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特開2024-97219水硬性組成物用収縮低減剤及び水硬性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097219
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】水硬性組成物用収縮低減剤及び水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/32 20060101AFI20240710BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240710BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C04B24/32 A
C04B24/26 H
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000623
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直紀
(72)【発明者】
【氏名】内藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】玉木 伸二
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB32
4G112PB36
(57)【要約】
【課題】モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物の硬化体における収縮低減性を付与しつつ、続くバッチの水硬性組成物における空気量の変化を抑制することができる水硬性組成物用収縮低減剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示される化合物(A)と、アニオン性基を有する単量体及び不飽和炭化水素系単量体を構成単位として含む共重合体(B)と、を含有することを特徴とする水硬性組成物用収縮低減剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物(A)と、
アニオン性基を有する単量体に由来する構成単位及び不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位を含む共重合体(B)と、
を含有することを特徴とする水硬性組成物用収縮低減剤。
【化1】
(一般式(1)において、Xは、水素原子、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基、又はビスフェノールから2つのヒドロキシ基を除いた残基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。aは、1~6の整数(但し、n×a=1~300を満たす)である。)
【請求項2】
前記共重合体(B)が、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基から選ばれる少なくとも1つを有する単量体に由来する構成単位と、炭素数2~10の不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位と、を含む、請求項1に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【請求項3】
前記共重合体(B)が、カルボン酸基及びカルボン酸塩基から選ばれる少なくとも1つを有する単量体に由来する構成単位と、炭素数4~8の不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位と、を含む、請求項1に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【請求項4】
前記共重合体(B)が、マレイン酸及びマレイン酸塩から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する構成単位と、ジイソブチレンに由来する構成単位と、を含む、請求項1に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【請求項5】
前記化合物(A)は、前記一般式(1)において、Xが、水素原子、炭素数1~15の脂肪族炭化水素基、又はビスフェノールから2つのヒドロキシ基を除いた残基であり、AOが、炭素数2~3のオキシアルキレン基であり、nが、1~220の数であり、Rが、水素原子であり、aが、1~3の整数(ただし、n×a=1~220を満たす)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【請求項6】
前記化合物(A)は、前記一般式(1)において、Xが、水素原子又は炭素数1~8の脂肪族炭化水素基であり、AOが、炭素数2~3のオキシアルキレン基であり、且つ10~100モル%がオキシエチレン単位から構成されるものであり、nが、1~10の数であり、Rが、水素原子であり、aが1である、請求項5に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【請求項7】
前記化合物(A)と前記共重合体(B)との質量比(化合物(A)/共重合体(B))が、99.99/0.01~80.0/20.0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の水硬性組成物用収縮低減剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用収縮低減剤及び水硬性組成物に関する。更に詳しくは、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物の硬化体における収縮低減性を発揮し、続くバッチの水硬性組成物における空気量の変化(即ち、空気量が想定からずれること)を抑制することができる水硬性組成物用収縮低減剤及び水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物は、その硬化体が乾燥収縮してひび割れが生じることがあり、このようなひび割れは、上記硬化体の耐久性を低下させる原因であった。
