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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097238
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】積層体及び化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240710BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20240710BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20240710BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/00 E
B32B23/08
E04F13/07 C
E04F13/07 B
E04F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000668
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】栃木 華恵
(72)【発明者】
【氏名】柏女 恵
(72)【発明者】
【氏名】長島 麻美
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA16
2E220BB02
2E220GA22X
2E220GA30X
2E220GB05X
2E220GB33X
2E220GB35X
2E220GB37X
2E220GB43Y
4F100AK01C
4F100AK04A
4F100AK07C
4F100AK25D
4F100AK51B
4F100AK51D
4F100AP00E
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA02D
4F100CA06C
4F100CA07C
4F100EJ08D
4F100GB07
4F100GB08
4F100HB01B
4F100HB31B
4F100JA07D
4F100JA12D
4F100JB13D
4F100JB14D
4F100JN01C
(57)【要約】
【課題】本開示は、化粧材の外観変化を抑制することができる積層体及び化粧材を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態の化粧シート10は、少なくとも、透明樹脂層1を含む積層体であって、透明樹脂層1は、単層で構成されており、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが、0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、透明樹脂層を含む積層体であって、
前記透明樹脂層は、単層で構成されており、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが、0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
少なくとも、透明樹脂層および表面保護層を含む積層体であって、
前記透明樹脂層は、
複層から構成され、前記表面保護層と接する第一透明樹脂層と、前記第一透明樹脂層と接する第二透明樹脂層とを有し、
前記第一透明樹脂層において、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内であり、
前記第二透明樹脂層において、前記球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする積層体。
【請求項3】
原反の上に少なくとも表面保護層を備える積層体であって、
前記表面保護層は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、平均粒子径(D50)が1.1μmの球形シリカ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする積層体。
【請求項4】
前記表面保護層は、前記エロージョン率Eが0.5μm/g以上3.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記表面保護層は、前記エロージョン率Eが1.0μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項6】
前記表面保護層は熱硬化性樹脂を含有し、当該熱硬化性樹脂は、アクリルポリオールとイソシアネート硬化剤とで構成され、マルテンス硬さが80N/mm以上200N/mm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項7】
前記表面保護層は電離放射線硬化性樹脂を含有し、当該電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であって、質量平均分子量が500以上5,000以下の範囲内であり且つ官能基数が4以上である成分を1種類以上含み、マルテンス硬さが100N/mm以上400N/mm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項8】
原反の上に少なくとも表面保護層と前記表面保護層に隣接する層とを備える積層体であって、
前記表面保護層は、硬化性樹脂組成物で形成され、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定した前記表面保護層のエロージョン率Eと、前記球形シリカ粒子を用いて測定した前記表面保護層に隣接する層のエロージョン率Eとの差分が、5.0μm/g以下である
ことを特徴とする積層体。
【請求項9】
木質基材と、
前記木質基材に貼り合わされた請求項1または請求項2に記載の積層体と、
を備える
ことを特徴とする化粧材。
【請求項10】
化粧材用基材と、
前記化粧材用基材に貼り合わされた請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の積層体と、
を備えることを特徴とする化粧材。
【請求項11】
化粧材用基材と、
前記化粧材用基材に貼り合わされた請求項8に記載の積層体と、
を備えることを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体及び当該積層体を用いた化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
床、天井、壁、玄関ドア等の建築物の内装材又は外装材、扉、窓枠、手摺り、廻り縁、巾木、モール等の建具又は造作部材として、一般的に、鋼板等の金属部材、樹脂部材、木質部材等で構成された被着材に化粧シートを貼りあわせて用いられる。化粧シートは、複数の層を有する積層体として形成されている。また化粧シート(積層体)は、上述のような建築物の内装材、外装材、建具、造作部材の他、キッチン、家具又は家電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、さらに車両の内装材又は外装材等にも幅広く用いられる。
【0003】
従来、例えば内装材に用いる化粧シートとしては、耐傷性向上のため補強層(バッカー層)を備えたものが知られている(例えば、特許文献1)。
また、例えば外装材に用いる化粧シートとしては、耐候性向上のため、積層シートの最表層において紫外線吸収剤やラジカル補捉剤(光安定剤)を添加したものが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-188941号公報
【特許文献2】特開2008-238444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層体としての化粧シートは、上述のように幅広い用途に使用されるが、被着材への貼付け時における加工や、使用中の衝撃、太陽光等といった種々の外部要因の影響により、外観に変化が生じるといった問題が生じることがある。
しかしながら、従来の化粧シートでは、例えば被着材(化粧材用基材)に貼り合わせて使用する際において、上述のような種々の外部要因などによる外観変化を十分に抑制することができないという問題がある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、化粧材の外観変化を抑制することができる積層体及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様による積層体は、少なくとも、透明樹脂層を含む積層体であって、前記透明樹脂層は、単層で構成されており、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが、0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内であることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本開示の他の一態様による積層体は、少なくとも、透明樹脂層および表面保護層を含む積層体であって、前記透明樹脂層は、複層から構成され、前記表面保護層と接する第一透明樹脂層と、前記第一透明樹脂層と接する第二透明樹脂層とを有し、前記第一透明樹脂層において、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内であり、前記第二透明樹脂層において、前記球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内であることを特徴とする。
【0008】
また上記課題を解決するために、本開示のさらに他の一態様による積層体は、原反の上に少なくとも表面保護層を備える積層体であって、前記表面保護層は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、平均粒子径(D50)が1.1μmの球形シリカ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内であることを特徴とする。
また上記課題を解決するために、本開示のさらに他の一態様による積層体は、原反の上に少なくとも表面保護層と前記表面保護層に隣接する層とを備える積層体であって、前記表面保護層は、硬化性樹脂組成物で形成され、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定した前記表面保護層のエロージョン率Eと、前記球形シリカ粒子を用いて測定した前記表面保護層に隣接する層のエロージョン率Eとの差分が、5.0μm/g以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本開示の一態様による化粧材は、木質基材と、前記木質基材に貼り合わされた上記一態様または上記他の一態様の積層体と、を備えることを特徴とする。
また、本開示の他の一態様による化粧材は、化粧材用基材と、前記化粧材用基材に貼り合わされた上記さらに他の一態様の積層体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、化粧材の外観変化を抑制することができる積層体及び化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る化粧シートの概略構成を表す断面図である。
図2】本開示の第1実施形態の第1変形例に係る化粧シートの概略構成を表す断面図である。
図3】本開示の第1実施形態の第2変形例に係る化粧材の一構成例を表す断面図である。
図4】本開示の第1実施形態の第2変形例に係る化粧材の他の構成例を表す断面図である。
図5】本開示の第2実施形態に係る化粧シートの概略構成を表す断面図である。
図6】本開示の第2実施形態の第1変形例に係る化粧材の概略構成を表す断面図である。
図7】本開示の第3実施形態に係る化粧シートの概略構成を表す断面図である。
図8】本開示の第3実施形態の第1変形例に係る化粧材の概略構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態に係る化粧シート及び化粧部材について、図面を参照しつつ説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。本開示の範囲内にあるものであれば、必ずしも図面に示す順に積層してある必要はない。またこの図面に記載されていない層が付加されていても良い。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0013】
1.第1実施形態
本開示の第1実施形態に係る化粧シート(積層体の一例)について説明する。
上述のように、積層体である化粧シートの用途の一例として、床用化粧材がある。
従来、木質系基材からなる板張り用の床用化粧材としては、合板に突き板を貼り、木工機械にて溝加工して、溝部を着色した後、紫外線硬化型塗料を塗布し硬化させたものが知られている。しかしながら、従来の床用化粧材では、突き板が天然木である場合、色のばらつきが生じることがあり、壁や天井、家具との色調の調和が困難であった。
また従来の床用化粧材としては上記の他に、木質系基材の表面に凹状溝を設け、表面に導管着色用合成樹脂塗料を塗布し、凹状溝以外の塗料を除去した後、木目柄の導管凹部を形成し、凹状溝以外の木質系基材表面に透明合成樹脂塗料を塗布する方法で製造したものも知られている。
【0014】
一方、木質系基材上に、基材シート、絵柄模様層、透明樹脂層をこの順に設けた積層体である熱可塑性樹脂化粧シートを積層した床用化粧材も知られている。しかしながら、こうした床用化粧材に用いる化粧シートは、主に居室用に使用され、素足や靴下、スリッパなどの歩行を想定していた。このため、当該化粧シートを用いた床用化粧材を、靴やヒールなどを想定した土足用途の床材に使用する場合、耐傷性能等が劣り、床用化粧材表面に傷がつきやすいという問題点があった。また、硬さ性能を上げるために当該化粧シートの透明樹脂層を硬くすると、床に物を落とした際にひび割れが発生し、耐衝撃性が悪いといった問題点もあった。
このように、従来の床用化粧材に用いられる化粧シートは、耐傷性および耐衝撃性が十分でなく、化粧材表面の傷やひび割れといった外観変化を抑制できないという問題があった。
【0015】
上記事情を鑑み、本開示による第1実施形態に係る化粧シートは、床材性能として必要な耐傷性、耐衝撃性をそれぞれ十分に備え、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧材を提供することを目的とする。
【0016】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、化粧シートにおいて、特定のエロージョン率を有する透明樹脂層を設けることにより、積層体である化粧シートに対し、床材性能として必要な耐傷性、耐衝撃性をそれぞれ十分に付与できることを見出した。これにより、本発明者らは、床材性能として必要な耐傷性、耐衝撃性をそれぞれ十分に備え、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧シートおよびその化粧シートを備えた化粧材を発明するに至った。
以下、図面を参照して本開示の第1実施形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。
【0017】
(エロージョン率Eの測定)
まず、本実施形態において規定する「エロージョン率E」について説明する。
本実施形態におけるエロージョン率Eは、例えば、材料表面精密試験機(マイクロ・スラリージェット・エロージョン試験機、以下MSE試験機、株式会社パルメソ製/装置名ナノ・エム・エス・イー/型式N-MSE-A)を用いて測定される値である。また、エロージョン率Eの具体的な測定方法は、次の通りである。
【0018】
平均粒子径D50=3.0μmの球状(球形)アルミナ粉末を水に分散させて、スラリーの総質量に対して球状アルミナ粉末を3質量%含むスラリーを調製する。化粧シートを台に固定し、その化粧シートと、上記スラリーを噴射するためのノズルとの投射距離を4mmに設定する。ノズルのノズル径は1mm×1mmとする。ノズルから球状アルミナ粉末を含んだスラリーを噴射し、台に固定された化粧シートを表面保護層から順次切削する。この時の噴射強度は、事前に同様の実験条件にて既存の硬さ基準片、SiウエハまたはPMMA基板を切削し、スラリーの噴射量に対する削れた変位(即ち、スラリー1gを吹き付けた際に切削される深さ)から標準投射力Xを求め、その値に基づいて決定される。球状アルミナ粉末を用いた本実施形態では、既存の硬さ基準片HRC-45に対して1.0μm/g削れたときの投射力を標準投射力Xとした。
【0019】
なお、本実施形態におけるエロージョン率Eは、透明樹脂層について測定するものである。したがって、その測定方法において、上述のように表面保護層から順次切削してもよいし、表面保護層を形成する前の透明樹脂層を順次切削してもよい。
【0020】
切削された部分を水で洗浄した後に、切削の深さ、即ちエロージョン深さZを測定する。エロージョン深さZは、例えば、触針式表面形状測定器(株式会社小坂研究所製/型式PU-EU1/触針子先端R=2~10μm/荷重100または200μN/計測倍率10,000~20,000/測長3~5mm/計測速度0.2mm/sec)を用いて測定する。本実施形態では、上述の投射力より算出した投射粒子量X’[g]とエロージョン深さZ[μm]とを用いて、エロージョン率E[μm/g]を算出した。
【0021】
なお、エロージョン率Eは、エロージョン率Eの測定を実施する際、深さ方向に存在する下層のエロージョン率Eの大小に影響を受けないことがわかっている。よって、エロージョン率Eを測定する際には、最表面に位置する表面保護層から順にMSE試験を実施してもよい。
【0022】
(化粧シートの構成)
以下に、本実施形態の化粧シート(積層体の一例)の各構成について説明する。なお、本実施形態では、透明樹脂層が単層の場合を想定して説明する。
【0023】
図1に示す化粧シート10は、複数の層を備える積層体であって、図面上部側から順に、表面保護層4、透明樹脂層1、接着剤層5(感熱接着剤層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、絵柄模様層6、隠蔽層3、原反層7、易接着層8を備えている。原反層7は、化粧シート10の基材となる層であって、基材シートとも称する。
より詳しくは、本実施形態に係る化粧シート10は、透明樹脂層1の一方の面に、絵柄模様層6及び隠蔽層3を設け、透明樹脂層1の他方の面に、表面保護層4を設けた構成の化粧シートである。図1に示すように、化粧シート10は、原反層7の上に透明樹脂層1が設けられ、原反層7と透明樹脂層1との間に接着剤層5および絵柄模様層6が設けられている。これにより、化粧シート10は、透明樹脂層1と原反層7との密着性が良好であり、被着材となる基板の表層を加飾することが可能な表装材として用いることができる。
本実施形態に係る化粧シート10は、少なくとも透明樹脂層1を含む積層体であればよい。例えば化粧シート10は、透明樹脂層1と、表面保護層4、接着剤層5、絵柄模様層6、隠蔽層3、原反層7および易接着層8のうちいずれか一または複数の層を含む積層体であればよい。また、化粧シート10は、少なくとも透明樹脂層1および表面保護層4を含む積層体であってもよい。
【0024】
また、意匠性を向上させるために透明樹脂層1の表面保護層4側の面にエンボス模様を適宜設けてもよい。
また、化粧シート10の総厚は、60μm以上250μm以下の範囲内とすることが好適である。総厚が60μmより薄い場合、化粧シートの性能として求められる隠蔽性(木質基材の下地を隠す性能)や、耐傷性の低減が懸念される。また、総厚が250μmより厚い場合、コストが高くなることや、化粧シートと木質基材とを貼り合わせる際に加工性が低減することが懸念される。
また、本実施形態の化粧シートは、塩化ビニル樹脂を含有していないものが好ましい。非塩化ビニル系樹脂を用いた化粧シートとすることにより、焼却時における有毒ガス等の発生の心配が低減される。
以下、本実施形態の化粧シートを構成する各層の詳細について説明する。
【0025】
(原反層)
原反層(原反)7は、化粧シートに意匠性、耐傷性及び耐後加工性を付与する場合には、例えば、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙などの紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンなどのゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀などの金属箔などから適宜選択して用いてもよい。また、原反層7は、透明樹脂層1と同一の樹脂組成物からなるシートであってもかまわない。上記のなかでもポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィン系の材料を用いることが望ましい。
【0026】
原反層7に含まれるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。
【0027】
原反層7として、ポリオレフィン系材料のような表面が不活性な基材を用いる場合には、原反層7の表裏に、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。さらには、原反層7と絵柄模様層6との間に密着を確保させるためにプライマー層(図示せず)を設けてもよい。
【0028】
化粧シートに隠蔽性を付与したい場合には、原反層7に隠蔽性の着色シートを使用してもよいし、図1に示すように、原反層7の上層であって絵柄模様層6の下層に隠蔽層3を設けてもよい。隠蔽層3については、後述する。原反層7として着色シートを使用する場合は、原反層7を構成する樹脂材料に着色剤を添加して着色することができる。着色剤としては、例えば、無機顔料(酸化チタンやカーボンブラック等)や有機顔料(フタロシアニンブルー等)の他、染料も使用することができる。本実施形態の着色剤は、公知または市販の着色剤から1種類または2種類以上を選択して用いることができ、所望の隠蔽性と意匠性とが得られるように添加量も調整可能である。
【0029】
原反層7には、必要に応じて、例えば、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤、つや消し剤など各種添加剤を加えてもよい。
また原反層7の厚みは、印刷作業性、コストなどを考慮して20μm以上150μm以下の範囲内が好適である。
【0030】
(絵柄模様層)
絵柄模様層6を設ける方法としては、原反層7または透明樹脂層1に、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インキジェット印刷などを行う方法がある。
絵柄模様層6の形成にインキを使用する場合は、当該インキに含まれるバインダーは、例えば、硝化綿、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定すればよい。これらは水性、溶剤系、エマルションタイプのいずれでも問題なく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでも任意に選定可能である。
さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させることも可能である。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いてイソシアネートで硬化させる方法である。
【0031】
絵柄模様層6において、上記バインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤が添加されていてもよい。特によく用いられる顔料には、例えば、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等がある。また、インキの塗布とは別に、各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
絵柄模様層6の厚みは、0.5μm以上10μm以下の範囲内が好適である。
【0032】
(隠蔽層)
隠蔽層3は、絵柄模様層6と同様の印刷方法によって、原反層7上、または透明樹脂層1に形成された絵柄模様層6上に設けることができる。隠蔽層3を施す場合は、例えば、コンマコーター、ナイフコーター、リップコーター、金属蒸着あるいはスパッタ法等を用いてもよい。なお、隠蔽層3は、一般的には、原反層7の上層であって絵柄模様層6の下層に設けられる。
隠蔽層3に使用される材料も基本的には絵柄模様層6と同じ材料でよい。隠蔽層3は、その目的として隠蔽性を持たせる必要があるために、顔料として、例えば、不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また、隠蔽性を向上させるために、例えば、金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。塗布厚み、即ち隠蔽層3の厚みは、2μmに満たない場合には隠蔽性を付与しにくく、10μmを超える場合には樹脂層の凝集力が弱くなる傾向がある。このため、隠蔽層3の厚みは、2μm以上10μm以下の範囲内が好適である。
【0033】
(接着剤層)
接着剤層5には、任意の材料選定が可能であり、接着剤層5を用いた接着方法としては、例えば、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート等がある。接着剤層5に含まれる接着剤は、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の材料から選定できる。接着剤層5に含まれる接着剤は、通常はその凝集力から2液硬化タイプのものが望ましく、特にイソシアネートを用いたポリオールとの反応で得られるウレタン系の材料を用いることが望ましい。
