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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097242
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】溶着装置、接合装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
B29C65/08
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000684
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000195649
【氏名又は名称】精電舎電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】河野 太郎
(72)【発明者】
【氏名】松岸 則彰
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AP02
4F211AR02
4F211AR07
4F211AR11
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD11
4F211TN22
(57)【要約】
【課題】荷重手段に伸縮自在の圧縮バネを配置し、圧縮バネによる押圧力の測定値をもとに圧縮バネを圧縮又は伸長する移動手段(圧縮板)の移動速度を制御することで、溶着対象物(ワーク)を良好に溶着する溶着装置及び接合装置を提供することを課題とする。
【解決手段】溶着対象物を押圧して溶着する溶着手段と、前記溶着手段を押圧する圧縮バネと、前記圧縮バネを圧縮又は伸長する移動手段と、前記移動手段を移動させる駆動手段と、前記圧縮バネが前記溶着手段を押圧する押圧力を測定するロードセルと、前記駆動手段の駆動及び前記超音波振動手段の超音波振動の発振を制御する制御手段と、を具備し、前記制御手段は、前記溶着対象物の溶着を開始した以降、前記ロードセルが測定した測定値をもとに、前記ロードセルが測定した前記押圧力が第1の押圧力となるように、前記駆動手段に指示することを特徴とする溶着装置。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶着対象物に加える押圧力を任意に設定できる溶着装置において、
前記溶着対象物を押圧して溶着する溶着手段と、
前記溶着手段を押圧する圧縮バネと、
前記圧縮バネを圧縮又は伸長する移動手段と、
前記移動手段を移動させる駆動手段と、
前記圧縮バネが前記溶着手段を押圧する押圧力を測定するロードセルと、
前記駆動手段の駆動及び前記溶着手段の溶着動作を制御する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記駆動手段を駆動して前記移動手段を移動させ、前記圧縮バネを所定量圧縮又は伸長させることで第1の押圧力で前記溶着手段を押圧し、前記溶着対象物の溶着を開始した以降、前記ロードセルが測定した測定値をもとに、前記ロードセルが測定した前記押圧力が前記第1の押圧力の値となるように、前記駆動手段に指示することを特徴とする溶着装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ロードセルが測定した測定値をもとに、前記移動手段の移動速度、移動距離の少なくともいずれか一方を制御することを前記駆動手段に指示する請求項1に記載の溶着装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記溶着手段の発振を開始した以降、前記第1の押圧力とは異なる第2の押圧力で前記溶着手段を押圧するために、前記圧縮バネを新たな量圧縮又は伸長させるように前記移動手段の移動速度を制御することを前記駆動手段に指示する請求項1に記載の溶着装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記溶着手段を押圧する複数の押圧力、前記複数の押圧力各々で前記超音波振動手段を押圧する押圧時間、及び前記複数の押圧力各々で押圧する順序の情報を含む管理テーブルを持ち、前記押圧する順序の情報の順番に、前記押圧する順序の情報に対応する前記押圧力、前記押圧時間の情報を読み出して、前記圧縮バネを新たな量圧縮又は伸長させるように前記移動手段の移動速度を制御する請求項3に記載の溶着装置。
【請求項5】
前記管理テーブルの前記押圧力、前記押圧時間、前記押圧する順序の情報は、書き換え可能な請求項4に記載の溶着装置。
【請求項6】
前記管理テーブルは、更に前記移動手段の移動速度の情報を含む請求項4に記載の溶着装置。
【請求項7】
前記圧縮バネは、着脱交換可能に設けられた請求項1に記載の溶着装置。
【請求項8】
接合対象物に加える押圧力を任意に設定できる超音波接合装置において、
前記接合対象物に加える超音波振動を発振する超音波振動手段と、
前記超音波振動手段を押圧する圧縮バネと、
前記圧縮バネを圧縮又は伸長する移動手段と、
前記移動手段を移動させる駆動手段と、
前記圧縮バネが前記超音波振動手段を押圧する押圧力を測定するロードセルと、
前記駆動手段の駆動及び前記超音波振動手段の超音波振動の発振を制御する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記駆動手段を駆動して前記移動手段を移動させ、前記圧縮バネを所定量圧縮又は伸長させることで第1の押圧力で前記超音波振動手段を押圧し、前記接合対象物に超音波振動を加えるために前記超音波振動手段の発振を開始した以降、前記ロードセルが測定した測定値をもとに、前記ロードセルが測定した前記押圧力が前記第1の押圧力の値となるように、前記駆動手段に指示することを特徴とする接合装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記ロードセルが測定した測定値をもとに、前記移動手段の移動速度、移動距離の少なくともいずれか一方を制御することを前記駆動手段に指示する請求項1に記載の接合装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記超音波振動手段の発振を開始した以降、前記第1の押圧力とは異なる第2の押圧力で前記超音波振動手段を押圧するために、前記圧縮バネを新たな量圧縮又は伸長させるように前記移動手段の移動速度を制御することを前記駆動手段に指示する請求項1に記載の接合装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記超音波振動手段を押圧する複数の押圧力、前記複数の押圧力各々で前記超音波振動手段を押圧する押圧時間、及び前記複数の押圧力各々で押圧する順序の情報を含む管理テーブルを持ち、前記押圧する順序の情報の順番に、前記押圧する順序の情報に対応する前記押圧力、前記押圧時間の情報を読み出して、前記圧縮バネを新たな量圧縮又は伸長させるように前記移動手段の移動速度を制御する請求項3に記載の接合装置。
【請求項12】
前記管理テーブルの前記押圧力、前記押圧時間、前記押圧する順序の情報は、書き換え可能な請求項4に記載の接合装置。
【請求項13】
前記管理テーブルは、更に前記移動手段の移動速度の情報を含む請求項4に記載の接合装置。
【請求項14】
前記圧縮バネは、着脱交換可能に設けられた請求項1に記載の接合装置。
【請求項15】
溶着対象物に加える押圧力を任意に設定できる溶着装置において、
前記溶着対象物を押圧して溶着する溶着手段と、
前記溶着手段を押圧する圧縮バネと、
前記圧縮バネを圧縮又は伸長する移動手段と、
前記移動手段を移動させる駆動手段と、
前記圧縮バネが前記溶着手段を押圧する押圧力を測定するロードセルと、
前記駆動手段の駆動及び前記溶着手段の溶着動作を制御する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記駆動手段を駆動して前記移動手段を移動させ、前記圧縮バネを所定量圧縮又は伸長させることで第1の押圧力で前記溶着手段を押圧し、前記溶着対象物の溶着を開始した以降、前記ロードセルが測定した測定値をもとに、前記ロードセルが測定した前記押圧力が前記第1の押圧力の値となるように、前記駆動手段に指示することを特徴とする溶着方法。
