(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097237
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】内視鏡および内視鏡の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/07 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
A61B1/07 733
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000666
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園原 祥真
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161FF35
4C161FF40
4C161JJ03
4C161JJ06
4C161NN01
4C161QQ06
(57)【要約】
【課題】細径であり、体腔内を明るく照らして観察しやすくすることができる内視鏡および内視鏡の製造方法を提供する。
【解決手段】撮像素子10と、発光部20と、発光部20から照射される光が通過可能である透明樹脂部材30と、を有する内視鏡1であって、撮像素子10は、内視鏡1の遠位端1dに配置され、発光部20は、撮像素子10よりも近位側に配置されており、撮像素子10の近位部と透明樹脂部材30の遠位部とが互いに固定され、透明樹脂部材30の近位部と発光部20の遠位部とが互いに固定されており、透明樹脂部材30を構成する材料は、紫外線硬化樹脂を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、発光部と、前記発光部から照射される光が通過可能である透明樹脂部材と、を有する内視鏡であって、
前記撮像素子は、前記内視鏡の遠位端に配置され、
前記発光部は、前記撮像素子よりも近位側に配置されており、
前記撮像素子の近位部と前記透明樹脂部材の遠位部とが互いに固定され、前記透明樹脂部材の近位部と前記発光部の遠位部とが互いに固定されており、
前記透明樹脂部材を構成する材料は、紫外線硬化樹脂を含む内視鏡。
【請求項2】
前記撮像素子、前記透明樹脂部材、および前記発光部を内腔に収容可能である筒状体をさらに有し、
前記筒状体から前記撮像素子、前記透明樹脂部材、および前記発光部が露出した状態において、前記透明樹脂部材は、外表面に生体内管腔の管壁と接触可能である接触面を有している請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記透明樹脂部材の内部であって、前記撮像素子よりも近位側かつ前記発光部よりも遠位側に、前記発光部から照射される光を反射する反射材が配置されている請求項1または2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記発光部から照射される光に含まれる紫外線量は、1μW/cm2以下である請求項1または2に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記発光部の遠位端よりも近位側に被覆チューブをさらに有し、
前記透明樹脂部材の内部に芯材が配置されており、
前記芯材は、少なくとも前記撮像素子の近位端から前記被覆チューブの遠位端よりも近位側まで延在している請求項1または2に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記撮像素子および前記発光部の少なくとも一方は、前記内視鏡の長手軸方向に垂直な方向へ延在する溝が表面に形成されている請求項1または2に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記内視鏡の長手軸方向に垂直な断面において、前記撮像素子および前記発光部の断面形状は、矩形であり、前記透明樹脂部材の断面形状は、円形である請求項1または2に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記透明樹脂部材の表面粗さRaの平均値は、25μm以下である請求項1または2に記載の内視鏡。
【請求項9】
撮像素子と、発光部と、前記発光部から照射される光が通過可能である透明樹脂部材と、を有する内視鏡を製造する方法であって、
熱収縮チューブの内腔に前記撮像素子および前記発光部を配置する工程と、
前記熱収縮チューブを加熱する工程と、
前記熱収縮チューブの内腔に、紫外線照射によって硬化する透明液状樹脂を充填する工程と、
前記透明液状樹脂に紫外線を照射して前記透明樹脂部材を形成する工程と、
前記熱収縮チューブを除去する工程と、を有しており、
前記撮像素子の近位部と前記透明樹脂部材の遠位部とが互いに固定され、前記透明樹脂部材の近位部と前記発光部の遠位部とが互いに固定されている製造方法。
【請求項10】
前記熱収縮チューブは、紫外線が通過可能であり、
前記透明液状樹脂に紫外線を照射して前記透明樹脂部材を形成する工程において、前記熱収縮チューブの外方から紫外線の照射を行う請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記熱収縮チューブの内腔に前記透明液状樹脂を充填する工程の前に、前記発光部よりも近位側に被覆チューブを配置する工程と、前記被覆チューブの内腔に前記撮像素子の配線および前記発光部の配線を挿通する工程と、を有し、
前記透明液状樹脂に紫外線を照射して前記透明樹脂部材を形成する工程の前に、前記被覆チューブの遠位端の内腔に前記透明液状樹脂を充填する工程を有している請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記熱収縮チューブの内腔に前記透明液状樹脂を充填する工程および前記透明液状樹脂に紫外線を照射して前記透明樹脂部材を形成する工程は、負圧状況下にて行う請求項9または10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子、発光部および透明樹脂部材を有する内視鏡および内視鏡の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、先端に対物レンズや照明レンズを備え、人体内に挿入して体腔内を観察しつつ、手元側から先端側に通じる処置具挿通チャンネルを経由して体腔内で処置を行う処置具を導入する内視鏡がある。このような内視鏡を用いた処置としてESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)や、EMR(内視鏡的粘膜切除術)等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、長尺の挿入部の遠位端部に配された基板と、基板に実装された照明光源と、照明光源に電気的に接続され基板に設けられた配線パターンと、配線パターンを覆うように基板上に設けられ光透過性を有し且つ絶縁性を有する被覆部と、被覆部に積層され光透過性を有する封止樹脂と、を備えることを特徴とする内視鏡装置が記載されている。