【0034】
(透明樹脂層)
透明樹脂層1は、接着剤層5の上に形成されている。透明樹脂層1が、特定のエロージョン率Eを有することによって、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。以下、本実施形態における透明樹脂層1について、詳しく説明する。
【0035】
透明樹脂層1は、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粉末を用いて測定した上述のエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下(0.5μm/g≦E≦10.0μm/g)の範囲内である。
透明樹脂層1のエロージョン率Eが0.5μm/g未満である場合、耐衝撃性が著しく低下する傾向がある。また、透明樹脂層1のエロージョン率Eが10.0μm/gを超える場合には、耐傷性が著しく低下する傾向がある。
【0036】
本実施形態に係る化粧シート10において、透明樹脂層1は、上述のようにエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内であることにより、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。
【0037】
また、透明樹脂層1において、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粉末を用いて測定した上述のエロージョン率Eは、耐傷性と耐衝撃性とを向上する観点から1.0μm/g以上5.0μm/g以下(1.0μm/g≦E1≦5.0μm/g)の範囲内であると、より好ましい。
つまり、透明樹脂層1は、エロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内となるように調整した樹脂で構成されている。さらに、透明樹脂層1は、エロージョン率Eが1.0μm/g以上5.0μm/g以下となるように調整した樹脂で構成されているとより好適である。
【0038】
エロージョン率Eは、例えば透明樹脂層1の材料選択や、形成時におけるプロセス条件によって、制御することができる。プロセス条件による結晶性ポリプロピレン樹脂の結晶化度の制御は、既知の方法で行うことができる。プロセス条件としては、例えば、透明樹脂層1が結晶性ポリプロピレン樹脂で形成される場合、透明樹脂層1の成膜時の加熱制御により、結晶化度を高めることで、エロージョン率を上昇させ、結晶化度を下げることでエロージョン率Eを下降させることができる。
透明樹脂層1の材料選択や、形成時におけるプロセス条件によって、結晶化度を制御することで、上述のエロージョン率Eを0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内とすることができる。
【0039】
透明樹脂層1は上述のように接着剤層5上に形成されている。透明樹脂層1は、製膜によって成形されたシートであってもよいし、既に成形したシートを積層したものであってもよい。透明樹脂層1は、ポリオレフィン樹脂を用いて形成することが好ましい。具体的には、透明樹脂層1としてポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。透明樹脂層1は、例えば、高結晶性ポリプロピレン樹脂で形成されている。
また、透明樹脂層1の片面または両面は、必要に応じて、例えばコロナ処理、プラズマ処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等で活性化してもよい。
【0040】
透明樹脂層1を製膜によるシートで成形する場合には、例えば、押出機を用いる方法を用いるのが一般的である。透明樹脂層1を積層して成形する場合は、特に規制はなく、例えば、熱圧を応用した方法、押出ラミネート法及びドライラミネート法等を用いるのが一般的である。また、エンボス模様1aを施す場合には、一旦各種方法でラミネートしたシートに、例えば、後から熱圧によりエンボスを入れる方法や、冷却ロールに凹凸模様を設け、その冷却ロールを用いて押出ラミネートと同時にエンボスを施す方法がある。より詳しくは、エンボス模様1aは、透明樹脂層1である、例えば高結晶性ポリプロピレンシートに直接付与され、その方法は製膜された当該シートに熱及び圧力により凹凸模様を有するエンボス版を用いてエンボス模様を付与する方法や、押出機を用いて製膜する際に凹凸模様を有する冷却ロールを用いて冷却と同時にエンボスを設ける方法などがある。ここではエンボス部としてのエンボス模様1aにインキを埋め込み、さらに意匠性を向上させることも可能である。なお、エンボス模様1aは必要であれば設ければよく、不要な場合は設けなくてもよい。
【0041】
透明樹脂層1の厚みは、40μm以上170μm以下の範囲内であることが好ましい。透明樹脂層1の厚みが40μmに満たない場合には、耐候性や耐傷性が低下することがある。また透明樹脂層1の厚みが170μmを超える場合には、製造コストが高くなり、また可撓性が低下することがある。透明樹脂層1には、必要に応じて、例えば、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、そして、本実施形態の特徴を損なわない範囲で、例えば、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種添加剤を添加することもできる。
【0042】
熱安定剤としては、例えば、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等を、また難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を、また紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等を、また光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系等を、それぞれ任意の組み合わせで添加するのが一般的である。特に、本用途に用いる場合は耐候性を考慮する必要があり、その場合には透明樹脂層1に紫外線吸収剤と光安定剤と添加してもよく、添加量はそれぞれ透明樹脂層1を100質量%として、0.1質量%以上2.0質量%以下の範囲内が適量である。また、透明樹脂層1は、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化処理された結晶核剤(ナノサイズの造核剤)を含んでもよい。
【0043】
また、透明樹脂層1を形成する結晶性ポリプロピレン樹脂は、ペンタッド分率の異なるアイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ロックポリプロピレン及びこれらの混合物から適宜選択して設計することができる。より好ましくは、結晶性ポリプロピレン樹脂が、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)95%以上、より好ましくは96%以上のプロピレンの単独重合体、すなわちホモポリマーである高結晶性ホモポリプロピレン樹脂とされることが重要である。なお、透明樹脂層1を構成する結晶性ポリプロピレン以外の樹脂は、結晶性ポリプロピレンの物性に著しく悪影響を与えないならば、その配合の目的によって適宜選定が可能である。但し、V溝曲げ加工適性を維持するためには透明樹脂層1を構成する結晶性ポリプロピレン樹脂との相溶性がよいものが好ましい。
なお、透明樹脂層1の材料はこれに限られず、柔軟性の高い、エチレンコンテンツを含有するランダムポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン樹脂を用いることができる。
【0044】
以下、簡単に透明樹脂層1に関する上記説明において用いた用語の説明をする。
造核剤とは、樹脂の結晶化時において、結晶核の生成を促進させる、もしくは、造核剤自体を結晶核とするために添加されるものである。造核剤には、添加時に基材の樹脂に溶融し再度析出して結晶核を生成する溶融型もしくは基材に添加した核剤が溶融することなくそのままの粒径で結晶核となる非溶融型の造核剤がある。ポリプロピレン樹脂の造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、本実施形態においては、ナノ化処理との効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
【0045】
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、質量数13の炭素C(核種)を用いた13C-NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、透明樹脂層1を構成する樹脂材料を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂材料中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定するものである。ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックペンタッド分率とは、13C-NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことであって、結晶化度あるいは立体規則性の尺度として用いられる。そして、このようなアイソタクチックペンタッド分率は、主に表面の耐傷性を決定付ける重要な要因の一つであり、基本的にはアイソタクチックペンタッド分率が高いほどシートの結晶化度が高くなるため、耐傷性が向上する。
【0046】
(表面保護層)
表面保護層4は、化粧シート10に、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために設けられる層である。表面保護層4を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系などの樹脂材料から適宜選択して用いることができる。
表面保護層4は、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0047】
より具体的には、表面保護層4は、紫外線や電子線照射で硬化する樹脂、即ち電離放射線硬化性樹脂と、熱で硬化する樹脂、即ち熱硬化性樹脂とを含んで形成されることが好ましい。また表面保護層4は、熱硬化性樹脂のみを含んで形成されることも好ましい。つまり、本実施形態に係る化粧シート10において、表面保護層4は、熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合組成物、または熱硬化性樹脂を含んでいることが好ましい。
【0048】
表面保護層4に用いる熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルション、溶剤系のいずれでも可能で、且つ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでもよい。それらの中でもイソシアネート反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。
【0049】
イソシアネートには、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体や各種プレポリマーなどの硬化剤から適宜選択して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤を使用することが好ましい。
【0050】
表面保護層4に用いる電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、アクリルアクリレート系などから適宜選択して用いることができるが、特に、耐候(光)性が良好なウレタンアクリレート系及びアクリルアクリレート系のものを用いることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂の硬化方法としては、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化することが作業性の観点から好ましい。電子線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては180nm以上400nm以下の範囲内が好ましい。
【0051】
表面保護層4に用いる熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合物については、例えば、熱硬化性樹脂としてのアクリルポリオールとイソシアネートとを反応して得られるウレタン系樹脂と、電離放射線硬化性樹脂としてのウレタンアクリレート系樹脂とを混合して用いることがより好ましい。熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合物を用いることによって、表面硬度を向上させるとともに、硬化収縮の抑制及び無機微粒子(無機フィラー)の密着性の少なくとも1つを向上させることができる。
【0052】
表面保護層4を構成する電離放射線硬化性樹脂は、官能基が6以上であり、質量平均分子量が1,000以上の成分を1種以上含むものであってもよい。より好ましくは、官能基が6以上であり、質量平均分子量が1,000以上20,000以下の成分を1種以上含むものである。電離放射線硬化性樹脂の官能基が6に満たない場合には、架橋密度が小さく、耐傷性が著しく低下するため好ましくない。電離放射線硬化性樹脂の質量平均分子量が1,000に満たない場合には、塗工時の面状態が著しく悪化するため好ましくない。電離放射線硬化性樹脂の質量平均分子量が20,000を超える場合には、塗液の粘度が上昇し、塗工適性が著しく低下するため、好ましくない。
【0053】
光開始剤の添加量は特に限定されず、主剤樹脂100質量部に対し、0.1~15質量部程度が好ましい。
光開始剤の種類は特に限定されない。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光開始剤として、例えば、アセトフェノン系やベンゾフェノン系、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,Nジメチルアミノベンゾエートなどの少なくとも1種類を選択することができる。また、光源や生産環境に合わせて、複数種を組み合わせて設計することが望ましい。
また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光開始剤として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩などの少なくとも1種が選択できる。
【0054】
表面保護層4の形成方法は特に限定されるものではなく、前述の材料を塗液化したものを、例えば、グラビアコート、マイクログラビアコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコートなど通常の方法で塗布した後、熱硬化、紫外線硬化など樹脂材料に適合した方法で硬化させることで表面保護層4を形成してもよい。
この表面保護層4は、接着剤層5を介して原反層7に設けた絵柄模様層6と透明樹脂層1とを接合した後に透明樹脂層1に設けてもよいし、透明樹脂層1と原反層7とを接合する前に透明樹脂層1に設けてもよい。
【0055】
さらに耐候性を向上させるために、表面保護層4に紫外線吸収剤及び光安定剤を適宜添加してもよい。また、各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行える。なお、本実施形態では、表面保護層4を、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物を含んだ樹脂、または熱硬化性樹脂のみを含んだ樹脂で形成した場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば表面保護層4は、電離放射線硬化性樹脂のみで形成された層であってもよい。
【0056】
また表面の耐傷性の向上、あるいは意匠性付与に伴う艶(光沢)調整のため、表面保護層4に、光沢調整剤として無機フィラーを加えることが望ましい。
表面保護層4に添加する無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、シリカ、ベーマイト、酸化鉄、酸化マグネシウム、アルミノシリケート、ダイヤモンド、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロポレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、ガラス繊維等を添加してもよい。無機フィラーとして、平均粒子径が1μm以上30μm以下の範囲内の無機微粒子を用いることができ、特に1μm以上10μm以下の範囲内の無機微粒子が好適である。無機フィラーの平均粒子径が1μmに満たない場合には、艶消し効果を得にくい傾向がある。これは、艶消し効果を発揮するためには、無機フィラーが添加された膜(層)の厚みと同程度、もしくは大きな粒子径であることが理想的であるためである。無機フィラーの平均粒子径が30μm、より確実には10μmを超える場合には、高荷重条件下で無機フィラーが表面保護層4から脱落しやすく、艶が変化し表面が悪化して見える傾向がある。
【0057】
例えば、表面保護層4の形成方法としてグラビア印刷を選択した場合、一層の塗布厚みは通常2μm以上15μm以下の範囲内が妥当である。この場合は、上述のように、一度に塗布可能な厚み以下から同程度の平均粒子径を有する無機フィラーを選択するのが好ましい。
表面保護層4における無機フィラーの含有量は、表面保護層4を構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下の範囲内であることが好ましい。無機フィラーの含有量が1質量部に満たない場合には、耐傷性が低下することがある。また無機フィラーの含有量が20質量部を超える場合には、表面の艶が非常に低下するため、意匠を損なうことおよび耐候性や耐汚染性が低下すること起こり得る。
【0058】
表面保護層4が含有する無機フィラーには、表面処理を施すことが望ましい。無機フィラーに表面処理を施すことで、表面保護層4との結合強化を図ることができる。なお、表面保護層4には表面が未処理の無機フィラーを添加してもよい。
また、表面処理を施す際は、無機フィラー表面の疎水化及び表面保護層4との反応性を付与する官能基を有することが望ましい。つまり、無機フィラーの表面を処理する表面処理剤は、表面保護層4を構成する主剤樹脂と反応する反応基を有することが望ましい。
無機フィラーの表面処理を実施する際は、手法は特に限定せず、公知の方法を選ぶことができる。
【0059】
無機フィラーの表面処理に用いられる表面処理剤としては、界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、シリコーン、ワックス、及び変性樹脂のうち少なくとも1つを使用することができる。本実施形態の表面処理剤としては、例えば、シリコーンオイル系、アルキルシラザン系、トリメチルシリル化剤、アルコキシシラン系、シロキサンやシランカップリング剤の他、チタンカップリング剤やリン酸系・脂肪酸系界面活性剤などを選ぶことができ、1種類でも複数種の掛け合わせたものであっても構わない。
シリコーンオイル系処理剤としては、例えば、ストレートシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなど)や変性シリコーンオイル(アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性変性、異種官能基変性、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸含有変性、フッ素変性シリコーンオイルなど)を選択することができる。
【0060】
アルキルシラザン系処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ビニルシラザンなどを選択することができる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトシキシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシランなどのクロロシラン化合物を選択することができる。
【0061】
トリメチルシリル化剤としては、シランカップリング剤中のアルコキシシラン化合物を選択することができる。
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネーと、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2ジアリルオキシメチル-1ブチル)ビス(ジートリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、などを選択することができる。
アルミネート系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどを選択できる。
【0062】
表面保護層4側の透明樹脂層1の面にエンボス模様1aを施した場合には、このエンボス模様の中に、表面保護層4を形成するインキをワイピング加工により埋め込んで意匠性を向上させることも可能である。
耐候性の面からは、基材としての透明樹脂層1を守るために、上記のように表面保護層4及び透明樹脂層1にそれぞれ耐候性を付与する方法もある。また、それだけではなく、絵柄模様層6を守るために接着剤層5、絵柄模様層6自体にそれぞれ紫外線吸収剤及び光安定剤を添加する方法もある。
【0063】
図1では、表面保護層4が単層である例を説明したが、本実施形態に係る化粧シート10において表面保護層4は単層に限られない。表面保護層4は単層であってもよいし、複層構成であってもよい。つまり、表面保護層4は1層以上で構成されていればよい。したがって、表面保護層4は、全体での厚みが2μm以上15μm以下の範囲内であってもよい。また、表面保護層4が複層構成である場合、光沢調整剤としての無機フィラーは、複層構成のうち1層以上に含まれていればよい。
また、表面保護層4が複層である場合、少なくとも最上層が熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合組成物、または熱硬化性樹脂を含んで構成されていればよく、複数の層において異なる種類の樹脂材料で形成された層が含まれていてもよい。
【0064】
(易接着層)
易接着層8は、化粧シート10の被着材(例えば、化粧材用基材)と原反層7とを貼り合せるための層であって、プライマー層ともいう。
易接着層8に使用される材料は、基本的には絵柄模様層6や隠蔽層3と同じ材料でよい。また、化粧シートの裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、易接着層8に例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。塗布厚み、即ち易接着層8(プライマー層)の厚みは、基材である原反層7との密着を確保することが目的であるので、0.1μm以上10.0μm以下の範囲内が妥当であり、より好ましくは0.1μm以上3.0μm以下の範囲内である。
易接着層8は、原反層7がオレフィン系材料のように表面が不活性な場合には必要であるが、表面が活性である場合は特に必要ではない。
【0065】
(1.1)第1変形例
第1実施形態に係る化粧シートの第1変形例について、図2を用いて説明する。図2は、第1実施形態の第1変形例による化粧シート20の一構成例を説明するための断面模式図である。本変形例による化粧シート20は、透明樹脂層が単層ではなく、複層である点で、上記第1実施形態に係る化粧シート10と異なる。
【0066】
図2に示す化粧シートは、図面上部側から順に、表面保護層4、透明樹脂層11、接着剤層5(感熱接着剤層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、絵柄模様層6、隠蔽層3、原反層7、易接着層8を備えている。詳しくは後述するが、透明樹脂層11は複層構成であり、透明樹脂層1と透明樹脂層2とを有している。
より詳しくは、本変形例に係る化粧シート20は、複層構成である透明樹脂層11の一方の面(透明樹脂層2側)に、絵柄模様層6及び隠蔽層3を設け、透明樹脂層11の他方の面(透明樹脂層1側)に、表面保護層4を設けた構成の化粧シートである。図2に示すように、化粧シート20は、原反層7の上に透明樹脂層11が設けられ、原反層7と透明樹脂層11との間に接着剤層5および絵柄模様層6が設けられている。これにより、化粧シート20は、透明樹脂層11と原反層7との密着性が良好であり、被着材となる基板の表層を加飾することが可能な表装材として用いることができる。本実施形態に係る化粧シート20は、少なくとも透明樹脂層11および表面保護層4を含む積層体であればよい。
【0067】
以下、化粧シート20において化粧シート10と異なる構成である透明樹脂層11について詳細に説明する。なお、化粧シート20において、透明樹脂層11以外の構成は化粧シート10と同等である。このため、化粧シート10と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0068】
(透明樹脂層)
図2に示すように、化粧シート20は透明樹脂層11を備えている。透明樹脂層11は複層(本例では2層)構成であり、透明樹脂層1と透明樹脂層2とで構成されている。より具体的には、透明樹脂層11は、複層から構成され、表面保護層4と接する第一透明樹脂層となる透明樹脂層1と、透明樹脂層1と接する第二透明樹脂層となる透明樹脂層2とを有している。