【請求項16】
接合対象物に加える押圧力を任意に設定できる接合装置において、
前記接合対象物に加える超音波振動を発振する超音波振動手段と、
前記超音波振動手段を押圧する圧縮バネと、
前記圧縮バネを圧縮又は伸長する移動手段と、
前記移動手段を移動させる駆動手段と、
前記圧縮バネが前記超音波振動手段を押圧する押圧力を測定するロードセルと、
前記駆動手段の駆動及び前記超音波振動手段の超音波振動の発振を制御する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記駆動手段を駆動して前記移動手段を移動させ、前記圧縮バネを所定量圧縮又は伸長させることで第1の押圧力で前記超音波振動手段を押圧し、前記接合対象物に超音波振動を加えるために前記超音波振動手段の発振を開始した以降、前記ロードセルが測定した測定値をもとに、前記ロードセルが測定した前記押圧力が前記第1の押圧力の値となるように、前記駆動手段に指示することを特徴とする接合方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶着中あるいは接合中に対象物(ワーク)に加える押圧力を、複数変化させることができる溶着装置及び接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶着対象物(ワーク)を良好に溶着するために、従来から溶着中(超音波発振中)に溶着対象物(ワーク)に加える押圧力を複数段階的に変えて溶着処理を行うことができる超音波溶着装置が知られている。これらの超音波溶着装置には、段階的に加える複数の押圧力が予め設定されておりその設定に従って押圧力を変えるもの、押圧力を測定する手段を持ち、その測定手段による押圧力の測定値をもとに、逐次押圧力を変えるものが存在している。
【0003】
溶着対象物(ワーク)は、溶着中に押圧力が加わることで溶融し、溶融による沈み込みが発生する。この溶着対象物(ワーク)の溶融による沈み込みの発生により、溶着対象物(ワーク)への押圧力が変動したり、溶着対象物(ワーク)と工具ホーンとが瞬間的に離れてしまったりする、という問題があった。
【0004】
このため良好に溶着するためには、溶着対象物(ワーク)の溶融による沈み込みに対して、ホーンによる溶着対象物(ワーク)への押圧力の変動を最小限にし、かつ工具ホーンの溶着対象物(ワーク)への追従性を向上させることが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-71383
【特許文献2】特開2006-231698
【特許文献3】特開2013-63521
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、より良好な溶着を行うために、溶着中あるいは接合中に対象物(ワーク)に加える押圧力を任意に設定できる溶着装置あるいは接合装置において、荷重手段に伸縮自在の圧縮バネを配置し、圧縮バネによる押圧力の測定値をもとに圧縮バネを圧縮又は伸長する移動手段(圧縮板)の移動速度を制御することで、対象物(ワーク)を良好に溶着する溶着装置あるいは接合装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
溶着対象物に加える押圧力を任意に設定できる溶着装置において、
前記溶着対象物を押圧して溶着する溶着手段と、
前記溶着手段を押圧する圧縮バネと、
前記圧縮バネを圧縮又は伸長する移動手段と、
前記移動手段を移動させる駆動手段と、
前記圧縮バネが前記溶着手段を押圧する押圧力を測定するロードセルと、
前記駆動手段の駆動及び前記溶着手段の溶着動作を制御する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記駆動手段を駆動して前記移動手段を移動させ、前記圧縮バネを所定量圧縮又は伸長させることで第1の押圧力で前記溶着手段を押圧し、前記溶着対象物の溶着を開始した以降、前記ロードセルが測定した測定値をもとに、前記ロードセルが測定した前記押圧力が前記第1の押圧力の値となるように、前記駆動手段に指示することを特徴とする溶着装置である。
【発明の効果】
【0008】
溶着中あるいは接合中に対象物(ワーク)に加える押圧力を任意に設定できる溶着装置あるいは接合装置において、荷重手段に伸縮自在の圧縮バネを配置し、圧縮バネによる押圧力の測定値をもとに圧縮バネを圧縮又は伸長する移動手段(圧縮板)の移動速度を制御することで、対象物(ワーク)を良好に溶着する溶着装置あるいは接合装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1の実施形態に係る溶着装置である超音波溶着装置の全体構成の一例を示す図である。
図2】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置を用いて溶着する際の、圧縮バネ、工具ホーン及び溶着対象物(ワーク)の様子の時間的遷移の一例を示す図である。
図3】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置を用いて溶着する際の、圧縮バネ、工具ホーン及び溶着対象物(ワーク)の様子の時間的遷移の他の例を示す図である。
図4】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置の押圧力の制御の機能ブロックの一例を示す図である。
図5】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置の制御手段が行う押圧を制御する処理フローの一例を示す図である。
図6】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置の制御手段が行う押圧を制御する処理フローの他の例を示す図である。
図7】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置の制御手段が行う押圧制御の処理フローの他の例を示す図である。
図8】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置の制御手段が保持する荷重変化テーブル(管理テーブル)の一例を示す図である。
図9】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置の制御手段が保持する荷重変化テーブル(管理テーブル)の他の例を示す図である。
図10】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置を用いて、溶着対象物(ワーク)の溶着処理開始から溶着処理終了までの工具ホーンの位置、移動手段(圧縮板)の移動速度、工具ホーンに加える押圧力の時間的遷移の一例を示す図である。
図11】本開示の第2の実施形態に係る溶着装置である超音波溶着装置の押圧力の制御の機能ブロックの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る溶着装置及び接合装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(本開示の第1の実施形態)
本開示の第1の実施形態では、溶着手段として超音波振動溶着を用いた場合を例とし、熱可塑性樹脂である溶着対象物(ワーク)を溶着する場合を説明する。なお溶着手段は、超音波振動溶着に限らない。溶着手段は、例えば振動溶着、熱溶着あるいはスピン溶着であってもよい。あるいは溶着手段を、対象物(ワーク)の溶融による溶断として用いる超音波振動溶断として用いてもよい。
【0012】
図1に、本開示の第1の実施形態に係る溶着装置である超音波溶着装置1の全体構成の一例を示す。
【0013】
本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、装置本体であるフレーム2、フレーム2に対して上下方向(Z軸の±方向)に移動が可能な移動手段3、移動手段3を移動させるための動力源である駆動手段4、移動手段3に取り付けられ溶着対象物(ワーク)に工具ホーン6cにより荷重を加える荷重手段5、超音波振動を発振させ工具ホーン6cを超音波振動させることで溶着対象物(ワーク)に超音波振動を加える溶着手段である超音波振動手段6、工具ホーン6cの下方対向する位置に配置され工具ホーン6cとの間で溶着対象物(ワーク)を挟持するアンビル7及び超音波溶着装置1全体を制御する制御手段8を備える。
