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特開2024-97222作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097222
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240710BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240710BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/24 B
E02F9/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000627
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌保
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB07
2D003BA07
2D003DA04
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB04
(57)【要約】
【課題】蓄電装置の損傷を抑制する。
【解決手段】作業機械は、蓄電装置と、蓄電装置に損傷を与えるおそれがある状況を検出する検出部と、コントローラとを備えている。コントローラは、検出部の検出結果に基づいて、蓄電装置の損傷の可能性を判断する。コントローラは、蓄電装置に損傷を与えるおそれがあるときに、蓄電装置の通電を遮断する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがある状況を検出する検出部と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記検出部の検出結果に基づいて前記蓄電装置の損傷の可能性を判断し、前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがあるときに、前記蓄電装置の通電を遮断する、作業機械。
【請求項2】
前記蓄電装置に電気的に接続された電気回路をさらに備え、
前記コントローラは、前記蓄電装置と前記電気回路との間の電力の伝達を遮断する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記蓄電装置と前記電気回路との少なくともいずれか一方は、電気的接続を遮断する遮断部を含む、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記蓄電装置を搭載する車体を備え、
前記検出部は、前記車体の傾斜を検出する傾斜センサを含む、請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、前記傾斜センサにより求められる前記車体の傾斜の角度と、角度閾値とを比較する、請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記コントローラは、前記車体の傾斜の角度が前記角度閾値よりも大きいとの判断が複数回連続してなされた場合に、前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがあると判断する、請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
前記検出部は、前記蓄電装置への接近物を検出する接近物検出センサを含む、請求項1に記載の作業機械。
【請求項8】
前記コントローラは、前記接近物検出センサの検出結果より、前記接近物の大きさを求める、請求項7に記載の作業機械。
【請求項9】
前記コントローラは、前記接近物検出センサの検出結果より、前記作業機械と前記接近物との距離を求める、請求項8に記載の作業機械。
【請求項10】
前記コントローラは、前記接近物の大きさが寸法閾値よりも大きく、かつ、前記作業機械と前記接近物との距離が距離閾値よりも小さいと判断された場合に、前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがあると判断する、請求項9に記載の作業機械。
【請求項11】
前記接近物検出センサは、前記接近物を撮像する少なくとも1つの撮像装置を含む、請求項7に記載の作業機械。
【請求項12】
前記少なくとも1つの撮像装置は、複数の撮像装置を含み、
前記複数の撮像装置は、平面視において前記蓄電装置を取り囲むように配置される、請求項11に記載の作業機械。
【請求項13】
蓄電装置と、
前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがある状況を検出する検出部と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記検出部の検出結果に基づいて前記蓄電装置の損傷の可能性を判断し、前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがあるときに、前記蓄電装置の通電を遮断する、作業機械を含むシステム。
【請求項14】
蓄電装置に損傷を与えるおそれがある状況を検出する検出部の検出結果を取得することと、
前記検出部の検出結果に基づいて前記蓄電装置の損傷の可能性を判断することと、
前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがあるときに、前記蓄電装置の通電を遮断することと、を備える、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-145698号公報(特許文献1)には、機体に搭載された複数の電気ユニットの間を接続するパワーケーブルまたは電気ユニットを機械的に保護する保護構造物に変形が生じると、電気ユニットの動作を停止させる制御装置を有する、作業機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-145698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置を備える作業機械においては、車体に外部衝撃が加わるときの蓄電装置の保護が求められている。
【0005】
本開示では、蓄電装置の損傷を抑制できる、作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、蓄電装置と、蓄電装置に損傷を与えるおそれがある状況を検出する検出部と、コントローラとを備える、作業機械、および作業機械を含むシステムが提案される。コントローラは、検出部の検出結果に基づいて、蓄電装置の損傷の可能性を判断する。コントローラは、蓄電装置に損傷を与えるおそれがあるときに、蓄電装置の通電を遮断する。
【0007】
本開示のある局面に従うと、作業機械の制御方法が提案される。制御方法は、以下のステップを備えている。第1のステップは、蓄電装置に損傷を与えるおそれがある状況を検出する検出部の検出結果を取得することである。第2のステップは、検出部の検出結果に基づいて蓄電装置の損傷の可能性を判断することである。第3のステップは、蓄電装置に損傷を与えるおそれがあるときに、蓄電装置の通電を遮断することである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法によると、蓄電装置の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電動ショベルの構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示される電動ショベルのシステム構成を示すブロック図である。
図3】旋回フレームの構成およびその搭載物の配置を示す平面図である。
図4】旋回フレームの構成およびその搭載物の配置を示す側面図である。
図5】コントローラの機能ブロックを説明する図である。
