(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097224
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 21/032 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
B65D21/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000633
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 実智昭
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】浅山 幹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 香奈
【テーマコード(参考)】
3E006
【Fターム(参考)】
3E006AA03
3E006BA01
3E006CA01
3E006DA01
3E006DB03
(57)【要約】
【課題】段積みされた上段側の容器を、下段側の容器の隣りの容器の上に移動する作業を容易に行うことが可能な容器を提供する。
【解決手段】本開示の容器10は、上面開口W1を有する箱形をなし、下面の外縁部より内側部分から突出する下面突部12を備える。また、容器10の下面の外縁部には、段積状態で下面突部12との間に第1側壁40を受容する移動規制突部19が、第1水平方向H1の一方側のみに設けられている。さらに、容器10の下面の外縁部には、第1水平方向H1の他方側に、下面突部12との間に1対の第2側壁30を受容する1対のスライドガイド突部70が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口を有する箱形をなして、第1水平方向で対向する1対の第1側壁と、第2水平方向で対向する1対の第2側壁と、下面の外縁部より内側部分から突出する下面突部とを備える容器であって、段積状態で上段側の容器の前記下面突部が、下段側の容器の前記上面開口の内側に嵌合する容器において、
前記下面の外縁部における前記第1水平方向の一方側のみに設けられて、前記段積状態で前記下面突部との間に前記第1側壁を受容する移動規制突部と、
前記下面の外縁部における前記第1水平方向の他方側に設けられて、前記段積状態で前記下面突部との間に前記1対の第2側壁を受容する1対のスライドガイド突部と、を有し、
前記段積状態で、上段側の容器は、前記第1水平方向の一方側を持ち上げられた場合は、下段側の容器上でスライド可能になる一方、他方側が持ち上げられた場合は、前記移動規制突部と前記第1側壁との当接により前記スライドが規制される容器。
【請求項2】
前記1対のスライドガイド突部は、前記下面の外縁部における前記第1水平方向の他方側のみに設けられている請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記第1水平方向の一方側の前記第1側壁の外面は、前記容器の前面をなし、その第1側壁には、横方向の両端部を除く範囲を下端寄り位置まで除去してなる前面開口が形成されている請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記1対の第1側壁及び前記1対の第2側壁は、それぞれ底壁の外縁部に一体形成されて起立する土手部と、前記土手部にヒンジ連結されて、前記土手部上で起立すると共に内側に折り畳み可能な側壁本体部とに分割され、
前記前面開口は、前記第1側壁の前記側壁本体部の上端から下端寄り位置に亘って形成されている請求項3に記載の容器。
【請求項5】
各前記第2側壁には、上端から外側に張り出しかつ前記第1水平方向に延びる第1横リブと、上端寄り位置から前記第1横リブより大きく外側に張り出しかつ前記第1水平方向に延びる第2横リブと、上端と上端寄り位置との間で外側に張り出しかつ前記第1水平方向の複数箇所で前記第1横リブと前記第2横リブとの間を連絡する複数の連絡リブと、が備えられ、
前記複数の連絡リブの先端のうち上下方向の途中位置より上側は、上下方向と平行な垂直部をなす一方、前記途中位置より下側は、下方に向かうに従って外側に向かうように傾斜する傾斜部をなし、