【0014】
フレーム2は、水平方向に延びる水平部2aと、それに対して立設する垂直部2bを備える。
【0015】
移動手段3は、保持部3a、ガイドレール3b、ボールねじ3c、上下動部3d、圧縮板3e及びハウジング3fを備える。
【0016】
保持部3aは、フレーム2の垂直部2bの前面に配置されたT字型の保持基部3a1、保持基部3a1の上方に位置し保持基部3a1と接する保持上部3a2から成る。
【0017】
保持上部3a2には、サーボモータ4aの回転軸と接続された第1のリーブ4b1及びボールねじ3cの回転軸と接続された第2のリーブ4b2が載置されている。保持上部3a2によりサーボモータ4aの回転軸の上端、第1のリーブ4b1、第2のリーブ4b2及びボールねじ3cの上端が回転自在に支持されており、サーボモータ4aの回転が歯車ベルト4cを介してボールねじ3cに伝わり、ボールねじ3cが回転する。
ガイドレール3bは、保持基部3a1の前面に取り付けられている。
【0018】
上下動部3dは、圧縮板3eの移動を支える第1の上下動部3d1と、振動部6aのハウジング6a2の移動を支える第2の上下動部3d2から成る。上下動部3dは、表面に上下方向の溝が形成されており、この溝がガイドレール3bに嵌挿されている。上下動部3dは、更にボールねじ3cが嵌通されており、ボールねじ3cが回転することで嵌挿されているガイドレール3bに沿って上下方向に移動する。
圧縮板3eは、第1の上下動部3d1から水平方向に延出して配置されており、圧縮バネ5aの上端がハウジング3fを介して接続されている。
ハウジング3fは、圧縮板3eの下面に接続されており、圧縮バネ5aが伸縮自在となるように圧縮バネ5aの上端を覆っている。
【0019】
駆動手段4は、サーボモータ4a、第1のリーブ4b1、第2のリーブ4b2及び歯車ベルト4cを備える。
【0020】
サーボモータ4aは、制御手段8により制御される。
第1のリーブ4b1の回転軸は、サーボモータ4aの回転軸と接続されておりサーボモータ4aの回転に対応して回転する。
第2のリーブ4b2の回転軸は、ボールねじ3cの回転軸と接続されており、回転軸の回転に対応してボールねじ3cを回転させる。
第1のリーブ4b1と第2のリーブ4b2には、歯車ベルト4cが巻き付けられており、第1のリーブ4b1の回転に対応して歯車ベルト4cが移動し、その移動に対応して第2のリーブ4b2が回転する。
【0021】
以上のように駆動手段4は、サーボモータ4aを駆動することで、その回転力が歯車ベルト4cを介して第1のリーブ4b1から第2のリーブ4b2に伝わり、ボールねじ3cを回転させることでガイドレール3bに嵌挿された上下動部3dを上下方向に移動させることができる。上下動部3dが上下方向に移動する速度は、ボールねじ3cの回転速度に依存し、ボールねじ3cの回転速度は、歯車ベルト4cを介して伝わるサーボモータ4aの回転速度に依存する。つまり上下動部3dが上下方向に移動する速度は、サーボモータ4aの回転速度を制御することで制御できる。
【0022】
荷重手段5は、圧縮バネ5a、ロードセル5b及びリニアエンコーダ5cを備える。
【0023】
圧縮バネ5aは、上端が圧縮板3eに、下端がロードセル5bに、それぞれ接続しており、上下動部3dの移動に伴って圧縮板3eが移動することにより伸縮自在になるように配置されている。圧縮バネ5aの押圧力は、超音波振動手段6に加わるとともに、その押圧力の大きさはロードセル5bにより測定される。
【0024】
ロードセル5bは、超音波振動手段6に載置されており、圧縮バネ5aの下端と接続し、圧縮バネ5aが超音波振動手段6を押圧する押圧力を測定することができる。
【0025】
リニアエンコーダ5cは、溶着対象物(ワーク)の溶融による沈み込みの量の測定に用いる。沈み込み量とは、超音波振動をしている工具ホーン6cの先端が当接している溶着対象物(ワーク)が、ホーン先端の超音波振動により溶融することで、本来の高さから沈下する量である。この沈下の量は、溶着対象物(ワーク)の沈下量に対応して工具ホーン6cが移動する量としてリニアエンコーダ5cにより測定することができる。
【0026】
溶着手段である超音波振動手段6は、振動部6a、ブースター6b及び工具ホーン6cを備える。
【0027】
振動部6aは、超音波発振を行う発振部6a1と、それを覆うハウジング6a2を備える。ハウジング6a2は、第2の上下動部3d2により挟持されており、第2の上下動部3d2の移動に伴い荷重手段5とともに超音波振動手段6を移動可能にしている。
【0028】
超音波振動手段6は、例えば待機位置から所定の位置まで下動すると、下動を停止する。所定の位置とは、例えば工具ホーン6cの先端が、溶着対象物(ワーク)の表面に当接した位置である。
この状態で、上下動部3dが更に下動すると、圧縮板3eの下動により圧縮バネ5aが圧縮され蓄圧が増加し工具ホーン6cに対して下向きの荷重が加えられる。加えられる荷重の大きさは、圧縮バネ5aの特性及び圧縮量に関係しており、圧縮バネ5aの圧縮量の制御は、圧縮板3eの上下動を制御する制御手段8により行われる。
【0029】
アンビル7は、その上に溶着対象物(ワーク)を載置し、溶着対象物(ワーク)を工具ホーン6cとで挟持して超音波振動により溶着するための受け治具である。
【0030】
制御手段8は、駆動手段4のサーボモータ4aの動作、荷重手段5のロードセル5bの測定値の検出、超音波振動手段6の振動部6aの制御等、超音波溶着装置1の動作全体の制御を行う。
【0031】
図2に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1を用いて溶着する際の、圧縮バネ5a、工具ホーン6c及び溶着対象物(ワーク)W1の時間的遷移の様子の一例を示す。
【0032】
なお、図2に示すh1、h2、h3は、溶着対象物(ワーク)W1の表面を基準位置とした圧縮バネ5a上端(圧縮板3eの下面)までの高さであり、h11、h12は基準位置から圧縮バネ5a下端(ロードセル5b上面)までの高さを示している。
【0033】
図2(A)は、圧縮板3eの下動にともなって工具ホーン6cが待機位置から下動し、工具ホーン6cの先端が溶着対象物(ワーク)W1の表面に当接した状態を示している。溶着対象物(ワーク)W1及び工具ホーン6cの保護のため、溶着対象物(ワーク)W1の表面に当接する際の工具ホーン6cが下動する速度は、低速であることが望ましい。この状態における圧縮バネ5aの上端から下端までの長さは、h1―h11となる。
【0034】
図2(B)は、図2(A)に示す状態に対して、圧縮板3eを更に下動させた状態を示している。圧縮板3eの下動にともない圧縮バネ5aは圧縮を開始して蓄圧を増加し、これによりロードセル5b及びその下に位置する工具ホーン6cを押圧することで、工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する。この時の押圧力を押圧力1とする。この状態における圧縮バネ5aの上端から下端までの長さは、h2-h11となり、圧縮バネ5aは、図2(A)に示す状態からh1-h2だけ圧縮したことになる。この状態で、工具ホーン6cを超音波振動させて溶着処理を開始する。
【0035】
図2(C)は、図2(B)に示す状態に対して、工具ホーン6cを超音波振動させて超音波振動溶着を行っている状態を示している。
【0036】
工具ホーン6cを超音波振動させることで、ホーン先端が当接している溶着対象物(ワーク)W1が溶融し、溶着対象物(ワーク)W1に沈み込みが発生している様子を示している。工具ホーン6cの先端は、圧縮バネ5aの圧縮による押圧力により溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みに対して追従が可能となっている。一方圧縮バネ5aは、圧縮による押圧力により溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みへ追従するため、上端から下端までの長さはh2-h12となり、図2(B)に示す状態からh11-h12だけ伸長したことになる。この伸長により圧縮バネ5aの押圧力は減少し、その結果工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力は、減少する。