【0069】
〔第一透明樹脂層〕
本変形例における透明樹脂層11の第一透明樹脂層である透明樹脂層1は、上記第1実施形態に係る化粧シート10の透明樹脂層1と同等の構成であるため、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
なお、本変形例においては、第一透明樹脂層である透明樹脂層1のエロージョン率Eをエロージョン率Eと称する。エロージョン率Eの測定方法は、エロージョン率Eと同等であるため、説明は省略する。
【0070】
本変形例において、透明樹脂層1は、上記第1実施形態と同様に、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粉末を用いて測定した上述のエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下(0.5μm/g≦E≦10.0μm/g)の範囲内である。つまり、透明樹脂層1は、エロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内となるように調整した樹脂で構成されている。さらに、透明樹脂層1は、エロージョン率Eが1.0μm/g以上5.0μm/g以下となるように調整した樹脂で構成されているとより好適である。
【0071】
〔第二透明樹脂層〕
図2に示すように、本変形例に係る化粧シート20において、上記第一透明樹脂層である透明樹脂層1と接着剤層5との間に、第二透明樹脂層である透明樹脂層2が設けられている。つまり、透明樹脂層2は、透明樹脂層1の下層に位置している。
透明樹脂層2は、特に押出ラミネート方法において透明樹脂層を形成する場合において、さらなるラミネート強度を求める場合に設けることがある。
【0072】
透明樹脂層2は、透明樹脂層1と同様に、特定のエロージョン率Eを有することによって、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。ここで、透明樹脂層2のエロージョン率Eをエロージョン率Eとする。エロージョン率Eの測定方法は、上記エロージョン率E、エロージョン率Eと同等であるため、説明は省略する。
【0073】
透明樹脂層2は、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下(0.5μm/g≦E≦5.0μm/g)の範囲内である。
透明樹脂層2のエロージョン率Eが0.5μm/g未満の場合には、耐衝撃性が著しく低下する傾向がある。また、透明樹脂層2のエロージョン率Eが5.0μm/gを超える場合には、耐傷性が著しく低下する傾向がある。なお、透明樹脂層2のエロージョン率Eは、透明樹脂層1のエロージョン率Eに近い値となるように硬さを調整することが好ましい。
【0074】
このように、本実施形態に係る化粧シート20は、透明樹脂層11を構成する第一透明樹脂層である透明樹脂層1において、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内であり、第二透明樹脂層である透明樹脂層2において、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である。
これにより、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。
【0075】
透明樹脂層11における透明樹脂層1と透明樹脂層2とは、共押出法でラミネートされて成形される場合が一般的である。透明樹脂層2に含まれる樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したものが望ましい。
透明樹脂層2の厚みは接着力向上の目的から2μm以上であることが望ましい。透明樹脂層2の厚みが2μmに満たない場合には、十分な接着力が得にくい傾向がある。
また、透明樹脂層2の厚みは、20μm以下が望ましい。透明樹脂層2の厚みが20μmを超えると、長期使用時に透明樹脂層2の劣化が生じ、凝集破壊を起こし剥離しやすくなる傾向がある。
つまり、透明樹脂層2の厚みは、2μm以上20μm以下の範囲内が好ましい。
【0076】
また、透明樹脂層11において、透明樹脂層1の厚みと透明樹脂層2の厚みとの合計は、40μm以上170μm以下であることが好ましい。つまり、透明樹脂層11の総厚が40μm以上170μm以下であることが好ましい。これにより、耐候性や耐傷性を良好としつつ、製造コストの上昇や可撓性の低下を抑制することができる。
【0077】
(1.2)第2変形例
本開示の第1実施形態の第2変形例に係る化粧材について、図3を用いて説明する。本実施形態に係る化粧シートは、化粧材用基材としての木質基材と積層することにより化粧材(例えば床用化粧材)を作製する用途に好適に用いることができる。図3は、本開示の第1実施形態の第二変形例に係る化粧材100の一構成例を説明するための断面図である。
【0078】
図3に示すように、本変形例に係る化粧材100は、本実施形態に係る化粧シート10の表面保護層4が最表面層となるように、化粧シート10を木質基材16上に積層することにより得られる。すなわち、化粧材100は、接着剤15および木質基材16を備える点で、第一実施形態に係る化粧シート10と相違する。
【0079】
(化粧材)
図3に示すように、化粧材100は、化粧シート10における原反層7の一方の面側に、隠蔽層3、絵柄模様層6、接着剤層5、透明樹脂層1および表面保護層4がこの順に積層されており、原反層7の他方の面側に、易接着層8、接着剤15および木質基材16が設けられている。つまり、化粧材100は、木質基材16と、木質基材16に貼り合わされた積層体である化粧シート10と、を備える。
これにより、化粧材100は、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、外観変化を抑制可能な化粧材を提供することが可能となる。
【0080】
(木質基材)
木質基材16としては、木質ボードが用いられる。より具体的には、木質ボードとして、チップボード、木質繊維板(MDF、HDF等)が挙げられる。またこれらのチップボード、木質繊維板と木質単板又は木質合板との組み合わせを木質基材16として用いてもよい。
【0081】
例えば化粧材100において、これらの木質基材16の材料の中で、チップボード(十点平均粗さRzjis:80~250μm程度)又は当該チップボードを表面に有する複合基材を用いた場合、化粧シート10と当該チップボードを用いた木質基材16との間の気泡の残存を抑制することができる。さらに、当該チップボードを木質基材16に用いた化粧材100は、良好な耐衝撃性、耐磨耗性及び歩行感を発揮することができる。なお、上記十点平均粗さRzjisは、JIS B0601-2001に準拠した測定方法により測定した値である。
【0082】
木質基材16の形状は、通常は化粧材100が床材(フローリング)として設置されることを考慮して平板とすればよい。
木質基材16と化粧シート10とを貼り合わせるには、接着剤15を用いることができる。接着剤15としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム、ウレタン系反応型ホットメルト接着剤(PUR)等を有効成分とする公知の接着剤が使用できる。木質基材16と化粧シート10とを貼り合わせる際は、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレス等の貼着装置を用いることができる。
【0083】
木質基材16と化粧シート10との接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナを用いてサネ加工、V字形状の溝加工、四辺の面取り加工(例えばC面取り加工)等を施してもよい。
【0084】
本変形例による化粧材100は、化粧シート10側から木質基材16に至る溝部及び/又は面取り部を設けて、当該溝部及び面取り部を着色塗料によって塗装してもよい。
溝部及び面取り部を塗装するための着色塗料は、例えば、接着剤層5にも使用できる着色剤(有機顔料、無機顔料)をビヒクルに溶解又は分散させることによりインキ化したものが使用できる。具体的な着色剤の例示については上述の着色剤と同じである。ビヒクルとしては、例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらのビヒクルは、単独又は2種以上を混合して使用できる。なお、着色塗料には、前記の通り、改質樹脂層のシラノール基と化学的に結合するイソシアネートなどの硬化剤を含有するものを採用することが好ましい。その他、溶剤や補助剤等を必要に応じて添加することもできる。
【0085】
以上、本変形例による化粧材100について説明した。なお、図3では上記第1実施形態に係る化粧シート10を用いて化粧材100を構成する例を図示しているが、本開示はこれに限られない。化粧材100は、図4に示すように本実施形態の上記第1変形例に係る化粧シート20を用いて構成されてもよい。例えば、化粧材100は、化粧シート20における原反層7の一方の面側に、隠蔽層3、絵柄模様層6、接着剤層5、透明樹脂層2、透明樹脂層1、表面保護層4がこの順に積層されており、原反層7の他方の面側に、易接着層8、接着剤15及び木質基材16が設けられていてもよい。
つまり、化粧材100は、木質基材16と、木質基材16に貼り合わされた積層体である化粧シート20と、を備える構成であってもよい。これにより、化粧材100は、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、外観変化を抑制可能な化粧材を提供することが可能となる。
【0086】
(第1実施形態の効果)
本実施形態に係る化粧シートおよび化粧材は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態に係る化粧シート10は、少なくとも、透明樹脂層1を含む積層体であって、透明樹脂層1は、単層で構成されており、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが、0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内である。
この構成によれば、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シート(積層体)を提供することができる。
【0087】
(2)本実施形態に係る化粧シート20は、少なくとも、透明樹脂層11および表面保護層4を含む積層体であって、透明樹脂層11は、複層から構成され、表面保護層4と接する第一透明樹脂層である透明樹脂層1と、透明樹脂層1と接する第二透明樹脂層である透明樹脂層2とを有し、透明樹脂層1において、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内であり、透明樹脂層2において、該球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である。
この構成によれば、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シート(積層体)を提供することが可能となる。
【0088】
(3)本実施形態に係る化粧シート10,20は、透明樹脂層1,11の厚みが40μm以上170μm以下である。
この構成によれば、耐候性や耐傷性を良好としつつ、製造コストの上昇や可撓性の低下を抑制することができる。
(4)本実施形態に係る化粧シート10,20において透明樹脂層1,11は、ポリオレフィン樹脂を含む。
この構成によれば、環境に配慮され加工適正が良好な材料による化粧シート(積層体)を得ることができる。
(5)本実施形態に係る化粧シート10,20は表面保護層4を備えており、表面保護層4は、熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合組成物、または熱硬化性樹脂を含んでいる。
この構成によれば、上記混合組成物を用いることで表面硬度を向上させるとともに、硬化収縮の抑制及び無機微粒子(無機フィラー)の密着性の少なくとも1つを向上させることができる。また熱硬化性樹脂を用いることで、耐光性を良好としつつ、作製コストの上昇を抑えて作業性、樹脂凝集力を良好とすることができる。
(6)本実施形態に係る化粧シート10,20は、原反層7の上に透明樹脂層1,11が設けられ、原反層7と透明樹脂層1,11との間に接着剤層5および絵柄模様層6が設けられている。
この構成によれば、化粧シート10,20は、透明樹脂層1,11と原反層7との密着性が良好であり、被着材となる基板の表層を加飾することが可能な表装材として用いることができる。
(7)本実施形態に係る化粧材100は、木質基材16と、木質基材16に貼り合わされ積層体である化粧シート10,20と、を備える。
この構成によれば、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、外観変化を抑制可能な化粧材を提供することができる。
【0089】
(1.3)第1実施例
以下に、本開示の第1実施形態に係る化粧シートの具体的な実施例である第1実施例(以下、「本実施例」という)について検討する。
なお本開示の第1実施形態は、下記の実施例に限定されるものではない。
また、本実施例では、透明樹脂層の樹脂材料として以下のポリプロピレン樹脂A~Cを用いた。
本実施例では、以下のポリプロピレン樹脂A~Cの各樹脂材料の選択および結晶化度制御条件(押出時温度、成膜時冷却ロール水温(冷却ロール温度))により、透明樹脂層のエロージョン率を制御した。
〔ポリプロピレン樹脂A〕
ランダムポリプロピレン樹脂「F219DA」((株)プライムポリマー製)、MFR8.0g/10Min.)
押出時温度:200℃ 成膜時冷却ロール水温:25~50℃
〔ポリプロピレン樹脂B〕
ポリオレフィン熱可塑性エラストマー「F3740」((株)プライムポリマー製)、MFR4.5g/10Min.)
押出時温度:220℃ 成膜時冷却ロール水温:25~40℃
〔ポリプロピレン樹脂C〕
高結晶性ホモポリプロピレン樹脂「F109V」((株)プライムポリマー製、MFR30.0g/10Min.)
押出時温度:200~230℃ 成膜時冷却ロール水温:25~65℃
【0090】
(実施例1-1)
原反層7として隠蔽性のあるポリエチレン原反(厚み70μm)に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ(株)製)を用い木目柄をグラビア印刷して絵柄模様層6(厚さ3μm)を設け、さらに接着剤層5として接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製)(厚み2μm)を介し、エロージョン率Eを9.8μm/gとなるよう硬さを調整した透明樹脂層1をドライラミネートした。
透明樹脂層1は、ポリプロピレン樹脂Aに各種の添加剤を配合した樹脂材料で形成した。より詳細には、ポリプロピレン樹脂A100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(CYASORB UV-1164;SUNCHEM製)を0.5質量部、NOR型光安定剤(Tinuvin XT850 FF;BASF社製)を0.5質量部それぞれ配合した樹脂材料を、溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ90μmの透明樹脂シート(保護フィルム)を成膜した。
透明樹脂層1は、プロセス制御として、上記ポリプロピレン樹脂Aの押出温度を200℃、成膜時冷却ロール水温を50℃とした。これにより、上記のようにエロージョン率Eが9.8μm/gとなる透明樹脂層1を成膜した。
【0091】
さらに表面保護層4としてアクリルポリオール(メチルメタクリレートと2ヒドロキシメタクリレートの共重合体)と硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体)からなる2液硬化ポリウレタン樹脂層を、透明樹脂層1(上記保護フィルム)上に塗布形成(層厚10μm)し、透明樹脂層が単層である実施例1-1の化粧シート10を得た。
【0092】
(実施例1-2)
上記ポリプロピレン樹脂Aの押出温度を200℃、成膜時冷却ロール水温を40℃とすることで透明樹脂層1のエロージョン率Eを10.0μm/gとなるよう硬さを調整し、それ以外は実施例1と同様の方法で実施例1-2の化粧シート10を得た。
(実施例1-3)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Bとし、押出温度を220℃、成膜時冷却ロール水温を25℃とすることで透明樹脂層1のエロージョン率Eを5.5μm/gとなるよう硬さを調整し、それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-3の化粧シート10を得た。
(実施例1-4)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、押出温度を200℃、成膜時冷却ロール水温を25℃とすることで透明樹脂層のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整し、それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-4の化粧シート10を得た。
(実施例1-5)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、押出温度を230℃、成膜時冷却ロール水温を40℃とすることで透明樹脂層のエロージョン率Eを1.2μm/gとなるよう硬さを調整し、それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-5の化粧シート10を得た。
(実施例1-6)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、押出温度を230℃、成膜時冷却ロール水温を55℃とすることで透明樹脂層のエロージョン率Eを0.6μm/gとなるよう硬さを調整し、それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-6の化粧シート10を得た。
(実施例1-7)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、押出温度を230℃、成膜時冷却ロール水温を60℃とすることで透明樹脂層のエロージョン率Eを0.5μm/gとなるよう硬さを調整し、それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-7の化粧シート10を得た。
【0093】
(実施例1-8)
原反層7として隠蔽性のあるポリエチレン原反(厚み70μm)に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ(株)製)を用い木目柄をグラビア印刷して絵柄模様層6(厚さ3μm)を設け、さらに接着剤層5として接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製)(厚み2μm)を介し、エロージョン率Eを0.5μm/gとなるよう硬さを調整した透明樹脂層2をドライラミネートした。
透明樹脂層2はポリプロピレン樹脂Cに各種の添加剤を配合した樹脂材料で形成した。より詳細には、ポリプロピレン樹脂C100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(CYASORB UV-1164;SUNCHEM製)を0.5質量部、NOR型光安定剤(Tinuvin XT850 FF;BASF社製)を0.5質量部それぞれ配合した樹脂材料を、溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ20μmの透明樹脂シートを製膜した。透明樹脂層2は、プロセス制御として、上記実施例1-7と同様にポリプロピレン樹脂Cの押出温度を230℃、成膜時冷却ロール水温を60℃とした。これにより、上記のようにエロージョン率Eが0.5μm/gとなる透明樹脂層2を成膜した。
さらに接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製)(厚み2μm)を介し、エロージョン率Eを10.0μm/gとなるよう硬さを調整した透明樹脂層1をドライラミネートした。透明樹脂層1はポリプロピレン樹脂Aに各種の添加剤を配合した樹脂材料で形成した。より詳細には、ポリプロピレン樹脂A100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(CYASORB UV-1164;SUNCHEM製)を0.5質量部、NOR型光安定剤(Tinuvin XT850 FF;BASF社製)を0.5質量部それぞれ配合した樹脂材料を、溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ70μmの透明樹脂シートを製膜した。本実施例では、ポリプロピレン樹脂Aのプロセス制御(押出温度、成膜時冷却ロール水温)を上記実施例1-2と同様として、エロージョン率Eが10μm/gとなる透明樹脂層1を成膜した。
また表面保護層4は、実施例1-1と同等の構成とした。これにより、透明樹脂層が2層である実施例1-8の化粧シート10を得た。
【0094】
(実施例1-9)
透明樹脂層2に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Bとし、押出温度を220℃、成膜時冷却ロール水温を40℃とすることで透明樹脂層2のエロージョン率Eを5.0μm/gとなるよう硬さを調整し、それ以外は実施例1-8と同様の方法で実施例1-9の化粧シート10を得た。
(実施例1-10)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-7と同様のプロセス制御(押出温度、成膜時冷却ロール水温)によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを0.5μm/gとなるよう硬さを調整した。また透明樹脂層2に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Bとし、上記実施例1-9と同様のプロセス制御によって透明樹脂層2のエロージョン率Eを5.0μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例1-8と同様の方法で実施例1-10の化粧シート10を得た。
(実施例1-11)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-7と同様のプロセス制御によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを0.5μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例1-8と同様の方法で実施例1-11の化粧シート10を得た。
【0095】
(実施例1-12)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-4と同様のプロセス制御によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整した。また同様に、透明樹脂層2のエロージョン率Eを上記実施例1-4と同様のプロセス制御によって3.5μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例1-8と同様の方法で実施例1-12の化粧シート10を得た。
(実施例1-13)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-4と同様のプロセス制御によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整した。また上記実施例1-5と同様のプロセス制御によって透明樹脂層2のエロージョン率Eを1.2μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例1-8と同様の方法で実施例1-13の化粧シート10を得た。
(実施例1-14)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-4と同様のプロセス制御(押出温度、成膜時冷却ロール水温)によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整した。また上記実施例1-6と同様のプロセス制御によって透明樹脂層2のエロージョン率Eを0.6μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例1-8と同様の方法で実施例1-14の化粧シート10を得た。
【0096】
(実施例1-15)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-4と同様のプロセス制御によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整し、厚みを170μmとした。それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-15の化粧シート10を得た
(実施例1-16)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)とし、押出温度を260℃、成膜時冷却ロール水温を25℃とすることで透明樹脂層1のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-16の化粧シート10を得た。