前記段積状態で、上段側の容器の前記スライドガイド突部は、下段側の容器における前記複数の連絡リブの前記傾斜部より上方に位置する請求項1又は2に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷物を収容する箱形の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の容器として、段積されると下段側の容器の上部が、上段側の容器の下面に備えた枠形の環状溝に嵌合して横ずれが防がれるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭49-144627号(
図5,6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、段積みされた上段側の容器を、下段側の容器上からその隣りの別の容器上に移動する作業を求められることがある。しかしながら、上記した従来の容器では、上段側の容器の下面の環状溝から下段側の容器の上部が完全に抜け出る位置まで、上段側の容器を真上に持ち上げてから隣りの容器の上方に移動する必要があり、作業者の負担が大きいことが問題になる。そこで、本願では、そのような作業を容易に行うことが可能な容器を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本開示の容器は、上面開口を有する箱形をなして、第1水平方向で対向する1対の第1側壁と、第2水平方向で対向する1対の第2側壁と、下面の外縁部より内側部分から突出する下面突部とを備える容器であって、段積状態で上段側の容器の前記下面突部が、下段側の容器の前記上面開口の内側に嵌合する容器において、前記下面の外縁部における前記第1水平方向の一方側のみに設けられて、前記段積状態で前記下面突部との間に前記第1側壁を受容する移動規制突部と、前記下面の外縁部における前記第1水平方向の他方側に設けられて、前記段積状態で前記下面突部との間に前記1対の第2側壁を受容する1対のスライドガイド突部と、を有し、前記段積状態で、上段側の容器は、前記第1水平方向の一方側を持ち上げられた場合は、下段側の容器上でスライド可能になる一方、他方側が持ち上げられた場合は、前記移動規制突部と前記第1側壁との当接により前記スライドが規制される容器である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の容器は、下面の外縁部より内側部分から突出する下面突部を備える。そして、段積みされると下段側の容器の上面開口の内側に、上段側の容器の下面突部が嵌合して横ずれが防がれる。ここで、容器の下面の外縁部には、段積状態で下面突部との間に第1側壁を受容する移動規制突部が、第1水平方向の一方側のみに設けられている。これにより、上段側の容器を、第1水平方向の一方側を持ち上げた傾斜姿勢にすれば、下段側の容器上で第1水平方向の一方側にスライドさせることができる。しかも、容器の下面の外縁部には、第1水平方向の他方側に、下面突部との間に下段側の容器の1対の第2側壁を受容する1対のスライドガイド突部が設けられている。これにより、上段側の容器が傾斜姿勢にされたときに、下段側の容器の1対の第2側壁が外側に変形して上段側の容器が下段側の容器の内部に落ち込むような事態が防がれる。これらにより、本開示によれば、段積みされた上段側の容器を、下段側の容器の隣りの容器の上に移動する作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】(A)移動規制突部の斜視図,(B)スライドガイド突部の斜視図
【
図10】上段の容器の前部が持ち上げられた状態の斜視図
【
図11】傾斜姿勢でスライドされている容器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図11を参照して、本開示の一実施形態の容器10について説明する。
図1に示すように、本実施形態の容器10は、平面形状が長方形の底壁11と、その底壁11の1対の長辺側の外縁部から起立して第1水平方向H1で対向する1対の第1側壁40と、底壁11の1対の短辺側の外縁部から起立して第2水平方向H2で対向する1対の第2側壁30とを有する。また、第1水平方向H1は、容器10の前後方向でもあり、前後方向の前側に位置する一方の第1側壁40には、前面開口W2が形成されている。さらには、容器10は、