【0037】
図2(D)は、図2(C)に示す状態に対して、圧縮板3eを再度下動させ圧縮バネ5aを再び圧縮した状態を示している。
【0038】
これにより、図2(B)に示す状態から図2(C)に示す状態に遷移するときに圧縮バネ5aが伸長することで減少した溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力を最小時間で補完し、図2(B)に示す状態の押圧力=押圧力1を保てるように圧縮板3eの位置を制御している。
【0039】
以上のように本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、圧縮バネ5aの圧縮による押圧力により工具ホーン6cを押圧することで、溶着対象物(ワーク)W1の溶融による沈み込みに対する追従性を高め、かつ溶着対象物(ワーク)W1の溶融による沈み込みによる圧縮バネ5aの伸長に対しては、圧縮板3eを再度下動させて圧縮バネ5aを再度圧縮することで押圧力の変動を最小時間で補完し、押圧力の変動幅を最小限にすることが可能である。押圧力の変動を最小時間で補完し、押圧力の変動幅を最小限にするための圧縮板3eを下動させる制御に関しては、図4を用いて説明する。
【0040】
図3に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1を用いて溶着する際の、圧縮バネ5a、工具ホーン6c及び溶着対象物(ワーク)W1の様子の時間的遷移の他の例を示す。
【0041】
なお、図3に示すh3、h4、h5は、溶着対象物(ワーク)W1の表面を基準位置とした圧縮バネ5a上端(圧縮板3eの下面)までの高さであり、h12、h13は基準位置から圧縮バネ5a下端(ロードセル5b上面)までの高さを示している。また図2に示すh3と図3に示すh3は、同一の高さを示している。
【0042】
図3は、図2(D)に示す状態に引き続き、溶着処理中に工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力を、押圧力1から押圧力2(押圧力の大きさ:押圧力1<押圧力2)に変えた場合の例である。
【0043】
図3(A)は、図2(D)に示す状態に対して、圧縮板3eを更に下動させ圧縮バネ5aを更に圧縮し蓄圧を増加させることで、図2(B)に示す状態の押圧力1よりも大きい押圧力2で工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧している状態を示している。
【0044】
この状態における圧縮バネ5aの上端から下端までの長さは、h4-h12となり、圧縮バネ5aは、図2(D)に示す状態からh3-h4だけ圧縮したことになる。
【0045】
なお図2(D)に示す状態から図3(A)に示す状態に遷移する過程においても溶着処理が継続されているため、この遷移の過程においても溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みが発生するが、図2(C)同様に工具ホーン6cの先端は、圧縮バネ5aの圧縮による押圧力により溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みに対して常に追従が可能となっている。
【0046】
図3(B)は、図3(A)に示す状態に対して、押圧力1よりも大きい押圧力2で溶着処理を継続することにより、溶着対象物(ワーク)W1のさらなる溶融による沈み込みが増大している様子を示している。
【0047】
工具ホーン6cの先端は、図2(C)同様に圧縮バネ5aの圧縮力により溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みに対して追従が可能となっている。一方圧縮バネ5aは、この溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みへの追従により、圧縮バネ5aの上端から下端までの長さはh4-h13となり、図3(A)に示す状態からh12-h13だけ伸長したことになる。この伸長により圧縮バネ5aの押圧力は減少し、その結果工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力は、減少する。
【0048】
図3(C)は、図3(B)に示す状態に対して、圧縮板3eを再度下動させ圧縮バネ5aを再び圧縮した状態を示している。
【0049】
これにより、図3(A)に示す状態から図3(B)に示す状態に遷移するときに圧縮バネ5aが伸長することで減少した溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力を最小時間で補完し、図3(A)に示す状態の押圧力=押圧力2を保てるように圧縮板3eの位置を制御している。
【0050】
以上のように本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、溶着中(超音波発振中)に溶着対象物(ワーク)W1に加える押圧力を複数段階的に変える場合において、押圧力を変えている途中及び押圧力を変えた後も、溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みへの追従と、それに伴う押圧力の変動を最小時間で補完し、押圧力の変動幅を最小限にすることで、溶着対象物(ワーク)W1に加える各段階の押圧力を一定に保つことが可能である。
【0051】
なお、図2(D)に示す押圧力の補完のための圧縮板3eの下動、図3(A)に示す新たな押圧力で押圧するための圧縮板3eの下動及び図3(C)に示す押圧力の補完のための圧縮板3eの下動は、図2(B)に示す工具ホーン6cの超音波振動を開始した以降、超音波振動を行っている間に移動した場合を例に示したがそれに限らない。圧縮板3eの移動は、図2(B)に示す工具ホーン6cが超音波振動を開始した以降の任意のタイミングにおいて、工具ホーン6cが超音波振動を停止している間及び再開した間のいずれの場合に行ってもよい。
【0052】
図4に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の押圧力の制御の機能ブロックの一例を示す。
【0053】
工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力の制御は、ロードセル5bが測定した押圧力の測定値をもとに制御手段8が行う。
【0054】
制御手段8は、ロードセル5bが測定した押圧力を用いて、サーボモータ4aの回転速度を設定する。回転速度が設定されたサーボモータ4aは、設定された回転速度でモータを回転させることで、その回転速度に対応してボールねじ3cが嵌通した上下動部3dを、所定の速度で上下動させる。上下動部3dは、所定の速度で上下動することで圧縮板3eを所定の速度で上下動させ圧縮バネ5aを圧縮又は伸長する。圧縮バネ5aの圧縮又は伸長により蓄圧を変化させることで、ロードセル5bが測定する押圧力の測定値が逐次変化する。制御手段8は、その変化した測定値を逐次ロードセル5bから受け取ることで測定値の変化を検出し、その検出結果もとにサーボモータ4aに再度回転速度を設定する。
【0055】
このように制御手段8は、ロードセル5bの押圧力の測定値をサーボモータ4aに設定する回転速度にフィードバック制御することで、図2(D)及び図3(C)で示したように圧縮板3eの適切な位置への移動を最小時間で実現し、溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みに対する圧縮バネ5aの伸長に伴う押圧力の変動を最小時間で補完し、かつ工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力の変動幅を最小限にすることを可能としている。
【0056】
図2から図4で示した上下動部3d(圧縮板3e)の時間的遷移を実現するために、超音波溶着装置1の制御手段8が行う押圧を制御する処理フローの一例を、図5及び図6を用いて説明する。
【0057】