(実施例1-17)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-4と同様のプロセス制御によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整し、表面保護層を設けなかった。それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-17の化粧シート10を得た。
(実施例1-18)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-4と同様のプロセス制御によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整し、透明樹脂層の厚みを180μmとした。それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-18の化粧シート10を得た。
(実施例1-19)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-4と同様のプロセス制御によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整し、透明樹脂層1の厚みを40μmとした。それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-19の化粧シート10を得た。
(実施例1-20)
透明樹脂層1に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、上記実施例1-4と同様のプロセス制御によって透明樹脂層1のエロージョン率Eを3.5μm/gとなるよう硬さを調整し、透明樹脂層1の厚みを35μmとした。それ以外は実施例1-1と同様の方法で実施例1-20の化粧シート10を得た。
【0097】
(比較例1-1)
透明樹脂層1の成膜時において、ポリプロピレン樹脂Aの押出温度を200℃、成膜時冷却ロール水温を25℃とすることで、透明樹脂層1のエロージョン率Eを10.5μm/gとなるよう硬さを調整し、透明樹脂層1の厚みを70μmとした。それ以外は実施例1-1と同様の方法で比較例1-1の化粧シート10を得た。
(比較例1-2)
透明樹脂層に使用した樹脂をポリプロピレン樹脂Cとし、押出温度を230℃、成膜時冷却ロール水温を65℃とすることで透明樹脂層1のエロージョン率Eを0.4μm/gとなるよう硬さを調整し、透明樹脂層1の厚みを70μmとした。それ以外は実施例1-1と同様の方法で比較例1-2の化粧シート10を得た。
【0098】
<MSE試験におけるエロージョン率測定>
実施例1-1~1-20及び比較例1-1、1-2で得られた各化粧シートのエロージョン率E(エロージョン率E,E)の測定方法について、以下で説明する。
平均粒子径D50=3.0μmの球状アルミナ粉末を水に分散させて、スラリーの総質量に対して球状アルミナ粉末を3質量%含むスラリーを調製した。各化粧シートを台に固定し、その化粧シートと、上記スラリーを噴射するためのノズルの投射距離を4mmに設定した。ノズルのノズル径は1mm×1mmとした。ノズルから球状アルミナ粉末を含んだスラリーを噴射し、台に固定された化粧シートを表面保護層から順次切削した。この時の噴射強度は、事前に同様の実験条件にて既存の硬さ基準片を切削し、スラリーの噴射量に対する削れた変位(即ち、スラリー1gを吹き付けた際に切削される深さ)から標準投射力Xを求め、その値に基づいて決定した。球状アルミナ粉末を用いた本実施例における測定方法では、既存の硬さ基準片HRC-45に対して1.0μm/g削れたときの投射力を標準投射力Xとした。
本実施例では、上記エロージョン処理と、上記形状測定器による形状測定を設定回数(2回)繰り返して実施し、2回分の形状計測データを取得した。また、本実施例では、上述の投射力より算出した投射粒子量X’[g]とエロージョン深さZ[μm]とを用いて、エロージョン率E[μm/g]を算出した。
【0099】
本実施例において、X=1投射力(既存の硬さ基準片HRC-45に対して1.0μm/g削れたときの投射力)とした。切削された部分を水で洗浄した後に、切削の深さ、即ちエロージョン深さZを測定した。エロージョン深さZは、触針式表面形状測定器(株式会社小坂研究所製/型式PU-EU1/触針子先端R=2μm/荷重200μN/計測倍率10,000/測長3mm/計測速度0.2mm/sec)で測定された値である。より詳しくは、まず、計測長の中で摩耗していない両端基準エリアA、Bを用いて傾き補正を実施した。次に、基準となる回帰直線から摩耗痕中心部C(50μm幅の平均値)までの段差を測定した。次に、0g投射での段差データと、各投射量での段差データとの差分をとり、エロージョン深さZを取得した。取得した投射量-エロージョン深さZの各データから、エロージョン進行グラフおよびエロージョン率分布グラフを作成した。こうして、エロージョン深さZを特定した。
【0100】
(評価)
上記の方法により得られた実施例1-1~1-20及び比較例1-1、1-2の化粧シートを、それぞれウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせて各実施例、比較例の化粧シートを用いた化粧材を作製した。化粧材に対し、耐傷性評価および耐衝撃性評価を以下のように行った。
<耐傷性評価>
耐傷性の評価方法としてホフマンスクラッチ試験を選定した。
ホフマンスクラッチ試験は、ホフマンスクラッチハードネステスター(BYK-Gardner社製)を用いて、荷重200g~2000gについて、200g毎・試験長5cm、各実施例、比較例の化粧シートを用いた上記化粧材の表面を一定の速度で引っ掻き、化粧シートの表面の傷つきが発生した荷重を示した。
〇:ホフマンスクラッチ1200g以上
△:ホフマンスクラッチ600g以上1200g未満
×:ホフマンスクラッチ600g未満
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0101】
<耐衝撃性評価>
耐衝撃性の評価方法としてデュポン式落球試験を選定した。
デュポン式落球試験(JIS K 5600)に準拠して試験を行った。ただし、評価方法としては、高さ300mmから重り500gを上記各実施例、比較例の化粧シートを用いた化粧材上に落下させて、化粧材の凹み量の測定および表面の観察を行った。
◎:凹み量は2.0mm以下であり、表面に割れなし
○:凹み量は2.0mm以下であるが、わずかに表面に割れあり
△:凹み量は2.0mm以下であるが、割れあり
×:凹み量が2.0mm以上、または著しい割れあり
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0102】
以下の表1に、第1実施例における各実施例及び比較例の化粧シートの構成と合わせて、上記耐傷性および耐衝撃性の評価結果を示す。
【0103】
【表1】
【0104】
<耐傷性の評価結果>
表1に示すように、実施例1-1~1-20、比較例1が合格(△以上)となった。より具体的には、評価結果に「△」を含むのは、実施例1-6、1-7、1-10、1-11、1-14、1-19、1-20である。
実施例1-6、1-7、1-10、1-11は透明樹脂層1のエロージョン率Eが0.6μm/g以下と特に柔らかい性質であり、また実施例1-14は透明樹脂層1のエロージョン率Eが3.5μm/gで柔軟性があり且つ透明樹脂層2のエロージョン率Eが0.6μm/gと非常に柔らかい。このため、実用可能な範囲内であるものの、やや傷が入りやすくなったと考えられる。また、実施例1-19、1-20は透明樹脂層1の厚みが40μm以下と薄く、かつエロージョン率Eが3.5μm/gで柔軟性があることから、やや傷が入りやすくなったと考えられる。
一方、耐傷性で不合格となったものは比較例1-2であった。
比較例1-2は、透明樹脂層1のエロージョン率Eが0.4μm/gと極めて柔らかい性質であり、傷が入りやすくなったと考えられる。
【0105】
<耐衝撃性の評価結果>
実施例1-1~1-20、比較例が合格(△以上)となった。より具体的には、評価結果に「△」を含むのは、実施例1-1、1-2、1-8、1-9であった。これらの実施例は、透明樹脂層1のエロージョン率Eが9.8μm/gから10.0μm/gと硬く脆い性質のため、樹脂材料の脆さにより実用可能な範囲内であるものの耐衝撃性がやや低減したと考えられる。
また耐衝撃性の評価結果で「◎」となったのは、実施例1-4~1-7、1-10、1-11、1-15、1-17~1-20であった。これらの実施例における透明樹脂層1のエロージョン率Eは0.5μm/gから3.5μm/gと柔らかいため、衝撃に強かったと考えられる。また、これらの実施例の樹脂材料はいずれもポリプロピレン樹脂であった。
一方、耐衝撃性で不合格となったものは比較例1-1であった。
比較例1-1は、透明樹脂層1のエロージョン率E1が10.0μm/gを超える10.5μm/gであって特に硬く脆い性質であり、樹脂材料の脆さにより実用が困難なレベルまで耐衝撃性が悪くなったと考えられる。
【0106】
<総合的な評価結果>
表1より明らかなように、本開示の第1実施例1-1~1-20による化粧シートは、全ての評価項目で「合格」であり耐傷性および耐衝撃性にバランスよく優れる結果となった。つまり、本開示の第1実施形態に係る化粧シート及び化粧材は優れた耐傷性、耐衝撃性を有することが示された。
【0107】
具体的には、少なくとも、透明樹脂層1および表面保護層4を含む積層体であって、透明樹脂層1は、単層で構成されており、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率E(エロージョン率E)が、0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内である化粧シート10および化粧シート10を用いた化粧材100は優れた耐傷性、耐衝撃性を有することが示された。
また、複層構成の透明樹脂層11(透明樹脂層1,2)を備え、透明樹脂層1のエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内であり、透明樹脂層2のエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である化粧シート20および化粧シート20を用いた化粧材100は優れた耐傷性、耐衝撃性を有することが示された。
したがって、本開示の第1実施形態によれば、床材性能として必要な耐傷性、耐衝撃性をそれぞれ十分に備え、化粧材表面の傷やひび割れといった外観変化を抑制することができる化粧シートおよび化粧材を提供することができる。
【0108】
また、例えば、本実施形態は以下のような構成を取ることができる。
(1)
少なくとも、透明樹脂層を含む積層体であって、
前記透明樹脂層は、単層で構成されており、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが、0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする積層体。
(2)
少なくとも、透明樹脂層および表面保護層を含む積層体であって、
前記透明樹脂層は、
複層から構成され、前記表面保護層と接する第一透明樹脂層と、前記第一透明樹脂層と接する第二透明樹脂層とを有し、
前記第一透明樹脂層において、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内であり、
前記第二透明樹脂層において、前記球状アルミナ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする積層体。
(3)
前記透明樹脂層の厚みが40μm以上170μm以下である
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の積層体。
(4)
前記透明樹脂層は、ポリオレフィン樹脂を含む
ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の積層体。
(5)
表面保護層をさらに備え、
前記表面保護層は、熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合組成物、または熱硬化性樹脂を含んでいる
ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の積層体。
(6)
原反の上に前記透明樹脂層が設けられ、前記原反層と前記透明樹脂層との間に接着剤層および絵柄模様層が設けられている
ことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の積層体。
(7)
木質基材と、
前記木質基材に貼り合わされた上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の積層体と、を備える
ことを特徴とする化粧材。
【0109】
2.第2実施形態
本開示の第2実施形態に係る化粧シート(積層体の一例)について説明する。
上述のように、内装材又は外装材、建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は家電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装材には、一般的に、鋼板等の金属部材、樹脂部材、木質部材等で構成された被着材に化粧シートを貼り合わせて用いる。化粧シートは、積層体であって、複数の層を積層して構成され、最表層となる表面保護層には熱硬化樹脂や紫外線硬化樹脂などを使用し、塗工・硬化させる方法が用いられている。
【0110】
化粧シートを被着材に貼り合わせる際、被着材の形状に合わせて、角端部や曲面に化粧シートを沿わせて貼り付けたり、化粧シートを貼り合わせたのち溝を刻み折り曲げて目的の意匠を施したり、といった加工を行うことが一般的である。しかしながら、化粧シートの加工特性が悪いと、最も外表面(最表層)側に位置する表面保護層において周方向に歪みが生じ得るという問題があった。また、場合によっては、表面保護層にひび割れが生じ、ひび割れ部分から脆化するという問題点があった。
【0111】
このような問題を解決するため、最表層である表面保護層に追従性の高い柔軟な材料を用いることは解決策として知られている。一方で、柔軟な材料を用いることによって傷が付き易くなり、製品の耐久性(耐傷性)に課題が生じ得る。また耐傷性を向上させるために、表面保護層の厚みを増やしたり、硬化後の塗膜の硬度が高い材料を用いたりすることも知られている。しかしながら、硬度が高い材料を用いることによって耐傷性は向上するものの、加工特性が悪化するという問題点があった。つまり、従来の化粧シートは、良好な加工特性および耐傷性が両立しておらず、加工時における歪みやひび割れ、傷といった外観変化を抑制できないという問題があった。従って、加工特性に優れ尚且つ耐傷性に優れる化粧シートの開発が望まれている。
また化粧シートにおいて、表面保護層に用いる材料によっては、ひび割れの起点となる細かな亀裂が発生した後、その亀裂の成長しやすさ(塗膜のもろさ)によって、問題となる目視あるいはマイクロスコープで観察できるような大きな亀裂の発生しやすさが異なる。
【0112】
上記事情を鑑み、本開示による第2実施形態に係る化粧シートは、加工特性および耐傷性をそれぞれ十分に備え、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧材を提供することを目的とする。
【0113】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、化粧シート(積層体)において、表面保護層に用いる硬化性樹脂組成物が特定の範囲のエロージョン率を有することにより、積層体に対して十分な加工特性および耐傷性を付与できることを見出した。これにより、本発明者らは、加工特性および耐傷性をそれぞれ十分に備え、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧シート(積層体)およびその化粧シートを備えた化粧材を発明するに至った。
以下、図面を参照して本開示の第2実施形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。
【0114】
(エロージョン率Eの測定)
まず、本実施形態において規定する「エロージョン率E」について説明する。
本実施形態におけるエロージョン率Eは、後述する表面保護層41のエロージョン率Eであり、上記第1実施形態における透明樹脂層1,2のエロージョン率E(エロージョン率E,E)と区別して、「エロージョン率E」と称する。
エロージョン率Eの測定方法は、使用する粒子の種類および標準投射力Xが上記エロージョン率Eの測定方法と相違する。エロージョン率Eの測定時には、平均粒子径(D50)=1.1μmの球形シリカ粒子を用いる。より具体的には、平均粒子径(D50)=1.1μmの球形シリカ粒子を水に分散させて、スラリーの総質量に対して球形シリカ粒子を1質量%含むスラリーを調製する。化粧シートを台に固定し、その化粧シートと、上記スラリーを噴射するためのノズルとの投射距離を4mmに設定する。ノズルのノズル径は1mm×1mmとする。ノズルから球形シリカ粒子を含んだスラリーを噴射し、台に固定された化粧シートを表面保護層から順次切削する。この時の噴射強度は、事前に同様の実験条件にて既存の硬さ基準片、SiウエハまたはPMMA基板を切削し、スラリーの噴射量に対する削れた変位(即ち、スラリー1gを吹き付けた際に切削される深さ)から標準投射力Xを求め、その値に基づいて決定される。球形シリカ粒子を用いた本実施形態では、既存の硬さ基準片PMMAに対して1.86μm/g削れたときの投射力を標準投射力Xとした。それ以外の点は、上記エロージョン率Eと同等であるため、詳しい説明は省略する。本実施形態におけるエロージョン率Eは、表面保護層について測定するものである。したがって、その測定方法において、上述のように表面保護層から順次切削する。
【0115】
また、上記エロージョン率Eと同様に、エロージョン率Eの測定を実施する際も、深さ方向に存在する下層のエロージョン率Eの大小に影響を受けないことがわかっている。よって、エロージョン率Eを測定する際には、最表面に位置する表面保護層から順にMSE試験を実施してもよい。
【0116】
(化粧シートの構成)
以下に、本実施形態の化粧シート(積層体の一例)の各構成について説明する。なお、本実施形態では、透明樹脂層が単層の場合を想定して説明する。
図5は、本実施形態に係る化粧シート30の一構成例を説明するための断面模式図である。本実施形態に係る化粧シート30は、表面保護層41を備える点で、上記第1実施形態に係る化粧シート10,20と異なる。
【0117】
図5に示す化粧シートは、図面上部側から順に、表面保護層41、透明樹脂層1、接着剤層5(感熱接着剤層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、絵柄模様層6、隠蔽層3、原反層7、易接着層8を備えている。詳しくは後述するが、表面保護層41は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、特定のエロージョン率を有している。
【0118】
より詳しくは、本実施形態に係る化粧シート30は、透明樹脂層1の一方の面に、絵柄模様層6及び隠蔽層3を設け、透明樹脂層1の他方の面に、表面保護層41を設けた構成の化粧シートである。図5に示すように、化粧シート30は、原反層7と表面保護層41との間に、透明樹脂層1を備えた化粧シートである。これにより、化粧シート30は、加工特性および耐傷性をそれぞれ十分に備えるとともに耐衝撃も良好であり、化粧材表面の外観変化を抑制することができ、被着材となる基板の表装材として用いることができる。本実施形態に係る化粧シート30は、原反層7の上に少なくとも表面保護層41を備える積層体であればよい。
【0119】
以下、化粧シート30において化粧シート10と異なる構成である表面保護層41について詳細に説明する。なお、化粧シート30において、表面保護層41以外の構成は化粧シート10と同等である。このため、化粧シート10と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0120】
(表面保護層)
図5に示すように、化粧シート30は、表面保護層41を備えている。表面保護層41は、表面保護層4と同様に、化粧シート30に、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために設けられる層である。また詳しくは後述するが、表面保護層41を形成する硬化性樹脂組成物が特定のエロージョン率を有することにより、化粧シート30に、優れた加工特性および耐傷性を付与することができる。
表面保護層41は、上記第1実施形態における表面保護層4と同様に、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0121】
表面保護層41を構成する材料としては、硬化性樹脂組成物が挙げられる。本実施形態において表面保護層41は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含んでいる。
より具体的には、表面保護層41を構成する硬化性樹脂組成物は、熱で硬化する樹脂、即ち熱硬化性樹脂、または紫外線や電子線照射で硬化する樹脂、即ち電離放射線硬化性樹脂のうち、少なくとも一方を含んで形成されることが好ましい。つまり、表面保護層41は、硬化性樹脂組成物として熱硬化型樹脂のみを含んで形成されていてもよいし、電離放射線硬化型樹脂のみを含んで形成されてもよい。また、表面保護層41は、熱硬化型樹脂および電離放射線硬化型樹脂の両方、すなわち熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂との混合組成物を含んで形成されてもよい。
【0122】
表面保護層41に用いる熱硬化性樹脂としては、上記第1実施形態に係る化粧シート10の表面保護層4と同様に、例えば、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルション、溶剤系のいずれでも可能で、且つ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでもよい。それらの中でもイソシアネート反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。
具体的には、表面保護層41に用いる熱硬化型樹脂として、アクリルポリオールを主剤としてイソシアネート硬化剤を組み合わせたアクリルウレタン樹脂を用いることが好ましい。つまり、表面保護層41を構成する熱硬化性樹脂は、アクリルポリオール(アクリルポリオール化合物)とイソシアネート硬化剤とで構成されることが好ましい。
【0123】
イソシアネートには、上記第1実施形態における表面保護層4と同様に、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などの誘導体であるアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体や各種プレポリマーなどの硬化剤から適宜選択して用いることができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする硬化剤を使用することが好ましい。
【0124】
表面保護層41に用いる電離放射線硬化性樹脂としては、上記第1実施形態における表面保護層4と同様に、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、アクリルアクリレート系などから適宜選択して用いることができるが、特に、耐候(光)性が良好なウレタンアクリレート系及びアクリルアクリレート系のものを用いることが好ましい。電離放射線硬化性樹脂の硬化方法としては、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化することが作業性の観点から好ましい。電子線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては180nm以上400nm以下の範囲内が好ましい。
【0125】
表面保護層41に用いる熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合物については、上記第1実施形態における表面保護層4と同様に、例えば、熱硬化性樹脂としてのアクリルポリオールとイソシアネートとを反応して得られるウレタン系樹脂と、電離放射線硬化性樹脂としてのウレタンアクリレート系樹脂とを混合して用いることがより好ましい。熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合物を用いることによって、表面硬度を向上させるとともに、硬化収縮の抑制及び無機微粒子(無機フィラー)の密着性の少なくとも1つを向上させることができる。
【0126】
また、表面保護層41を構成する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線で硬化する紫外線硬化型性樹脂であることが好ましい。
表面保護層4を構成する紫外線硬化性樹脂は、官能基が4以上であり、質量平均分子量が500以上の成分を1種以上含むものであることが好ましい。より好ましくは、官能基が4以上であり、質量平均分子量が500以上5,000以下の範囲内の成分を1種以上含むものである。紫外線硬化性樹脂の官能基が4に満たない場合には、架橋密度が小さく、耐傷性が著しく低下するため好ましくない。紫外線硬化性樹脂の質量平均分子量が500に満たない場合には、塗工時の面状態が著しく悪化するため好ましくない。紫外線硬化性樹脂の質量平均分子量が5,000を超える場合には、塗液の粘度が上昇し、塗工適性が著しく低下するため、好ましくない。