特許文献2には、ハブと、該ハブから延在しているシャフトと、該シャフトから延在している拡張可能な遠位先端部と、該遠位先端部内にありかつ該内視鏡から外の視野を有する画像センサと、該遠位先端部内にありかつ該画像センサの該視野内で発光するように構成された照明要素と、該遠位先端部内にある少なくとも1つの外形可変作業チャネルとを備え、該作業チャネルは、全体に非円形の断面形状から異なる断面形状へと変化して器具の通過に対処するように適合されている電子内視鏡が記載されている。特許文献3には、内視鏡ヘッドと、内視鏡ヘッドの遠位端にある広角レンズと、内視鏡ヘッド内に延びる作業チャンネルとを備える内視鏡であって、広角レンズに隣接して照明手段が内視鏡ヘッドの遠位端に配置されていることが記載されている。特許文献4には、カメラと、カメラを少なくとも横方向に少なくとも部分的に囲い、内視鏡先端部の遠位端に延在する透光性材料から作成されたハウジング素子と、カメラに近接して配置された少なくとも一つの照明部とを備えることを特徴とする内視鏡先端部であって、少なくとも1つの照明部は、遠位側から見たときにカメラの真後ろに配置されていてもよく、ハウジング素子は透明なプラスチック材料又はガラスから作成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-230186号公報
【特許文献2】特表2018-525197号公報
【特許文献3】特表2020-503957号公報
【特許文献4】特表2022-505913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
消化管等の生体内管腔への挿通性を高め、より低侵襲治療を向上させるためには、内視鏡の外径を小さくすることが好ましい。しかし、特許文献1~4に記載されているような内視鏡では細径化が困難であり、改善の余地があった。また、特許文献1~4に記載されているような内視鏡は照明の明るさが十分でないことがあり、体腔内の観察が行いにくいことがあるという問題もあった。
【0006】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、細径であり、体腔内を明るく照らして観察しやすくすることができる内視鏡および内視鏡の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することができた本発明の実施の形態に係る内視鏡は、以下の通りである。
[1]撮像素子と、発光部と、前記発光部から照射される光が通過可能である透明樹脂部材と、を有する内視鏡であって、
前記撮像素子は、前記内視鏡の遠位端に配置され、
前記発光部は、前記撮像素子よりも近位側に配置されており、
前記撮像素子の近位部と前記透明樹脂部材の遠位部とが互いに固定され、前記透明樹脂部材の近位部と前記発光部の遠位部とが互いに固定されており、
前記透明樹脂部材を構成する材料は、紫外線硬化樹脂を含む内視鏡。
[2]前記撮像素子、前記透明樹脂部材、および前記発光部を内腔に収容可能である筒状体をさらに有し、
前記筒状体から前記撮像素子、前記透明樹脂部材、および前記発光部が露出した状態において、前記透明樹脂部材は、外表面に生体内管腔の管壁と接触可能である接触面を有している[1]に記載の内視鏡。
[3]前記透明樹脂部材の内部であって、前記撮像素子よりも近位側かつ前記発光部よりも遠位側に、前記発光部から照射される光を反射する反射材が配置されている[1]または[2]に記載の内視鏡。
[4]前記発光部から照射される光に含まれる紫外線量は、1μW/cm2以下である[1]~[3]のいずれかに記載の内視鏡。
[5]前記発光部の遠位端よりも近位側に被覆チューブをさらに有し、
前記透明樹脂部材の内部に芯材が配置されており、
前記芯材は、少なくとも前記撮像素子の近位端から前記被覆チューブの遠位端よりも近位側まで延在している[1]~[4]のいずれかに記載の内視鏡。
[6]前記撮像素子および前記発光部の少なくとも一方は、前記内視鏡の長手軸方向に垂直な方向へ延在する溝が表面に形成されている[1]~[5]のいずれかに記載の内視鏡。
[7]前記内視鏡の長手軸方向に垂直な断面において、前記撮像素子および前記発光部の断面形状は、矩形であり、前記透明樹脂部材の断面形状は、円形である[1]~[6]のいずれかに記載の内視鏡。
[8]前記透明樹脂部材の表面粗さRaの平均値は、25μm以下である[1]~[7]のいずれかに記載の内視鏡。
【0008】
本発明はまた、内視鏡の製造方法を提供する。本発明の実施形態に係る製造方法は、以下の通りである。
[9]撮像素子と、発光部と、前記発光部から照射される光が通過可能である透明樹脂部材と、を有する内視鏡を製造する方法であって、
熱収縮チューブの内腔に前記撮像素子および前記発光部を配置する工程と、
前記熱収縮チューブを加熱する工程と、
前記熱収縮チューブの内腔に、紫外線照射によって硬化する透明液状樹脂を充填する工程と、
前記透明液状樹脂に紫外線を照射して前記透明樹脂部材を形成する工程と、
前記熱収縮チューブを除去する工程と、を有しており、
前記撮像素子の近位部と前記透明樹脂部材の遠位部とが互いに固定され、前記透明樹脂部材の近位部と前記発光部の遠位部とが互いに固定されている製造方法。
[10]前記熱収縮チューブは、紫外線が通過可能であり、
前記透明液状樹脂に紫外線を照射して前記透明樹脂部材を形成する工程において、前記熱収縮チューブの外方から紫外線の照射を行う[9]に記載の製造方法。
[11]前記熱収縮チューブの内腔に前記透明液状樹脂を充填する工程の前に、前記発光部よりも近位側に被覆チューブを配置する工程と、前記被覆チューブの内腔に前記撮像素子の配線および前記発光部の配線を挿通する工程と、を有し、
前記透明液状樹脂に紫外線を照射して前記透明樹脂部材を形成する工程の前に、前記被覆チューブの遠位端の内腔に前記透明液状樹脂を充填する工程を有している[9]または[10]に記載の製造方法。
[12]前記熱収縮チューブの内腔に前記透明液状樹脂を充填する工程および前記透明液状樹脂に紫外線を照射して前記透明樹脂部材を形成する工程は、負圧状況下にて行う[9]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内視鏡によれば、撮像素子が内視鏡の遠位端に配置され、発光部が撮像素子よりも近位側に配置されており、撮像素子の近位部と透明樹脂部材の遠位部とが互いに固定され、透明樹脂部材の近位部と発光部の遠位部とが互いに固定されており、透明樹脂部材を構成する材料が紫外線硬化樹脂を含むことにより、撮像素子と発光部が内視鏡の長手軸方向に沿って配置され、内視鏡の細径化を図ることが可能となる。また、紫外線硬化樹脂を含み、光が通過可能である透明樹脂部材の遠位部が撮像素子の近位部に固定され、透明樹脂部材の近位部が発光部の遠位部に固定されていることにより、発光部から照射される光を撮像素子の方向へ照射することができ、体腔内を明るく照らして観察しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態における内視鏡の遠位部の拡大平面図を表す。
【