図5に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の制御手段8が行う押圧の制御の処理フローの一例を示す。
【0058】
図5に示す溶着対象物(ワーク)W1への押圧処理開始の時点は、図2(A)に示す工具ホーン6cの先端が溶着対象物(ワーク)W1の表面に当接した状態を示している。
【0059】
制御手段8は、溶着対象物(ワーク)W1への押圧を開始するためにサーボモータ4aに所定の向きに所定の回転速度で駆動するように駆動開始を指示(Step1)する。
【0060】
駆動開始の指示を受けたサーボモータ4aは、所定の向きに所定の速度で回転を始める。サーボモータ4aが所定の向きに所定の速度で回転を始めると、その回転速度に対応して、ボールねじ3cが回転し、ボールねじ3cの回転速度に伴い上下動部3dに配置された圧縮板3eが所定の速度で下動する。圧縮板3eの下動に伴い圧縮バネ5aは圧縮を開始して蓄圧を増加し、これによりロードセル5bに対する下向きの荷重が増加する。
【0061】
また制御手段8は、ロードセル5bに測定した押圧力の測定値通知を開始するように指示(Step1)する。これによりロードセル5bは、押圧力の測定値を所定のタイミングで制御手段8に通知することを開始する。
【0062】
制御手段8は、圧縮バネ5aから受ける下向きの荷重の測定値をロードセル5bから取得(Step2)する度に、その取得した測定値が所定の設定値(設定値1とする)に達しているかどうかを判断(Step3)する。
【0063】
判断の結果、通知された測定値が所定の設定値(設定値1)に達していない場合、制御手段8は、サーボモータ4aの駆動を継続させる。
【0064】
判断の結果、通知された測定値が所定の設定値(設定値1)に達している場合、制御手段8は、サーボモータ4aに駆動終了を指示(Step4)する。これにより図2(B)に示すように、圧縮バネ5aは、ロードセル5b及びその下に位置する工具ホーン6cを所定の設定値(設定値1、図2(B)に示す押圧力1に対応)で押圧し、工具ホーン6cは、溶着対象物(ワーク)W1を所定の設定値(設定値1)で押圧する。
【0065】
制御手段8は、次に超音波発振を行う発振部6a1に超音波発振開始を指示(Step5)する。これにより図2(B)に示すように発振部6a1は超音波発振を開始し、工具ホーン6cを超音波振動させることで溶着対象物(ワーク)W1の溶着処理を開始する。
【0066】
溶着処理を開始すると、図2(C)に示すように工具ホーン6cの先端が当接している溶着対象物(ワーク)W1が溶融し、溶着対象物(ワーク)W1に沈み込みが発生するため、圧縮バネ5aが伸長し押圧力が減少する。このため制御手段8は、押圧力の測定値をロードセル5bから取得(Step6)する度に、その取得した測定値が、Step1から5で設定された押圧力(設定値1)に達しているかどうかを判断(Step7)する。
【0067】
判断の結果、通知された測定値が設定値(設定値1)に達している場合、制御手段8は、サーボモータ4aに駆動終了を指示(Step9)する(既にサーボモータ4aが駆動を終了している場合は、駆動を終了したままとする)。
【0068】
判断の結果、通知された測定値が設定値(設定値1)に達していない場合、制御手段8は、サーボモータ4aに駆動開始を指示(Step8)する(既にサーボモータ4aが駆動を開始している場合は、駆動を継続する)。これにより図2(D)に示すように、圧縮板3eが再度下動することに伴い圧縮バネ5aは圧縮して蓄圧を増加し、これによりロードセル5bに対する下向きの荷重が増加する。
【0069】
制御手段8は、荷重の増加の様子を判断するために測定値をロードセル5bから取得(Step6)する度に、その取得した測定値が、設定値(設定値1)に達しているかどうかを判断(Step7)する。制御手段8は、ロードセル5bから取得する測定値が、設定値(設定値1)に達するまでサーボモータ4aに駆動開始を指示する(既にサーボモータが駆動を開始している場合は、駆動を継続する)
【0070】
これにより制御手段8は、図2(D)に示すように、溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みの発生により圧縮バネ5aが伸長することで減少した溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力を最小時間で補完し、Step3で設定した設定値(設定値1)の押圧力を保つことが可能となる。
【0071】
制御手段8は、通知された測定値が設定値(設定値1)に達している場合は、サーボモータ4aに駆動終了を指示(Step9)するととともに、ロードセル5bに測定値通知終了を指示(Step10)して押圧処理を終了させる。
【0072】
このように制御手段8は、超音波発振を開始した以降は、常に圧縮バネ5aの蓄圧による荷重の測定値をロードセル5bから取得し、その荷重の変化の具合を監視することで、押圧力の変動を最小時間で補完し、かつ工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力の変動幅を最小限にすることを可能としている。
【0073】
なお制御手段8は、Step5の超音波発振開始の指示により発振部6a1の超音波発振を開始した以降の任意のタイミングにおいて、発振部6a1の超音波発振を停止及び再開を指示してもよい。またStep3及びStep7における、取得した測定値は設定値に達したか?の判断は、取得した測定値が設定値と一致する場合あるいは設定値から所定の範囲内に到達している場合、のいずれの場合を判断してもよい。
【0074】
図5に示す押圧を制御する処理フローは、Step1からStep4の処理により押圧力を所定の設定値(設定値1)に設定し、超音波発振開始の指示(Step5)以降発振部6a1が超音波発振を行っている間は、その設定した1つの設定値(設定値1)の押圧力だけで押圧を行った場合の押圧を制御する処理フローの一例である。一方制御手段8は、超音波発振開始の指示(Step5)を行った以降、溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力の設定値を変えることが可能である。制御手段8により押圧力の設定値を変える場合の処理フローの一例を図6に示す。
【0075】
図6に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の制御手段8が行う押圧を制御する処理フローの他の例を示す。図5図6の同一のStep番号は、同一の処理を示している。
【0076】
溶着処理を開始した以降に溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力の設定値を変える場合、設定する押圧力(荷重)の大きさ(設定値)、その設定値で押圧する時間及びその設定値の押圧力で押圧する順番、を含む情報が、荷重変化テーブル(管理テーブル)として予め制御手段8のメモリーに保存されている。制御手段8は、メモリーに保存されている荷重変化テーブル(管理テーブル)から押圧力(荷重)の大きさ及び押圧時間を押圧する順番に読み出し、その順番に従って押圧力をかえていく。荷重変化テーブル(管理テーブル)の一例を、図8を用いて説明する。
【0077】
制御手段8は、超音波発振開始の指示(Step5)により発振部6a1が超音波発振を開始した以降、押圧中の押圧力の押圧時間が満了したかどかを判断する(Step20)。
【0078】
判断の結果、押圧時間が満了していない場合、制御手段8は、既に設定されている設定値の押圧力を継続する。
【0079】
判断の結果、押圧時間が満了した場合、制御手段8は、荷重変化テーブルを参照して次の順番の押圧力の設定値が存在するかどうかを判断する(Step21)。
【0080】
判断の結果、次の順番の押圧力の設定値が存在する場合、制御手段8は、荷重変化テーブルを参照して次の順番の押圧力とその押圧時間を取得し、サーボモータ4aに押圧力変更の指示(Step22)をする。押圧力変更の指示(Step22)の処理フローは、図7に示す。
【0081】
判断の結果、次の順番の押圧力の設定値が存在しない場合、制御手段8は、ロードセル5bに測定値通知終了を指示(Step10)して押圧処理を終了させる。
【0082】
