器の成形に用いられていた、従来公知の熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、基材層をプロピレン系重合体から構成する場合、表面シール層をエチレン系重合体とプロピレン系重合体のブレンド物から構成することにより、密封性を確保しつつ易開封性を保持することができ、ブレンド物のブレンド比を適宜変更することにより剥離強度を調整することができる。
【0028】
上記プロピレン系重合体としては、ホモポリプロピレンの他、プロピレンとエチレンもしくは他のα-オレフィン、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等とのブロック共重合体やランダム共重合体等を挙げることができる。また上記エチレン系重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中・高密度ポリエチレン(MDPE、HDPE)等のエチレンの単独重合体、もしくはエチレンと、例えば1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の他のα-オレフィンや、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、酢酸ビニル、スチレン等のビニル系単量体等との共重合体、或いはアイオノマー等を挙げることができる。
【0029】
またブレンド物としては上記オレフィン系重合体同士の組み合わせ以外にも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらイソフタレート変性された共重合体、等の熱可塑性ポリエステル樹脂や、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等と、上記オレフィン系重合体との組み合わせ等も使用することができる。
ブレンド物としてプロピレン系重合体とエチレン系重合体を使用する場合に、ブレンド物から成るフランジ部材がプロピレン系重合体から成る容器本体との良好な剥離性を発現するためには、プロピレン系重合体とエチレン系重合体を重量比で、5:5~9.5:0.5の範囲でブレンドしたブレンド物を好適に使用することが好ましい。
【0030】
また表面シール層から樹脂溜まりを好適に成形するためには、表面シール層を構成する樹脂がヒートシール条件に応じて流動性を発現し得るように融点及びMFRを適宜調整することが好ましい。
容器は上述した基材層及び表面シール層を有する2層構成の積層体の一体成形によるものであってもよいが、基材層間に中間層としてガスバリア性中間層を有する多層構成であってもよい。また前述した通り、容器のフランジ部のみに表面シール層を形成したものであってもよい。
本発明の容器は、フランジ部が上述した構成を満足する限り、その製造方法は問わないが、好適には、積層体を真空成形、プラグアシスト圧空成形等の熱成形により一体的に成形することが好適である。この方法によれば、成形時にロケーター(フランジ押え)によりフランジ部の上面に環状接合部及び外側段差部に対応する凹凸を容易に成形することできる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の易開封性包装体は、薄肉の容器でも適用可能であり、ヒートシールによる優れた密封性を有すると共に、より少ない開封力で容易に開封可能であり、飲食品用の包装体として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 容器、2 底部、3 胴部、4 フランジ部、5 環状スカート部、6 基材層、7 表面シール層、8 容器側樹脂溜まり、10 蓋材、11 蓋材側樹脂溜まり、41 環状接合部(接合位置)、42 外側段差部、43 側壁部、44 溝、45 内側段差部、46 傾斜部、47溝(ノッチ)、51 外側突出部、52 外側傾斜面、53 内側突出部、54 内側傾斜面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9