【0003】
そこで、水硬性組成物の硬化体に生じるひび割れを防ぐために、水硬性組成物に収縮低減剤(即ち、水硬性組成物用の収縮低減剤)を配合することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ここで、水硬性組成物は、その製造現場(即ち、生コンクリート工場)では、単一のプラントを用いて1日に複数のバッチが製造されることが多い。つまり、単一のプラントで生コンクリート(水硬性組成物)を連続して製造している。そして、プラントの洗浄は、基本的に1日に1回(一連の製造が終了した段階)であり、連続するバッチ間でプラント内を洗浄することは、通常行われない。
【0005】
そして、これらの複数のバッチは、連続して同じ組成(配合)の水硬性組成物である場合もあるし、続くバッチが異なる組成の水硬性組成物である場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-101248号公報
【特許文献2】特開2020-147453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、水硬性組成物の製造現場では、単一のプラントを用いて、第1バッチ、第2バッチ、第3バッチのように、順次、新しい水硬性組成物が作製される。このとき、バッチ毎に同じ組成の水硬性組成物を作製する場合もあるし、異なる組成の水硬性組成物を作製する場合もある。この場合、収縮低減剤を含有しない水硬性組成物(通常の水硬性組成物)の間に、収縮低減剤を含有する水硬性組成物を製造すると、収縮低減剤を含有する水硬性組成物の後に製造する通常の水硬性組成物における空気量(連行空気量)が、収縮低減剤を含有する水硬性組成物の前に製造した通常の水硬性組成物の空気量と同じにならず変化(増減)する。なお、バッチごとにプラント内を洗浄すれば、このような空気量の変化は生じにくいが、手間やコストなどが掛かることからバッチごとにプラント内の洗浄は行われ難い状況にある。
【0008】
以上の通り、実際の製造現場では、同じ配合の水硬性組成物であるにもかかわらず、収縮低減剤を含有する水硬性組成物の前後で空気量が増減してしまうという問題がある。
【0009】
そのため、収縮低減剤を含有する水硬性組成物を製造した後に通常の水硬性組成物を製造する場合、その空気量の変化に考慮して適宜調整しながら作業を行うことが求められる。このような作業は手間がかかり、更には、水硬性組成物の製造時間が長くなる原因にもなるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、上記実情に鑑み、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物の硬化体における収縮低減性を付与しつつ、続くバッチの水硬性組成物における空気量の変化を抑制することができる水硬性組成物用収縮低減剤及び水硬性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定の化合物(A)(一般式(1)で表される化合物)と所定の共重合体(B)を含有することによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用収縮低減剤及び水硬性組成物が提供される。
【0012】
[1] 下記一般式(1)で示される化合物(A)と、
アニオン性基を有する単量体に由来する構成単位及び不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位を含む共重合体(B)と、
を含有することを特徴とする水硬性組成物用収縮低減剤。
【0013】
【化1】
(一般式(1)において、Xは、水素原子、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基、又はビスフェノールから2つのヒドロキシ基を除いた残基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。aは、1~6の整数(但し、n×a=1~300を満たす)である。)
【0014】
[2] 前記共重合体(B)が、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基から選ばれる少なくとも1つを有する単量体に由来する構成単位と、炭素数2~10の不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位と、を含む、前記[1]に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【0015】
[3] 前記共重合体(B)が、カルボン酸基及びカルボン酸塩基から選ばれる少なくとも1つを有する単量体に由来する構成単位と、炭素数4~8の不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位と、を含む、前記[1]に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【0016】
[4] 前記共重合体(B)が、マレイン酸及びマレイン酸塩から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する構成単位と、ジイソブチレンに由来する構成単位と、を含む、前記[1]に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【0017】
[5] 前記化合物(A)は、前記一般式(1)において、Xが、水素原子、炭素数1~15の脂肪族炭化水素基、又はビスフェノールから2つのヒドロキシ基を除いた残基であり、AOが、炭素数2~3のオキシアルキレン基であり、nが、1~220の数であり、Rが、水素原子であり、aが、1~3の整数(ただし、n×a=1~220を満たす)である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【0018】