図6】蓄電装置の通電を遮断する処理の流れを示すフローチャートである。
図7】車体の傾斜を判断する処理の流れを示すフローチャートである。
図8】車体が傾斜していない状態の電動ショベルを前方から見た模式図である。
図9】車体の傾斜が小さい状態の電動ショベルを前方から見た模式図である。
図10】車体の傾斜が大きい状態の電動ショベルを前方から見た模式図である。
図11】接近物の対応の要否を判断する処理の流れを示すフローチャートである。
図12】電動ショベルの周辺の対象物の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0011】
以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、運転室4内の運転席4Sに着座したオペレータを基準とした方向である。図面においては、前後方向D1と左右方向D2とを、それぞれ両矢印で示している。本明細書における平面視とは、旋回軸RXに沿って旋回フレーム20を上から見る視点を意味する。
【0012】
<作業機械の構成>
図1は、実施形態における作業機械の一例としての電動ショベル100の構成を概略的に示す斜視図である。図1に示されるように、電動ショベル100は、車体(作業機械本体)1と、油圧により作動する作業機2とを有している。車体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。
【0013】
走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。電動ショベル100は、履帯5Crの回転により走行可能である。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。走行モータ5Mは、油圧により作動する油圧モータである。なお、走行体5は車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0014】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、旋回モータ24(図2)により旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能である。旋回モータ24は、油圧により作動する油圧モータである。走行モータ5Mまたは旋回モータ24は、電動モータであってもよい。旋回軸RXは、旋回体3の旋回中心となる仮想の直線である。
【0015】
旋回体3は、旋回フレーム20を有している。旋回フレーム20は、旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回する。
【0016】
旋回体3は、運転室4(キャブ)を有している。運転室4は、旋回フレーム20に搭載されている。運転室4は、旋回体3のたとえば前方左側(車両前側)に配置されている。運転室4内には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられている。オペレータ(乗員)は、運転室4に搭乗して、作業機2の操作、走行体5に対する旋回体3の旋回操作、および走行体5による電動ショベル100の走行操作が可能である。
【0017】
旋回体3は、外装カバー9を有している。外装カバー9は、機械室を覆っている。機械室は、運転室4に対して旋回体3の後方側(車両後側)に配置されている。機械室には、バッテリ37、インバータ31、電動モータ40、油圧ポンプ43、旋回モータ24、メインバルブ41、および作動油タンク42(いずれも図2参照)などが配置されている。
【0018】
外装カバー9の上面に、撮像装置が搭載されている。撮像装置は、電動ショベル100の周辺の作業現場に存在する撮像対象を撮像して、撮像対象の画像を取得する。
【0019】
撮像装置によって撮像される撮像対象は、作業現場において施工される施工対象を含む。施工対象は、電動ショベル100の作業機2によって掘削される掘削対象を含む。掘削対象は、掘削前の掘削対象(すなわち、現況地形)、掘削中の掘削対象、および掘削後の掘削対象を含む。撮像装置の撮像対象は、電動ショベル100の周辺の障害物を含む。撮像装置の撮像対象は、電動ショベル100の周辺に配置される他の作業機械を含む。他の作業機械は、電動ショベル100の掘削対象を運搬する運搬機械を含む。他の作業機械は、ダンプトラックを含む。
【0020】
撮像装置は、少なくとも一つのカメラを含んでいる。カメラは、光学系と、光学系を通過した光を受光するイメージセンサとを有している。イメージセンサは、CCD(Couple Charged Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含んでいる。撮像装置は、複数のカメラを含んでいる。具体的には、実施形態の撮像装置は、右前方カメラ51と、右後方カメラ52と、後方カメラ53と、左方カメラ54とを含んでいる。
【0021】
右前方カメラ51と右後方カメラ52とは、外装カバー9の上面の右側縁部に配置されている。右前方カメラ51は、右後方カメラ52よりも前方に配置されている。右前方カメラ51は、旋回体3の右前方を撮像する。右前方カメラ51の光軸は、右前方カメラ51から右斜め前方向に延びている。右後方カメラ52は、旋回体3の右後方を撮像する。右後方カメラ52の光軸は、右後方カメラ52から右斜め後ろ方向に延びている。
【0022】
後方カメラ53は、前後方向D1において外装カバー9の後端部に配置されており、左右方向D2において外装カバー9の中央部に配置されている。後方カメラ53は、旋回体3の後方を撮像する。後方カメラ53の光軸は、後方カメラ53から後方向に延びている。左方カメラ54は、外装カバー9の上面の左側縁部に配置されている。左方カメラ54は、外装カバー9の左側板9L付近に配置されている。左方カメラ54は、旋回体3の左方を撮像する。左方カメラ54の光軸は、左方カメラ54から左方向に延びている。
【0023】
作業機2は、旋回体3の前方側であって運転室4のたとえば右側において、旋回体3に支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。
【0024】
ブーム6は、車体1(旋回体3)に回動可能に接続されている。具体的にはブーム6の基端部は、ブームフートピン13を支点として旋回フレーム20に回動可能に接続されている。アーム7は、ブーム6に回動可能に接続されている。具体的にはアーム7の基端部は、ブームトップピン14を支点としてブーム6の先端部に回動可能に接続されている。バケット8は、アーム7に回転可能に接続されている。具体的にはバケット8の基端部は、アームトップピン15を支点としてアーム7の先端部に回動可能に接続されている。
【0025】
ブーム6は、ブームシリンダ10により車体1に対して駆動可能である。この駆動により、ブーム6は、ブームフートピン13を支点として旋回体3に対して上下方向に回動可能である。ブームシリンダ10の一端は旋回体3に接続され、他端はブーム6に接続されている。
【0026】
アーム7は、アームシリンダ11によりブーム6に対して駆動可能である。この駆動により、アーム7は、ブームトップピン14を支点としてブーム6に対して上下方向または前後方向に回動可能である。アームシリンダ11の一端はブーム6に接続され、他端はアーム7に接続されている。
【0027】
バケット8は、バケットシリンダ12によりアーム7に対して駆動可能である。この駆動により、バケット8は、アームトップピン15を支点としてアーム7に対して上下方向に回動可能である。バケットシリンダ12の一端はアーム7に接続され、他端はバケットリンク17に接続されている。
【0028】
ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12の各々は、たとえば油圧シリンダであり、油圧により駆動する。
【0029】
<システム構成>