図2】
図1に示した内視鏡のII-II断面図を表す。
【
図3】
図1に示した内視鏡のIII-III断面図を表す。
【
図4】
図1に示した内視鏡のIV-IV断面図を表す。
【
図5】本発明の一実施の形態における熱収縮チューブの内腔に撮像素子および発光部を配置する工程の模式図(一部断面図)を表す。
【
図6】本発明の一実施の形態における熱収縮チューブを加熱する工程の模式図(一部断面図)を表す。
【
図7】本発明の一実施の形態における熱収縮チューブの内腔に透明液状樹脂を充填する工程の模式図(一部断面図)を表す。
【
図8】本発明の一実施の形態における熱収縮チューブを除去する工程の模式図を表す。
【
図9】本発明の一実施の形態における被覆チューブの内腔に撮像素子の配線および発光部の配線を配置する工程の模式図(一部断面図)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
まず、本発明の内視鏡について説明する。
図1は本発明の一実施の形態における内視鏡1の遠位部の拡大平面図であり、
図2、
図3および
図4は内視鏡1の断面図である。詳細には、
図2は内視鏡1の長手軸方向に垂直な透明樹脂部材30の断面図であり、
図3は内視鏡1の長手軸方向に垂直な撮像素子10の断面図であり、
図4は内視鏡1の長手軸方向に垂直な発光部20の断面図である。
【0013】
本発明において、近位側とは内視鏡1の延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、即ち処置対象側を指す。また、内視鏡1の延在方向を長手軸方向と称する。なお、
図1において、図の右側が近位側であり、図の左側が遠位側である。
【0014】
図1に示すように、本発明の内視鏡1は、撮像素子10と、発光部20と、発光部20から照射される光が通過可能である透明樹脂部材30と、を有している。
【0015】
内視鏡1は、例えば、食道、胃、小腸、大腸等の消化管、冠動脈等の血管、胸腔、気管支等の呼吸器、膀胱、腎盂等の泌尿器、膵臓、胆道等の生体内管腔を観察できるものであることが好ましい。
【0016】
また、内視鏡1は、使い捨て(ディスポーザブル)内視鏡であることが好ましい。内視鏡1が使い捨てのものであることにより、内視鏡1を介した被観察者の感染を防止することができ、安全性を向上させることが可能となる。
【0017】
撮像素子10は、被写体の光を電気信号等に変換して出力するものである。撮像素子10としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等が挙げられる。撮像素子10の配線110を介して撮像素子10からの電気信号を例えば外部のビデオプロセッサ等の画像表示機に伝達することにより、画像表示機にて体内の映像を確認することができる。
【0018】
図1に示すように、撮像素子10は、内視鏡1の遠位端1dに配置されている。撮像素子10が内視鏡1の遠位端1dに配置されていることにより、内視鏡1の遠位端1dが配置されている箇所よりも遠位側を観察することができる。
【0019】
撮像素子10には、レンズが設けられていることが好ましい。撮像素子10にレンズが設けられている場合、内視鏡1の遠位端1dに撮像素子10のレンズが位置していることが好ましい。撮像素子10にレンズが設けられていることにより、被写体の光を集めやすくなり、内視鏡1による生体内管腔の観察が行いやすくなる。
【0020】
発光部20は、光を照射するものである。発光部20としては、例えば、発光ダイオード(LED)、キセノンランプ、有機発光ダイオード(有機EL)等の光源や、光ファイバーのコア等を用いることができる。
【0021】
図示していないが、発光部20としてLEDやキセノンランプ、有機EL等の光源が用いられる場合、発光部20の配線120を介して、発光部20に電気を供給する電源装置が発光部20に接続されている構成とすることができる。発光部20が配線120を介して電源装置に接続されていることにより、電気が電源装置から配線120を介して発光部20である光源に供給されて光源を発光させて、発光部20が光を照射することが可能となる。
【0022】
図示していないが、発光部20として光ファイバーが用いられる場合、LEDやキセノンランプ、有機EL等の光源装置に光ファイバーの一方端が接続されていることが好ましい。光ファイバーの一方端が光源装置に接続されていることにより、光源装置から射出された光が光ファイバーの一方端から入射し、入射した光が光ファイバーのコアを通って、光ファイバーの他方端から射出され、発光部20が光を照射することが可能となる。
【0023】
図示していないが、発光部20として光ファイバーが用いられる場合、光源装置に接続されている光ファイバーの一方端は、光ファイバーの他方端よりも近位側にあることが好ましい。光ファイバーの一方端が他方端よりも近位側にあることにより、光ファイバーの一方端から入射した光源装置の光が遠位側へ伝えられ、内視鏡1の遠位端1dが配置されている箇所よりも遠位側を照らして観察しやすくすることができる。
【0024】
図1に示すように、発光部20は、撮像素子10よりも近位側に配置されている。発光部20が撮像素子10よりも近位側に配置されていることにより、撮像素子10の近位側から遠位側に向かって発光部20が光を照射することができる。そのため、撮像素子10が被写体の光を取り込みやすく、内視鏡1による体腔内の観察を行いやすくすることができる。
【0025】
発光部20から照射される光は、可視光線であることが好ましい。つまり、発光部20から照射される光の波長は、360nm以上830nm以下であることが好ましい。これは、発光部20から照射される光に360nm以上830nm以下の波長の光が含まれていることが好ましいことを意味するものである。例えば、発光部20は、一時的に360nm未満の波長の光を射出してもよく、また、一時的に830nm超の波長の光を射出してもよい。中でも、発光部20から照射される光は、360nm以上830nm以下の波長の光のみであることがより好ましい。発光部20から照射される光が360nm以上830nm以下の波長の光のみであることにより、体腔内の観察が行いやすい内視鏡1とすることが可能となる。
【0026】
透明樹脂部材30は、発光部20から照射される光が通過可能である。本発明において、透明とは光が透過することを意味する。透明樹脂部材30は、光が通過可能であれば、透明であってもよく、半透明であってもよい。
【0027】
透明樹脂部材30は、光透過性を有するものであれば、無着色であってもよく、着色されていてもよい。中でも、透明樹脂部材30は、無着色であることが好ましい。透明樹脂部材30が無着色であることにより、発光部20から照射され、透明樹脂部材30を通過した光に色がつかず、体腔内の観察を行いやすくすることが可能となる。
【0028】
中でも、透明樹脂部材30は、発光部20から照射される可視光の70%以上が透過可能であることが好ましく、75%以上が透過可能であることがより好ましく、80%以上が透過可能であることがさらに好ましい。透明樹脂部材30が透過可能である可視光線の割合の下限値を上記の範囲に設定することにより、発光部20から照射された光の通過を透明樹脂部材30が妨げにくくなり、体腔内を明るく照らしやすくすることができる。なお、透明樹脂部材30が透過可能である可視光線の割合の上限値は特に限定されず、例えば、100%以下(100%を含む)とすることができる。