[6] 前記化合物(A)は、前記一般式(1)において、Xが、水素原子又は炭素数1~8の脂肪族炭化水素基であり、AOが、炭素数2~3のオキシアルキレン基であり、且つ10~100モル%がオキシエチレン単位から構成されるものであり、nが、1~10の数であり、Rが、水素原子であり、aが1である、前記[5]に記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【0019】
[7] 前記化合物(A)と前記共重合体(B)との質量比(化合物(A)/共重合体(B))が、99.99/0.01~80.0/20.0である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の水硬性組成物用収縮低減剤。
【0020】
[8] 前記[1]~[4]のいずれかに記載の水硬性組成物用収縮低減剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水硬性組成物用収縮低減剤は、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物の硬化体における収縮低減性を発揮し、続くバッチの水硬性組成物における空気量の変化(即ち、空気量が想定からずれること)を抑制することができるという効果を奏するものである。
【0022】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用収縮低減剤を含有することによって、その硬化体における収縮低減性が発揮され、続くバッチの水硬性組成物における空気量の変化(即ち、空気量が想定からずれること)が抑制されるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0024】
(1)水硬性組成物用収縮低減剤:
本発明の水硬性組成物用収縮低減剤は、下記一般式(1)で示される化合物(A)と、アニオン性基を有する単量体に由来する構成単位及び不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位を含む共重合体(B)と、を含有するものである。
【0025】
【化2】
【0026】
但し、一般式(1)において、Xは、水素原子、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基、又はビスフェノールから2つのヒドロキシ基を除いた残基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。aは、1~6の整数(但し、n×a=1~300を満たす)である。
【0027】
このような水硬性組成物用収縮低減剤は、所定の化合物(A)と所定の共重合体(B)の両方を含有することによって、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物の硬化体における収縮低減性を発揮し、続くバッチの水硬性組成物における空気量の変化を抑制することができる。
【0028】
ここで、水硬性組成物の製造現場では、単一のプラントを用いて、第1バッチ、第2バッチ、第3バッチのように、順次、新しい水硬性組成物が作製される。このとき、バッチ毎に同じ組成(配合)の水硬性組成物を作製する場合もあるし、異なる組成の水硬性組成物を作製する場合もある。この場合、収縮低減剤を含有しない水硬性組成物(通常の水硬性組成物)の間に、収縮低減剤を含有する水硬性組成物を製造すると、収縮低減剤を含有する水硬性組成物の後に製造する通常の水硬性組成物における空気量(連行空気量)が、収縮低減剤を含有する水硬性組成物の前に製造した通常の水硬性組成物の空気量と同じにならず変化(増減)する。つまり、同じ配合にもかかわらず、収縮低減剤を含有する水硬性組成物の前後で空気量が増減してしまうという問題がある。このような問題に対して、本発明の水硬性組成物用収縮低減剤を用いることによって、当該収縮低減剤を含有する水硬性組成物の後に製造する通常の水硬性組成物における空気量の変化(即ち、空気量が通常想定される値からずれること(収縮低減剤を含有する水硬性組成物の製造後ではない場合の値と比べて差が生じること))を抑制することができる。
【0029】
上記のように、水硬性組成物の製造現場では、単一のプラントを用いて、第1バッチ、第2バッチ、第3バッチのように、順次、新しい水硬性組成物が作製される。このとき、バッチ毎に同じ組成の水硬性組成物を作製する場合もあるし、異なる組成の水硬性組成物を作製する場合もある。コンクリートなどを作製する際には、過去の実績や経験を基に想定される配合があらかじめ存在する。しかし、収縮低減剤を含有する水硬性組成物を製造すると、その次に製造する「収縮低減剤を含有しない水硬性組成物」における空気量(連行空気量)が、想定される空気量と同じにならず変化(増減)する。即ち、空気量が想定からずれる。なお、バッチごとにプラント内を洗浄すれば、このような空気量の変化は生じにくいが、手間やコストなどが掛かることからバッチごとにプラント内の洗浄は通常行われない。
【0030】
以上の通り、実際の製造現場では、以前に作製したコンクリート等と同じ配合の水硬性組成物であるにもかかわらず、収縮低減剤を含有する水硬性組成物の後に作製すると、空気量が増減してしまうといった問題が生じる。例えば、同じ配合の水硬性組成物であるにもかかわらず、収縮低減剤を含有する水硬性組成物を作製する直前に作製するか、或いは、直後に作製するかによって、空気量が増減してしまうといった問題もある。
【0031】
そのため、収縮低減剤を含有する水硬性組成物を製造した後に通常の水硬性組成物を製造する場合、その空気量の変化を考慮して適宜調整しながら作業を行うことが求められる。このような作業は手間がかかり、更には、水硬性組成物の製造時間が長くなる原因にもなるおそれがある。また、収縮低減剤を含有する水硬性組成物を製造したことを考慮した配合処方を、別途、用意することも想定されるが、これは、別処方の管理の手間などが生じる。
【0032】
なお、収縮低減剤は、コンクリート等の練り混ぜ時だけではなく、輸送用のアジテート車等に積み替えた後に添加されることもある。このようなアジテート車等を用いた場合でも、収縮低減剤を含有する水硬性組成物を輸送した後のアジテート車を洗浄せずに用いると、同様に、その後に積み替えたコンクリートの空気量が増減してしまうといった問題が生じる。
【0033】
(1-1)化合物(A):