図2は、図1に示される電動ショベルのシステム構成を示すブロック図である。電動ショベル100は、動力源としての電動モータ40を備えている。電動ショベル100では、作業機2を駆動する駆動力を、電動モータ40が発生する。電動モータ40は、作業機2を駆動可能である。ブーム6、アーム7およびバケット8の各々が電動モータ40によって駆動されることにより、作業機2の動作が可能である。
【0030】
電動モータ40は、バッテリ37を電源として、インバータ31から供給された交流電力により駆動する。電動モータ40の回転速度は、インバータ31から供給される交流電力の周波数により制御される。
【0031】
バッテリ37は、蓄電装置であり、電気エネルギーを蓄える。バッテリ37は、蓄えた電気エネルギーを起電力として取り出す。バッテリ37は、たとえば複数のバッテリモジュールを含んでいる。複数のバッテリモジュールの各々は、複数のバッテリセルを有している。バッテリセルは、たとえば、正極と負極とを、セパレータを間に介在させて積層することにより、構成されている。
【0032】
インバータ31は、バッテリ37の出力である直流電流を、周波数などを制御した交流電流に変換する。インバータ31は、電気配線を通じて電動モータ40に交流電力を供給する。インバータ31は、コントローラ30から入力された制御信号に従って、電動モータ40の駆動を制御する。このようにバッテリ37に蓄えられた電気エネルギーは電動モータ40に供給される。
【0033】
バッテリ37とインバータ31とは、配電ユニット(PDU)35および高圧ジャンクションボックス(HVJB)36を介して、電気的に接続されている。配電ユニット35は、バッテリ37に蓄えられた電力を、インバータ31を含む各機器に分配する機能を有している。高圧ジャンクションボックス36には、バッテリ37が接続されており、また充電ポート38が接続されている。充電ポート38に、外部電源または外部の発電機が接続されて、バッテリ37が充電される。バッテリ37は、外部から得た電気エネルギーを蓄える。
【0034】
インバータ31、配電ユニット35、高圧ジャンクションボックス36、バッテリ37、充電ポート38、および電動モータ40は、高圧配線によって接続されている。バッテリ37は、高圧配線を通じてインバータ31に電力を供給する。インバータ31、配電ユニット35、高圧ジャンクションボックス36およびこれらを接続する高圧配線は、バッテリ37に電気的に接続された電気回路を構成している。
【0035】
電動モータ40の出力軸は、油圧ポンプ43の入力軸に機械的に接続されている。電動モータ40が駆動することにより、電動モータ40の駆動力が油圧ポンプ43に伝達され、油圧ポンプ43が駆動する。
【0036】
油圧ポンプ43は、駆動することにより、油圧配管を通じて作動油タンク42から作動油を汲み出す。作動油タンク42は、油圧ポンプ43に作動油を供給する役割をなす。油圧ポンプ43から吐出された作動油は、油圧配管を通じて、メインバルブ41へ供給される。油圧ポンプ43は、駆動することにより、メインバルブ41を通じて、油圧アクチュエータに作動油を供給する。メインバルブ41は、油圧ポンプ43と油圧アクチュエータとの間の油路(油圧配管)に配置されている。
【0037】
油圧アクチュエータは、図1にも示されるブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12および走行モータ5Mに加えて、旋回モータ24を含む。旋回モータ24および走行モータ5Mは、油圧駆動される油圧モータである。
【0038】
メインバルブ41は、多数の制御弁、パイロット弁などの集合体として構成されている。メインバルブ41は、油圧ポンプ43により作動油タンク42から汲み出された作動油を、油圧アクチュエータに給排する。油圧アクチュエータから排出される作動油は、油圧配管およびメインバルブ41を経由して、作動油タンク42へと戻される。
【0039】
油圧ポンプ43から送出された油の一部は、自己圧減圧弁45によって一定の圧力に減圧される。その減圧された油は、パイロット油として使用される。パイロット油は、メインバルブ41のスプールを作動するために、メインバルブ41に供給される油である。メインバルブ41は、一対の受圧室を有している。所定の圧力(パイロット圧)を有しているパイロット油が各受圧室へ供給されることにより、パイロット圧に従ってスプールが移動して、メインバルブ41が制御される。
【0040】
パイロット油の油路に、EPC(電磁比例制御)弁46が設けられている。EPC弁46は、コントローラ30からの制御信号V1に従って、メインバルブ41に供給されるパイロット油を調整する。これによりEPC弁46は、メインバルブ41を制御する。
【0041】
運転室4に搭乗したオペレータの操作に応じて、メインバルブ41における各弁の開閉が制御される。オペレータの運転操作に応じて、電動ショベル100の車体1および作業機2を動作させることができる。具体的にはオペレータは、油圧シリンダ10,11,12を動作させることにより作業機2を操作でき、旋回モータ24を動作させることにより走行体5に対する旋回体3の旋回を操作でき、走行モータ5Mを動作させることにより電動ショベル100の走行を操作できる。
【0042】
ポンプ圧力センサ47は、油圧ポンプ43とメインバルブ41との間の油圧配管内の作動油の圧力を検出する。ポンプ圧力センサ47で検出された作動油の圧力のデータは、コントローラ30に入力される。
【0043】
リリーフ弁44は、油圧ポンプ43とメインバルブ41との間の油圧配管に接続されている。ポンプ圧力センサ47で検出された、油圧ポンプ43とメインバルブ41との間の油圧配管内の作動油の圧力が、所定のリリーフ圧よりも高い場合に、コントローラ30は、リリーフ弁44に制御信号を送信する。コントローラ30からの制御信号に従って、リリーフ弁44が開いて、作動油の一部をタンクへと流す。リリーフ弁44により、油圧ポンプ43からメインバルブ41へ供給される作動油の圧力を、所定のリリーフ圧以下に維持することが可能となる。
【0044】
コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリなどを含んで構成され、メモリに格納されている制御プログラムを実行することにより、電動ショベル100の動作を制御する。
【0045】
旋回体3、典型的には旋回フレーム20に、車体IMU60が取り付けられている。車体IMU60は、前後方向、左右方向および上下方向における旋回体3の加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりの旋回体3の角速度とを計測する。車体IMU60で検出された、旋回体3の加速度および角速度は、コントローラ30に入力される。車体IMU60は、電動ショベル100の車体1の傾斜を検出する傾斜センサの一例に対応する。
【0046】
右前方カメラ51が撮像した、電動ショベル100の右前方の撮像対象の撮像画像は、コントローラ30に入力される。右後方カメラ52が撮像した、電動ショベル100の右後方の撮像対象の撮像画像は、コントローラ30に入力される。後方カメラ53が撮像した、電動ショベル100の後方の撮像対象の撮像画像は、コントローラ30に入力される。左方カメラ54が撮像した、電動ショベル100の左方の撮像対象の撮像画像は、コントローラ30に入力される。
【0047】
高圧ジャンクションボックス36は、リレー36Ryを含んで構成されている。バッテリ37は、リレー37Ryを含んで構成されている。リレー36Ry,37Ryは、電気的接続を遮断する遮断部としての機能を有している。リレー37Ryは、コントローラ30から送信される制御信号R1に従って開閉する。リレー36Ryは、コントローラ30から送信される制御信号R2に従って開閉する。
【0048】
コントローラ30は、リレー36Ry,37Ryのいずれか一方または両方を遮断状態にすることにより、バッテリ37と、バッテリ37に接続された電気回路との間の電力の伝達を遮断する。コントローラ30は、リレー36Ry,37Ryの少なくともいずれか一方を遮断状態にすることにより、バッテリ37の通電を遮断可能である。リレー36Ry,37Ryに加えて、他のリレー、スイッチ、遮断器、接触器などが、電気回路を構成する電気機器または高圧配線に設けられてもよい。