【0029】
図1に示すように、撮像素子10の近位部と透明樹脂部材30の遠位部とが互いに固定され、透明樹脂部材30の近位部と発光部20の遠位部とが互いに固定されている。なお、各部材の遠位部とは各部材のうちの遠位側半分を指し、各部材の近位部とは各部材のうちの近位側半分を指す。撮像素子10の近位部と透明樹脂部材30の遠位部とが互いに固定され、透明樹脂部材30の近位部と発光部20の遠位部とが互いに固定されていることにより、内視鏡1の遠位端部において、撮像素子10および発光部20が内視鏡1の長手軸方向に沿って配置されることとなる。そのため、内視鏡1の遠位端部の細径化を図ることが可能となる。
【0030】
透明樹脂部材30の遠位端30dは、撮像素子10の近位端10pよりも遠位側に位置していることが好ましい。つまり、撮像素子10の外方に透明樹脂部材30が存在していることが好ましい。透明樹脂部材30の遠位端30dが撮像素子10の近位端10pよりも遠位側に位置していることにより、撮像素子10の近位端10pにおいて、撮像素子10の周囲に透明樹脂部材30が存在することとなる。そのため、撮像素子10の外表面と透明樹脂部材30とが接触する面積を増加させて接合強度を高めやすく、撮像素子10が脱落しにくい内視鏡1とすることができる。
【0031】
透明樹脂部材30の遠位端30dは、少なくとも撮像素子10の遠位端10dまで存在していることが好ましい。透明樹脂部材30の遠位端30dが、少なくとも撮像素子10の遠位端10dまで存在していることにより、撮像素子10の外表面の全体が透明樹脂部材30と接しやすくなり、撮像素子10と透明樹脂部材30との接合強度が高まりやすくなる。
【0032】
透明樹脂部材30の近位端30pは、発光部20の遠位端20dよりも近位側に位置していることが好ましい。つまり、発光部20の外方に透明樹脂部材30が存在していることが好ましい。透明樹脂部材30の近位端30pが発光部20の遠位端20dよりも近位側に位置していることにより、発光部20の遠位端20dにおいて、発光部20の周囲に透明樹脂部材30が存在することとなる。その結果、発光部20の外表面と透明樹脂部材30とが接する面積を増やすことができ、発光部20と透明樹脂部材30との接合強度を高めて、発光部20の脱落を防止することが可能となる。
【0033】
透明樹脂部材30の近位端30pは、少なくとも発光部20の近位端20pまで存在していることが好ましい。透明樹脂部材30の近位端30pが、少なくとも発光部20の近位端20pまで存在していることにより、発光部20の外表面の全体が透明樹脂部材30と接触しやすく、発光部20と透明樹脂部材30との接合強度を高めやすくすることができる。
【0034】
透明樹脂部材30を構成する材料は、紫外線硬化樹脂を含む。透明樹脂部材30を構成する材料が紫外線硬化樹脂を含んでいることにより、透明樹脂部材30の強度を高めながら、光を通過させることが可能となる。
【0035】
透明樹脂部材30を構成する材料は、紫外線硬化樹脂を85%以上含有していることが好ましく、90%以上含有していることがより好ましく、95%以上含有していることがさらに好ましい。透明樹脂部材30を構成する材料における紫外線硬化樹脂の含有量の下限値を上記の範囲に設定することにより、内視鏡1の遠位端部の強度を高めやすくすることができる。なお、透明樹脂部材30を構成する材料における紫外線硬化樹脂の含有量の上限値は特に限定されないが、例えば、100%以下(100%を含む)とすることができる。透明樹脂部材30を構成する材料が紫外線硬化樹脂を100%含有していることは、透明樹脂部材30が不可避的不純物や不可避的混入物以外、紫外線硬化樹脂から構成されていることを意味する。透明樹脂部材30を構成する材料は、紫外線硬化樹脂であることが最も好ましい。
【0036】
紫外線硬化樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。詳細には、紫外線硬化樹脂として、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂等を用いることができる。中でも、紫外線硬化樹脂は、エポキシ系樹脂であることが好ましい。紫外線硬化樹脂がエポキシ系樹脂であることにより、透明樹脂部材30の透明度を高め、光が通過しやすい透明樹脂部材30とすることができる。その結果、発光部20によって体腔内を明るく照らすことができ、体腔内の観察がしやすい内視鏡1とすることが可能となる。
【0037】
図1に示すように、内視鏡1は、撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20を内腔に収容可能である筒状体40をさらに有していることが好ましい。内視鏡1が筒状体40を有していることにより、細径の内視鏡1であっても筒状体40によって剛性を高めることができる。そのため、体腔内の目的部位まで内視鏡1を挿通する際等において、撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20を筒状体40の内腔に収容した状態で体腔内に内視鏡1を挿入することによって、内視鏡1のプッシャビリティが高まり、体腔内への内視鏡1の挿通を行いやすくすることができる。
【0038】
筒状体40は、一方端と他方端とを有し、内腔を有している長尺物である。筒状体40の内腔に、撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20を収容することが可能であることが好ましい。
【0039】
筒状体40の延在方向に垂直な断面における筒状体40の外形の断面形状としては、例えば、円形、多角形、またはこれらを組み合わせた形状等が挙げられる。中でも、筒状体40の延在方向に垂直な断面における筒状体40の外形の断面形状は、円形であることが好ましい。筒状体40の外形の断面形状が円形であることにより、筒状体40の外表面が滑らかなものとなり、筒状体40の外表面が生体内管腔の管壁等に接触しても傷付けにくくすることができる。
【0040】
また、筒状体40の延在方向に垂直な断面における筒状体40の内腔の断面形状は、円形であることが好ましい。筒状体40の内腔の断面形状が円形であることにより、筒状体40の内腔の表面が滑らかになり、撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20に対する筒状体40の摺動性を高めやすくなる。
【0041】
筒状体40が有している内腔の数は、1つであってもよいが、複数であることが好ましい。筒状体40が複数の内腔を有していることにより、内視鏡1によって体腔内の観察を行いながら、体腔内の生体組織等の処置対象物への薬剤の注入、処置対象物の採取、把持、絞扼、切開、切除、加熱、焼灼、光治療、超音波治療、衝撃波治療等の各種治療を行うために用いられる処置具を体腔内に搬送し、使用することが可能となる。