化合物(A)は、下記一般式(1)で示される化合物である。この化合物(A)を含有することによって、水硬性組成物の硬化体における収縮低減性が発揮される。
【0034】
【化3】
【0035】
但し、一般式(1)において、Xは、水素原子、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基、又はビスフェノールから2つのヒドロキシ基を除いた残基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基である。aは、1~6の整数(但し、n×a=1~300を満たす)である。
【0036】
Xは、水素原子、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基、又はビスフェノールから2つのヒドロキシ基を除いた残基であり、これらの中でも、水素原子、炭素数1~15の脂肪族炭化水素基、又はビスフェノールから2つのヒドロキシ基を除いた残基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~15の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1~8の脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。このようなものであると、水硬性組成物の硬化体における収縮低減性が良好に発揮される。
【0037】
AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)であり、炭素数2~3のオキシアルキレン基であることが好ましい。このようなものであると、水硬性組成物の硬化体における収縮低減性が良好に発揮される。
【0038】
nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。nは、1~220の数であることが好ましく、1~10の数であることが更に好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物の硬化体における収縮低減性が発揮される。
【0039】
Rは、水素原子、又は炭素数1~6の炭化水素基であり、これらの中でも、水素原子であることが好ましい。このようなものであると、水硬性組成物の硬化体における収縮低減性が良好に発揮される。
【0040】
aは、1~6の整数であり、1~3の整数であることが好ましく、1であることが更に好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物の硬化体における収縮低減性が発揮される。
【0041】
n×aは、1~300を満たすものであり、1~220を満たすことが好ましく、1~10を満たすことが更に好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物の硬化体における収縮低減性が発揮される。
【0042】
一般式(1)におけるAO中のポリオキシエチレン単位は、特に制限はないが、10~100モル%であることが好ましい。このような範囲であると、水硬性組成物の硬化体における収縮低減性が更に良好に発揮される。
【0043】
(1-2)共重合体(B):
共重合体(B)は、アニオン性基を有する単量体に由来する構成単位及び不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位を含むものである。このような2種の構成単位を含む共重合体(B)を含有すると、化合物(A)による収縮低減機能を阻害することなく(即ち、収縮低減性能が維持されて発揮され)、続くバッチの水硬性組成物(後バッチのコンクリート)における空気量の変化を抑制できる。
【0044】
(1-2a)アニオン性基を有する単量体に由来する構成単位:
アニオン性基を有する単量体に由来する構成単位を形成するアニオン性基を有する単量体は、特に制限はなく適宜採用することができる。
【0045】
アニオン性基を有する単量体に由来する構成単位としては、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、及びスルホン酸塩基から選ばれる少なくとも1つを有する単量体に由来する構成単位であることが好ましく、カルボン酸基及びカルボン酸塩基から選ばれる少なくとも1つを有する単量体に由来する構成単位であることが更に好ましく、マレイン酸及びマレイン酸塩から選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する構成単位であることが特に好ましい。このような構成単位を含有することによって、続くバッチの水硬性組成物(後バッチのコンクリート)における空気量の変化を抑制できる。
【0046】
アニオン性基を有する単量体に由来する構成単位は、共重合体(B)中の全構成単位の30~99質量%であることが好ましい。
【0047】
(1-2b)不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位:
不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位を形成する不飽和炭化水素系単量体は、特に制限はなく適宜採用することができる。
【0048】
不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位としては、炭素数2~10の不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位であることが好ましく、炭素数4~8の不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位であることが更に好ましく、ジイソブチレンに由来する構成単位であることが特に好ましい。このような構成単位を含有することによって、続くバッチの水硬性組成物(後バッチのコンクリート)における空気量の変化を抑制できる。
【0049】
不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位は、共重合体(B)中の全構成単位の1~70質量%であることが好ましい。
【0050】