【0049】
<旋回フレーム20の構成および搭載物の配置>
図3は、図1に示される電動ショベル100における旋回フレーム20の構成およびその搭載物の配置を示す平面図である。図4は、図1に示される電動ショベル100における旋回フレーム20の構成およびその搭載物の配置を示す側面図である。
【0050】
図3に示されるように、旋回フレーム20は、センターフレームCFと、左デッキDLと、右デッキDRとを有している。センターフレームCF、左デッキDLおよび右デッキDRの各々は前後方向D1に延びている。センターフレームCFは、平面視において前後方向D1に直交する左右方向D2において左デッキDLおよび右デッキDRの間に位置している。左デッキDLは、センターフレームCFの左側に配置されている。右デッキDRは、センターフレームCFの右側に配置されている。
【0051】
センターフレームCFは、1対のセンタービームCBを有している。1対のセンタービームCBは、互いに左右方向D2に間隔を空けて対向するように配置されている。1対のセンタービームCBは、作業機2(図1)を支持している。これによりセンターフレームCFは作業機2を支持している。
【0052】
貫通孔TH1は、1対のセンタービームCBの各々に形成されている。貫通孔TH1には、ブームフートピン13(図1)が挿通されている。ブームフートピン13によりブーム6(図1)が1対のセンタービームCBに回転可能に支持されている。
【0053】
貫通孔TH2には、ブームシリンダ10(図1)を支持するピン(図示せず)が挿通されている。このピンによりブームシリンダ10がセンターフレームCFに回転可能に支持されている。
【0054】
旋回フレーム20は、前方端と後方端とを有している。旋回フレーム20の前方端は、左デッキDLの前端FL、右デッキDRの前端FRおよびセンターフレームCFの前端FCにより構成されている。旋回フレーム20の後方端は、左デッキDLの後端RL、右デッキDRの後端RRおよびセンターフレームCFの後端RCにより構成されている。
【0055】
左デッキDLの前端FLおよび右デッキDRの前端FRの各々は、センターフレームCFの前端FCよりも前後方向D1の前方に位置している。センターフレームCFの後端RCは、左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRよりも前後方向D1の後方に位置している。センターフレームCFの後端RCは、旋回フレーム20の最後端となる。
【0056】
図3,4に示されるように、旋回フレーム20には、運転室4、バッテリ37、電動モータ40、作動油タンク42、および油圧ポンプ43などの搭載物が載置されている。
【0057】
バッテリ37は、電源であり、外部電源から得た電気エネルギーを蓄える。バッテリ37は、高圧配線を通じてインバータ31(図2)に電力を供給する。実施形態の電動ショベル100は、カウンタウエイトを有しておらず、バッテリ37がカウンタウエイトの役割を果たしている。このためバッテリ37は、旋回体3の後部に配置されている。
【0058】
バッテリ37は、平面視において左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRの各々よりも後方に(旋回フレーム20の前方端から離れて)位置する部分を有している。バッテリ37の後端37Rrは、平面視において左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRの各々よりも前後方向D1の後方に位置している。
【0059】
左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRの各々よりも前方に位置する空間であって、外装カバー9に覆われた空間は、機械室を構成している。バッテリ37の前端37Frは、左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRの各々よりも前方に(旋回フレーム20の前方端の近くに)配置されている。これにより平面視において、バッテリ37は機械室内にはみ出している。
【0060】
バッテリ37の左側端37Lは、左デッキDLの真上に位置する部分を有し、左デッキDLの後端RLよりも後方に位置する部分を有している。バッテリ37の右側端37Rは、右デッキDRの真上に位置する部分を有し、右デッキDRの後端RRよりも後方に位置する部分を有している。
【0061】
電動モータ40、作動油タンク42、および油圧ポンプ43は、右デッキDRに支持されている。電動モータ40は、前後方向D1においてバッテリ37よりも前方に位置している。前後方向D1において後方から前方へ向かって、バッテリ37、電動モータ40、油圧ポンプ43、作動油タンク42の順に配置されている。配電ユニット35は、たとえば電動モータ40の上方に配置されている。充電ポート38は、作動油タンク42の前方に配置されている。充電ポート38は、前後方向D1において作動油タンク42と隣り合っている。充電ポート38は、外装カバー9の右側板9R付近に配置されている。
【0062】
蓄電装置温度管理システム39は、バッテリ37の温度を監視および制御するための温度調整装置である。蓄電装置温度管理システム39は、バッテリ37の前方に配置されており、バッテリ37の前端37Frと向き合っている。蓄電装置温度管理システム39は、センターフレームCFの上方と左デッキDLの上方とに亘って配置されている。蓄電装置温度管理システム39は、上下方向において、バッテリ37の上面よりも下方に配置されている。
【0063】
右前方カメラ51と右後方カメラ52とは、外装カバー9の右側板9R付近に配置されている。右前方カメラ51と右後方カメラ52とは、平面視において外装カバー9の右側板9Rと重畳するように配置されてもよい。右前方カメラ51と右後方カメラ52とは、バッテリ37の右前方に位置している。右前方カメラ51と右後方カメラ52とは、バッテリ37の前端37Frの前方に配置されている。右前方カメラ51と右後方カメラ52とは、バッテリ37の右側端37Rの右方に配置されている。
【0064】
後方カメラ53は、センターフレームCFの後端RC付近に配置されている。後方カメラ53は、バッテリ37の後方に位置している。後方カメラ53は、バッテリ37の後端37Rrの後方に配置されている。後方カメラ53は、平面視においてバッテリ37の後端37Rrと重畳するように配置されてもよい。後方カメラ53は、平面視においてセンターフレームCFの後端RCと重畳するように配置されてもよい。
【0065】
左方カメラ54は、外装カバー9の左側板9L付近に配置されている。左方カメラ54は、平面視において外装カバー9の左側板9Lと重畳するように配置されてもよい。左方カメラ54は、バッテリ37の左前方に位置している。左方カメラ54は、バッテリ37の前端37Frの前方に配置されている。左方カメラ54は、バッテリ37の左側端37Lの左方に配置されている。
【0066】
右前方カメラ51、右後方カメラ52、後方カメラ53、および左方カメラ54は、平面視において、バッテリ37を取り囲むように配置されている。
【0067】
車体IMU60は、センターフレームCFに搭載されている。車体IMU60は、旋回フレーム20の前方端付近に配置されている。車体IMU60は、センターフレームCFの前端FC付近に配置されている。車体IMU60は、旋回フレーム20の旋回軸RXよりも前方に配置されている。車体IMU60は、左右方向D2において、一対の貫通孔TH2の間に配置されている。
【0068】
<蓄電装置の保護制御>
以下、蓄電装置(バッテリ37)の損傷を抑制するための、蓄電装置の保護制御について説明する。蓄電装置(バッテリ37)の損傷は、バッテリ37に衝撃が外部から加わることによる、バッテリ37の変形、短絡、漏電、構成要素の外れ、電解液などの筐体内の収容物の漏出、などを含む。図5は、実施形態におけるコントローラ30の機能ブロックを説明する図である。