【0042】
筒状体40を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEE
K等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。筒状体40は、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。筒状体40が複層構造である場合、例えば、筒状体40を構成する樹脂チューブの中間層として、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属編組を用いた構造とすることができる。筒状体40を構成する材料は、フッ素系樹脂であることが好ましく、PTFEであることがより好ましい。筒状体40を構成する材料がフッ素系樹脂であることにより、外表面のすべり性が向上し、また、適度な剛性を付与することができるため、体腔内への挿通性がよい内視鏡1とすることができる。
【0043】
筒状体40の長手軸方向の長さは、内視鏡1を用いた治療等に適切な長さを選択することができる。例えば、筒状体40の長手軸方向の長さは、500mm以上2000mm以下とすることができる。なお、筒状体40の長手軸方向の長さとは、筒状体40の遠位端40dから筒状体40の近位端までの長さを示す。
【0044】
図1に示すように、筒状体40から撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20が露出した状態において、透明樹脂部材30は、外表面に生体内管腔の管壁と接触可能である接触面を有していることが好ましい。撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20が筒状体40から露出した状態とは、撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20が筒状体40の遠位端40dよりも遠位側に位置しており、撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20が筒状体40の内腔に配置されていない状態を指す。筒状体40から撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20が露出した状態において、透明樹脂部材30がその外表面に、生体内管腔の管壁と接触可能である接触面を有していることにより、撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20がむき出しの状態となる。撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20がむき出しであることにより、内視鏡1を生体内管腔に配置した際に、撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20と生体内管腔の管壁との間に他物が存在しないこととなる。その結果、発光部20から照射される光が他物によって遮られにくくなって生体内管腔の管壁を明るく照らすことができるため、撮像素子10による体腔内の観察を行いやすくすることができる。
【0045】
図1に示すように、透明樹脂部材30の内部であって、撮像素子10よりも近位側かつ発光部20よりも遠位側に、発光部20から照射される光を反射する反射材50が配置されていることが好ましい。つまり、透明樹脂部材30の内部であり、内視鏡1の長手軸方向における撮像素子10と発光部20との間に反射材50が配置されていることが好ましい。透明樹脂部材30の内部であって撮像素子10の近位端10pよりも近位側かつ発光部20の近位端20pよりも遠位側に反射材50が配置されていることにより、発光部20から撮像素子10に向かって照射された光を反射材50が反射することができる。発光部20から撮像素子10に向かって照射された光は撮像素子10によって遮られやすく、内視鏡1の遠位端1dよりも遠位側を照らす効果には寄与しにくい傾向にある。しかし、発光部20から撮像素子10に向かって照射された光が反射材50によって反射されることにより反射光が様々な方向に拡散されやすくなる。その結果、内視鏡1の遠位端部の周囲に光を照射することができるため、体腔内を明るく照らすことが可能となり、体腔内の観察が行いやすくなる。
【0046】
反射材50の表面は、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、二酸化チタン、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、またはフッ化マグネシウム等から構成することができる。中でも、反射材50の反射面の表面は、アルミニウムから構成されていることが好ましい。反射材50の反射面の表面がアルミニウムから構成されていることにより、反射材50が取り扱いやすくなり、内視鏡1の製造や使用時における安全性を向上させることができる。
【0047】
反射材50の形状は、特に限定されないが、例えば、板状、円柱状、多角柱状、円筒、多角筒、円錐台の筒形状、多角錐台の筒形状等の形状にすることができる。中でも、反射材50の形状は、
図1に示すように、円錐台の筒形状であることが好ましい。反射材50の形状が円錐台の筒形状であることにより、発光部20から照射される光を反射材50が反射しやすくしながら、反射材50の大きさが大きくなりすぎず、内視鏡1の遠位端部を細径なものとすることが可能となる。
【0048】
反射材50の形状が円錐台や多角錐台の筒形状である場合、
図1に示すように、反射材50は、発光部20の遠位端部の外方に配置されており、かつ、反射面が遠位側を向くように配置されていることが好ましい。円錐台や多角錐台の筒形状である反射材50が、発光部20の遠位端部の外方であって、反射面が遠位側を向くように配置されていることにより、発光部20から照射された光を反射材50が反射しやすくなり、反射光が様々な方向に拡散されやすくなる。
【0049】
発光部20から照射される光に含まれる紫外線量は、1μW/cm2以下であることが好ましい。発光部20から照射される光に含まれる紫外線量が1μW/cm2以下であることにより、内視鏡1の使用時等において発光部20が光を照射した際に、紫外線硬化樹脂を含んでいる透明樹脂部材30に照射される紫外線量を低減することができる。その結果、透明樹脂部材30が再度硬化されにくくなり、透明樹脂部材30が過度に硬化されて脆くなることを防止することや、透明樹脂部材30が曲がった状態になる等の変形したままとなってしまうことを防止する効果を得ることができる。
【0050】
発光部20から照射される光に含まれる紫外線量は、1μW/cm2以下であることが好ましく、0.9μW/cm2以下であることがより好ましく、0.8μW/cm2以下であることがさらに好ましい。発光部20から照射される光に含まれる紫外線量の上限値を上記の範囲に設定することにより、発光部20が光を照射した際に透明樹脂部材30に照射される紫外線量を減らしやすくすることができる。なお、発光部20から照射される光に含まれる紫外線量の下限値は特に限定されないが、例えば、0μW/cm2以上(0μW/cm2を含む)とすることができる。