(1-2c)その他の構成単位:
共重合体(B)は、アニオン性基を有する単量体に由来する構成単位及び不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位以外に、その他の構成単位を含んでいても良い。その他の構成単位としては、上記各構成単位と共重合可能なものである限り特に制限はないが、例えば、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート等のエステル系単量体、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド、(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノアリルエーテルなどの不飽和ポリアルキレングリコール類などを挙げることができる。
【0051】
その他の構成単位の構成割合は、本発明の効果が損なわれない範囲内で適宜決定することができるが、共重合体(B)中の全構成単位の0~10質量%とすることができる。
【0052】
共重合体(B)は、その質量平均分子量について特に制限はないが、例えば、1000~500000とすることができる。なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定することができる。
【0053】
(1-3)化合物(A)/共重合体(B):
化合物(A)と共重合体(B)との質量比(化合物(A)/共重合体(B))は、特に制限はないが、99.99/0.01~80.0/20.0であることが好ましく、99.99/0.01~95.0/5.0であることが更に好ましい。このような範囲とすることによって、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物の硬化体における収縮低減性を良好に発揮し、続くバッチの水硬性組成物における空気量の変化を良好に抑制することができる。
【0054】
(1-4)その他の成分:
本発明の水硬性組成物用収縮低減剤は、化合物(A)及び共重合体(B)以外に、その他の成分を更に含んでいてもよい。
【0055】
その他の成分としては、例えば、空気量調整剤としてAE(Air Entraining)剤や消泡剤、他の収縮低減成分、増粘剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、酸化防止剤、pH調整剤などを挙げることができる。
【0056】
その他の成分の含有割合としては、例えば、化合物(A)及び共重合体(B)の合計量100質量部に対して、0~10質量部とすることができ、好ましくは0~5質量部とすることができる。
【0057】
(2)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用収縮低減剤を含有するものである。
【0058】
このような水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用収縮低減剤を含有することによって、その硬化体における収縮低減性が発揮され、続くバッチの水硬性組成物における空気量の変化が抑制される。
【0059】
本発明の水硬性組成物は、従来公知の水硬性組成物と同様に、結合材(水硬性結合材)、水、細骨材、及び粗骨材等を含むものとすることができる。
【0060】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用収縮低減剤の含有量については特に制限はなく適宜設定することができる。例えば、本発明の水硬性組成物用収縮低減剤の含有量は、水硬性組成物1m当たり、0.1~40kgとすることができる。このような含有量とすることによって、水硬性組成物の硬化体における収縮低減性が良好に発揮され、続くバッチの水硬性組成物における空気量の変化が更に抑制される。
【0061】
結合材としては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種のセメントを挙げることができる。
【0062】
更に、結合材は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張材等の各種混和材を併用してもよい。
【0063】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材等が挙げられるが、粘土質等の微粒成分等を含むものであってもよい。
【0064】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材等が挙げられる。
【0065】
本発明の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類やオキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延剤、各種減水剤、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、セルロースエーテル系化合物からなる増粘剤、カルシムスルホネート等からなる急結材等、カルシウムスルホアルミネート等からなる膨張材等、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0066】
その他の成分の含有割合としては、例えば、結合材100質量部に対して、0~5質量部とすることができる。
【0067】
本発明の水硬性組成物は、その水と結合材の比率(水/結合材比)としては従来公知の割合を適宜採用することができるが、例えば、20~70質量%とすることができる。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
まず、以下の合成例1~7のようにして化合物(A)(化合物(A-1)、(A-5)~(A-10))の合成を行った。
【0070】
なお、化合物(A-2)は、市販品であるブチルジグリコール(日本乳化剤社製)をそのまま使用した。化合物(A-3)は、市販品であるブチセノール40(KHネオケム社製)をそのまま使用した。化合物(A-4)は、市販品である試薬「ポリプロピレングリコール 400」(富士フィルム和光純薬社製)をそのまま使用した。化合物(A-11)は、市販品である試薬「トリプロピレングリコールジメチルエーテル(異性体混合物)」(富士フィルム和光純薬社製)をそのまま使用した。