【0069】
図5に示されるように、コントローラ30は、傾斜角度取得部301と、傾斜フラグ演算部302と、対象物情報取得部303と、接近判定部304と、制御指令部305と、メモリ306と、タイマ307とを含んでいる。
【0070】
メモリ306には、電動ショベル100の動作を制御するためのプログラム、およびそのプログラムの実行に必要な各種データが記憶されている。メモリ306にはまた、電動ショベル100の動作に伴って発生するワーキングデータが一時的に記憶される。タイマ307は、時刻を計時する。
【0071】
図6は、実施形態における電動ショベル100による、蓄電装置の通電を遮断する処理の流れを示すフローチャートである。
【0072】
まず、ステップS1において、コントローラ30は、電動ショベル100が、作業機2、旋回体3および走行体5の少なくともいずれか1つを動作させる作業モードであるか、外部電源から電気エネルギーをバッテリ37に供給してバッテリ37を充電する充電モードであるか、または一時的に停車している休止モードなどの他の運転モードであるか、を判断する。
【0073】
バッテリ37に衝撃が外部から加わるときにバッテリ37に損傷を与えるおそれがあるのは、バッテリ37の通電中である。作業モードにおいては、バッテリ37から電動モータ40に電力が供給される。充電モードにおいては、充電ポート38に外部電源が接続されて、高圧ジャンクションボックス36を介してバッテリ37に電力が供給される。ステップS1では、バッテリ37と、バッテリ37に接続された電気回路と、のいずれか一方からいずれか他方への電力供給が行なわれているか否かが判断される。
【0074】
電動ショベル100が作業モードまたは充電モードであると判断された場合(ステップS1においてYES)、次にステップS2において、コントローラ30は、電動ショベル100の車体1が傾斜しているか否かを判断する。
【0075】
図7は、電動ショベル100の車体1の傾斜を判断する処理の流れを示すフローチャートである。車体1の傾斜を判断する処理では、傾斜フラグαが用いられる。ステップS11において、コントローラ30の傾斜フラグ演算部302は、傾斜フラグαをゼロに設定する。傾斜フラグ演算部302は、傾斜フラグαの初期値をゼロにする。次にステップS12において、コントローラ30の傾斜角度取得部301は、車体1の傾斜角度を取得する。車体1の傾斜角度は、電動ショベル100(旋回フレーム20)に搭載された車体IMU60によって検出される。傾斜角度取得部301は、車体IMU60の検出結果から、車体1の傾斜角度を求める。
【0076】
図8は、車体1が傾斜していない状態の電動ショベル100を前方から見た模式図である。図8には、水平面Hに位置する電動ショベル100が示されている。図8に示される電動ショベル100の車体1の傾斜角度はゼロである。車体IMU60は、車体1の傾斜角度がゼロであることを検出し、コントローラ30の傾斜角度取得部301に、傾斜角度=0との検出結果を示す信号を出力する。
【0077】
図9は、車体1の傾斜が小さい状態の電動ショベル100を前方から見た模式図である。図9には、水平面Hに対して傾斜した傾斜面SL1に位置する電動ショベル100が示されている。水平面Hと傾斜面SL1とのなす角度が、傾斜角度θ1である。図9に示される電動ショベル100の傾斜角度は、傾斜角度θ1である。車体IMU60は、車体1の傾斜角度が傾斜角度θ1であることを検出し、コントローラ30の傾斜角度取得部301に、傾斜角度=θ1との検出結果を示す信号を出力する。
【0078】
図10は、車体1の傾斜が大きい状態の電動ショベル100を前方から見た模式図である。図10には、水平面Hに対して傾斜した傾斜面SL2に位置する電動ショベル100が示されている。水平面Hと傾斜面SL2とのなす角度が、傾斜角度θ2である。図10に示される電動ショベル100の傾斜角度は、傾斜角度θ2である。車体IMU60は、車体1の傾斜角度が傾斜角度θ2であることを検出し、コントローラ30の傾斜角度取得部301に、傾斜角度=θ2との検出結果を示す信号を出力する。
【0079】
図7に戻って、ステップS13において、コントローラ30の傾斜角度取得部301は、車体1の傾斜角度と、角度閾値TAとを比較する。角度閾値TAは、メモリ306に記憶されている。傾斜角度取得部301は、メモリ306から角度閾値TAを読み出す。傾斜角度取得部301は、ステップS12で取得された車体1の傾斜角度が角度閾値TAよりも大きいか否かを判断する。
【0080】
たとえば、図9に示される車体1は、水平面Hに対して傾斜しているが傾斜面SL1上で安定した姿勢をとっていると判断して、傾斜角度θ1は角度閾値TAよりも小さいと判断されてもよい。一方、図10に示される車体1は、傾斜角度θ2が増大した結果、不安定となっており、車体1が傾斜面SL2から滑落したり転倒したりする可能性がある。したがって傾斜角度θ2は角度閾値TAよりも大きいと判断されてもよい。角度閾値TAとして、電動ショベル100が通常の作業を実行していれば車体1が取り得ない傾斜の角度が、設定されてもよい。
【0081】
車体1の傾斜角度が角度閾値TAよりも大きいと判断されると、ステップS14に進み、コントローラ30の傾斜フラグ演算部302は、傾斜フラグαに1を加える処理(インクリメント)をする。
【0082】
続いてステップS15において、傾斜フラグ演算部302は、現在の傾斜フラグαの値と、傾斜フラグの閾値Tαとを比較する。傾斜フラグの閾値Tαは、メモリ306に記憶されている。傾斜フラグ演算部302は、メモリ306から閾値Tαを読み出す。傾斜フラグ演算部302は、先のステップS14においてインクリメントされた後の現在の傾斜フラグαの値が、閾値Tαよりも大きいか否かを判断する。
【0083】
傾斜フラグαが閾値Tα以下である(ステップS15においてNO)と判断されれば、処理はステップS12に戻り、車体1の傾斜角度の取得と、車体1の傾斜角度と角度閾値TAとの比較が繰り返される。車体1の傾斜角度が角度閾値TAよりも大きいと再度判断されると、傾斜フラグαに1を加える処理が再度行なわれて、傾斜フラグαの値が増加する。車体1の傾斜の角度が角度閾値TAよりも大きいとの判断が複数回連続してなされることで、判断された回数だけ傾斜フラグαの値が増加する。
【0084】
傾斜フラグαの値が増加して閾値Tαよりも大きくなったと判断されると(ステップS15においてYES)、処理はステップS16に進む。ステップS16において、コントローラ30は、車体1が傾斜しており、車体1が滑落したり転倒したりする可能性があり、その結果バッテリ37に外力が作用してバッテリ37に損傷を与えるおそれがある状況である、と判断する。
【0085】
ステップS13の判断において、車体1の傾斜角度が角度閾値TA以下であると判断されると、処理はステップS17に進む。ステップS17において、コントローラ30は、車体1の傾斜は小さく、車体1の滑落または転倒によってバッテリ37に損傷を与えるおそれはない状況であると判断する。
【0086】
ステップS13の判断で、車体1の傾斜角度が角度閾値TAよりも大きいと判断されても、ステップS15の判断によって処理が繰り返されることになり、再度のステップS13の判断で車体1の傾斜角度が角度閾値TA以下と判断されると、ステップS17で車体1の傾斜なしと判断される。車体1の傾斜の角度が角度閾値TAよりも大きい、と複数回である所定回数連続して判断されなければ、車体1の傾斜なしと判断される。このようにして、車体1の傾斜を判断する処理を終了する(図7の「エンド」)。
【0087】
図6に戻って、ステップS2の判断において車体1が傾斜していないと判断された場合(ステップS2においてNO)、ステップS3に進み、コントローラ30は、接近物への対応が必要か否かを判断する。
【0088】