なお制御手段8は、Step5の超音波発振開始の指示により発振部6a1の超音波発振を開始した以降の任意のタイミングにおいて、発振部6a1の超音波発振を停止及び再開を指示してもよい。
【0083】
図7に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の制御手段8が行う押圧制御の処理フローの他の例を示す。図7に示す処理フローは、押圧力変更の指示(Step22)の詳細処理フローであり、図5に示すStep1からStep4までの処理とほぼ同等である。
【0084】
制御手段8は、圧縮板3eを上下動させることで圧縮バネ5aを圧縮又は伸長させ新たな押圧力を設定するために、サーボモータ4aに、所定の向きに所定の回転速度で駆動するように駆動開始を指示(Step31)する。
【0085】
駆動開始の指示を受けたサーボモータ4aは、所定の向きに所定の速度で回転を始める。サーボモータ4aが所定の向きに所定の速度で回転を始めると、その回転速度に対応して、ボールねじ3cが回転し、ボールねじ3cの回転速度に伴い上下動部3dに配置された圧縮板3eが所定の向きに所定の速度で移動する。圧縮板3eの移動に伴い圧縮バネ5aは圧縮又は伸長して蓄圧を変化させ、これによりロードセル5bに対する下向きの新たな荷重が加えられる。
【0086】
制御手段8は、圧縮バネ5aから受ける下向きの荷重の測定値をロードセル5bから取得(Step32)する度に、その取得した測定値が新たな押圧力の設定値(設定値2とする)に達しているかどうかを判断(Step33)する。
判断の結果、通知された測定値が新たな押圧力の設定値(設定値2)に達していない場合、制御手段8は、サーボモータ4aの駆動を継続させる。
【0087】
判断の結果、通知された測定値が新たな押圧力の設定値(設定値2)に達している場合、制御手段8は、サーボモータ4aに駆動終了を指示(Step34)する。これにより図3(A)に示すように、圧縮バネ5aは、ロードセル5b及びその下に位置する工具ホーン6cを新たな設定値(設定値2)の押圧力で押圧し、工具ホーン6cは、溶着対象物(ワーク)W1を新たな設定値(設定値2)の押圧力で押圧する。
【0088】
なおStep33の、取得した測定値は設定値に達したか?の判断は、取得した測定値が設定値と一致する場合あるいは設定値から所定の範囲内に到達している場合、のいずれの場合を判断してもよい。
【0089】
図8に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の制御手段8が保持する荷重変化テーブル(管理テーブル)の一例を示す。
【0090】
図8に示す荷重変化テーブル(管理テーブル)の横軸は、溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力(荷重)として工具ホーン6cに設定される値及びその設定値で溶着対象物(ワーク)W1を押圧する時間を示し、縦軸は、押圧する順番を示している。例えば押圧する順番がNo1の場合、溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力(荷重)として工具ホーン6cに設定される値は100(N)であり、その押圧する時間は200(msec)であることを示している。図8の例は、押圧する順番に押圧力が増加する例であるがそれに限らない。押圧力は、例えば押圧する順番に増加したあとに、減少に転じてもよい。
【0091】
荷重変化テーブル(管理テーブル)は、例えば超音波溶着装置1のユーザI/Fを介して書き換え可能であってもよい、また保存可能であってもよい、また超音波溶着装置1の入出力I/Fを介して外部と入出力可能であってもよい。これにより荷重変化テーブル(管理テーブル)は、溶着対象物(ワーク)W1の仕様に応じて、押圧する順序、押圧力、押圧する時間を容易に最適に書き換えることができ、異なる仕様の溶着対象物(ワーク)W1に対しても汎用的に効率的に溶着できることを可能としている。
【0092】
(本開示の第1の実施形態の変形)
本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、図6に示す処理フローに示すように発振部6a1が超音波発振を開始した以降に工具ホーン6cに設定する押圧力の設定値を変える場合、圧縮バネ5aを圧縮又は伸長するために移動手段3(圧縮板3e)を移動させる移動速度は、所定の1つの値ではなく、設定する押圧力によって異なる値であってもよい。この場合荷重変化テーブル(管理テーブル)は、移動手段3(圧縮板3e)を移動させる移動速度の情報を含んでもよい。
【0093】
図9に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の制御手段8が保持する荷重変化テーブル(管理テーブル)の他の例を示す。
【0094】
図9に示す荷重変化テーブル(管理テーブル)の横軸は、図8に示す荷重変化テーブル(管理テーブル)の横軸に対して移動手段3(圧縮板3e)を移動させる移動速度の情報が追加されている。なお荷重変化テーブル(管理テーブル)に含まれている移動速度は、例えば移動手段3(圧縮板3e)の移動速度の最大値(最高速度)を示すものであってもよい、あるいは移動手段3(圧縮板3e)の移動速度が定常状態になった場合の値を示すものであってもよい。
【0095】
また本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、圧縮バネ5aが着脱交換可能であってもよい。図2(C)及び図3(B)に示した溶着対象物(ワーク)W1の沈み込み量は、溶着対象物(ワーク)W1の仕様により異なる。このため圧縮バネ5aは、溶着対象物(ワーク)W1の仕様に最適となるバネ定数やバネの長さ等のバネ仕様をもつ圧縮バネを選択することが望ましい。圧縮バネ5aとして選択されたバネ仕様の情報は、例えば荷重変化テーブル(管理テーブル)に保存されてもよい。また異なるバネ仕様を持つ圧縮バネ5aごとに荷重変化テーブル(管理テーブル)を保存してもよい。
【0096】
本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の圧縮バネ5aは、圧縮板3eに接続している上端及びロードセル5bに接続している下端が、それぞれ着脱可能になっている。これにより本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、溶着対象物(ワーク)W1の仕様に最適な圧縮バネ5aに着脱交換可能となっている。
【0097】
また本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、超音波振動手段6が振動する方向が、荷重手段5(圧縮バネ5a)が押圧する方向(Z軸方向)と一致している縦方向の例であるが、それに限らない。例えば超音波振動手段6が振動する方向は、荷重手段5が押圧する方向(Z軸方向)に対して垂直である水平方向であってもよい。
【0098】
以上を踏まえて、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1を用いて溶着対象物(ワーク)W1を溶着する際の、溶着処理開始から溶着処理終了までの一連の動作の例を示す。
【0099】
図10に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1を用いて、溶着対象物(ワーク)W1の溶着処理開始から溶着処理終了までの工具ホーン6cの位置、移動手段3(圧縮板3e)の移動速度、工具ホーン6cに加える押圧力の時間的遷移の一例を示す。
【0100】
図10(A)は、縦軸が移動手段3(圧縮板3e)の移動速度、横軸が時間を示している。図10(B)は、縦軸が待機位置を0とした場合の工具ホーン6cの位置、横軸が時間を示している。図10(C)は、縦軸が溶着対象物(ワーク)W1を工具ホーン6cが押圧する押圧力、横軸が時間を示している。横軸の時間は、説明の都合上t1からt10の区間に分ける。
【0101】
t1からt3までの区間は、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1が起動し溶着処理開始の指示を待っている状態(待機状態)において、溶着処理開始の指示を受け移動手段3(圧縮板3e)が移動を開始することにより、工具ホーン6cを待機位置から溶着対象物(ワーク)W1の表面にホーン先端が当接する位置まで移動させる区間である。
