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特開2024-97225携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け方式
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097225
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け方式
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20240710BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H04R1/34 320
H04R1/00 321
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000634
(22)【出願日】2023-01-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000234937
【氏名又は名称】八重洲無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】飯束 嘉庸
【テーマコード(参考)】
5D018
【Fターム(参考)】
5D018BB03
(57)【要約】
【課題】単信通信方式の携帯型無線通信機において、マイク用孔での風切り音の入力や水滴の侵入による閉塞などの問題点を解消させる。
【解決手段】無線通信機の正面壁部2におけるスピーカグリルのスリット形成領域外の2つの孔23,24を含む段差凹部21を形成し、各孔23,24の間を凹溝20で結んで段差凹部21に覆設板20を内嵌貼着させる。正面壁部2の裏面側で孔23には通音防水膜25が覆設され、孔24にはマイクエレメント26が装着される。スリットを通じて正面壁部2とスピーカの間に入った音波は、通音防水膜25→孔23→凹溝20→孔24を伝搬してマイクエレメント26に入る。収音用の孔23が筐体内にあり、通音防水膜25の覆設と相俟って水滴による閉塞は発生せず、前記導音経路を細長くして音響抵抗を大きくできるために、風切り音のマイクエレメント26への入力を抑制できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単信方式での無線通信を行う携帯型無線通信機において、その筐体の正面壁部における内蔵スピーカとの対向面であってスピーカグリルのスリット又は孔の形成領域外に2つの開口部を配設し、前記2つの開口部の間を前記正面壁部の壁厚内に構成した孔で連通させることにより導音経路を構成すると共に、前記2つの開口部の一方には通音防水膜を覆設し、他方の開口部にはマイクロホンエレメントを装着したことを特徴とする携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け方式。
【請求項2】
前記導音経路は、前記2つの開口部から前記正面壁部の壁面に垂直な方向に形成した2つの孔と、前記正面壁部の外側面における前記2つの孔を含む領域に形成した段差凹部と、前記段差凹部の前記2つの孔の間を結んで形成した凹溝と、前記段差凹部に対して内嵌貼着される覆設板とで構成されたものである請求項1に記載の携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け方式。
【請求項3】
前記導音経路の凹溝が前記2つの孔の間を蛇行して形成されている請求項2に記載の携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け方式。
【請求項4】
前記導音経路が、前記携帯型無線通信機の正立状態で前記正面壁部におけるスピーカグリルのスリット又は孔の形成領域より上側に構成されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け方式。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け方式に係り、筐体のマイクロホン用孔での風切り音が入力されてしまうことや、雨天での使用時に水滴が収音孔を閉塞させる課題を解消させるための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型無線通信機のマイクロホンは、筐体に小径の収音孔を穿設して、その孔の背後(筐体の内側)にマイクロホンエレメント(以下、「マイクエレメント」という)を装着することで構成されているが、収音孔の表面側で発生する風切り音がマイクエレメントに収音されてしまうことを防止するために様々な対策が提案されている。
【0003】