【0051】
図1に示すように、発光部20の遠位端20dよりも近位側に被覆チューブ60を有していることが好ましい。発光部20の遠位端20dよりも近位側に被覆チューブ60を有していることにより、発光部20の遠位端20dよりも近位側において、内視鏡1の外表面の摺動性を高めることができ、内視鏡1の挿通性を向上させることが可能となる。
【0052】
被覆チューブ60を構成する材料は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、被覆チューブ60を構成する材料は、ポリアミド系樹脂であることが好ましい。被覆チューブ60を構成する材料がポリアミド系樹脂であることにより、被覆チューブ60の滑り性が高まる。
【0053】
図1および
図2に示すように、透明樹脂部材30の内部に芯材70が配置されており、芯材70は、少なくとも撮像素子10の近位端10pから被覆チューブ60の遠位端60dよりも近位側まで延在していることが好ましい。芯材70が、透明樹脂部材30の内部に配置されており、少なくとも撮像素子10の近位端10pから被覆チューブ60の遠位端60dよりも近位側まで延在していることにより、芯材70によって内視鏡1の遠位端部の剛性が高まり、内視鏡1の挿通性を高めることが可能となる。
【0054】
芯材70は、撮像素子10の配線110および発光部20の配線120の少なくとも一方であってもよい。芯材70が、撮像素子10の配線110および発光部20の配線120の少なくとも一方であることは、撮像素子10の配線110および発光部20の配線120の少なくとも一方が芯材70を兼ねていることを意味する。芯材70が撮像素子10の配線110や発光部20の配線120であることにより、内視鏡1を構成する部材の数を減らすことができ、内視鏡1の外径を小さくすることができる。撮像素子10の配線110および発光部20の配線120の少なくとも一方を芯材70とするには、例えば、撮像素子10の配線110および発光部20の配線120の少なくとも一方の被覆を厚くすることや、被覆を構成する材料として硬度が高いものを使用する等して、配線110、120の剛性を高めることが挙げられる。
【0055】
また、芯材70は、内視鏡1の遠位端部を屈曲させるためのプルワイヤであってもよい。具体的には、芯材70の遠位部は、撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20の少なくとも1つに固定されており、芯材70の近位部は、少なくとも内視鏡1の近位部まで延在していることが好ましい。芯材70の遠位部が撮像素子10、透明樹脂部材30、および発光部20の少なくとも1つに固定されており、芯材70の近位部が少なくとも内視鏡1の近位部まで延在していることにより、芯材70を近位側に引くことによって内視鏡1の遠位端部を屈曲させることが可能となる。その結果、体腔内における内視鏡1の遠位端部の位置を制御しやすく、体腔内の観察が行いやすくなる。
【0056】
内視鏡1が有している芯材70の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。内視鏡1が有している芯材70の数が1つであることにより、内視鏡1を構成する部材の数を減らすことができ、内視鏡1の細径化を図ることができる。内視鏡1が有している芯材70の数が複数であることにより、例えば、一の芯材70を近位側へ引っ張ることにより内視鏡1の遠位端部が一の方向へ曲がり、一の芯材70とは異なる他の芯材70を近位側へ引っ張ることにより内視鏡1の遠位端部が一の方向とは異なる他の方向へ曲がることが可能となる。そのため、内視鏡1の遠位端部の位置の制御が行いやすい内視鏡1とすることが可能となる。
【0057】
図3および
図4に示すように、撮像素子10および発光部20の少なくとも一方は、その表面に溝80が形成されていることが好ましい。撮像素子10および発光部20の少なくとも一方の表面に溝80が形成されていることにより、撮像素子10や発光部20と透明樹脂部材30とが接触する面積が増える。そのため、撮像素子10や発光部20と透明樹脂部材30との接合強度を高めることができ、撮像素子10や発光部20が透明樹脂部材30から脱落しにくくすることができる。
【0058】
撮像素子10および発光部20の少なくとも一方の表面に形成されている溝80としては、内視鏡1の長手軸方向に沿う方向に延在するもの、内視鏡1の長手軸方向に垂直な方向に延在するもの、内視鏡1の長手軸方向に対して斜めの方向に延在するもの等が挙げられる。また、溝80は、直線状に延在していてもよく、曲線状に延在していてもよい。さらに、溝80は、撮像素子10および発光部20の少なくとも一方の表面に、連続的に形成されていてもよく、断続的に形成されていてもよい。
【0059】
中でも、撮像素子10および発光部20の少なくとも一方は、内視鏡1の長手軸方向に垂直な方向へ延在する溝80が表面に形成されていることが好ましい。内視鏡1の長手軸方向に垂直な方向へ延在する溝80が撮像素子10および発光部20の少なくとも一方の表面に形成されていることにより、内視鏡1の遠位端部が屈曲した際にも、撮像素子10や発光部20と透明樹脂部材30との接合を強固なものとすることができ、透明樹脂部材30から撮像素子10や発光部20を脱落しにくいものとすることが可能となる。
【0060】
撮像素子10および発光部20の少なくとも一方に形成されている溝80の数は、複数であることが好ましい。溝80の数が複数であることにより、透明樹脂部材30と接する撮像素子10や発光部20の面積を増加させることができ、撮像素子10や発光部20と透明樹脂部材30との接合強度が高まりやすくなる。撮像素子10および発光部20の少なくとも一方に形成されている溝80の数が複数である場合、それぞれの溝80の幅や深さ、長さ、延在方向は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0061】
溝80は、撮像素子10および発光部20の表面に形成されていることが好ましい。つまり、撮像素子10と発光部20の両方の表面に溝80が形成されていることが好ましい。撮像素子10および発光部20の表面に溝80が形成されていることにより、撮像素子10と発光部20の両方において透明樹脂部材30と接する面積を増加させ、撮像素子10と発光部20の両方を透明樹脂部材30から脱落しにくくすることができる。
【0062】
図2~
図4に示すように、内視鏡1の長手軸方向に垂直な断面において、撮像素子10および発光部20の断面形状は、矩形であり、透明樹脂部材30の断面形状は、円形であることが好ましい。撮像素子10および発光部20の断面形状が矩形であることにより、撮像素子10および発光部20の表面と透明樹脂部材30とが接触する面積を増やすことができ、撮像素子10および発光部20と透明樹脂部材30との接合強度を高めて、透明樹脂部材30から撮像素子10および発光部20を脱落しにくくすることができる。透明樹脂部材30の断面形状が円形であることにより、透明樹脂部材30の表面が滑らかなものとなり、透明樹脂部材30が生体内管腔の管壁等の他物に接触した際でも他物を傷つけにくくし、安全性の高い内視鏡1とすることができる。