【0102】
t1からt3までの区間うちt1の区間は、溶着処理開始の指示を受けた制御手段8の指示により移動手段3(圧縮板3e)が下動を開始し、下動する速度を加速している区間である。図10(A)に示すように、移動手段3(圧縮板3e)が下動する速度は、増加している。制御手段8が受ける溶着処理開始の指示は、例えばユーザ操作による指示であってもよい。
【0103】
t1からt3までの区間うちt2の区間は、移動手段3(圧縮板3e)が下動する速度が定速(定常状態)の区間である。図10(A)に示すように、移動手段3(圧縮板3e)が下動する速度は、定速(定常状態)を保っている。
【0104】
t1からt3までの区間うちt3の区間は、移動手段3(圧縮板3e)が下動する速度が減速している区間である。図10(A)に示すように、移動手段3(圧縮板3e)が下動する速度は、減少している。
【0105】
t3の区間の終点が、工具ホーン6cの先端が溶着対象物(ワーク)W1に当接するタイミングである。移動手段3(圧縮板3e)は、工具ホーン6cの先端が溶着対象物(ワーク)W1に当接する際、当接による衝撃を和らげるために下動する速度を減速して低速にしている。この工具ホーン6cの先端が溶着対象物(ワーク)W1に当接したタイミングが、図2(A)に示す状態に相当する。
【0106】
t4の区間は、移動手段3(圧縮板3e)を低速の状態で更に下動させ、圧縮バネ5aを圧縮することで蓄圧を増やしている区間である。図10(A)に示すように、移動手段3(圧縮板3e)の移動速度は、低速の状態で定速(定常状態)を保っている。これにより移動手段3(圧縮板3e)は、低速で圧縮バネ5aを圧縮して蓄圧を増やしている。圧縮バネ5aが圧縮して蓄圧を増やしている状態が、図2(B)の前半に示す状態に相当する。
【0107】
移動手段3(圧縮板3e)を下動させ圧縮バネ5aを圧縮して蓄圧を増やすことでロードセル5b及びその下に位置する工具ホーン6cを押圧する押圧力が、所定の押圧力(押圧力3とする)に達すると、制御手段8は、超音波振動手段6(発振部6a1)に超音波発振開始を指示する。制御手段8が超音波振動手段6(発振部6a1)に超音波発振開始を指示するタイミングは、t4の区間の終点である。押圧力が所定の押圧力に達し超音波振動を開始した状態が、図2(B)の後半に示す状態に相当する。t5からt7までの区間は、超音波振動手段6(発振部6a1)を発振させることで溶着をしている区間である。
【0108】
t5からt7までの区間うちt5の区間は、t4の区間の終点(t5の区間の始点)で開始した超音波振動手段6(発振部6a1)の超音波発振により、工具ホーン6cが超音波振動を開始し溶着処理を開始した区間である。
【0109】
溶着対象物(ワーク)W1は、押圧力3で押圧している工具ホーン6cが超音波振動することにより、ホーン先端が当接している部分が溶融し沈み込みが発生する。
【0110】
工具ホーン6cの先端は、圧縮バネ5aの圧縮による押圧力により、溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みに対して追従可能とっている。この圧縮バネ5aの、溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みへの追従が、図2(C)に示す状態に相当する。この時の工具ホーン6cの移動距離が、図10(B)に示す溶着対象物(ワーク)W1の沈み込み量となる。
【0111】
溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みへの追従により圧縮バネ5aは伸長するため、圧縮バネ5aの押圧力は減少する。この圧縮バネ5aの押圧力の減少を最小時間で補完し、工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力の変動幅を最小限にしてt4の区間の終点の状態の溶着対象物(ワーク)W1に対する押圧力=押圧力3の押圧を保つために、移動手段3(圧縮板3e)は、下動する速度を加速する。この押圧力3を保つための移動手段3(圧縮板3e)の下動が、図2(D)に示す状態に相当する。
【0112】
t5からt7までの区間のうちt6の区間は、図10(C)に示すようにt5の区間のワークW1に対する押圧力=押圧力3より大きい押圧力(押圧力4とする)で押圧して溶着処理を継続している区間である。移動手段3(圧縮板3e)は、更に下動することで圧縮バネ5aを圧縮し蓄圧を更に増やす。これにより工具ホーン6cは、溶着対象物(ワーク)W1をt5の区間の押圧力=押圧力3より大きい押圧力4で押圧する。この新たな押圧力4で押圧を開始した状態が、図3(A)に示す状態に相当する。
【0113】
溶着対象物(ワーク)W1は、押圧力3より大きい新たな押圧力4で押圧している工具ホーン6cが超音波振動することにより、ホーン先端が当接している部分が更に溶融し沈み込みが発生する。
【0114】
工具ホーン6cの先端は、圧縮バネ5aの圧縮による押圧力により、溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みに対して追従可能となっている。この圧縮バネ5aの沈み込みへの追従が、図3(B)に示す状態に相当する。
【0115】
溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みへの追従により圧縮バネ5aは伸長するため、圧縮バネ5aの押圧力は減少する。この圧縮バネ5aの押圧力の減少を最小時間で補完し、ワークW1に対する押圧力の変動幅を最小限にして押圧力4の押圧を保つために、移動手段3(圧縮板3e)は、下動する速度を加速する。この押圧力4を保つための移動手段3(圧縮板3e)の下動が、図3(C)に示す状態に相当する。
【0116】
t5からt7までの区間うちt7の区間は、t6の区間のワークW1に対する押圧力=押圧力4より小さい押圧力(押圧力5とする)で押圧して溶着処理を継続している区間である。移動手段3(圧縮板3e)は、上動することで圧縮バネ5aを伸長し蓄圧を減らす。これにより工具ホーン6cは、溶着対象物(ワーク)W1をt6の区間のワークW1に対する押圧力=押圧力4より小さい押圧力5で押圧する。
【0117】
図10に示す例は、t5からt7の各区間において移動手段3(圧縮板3e)の移動速度が異なる。各区間における移動速度は、例えば図9に示す荷重変化テーブル(管理テーブル)により管理される。
【0118】
溶着処理は、例えば工具ホーン6cが超音波振動を停止することで終了することができる。溶着処理終了の指示は、例えばユーザ操作による指示であってもよい、あるいは、溶着処理開始の指示から予め決められた時間経過のタイミングに発信される指示であってもよい、あるいは荷重変化テーブル(管理テーブル)により管理されている時間経過のタイミングに発信される指示であってもよい。
【0119】
図10に示す例は、溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力を弱めたt7の区間の終点において、超音波振動手段6(発振部6a1)の発振を停止した例である。これにより工具ホーン6cが超音波振動を停止し、溶着処理が終了する。t8からt10の区間は、溶着処理の終了に伴い移動手段3(圧縮板3e)を更に上動させ、工具ホーン6cを待機位置まで戻す区間である。
【0120】
t8からt10までの区間うちt8の区間は、溶着処理終了の指示を受けた制御手段8の指示により移動手段3(圧縮板3e)が上動を開始し、上動する速度が加速している区間である。図10(A)に示すように、移動手段3(圧縮板3e)が上動する速度は、増加している。
【0121】
t8からt10までの区間うちt9の区間は、移動手段3(圧縮板3e)が上動する速度が定速(定常状態)の区間である。図10(A)に示すように、移動手段3(圧縮板3e)が上動する速度は、定速(定常状態)を保っている。
【0122】
t8からt10までの区間うちt10の区間は、移動手段3(圧縮板3e)が上動する速度が減速しているの区間である。図10(A)に示すように、移動手段3(圧縮板3e)が上動する速度は、減少している。移動手段3(圧縮板3e)は、工具ホーン6cが待機位置に到達するように移動を停止する。