図2に示すように折畳可能になっている。先ずは、一方と他方の第1側壁40を区別しないで、容器10全体の構造について説明する。
【0009】
容器10を折畳可能とするために、
図3に示すように、1対の第1側壁40は、底壁11から起立する1対の第1土手部41と、それらにヒンジ連結される1対の第1側壁本体42とに分割され、1対の第2側壁30は、底壁11から起立する1対の第2土手部31と、それらにヒンジ連結される1対の第2側壁本体32とに分割されている。また、1対の第1土手部41は、1対の第2土手部31より高くなっている。そして、1対の第2側壁本体32を底壁11上に重ねるように折り畳んでから、それらの上に1対の第1側壁本体42を重ねるように折り畳んで容器10が折畳状態(
図2参照)になり、それとは逆の順番で1対の第1側壁本体42と1対の第2側壁本体32とを起こせば組立状態(
図1参照)に戻る。以下、特記しない限り、容器10が組立状態であることを前提に説明する。
【0010】
図1に示すように、各第2側壁本体32は、第1水平方向H1で1対の第1側壁本体42の側縁部の間に挟まれる。また、
図3に示すように、各第1側壁本体42には、両側縁部から第2側壁本体32側に張り出すサイド突壁43が備えられ、それらサイド突壁43が各第2側壁本体32の側縁部の外面に重なる。さらに、各サイド突壁43には、複数の貫通孔43Aが上下方向に並べて備えられ、それら貫通孔43Aに凹凸係合する複数の突部32Tが第2側壁本体32の各側縁部の外面に形成されている。
【0011】
図4に示すように、各第2側壁本体32の上部には、ロック機構34が備えられている。ロック機構34は、横方向の中央に配置される操作部35と、操作部35から両側方に延びる1対のロックバー36と、図示しない弾性変形部とを有する。操作部35は上下方向に回動し、それに連動して1対のロックバー36が互いに接近及び離間する。また、弾性部材の弾発力により、通常は、操作部35が回動範囲の上端側のロック位置に配置されると共に、1対のロックバー36が互いに離れたロック位置に配置されている。そして、ロック位置のロックバー36の先端部が、第1側壁本体42の内側面に設けられたロック係合部44(
図3参照)に係合することで、第2側壁本体32が、内側へ倒れないようにロックされている。また、操作部35が回動範囲の下端側のアンロック位置に回動操作されると上述のロックは解除される。
【0012】
図5に示すように、容器10の下面には、外縁部より内側部分を段付き状に下方に突出させて下面突部12が形成されている。そして、
図7に示すように、容器10が段積みされたときに、
図8に示すように、上段側の容器10の下面突部12が下段側の容器10の上面開口W1に嵌合されて上下の容器10の横ずれが防がれる。
【0013】
また、
図2に示すように、容器10が折畳状態で段積みされたときには、下段側の容器10の1対の第1土手部41の間に上段側の容器10の下面突部12が嵌合されて上下の容器10の横ずれが防がれる。
【0014】
以下、容器10の各部位の詳細構造について説明する。また、以下の説明において、1対の第1側壁40を区別する場合には、前面開口W2を有する第1側壁40及びそれに含まれる第1側壁本体42等の各部位を、前側の第1側壁40、前側の第1側壁本体42等といい、その反対側を、後側の第1側壁40、後側の第1側壁本体42等ということとする。
【0015】
図5に示すように、第1側壁40の第1土手部41は、下方に開放した内部空間41Vを有し、内部空間41Vより外側の外壁41Aと内側の内壁41Bの上端間を
図2に示した上壁41Cで接続した構造をなしている。
【0016】
図2に示すように、前側の第1土手部41には、外壁41Aの一部である横長の帯状領域を段付き状に陥没させて情報表示部60が形成されている。情報表示部60には、複数対の突片63及び1対のコーナー突片63Aと、タグ寄せ用突条64とが備えられている。突片63は、情報表示部60の横方向の途中部分における複数位置に配置されて、情報表示部60の上下の段差面の前縁部から互いに接近するように突出している。また、コーナー突片63Aは、情報表示部60の横方向の一端部における1対のコーナー部で情報表示部60の上下の段差面の前縁部と横方向の一端の段差面の前縁部との間を連絡するように形成され、前方から見た形状が三角形になっている。さらには、タグ寄せ用突条64は、情報表示部60のうち横方向の他端側の段差面から僅かに離れた位置における上下方向の中央に配置されて、上下方向に延びている。そして、