例えば、本願出願人は、下記特許文献1において、図6及び図7に示すような「風切り音を防ぐマイクの構造」を提案している。
図6において、101はマイクエレメント、102は嵌装部材、103は通音防水膜、104は無線通信機の筐体の壁部である。
【0004】
マイクエレメント101の前端面の中央には透音孔111が形成されており、同孔111を通じて音波が内部へ導かれて電気信号に変換される。
嵌装部材102は円柱状の形態をなし、図7に示すように、その前端面側には、中央部から半径方向へ伸び、その途中で周方向へ方向を変えて、中心角にして270度分だけ周回した凹溝112が形成されており、その周方向の終端部には、後端面側の段差凹部113へ抜ける孔114が穿設されており、さらに段差凹部113へ抜けた孔114の位置から中央位置まで直線的に凹溝115が形成されている。
なお、後端面側の段差凹部113にはマイクエレメント101の前端側が内嵌し、マイクエレメント101の透音孔111が凹溝115の終端部に対応するようになっている。
一方、図6に示すように、無線通信機の筐体の壁部104の内側面には、通音防水膜103を介して嵌装部材102の前端側が内嵌する段差凹部116が形成されており、その中央部にはマイクロホン用の収音孔117が穿設されている。
【0005】
したがって、図6に示すように、筐体の壁部104の段差凹部116に対して通音防水膜103と嵌装部材102の前端側を嵌合装着し、嵌装部材102の後端面の段差凹部113に対してマイクエレメント101を嵌合装着すると、図8に示すように、壁部104に対してマイクエレメント101が通音防水膜103と嵌装部材102を介在させて取り付けられた状態となる。
【0006】
その取り付け状態において、壁部104の収音孔117で収音された外部の音波は通音防水膜103を通じて嵌装部材102の前端側中央へ導かれ、嵌装部材102に構成された凹溝112-孔114-凹溝115の導音経路を経てマイクエレメント101の透音孔111へ導かれることになる。
そして、その場合には、筐体の壁部104にマイクエレメント101を直接取り付けた場合と比較して導音経路が大幅に長くなり、また直線的な伝播経路ではなくなるため、壁部104の収音孔117で発生した風切り音がマイクエレメント101に入力されることを抑制できる。
【0007】
すなわち、携帯型無線通信機のマイクロホンでは、上記のように筐体の壁部104に小径の収音孔117を穿設して収音しており、強風の中では収音孔117の近傍で発生した空気の渦流による風切り音が収音孔117に収音されてしまうが、嵌装部材102の介在によって、導音経路を長く、また非直線的な経路で構成できるため、風切り音は導音経路で減衰せしめられてマイクエレメント101まで届くことを抑制できる。
【0008】
なお、特許文献1の段落[0012]にも記載されているが、下記特許文献2においては、図9に示すように、筐体の壁部自体に導音経路を構成した「風切り音防止型マイクロホン」が提案されている。
ただし、図9において、(A)はフロントケース(筐体の壁部の一部)を内側からみた平面図、(B)は(A)におけるY-Y矢視断面図であり、(C)はフロントケースにMICユニットを取り付けた状態での拡大断面図である。
この提案に係るマイクロホンは、フロントケース201に形成された円筒状のMICユニット取付部202内にMICユニット203を収納したものであり、フロントケース201自体に雑音減衰用の道長の長い狭い屈曲した溝状の音道204a,204b(204aは収音孔、204bは導音経路に相当)を形成し、かつその上部に導音経路204bと連通する透孔205aを有するほぼリング状のスペーサ205を介してMICユニット203を設けた構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3017311号公報
【特許文献2】特開平8-322096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記特許文献1及び2の考案や発明においては、いずれも無線通信機の筐体側に形成された収音孔とマイクエレメント側の透音孔との間の導音経路を長く構成することで、マイクエレメントに入力される風切り音の音波を減衰させるようにしている。
【0011】
しかしながら、前記特許文献1の発明では嵌装部材102に導音経路112,114が構成されており、前記特許文献2の発明ではMICユニット取付部202の内側領域にあるフロントケース201の背面に導音経路204bが構成されているため、導音経路を長く構成する上で一定の制限が伴う。
【0012】