【0123】
図10(A)の例では、t6の区間の始点直後の移動速度は加速し、その後減速を経て定速(定常状態)を保っている例である。この場合、荷重変化テーブル(管理テーブル)で管理する移動速度は、例えばt6の区間の始点直後の移動速度が加速して最大値となる値(最高速度)であってもよい、あるいはその後減速を経て定速(定常状態)を保っている状態の値であってもよい。
【0124】
以上のように本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、t5からt7の溶着処理を行っている各区間において溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力を変えて溶着処理を行うことができる。また各区間において溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力の設定値、設定した押圧力で押圧する時間、押圧する順序は、荷重変化テーブル(管理テーブル)を変更することで、溶着対象物(ワーク)W1の仕様に応じて、最適に変更可能である。
【0125】
また本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、圧縮バネ5aの蓄圧による溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みに対する追従と、沈み込みへの追従により圧縮バネ5aが伸長することによる押圧力の減少を最小時間で補完するために、移動手段3(圧縮板3e)を瞬時に移動させることにより、設定した押圧力が異なる各区間において工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力の変動幅を最小限にすることができる。
【0126】
また本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、押圧力を弱めることができる。本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、この押圧力を弱めて溶着処理を継続する場合でも、ホーン先端が当接している溶着対象物(ワーク)W1の溶融の状態に応じて、溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みに対する追従と、沈み込みへの追従により圧縮バネ5aが伸長することによる押圧力の減少を最小時間で補完することが可能である。
【0127】
以上のように本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、溶着処理を行っている間に、溶着対象物(ワーク)W1の仕様に応じて最適になるように溶着対象物(ワーク)W1を押圧する順序、設定する押圧力、設定する押圧力で押圧する時間を任意に変えることが可能であり、その変えた各々の設定値の押圧力において工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力を一定に保つことが可能である。これにより本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、高品質な溶着を行うことができ、また荷重変化テーブル(管理テーブル)を溶着対象物(ワーク)W1の仕様に応じて書き換えることで、多様な溶着対象物(ワーク)W1に対して汎用的に使用することができる。
【0128】
(本開示の第2の実施形態)
本開示の第1の実施形態に係る溶着装置である超音波溶着装置1の制御手段8は、ロードセル5bが測定した押圧力の測定値を用いて移動手段3(圧縮板3e)の移動速度を制御するが、ロードセル5bが測定した押圧力の測定値を用いて、移動手段3(圧縮板3e)の移動距離を制御しても良い。
【0129】
本開示の第2の実施形態に係る溶着装置である超音波溶着装置11は、制御手段8が、ロードセル5bが測定した押圧力を用いて移動手段3(圧縮板3e)の移動距離を制御する超音波溶着装置である。第2の実施形態に係る超音波溶着装置11の全体構成は、第1の実施形態に係る超音波溶着装置1と同じである。
【0130】
図11に、本開示の第2の実施形態に係る溶着装置である超音波溶着装置11の押圧力の制御の機能ブロックの一例を示す。
【0131】
制御手段8は、ロードセル5bが測定した押圧力を用いて、サーボモータ4aの回転距離を設定する。回転距離が設定されたサーボモータ4aは、設定された回転距離に応じてモータを回転させることで、その回転距離に対応してボールねじ3cが嵌通した上下動部3dを、所定の距離だけ上下動させる。上下動部3dは、所定の距離だけ上下動することで圧縮板3eを所定の距離だけ上下動させ圧縮バネ5aを圧縮又は伸長する。圧縮バネ5aの圧縮又は伸長により蓄圧を変化させることで、ロードセル5bが測定するの押圧力の測定値が逐次変化する。制御手段8は、その変化した測定値を逐次ロードセル5bから受け取ることで、測定値の変化を検出し、その検出結果をもとにサーボモータ4aに再度回転距離を設定する。
【0132】
このように制御手段8は、ロードセル5bの押圧力の測定値をサーボモータ4aに設定する回転距離にフィードバック制御することで、圧縮板3eの適切な位置への移動を最小時間で実現し、溶着対象物(ワーク)W1の沈み込みに対する圧縮バネ5aの伸長に伴う押圧力の変動を最小時間で補完し、かつ工具ホーン6cが溶着対象物(ワーク)W1を押圧する押圧力の変動幅を最小限にすることを可能とする。
【0133】
(本開示の第2の実施形態の変形)
本開示の第2の実施形態に係る溶着装置である超音波溶着装置11の制御手段8は、ロードセル5bが測定した押圧力の測定値を用いて移動手段3(圧縮板3e)移動速度及び移動距離の両方を制御してもよい。
【0134】
(本開示の第3の実施形態)
本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態では、溶着手段として超音波振動溶着を用い、熱可塑性樹脂である溶着対象物(ワーク)を溶着した場合を例に説明したが、接合手段として超音波振動を用い、対象物(ワーク)として金属を接合してもよい。
【0135】
本開示の第3の実施形態に係る接合装置は、接合手段として超音波振動を用い、接合対象物(ワーク)である金属に超音波振動を加えて固相接合を行う装置である。第3の実施形態に係る接合装置の構成は、第1の実施形態及び第2の実施形態で示した超音波溶着装置1の構成と同じである。つまり第3の実施形態に係る接合装置は、第1の実施形態及び第2の実施形態で示した超音波溶着装置1の溶着手段に対応して、超音波振動を行う接合手段を持ち、接合手段が行う超音波振動を接合対象物(ワーク)である金属に超音波振動を加えて固相接合を行う。
【0136】
第3の実施形態に係る接合装置は、第1の実施形態及び第2の実施形態で示した超音波溶着装置1同様に、圧縮バネ5aの圧縮による押圧力により工具ホーン6cを押圧することで、固相接合を行うことで発生する接合対象物(ワーク)の可塑性変形に対する追従性を高め、かつ接合対象物(ワーク)W1の可塑性変形よる圧縮バネ5aの伸長に対しては、圧縮板3eを再度下動させて圧縮バネ5aを再度圧縮することで押圧力の変動を最小時間で補完し、押圧力の変動幅を最小限にすることが可能である。
【0137】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0138】
1:第1の溶着装置
2:フレーム(装置本体)
2a:水平部
2b:垂直部
3:移動手段
3a:保持部
3a1:保持基部
3a2:保持上部
3b:ガイドレール
3c:ボールねじ
3d:上下動部
3d1:第1の上下動部
3d2:第2の上下動部
3e:圧縮板
3f:ハウジング
4:駆動手段
4a:サーボモータ
4b1:第1のリーブ
4b2:第2のリーブ
4c:歯車ベルト
5:荷重手段
5a:圧縮バネ
5b:ロードセル
5c:リニアエンコーダ
6:超音波振動手段
6a:振動部
6a1:発振部
6a2:ハウジング
6b:ブースター
6c:工具ホーン
7:アンビル
8:制御手段
W1:溶着対象物(ワーク)

11:第2の溶着装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11