図1に示すように、タグ91Bが、情報表示部60の奥面と突片63及びコーナー突片63Aの間の隙間にタグ91Bの縁部が受容された状態で情報表示部60に保持される。
【0017】
図5に示すように、容器10の下面のうち第1水平方向H1(前後方向)の前側の外縁部には、第2水平方向H2の両端寄り位置に1対の移動規制突部19が設けられている。各移動規制突部19は、第1土手部41の外面と面一で平坦な外面を有し(
図1参照)、内面に複数の縦長突条19Tを備える(
図6(A)参照)。また、移動規制突部19は縦方向より横幅が大きく、移動規制突部19の下端面は、下面突部12の下面と略面一になっている。
【0018】
図5に示すように、容器10の下面のうち第1水平方向H1(前後方向)の後端寄り位置の外縁部には、第2水平方向H2の両側から下面突部12と対向するように1対のスライドガイド突部70が設けられている。各スライドガイド突部70は、平坦で第2土手部31の外面と面一の外面と(
図1参照)、平坦で外面と平行な内面とを備えている(
図6(B)参照)。また、スライドガイド突部70の厚さは、第2土手部31の外壁31Aより厚くなっている。さらに、スライドガイド突部70は、上下方向と平行かつ平坦な垂直面70Aを後部に備え、その垂直面70Aの下端から下面70Bが前方に水平に延び、下面70Bの前端から底壁11上の下面まで傾斜面70Cが斜め前上方に延びている。また、下面70B及び傾斜面70Cは、断面形状が略半円形をなし、さらに、下面70Bと傾斜面70Cとの間の角部はR面取りされている。
【0019】
図5に示すように、後側の第1側壁本体42は、容器10の内外を区画する平板状の主板壁42Sと、主板壁42Sの外面の外縁部から張り出す枠状リブ群42Kとを備える。枠状リブ群42Kの1対の側辺部分には、後側の第1側壁本体42の縦方向の略全体に亘って延びる複数のメイン縦リブ42Xが含まれ、枠状リブ群42Kの上辺部と下辺部とには、第1側壁本体42の横方向の略全体に亘って延びる複数のメイン横リブ42Yとが含まれる。
【0020】
また、第1側壁本体42の上面の横方向の両端部には、1対の切欠部21が形成されている。切欠部21は、上端のメイン横リブ42Yのうち各側辺部の1対のメイン縦リブ42Xに挟まれた部分の外縁部分を切除してなる。なお、
図5では分かり難いが、切欠部21を挟んで対向する1対のメイン縦リブ42Xと、上端のメイン横リブ42Yとが交差する角部はC面取りされて1対のガイド部21Gになっている(
図1参照)。
【0021】
図1に示すように、前側の第1側壁本体42は、後側の第1側壁本体42と同様の1対のメイン縦リブ42Xを両側部に備えると共に、1対のメイン横リブ42Yを下端部に備える(
図1では、下端部の1対のメイン横リブ42Yのうち上側のメイン横リブ42Yのみが示されている)。そして、前面開口W2の内面がメイン横リブ42Yと1対のメイン縦リブ42Xとにより形成されている。なお、下端部の1対のメイン横リブ42Yの間の空間は、外壁42S1によって前方から覆われている。
【0022】
前面開口W2の下側両角部には、1対のメイン縦リブ42Xとメイン横リブ42Yとに対して斜めに交差する1対のコーナー連絡壁42Zが設けられている。そして、コーナー連絡壁42Zとメイン縦リブ42Xとメイン横リブ42Yとに包囲された空間が、前述の外壁42S1によって前方から覆われている。
【0023】
前側の第1側壁本体42の左右の各対のメイン縦リブ42Xの上端部の間には、それぞれ1対の横リブ42Y1が差し渡されている。そして、上側の横リブ42Y1の外縁部が切除されて前述した後側の第1側壁本体42の切欠部21と同様の切欠部21が形成されている。なお、
図2に示すように、1対の第1土手部41のうち1対の第1側壁本体42の各切欠部21の真下となる位置には、各第1土手部41の上壁41Cの一部を切除して各切欠部21に対応する切欠部22が形成されている。
【0024】