【0127】
光開始剤の添加量は特に限定されず、主剤樹脂100質量部に対し、0.1~15質量部程度が好ましい。
光開始剤の種類は特に限定されない。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光開始剤として、例えば、アセトフェノン系やベンゾフェノン系、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル-N,Nジメチルアミノベンゾエートなどの少なくとも1種類を選択することができる。また、光源や生産環境に合わせて、複数種を組み合わせて設計することが望ましい。
また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光開始剤として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩などの少なくとも1種が選択できる。
【0128】
〔表面保護層のエロージョン率E
表面保護層41は、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが、0.5μm/g以上05.0μm/g以下(0.5μm/g≦E≦05.0μm/g)の範囲内である。つまり、表面保護層41を形成する硬化性樹脂組成物の硬化物は、上記エロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である。
表面保護層41のエロージョン率E3が0.5μm/gに満たない場合には、エロージョン率Eが小さく、加工特性(例えば、Vカット加工性、曲げ加工性)が不足するおそれがある。そのため、加工特性が低下することがある。また、表面保護層41のエロージョン率E3が5.0μm/gを超える場合には、耐傷性に劣る傾向がある。
【0129】
また、表面保護層41においてエロージョン率Eは、0.5μm/g以上3.0μm/g以下の範囲内であってもよい。エロージョン率E3を3.0μm/g以下とすることにより、耐傷性をより確実に向上することができる。
また表面保護層41においてエロージョン率Eは、1.0μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内であってもよい。エロージョン率Eを1.0μm/g以上とすることにより、加工特性を確実に向上することができる。
【0130】
このように、本実施形態に係る化粧シート30において、表面保護層41は、上述のようにエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内であることにより、優れた加工特性および耐傷性を有し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。
【0131】
〔マルテンス硬さの測定〕
また、本実施形態に係る化粧シート30は、表面保護層41を形成する硬化性樹脂組成物が特定のマルテンス硬さを有することにより、化粧シート30に、より優れた加工特性および耐傷性を付与することができる。以下、マルテンス硬さについて説明する。
本実施形態において、表面保護層41(硬化性樹脂組成物)のマルテンス硬さは、ISO14577に準拠したマルテンス硬さ測定装置(フィッシャースコープHM2000;株式会社フィッシャー・インストルメンツ)を用いて測定を行う。
マルテンス硬さの測定は、表面保護層41以外の積層された樹脂層の影響を避けるために化粧シート30の断面から行う。
具体的には、化粧シート30を冷間硬化タイプのエポキシ樹脂や紫外線(UV)硬化樹脂等の樹脂に包埋して十分に硬化させた後、化粧シート30の断面が現れるように切断して機械研磨を施すことにより測定面を得る。
具体的な測定方法は、化粧シート30の測定面における表面保護層41に対して圧子を押し込み、その押し込み深さと荷重からマルテンス硬さを算出する。
測定条件は、試験力10mN、試験力負荷所要時間10秒、試験力保持時間5秒として測定を行う。
【0132】
本実施形態に係る化粧シート30の表面保護層41における好適なマルテンス硬さは、表面保護層41の材料によって異なる。
具体的には、表面保護層41が熱硬化型樹脂で形成される場合、マルテンス硬さが80N/mm以上200N/mm以下の範囲内であることが好ましい。より具体的には、表面保護層41がアクリルポリオールとイソシアネート硬化剤とで構成され、マルテンス硬さが80N/mm以上200N/mm以下の範囲内であることが好ましい。
これにより、表面保護層41にさらに優れた加工特性および耐傷性を付与することができる。一方、表面保護層41が熱硬化型樹脂で形成される場合、マルテンス硬さが80N/mm未満であると、耐傷性が劣る傾向がある。また、マルテンス硬さが200N/mmを超えると、加工特性が劣る傾向がある。
【0133】
また、表面保護層41が電離放射線硬化性樹脂で形成される場合、マルテンス硬さが100N/mm以上400N/mm以下の範囲内であることが好ましい。より具体的には、表面保護層41が紫外線硬化型樹脂として、官能基が4以上であり質量平均分子量が500以上5,000以下である成分を1種以上含む場合、マルテンス硬さが100N/mm以上400N/mm以下の範囲内であることが好ましい。
これにより、表面保護層41にさらに優れた加工特性および耐傷性を付与することができる。一方、表面保護層41が紫外線硬化型樹脂で形成される場合、マルテンス硬さが100N/mm未満であると、耐傷性が劣る傾向がある。また、マルテンス硬さが400N/mmを超えると、加工特性が劣る傾向がある。
【0134】
表面保護層41の厚みは、4μm以上21μm以下の範囲内であってもよい。表面保護層41の厚みが4μmに満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下することがある。また、耐候性や耐傷性が低下し、バラつきが大きくなることがある。表面保護層4全体の厚みが21μmを超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることがある。また、可撓性が低下することがある。
【0135】
表面保護層41の形成方法は、上記第1実施形態における表面保護層4と同様であるため、説明は省略する。
また表面保護層41は、接着剤層5を介して原反層7に設けた絵柄模様層6と透明樹脂層1とを接合した後に透明樹脂層1に設けてもよいし、透明樹脂層1と原反層7とを接合する前に透明樹脂層1に設けてもよい。
【0136】
さらに耐候性を向上させるために、表面保護層41に紫外線吸収剤を添加してもよい。つまり、表面保護層41は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる紫外線吸収剤を用いることができる。
また、紫外線吸収剤に加えて、表面保護層41に光安定剤を適宜添加してもよい。また、各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行える。
【0137】
また表面の耐傷性の向上、あるいは意匠性付与に伴う艶(光沢)調整のため、表面保護層41は、無機材料(無機フィラー)で構成される光沢調整剤を含むことが望ましい。
表面保護層41に添加する無機フィラーは、上記第1実施形態における表面保護層4と同等であるため、詳しい説明は省略する。
【0138】
また例えば、表面保護層41の形成方法としてグラビア印刷を選択した場合、一層の塗布厚みは、上述のように、4μm以上21μm以下の範囲内が妥当である。この場合は、上述のように、一度に塗布可能な厚み以下から同程度の平均粒子径を有する無機フィラーを選択するのが好ましい。
表面保護層41における無機フィラーの含有量は、表面保護層41を構成する樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下の範囲内であることが好ましい。無機フィラーの含有量が1質量部に満たない場合には、耐傷性が低下することがある。また無機フィラーの含有量が20質量部を超える場合には、表面の艶が非常に低下するため、意匠を損なうことおよび耐候性や耐汚染性が低下すること起こり得る。
【0139】
表面保護層41が含有する無機フィラーには、上記第1実施形態における表面保護層4が含有する無機フィラーと同様に、表面処理を施すことが望ましい。無機フィラーに表面処理を施すことで、表面保護層41との結合強化を図ることができる。なお、表面保護層41には表面が未処理の無機フィラーを添加してもよい。
無機フィラーの表面処理については、上記第1実施形態における表面保護層4と同等であるため、詳しい説明は省略する。
【0140】
また、表面保護層41側の透明樹脂層1の面にエンボス模様1aを施した場合には、このエンボス模様1aの中に、表面保護層41を形成するインキをワイピング加工により埋め込んで意匠性を向上させることも可能である。
耐候性の面からは、基材としての透明樹脂層1を守るために、上記のように表面保護層41及び透明樹脂層1にそれぞれ耐候性を付与する方法もある。また、それだけではなく、絵柄模様層6を守るために、接着剤層5、絵柄模様層6自体にそれぞれ紫外線吸収剤及び光安定剤を添加する方法もある。
【0141】
図5では、表面保護層41が単層である例を説明したが、本実施形態に係る化粧シート30において表面保護層41は単層に限られない。表面保護層41は単層であってもよいし、複層構成であってもよい。つまり、表面保護層41は1層以上で構成されていればよい。したがって、表面保護層41は、全体での厚みが4μm以上21μm以下の範囲内であってもよい。
また、表面保護層41が複層構成である場合、表面保護層41の最上層が上記特定のエロージョン率Eを有していればよい。また、表面保護層41が複層構成である場合、表面保護層41の全体でのマルテンス硬さが80N/mm以上200N/mm以下の範囲内であることが好ましい。また、表面保護層41が複層構成の場合、異なる樹脂で形成される層が含まれていてもよい。
また、表面保護層41が複層構成である場合、光沢調整剤は、複層構成のうち1層以上に含まれていればよい。
また、表面保護層41が複層である場合、少なくとも最上層が硬化性樹脂組成物の硬化物を含んで構成されていればよく、異なる種類の樹脂材料で形成された層が含まれていてもよい。
【0142】
以上、化粧シート30において、上記第1実施形態に係る化粧シート10と相違する構成について詳しく説明した。
化粧シート30における透明樹脂層1は、上述のように表面保護層41が特定のエロージョン率を有する事で、化粧材の外観変化を抑制することができる。
また、本実施形態に係る化粧シート30において、上記第1実施形態に係る化粧シート10の透明樹脂層1と同様に、透明樹脂層1の上記エロージョン率Eを0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内とすることで、優れた加工特性および耐傷性に加え、優れた耐衝撃性を有し、化粧材の外観変化をさらに抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。
なお、化粧シート30において表面保護層41が特定の上記エロージョン率Eを有していればよく、化粧シート30の透明樹脂層1のエロージョン率は特定の範囲に限られない。つまり、透明樹脂層1は、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粉末を用いて測定した上述のエロージョン率Eが0.5μm/g以上10.0μm/g以下の範囲内でなくてもよい。
【0143】
また、本実施形態において、化粧シート30が透明樹脂層として化粧シート10と同等の透明樹脂層1を備える例を説明したが、本実施形態に係る化粧シート30の構成はこれに限られない。例えば、化粧シート30は、透明樹脂層として上記第1実施形態の第1変形例に係る化粧シート20における副層構成の透明樹脂層11(透明樹脂層1,2)を備えていてもよい(図示省略)。
つまり、化粧シート30は、上部から表面保護層41、透明樹脂層1、透明樹脂層2、接着剤層5(感熱接着剤層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、絵柄模様層6、隠蔽層3、原反層7、易接着層8を備える構成であってもよい。
【0144】
(2.1)第1変形例
本開示の第2実施形態の第1変形例に係る化粧材について、図6を用いて説明する。本実施形態に係る化粧シートは、被着材としての化粧材用基材と積層することにより化粧材を作製する用途に好適に用いることができる。図6は、本開示の第2実施形態の第1変形例に係る化粧材200の一構成例を説明するための断面図である。
【0145】
図6に示すように、本変形例に係る化粧材200は、本実施形態に係る化粧シート30の表面保護層41が最表面層となるように、化粧シート30を化粧材用基材17上に積層することにより得られる。すなわち、化粧材100は、接着剤15および化粧材用基材17を備える点で、上記第2実施形態に係る化粧シート30と相違する。
【0146】
(化粧材)
図6に示すように、化粧材200は、化粧シート30における原反層7の一方の面側に、隠蔽層3、絵柄模様層6、接着剤層5、透明樹脂層1および表面保護層41がこの順に積層されており、原反層7の他方の面側に、易接着層8、接着剤15および化粧材用基材17が設けられている。つまり、化粧材200は、化粧材用基材17と、化粧材用基材17に貼り合わされた積層体である化粧シート30と、を備える。
これにより、化粧材200は、優れた耐傷性および耐衝撃性を有し、外観変化を抑制可能な化粧材を提供することが可能となる。
【0147】
(化粧材用基材)
化粧材用基材17としては、木質基材又は金属基材を使用することができる。木質基材としては、例えば木材単板、木材合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板、チップボード等を採用することができる。また、金属基材としては、鋼板・アルミ板などを採用することができる。また、化粧材用基材17は、プラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。化粧材用基材17を樹脂基材とする場合、例えば塩化ビニル樹脂を採用することができる。
また化粧材用基材17は、例えば不燃仕様の鋼板又は建設省告示1400号で定められた不燃材料から構成しても良い。
化粧材用基材17の形状は特に限定されないが、例えば平板とすることができる。化粧材用基材17と化粧シート30とを貼り合わせるには、接着剤15を用いることができる。接着剤15は、上記第1実施形態の第2変形例における接着剤15と同等であるため、同一の符号を付して、説明は省略する。
【0148】
化粧材用基材17と化粧シート30とを貼り合わせる際は、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレス等の貼着装置を用いることができる。
化粧材用基材17と化粧シート30との接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナを用いてサネ加工、V字形状の溝加工、四辺の面取り加工(例えばC面取り加工)等を施してもよい。
【0149】
本変形例による化粧材200は、上記化粧材100と同様に、化粧シート30側から化粧材用基材17に至る溝部及び/又は面取り部を設けて、当該溝部及び面取り部を着色塗料によって塗装してもよい。着色塗料は、上記化粧材100と同様のものを用いればよい。
【0150】
(第2実施形態の効果)
本実施形態に係る化粧シートおよび化粧材は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態に係る化粧シート30は、原反層7の上に少なくとも表面保護層41を備える積層体であって、表面保護層41は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、平均粒子径(D50)が1.1μmの球形シリカ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である。
この構成によれば、加工特性および耐傷性をそれぞれ十分に備え、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧シートを提供することができる。
(2)化粧シート30において表面保護層41は、エロージョン率Eが0.5μm/g以上3.0μm/g以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、化粧シート30において耐傷性をより確実に向上することができる。
(3)化粧シート30において表面保護層41は、前記エロージョン率Eが1.0μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内であってもよい。
この構成によれば、化粧シート30において加工特性を確実に向上することができる。
【0151】
(4)化粧シート30において表面保護層41を構成する硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または電離放射線硬化性樹脂のうち少なくとも一方を含む。
この構成によれば、耐光性を良好とすることができ、また電離放射線硬化性樹脂を含むことで、作製コストの上昇を抑えて作業性、樹脂凝集力を良好とすることができる。
(5)化粧シート30において、表面保護層41を構成する熱硬化性樹脂は、アクリルポリオールとイソシアネート硬化剤とで構成され、マルテンス硬さが80N/mm以上200N/mm以下の範囲内である
この構成によれば、化粧シート30においてさらに優れた加工特性および耐傷性を付与することができる。
(6)化粧シート30において、表面保護層41を構成する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であって、質量平均分子量が500以上5,000以下の範囲内であり且つ官能基数が4以上である成分を1種類以上含み、マルテンス硬さが100N/mm以上400N/mm以下の範囲内である。
この構成によれば、化粧シート30においてさらに優れた加工特性および耐傷性を付与することができる。
【0152】
(7)化粧シート30は、原反層7と表面保護層41との間に、透明樹脂層1を備えた化粧シートである。
この構成によれば、化粧シート30は、加工特性および耐傷性をそれぞれ十分に備えるとともに耐衝撃も良好であり、化粧材表面の外観変化を抑制することができ、被着材となる基板の表装材として用いることができる。
(8)化粧シート30において表面保護層41は1層以上で構成され、表面保護層全体での厚みは、4μm以上21μm以下の範囲内である。
この構成によれば、化粧シート30の生産性が安定して性能とコストのバランスが良好であり製造時のコストの上昇も抑制され、また可撓性も良好とすることができる。
(9)化粧シート30において表面保護層31は、無機材料で構成される光沢調整剤を含む。
この構成によれば、化粧シート30の表面の耐傷性を向上し、意匠性付与に伴う艶(光沢)調整を行うことができる。
(10)化粧シート30において表面保護層41は、紫外線吸収剤を含む。
この構成によれば、耐候性をより向上させることができる。
(11)本実施形態に係る化粧材200は、化粧材用基材17と、化粧材用基材17に貼り合わされた積層体である化粧シート30と、を備える。
この構成によれば、加工特性および耐傷性をそれぞれ十分に備え、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧材を提供することができる。
【0153】
(2.2)第2実施例
以下に、本開示の第2実施形態に係る化粧シートの具体的な実施例である第2実施例(以下、「本実施例」という)について検討する。
なお本開示の第2実施形態は、下記の実施例に限定されるものではない。
また、本実施例では、表面保護層41を形成する塗材として以下の塗材A~Tを用いた。各実施例および比較例における表面保護層41の硬さ(エロージョン率Eおよびマルテンス硬度)は、塗材A~Tそれぞれの処方によって制御した。以下、各塗材について詳細に説明する。
また、塗材A~Tに用いた材料(電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤)の構成について、表2-4に示す。なお、本実施例において電離放射線硬化性樹脂はアクリレート化合物、熱硬化性樹脂はアクリルポリマーをそれぞれ用いた。
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
<塗材A>
〔主剤〕
塗材Aは、表2に示す電離放射線硬化性樹脂1(4-5官能、質量平均分子量Mwが2300であるアクリレート化合物)を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Aは上記主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
紫外線吸収剤「Tinuvin479(BASF製):5質量部;
光安定剤「Tinuvin123(BASF製)」:5質量部;
希釈溶剤として酢酸エチル:50質量部;
光沢調整剤としてサイリシア730(富士シリシア製):15質量部;
【0158】
<塗材B>
〔主剤〕
塗材Bは表2に示す電離放射線硬化性樹脂1と表3に示す熱硬化性樹脂1(ガラス転移温度が約100℃、質量平均分子量Mwが37,000、水酸基価が60であるアクリルポリマー)とを4:1の割合で配合した樹脂材料を主剤として構成した。
熱硬化性樹脂1には、表4に示す硬化剤1(NCO%12のHDI系イソシアネート硬化剤)を用いた。
〔処方〕
塗材Bは上記主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
光重合開始剤「Omnirad184(IGM Resins B.V.製)」:2質量部;
硬化剤1:3質量部;
また塗材Bでは、上記塗材Aと同じ紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤は、上記塗材Aと同じ配合割合として調整した。
【0159】
<塗材C>
〔主剤〕
塗材Cは表3に示す熱硬化性樹脂2(ガラス転移温度が約100℃、質量平均分子量Mwが55,000、水酸基価が40であるアクリルポリマー)を主剤として構成した。
熱硬化性樹脂2には、表4に示す硬化剤2(NCO%21のHDI系/XDI系イソシアネート硬化剤)を用いた。
〔処方〕
塗材Cは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤2:5質量部;
また塗材Cでは、上記塗材Aと同じ紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Aと同じ配合割合として調整した。
【0160】
<塗材D>
(1)塗材D1
〔主剤〕
塗材D1は表2に示す電離放射線硬化性樹脂2(3-6官能、質量平均分子量Mwが800~2500であるアクリレート化合物)と表3に示す熱硬化性樹脂2とを4:1の割合で配合した樹脂材料を主剤として構成した。塗材Cと同様に、熱硬化性樹脂2には表4に示す硬化剤2を用いた。
〔処方〕
塗材D1は、上記主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤2:5質量部
また、上記塗材Bと同じ光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材B同じ配合割合として調整した。
(2)塗材D2
添加剤として紫外線吸収剤および光安定剤を配合しない点を除き、上記塗材D1と同様の処方で、塗材D2を調整した。
(3)塗材D3
添加剤として光沢調整剤を配合しない点を除き、上記塗材D1と同様の処方で塗材D3を調整した。
(4)塗材D4
添加剤として紫外線吸収剤、光安定剤および光沢調整のいずれも配合しない点を除き、上記塗材D1と同様の処方で塗材D4を調整した。
【0161】
<塗材E>
〔主剤〕
塗材Eは表2に示す電離放射線硬化性樹脂3(3官能、質量平均分子量Mwが3500であるアクリレート化合物)を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Eは主剤100部に対して、上記塗材Bと同じ光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Bと同じ配合割合として調整した。
<塗材F>
〔主剤〕
塗材Fは表2に示す電離放射線硬化性樹脂4(10官能、質量平均分子量Mwが2000であるアクリレート化合物)を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Fは主剤100部に対して、上記塗材Aと同じ紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Aと同じ配合割合として調整した。
<塗材G>
〔主剤〕
塗材Gは表3に示す熱硬化性樹脂3(質量平均分子量Mwが70,000、水酸基価が38であるアクリルポリマー)を主剤として構成した。熱硬化性樹脂3には硬化剤として上記硬化剤2を用いた。
〔処方〕
塗材Gは主剤100部に対して、上記塗材Cと同じ硬化剤2、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Cと同量配合して調整した。
<塗材H>
〔主剤〕
塗材Hは、表2に示す電離放射線硬化性樹脂5(5-6官能、質量平均分子量Mwが800であるアクリレート化合物)を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Hは主剤100質量部に対して、上記塗材Bと同じ光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Bと同じ配合割合として調整した。
【0162】
<塗材I>
〔主剤〕