また、前記特許文献1の発明では、別途部品として嵌装部材102を製造する必要があると共に、無線通信機の筐体104の背面側に段差凹部115を形成する必要があり、前記特許文献2の発明では、フロントケース201の背面側にMICユニット取付部202と導音経路204bを形成する必要があるが、一般に筐体104やフロントケース201は樹脂成型工程で製造されるため、筐体104やフロントケース201の正面側の複雑な成形に加えて、背面側にも凹凸が多くなると金型の構成が複雑になるという問題がある。
【0013】
さらに、従来から携帯型無線通信機では筐体の正面壁部に内部へ連通する小径の孔を穿設してマイクロホン用の収音孔としており、それは前記特許文献1及び2の発明でも同様であるが(収音孔116,204a)、携帯型無線通信機は屋外で使用されることが多く、雨天の下では水滴が収音孔へ侵入して音声を入力できなくなるという不具合が生じる。
【0014】
そこで、本発明は、単信方式による無線通信を行う携帯型無線通信機について、収音孔で発生する風切り音がマイクエレメントに入力されることを抑制するための構成を有すると共に、水滴による収音孔の閉塞などの前記各課題を解消したマイクロホン取り付け方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、単信方式での無線通信を行う携帯型無線通信機において、その筐体の正面壁部における内蔵スピーカとの対向面であってスピーカグリルのスリット又は孔の形成領域外に2つの開口部を配設し、前記2つの開口部の間を前記正面壁部の壁厚内に構成した孔で連通させることにより導音経路を構成すると共に、前記2つの開口部の一方には通音防水膜を覆設し、他方の開口部にはマイクレメントを装着したことを特徴とする携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け方式に係る。
【0016】
本来、スピーカグリルのスリットや孔はスピーカの出力音を外部へ通過させるものであるが、本発明では外部の音波を筐体内へ取り込むためにも利用しており、筐体内へ入った音波はスピーカの前面と筐体の正面壁部の間に構成されている空間から通音防水膜を通過して一方の開口部へ入り、正面壁部の壁厚内の孔を通じて他方の開口部へ伝播し、その開口部に装着されているマイクエレメントに収音される。
したがって、本発明では、筐体の外面に収音用の孔を設けておらず、スピーカグリルのスリットや孔を通じて筐体内に取り込まれた音波を、筐体の正面壁部の背面側の空間から通音防水膜を介して一方の開口部へ収音しており、無線通信機を雨天の下で使用しても水滴によって音声入力が妨げられるという不具合を回避できる。
また、筐体の正面壁部の壁厚内の孔で導音経路を長くすることで風切り音のマイクエレメントへの伝播を抑制しているが、前記特許文献1,2の発明のように導音経路を嵌装部材に構成したり、MICユニット取付部の内側領域に形成したりするのではなく、2つの開口部を連通する孔は正面壁部の肉厚内に任意の経路で構成することが可能であるため、風切り音の伝搬を抑制する導音経路を無理なく充分に長く構成できると共に、その導音経路に係る設計の自由度も大きい。
なお、本発明が適用される無線通信機は、筐体内でスピーカの前面空間にマイクロホン用の収音孔(前記一方の開口部)が対向配置された構成になるため、複信方式による通信での使用ではハウリングの発生が不可避であり、単信方式で無線通信を行うものに限られる。ただし、複信方式で通信を行う場合にヘッドセットを用いるなどの対応が可能であれば、単信方式と複信方式の両通信機能を有している無線通信機であってもよいことは当然である。
【0017】
本発明の前記導音経路については、前記2つの開口部から前記正面壁部の壁面に垂直な方向に形成した2つの孔と、前記正面壁部の外側面における前記2つの孔を含む領域に形成した段差凹部と、前記段差凹部の前記2つの孔の間を結んで形成した凹溝と、前記段差凹部に対して内嵌貼着される覆設板とで構成することが望ましい。
この導音経路の構成の仕方によれば、導音経路を2つの孔を結ぶ凹溝と覆設板で正面壁部の壁面内に構成させているが、段差凹部と凹溝は正面壁部の外面側に形成すればよく、無線通信機の筐体の樹脂成型における金型の構成が容易になる。
【0018】
また、前記導音経路を構成する凹溝は、前記2つの孔の間を蛇行して形成することにより、その経路長を大幅に長くできると共に、音響抵抗を大きくしてより効果的に風切り音の伝播を抑制できる。
【0019】
さらに、本発明の前記導音経路については、前記携帯型無線通信機の正立状態で前記正面壁部におけるスピーカグリルのスリット又は孔の形成領域より上側に構成しておくことが望ましい。