【0071】
(合成例1)化合物(A-1)の合成:
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のジエチレングリコールモノブチルエーテル(n-ブチルアルコールのエチレンオキシド2モル付加物)526.6g及び水酸化カリウム1.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらプロピレンオキシド377gを0.4MPaのゲージ圧にて3時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード700(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、化合物(A-1)を得た。
【0072】
(合成例2)化合物(A-5)の合成:
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、「ニューポールBPE-60(三洋化成工業社製、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのすべての水酸基にエチレンオキシド合計6モル付加物)」318.9g及び水酸化カリウム3.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、この系中を減圧下にて脱水を1時間行った。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド2681.1gを0.4MPaのゲージ圧にて6時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、85%リン酸を用いてpH6になるよう中和を行った、脱水後、ろ過を行い、化合物(A-5)を得た。
【0073】
(合成例3)化合物(A-6)の合成:
表1を満たすようにエチレンオキシドの仕込み量(平均付加モル数)を変化させたこと以外は、合成例2と同様にして化合物(A-6)を得た。
【0074】
(合成例4)化合物(A-7)の合成:
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のグリセリン22.7g及び水酸化カリウム1.0gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた後、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド977.30gを0.4MPaのゲージ圧にて10時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード700(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、化合物(A-7)を得た。
【0075】
(合成例5)化合物(A-8)の合成:
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のトリメチロールプロパン38.9g及び水酸化カリウム2.5gを仕込んだ。次いで、反応系を120℃まで昇温させた。その後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらプロピレンオキシド474.7g、エチレンオキシド486.4gを0.4MPaのゲージ圧にて3時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。その後、「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和を行った後、ろ過を行い、化合物(A-8)を得た。
【0076】
(合成例6)化合物(A-9)の合成:
表1を満たすようにエチレンオキシド、プロピレンオキシドの仕込み量(平均付加モル数)を変化させたこと以外は、合成例5と同様にして化合物(A-9)を得た。
【0077】
(合成例7)化合物(A-10)の合成:
攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器中に、市販のテトラエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセノール40:KHネオケム社製)307.8g、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液284.7gを仕込んだ後、真空ポンプを用いて系内を減圧にし、反応系を120℃まで昇温させた。メタノールを完全に除去した後、この反応系内に、130±5℃に維持しながらエチレンオキシド270.8gを0.4MPaのゲージ圧にて3時間かけて添加した。その後、反応温度(130±5℃)で1時間保持し、反応を終了した。室温まで冷却し、塩化ブチル136.6g加え、120℃で2時間反応した。反応終了後、系内の温度が60℃になるまで冷却し、ろ過して、化合物(A-10)を得た。
【0078】
【表1】
【0079】
なお、表1中、「(AO)n」欄の括弧の数字は、該当するアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示している。「(AO)n」欄の「ブロック」及び「ランダム」は、「ブロック」については、複数種のアルキレンオキサイド(具体的には、オキシエチレン、オキシプロピレン)がブロック付加していることを示し、「ランダム」については、複数種のアルキレンオキサイドがランダム付加していることを示している。
【0080】
次に、以下の合成例8~12のようにして共重合体(B)(共重合体(B-1)、(B-3)~(B-5)、(B-7))の合成を行った。
【0081】
なお、共重合体(B-2)は、市販品であるスキッシュ21B(花王社製)をそのまま使用した。共重合体(B-6)は、市販品であるVERSA-LT72(島貿易社)をそのまま使用した。
【0082】