塗材Iは表2に示す電離放射線硬化性樹脂6(3官能、質量平均分子量Mwが2400であるアクリレート化合物)と表3に示す熱硬化性樹脂3とを1:1の割合で配合した樹脂材料を主剤として構成した。
電離放射線硬化性樹脂6には、表4に示す硬化剤3(NCO%9のHDI系イソシアネート硬化剤)を用いた。
〔処方〕
塗材Iは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤3:5質量部;
また、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤は、上記塗材Bと同材料を同じ配合割合として調整した。
<塗材J>
〔主剤〕
塗材Jは表2に示す電離放射線硬化性樹脂6と表3に示す熱硬化性樹脂3とを3:1の割合で配合した樹脂材料を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Jは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤1:5質量部;
また、上記塗材Bと同じ光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Bと同じ配合割合として調整した。
<塗材K>
〔主剤〕
塗材Kは表2に示す電離放射線硬化性樹脂6と表3に示す熱硬化性樹脂4(ガラス転移温度が約50℃、質量平均分子量Mwが140,000、水酸基価が40であるアクリルポリマー)とを1:1の割合で配合した樹脂材料を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Kは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤3:5質量部;
また、上記塗材Aと同じ紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Aと同じ配合割合として調整した。
<塗材L>
〔主剤〕
塗材Lは、表2に示す電離放射線硬化性樹脂4と表3に示す熱硬化性樹脂4とを1:2の割合で配合した樹脂材料を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Lは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤3:5質量部;
また、上記塗材Bと同じ光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Bと同じ配合割合として調整した。
【0163】
<塗材M>
〔主剤〕
塗材Mは表3に示す熱硬化性樹脂4を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Mは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤3:5質量部;
また、上記塗材Aと同じ紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Aと同じ配合割合として調整した。
<塗材N>
〔主剤〕
塗材Nは表2に示す電離放射線硬化性樹脂4と表3に示す熱硬化性樹脂3とを1:1の割合で配合した樹脂材料を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Nは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤3:5質量部;
また、上記塗材Aと同じ紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Aと同じ配合割合として調整した。
<塗材O>
〔主剤〕
塗材Oは、表2に示す電離放射線硬化性樹脂2を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Oは主剤100質量部に対して、上記塗材Bと同じ光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Bと同じ配合割合として調整した。
<塗材P>
〔主剤〕
塗材Pは、表3に示す熱硬化性樹脂4を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Pは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤3:10質量部;
また、上記塗材Aと同じ紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Aと同じ配合割合として調整した。
【0164】
<塗材Q>
〔主剤〕
塗材Qは、表2に示す電離放射線硬化性樹脂7(10官能、質量平均分子量Mwが4900であるアクリレート化合物)と表3に示す熱硬化性樹脂1を3:1の割合で配合した樹脂材料を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Qは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤1:5質量部;
また、上記塗材Bと同じ光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Bと同じ配合割合として調整した。
<塗材R>
〔主剤〕
塗材Rは、表2に示す電離放射線硬化性樹脂3と表3に示す熱硬化性樹脂5(ガラス転移温度が約50℃、質量平均分子量Mwが20,000、水酸基価が135であるアクリルポリマー)とを1:1の割合で配合した樹脂材料を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Rは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤3:5質量部;
また、上記塗材Bと同じ光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Bと同じ配合割合として調整した。
<塗材S>
〔主剤〕
塗材Sは、表2に示す電離放射線硬化性樹脂7を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Sは主剤100質量部に対して、上記塗材Bと同じ光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Bと同じ配合割合として調整した。
<塗材T>
塗材Tは、表3に示す熱硬化性樹脂5を主剤として構成した。
〔処方〕
塗材Tは主剤100質量部に対して、以下の添加剤を配合して調整した。
硬化剤3:10質量部;
また、上記塗材Aと同じ紫外線吸収剤、光安定剤、希釈溶剤及び光沢調整剤を上記塗材Aと同じ配合割合として調整した。
【0165】
(実施例2-1)
原反層7として隠蔽性のあるポリエチレン原反(厚み70μm)に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ(株)製)を用い木目柄をグラビア印刷して絵柄模様層6(厚さ3μm)を設け、さらに接着剤層5として接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製)(厚み2μm)を介し、透明樹脂層1をドライラミネートした。
透明樹脂層1は、上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂Aで形成した。より詳細には、ポリプロピレン樹脂A100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(CYASORB UV-1164;SUNCHEM製)を0.5質量部、NOR型光安定剤(Tinuvin XT850 FF;BASF社製)を0.5質量部それぞれ配合した樹脂材料を、溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層1として使用する厚さ90μmの透明樹脂シート(保護フィルム)を製膜した。
【0166】
さらに、透明樹脂層1(上記保護フィルム)上に上述の塗材Aを用いて表面保護層41を塗布形成(厚み5μm)した。塗材Aを用いることで、エロージョン率Eが0.5μm/g、マルテンス硬度Hmが190N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また表面保護層41の硬化手法は電子線(EB:Electron Beam)照射とした。
以上のようにして、実施例2-1の化粧シート30を得た。
【0167】
(実施例2-2)
表面保護層41を、塗材Bを用いて形成し、エロージョン率Eが1.0μm/g、マルテンス硬度Hmが175N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法は紫外線(UV:ultraviolet)照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-2の化粧シート30を得た。
(実施例2-3)
表面保護層41を、塗材Cを用いて形成し、エロージョン率Eが1.7μm/g、マルテンス硬度Hmが140N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、また表面保護層41の硬化手法は熱硬化とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-3の化粧シート30を得た。
(実施例2-4)
表面保護層41を、塗材D1を用いて形成し、エロージョン率Eが1.5μm/g、マルテンス硬度Hmが175N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-4の化粧シート30を得た。
(実施例2-5)
表面保護層41を、塗材Eを用いて形成し、エロージョン率Eが2.2μm/g、マルテンス硬度Hmが80N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-5の化粧シート30を得た。
【0168】
(実施例2-6)
表面保護層41を、塗材Fを用いて形成し、エロージョン率Eが2.2μm/g、マルテンス硬度Hmが200N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-6の化粧シート30を得た。
(実施例2-7)
表面保護層41を、塗材Gを用いて形成し、エロージョン率Eが2.2μm/g、マルテンス硬度Hmが100N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法は熱硬化とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-7の化粧シート30を得た。
(実施例2-8)
表面保護層41を、塗材Hを用いて形成し、エロージョン率Eが2.2μm/g、マルテンス硬度Hmが400N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-8の化粧シート30を得た。
(実施例2-9)
表面保護層41を、塗材Iを用いて形成し、エロージョン率Eが2.2μm/g、マルテンス硬度Hmが130N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-9の化粧シート30を得た。
【0169】
(実施例2-10)
表面保護層41を、塗材Jを用いて形成し、エロージョン率Eが2.2μm/g、マルテンス硬度Hmが190N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-10の化粧シート30を得た。
(実施例2-11)
表面保護層41を、塗材Kを用いて形成し、エロージョン率Eが3.0μm/g、マルテンス硬度Hmが125N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-11の化粧シート30を得た。
(実施例2-12)
表面保護層41を、塗材Lを用いて形成し、エロージョン率Eが4.0μm/g、マルテンス硬度Hmが130N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-12の化粧シート30を得た。
(実施例2-13)
表面保護層41を、塗材Mを用いて形成し、エロージョン率Eが5.0μm/g、マルテンス硬度Hmが100N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法は熱硬化とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-14の化粧シート30を得た。
【0170】
(実施例2-14)
表面保護層41を、塗材Nを用いて形成し、エロージョン率Eが2.2μm/g、マルテンス硬度Hmが130N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の厚みを25μmとした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-14の化粧シート30を得た。
(実施例2-15)
表面保護層41を、塗材Oを用いて形成し、エロージョン率Eが0.9μm/g、マルテンス硬度Hmが420N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-15の化粧シート30を得た。
(実施例2-16)
表面保護層41を、塗材Pを用いて形成し、エロージョン率Eが3.0μm/g、マルテンス硬度Hmが60N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法は熱硬化とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-16の化粧シート30を得た。
【0171】
(実施例2-17)
表面保護層41を、塗材D1を用いて形成し、エロージョン率Eが1.4μm/g、マルテンス硬度Hmが175N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とし、表面保護層41の厚みは4μmとした。それ以外は実施例2-1と同様にして、実施例2-17の化粧シート30を得た。
(実施例2-18)
表面保護層41の厚みを21μmとした以外は、実施例2-17と同様にして実施例2-18の化粧シート30を得た。
(実施例2-19)
表面保護層41の厚みを3μmとした以外は、実施例2-17と同様にして実施例2-18の化粧シート30を得た。
【0172】
(実施例2-20)
表面保護層41を、塗材D2を用いて形成し、エロージョン率Eが1.4μm/g、マルテンス硬度Hmが175N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-20の化粧シート30を得た。
(実施例2-21)
表面保護層41を、塗材D3を用いて形成し、エロージョン率Eが1.5μm/g、マルテンス硬度Hmが175N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-21の化粧シート30を得た。
(実施例2-22)
表面保護層41を、塗材D4を用いて形成し、エロージョン率Eが1.4μm/g、マルテンス硬度Hmが175N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-22の化粧シート30を得た。
【0173】
(実施例2-23)
表面保護層41を、塗材D1を用いて形成し、エロージョン率Eが1.5μm/g、マルテンス硬度Hmが175N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして得た化粧シート30を、ウレタン樹脂を主剤とする接着剤を用いて被着材(アルマイト処理を施したアルミ基材(厚さ1mm))に貼り合わせて、実施例2-23による化粧材200を得た。
(実施例2-24)
表面保護層41を、塗材Iを用いて形成し、エロージョン率Eが2.2μm/g、マルテンス硬度Hmが125N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層41の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして得た化粧シート30を、実施例2-23と同じ被着材に貼り合わせて、実施例2-24による化粧材200を得た。
【0174】
(比較例2-1)
表面保護層を、塗材Qを用いて形成し、エロージョン率Eが0.3μm/g、マルテンス硬度Hmが300N/mmとなるように表面保護層41の硬さを調整した。また、表面保護層の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、比較例2-1の化粧シートを得た。
(比較例2-2)
表面保護層を、塗材Rを用いて形成し、エロージョン率Eが6.0μm/g、マルテンス硬度Hmが80N/mmとなるように表面保護層の硬さを調整した。また、表面保護層の硬化手法はUV照射とした。それ以外は実施例2-1と同様にして、比較例2-2の化粧シートを得た。
(比較例2-3)
表面保護層を、塗材Sを用いて形成し、エロージョン率Eが0.3μm/g、マルテンス硬度Hmが450N/mmとなるように表面保護層の硬さを調整した。また、表面保護層の硬化手法はUV照射とし、表面保護層の厚みを25μmとした。それ以外は実施例2-1と同様にして、比較例2-3の化粧シートを得た。
(比較例2-4)
表面保護層を、塗材Tを用いて形成し、エロージョン率Eが6.0μm/g、マルテンス硬度Hmが50N/mmとなるように表面保護層の硬さを調整した。また、表面保護層の硬化手法は熱硬化とし、表面保護層の厚みを25μmとした。それ以外は実施例2-1と同様にして、比較例2-4の化粧シートを得た。
【0175】
<MSE試験におけるエロージョン率測定>
実施例2-1~2-24及び比較例2-1~2-4で得られた各化粧シートのエロージョン率E(エロージョン率E)の測定方法について、以下で説明する。
平均粒子径(D50)=1.1μmの球形シリカ粒子を水に分散させて、スラリーの総質量に対して球形シリカ粒子を1質量%含むスラリーを調製した。各化粧シートを台に固定し、その化粧シートと、上記スラリーを噴射するためのノズルの投射距離を4mmに設定した。ノズルのノズル径は1mm×1mmとした。ノズルから球形シリカ粒子を含んだスラリーを噴射し、台に固定された化粧シートを表面保護層から順次切削した。この時の噴射強度は、事前に同様の実験条件にて既存の硬さ基準片を切削し、スラリーの噴射量に対する削れた変位(即ち、スラリー1gを吹き付けた際に切削される深さ)から標準投射力Xを求め、その値に基づいて決定した。球形シリカ粒子を用いた本実施例における測定方法では、既存の硬さ基準片PMMAに対して1.86μm/g削れたときの投射力を標準投射力Xとした。
本実施例では、上記エロージョン処理と上記形状測定器による形状測定とを、対象の場所を変えながら設定回数(10回)繰り返して実施し、10回分の形状計測データを取得した。また、本実施例では、上述の投射力より算出した投射粒子量X’[g]とエロージョン深さZ[μm]とを用いて、エロージョン率E[μm/g]を算出した。
【0176】
本実施例において、X=1投射力(既存の硬さ基準片PMMAに対して1.86μm/g削れたときの投射力)とした。切削された部分を水で洗浄した後に、切削の深さ、即ちエロージョン深さZを測定した。エロージョン深さZは、触針式表面形状測定器(株式会社小坂研究所製/型式PU-EU1/計測速度0.2mm/sec)で測定された値である。より詳しくは、まず、計測長の中で摩耗していない両端基準エリアA、Bを用いて傾き補正を実施した。次に、基準となる回帰直線から摩耗痕中心部C(50μm幅の平均値)までの段差を測定した。次に、0g投射での段差データと、各投射量での段差データとの差分をとり、エロージョン深さZを取得した。取得した投射量-エロージョン深さZの各データから、エロージョン進行グラフおよびエロージョン率分布グラフを作成した。こうして、エロージョン深さZを特定した。
<表面保護層厚み>
実施例2-1~2-24及び比較例2-1~2-4の化粧シートの断面観察を行い、厚みを計測した。具体的には、各実施例および各比較例の化粧シートを冷間硬化タイプのエポキシ樹脂やUV硬化樹脂等の樹脂に包埋して十分に硬化させた後、化粧シートの断面が現れるように切断して機械研磨を施すことにより測定面を得た。
具体的な測定方法は、「走査電子顕微鏡 SU3800(株式会社日立ハイテク)」にて断面観察を行い、エンボス加工の影響を避けるため、凹凸の少ない部分を中心にn100測長し、平均を算出した。
【0177】
<マルテンス硬さの測定>
実施例2-1~2-24及び比較例2-1~2-4の化粧シートにおいて表面保護層のマルテンス硬度は以下のようにして測定した。
ISO14577に準拠したマルテンス硬さ測定装置(フィッシャースコープHM2000;株式会社フィッシャー・インストルメンツ)を用いて測定を行った。
サンプルは、測定時に原反層以外の積層された樹脂層の影響を避けるために各実施例および各比較例の化粧シートの断面から行った。
具体的には、各実施例および各比較例の化粧シートを冷間硬化タイプのエポキシ樹脂やUV硬化樹脂等の樹脂に包埋して十分に硬化させた後、化粧シートの断面が現れるように切断して機械研磨を施すことにより測定面を得た。
具体的な測定方法は、各サンプルの測定面における原反層に対して圧子を押し込み、その押し込み深さと荷重からマルテンス硬さを算出した。
測定条件は、試験力10mN、試験力負荷所要時間10秒、試験力保持時間5秒として測定を行った。算出した各サンプルのマルテンス硬さは表5に示す通りである。
【0178】
(評価)
上記の方法により得られた実施例2-1~2-24及び比較例2-1~2-4の化粧シートまたは化粧材に対し、加工特性および耐傷性評価を以下のように行った。
【0179】
<加工特性>
加工特性の評価は以下(1)、(2)の2種類の方法で評価を行った。
(1)建具基材である厚み3mmのMDF(広葉樹)の表面に、接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(重量比BA-10L/BA-11B=100:2.5))をウエット状態で100g/mに塗工した後、実施例2-1~2-22及び比較例2-1~2-4の化粧シートをそれぞれ貼り合わせ、24時間養生することで、実施例2-1~2-24及び比較例2-1~2-4の建具化粧材とした。なお、実施例2-23、2-24については、MDFへの加工は行わずに、上述のとおり被着材であるアルミ基材(アルミ板)に貼り合わせた化粧材として評価した。これらの建具化粧材にVカット加工を実施し、折り曲げ頂上部の目視確認にて外観状態を確認した。Vカット加工は、建具化粧材において化粧シートが張り付けられていない面側から上記建具基材と化粧シートとを貼り合わせている境界まで、化粧シートにキズが付かないようにV型の溝を入れた。次に、実施例2-1~2-24及び比較例2-1~2-4の化粧シートを貼付した面が山折りとなるようにして、建具基材を当該V型の溝に沿って90度まで折り曲げた。次に、化粧シートの表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂などが生じていないかを光学顕微鏡および目視を用いて観察し、耐後加工性の優劣の評価を行った。
(2)化粧シートを常温下で表面保護層が表出するように180°の方向へ折り曲げ、その外観を目視で評価した。
【0180】
上記(1)、(2)ともに下記の評価基準で評価を行い、表5に記載した。なお、評価が「◎」~「―」であれば実使用において問題ないと評価される。
◎:いずれの観察方法でも折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れ、白化等を確認できない
〇:折り曲げ頂上部に光学顕微鏡で観察すると一部に軽微な表面保護層の割れ、白化等が発生するが、目視では分からない
―:折り曲げ頂上部に光学顕微鏡で観察すると表面保護層の割れ、白化等が発生するが、目視では分からない
×:折り曲げ頂上部に、目視でもわかる顕著な表面保護層の割れ、白化が発生している
【0181】
<耐傷性>
耐傷性の評価は以下(1)「ホフマンスクラッチ試験」、(2)「スチールウール摩耗試験」の2種類の方法で評価を行った。なお、耐傷性の評価においても、上記加工特性の評価と同様にMDF(広葉樹)の表面に上記接着剤を用いて実施例2-1~2-24及び比較例の2-1~2-4の化粧シートをそれぞれ貼り合わせた化粧材を用いた。
〔耐傷性試験(1)(ホフマンスクラッチ試験)〕
米国BYK-GARDNER社製のホフマンスクラッチ試験機を用いて試験を行った。具体的には、各実施例および各比較例の化粧材の化粧シート表面に対して45°の角度で接するようにスクラッチ刃(φ7mmの円柱形の刃)をセットし、試験機を化粧材上で10cm移動させた。100gから、100g荷重ずつ徐々に荷重(錘)を高めていき、化粧シート表面に擦り傷、圧痕等が生じない最も重い荷重を測定し、以下の評価基準に従って評価した。なお、評価が「◎」、「〇」、「-」であれば実使用において問題ないと評価される。
◎:1000g以上の荷重において連続した3mmを超す傷が認められない
〇:500g以上900以下の荷重において連続した3mmを超す傷が認められない
―:300g以上500g未満の荷重において連続した3mmを超す傷が認められない
×:200g以下荷重において連続した3mmを超す傷が認められる
【0182】
〔スチールウール摩耗試験〕
スチールウールラビング(摩耗)試験は、各実施例および各比較例の化粧材の表面(化粧シート)に対し、スチールウールを当接させた状態で治具を用いて固定し、当該治具に500g/cmの荷重をかけたまま一定の速度で、距離50mm、50往復の条件にて擦らせて、化粧シートの表面の傷つきの有無を目視にて判定した。スチールウールは、ボンスター#0(日本スチールウール(株)製)を1cm角に丸めて使用した。
◎:ツヤ変化及び傷なし
〇:わずかなツヤ変化が確認できるが、傷はなし