本発明の導音経路における収音孔に相当する開口部には通音防水膜が覆設してあり、マイクエレメントについても開口部に密接させて装着されてはいるが、この導音経路の構成位置条件により、無線通信機の通常の使用状態において外部からスピーカグリルのスリット又は孔を通じて雨滴などが筐体内に侵入することがあっても、通音防水膜に水が付着して音波の導音経路への適正な伝播が妨げられる不具合を有効に防止できると共に、マイクエレメントやその装着部分に水が浸入して故障を誘発することも防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、単信方式での無線通信を行う携帯型無線通信機において、筐体の外面に開口したマイクロホン用の収音孔を設けていないため、雨天などのように水を被る使用環境においても、収音機能に支障が生じることはない。
また、通音防水膜が覆設された開口部(吸音孔)からマイクエレメントに至る導音経路を正面壁部の肉厚内に任意の経路で無理なく充分に長く構成できるため、風切り音のマイクエレメントへの伝搬を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のマイクロホン取り付け方式を適用した携帯型無線通信機の外観斜視図である。
図2】実施形態に係る携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け部分を拡大した外観斜視図(覆設板を取り外した状態)である。
図3】実施形態に係る携帯型無線通信機の厚み方向についての図2のX0-X0矢視で示される縦方向区間に係る概略断面図である。
図4】実施形態に係るマイクロホン取り付け部分の正面図(A)、覆設板を外した状態でのマイクロホン取り付け部分の正面図(B)、マイクロホン取り付け部分の側面図(C)並びに正面図(A)におけるX1-X1矢視断面図(D)、X2-X2矢視断面図(E)、X3-X3矢視断面図(F)及びY-Y矢視断面図(G)である。
図5】導音経路に係る他の実施形態を示すマイクロホン取り付け部分の正面図(覆設板を外した状態)である。
図6】先行技術(特許文献1)の「風切り音を防ぐマイクの構造」の部品分解図である。
図7】先行技術(特許文献1)の「風切り音を防ぐマイクの構造」に適用されている嵌装部材の背面図(A)、側面図(B)及び正面図(C)である。
図8】先行技術(特許文献1)の「風切り音を防ぐマイクの構造」に係る組み立て断面図である。
図9】先行技術(特許文献2)の「風切り音防止型マイクロホン」に係るフロントケースのMICユニットの装着部を内側からみた平面図(A)、平面図(A)におけるY-Y矢視断面図(B)及びフロントケースにMICユニットを取り付けた状態の拡大断面図(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の携帯型無線通信機におけるマイクロホン取り付け方式の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示す携帯型無線通信機1は単信方式による無線通信が可能なものであり、その正面壁部2のスピーカグリル3には4本のスリット4が形成されていると共に、PMG(プライマリーメモリグループ)ボタン5や各種機能キー・テンキー(配設領域だけを二点鎖線で表示)6が設けられている。
また、筐体の左側面にはPTT、スケルチ制御、ボリウム制御等の機能に関するスイッチ類7が、右側面にはヘッドセットやデータの入出力に係る接続端子類8が、上面には前記機能キーとの連携操作で周波数変更やメモリチャネル選択や音量調整等を行うダイアルツマミ9及びアンテナ10が設けられている。
なお、正面壁部2の破線11は内蔵スピーカの前面を壁面に投影した場合の範囲を示すものである。
【0023】
そして、携帯型無線通信機1の正面壁部2におけるスピーカグリル3に形成されているスリット4の上側には、長円状の覆設板20が壁面に嵌め込まれた態様で取り付けられているが、この覆設板20の背後に本発明のマイクロホン取り付け方式を適用した構成が設けられている。
すなわち、図2及び図3に示すように、覆設板20は正面壁部2の外側壁面に形成された長孔状の段差凹部21に内嵌して貼着されており、正面壁部2の壁厚内に形成された凹溝22とその両端部の孔23,24及び覆設板20で導音経路が構成されるようになっている。
【0024】
ここで、覆設板20の貼着領域における正面壁部2の構造は図4に示すようなものである。
先ず、前記のように正面壁部2の外側壁面には覆設板20を内嵌させてその厚み分の深さを有する長円状の段差凹部21が形成されており、その段差凹部21の両端部をなす半円部分の中心相当位置に正面壁部2の裏側へ連通する孔23,24が形成されていると共に、その各孔23,24を連結する態様で段差凹部21に凹溝22が形成されている。
なお、この場合の凹溝22の断面形状は方形状になっているが、U字状やV字状などであってもよく、また、段差凹部21の面からの深さは正面壁部2の裏側面までの範囲で適宜選択できるが、ここでは段差凹部21の面と正面壁部2の裏側面とで構成される壁厚の半分程度になっている。
【0025】