図1に示すように、前側の第1側壁本体42における両側部の1対のメイン縦リブ42Xの間には、上端から下端に亘って第1板壁51が張られている。第1板壁51は、1対のメイン縦リブ42Xの対向面における前端寄り位置に配置され、第1板壁51より前側部分が情報表示部50になっている。
【0025】
情報表示部50には、複数対の突片53及び1対のコーナー突片54とが設けられている。突片53は、1対のメイン縦リブ42Xの上下方向における略中央部と上部とに配置されて、1対のメイン縦リブ42Xの前端部から互いに接近する側に突出している。コーナー突片54は、1対のメイン縦リブ42Xと下端のメイン横リブ42Yとが交差する1対のコーナー部でメイン縦リブ42X及びメイン横リブ42Yの前端部の間を連絡するように形成されている。コーナー突片54は、メイン縦リブ42Xから張り出す突片とメイン横リブ42Yから張り出す突片とを合体させたL字形になっている。そして、
図1に示すように、タグ91Aが、第1板壁51と突片53及びコーナー突片54の間の隙間に縁部が受容された状態で情報表示部50に保持される。
【0026】
図1に示すように、第2側壁本体32は、容器10の内外を区画する平板状の主板壁32Sの外面の外縁部に枠状リブ群32Kを備える。枠状リブ群32Kの1対の側辺部分には、第2側壁本体32の縦方向の略全体に亘って延びる複数のメイン縦リブ32Xが含まれ、枠状リブ群32Kの上辺部と下辺部とには、第2側壁本体32の横方向の略全体に亘って延びる複数のメイン横リブ32Yとが含まれる。
【0027】
また、
図4に示すように、前述したロック機構34の操作部35は、枠状リブ群32Kの上辺部分のうち上端から2番目のメイン横リブ32Yより下側で、1対のメイン横リブ32Yと1対の縦リブ32Uとに四方を囲まれた部屋の内部に収容されている。そして、1対のロックバー36は、縦リブ32U及びメイン縦リブ32Xに形成された貫通孔に通されて操作部35から両側方に延びている。
【0028】
第2側壁本体32の上面を形成する上端のメイン横リブ32Yは、それ以外のメイン横リブ32Yより幅狭になっている(即ち、主板壁32Sからの突出量が小さくなっている)。また、上端のメイン横リブ32Yと上端から2番目のメイン横リブ32Yは、第2側壁本体32の横方向(第1水平方向H1)の両端部を除いた複数箇所を、複数の連絡リブ39によって接続され、両端部を1対の連絡リブ39Cによって接続されている。
【0029】
両端部の連絡リブ39Cの先端面は、上下方向に対して平行な面であって、上端のメイン横リブ32Yの先端面と面一になっている。
【0030】
両端部以外の複数の連絡リブ39の先端面は、上下方向の途中位置より上側が、上下方向と平行でかつ上端のメイン横リブ32Yの先端面と面一になっている垂直部39Aをなし、途中位置より下側は、下方に向かうに従って外側に向かうように傾斜する傾斜部39Bになっている。そして、複数の連絡リブ39のうち垂直部39Aを有する部分と上端のメイン横リブ32Yとからレール部38が形成されている。また、
図1に示すように、前述の1対のサイド突壁43の上端部は、1対のレール部38の両端部に外側から重なり、レール部38のストッパ部38Sを構成している。さらに、サイド突壁43の上端角部は面取り形状(例えば、R面取り)になっている。
【0031】
なお、本実施形態では、上端のメイン横リブ32Yが、特許請求の範囲の「第1横リブ」に相当し、上端から2番目のメイン横リブ32Yが、特許請求の範囲の「第2横リブ」に相当する。
【0032】
本実施形態の容器10の構成に関する説明は以上である。次に、この容器10の作用効果について説明する。容器10は、例えば、工場から出荷される商品90を搬送するための搬送容器として使用されると共に、販売店で商品90を陳列する陳列ケース(又は、商品を展示する展示ケース)としても使用される。具体的には、容器10は、商品90を出荷する工場にて
図1に示すように組立状態にされる。そして、荷物として複数の商品90が上面開口W1から容器10に収容されて販売店に搬送される。
【0033】
販売店では、例えば、
図7に示すように複数の容器10が、全て前面開口W2が同じ方向を向いた段積状態で売り場に置かれる。容器10が段積状態にされると、上段側の容器10の下面突部12が下段側の容器10の上面開口W1内に嵌合して容器10同士の横ずれが防がれる。また、上段側の容器10の1対の移動規制突部19が、前側の第1側壁40の上部の切欠部21に係合しているので(