―:ツヤ変化がありわずかに傷が発生
×:ツヤ変化があり多数の傷が発生
なお、本スチールウール摩耗試験において、「◎」、「○」、「―」を合格とした。
【0183】
以下の表5に、第2実施例における各実施例及び比較例の化粧シートの構成と合わせて、上記加工特性および耐傷性の評価結果を示す。
【0184】
【表5】
【0185】
<加工特性の評価結果>
表5に示すように、実施例2-1~2-24の化粧シートはいずれも、加工特性((1)及び(2))が合格(「-」以上)となり、加工特性に優れる結果となった。
具体的には、表面保護層が硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、平均粒子径(D50)が1.1μmの球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層のエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である各実施例の化粧シートは、加工に適した柔軟性を有し、加工特性が良好であることが分かった。
より詳細には、各実施例の化粧シートにおいて、マルテンス硬度Hmが200N/mm以下である場合、加工特性の評価(1)、(2)のうち少なくとも一方が「〇」以上であり、加工特性がより良好となることが分かった。
【0186】
<耐傷性の評価結果>
また表5に示すように、実施例2-1~2-24の化粧シートは、耐傷性(ホフマンスクラッチ試験及びスチールウール摩耗試験)がいずれも合格(「-」以上)となり、耐傷性に優れる結果となった。
具体的には、表面保護層が硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、表面保護層の上記エロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である各実施例の化粧シートは、柔軟でありながら実使用に耐え得る硬さを有し、耐傷性が良好であることが分かった。
より詳細には、各実施例の化粧シートにおいて、マルテンス硬度Hmが80N/mm以上である場合、耐傷性評価(ホフマンスクラッチ試験、スチールウール摩耗試験)がいずれも「〇」以上であり、耐傷性がより良好となることが分かった。
【0187】
各実施例の化粧シートにおいて、マルテンス硬度Hmが200N/mm以下である場合、加工特性の評価(1)、(2)のうち少なくとも一方が「〇」以上であり、加工特性がより良好となることが分かった。
またさらに、各実施例の化粧シートにおいて、マルテンス硬度Hmが80N/mm以上である場合、耐傷性評価(ホフマンスクラッチ試験、スチールウール摩耗試験)がいずれも「〇」以上であり、耐傷性がより良好となることが分かった。
【0188】
<総合的な評価結果>
表5より明らかなように、本開示の第1実施例2-1~1-24の化粧シートは、全ての評価項目で「合格」であり、加工特性および耐傷性にバランスよく優れる結果となった。つまり、本開示の第2実施形態に係る化粧シート及び化粧材は優れた加工特性、耐傷性を有することが示された。
具体的には、表面保護層が硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、平均粒子径(D50)が1.1μmの球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層のエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である各実施例の化粧シートは、加工特性および耐傷性をそれぞれ十分に備え、化粧材表面の外観変化を抑制することができることが分かった。
【0189】
一方、表5に示すように、表面保護層のエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内でない比較例2-1~2-4の化粧シートでは、加工特性および耐傷性評価のうちいずれか一方が不合格「×」となり、優れた加工特性および耐傷性を両立できず、化粧材表面の外観変化を抑制することができなかった。
【0190】
また、例えば、本実施形態は以下のような構成を取ることができる。
(1)
原反の上に少なくとも表面保護層を備える積層体であって、
前記表面保護層は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、平均粒子径(D50)が1.1μmの球形シリカ粒子を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする積層体。
(2)
前記表面保護層は、前記エロージョン率Eが0.5μm/g以上3.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)に記載の積層体。
(3)
前記表面保護層は、前記エロージョン率Eが1.0μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)に記載の積層体。
(4)
前記表面保護層を構成する前記硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または電離放射線硬化性樹脂のうち少なくとも一方を含む
ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の積層体。
(5)
前記表面保護層を構成する前記熱硬化性樹脂は、アクリルポリオールとイソシアネート硬化剤とで構成され、マルテンス硬さが80N/mm以上200N/mm以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(4)に記載の積層体。
(6)
前記表面保護層を構成する前記電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であって、質量平均分子量が500以上5,000以下の範囲内であり且つ官能基数が4以上である成分を1種類以上含み、マルテンス硬さが100N/mm以上400N/mm以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の積層体。
(7)
前記原反と前記表面保護層との間に、透明樹脂層を備えた化粧シートである
ことを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の積層体。
(8)
前記表面保護層は1層以上で構成され、
前記表面保護層全体での厚みは、4μm以上21μm以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の積層体。
(9)
前記表面保護層は、無機材料で構成される光沢調整剤を含む
ことを特徴とする上記(1)から(8)のいずれか1項に記載の積層体。
(10)
前記表面保護層は、紫外線吸収剤を含む
ことを特徴とする上記(1)から(9)のいずれか1項に記載の積層体。
(11)
化粧材用基材と、
前記化粧材用基材に貼り合わされた上記(1)から(10)のいずれか1項に記載の積層体と、
を備えることを特徴とする化粧材。
【0191】
3.第3実施形態
本開示の第3実施形態に係る化粧シート(積層体の一例)について説明する。
上述のように、内装材又は外装材、建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は家電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装材又は外装材には、一般的に、鋼板等の金属部材、樹脂部材、木質部材等で構成された被着材に化粧シートを貼り合わせて用いる。
化粧シートを被着材に貼り合わせる際、被着材の形状に合わせて、角端部や曲面に化粧シートを沿わせて貼り付けたり、化粧シートを貼り合わせたのち溝を刻み折り曲げて目的の意匠を施したり、といった加工を行うことが一般的である。
【0192】
積層体である化粧シートは、上述のように内装材や外装材、建具又は造作部材など、幅広い用途に使用される。このため、耐候性に優れ層間密着性が良好であることが求められる。耐候性が十分でない場合、例えば外装用途に用いた際などに層間密着性が低減して層間剥離(剥がれ)が発生し、化粧材の表面に外観変化が生じる場合がある。特に近年環境に配慮して使用頻度が高まっているオレフィン系樹脂は非極性であるため、異なる種類の樹脂層との密着性が極めて弱く、層間剥離が発生し易いという問題があった。
つまり、従来の化粧シートは、耐候性が十分でなく層間密着性が低減し、層間剥離による外観変化を抑制できないという問題があった。従って、耐候性が向上され層間密着性に優れる化粧シートの開発が望まれている。ここで、耐候性が向上され層間密着性に優れるとは、後述する耐候性試験の実施後において層間密着性が一定以上の評価を得ることを示す。なお、上記耐候性試験および層間密着性の評価については後述する。
【0193】
上記事情を鑑み、本開示による第3実施形態に係る化粧シートは、耐候性が向上され良好な層間密着性を有し、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧材を提供することを目的とする。
【0194】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、化粧シート(積層体)において、表面保護層のエロージョン率と表面保護層に隣接する層のエロージョン率との差分が特定の範囲内であることにより、積層体の耐候性を向上し優れた層間密着性を付与することができることを見出した。これにより、本発明者らは、耐候性が向上され良好な層間密着性を有し、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧シート(積層体)およびその化粧シートを備えた化粧材を発明するに至った。
以下、図面を参照して本開示の第3実施形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。
【0195】
(エロージョン率E,Eの測定)
まず、本実施形態において規定する「エロージョン率E」、「エロージョン率E」について説明する。
本実施形態におけるエロージョン率Eは、後述する表面保護層42のエロージョン率Eであり、上記第2実施形態における表面保護層41のエロージョン率E(エロージョン率E)と区別して、「エロージョン率E」と称する。
また本実施形態におけるエロージョン率Eは、表面保護層42に隣接する層(後述する透明樹脂層21)のエロージョン率Eであり、上記第1実施形態における透明樹脂層1のエロージョン率E(エロージョン率E)と区別して、「エロージョン率E」と称する。
【0196】
エロージョン率Eは、上記エロージョン率Eと同じく平均粒子径(D50)=1.1μmの球形シリカ粒子を用いて、上記エロージョン率Eと同様に表面保護層について測定されるものである。したがって、測定方法の詳しい説明は省略する。
また、エロージョン率Eは、測定対象が表面保護層と隣接する層(例えば透明樹脂層)である点以外は、上記エロージョン率Eの測定方法と同様である。したがって、測定方法の詳しい説明は省略する。なお、上記球形シリカ粒子を用いて当該隣接する層のエロージョン率Eを測定する場合において、上述のように表面保護層から順次切削してもよいし、表面保護層を形成する前において当該隣接する層を順次切削してもよい。
【0197】
また、上記エロージョン率Eと同様に、エロージョン率E,E測定を実施する際も、深さ方向に存在する下層のエロージョン率Eの大小に影響を受けないことがわかっている。よって、エロージョン率E,Eを測定する際には、最表面に位置する表面保護層から順にMSE試験を実施してもよい。
【0198】
(化粧シートの構成)
以下に、本実施形態の化粧シート(積層体の一例)の各構成について説明する。なお、本実施形態では、透明樹脂層が複層の場合を想定して説明する。
図7は、本実施形態に係る化粧シート40の一構成例を説明するための断面模式図である。本実施形態に係る化粧シート40は、表面保護層42と透明樹脂層12とを備える点で、上記第1実施形態および第2実施形態に係る化粧シート10,20,30と異なる。
【0199】
図7に示す化粧シートは、図面上部側から順に、表面保護層42、透明樹脂層12、接着剤層5(感熱接着剤層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、絵柄模様層6、隠蔽層3、原反層7、易接着層8を備えている。透明樹脂層12は上記第1実施形態の第1変形例における透明樹脂層11と同様に複層構成であり、透明樹脂層21と透明樹脂層22とを有している。詳しくは後述するが、化粧シート40において、表面保護層42のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する層(本例では、透明樹脂層12)のエロージョン率Eとの差分が特定の範囲内である。
【0200】
より詳しくは、本実施形態に係る化粧シート40は、透明樹脂層12の一方の面(透明樹脂層22側)に、絵柄模様層6及び隠蔽層3を設け、透明樹脂層12の他方の面(透明樹脂層21側)に、表面保護層42を設けた構成の化粧シートである。すなわち、化粧シート40は積層体であって、原反層7、絵柄模様層6、接着剤層5、透明樹脂層12、及び表面保護層42をこの順に備える化粧シートである。
本実施形態に係る化粧シート40は、原反層7と、原反層7の上に少なくとも表面保護層42と表面保護層42に隣接する層(本例では、透明樹脂層21)とを備える積層体であればよい。
【0201】
以下、化粧シート40において化粧シート10,20,30と異なる構成である表面保護層42、透明樹脂層12について詳細に説明する。なお、化粧シート40において、表面保護層42、透明樹脂層12以外の構成は化粧シート10,20,30と同等である。このため、化粧シート10,20,30と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0202】
(表面保護層)
図7に示すように、化粧シート40は、表面保護層42を備えている。表面保護層42は、上記表面保護層4,41と同様に、化粧シート40に、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために設けられる層である。
表面保護層42の材料は、上記表面保護層41と同等である。つまり、表面保護層42を構成する材料としては、硬化性樹脂組成物が挙げられる。本実施形態において表面保護層42は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含んでいる。
より具体的には、表面保護層42を構成する硬化性樹脂組成物は 、熱で硬化する樹脂、即ち熱硬化性樹脂、または紫外線や電子線照射で硬化する樹脂、即ち電離放射線硬化性樹脂のうち、少なくとも一方を含んで形成されることが好ましい。つまり、表面保護層42は、硬化性樹脂組成物として熱硬化型樹脂のみを含んで形成されていてもよいし、電離放射線硬化型樹脂のみを含んで形成されてもよい。また、表面保護層42は、熱硬化型樹脂および電離放射線硬化型樹脂の両方、すなわち熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂との混合組成物を含んで形成されてもよい。
【0203】
表面保護層42に用いる熱硬化性樹脂としては、上記第2実施形態に係る化粧シート30の表面保護層41と同等の樹脂材料を用いることができる。
また、表面保護層42に用いる電離放射線硬化性樹脂としては、化粧シート30の表面保護層41と同等の樹脂材料を用いることができる。また、表面保護層42においても表面保護層41と同様に、電離放射線硬化性樹脂は、紫外線で硬化する紫外線硬化型性樹脂であることが好ましい。紫外線硬化性樹脂は、官能基が4以上であり、質量平均分子量が500以上の成分を1種以上含むものであることが好ましい。より好ましくは、官能基が4以上であり、質量平均分子量が500以上5,000以下の範囲内の成分を1種以上含むものである。
また、表面保護層42において、電離放射線硬化型樹脂における光開始剤の添加量、種類も表面保護層41と同等であればよい。
【0204】
また、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層42のエロージョン率Eは、当該球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層42と隣接する層のエロージョン率Eとの差分が5.0μm/g以下(ΔE4-5≦5.0μm/g)である。つまり、化粧シート40において、表面保護層42のエロージョン率Eと、当該隣接する層のエロージョン率Eとの差分は、5.0μm/g以下である。表面保護層42のエロージョン率Eと当該隣接する層のエロージョン率Eとの差分が5.0μm/gを超える場合には、耐候性に劣る傾向があり、上記耐候性試験の実施後の層間密着性が低減して層間剥離の発生を十分に抑制することが困難となる場合がある。
本例において、表面保護層42と隣接する層は、透明樹脂層21である。つまり、化粧シート40において、表面保護層42のエロージョン率Eと透明樹脂層21のエロージョン率Eとの差分は、5.0μm/g以下である。
【0205】
このように、本実施形態に係る化粧シート40において、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層42のエロージョン率Eは、当該球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層42と隣接する層のエロージョン率Eとの差分が5.0μm/g以下であることにより、耐候性が向上して層間密着性が良好となり、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。また、被着材へ貼り合わせ等の加工時(例えば、折り曲げ加工時)における層間剥離(剥がれ)の発生も抑制することができる。
なお、本例では、表面保護層42と隣接する層として透明樹脂層21を例示したが、本実施形態はこれに限られない。表面保護層42と隣接する層は、透明樹脂層以外の層でもよく、例えば、接着剤層5でもよいし、絵柄模様層6や隠蔽層3であってもよい。つまり本実施形態において、表面保護層42と隣接する層は、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定したエロージョン率Eについて、上記球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層42のエロージョン率Eとの差分が5.0μm/g以下であればよく、その材料や機能は限定されない。
また本実施形態において、表面保護層42のエロージョン率Eと隣接する層のエロージョン率Eとの大小関係は限定されない。つまり差分の上限値(5.0μm/g)は絶対値であり、エロージョン率Eの値がエロージョン率E以上でもよいし(E≧E)、エロージョン率Eの値がエロージョン率E以下でもよい(E≦E)。例えば表面保護層42のエロージョン率Eが隣接する層のエロージョン率Eより5.0μm/g大きい(E=E+5.0μm/g)場合も、隣接する層のエロージョン率Eより5.0μm/g小さい(E=E-5.0μm/g)も含まれる。
【0206】
本実施形態において、表面保護層42のエロージョン率Eは、上記エロージョン率Eと同様に、0.7μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内であってもよい。これにより、耐候性が向上され層間密着性に優れ、且つ優れた加工特性および耐傷性を有し、化粧材の外観変化をさらに抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。
なお、表面保護層42のエロージョン率Eは、隣接する層(本例では、透明樹脂層21)のエロージョン率Eのとの差分が5.0μm/g以下であればよく、エロージョン率E4の値は、特定の範囲に限られない。つまり、表面保護層42は、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定した上述のエロージョン率E4が0.7μm/g以上5.0μm/g以下の範囲内でなくてもよい。
【0207】
また、表面保護層42の厚みは、上記化粧シート30の表面保護層41と同様に、4μm以上21μm以下の範囲内であってもよい。また、表面保護層42の形成方法は、上記第1実施形態における表面保護層4と同様であるため、説明は省略する。
【0208】
また耐候性をより向上させるために、表面保護層42に紫外線吸収剤を添加してもよい。つまり、表面保護層42は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤から選ばれる紫外線吸収剤を用いることができる。また、紫外線吸収剤に加えて、表面保護層42に光安定剤を適宜添加してもよい。また、各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行える。表面保護層42には、上記化粧シート10の表面保護層4,化粧シート30の表面保護層41と同様に、表面の耐傷性の向上、あるいは意匠性付与に伴う艶(光沢)調整のため、無機材料(無機フィラー)で構成される光沢調整剤を含むことが望ましい。表面保護層42に添加する無機フィラーについては、表面保護層4,41と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0209】
また、表面保護層42側の透明樹脂層21の面にエンボス模様1aを施した場合には、このエンボス模様1aの中に、表面保護層42を形成するインキをワイピング加工により埋め込んで意匠性を向上させることも可能である。
耐候性の面からは、基材としての透明樹脂層21(透明樹脂層12)を守るために、上記のように表面保護層42及び透明樹脂層21にそれぞれ耐候性を付与する方法もある。また、それだけではなく、絵柄模様層6を守るために、接着剤層5、絵柄模様層6自体にそれぞれ紫外線吸収剤及び光安定剤を添加する方法もある。
また図示は省略するが、表面保護層42の最表面側に、エンボス模様1aと同様のエンボス模様を設けてもよい。これにより、意匠性をさらに向上させることができる。なお、上記第1実施形態における表面保護層4、第2実施形態における表面保護層41においても同様に、最表面側にエンボス模様を設けてもよい。
【0210】
〔マルテンス硬さ〕
本実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、表面保護層42を形成する硬化性樹脂組成物が特定のマルテンス硬さを有していてもよい。これにより、化粧シート40に、より優れた加工特性および耐傷性を付与することができる。なお、マルテンス硬さの測定方法は、上記第2実施形態と同様の方法を用いればよい。
具体的には、表面保護層42が熱硬化型樹脂で形成される場合、マルテンス硬さが80N/mm以上200N/mm以下の範囲内としてもよい。より具体的には、表面保護層41がアクリルポリオールとイソシアネート硬化剤とで構成され、マルテンス硬さが80N/mm以上200N/mm以下の範囲内としてもよい。これにより、表面保護層42にさらに優れた加工特性および耐傷性を付与することができる。
また、表面保護層42が電離放射線硬化性樹脂で形成される場合、マルテンス硬さが100N/mm以上400N/mm以下の範囲内であることが好ましい。より具体的には、表面保護層42が紫外線硬化型樹脂として、官能基が4以上であり質量平均分子量が500以上5,000以下である成分を1種以上含む場合、マルテンス硬さが100N/mm以上400N/mm以下の範囲内であることが好ましい。
これにより、表面保護層42にさらに優れた加工特性および耐傷性を付与することができる。
【0211】
(透明樹脂層)
図7に示すように、化粧シート40は透明樹脂層12を備えている。透明樹脂層12は、上記化粧シート20の透明樹脂層11と同様に複層(本例では2層)構成であり、透明樹脂層21と透明樹脂層22とで構成されている。より具体的には、透明樹脂層12は、複層から構成され、表面保護層42と接する第一透明樹脂層となる透明樹脂層21と、透明樹脂層21と接する第二透明樹脂層となる透明樹脂層22とを有している。
【0212】
〔第一透明樹脂層〕
本実施形態における透明樹脂層21は、表面保護層42と隣接する層である。このため、本実施形態において、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定した透明樹脂層21のエロージョン率Eは、上記球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層42のエロージョン率Eとの差分が5.0μm/g以下である。これにより、化粧シート40は、耐候性が向上されて優れた層間密着性を有し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。なお、透明樹脂層21は2層構造の透明樹脂層12を構成する層の1つである。このため、表面保護層42は複層(本例では2層)の透明樹脂層12の一部と隣接しているともいえる。
本実施形態における透明樹脂層12の第一透明樹脂層である透明樹脂層21は、エロージョン率E(平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率)の値が特定の範囲に限定されない点を除き、上記化粧シート20の透明樹脂層1と同等の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0213】