図11は、接近物の対応の要否を判断する処理の流れを示すフローチャートである。ステップS21において、コントローラ30の対象物情報取得部303は、対象物が検出されたか否かを判断する。対象物は、電動ショベル100の車体1の周囲に存在する物体である。対象物のうち、当該物体が電動ショベル100へ向かって移動することによって電動ショベル100が当該物体に衝突する可能性のある物体を、接近物と称する。接近物は、車体1に搭載された撮像装置(右前方カメラ51、右後方カメラ52、後方カメラ53および左方カメラ54。図1~3参照)が接近物を撮像することによって、検出される。
【0089】
撮像装置は、バッテリ37への接近物を検出する接近物検出センサとしての機能を有している。バッテリ37に損傷を与えるおそれがある状況を検出する検出部は、傾斜センサである車体IMU60と、接近物検出センサである撮像装置とを含んで構成されている。車体IMU60が検出する車体1の傾斜の角度と、撮像装置が撮像する車体1の周辺の撮像画像とは、バッテリ37の損傷の可能性を判断するための、検出部の検出結果の一例に対応する。
【0090】
右前方カメラ51、右後方カメラ52、後方カメラ53、および左方カメラ54により撮像された撮像画像が、コントローラ30の対象物情報取得部303に入力される。対象物情報取得部303は、撮像画像を解析することにより、電動ショベル100の車体1の周囲に対象物が存在するか否かを判断する。対象物は、たとえば車体1の周囲を飛来する飛来物である。対象物は、たとえば他の自走式の作業機械である。他の作業機械は、ダンプトラックなどの、電動ショベル100の作業機2によって掘削される掘削対象を運搬する運搬機械であってもよい。
【0091】
図12は、電動ショベル100の周辺の対象物の例を示す模式図である。図12には、電動ショベル100の周囲を飛来する飛来物200A,200Bと、電動ショベル100の周囲を走行する運搬機械300A,300Bとが、例示的に示されている。図12中に示される矢印は、飛来物200A,200Bおよび運搬機械300A,300Bの移動方向を示す。飛来物200A,200Bおよび運搬機械300A,300Bは、撮像装置によって撮像され、対象物情報取得部303に入力される。対象物情報取得部303は、撮像装置の撮像画像から、車体1の周辺には飛来物200A,200Bおよび運搬機械300A,300Bが存在し、したがって対象物が検出されている、と判断する。
【0092】
対象物が検出されたと判断されると(ステップS21においてYES)、ステップS22において、対象物情報取得部303は、対象物の大きさが寸法閾値TSよりも大きいか否かを判断する。寸法閾値TSは、メモリ306に記憶されている。対象物情報取得部303は、メモリ306から寸法閾値TSを読み出す。対象物情報取得部303は、刷創造値の撮像画像を解析することにより、対象物の寸法を算出する。対象物情報取得部303は、算出した対象物の寸法と、寸法閾値TSとを比較する。
【0093】
図12に示される飛来物200Aのように、寸法の小さい対象物は、たとえ電動ショベル100の車体1に衝突したとしても、バッテリ37に損傷を与えるおそれは低い。一方、飛来物200Bおよび運搬機械300A,300Bのように、寸法の大きい対象物が電動ショベル100の車体1に衝突すると、バッテリ37に損傷を与えるおそれがある。寸法閾値TSとして、車体1に衝突すると車体1に損傷を与えるほどの飛来物の大きさが、設定されてもよい。
【0094】
対象物の大きさが寸法閾値TSよりも大きい(ステップS22においてYES)と判断されれば、ステップS23において、コントローラ30の接近判定部304は、対象物の移動方向を計算する。接近判定部304は、タイマ307から時刻を読み出し、対象物情報取得部303に入力された撮像画像に時刻を関連付けて、いつの時刻に撮像された撮像画像であるかを明らかにする。接近判定部304は、ある時刻に撮像された撮像画像内の対象物と、所定時間後の時刻に撮像された撮像画像内の同じ対象物とを比較することで、その対象物が車体1に接近しているか否かを判断することができる。
【0095】
図12に示される運搬機械300Aのように、電動ショベル100から遠ざかる方向に移動している対象物は、電動ショベル100の車体1に衝突する可能性が低い。一方、飛来物200Bおよび運搬機械300Bのように、電動ショベル100に接近する方向に移動している対象物は、電動ショベル100の車体1に衝突する可能性があると考えられる。
【0096】
対象物が接近している(ステップS24においてYES)と判断されれば、ステップS25において、接近判定部304は、対象物情報取得部303に入力された撮像画像を解析することにより、車体1と対象物との距離を求める。ステップS26において、接近判定部304は、車体1と対象物との距離が距離閾値TDよりも小さいか否かを判断する。距離閾値TDは、メモリ306に保存されている。接近判定部304は、距離閾値TDをメモリ306から読み出す。接近判定部304は、車体1と対象物との距離と、距離閾値TDとを比較する。
【0097】
図12に示される運搬機械300Bのように、電動ショベル100と対象物との距離が比較的大きければ、対象物が車体1に衝突するまで時間がかかる。一方、飛来物200Bのように、電動ショベル100と対象物との距離が小さく、対象物が車体1の間近にまで接近していると、すぐに対象物が車体1に衝突すると考えられる。
【0098】
ステップS26の判断において、車体1と対象物との距離が距離閾値TDよりも小さいと判断されると、処理はステップS27に進む。ステップS27において、コントローラ30は、寸法閾値TSよりも大きく距離閾値TDよりも近くにまで接近している接近物が存在しており、接近物が車体1に衝突する可能性があり、その結果バッテリ37に外力が作用してバッテリ37に損傷を与えるおそれがある状況である、と判断する。
【0099】
ステップS21の判断において、対象物が検出されないと判断されると(ステップS21においてNO)、処理はステップS28に進む。ステップS22の判断において、対象物の大きさが寸法閾値TS以下であると判断されると、処理はステップS28に進む。ステップS24の判断において、対象物が接近していないと判断されると、処理はステップS28に進む。ステップS28において、コントローラ30は、接近物が存在せず接近物が車体1に衝突しないのでバッテリ37に損傷を与えるおそれはない状況、または、接近物の大きさが小さいので車体1に衝突したとしてもバッテリ37に損傷を与えるおそれはない状況である、と判断する。
【0100】
車体1と対象物との距離が距離閾値TD以上である(ステップS26においてNO)と判断されれば、処理はステップS23に戻り、対象物の移動方向の計算が繰り返される。ステップS24の判断において、対象物が接近していると判断されても、ステップS26の判断によって処理が繰り返されることになり、再度のステップS24の判断で対象物が接近していないと判断されると、ステップS28で接近物への対応は不要と判断される。たとえば、図12に示される運搬機械300Bは電動ショベル100に向かって走行しており電動ショベル100に接近しているが、運搬機械300Bが進行方向を変えることで、運搬機械300Bが電動ショベル100に接近しなくなることがある。
【0101】
このようにして、接近物への対応の要否を判断する処理を終了する(図11の「エンド」)。
【0102】
図6に戻って、ステップS2の判断において車体1が傾斜していると判断された場合(ステップS2においてYES)、車体1の滑落または転倒によってバッテリ37に損傷を与えるおそれがある状況であると判断されて、処理はステップS4に進む。また、ステップS3の判断において接近物への対応が必要であると判断された場合(ステップS3においてYES)、接近物の衝突によってバッテリ37に損傷を与えるおそれがある状況であると判断されて、処理はステップS4に進む。ステップS4において、コントローラ30の制御指令部305は、バッテリ37の通電を遮断する。
【0103】