図9)、前面開口W2により強度が低下している前側の第1側壁40の外側への変形が防がれる。
【0034】
売り場に段積みされた容器10は、陳列ケース(展示ケース)となり、購入者は前面開口W2から容器10内の商品90を取り出すことができる。ここで、購入者の購買意欲を喚起するために、例えば、各容器10の情報表示部50,60の何れか又は全てに、
図1に示すように商品90に係る情報が印字されたタグ91A,91Bを取り付けるか、或いは、図示しないステッカーを貼着することができる。
【0035】
ところで、商品90は、
図7に示すように段積された複数の容器10のうち購入者が手に取り易い手前側かつ上段側の容器10から無くなる。そして、空になった容器10が取り除かれていく。その結果、前側の容器10の積み上げ段数が後側の積み上げ段数より1段少ない状況になり、商品90を取りやすさを保つために、後側の最上段の容器10を、その下段側の容器10上から、その手前の容器10の上に移動する作業を求められることがある。
【0036】
これに対し、
図10に示すように、上段側の容器10を、前側部分を持ち上げた傾斜姿勢にすれば、下段側の容器10の1対のレール部38上で容易に前側にスライドさせることができる。
【0037】
その際、容器10を傾斜姿勢にするために、第1側壁40のうち前面開口W2より下側の第1土手部41を摘まんで持ち上げれば、第1側壁40における第1側壁本体42と第1土手部41との間のヒンジ連結部分への負担が抑えられる。また、第1側壁40がヒンジ連結部分を有していなくても、前面開口W2より下側の第1側壁40の下端寄り位置を摘まんで持ち上げることで第1側壁40に対する負担は抑えられる。
【0038】
また、本実施形態の容器10には、第1水平方向H1の他方側(後側)に、下面突部12との間に1対の第2側壁30のレール部38を受容する1対のスライドガイド突部70が設けられているので、上段側の容器10が傾斜姿勢にされたときに、下段側の容器10の1対の第2側壁30が外側に変形して上段側の容器10が下段側の容器10の内部に落ち込むような事態が防がれる。また、
図8に示すように、レール部38に含まれる複数の連絡リブ39は、上側部分より下側部分の張り出し量が大きくなっているので、突部70との干渉を回避しながらもレール部38を強固に補強することができる。このことにより、上段側の容器10のスライド移動が安定する。
【0039】
図11に示すように、上段側の容器10が、下段側の容器10における前端位置まで移動されると、上段の容器10の下面突部12の下面が、下段側の容器10における前側の上端開口縁に当接するか、上段の容器10の突部70の傾斜面70Cが、レール部38の前端のストッパ部38Sに当接する。これに対し、上段側の容器10を強く引くと、上記当接部分が摺接して、上段側の容器10の下面突部12及び突部70が、下段側の容器10の前部と、その前隣りの容器10の後部とを乗り越え、上段側の容器10が、前隣りの容器10の上に移動する。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態の容器10によれば、段積みされた上段側の容器10を、下段側の容器10の隣りの容器10の上に移動する作業を容易に行うことができる。
【0041】
なお、1対のスライドガイド突部70は、第1水平方向H1の他方側(第2側壁30における第1水平方向H1の他方側)のみに設けられているので、容器10をスライド移動可能とするために持ち上げるべき端部を、スライドガイド突部70の目視により容易に確認することができる。また、容器10の下面の前部のみ(前側の第1側壁40における第2水平方向H2の両端寄り位置)に設けられた移動規制突部19と係合する切欠部21,22が、容器10の前部と後部と(1対の第1側壁40)に設けられているので、容器10を段積みする際に、下段側の容器10と上段側の容器10の前後の向きを逆にすることもできる。さらに、切欠部21,22を容器10の前部と後部とに設けることで、例えば、
図10に示すように、上段側の容器10の後側部分の下面突部12と下段側の容器10の後側部分の上面開口W1とを当接させて回動支点となるように上段側の容器の前側部分を持ち上げるような場合において、上段側の容器10の移動規制突部19が下段側の容器10のその前隣りの容器10の後部に接触して破損することを防ぐことができる。