そして、前記の一方の孔23の開口部には通音防水膜25がその周囲を貼着させた態様で覆設されており、他方の孔24の開口部にはマイクエレメント26がその透音孔を開口部に対応させて接着方式で取り付けられている。
【0026】
したがって、この実施形態のマイクロホン取り付け方式は、従来の無線通信機のように音波を筐体の正面壁部に穿設した小さな収音孔を通じてマイクエレメントに導く方式とは異なり、正面壁部2のスピーカグリル3に形成した4本のスリット4から筐体内に取り込まれた音波を、正面壁部2の裏側の空間に通音防水膜25を介して開口している孔23から収音してマイクエレメント26へ導くようになっている。
【0027】
より具体的には、図3に示されるように、スピーカグリル3の4本のスリット4を通じて筐体の正面壁部2とスピーカ30の前面との間に構成されている空間31に入った音波は上方へ伝搬し、通音防水膜25を通過して孔23へ進入する。
そして、図4に示した正面壁部2の構造では、2つの孔23,24の間を結んで段差凹部21に形成された凹溝22は、段差凹部21に覆設板20が内嵌貼着されることで正面壁部2の壁厚内に導音経路(20/22)を構成していることになり、図4(G)に示すように、孔23へ進入した音波はその導音経路(20/22)を伝搬して他方の孔24へ進み、さらに孔24を通じてマイクエレメント26の透音孔へ導かれる。
【0028】
この実施形態では、前記のように、スピーカグリル3に設けたスリット4から音波を筐体内へ取り込み、筐体内の空間31を通じてスリット4より上側に位置する孔23へ通音防水膜25を介して導くようになっているため、無線通信機を雨天の下で使用する場合などにおいて、無線通信機が正立状態で使用されていれば、収音孔に相当する孔23や導音経路(20/22)に水滴が浸入して音声入力ができなくなるような事態をほぼ完全に防止できる。
【0029】
また、この実施形態では、筐体の表面に晒されている音波の取り込み口はスピーカグリル3の4本のスリット4であり、この各スリット4の形成部分の形状設計についてはある程度自由度があり、できる限り風切り音が発生しにくい形状を選択することができる。これは、スリット形状の場合だけでなく、スピーカグリル3に多数の円孔が形成されているような場合についても同様のことが言える。
【0030】
そして、この実施形態では、無線通信機の筐体を利用して合理的に導音経路を長くしている。
すなわち、音波は、図3に示される各スリット4から孔23の開口部までの経路と、図4(G)に示す「孔23→導音経路(20/22)→孔24」の経路を通じてマイクエレメント26に伝搬することになり、特に、導音経路(20/22)はスピーカグリル3の上側の壁部を利用して細く長く構成できるため、それだけ音響抵抗を大きくして風切り音がマイクエレメント26へ伝搬することを効率的に抑制できる。
【0031】
また、導音経路を長く且つ音響抵抗を大きくする観点からは、図5に示すように、正面壁部2の段差凹部21に形成する凹溝27を両孔23,24の間で蛇行させればよく、覆設板20の段差凹部21への内嵌貼着により蛇行した導音経路が簡単に構成できる。
【0032】
その他、この実施形態における無線通信機の筐体のマイクロホン取り付け部分に係る構造は、正面壁部2の表面側にのみ段差凹部21や凹溝22,27の成形が必要であるのに対して、裏面側には前記凹溝22の両端に連通する孔23,24が開口しているだけであり、筐体が合成樹脂の射出成型で成形されることを考慮すると、正面壁部2の裏面側が簡素な面で構成されることは成形金型が複雑化しないという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0033】
単信方式での無線通信を行う携帯型無線通信機に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1…携帯型無線通信機、2…正面壁部、3…スピーカグリル、4…スリット、5…PMGボタン、6…各種機能キー・テンキー、7…PTTなどのスイッチ類、8…接続端子類、11…内蔵スピーカの前面を壁面に投影した範囲、20…覆設板、21…段差凹部、22…凹溝、23,24…孔、25…通音防水膜、26…マイクロホンエレメント、30…スピーカ、31…空間、101…マイクロホンエレメント、102…嵌装部材、103…通音防水膜、104…筐体の壁部、111…透音孔、112…凹溝、113…段差凹部、114…孔、115…凹溝、116…段差凹部、117…収音孔、201…フロントケース、202…MICユニット取付部、203…MICユニット、204a…音道(収音孔)、204b…音道(導音経路)、205…スペーサ、205a…透孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9