【0063】
なお、内視鏡1の長手軸方向に垂直な断面における撮像素子10の断面形状の確認において、撮像素子10の表面に溝80が形成されている場合、溝80はないものとして断面形状の確認を行うこととする。つまり、例えば、撮像素子10の表面に、内視鏡1の長手軸方向に垂直な方向へ延在する溝80が形成されている場合、
図3において破線にて示すように、溝80の窪みを埋めた状態にて断面形状を確認することとする。発光部20についても同様に、内視鏡1の長手軸方向に垂直な断面における発光部20の断面形状の確認において、発光部20の表面に溝80が形成されている場合、溝80はないものとして断面形状の確認を行うこととする。
【0064】
透明樹脂部材30の表面粗さRaの平均値は、25μm以下であることが好ましい。なお、透明樹脂部材30の表面粗さRaは、透明樹脂部材30の外周面の長手軸方向における粗さ曲線の基準長さ間での算術平均粗さRaである。算術平均粗さRaは、JIS B 0601(2001)に規定される算術平均粗さRaに相当し、JIS B 0633(2001)に準じて測定される。算術平均粗さRaの測定には、JIS B 0651(2001)に規定される測定器を用いる。また、透明樹脂部材30の表面粗さRaの平均値は、透明樹脂部材30において、内視鏡1の長手軸方向に並ぶように設定された10点以上の測定点での表面粗さRaの値の平均値である。
【0065】
透明樹脂部材30の表面粗さRaの平均値が25μm以下であることにより、透明樹脂部材30の表面が滑らかなものとなる。そのため、生体内管腔の管壁等の他物に透明樹脂部材30が接触しても他物を傷つけにくくすることができ、内視鏡1の安全性を高めることが可能となる。
【0066】
透明樹脂部材30の表面粗さRaの平均値は、25μm以下であることが好ましく、23μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。透明樹脂部材30の表面粗さRaの平均値の上限値を上記の範囲に設定することにより、透明樹脂部材30の表面を平滑なものとすることができる。なお、透明樹脂部材30の表面粗さRaの平均値の下限値は特に限定されないが、例えば、0μm以上(0μmを含む)、0.5μm以上、1μm以上とすることができる。
【0067】
次に、本発明の内視鏡の製造方法について説明する。なお、内視鏡の製造方法の説明において、上記の内視鏡の説明と重複する部分は説明を省略する。
図5は本発明の一実施の形態における熱収縮チューブ100の内腔に撮像素子10および発光部20を配置する工程の模式図(一部断面図)であり、
図6は熱収縮チューブ100を加熱する工程の模式図(一部断面図)であり、
図7は熱収縮チューブ100の内腔に透明液状樹脂31を充填する工程の模式図(一部断面図)であり、
図8は熱収縮チューブ100を除去する工程の模式図(一部断面図)であり、
図9は被覆チューブ60の内腔に撮像素子10の配線110および発光部20の配線120を配置する工程の模式図(一部断面図)である。
【0068】
図5に示すように、内視鏡1を製造する方法は、熱収縮チューブ100の内腔に撮像素子10および発光部20を配置する工程を有している。以下、この工程を配置工程と称することがある。撮像素子10は、発光部20よりも遠位側に位置するように熱収縮チューブ100の内腔に配置する。
【0069】
配置工程において、熱収縮チューブ100の内腔であって、撮像素子10と発光部20との間に反射材50を配置してもよい。
【0070】
図6に示すように、内視鏡1を製造する方法は、熱収縮チューブ100を加熱する工程を有している。以下、この工程を加熱工程と称することがある。熱収縮チューブ100を加熱することにより、熱収縮チューブ100が縮径する。
【0071】
加熱工程は、配置工程の後に行うことが好ましい。つまり、熱収縮チューブ100の内腔に撮像素子10および発光部20を配置した後に、熱収縮チューブ100を加熱する。加熱工程を配置工程の後に行うことにより、縮径した熱収縮チューブ100によって撮像素子10と発光部20との位置を仮固定することが行いやすくなる。
【0072】
図7に示すように、内視鏡1を製造する方法は、熱収縮チューブ100の内腔に、紫外線照射によって硬化する透明液状樹脂31を充填する工程を有している。以下、この工程を充填工程と称することがある。充填工程において、熱収縮チューブ100の内腔に配置されている撮像素子10および発光部20と透明液状樹脂31とが接触する。
【0073】
充填工程は、加熱工程の後に行うことが好ましい。充填工程を加熱工程の後に行うことにより、透明液状樹脂31が意図しない箇所に流れ込むことを防ぐことができ、内視鏡1の製造効率を高めることが可能となる。
【0074】
充填工程の前に、熱収縮チューブ100を撮像素子10が配置されている側へ移動させる工程を有していることが好ましい。なお、熱収縮チューブ100を撮像素子10側へ移動させた後であっても、熱収縮チューブ100の内腔に撮像素子10および発光部20が配置されている状態であることが好ましい。充填工程の前に熱収縮チューブ100を撮像素子10側へ移動させる工程を有していることにより、充填工程において熱収縮チューブ100の発光部20が配置されている側から熱収縮チューブ100の内腔に透明液状樹脂31を流し込みやすくなり、透明液状樹脂31が撮像素子10を超えて流れ込んで内視鏡1が製造不良となることや、必要以上に透明液状樹脂31を流し込んでしまうことが生じにくくなる。そのため、内視鏡1の製造を効率的に行うことができる。また、内視鏡1が、発光部20の遠位端20dよりも近位側に被覆チューブ60を有している場合、充填工程の前に熱収縮チューブ100を撮像素子10側へ移動させる工程を有していることにより、被覆チューブ60の内腔へも透明液状樹脂31が充填されやすくなる。
【0075】
内視鏡1を製造する方法は、透明液状樹脂31に紫外線を照射して透明樹脂部材30を形成する工程を有している。以下、この工程を形成工程と称することがある。形成工程は、充填工程の後に行う。つまり、熱収縮チューブ100の内腔に透明液状樹脂31を充填した後に透明液状樹脂31に紫外線を照射することによって、透明液状樹脂31が硬化し、透明樹脂部材30を形成することができる。
【0076】
図8に示すように、内視鏡1を製造する方法は、熱収縮チューブ100を除去する工程を有している。以下、この工程を除去工程と称することがある。除去工程は、形成工程の後に行う。形成工程において、熱収縮チューブ100の内腔に充填されている透明液状樹脂31を紫外線照射によって硬化させて透明樹脂部材30を形成する。つまり、形成工程によって形成された透明樹脂部材30の外方には、熱収縮チューブ100が存在している。内視鏡1において、透明樹脂部材30の外方に熱収縮チューブ100があると、発光部20から照射される光が透明樹脂部材30を通過しにくくなることや、透明樹脂部材30の外表面の摺動性が低下して生体内管腔への通過性が低下するおそれがあるため、除去工程において、透明樹脂部材30の外方に存在している熱収縮チューブ100を除去する。