表2中、BR-1は「ポリアクリル酸」であり、これは、富士フィルム和光純薬社製のポリアクリル酸(質量平均分子量25000)である。BR-2は「ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物」であり、これは、花王社製の「マイテイ150」である。BR-3は、合成例13のようにして合成した。なお、BR-2の「ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物」は、分散剤であり、BR-3は、消泡剤である。
【0083】
(合成例8)共重合体(B-1)の合成:
攪拌機、及び温度計を備えた反応容器中に無水マレイン酸98.1g、ジイソブチレン112.2g、及びトルエン400gの混合物を仕込み、窒素雰囲気下にて、70℃まで昇温し、過酸化ベンゾイル4gを加え、75℃にて6時間混合重合した。重合終了後、析出した共重合体を濾別乾燥して共重合体を得た。得られた共重合体に水及び水酸化ナトリウムを加え、80℃で透明に溶解するまで、攪拌を行い、共重合体(B-1)を得た。
【0084】
(合成例9)共重合体(B-3)の合成:
無水マレイン酸、ジイソブチレン及びトルエンの仕込み量を変化させ、混合重合条件を80~85℃にて10時間としたこと以外は、合成例8と同様にして、共重合体(B-3)を得た。
【0085】
(合成例10)共重合体(B-4)の合成:
蒸留水518.2g、30%水酸化ナトリウム水溶液275.2g、ISOBAM-04(クラレ社製)206.7gを反応容器に仕込み、反応系を70℃まで昇温させた後、攪拌しながら均一に溶解し、することで、アニオン性基を含有する単量体に由来する構成単位及び不飽和炭化水素系単量体に由来する構成単位を含む共重合体(B-4)を得た。
【0086】
(合成例11)共重合体(B-5)の合成:
ジイソブチレンに代えて、スチレン104.2gを用い、適宜、過酸化ベンゾイルの量を調整したこと以外は、合成例8と同様にして、共重合体(B-5)を得た。
【0087】
(合成例12)共重合体(B-7)の合成:
ジイソブチレンに代えて、2-ビニルナフタレン154.2gを用い、適宜、過酸化ベンゾイルの量を調整したこと以外は、合成例8と同様にして、共重合体(B-7)を得た。
【0088】
(合成例13)共重合体(BR-3)の合成:
まず、攪拌機、圧力計、及び温度計を備えた圧力容器の中に、オレイルアルコール130.7gおよび水酸化カリウム1.1gを投入した。上記アルコール(オレイルアルコール)の融点は、約11℃であり、20℃前後の常温では液体の状態にある。この状態で、脱水処理を行った後、圧力容器内の反応系を110±5℃に維持しながらエチレンオキサイド217.8gを0.4MPaのゲージ圧にて1時間かけて圧入し、その後2時間の熟成を行った。更に、上記反応系を135±5℃に維持しながらプロピレンオキサイド777.4gを0.4MPaのゲージ圧にて5時間かけて圧入した後、2時間熟成して反応を終了した。その後、吸着剤として「キョーワード600(協和化学工業社製)」を用いて中和処理を行い、濾別精製し、精製処理物であるBR-3の消泡剤(ポリオキシアルキレン系化合物)を得た。
【0089】
【表2】
【0090】
共重合体(B)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の測定条件で測定した。
【0091】
<質量平均分子量の測定条件>
装置:Shodex GPC-101(昭和電工社製)
カラム:OHpak SB-806M HQ+SB-806M HQ(昭和電工社製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド(アジレント社製)
【0092】
(実施例1~31、比較例1~6)
(1)水硬性組成物用収縮低減剤の調製:
下記表3に示す種類及び割合にて、上述のようにして得られた化合物(A)及び共重合体(B)を配合して、水硬性組成物用収縮低減剤(SR-1~SR-31、R-1~R-5)を調製した。
【0093】
【表3】
【0094】
(3)水硬性組成物(コンクリート組成物)の調製:
次に、以下のようにして各種の水硬性組成物を順番に作製した。まず、(i)「収縮低減剤を含まない空気量の基準となる水硬性組成物(基準コンクリート組成物)」(表5~表7中、「基準となるコンクリート」と記す)を作製し、その後、(ii)収縮低減剤を含有する水硬性組成物(表5~表7中、「収縮低減剤含有コンクリート」と記す)を作製し、その後、(iii)「収縮低減剤を含まない水硬性組成物(空気量の測定対象である水硬性組成物)」(表5~表7中、「後バッチのコンクリート」と記す)を作製した。
【0095】
(3-1)基準コンクリート組成物(基準となるコンクリート)の作製:
まず、表4に示した各配合条件を採用し、20℃の試験室内で55Lのパン型強制練りミキサーに、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、宇部三菱セメント社製、及び住友大阪セメント社製等量混合、密度=3.16g/cm)からなる水硬性結合材(セメント)と、細骨材として陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm)、及び粗骨材として砕石(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm)を添加し、更に、減水剤、空気連行剤、消泡剤を用いて容積30Lのコンクリート組成物を調製した。
【0096】
ここで、減水剤としては、表4に示すように、「チューポールEX20(竹本油脂社製)」、「チューポールEX60(竹本油脂社製)」、「チューポールHP-11(竹本油脂社製)」をそれぞれ用いた。空気連行剤としては、「AE-300(竹本油脂社製)」を用いた。消泡剤としては、「AFK-2(竹本油脂社製)」を用いた。その後、これらの減水剤、空気連行剤、消泡剤を練り混ぜ水(水道水)の一部として用い、スランプが18±1cm、空気量が4.5%となるように、それぞれの量を調整し、コンクリート組成物を調製した。
【0097】
なお、練り上がりのコンクリート組成物の温度がいずれも20±2℃の範囲内となるように、調製前に各材料を温調した。なお、上記練り上がりのコンクリート組成物の温度は、JIS-A1156(2014)に準拠して測定した。
【0098】
【表4】
【0099】
(3-2)収縮低減剤を含有する水硬性組成物(本発明の水硬性組成物)の作製:
表4に示した配合No.3を採用し、20℃の試験室内で55Lのパン型強制練りミキサーに、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、宇部三菱セメント社製、及び住友大阪セメント社製 等量混合、密度=3.16g/cm)からなる水硬性結合材と、細骨材として陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm)及び粗骨材として砕石(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm)を添加し、減水剤、空気連行剤、及び消泡剤、更に、表5に示した添加量の水硬性組成物用収縮低減剤(表3参照)を用いて容積30Lのコンクリート組成物を調製した。
【0100】
ここで、減水剤として「チューポールHP-11(竹本油脂社製)」を用いた。空気連行剤として「AE-300(竹本油脂社製)」を用いた。消泡剤として「AFK-2(竹本油脂社製)」を用いた。これらの減水剤、空気連行剤、及び消泡剤を練り混ぜ水(水道水)の一部として用い、スランプが18±1cm、連行空気量が4.5±0.5%の範囲となるように、それぞれの量を調整し、コンクリート組成物(収縮低減剤を含有する水硬性組成物)を調製した。
【0101】
(3-3)空気量の測定対象である水硬性組成物(後バッチのコンクリート)の作製:
まず、上記のようにして調製した「収縮低減剤を含有する水硬性組成物」の4質量%を、20℃の試験室内で55Lのパン型強制練りミキサーに添加した。このようにして、「収縮低減剤を含有する水硬性組成物」が残った状態と同様の状態とした。
【0102】
なお、コンクリート組成物の製造現場は、単一のプラントを用いて、第1バッチ、第2バッチ、第3バッチのように、順次、新しいコンクリート組成物が作製される。このとき、各バッチには、当該バッチの前に作製したコンクリート組成物の一部が残り、その残量は、通常、作製したコンクリート組成物の4質量%程度と考えることができる。
【0103】
その後、この55Lのパン型強制練りミキサーを用い、上述した基準コンクリート組成物の作製と同様にして、つまり、同じ量の減水剤、空気連行剤、及び消泡剤を用い、同じ手順で採用して、容積30Lのコンクリート組成物(空気量の測定対象である水硬性組成物)を調製した。
【0104】
(4)各種評価:
調製した各水硬性組成物について、各種評価(スランプ、空気量(%)、後バッチの空気量への影響、収縮低減性能(材齢26週の乾燥収縮量(μm))、及び、総合評価)を適宜行った。評価結果を表5~表7に示す。なお、スランプについては表5~表7には示していない。
【0105】
水硬性組成物(コンクリート組成物)の各種評価の評価方法及び評価基準を以下に示す。
【0106】
(スランプ(cm))
練混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS-A1101に準拠して測定した。
【0107】
(空気量(容積%))
練混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS-A1128に準拠して測定した。
【0108】
(後バッチの空気量への影響)
後バッチの空気量への影響(即ち、「収縮低減剤を含有する水硬性組成物」が後バッチのコンクリートに与える影響)について、「基準コンクリート組成物」の空気量(%)と「空気量の測定対象である水硬性組成物(後バッチのコンクリート)」の空気量(%)との差の絶対値を算出して評価を行った。評価基準を以下に示す。なお、表5~表7中、後バッチの空気量への影響の欄の「空気量の差(%)」は、式:|(後バッチのコンクリートの空気量(%))-(基準コンクリート組成物の空気量(%))|によって算出される値である。
S:0%以上、0.5%以下
A:0.5%超、1.0%以下
B:1.0%超、1.5%以下
C:1.5%超、2.0%以下
D:2.0%超
【0109】
(収縮低減性能)
練混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS-A1129に準拠して測定した長さ変化率を乾燥収縮量(μm)とし、収縮低減性能の評価を行った。評価基準を以下に示す。
S:材齢26週の乾燥収縮量が550μm以下
A:材齢26週の乾燥収縮量が550μm超、600μm以下
B:材齢26週の乾燥収縮量が600μm超、650μm以下
C:材齢26週の乾燥収縮量が650μm超、700μm以下
D:材齢26週の乾燥収縮量が700μm超
【0110】
(総合評価)
上記「後バッチの空気量への影響」(評価1)及び上記「収縮低減性能」(評価2)の評価結果に基づいて以下の基準で評価を行った。
S:評価1及び評価2の結果がともに「S」である場合
A:評価1の結果が「S」で評価2の結果が「A」である場合、或いは、評価1の結果が「A」で評価2の結果が「S」である場合
B:評価1の結果が「S」で評価2の結果が「B」であるか、評価1の結果が「B」で評価2の結果が「S」であるか、或いは、評価1及び評価2の結果がともに「A」である場合
C:評価1の結果が「S」で評価2の結果が「C」であるか、評価1の結果が「C」で評価2の結果が「S」である場合、評価1の結果が「A」で評価2の結果が「B」である場合であるか、或いは、評価1の結果が「B」で評価2の結果が「A」である場合
D:評価1の結果または評価2の結果が「D」である場合
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
(結果)
表5~表7に示すように、本実施例の水硬性組成物用収縮低減剤を水硬性組成物に添加することで、この水硬性組成物の硬化体における収縮低減性を付与することができ、更には、続くバッチの水硬性組成物(後バッチのコンクリート)における空気量の変化を抑制できる水硬性組成物が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の水硬性組成物用収縮低減剤は、コンクリートやモルタル等の水硬性組成物に用いられる添加剤として利用することができる。また、本発明の水硬性組成物は、コンクリート硬化体やモルタル硬化体等の水硬性組成物硬化体を形成するものとして利用することができる。