また、本実施形態における透明樹脂層21は、エロージョン率Eの値についても特定の範囲に限定されない。なお、上記化粧シート20における透明樹脂層1と同様に、透明樹脂層21においてエロージョン率Eを限定してもよい。具体的には、透明樹脂層21のエロージョン率Eについて、表面保護層42のエロージョン率Eとの差分が5.0μm/g以下とした上で、透明樹脂層21において平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粉末を用いて測定した上述のエロージョン率Eを0.5μm/g以上10.0μm/g以下(0.5μm/g≦E≦10.0μm/g)の範囲内としてもよい。これにより、耐候性が向上されて優れた層間密着性を有する上に、さらに優れた耐傷性および耐衝撃性を化粧シート40に付与し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。
【0214】
〔第二透明樹脂層〕
図7に示すように、本変形例に係る化粧シート40において、上記第一透明樹脂層である透明樹脂層21と接着剤層5との間に、第二透明樹脂層である透明樹脂層22が設けられている。つまり、透明樹脂層22は、透明樹脂層21の下層に位置している。
透明樹脂層22は、特に押出ラミネート方法において透明樹脂層を形成する場合において、さらなるラミネート強度を求める場合に設けることがある。
【0215】
透明樹脂層12における透明樹脂層21と透明樹脂層22とは、上記化粧シート20における透明樹脂層11と同様に、共押出法でラミネートされて成形される場合が一般的である。透明樹脂層12(透明樹脂層21,22)に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。より具体的には、上記透明樹脂層2と同様に、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル系等の樹脂に酸変性を施したものが望ましい。またこれらの樹脂材料のうち、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を含むことが望ましい。
また、透明樹脂層22の厚みは接着力向上の目的から、上記透明樹脂層2と同様に、2μm以上であることが望ましい。透明樹脂層22の厚みが2μmに満たない場合には、十分な接着力が得にくい傾向がある。
また、透明樹脂層22の厚みは、上記透明樹脂層2と同様に、20μm以下が望ましい。透明樹脂層2の厚みが20μmを超えると、長期使用時に透明樹脂層2の劣化が生じ、凝集破壊を起こし剥離しやすくなる傾向がある。
つまり、透明樹脂層22の厚みは、2μm以上20μm以下の範囲内が好ましい。
【0216】
透明樹脂層22は、上記透明樹脂層2と同様に、特定のエロージョン率Eを有していてもよい。これにより、優れた耐傷性および耐衝撃性を化粧シート40に付与し、化粧材の外観変化を抑制可能な化粧シートを提供することが可能となる。ここで、透明樹脂層22のエロージョン率Eをエロージョン率Eとする。エロージョン率Eの測定方法は、上記エロージョン率E、エロージョン率Eと同等であるため、説明は省略する。
【0217】
透明樹脂層22は、化粧シート20の透明樹脂層2と同様に、平均粒子径(D50)が3.0μmである球状アルミナ粉末を用いて測定したエロージョン率Eが0.5μm/g以上5.0μm/g以下(0.5μm/g≦E≦5.0μm/g)の範囲内であってもよい。なお、透明樹脂層22のエロージョン率Eは、透明樹脂層21のエロージョン率Eに近い値となるように硬さを調整することが好ましい。
【0218】
また、透明樹脂層12において、透明樹脂層21の厚みと透明樹脂層22の厚みとの合計は、上記化粧シート20の透明樹脂層11と同様に、40μm以上170μm以下であることが好ましい。つまり、透明樹脂層12の総厚が40μm以上170μm以下であることが好ましい。これにより、耐候性や耐傷性を良好としつつ、製造コストの上昇や可撓性の低下を抑制することができる。
なお、図7では、透明樹脂層が複層である例を説明したが、本実施形態はこれに限られない。本実施形態に係る化粧シート40において、透明樹脂層は単層構造であってもよい。この場合、化粧シート40は、透明樹脂層21のみを備える構成であればよい。
【0219】
(3.1)第1変形例
本開示の第3実施形態の第1変形例に係る化粧材について、図8を用いて説明する。本実施形態に係る化粧シートは、被着材としての化粧材用基材と積層することにより化粧材を作製する用途に好適に用いることができる。図8は、本開示の第3実施形態の第1変形例に係る化粧材300の一構成例を説明するための断面図である。
【0220】
図7に示すように、本変形例に係る化粧材300は、本実施形態に係る化粧シート30の表面保護層42が最表面層となるように、化粧シート40を化粧材用基材17上に積層することにより得られる。すなわち、化粧材300は、接着剤15および化粧材用基材17を備える点で、上記第3実施形態に係る化粧シート40と相違する。
【0221】
(化粧材)
図8に示すように、化粧材300は、化粧シート40における原反層7の一方の面側に、隠蔽層3、絵柄模様層6、接着剤層5、透明樹脂層12および表面保護層42がこの順に積層されており、原反層7の他方の面側に、易接着層8、接着剤15および化粧材用基材17が設けられている。つまり、化粧材300は、化粧材用基材17と、化粧材用基材17に貼り合わされた積層体である化粧シート40と、を備える。
これにより、化粧材300は、優れた層間密着性および耐候性を両立し、外観変化を抑制可能な化粧材を提供することが可能となる。
なお、化粧材300は、化粧材用基材17に化粧シート40を貼り合わせる点が上記第2実施形態の第1変形例に係る化粧材200と相違しており、それ以外は、当該化粧材200と同等である。このため、化粧材用基材17、接着剤15については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0222】
(第3実施形態の効果)
本実施形態に係る化粧シートおよび化粧材は、以下の効果を有する。
(1)
本実施形態に係る化粧シート40は、原反層7の上に少なくとも表面保護層42と表面保護層42に隣接する層とを備える積層体であって、表面保護層42は、硬化性樹脂組成物で形成され、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定した前記表面保護層42のエロージョン率E4と、該球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層42に隣接する層のエロージョン率E5との差分が、5.0μm/g以下である。
この構成によれば、耐候性試験の実施後において層間密着性が一定以上の評価を得ることができる。すなわち、耐候性が向上され良好な層間密着性を有し、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧シートを提供することができる。
(2)
化粧シート40において表面保護層42を形成する硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または電離放射線硬化樹脂のうち少なくとも一方を含む。
この構成によれば、耐候性をより良好とすることができ、また電離放射線硬化性樹脂を含むことで、作製コストの上昇を抑えて作業性、樹脂凝集力を良好とすることができる。
(3)
化粧シート40において表面保護層42と隣接する層は、透明樹脂層21である。
この構成によれば、耐光性をさらに良好とすることができるとともに、耐傷性を向上することができる。
(4)化粧シート40において透明樹脂層21は、熱可塑性樹脂を含む。
この構成によれば、透明樹脂層の成形が容易であり生産性を良好とすることができる。
(5)化粧シート40において透明樹脂層21は、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む。
この構成によれば、環境に配慮され加工適正が良好な材料による化粧シート(積層体)を得ることができる。
(6)化粧シート40は、原反層7、絵柄模様層6、接着剤層5、透明樹脂層12(透明樹脂層21,22)、及び表面保護層42をこの順に備える化粧シートである。
この構成によれば、被着材となる化粧材用基材の表層を加飾することが可能な表装材として用いることができる。
(7)本実施形態に係る化粧材300は、化粧材用基材17と、化粧材用基材17に貼り合わされた積層体である化粧シート40と、を備える。
この構成によれば、耐候性が向上され良好な層間密着性を有し、化粧材表面の外観変化を抑制することができる化粧材を提供することができる。
【0223】
(3.2)第3実施例
以下に、本開示の第2実施形態に係る化粧シートの具体的な実施例である第3実施例(以下、「本実施例」という)について検討する。
なお本開示の第3実施形態は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0224】
また、本実施例では、表面保護層42を形成する塗材として、上記第2実施例における塗材A,K,L,M,N,O,Q,Rを用いた。本実施例においても、上記第2実施例と同様に、各実施例および比較例における表面保護層42の硬さ(エロージョン率E4)は、上記塗材それぞれの処方によって制御した。
また、本実施例では、透明樹脂層21を形成する樹脂材料として、上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂A~Cを用いた。本実施例においては、上記ポリプロピレン樹脂A~Cの各樹脂材料の選択および後述する表6に示すプロセス制御(押出温度、成膜時冷却ロール水温)により、透明樹脂層の硬さ(エロージョン率E5)を制御した。
【0225】
(実施例3-1)
原反層7として隠蔽性のあるポリエチレン原反(厚み70μm)に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ(株)製)を用い木目柄をグラビア印刷して絵柄模様層6(厚さ3μm)を設け、さらに接着剤層5として接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製)(厚み2μm)を介し、第二透明樹脂層である透明樹脂層22をドライラミネートした。透明樹脂層2は上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂Cに各種の添加剤を配合した樹脂材料で形成した。より詳細には、ポリプロピレン樹脂C100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(CYASORB UV-1164;SUNCHEM製)を0.5質量部、NOR型光安定剤(Tinuvin XT850 FF;BASF社製)を0.5質量部それぞれ配合した樹脂材料を、溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層22として使用する厚さ20μmの透明樹脂シートを製膜した。
【0226】
さらに透明樹脂層22上において、接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製)(厚み2μm)を介し、エロージョン率Eが0.2μm/gとなるよう硬さを調整して第一透明樹脂層である透明樹脂層21をドライラミネートした。
透明樹脂層21は、上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂Cで形成した。より詳細には、ポリプロピレン樹脂C100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(CYASORB UV-1164;SUNCHEM製)を0.5質量部、NOR型光安定剤(Tinuvin XT850 FF;BASF社製)を0.5質量部それぞれ配合した樹脂材料を、溶融押出機を用いて押出し、透明樹脂層21として使用する厚さ90μmの透明樹脂シートを製膜した。本実施例では、表6に示すプロセス制御(押出温度、成膜時冷却ロール水温)により、エロージョン率Eが0.2μm/gとなる透明樹脂層21を成膜した。
【0227】
さらに、透明樹脂層21(上記保護フィルム)上に上記第2実施例における塗材Mを用いて表面保護層42を塗布形成(厚み5μm)した。塗材Mを用いることで、エロージョン率Eが5.0μm/gとなるように表面保護層42の硬さを調整した。また表面保護層42の硬化手法は熱硬化とした。
以上のようにして、実施例3-1の化粧シート40を得た。実施例3-1において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分は4.8μm/gであった。
【0228】
(実施例3-2)
透明樹脂層21に使用した樹脂を上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂Aとし、表6に示すプロセス制御(押出温度、成膜時冷却ロール水温)により透明樹脂層21のエロージョン率Eを1.0μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例3-1と同様の方法で実施例3-2の化粧シート40を得た。実施例3-2において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分は4.0μm/gであった。
(実施例3-3)
表面保護層42を、上記第2実施例における塗材Lを用いて形成し、エロージョン率Eが4.0μm/gとなるように表面保護層42の硬さを調整した。また、透明樹脂層21に使用した樹脂を上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂Aとし、実施例3-2と同様に透明樹脂層21のエロージョン率Eを1.0μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例3-1と同様の方法で実施例3-3の化粧シート40を得た。実施例3-3において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分は3.0μm/gであった。
(実施例3-4)
表面保護層42を、上記第2実施例における塗材Kを用いて形成し、エロージョン率Eが3.0μm/gとなるように表面保護層42の硬さを調整した。また、透明樹脂層21に使用した樹脂を上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂Aとし、実施例3-2と同様に透明樹脂層21のエロージョン率Eを1.0μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例3-1と同様の方法で実施例3-4の化粧シート40を得た。実施例3-4において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分は2.0μm/gであった。
(実施例3-5)
表面保護層42を、上記第2実施例における塗材Nを用いて形成し、エロージョン率Eが2.2μm/gとなるように表面保護層42の硬さを調整した。また、透明樹脂層21に使用した樹脂を上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂Aとし、実施例3-2と同様に透明樹脂層21のエロージョン率Eを1.0μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例3-1と同様の方法で実施例3-5の化粧シート40を得た。実施例3-5において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分は1.2μm/gであった。
【0229】
(実施例3-6)
表面保護層42を、上記第2実施例における塗材Oを用いて形成し、エロージョン率Eが0.9μm/gとなるように表面保護層42の硬さを調整した。また、透明樹脂層21に使用した樹脂を上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂Bとし、表6に示すプロセス制御(押出温度、成膜時冷却ロール水温)により透明樹脂層21のエロージョン率Eを0.5μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例3-1と同様の方法で実施例3-6の化粧シート40を得た。実施例3-6において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分は0.4μm/gであった。
(実施例3-7)
表面保護層42を、上記第2実施例における塗材Aを用いて形成し、エロージョン率Eが0.5μm/gとなるように表面保護層42の硬さを調整した。また、ポリプロピレン樹脂Cを用いた透明樹脂層21のエロージョン率Eを、表6に示すプロセス制御(押出温度、成膜時冷却ロール水温)により0.3μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例3-1と同様の方法で実施例3-7の化粧シート40を得た。実施例3-7において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分は0.1μm/gであった。
(実施例3-8)
表面保護層42を、上記第2実施例における塗材Qを用いて形成し、エロージョン率Eが0.3μm/gとなるように表面保護層42の硬さを調整した。また、ポリプロピレン樹脂Cを用いた透明樹脂層21のエロージョン率Eを実施例3-7と同様に0.3μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例3-1と同様の方法で実施例3-8の化粧シート40を得た。実施例3-8において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとは同等(差分は0μm/g)であった。
(実施例3-9)
表面保護層42を、上記第2実施例における塗材Qを用いて形成し、エロージョン率Eが0.3μm/gとなるように表面保護層42の硬さを調整した。また、ポリプロピレン樹脂Aを用いた透明樹脂層21のエロージョン率Eを実施例3-2と同様に1.0μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例3-1と同様の方法で実施例3-9の化粧シート40を得た。実施例3-9において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分は0.7μm/gであった。
【0230】
(比較例3-1)
表面保護層42を、上記第2実施例における塗材Rを用いて形成し、エロージョン率Eが6.0μm/gとなるように表面保護層42の硬さを調整した。また、透明樹脂層21に使用した樹脂を上記第1実施例におけるポリプロピレン樹脂Bとし、透明樹脂層21のエロージョン率Eを0.5μm/gとなるよう硬さを調整した。それ以外は実施例3-1と同様の方法で比較例3-1の化粧シートを得た。比較例3-1において、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分は5.5μm/gであった。
【0231】
<MSE試験におけるエロージョン率測定>
実施例3-1~3-9及び比較例3-1で得られた各化粧シートの表面保護層42、第一透明樹脂層(透明樹脂層21)のエロージョン率E(エロージョン率E,E)について、上記第2実施例におけるエロージョン率E(エロージョン率E)の測定方法と同様の方法で測定した。なお、詳しい説明は省略する。
【0232】
<表面保護層、透明樹脂の厚み>
実施例3-1~3-9及び比較例3-1で得られた各化粧シートの断面観察を行い、表面保護層42、第一透明樹脂層(透明樹脂層21)の厚みを計測した。本実施例における表面保護層42、第一透明樹脂層の厚みの測定方法は、上記第2実施例における表面保護層の厚みの測定と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0233】
(評価)
上記の方法により得られた実施例3-1~3-9及び比較例3-1の化粧シートに対し、外観変化の評価を以下のように行った。
【0234】
(外観変化試験)
まず、耐候性試験機を用いて、耐候性試験を実施した。
〔耐候性試験〕
実施例及び比較例で得られた化粧シートを、メタルハライドランプを用いた耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス株式会社製 メタルウェザー)にセットし、ライト条件(照度:60mW/cm、ブラックパネル温度63℃、層内湿度50%RH)で20時間、結露条件(照度:0mW/cm、ブラックパネル温度30℃、層内湿度98%RH)で4時間、水噴霧条件(結露条件の前後10秒間)の条件で500時間放置する耐候性試験を行った。
【0235】
上記耐候性試験後、25℃50%RHの条件下で2日間保持した後、本実施例および比較例による化粧シートに対してJIS K5600-5-6に準拠したクロスカット法による密着性試験を実施した。その後、化粧シート表面を目視で観察して、密着性試験後の化粧シート表面の剥がれ(ここでは、表面保護層と第一透明樹脂層との層間剥離)による外観変化の有無、すなわち層間密着性を下記の基準で評価した。
〇:化粧シートの表面保護層の剥離がなく、外観変化が観察されなかった
△:化粧シート表面の面積あたり15%未満の範囲で表面保護層の剥離があり、わずかな外観変化が観察された。
×:化粧シート表面の面積あたり15%以上の範囲で表面保護層の剥離があり、明らかな外観変化が観察された
なお、外観変化試験において、「○」、「△」を合格とした。つまり、外観変化試験の評価結果(耐候性試験の実施後の層間密着性の評価)が「〇」、「△」であれば、耐候性が向上されて層間密着性に優れており外観変化を抑制可能な化粧シートであるといえる。
【0236】
以下の表6に、第3実施例における各実施例及び比較例の化粧シートの構成と合わせて、上記外観変化の評価結果を示す。
【0237】
【表6】
【0238】
表6に示すように、実施例3-1~3-9の化粧シートはいずれも、外観変化(表面保護層と第一透明樹脂層との層間密着性)の評価結果が合格(「△」以上)となり、耐候性が向上されて層間密着性に優れる結果となった。
具体的には、表面保護層は、硬化性樹脂組成物で形成され、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層のエロージョン率Eと、当該球形シリカ粒子を用いて測定した表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分が、5.0μm/g以下である各実施例の化粧シートは、耐候性が向上されて層間密着性に優れており、外観変化を抑制可能であることが分かった。
より詳細には、実施例3-2~3-9に示すように、表面保護層のエロージョン率Eと、表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分が0.0μm/g以上4.0μm/g以下である場合、層間密着性がより良好(「〇」以上)となり外観変化(ここでは、層間剥離)がより確実に抑制されることが分かった。また実施例4、5に示すように、表面保護層のエロージョン率Eと、表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分が1.0μm/g以上3.0μm/g未満である場合、層間密着性がさらに良好(「◎」)となり外観変化(ここでは、層間剥離)がさらに確実に抑制されることが分かった。
【0239】
一方、表6に示すように、表面保護層のエロージョン率Eと表面保護層に隣接する透明樹脂層のエロージョン率Eとの差分が5.0μm/g以下でない比較例3-1の化粧シートでは、外観変化(層間剥離)の評価結果が不合格「×」となった。つまり、耐候性が十分でなく層間密着性が低減し、化粧材表面の外観変化を抑制可能な化粧シートではなかった。
【0240】
また、例えば、本実施形態は以下のような構成を取ることができる。
(1)
原反の上に少なくとも表面保護層と前記表面保護層に隣接する層とを備える積層体であって、
前記表面保護層は、硬化性樹脂組成物で形成され、平均粒子径(D50)が1.1μmである球形シリカ粒子を用いて測定した前記表面保護層のエロージョン率E4と、前記球形シリカ粒子を用いて測定した前記表面保護層に隣接する層のエロージョン率E5との差分が、5.0μm/g以下である
ことを特徴とする積層体。
(2)
前記表面保護層を形成する前記硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または電離放射線硬化樹脂のうち少なくとも一方を含む
ことを特徴とする上記(1)に記載の積層体。
(3)
前記表面保護層と隣接する層は、透明樹脂層である
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の積層体。
(4)
前記透明樹脂層は、熱可塑性樹脂を含む
ことを特徴とする上記(3)に記載の積層体。
(5)
前記透明樹脂層は、前記熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む
ことを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の積層体。
(6)
前記原反、絵柄模様層、接着層、前記透明樹脂層、及び前記表面保護層をこの順に備える化粧シートである
ことを特徴とする上記(3)から(5)のいずれか1項に記載の積層体。
(7)
化粧材用基材と、
前記化粧材用基材に貼り合わされた上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の積層体と、
を備えることを特徴とする化粧材。
【0241】
本開示の化粧シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0242】
1、2、11、12、21、22 透明樹脂層
1a エンボス模様
3 隠蔽層
4、41、42 表面保護層
5 接着剤層
6 絵柄模様層
7 原反層
8 易接着層
10、20、30、40 化粧シート
100、200、300 化粧材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8