【0077】
除去工程において熱収縮チューブ100を除去する方法としては、例えば、ナイフ等を用いて熱収縮チューブ100に切り込みを入れて熱収縮チューブ100を除去すること、ヤスリ等を用いて熱収縮チューブ100を削り取ること、熱収縮チューブ100を融解する流体に熱収縮チューブ100を接触させること等が挙げられる。
【0078】
図8に示すように、内視鏡1の製造方法において、配置工程、加熱工程、充填工程、形成工程、および除去工程を有していることにより、撮像素子10の近位部と透明樹脂部材30の遠位部とが互いに固定され、透明樹脂部材30の近位部と発光部20の遠位部とが互いに固定されている内視鏡1を製造することができる。撮像素子10の近位部と透明樹脂部材30の遠位部とが互いに固定され、透明樹脂部材30の近位部と発光部20の遠位部とが互いに固定されていることにより、内視鏡1の長手軸方向に沿って撮像素子10および発光部20が配置されることとなる。そのため、遠位端部が細径である内視鏡1を製造することができる。
【0079】
熱収縮チューブ100は、紫外線が通過可能であり、透明液状樹脂31に紫外線を照射して透明樹脂部材30を形成する工程において、熱収縮チューブ100の外方から紫外線の照射を行うことが好ましい。形成工程において、熱収縮チューブ100の外方から紫外線の照射を行うことにより、熱収縮チューブ100の内腔に充填されている透明液状樹脂31に紫外線を照射することが行いやすくなり、透明樹脂部材30の形成が行いやすくなる。その結果、形成工程の効率を向上させることが可能となる。
【0080】
熱収縮チューブ100は、紫外線が通過可能であることが好ましい。中でも、熱収縮チューブ100は、照射された紫外線の50%以上が透過可能であることが好ましく、60%以上が透過可能であることがより好ましく、70%以上が透過可能であることがさらに好ましい。熱収縮チューブ100が透過可能である紫外線の割合の下限値を上記の範囲に設定することにより、透明液状樹脂31に紫外線を照射して透明液状樹脂31を硬化させて透明樹脂部材30を形成することにかかる時間を短縮することができ、形成工程の効率を高めることができる。なお、透熱収縮チューブ100が透過可能である紫外線の割合の上限値は特に限定されず、例えば、100%以下(100%を含む)とすることができる。
【0081】
図9に示すように、内視鏡1の製造方法は、熱収縮チューブ100の内腔に透明液状樹脂31を充填する工程の前に、発光部20よりも近位側に被覆チューブ60を配置する工程と、被覆チューブ60の内腔に撮像素子10の配線110および発光部20の配線120を挿通する工程と、を有し、透明液状樹脂31に紫外線を照射して透明樹脂部材30を形成する工程の前に、被覆チューブ60の遠位端60dの内腔に透明液状樹脂31を充填する工程を有していることが好ましい。以下、発光部20よりも近位側に被覆チューブ60を配置する工程を被覆チューブ配置工程と称し、被覆チューブ60の内腔に撮像素子10の配線110および発光部20の配線120を挿通する工程を配線挿通工程と称し、被覆チューブ60の遠位端60dの内腔に透明液状樹脂31を充填する工程を被覆チューブ内充填工程と称することがある。
【0082】
つまり、内視鏡1の製造方法において、被覆チューブ配置工程および配線挿通工程を行ってから充填工程を行うことが好ましく、被覆チューブ内充填工程を行ってから形成工程を行うことが好ましい。被覆チューブ配置工程および配線挿通工程を行ってから充填工程を行うことにより、撮像素子10の配線110および発光部20の配線120の位置を整えやすく、熱収縮チューブ100の内腔に透明液状樹脂31を充填しやすくすることができる。また、被覆チューブ内充填工程を行ってから形成工程を行うことにより、透明樹脂部材30が被覆チューブ60の遠位端60dの内腔まで延在し、透明樹脂部材30と被覆チューブ60との接合強度を高めて透明樹脂部材30が被覆チューブ60から外れにくくすることができる。
【0083】
被覆チューブ配置工程と配線挿通工程の両方とも、充填工程の前に行うことが好ましい。被覆チューブ配置工程は、配線挿通工程の前に行ってもよく、配線挿通工程の後に行ってもよい。つまり、被覆チューブ60の内腔に撮像素子10の配線110および発光部20の配線120を挿通する工程の後に、発光部20よりも近位側に被覆チューブ60を配置する工程を行ってもよく、発光部20よりも近位側に被覆チューブ60を配置する工程の後に、被覆チューブ60の内腔に撮像素子10の配線110および発光部20の配線120を挿通する工程を行ってもよい。
【0084】
被覆チューブ内充填工程は、充填工程の前に行ってもよく、充填工程の後に行ってもよい。つまり、熱収縮チューブ100の内腔に透明液状樹脂31を充填する工程の後に、被覆チューブ60の遠位端60dの内腔に透明液状樹脂31を充填する工程を行ってもよく、被覆チューブ60の遠位端60dの内腔に透明液状樹脂31を充填する工程の後に、熱収縮チューブ100の内腔に透明液状樹脂31を充填する工程を行ってもよい。
【0085】
被覆チューブ内充填工程は、被覆チューブ配置工程および配線挿通工程の後に行うことが好ましい。つまり、発光部20よりも近位側に被覆チューブ60を配置する工程と被覆チューブ60の内腔に撮像素子10の配線110および発光部20の配線120を挿通する工程の後に、被覆チューブ60の遠位端60dの内腔に透明液状樹脂31を充填する工程を行うことが好ましい。被覆チューブ配置工程および配線挿通工程の後に被覆チューブ内充填工程を行うことにより、被覆チューブ60の内腔に撮像素子10の配線110および発光部20の配線120が挿通されている状態にて、被覆チューブ60の遠位端60dの内腔に透明液状樹脂31を充填することになるため、透明液状樹脂31が被覆チューブ60の遠位端60d内腔に留まりやすくすることができる。
【0086】
熱収縮チューブ100の内腔に透明液状樹脂31を充填する工程および透明液状樹脂31に紫外線を照射して透明樹脂部材30を形成する工程は、負圧状況下にて行うことが好ましい。充填工程および形成工程を負圧状況下にて行うことにより、透明液状樹脂31内にある気泡の数や大きさ等を調節することが行いやすくなり、所望の構造の透明樹脂部材30を得やすくなる。
【0087】
また、被覆チューブ60の遠位端60dの内腔に透明液状樹脂31を充填する工程を負圧状況下にて行うことが好ましい。負圧状況下にて被覆チューブ内充填工程を行うことにより、被覆チューブ60の遠位端60dの内腔に充填されている透明液状樹脂31内の気泡の調節が行いやすくなる。
【符号の説明】
【0088】
1:内視鏡
1d:内視鏡の遠位端
10:撮像素子
10d:撮像素子の遠位端
10p:撮像素子の近位端
20:発光部
20d:発光部の遠位端
20p:発光部の近位端
30:透明樹脂部材
30d:透明樹脂部材の遠位端
30p:透明樹脂部材の近位端
31:透明液状樹脂
40:筒状体
40d:筒状体の遠位端
50:反射材
60:被覆チューブ
60d:被覆チューブの遠位端
70:芯材
80:溝
100:熱収縮チューブ
110:撮像素子の配線
120:発光部の配線