具体的に、制御指令部305は、バッテリ37に含まれるリレー37Ryに制御信号R1を送信し、高圧ジャンクションボックス36に含まれるリレー36Ryに制御信号R2を送信する。制御信号R1を受信したリレー37Ryが、バッテリ37と高圧配線との電気的接続を遮断する。制御信号R2を受信したリレー36Ryが、高圧ジャンクションボックス36内の電気回路の電気的接続を遮断する。これにより、バッテリ37と、バッテリ37に電気的に接続された電気回路との間の、電力の伝達が遮断される。電動モータ40を駆動するためのバッテリ37から電気回路への電力の供給が遮断される。バッテリ37を充電するための電気回路からバッテリ37への電力の供給が遮断される。
【0104】
バッテリ37の通電が遮断され、バッテリ37が非通電状態となることで、バッテリ37に外部から衝撃が加わったとしても、バッテリ37が損傷することが回避される。
【0105】
電動ショベル100が作業モードまたは充電モードでなければ(ステップS1においてNO)、バッテリ37の通電が行なわれていないので通電を遮断する処理を行わなくてもよい。車体1が傾斜しておらず(ステップS2においてNO)、かつ接近物への対応が不要であれば(ステップS3においてNO)、バッテリ37に外部から衝撃が加わってバッテリ37に損傷を与えるおそれは低いので、通電を遮断する処理を行わなくてもよい。したがってそのまま処理を終了する。このようにして、蓄電装置の保護制御が実行される(図6の「エンド」)。
【0106】
図6の説明では、ステップS2において電動ショベル100の車体1が傾斜しているか否かを判断した後に、ステップS3において接近物への対応が必要か否かを判断した。これらの判断の順序が入れ替えられてもよい。すなわち、ステップS1の判断において電動ショベル100が作業モードまたは充電モードであると判断された場合に、続いて接近物への対応が必要か否かを判断し、接近物への対応が不要であると判断された場合に、電動ショベル100の車体1が傾斜しているか否かを判断してもよい。
【0107】
上記の実施形態では、バッテリ37への接近物を検出する接近物検出センサの一例として、接近物を撮像する撮像装置が複数の、具体的に4つのカメラを含む例について説明した。撮像装置は、少なくとも1つのカメラを含んでいればよく、必ずしも複数のカメラを備えなくてもよい。
【0108】
バッテリ37への接近物を検出する接近物検出センサは、撮像装置に限られない。接近物検出センサは、電動ショベル100の外部の対象物の大きさ、対象物の移動方向、および対象物までの距離を、非接触で検出できればよい。たとえば、レーザ光を射出して対象物の情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)、電波を射出することにより対象物の情報を取得するRadar(Radio Detection and Ranging)、超音波センサ、赤外線センサなどを、接近物検出センサとして適用してもよい。
【0109】
車体1の傾斜を検出する傾斜センサは、車体IMU60に限られず、任意の傾斜計であってもよい。傾斜センサは複数設けられてもよい。複数個の同種類の傾斜センサが設けられてもよい。複数種類の傾斜センサが設けられてもよい。
【0110】
上記の実施形態で説明した、蓄電装置の保護制御を実行するコントローラは、必ずしも電動ショベル100に搭載されていなくてもよい。電動ショベル100に搭載されたコントローラが、傾斜センサによる車体1の傾斜の角度の検出結果および接近物検出センサによるバッテリ37への接近物の検出結果を外部のコントローラへ送信する処理を行い、信号を受信した外部のコントローラが、バッテリ37の通電の遮断が必要が否かを判断してもよい。外部のコントローラがバッテリ37の通電を遮断する制御信号を生成し、その制御信号を電動ショベル100に搭載されたコントローラに送信するシステムを構成してもよい。外部のコントローラは、電動ショベル100の作業現場に配置されてもよく、電動ショベル100の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。
【0111】
上記の実施形態では、バッテリ37からの電力で電動モータ40を回転駆動し、電動モータ40で油圧ポンプ43を駆動し、油圧ポンプ43の発生する圧油で油圧アクチュエータを駆動して、作業機2を動作させる例について説明した。この例に限られず、電動モータ40が電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、その機械エネルギーが動力伝達装置を介して機械的に作業機2に伝達されて、作業機2が駆動されてもよい。旋回モータ24は、油圧モータに替えて電動モータであってもよい。走行モータ5Mもまた、電動モータであってもよい。
【0112】
上記の実施形態では、作業機械の一例として電動ショベル100を挙げているが、電動ショベル100に限らず、バッテリ37(蓄電装置)を備える他の種類の作業機械にも適用可能である。たとえば作業機械は、電動ホイールローダ、電動ブルドーザ、電動ダンプトラックなどの、他の種類の電動作業機械であってもよい。作業機械は、エンジンと電動モータとの両方を備えるハイブリッド機械であってもよい。
【0113】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0114】
コントローラ30は、図7,11に示されるように、バッテリ37に損傷を与えるおそれがある状況を検出するための検出部の検出結果に基づいて、バッテリ37の損傷の可能性を判断する。図6に示されるように、コントローラ30は、バッテリ37に損傷を与えるおそれがあるときに、バッテリ37の通電を遮断する。
【0115】
バッテリ37に外部から衝撃が加わりバッテリ37が損傷する兆候を検出部の検出結果に基づいて検知し、事前にバッテリ37の通電を遮断することで、実際にバッテリ37に外部から衝撃が加わるときにはバッテリ37は非通電状態とされている。バッテリ37への外力の作用によって正極と負極との間のセパレータが損傷しても、正極と負極が短絡して大電流が発生したり、漏電が発生したりする事態を、回避することができる。
【0116】
図2に示されるように、バッテリ37に、電気回路が電気的に接続されている。図6に示されるように、コントローラ30は、バッテリ37が損傷する可能性があるときに、バッテリ37と電気回路との間の電力の伝達を遮断する。バッテリ37と電気回路との一方から他方への電力供給を遮断することで、バッテリ37の通電を確実に遮断することができる。
【0117】
図2に示されるように、高圧ジャンクションボックス36はリレー36Ryを有しており、バッテリ37はリレー37Ryを有している。コントローラ30は、バッテリ37が損傷する可能性があるときに、リレー37Ry,36Ryにそれぞれ制御信号R1,R2を送信してリレー36Ry,37Ryを動作させ、バッテリ37と電気回路との間の電力の伝達を確実に遮断することができる。
【0118】
図1に示されるように、電動ショベル100は車体1を備えている。図3,4に示されるように、バッテリ37は、旋回体3の旋回フレーム20に搭載されている。図2,3に示されるように、バッテリ37に損傷を与えるおそれがある状況を検出する検出部は、車体1の傾斜を検出する車体IMU60を含んでいる。図7および図8~10に示されるように、車体1の傾斜の角度が大きいと、車体1の滑落または転倒などが発生して、バッテリ37が損傷する可能性がある。車体IMU60で車体1の傾斜を検出することにより、バッテリ37が損傷する可能性を精度よく判断することができる。
【0119】
図7に示されるように、コントローラ30は、車体1の傾斜の角度と角度閾値TAとを比較する。図8に示されるように車体1が傾斜していなければ、車体1の滑落または転倒が発生する可能性は小さい。図9に示されるように、車体1が傾斜していてもその傾斜の角度が小さければ、傾斜面SL1上で車体1は安定し、車体1の滑落または転倒が発生する可能性は小さい。一方、図10に示されるように、車体1が傾斜する角度が大きくなることで、車体1の滑落または転倒が発生する可能性が大きくなる。車体1の傾斜の角度に係る角度閾値TAを適切に設定することで、車体1の実際の傾斜の角度が角度閾値TAよりも大きいか否かを判断して、バッテリ37が損傷する可能性を精度よく判断することができる。