【0042】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態の容器10の前面開口W2は、四角形であったが、これに限定されるものではなく、例えば、前面開口W2が上方に向かうに従って開口幅が拡がる台形であったり、楕円形であってもよく、また、前面開口W2の開口縁が波形形状であってもよい。
【0043】
(2)前記実施形態の容器10は、一方の第1側壁40のみに前面開口W2、情報表示部50,60が備えられていたが、2つの第1側壁40の両方に前面開口W2、情報表示部50,60が備えられていてもよいし、第2側壁30を加えた3つ以上の側壁に前面開口W2、情報表示部50,60が備えられていてもよい。
【0044】
(3)前記実施形態の容器10の情報表示部50,60は、タグ91A,91Bを保持可能な構造になっていたが、タグ91A,91Bを保持することができないものであっても、商品に係る情報を表示可能なものであればよい。具体的には、情報表示部50,60が、タグは保持できないが、例えば、商品に係る情報を表示するステッカーを貼り付け可能なものや、商品に係る情報が成形によって刻印されているものであってもよい。
【0045】
(4)前記実施形態の容器10は、折り畳み可能であったが、折り畳み不可能なものであってもよい。容器10を折り畳み可能とする構造としては、前記実施形態の構造以外に、例えば、容器10の上端部が枠体になっていて、その枠体のうち1対の第1対向辺に上端部がヒンジ連結されて、上端部を中心に回動する1対の跳ね上げ側壁と、枠体の1対の第2対向辺とそれらの真下の底壁の1対の対向辺とに上下の両端部をヒンジ連結されて、内側に二つ折り可能な1対の折り曲げ側壁と、を備えた構造としてもよい。
【0046】
(5)前記実施形態の容器10の平面形状は、長方形であるが正方形でもよい。
【0047】
(6)前記本実施形態の容器10の構成部品は、全て樹脂の成形品であるが、金属製の部品を含んでいてもよい。
【0048】
(7)前記実施形態では、1対のスライドガイド突部70が容器10の後部のみに配置されていたが、1対のスライドガイド突部70が容器10の後部と前部とに配置されていてもよい。
【0049】
(8)前記実施形態のレール部38は、複数の連絡リブ39で補強されていたが、複数の連絡リブ39を有しない構造であってもよい。
【0050】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成の符号を括弧書きで示すが、これら特徴群は、この括弧書きで示した符号の構成に限定されるものではない。
【0051】
[特徴1]
上面開口(W1)を有する箱形をなして、第1水平方向(H1)で対向する1対の第1側壁(40)と、第2水平方向(H2)で対向する1対の第2側壁(30)と、下面の外縁部より内側部分から突出する下面突部(12)とを備える容器(10)であって、段積状態で上段側の容器(10)の前記下面突部(12)が、下段側の容器(10)の前記上面開口(W1)の内側に嵌合する容器(10)において、前記下面の外縁部における前記第1水平方向(H1)の一方側のみに設けられて、前記段積状態で前記下面突部(12)との間に前記第1側壁(40)を受容する移動規制突部(19)と、前記下面の外縁部における前記第1水平方向(H1)の他方側に設けられて、前記段積状態で前記下面突部(12)との間に前記1対の第2側壁(30)を受容する1対のスライドガイド突部(70)と、を有し、前記段積状態で、上段側の容器(10)は、前記第1水平方向(H1)の一方側を持ち上げられた場合は、下段側の容器(10)上でスライド可能になる一方、他方側が持ち上げられた場合は、前記移動規制突部(19)と前記第1側壁(40)との当接により前記スライドが規制される容器(10)。
【0052】