【0120】
図7に示されるように、コントローラ30は、車体1の傾斜の角度が角度閾値TAよりも大きいとの判断が複数回連続してなされた場合に、バッテリ37に損傷を与えるおそれがあると判断する。傾斜センサ(車体IMU60)の1回の検出だけで車体1の傾斜を判断せず、複数回の判断の結果に基づいて車体1の傾斜を判断している。これにより、傾斜センサのエラーおよびノイズを除去できる。バッテリ37が損傷する可能性を精度よく判断することができ、バッテリ37の通電の遮断が真に必要なときに限って通電を遮断するように制御することができる。
【0121】
図1,2に示されるように、電動ショベル100は、撮像装置を備えている。撮像装置は、バッテリ37への接近物を検出する接近物検出センサの機能を備えている。図11に示されるように、接近物検出センサでバッテリ37への接近物を検出し、接近物が車体1に衝突してバッテリ37が損傷する可能性を精度よく判断することができる。
【0122】
図11に示されるように、コントローラ30は、接近物検出センサの検出結果より、接近物の大きさを求める。接近物の大きさが小さければ、接近物が車体1に衝突したとしても、バッテリ37が損傷する可能性は小さい。したがって、接近物の大きさを求めることで、バッテリ37が損傷する可能性をより精度よく判断することができる。
【0123】
図11に示されるように、コントローラ30は、接近物検出センサの検出結果より、電動ショベル100と接近物との距離を求める。車体1に接近している接近物が存在しても、車体1と接近物との距離が大きく接近物が車体1から離れている状況では、直ちに接近物が車体1に衝突することはないので、バッテリ37の通電を直ちに遮断しなくてもよい。したがって、バッテリ37が損傷する可能性をより精度よく判断することができ、バッテリ37の通電の遮断が真に必要なときに限って通電を遮断するように制御することができる。
【0124】
図11に示されるように、コントローラ30は、接近物の大きさが寸法閾値TSよりも大きく、かつ、車体1と接近物との距離が距離閾値TDよりも小さいと判断された場合に、バッテリ37に損傷を与えるおそれがあると判断する。車体1に衝突するとバッテリ37を損傷させる可能性がある程度に大きい接近物が、車体1の間近にまで接近しているとの判断によって、バッテリ37が損傷する可能性があると判断して、バッテリ37の通電を遮断する。したがって、バッテリ37が損傷する可能性をより精度よく判断することができ、バッテリ37の通電の遮断が真に必要なときに限って通電を遮断するように制御することができる。
【0125】
図1~3に示されるように、接近物検出センサは、接近物を撮像する少なくとも1つの撮像装置を含む。撮像装置が撮像した撮像画像は、コントローラ30に出力される。コントローラ30は、撮像画像を解析することにより、接近物が存在するか否かを判断することができる。
【0126】
図1~3に示されるように、複数の撮像装置を構成する右前方カメラ51、右後方カメラ52、後方カメラ53および左方カメラ54が、平面視においてバッテリ37を取り囲むように配置されている。右前方カメラ51は車体1の右前方を撮像し、右後方カメラ52は車体1の右後方を撮像し、後方カメラ53は車体1の後方を撮像し、左方カメラ54は車体1の左方を撮像する。これらの複数のカメラの撮像画像によって接近物の有無を判断できる。あらゆる方向から車体1に接近する接近物を、バッテリ37を取り囲むように配置された複数のカメラで、確実に検出することができる。
【0127】
<付記>
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0128】
(付記1)
蓄電装置と、
前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがある状況を検出する検出部と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記検出部の検出結果に基づいて前記蓄電装置の損傷の可能性を判断し、前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがあるときに、前記蓄電装置の通電を遮断する、作業機械。
【0129】
(付記2)
前記蓄電装置に電気的に接続された電気回路をさらに備え、
前記コントローラは、前記蓄電装置と前記電気回路との間の電力の伝達を遮断する、付記1に記載の作業機械。
【0130】
(付記3)
前記蓄電装置と前記電気回路との少なくともいずれか一方は、電気的接続を遮断する遮断部を含む、付記2に記載の作業機械。
【0131】
(付記4)
前記蓄電装置を搭載する車体を備え、
前記検出部は、前記車体の傾斜を検出する傾斜センサを含む、付記1から付記3のいずれか1つに記載の作業機械。
【0132】
(付記5)
前記コントローラは、前記傾斜センサにより求められる前記車体の傾斜の角度と、角度閾値とを比較する、付記4に記載の作業機械。
【0133】
(付記6)
前記コントローラは、前記車体の傾斜の角度が前記角度閾値よりも大きいとの判断が複数回連続してなされた場合に、前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがあると判断する、付記5に記載の作業機械。
【0134】
(付記7)
前記検出部は、前記蓄電装置への接近物を検出する接近物検出センサを含む、付記1から付記6のいずれか1つに記載の作業機械。
【0135】
(付記8)
前記コントローラは、前記接近物検出センサの検出結果より、前記接近物の大きさを求める、付記7に記載の作業機械。
【0136】
(付記9)
前記コントローラは、前記接近物検出センサの検出結果より、前記作業機械と前記接近物との距離を求める、付記7または付記8に記載の作業機械。
【0137】
(付記10)
前記コントローラは、前記接近物の大きさが寸法閾値よりも大きく、かつ、前記作業機械と前記接近物との距離が距離閾値よりも小さいと判断された場合に、前記蓄電装置に損傷を与えるおそれがあると判断する、付記9に記載の作業機械。
【0138】
(付記11)
前記接近物検出センサは、前記接近物を撮像する少なくとも1つの撮像装置を含む、付記7から付記10のいずれか1つに記載の作業機械。
【0139】
(付記12)
前記少なくとも1つの撮像装置は、複数の撮像装置を含み、
前記複数の撮像装置は、平面視において前記蓄電装置を取り囲むように配置される、付記11に記載の作業機械。
【0140】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0141】
1 車体、2 作業機、3 旋回体、5 走行体、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、9 外装カバー、10 ブームシリンダ、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、20 旋回フレーム、30 コントローラ、31 インバータ、35 配電ユニット、36 高圧ジャンクションボックス、36Ry,37Ry リレー、37 バッテリ、38 充電ポート、39 蓄電装置温度管理システム、40 電動モータ、41 メインバルブ、42 作動油タンク、43 油圧ポンプ、51 右前方カメラ、52 右後方カメラ、53 後方カメラ、54 左方カメラ、60 車体IMU、100 電動ショベル、200A,200B 飛来物、300A,300B 運搬機械、301 傾斜角度取得部、302 傾斜フラグ演算部、303 対象物情報取得部、304 接近判定部、305 制御指令部、306 メモリ、307 タイマ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12