特徴1の容器は、下面の外縁部より内側部分から突出する下面突部を備える。そして、段積みされると下段側の容器の上面開口の内側に、上段側の容器の下面突部が嵌合して横ずれが防がれる。ここで、容器の下面の外縁部には、段積状態で下面突部との間に第1側壁を受容する移動規制突部が、第1水平方向の一方側のみに設けられている。これにより、上段側の容器を、第1水平方向の一方側を持ち上げた傾斜姿勢にすれば、下段側の容器上で第1水平方向の一方側にスライドさせることができる。しかも、容器の下面の外縁部には、第1水平方向の他方側に、下面突部との間に下段側の容器の1対の第2側壁を受容する1対のスライドガイド突部が設けられている。これにより、上段側の容器が傾斜姿勢にされたときに、下段側の容器の1対の第2側壁が外側に膨らむように変形して上段側の容器が下段側の容器の内部に落ち込むような事態が防がれる。これらにより、特徴1によれば、段積みされた上段側の容器を、下段側の容器の隣りの容器の上に移動する作業を容易に行うことができる。
【0053】
[特徴2]
前記1対のスライドガイド突部(70)は、前記下面の外縁部における前記第1水平方向(H1)の他方側のみに設けられている特徴1に記載の容器(10)。
【0054】
特徴2の容器では、1対のスライドガイド突部が、第1水平方向の他方側のみに設けられているので、容器をスライド移動可能とするために持ち上げるべき端部を、スライドガイド突部の目視により容易に確認することができる。
【0055】
[特徴3]
前記第1水平方向(H1)の一方側の前記第1側壁(40)の外面は、前記容器(10)の前面をなし、その第1側壁(40)には、横方向の両端部を除く範囲を下端寄り位置まで除去してなる前面開口(W2)が形成されている特徴1又は2に記載の容器(10)。
【0056】
特徴3の容器では、第1側壁のうち前面開口の下辺より下側部分を摘まんで容器の一端部を持ち上げて、容器をスライド移動可能な傾斜姿勢にすることができる。これにより、第1側壁の上部を摘まんで持ち上げる場合より、第1側壁に対する負担が抑えられる。
【0057】
[特徴4]
前記1対の第1側壁(40)及び前記1対の第2側壁(30)は、それぞれ底壁(11)の外縁部に一体形成されて起立する土手部(31,41)と、前記土手部(31,41)にヒンジ連結されて、前記土手部(31,41)上で起立すると共に内側に折り畳み可能な側壁本体部(32,42)とに分割され、前記前面開口(W2)は、前記第1側壁(40)の前記側壁本体部(32,42)の上端から下端寄り位置に亘って形成されている特徴3に記載の容器(10)。
【0058】
特徴4の容器では、前面開口より下側の土手部を摘まんで持ち上げることで容器をスライド移動可能な傾斜姿勢にすることができる。これにより、第1側壁本体と土手部との間のヒンジ連結部分の負担が抑えられる。
【0059】
[特徴5]
各前記第2側壁(30)には、上端から外側に張り出しかつ前記第1水平方向(H1)に延びる第1横リブ(32Y)と、上端寄り位置から前記第1横リブ(32Y)より大きく外側に張り出しかつ前記第1水平方向(H1)に延びる第2横リブ(32Y)と、上端と上端寄り位置との間で外側に張り出しかつ前記第1水平方向(H1)の複数箇所で前記第1横リブ(32Y)と前記第2横リブ(32Y)との間を連絡する複数の連絡リブ(39)と、が備えられ、前記複数の連絡リブ(39)の先端のうち上下方向の途中位置より上側は、上下方向と平行な垂直部(39A)をなす一方、前記途中位置より下側は、下方に向かうに従って外側に向かうように傾斜する傾斜部(39B)をなし、前記段積状態で、上段側の容器(10)の前記スライドガイド突部(70)は、下段側の容器(10)における前記複数の連絡リブ(39)の前記傾斜部(39B)より上方に位置する特徴1又は2に記載の容器(10)。
【0060】
特徴5の容器では、段積状態で下面突部とスライドガイド突部との間にスライド可能に係合する1対の第2側壁の上部が、第1水平方向に延びる第1横リブと第2横リブの間の複数の連絡リブで連絡した構造をなして強度が高められている。これにより、段積された上段側の容器のスライド移動が安定する。
【0061】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0062】
10 容器
11 底壁
12 下面突部
19 移動規制突部
30 第2側壁
31 第2土手部
32 第2側壁本体
32Y メイン横リブ(第1横リブ,第2横リブ)
39 連絡リブ
39A 垂直部
39B 傾斜部
40 第1側壁
41 第1土手部
42 第1側壁本体
70 スライドガイド突部
H1 第1水平方向
H2 第2水平方向
W1 上面開口
W2 前面開口