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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097260
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】弾性波フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20240710BHJP
   H03H 9/145 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H9/145 Z
H03H9/145 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000713
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】玉置 範一
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA16
5J097AA20
5J097BB11
5J097BB14
5J097CC05
5J097DD13
5J097DD16
5J097DD17
5J097DD21
5J097KK01
5J097KK04
(57)【要約】
【課題】通過帯域外の帯域に励振波が発生することを抑制できる弾性波フィルタを提供する。
【解決手段】弾性波フィルタ1は、フィルタ回路10と、付加回路20とを備える。付加回路20は、複数のIDT31、32および反射器41を含む。IDT31の第1励振部51xは、反射器41の隣に配置され、最外のIDT31に含まれる複数の電極指35のうち、当該IDTに含まれる電極指の総数Nが偶数の場合は((N/2)+1)本の電極指または総数Nが奇数の場合は((N+1)/2)本の電極指を有する。IDT31の第2励振部51yは、第1励振部51xの電極指を除く、2本以上の電極指を有する。第1励振部51xが有する電極指の平均の配列ピッチをpxとし、複数の反射電極指45の平均の配列ピッチをprとした場合に、pr/pxは、0.5以上0.97以下または1.15以上2.0以下の範囲内の値である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入出力端子と、
前記複数の入出力端子を結ぶ第1経路に設けられたフィルタ回路と、
前記第1経路の少なくとも一部と並列接続される第2経路に設けられた付加回路と、
を備え、
前記付加回路は、複数のIDT(InterDigital Transducer)および反射器を含む共振器を有し、
前記複数のIDTは、第1方向に沿って配置され、
前記IDTのそれぞれは、前記第1方向に交差する第2方向に延び、かつ、前記第1方向に沿って配列された複数の電極指を有し、
前記反射器は、前記第1方向において前記複数のIDTのうちの最も外側に位置する最外のIDTの隣に配置され、前記第2方向に延び、かつ、前記第1方向に沿って配列された複数の反射電極指を有し、
前記最外のIDTは、第1励振部および第2励振部を有し、
前記第1励振部は、前記第1方向において前記反射器の隣に配置され、前記最外のIDTに含まれる前記複数の電極指のうち、当該IDTに含まれる電極指の総数をNとしたときに、Nが偶数の場合は((N/2)+1)本の電極指またはNが奇数の場合は((N+1)/2)本の電極指を有し、
前記第2励振部は、前記第1方向において前記第1励振部から見て前記反射器とは反対側に配置され、前記最外のIDTに含まれる前記複数の電極指のうちの前記第1励振部の電極指を除く、2本以上の電極指を有し、
前記第1励振部が有する前記電極指の前記第1方向における平均の配列ピッチをpxとし、前記複数の反射電極指の前記第1方向における平均の配列ピッチをprとした場合に、
pr/pxは、0.5以上0.97以下または1.15以上2.0以下の範囲内の値である
弾性波フィルタ。
【請求項2】
前記第2励振部が有する前記電極指の前記第1方向における平均の配列ピッチをpyとした場合に、px>pyである
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記付加回路は、複数の前記反射器を有し、
複数の前記反射器は、前記第1方向において前記複数のIDTの両外側に配置されている
請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記フィルタ回路の通過帯域は、2496MHz以上2690MHz以下の周波数帯域を含む
請求項1~3のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタ回路と、フィルタ回路に並列接続される付加回路とを備える弾性波フィルタが知られている。特許文献1には、アンテナ端子と送信端子との間に接続された送信フィルタと、アンテナ端子と受信端子との間に接続された受信フィルタと、アンテナ端子と送信端子との間の経路に一端を、アンテナ端子と受信端子との間の経路に他端を接続する弾性波素子と、を備える分波器が開示されている。弾性波素子は、送信端子に入力された送信信号の位相を逆位相となるように変換する素子であり、弾性波素子には反射器が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-220263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、弾性波素子に反射器を設けることでQ値を向上させることができるが、Q値が上がったことにより弾性波素子が不必要な共振を起こし、弾性波フィルタの通過帯域外の帯域に励振波が発生することがある。その場合、通過帯域外の帯域における減衰特性を確保することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、通過帯域外の帯域に励振波が発生することを抑制できる弾性波フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る弾性波フィルタは、複数の入出力端子と、前記複数の入出力端子を結ぶ第1経路に設けられたフィルタ回路と、前記第1経路の少なくとも一部と並列接続される第2経路に設けられた付加回路と、を備え、前記付加回路は、複数のIDT(InterDigital Transducer)および反射器を含む共振器を有し、前記複数のIDTは、第1方向に沿って配置され、前記IDTのそれぞれは、前記第1方向に交差する第2方向に延び、かつ、前記第1方向に沿って配列された複数の電極指を有し、前記反射器は、前記第1方向において前記複数のIDTのうちの最も外側に位置する最外のIDTの隣に配置され、前記第2方向に延び、かつ、前記第1方向に沿って配列された複数の反射電極指を有し、前記最外のIDTは、第1励振部および第2励振部を有し、前記第1励振部は、前記第1方向において前記反射器の隣に配置され、前記最外のIDTに含まれる前記複数の電極指のうち、当該IDTに含まれる電極指の総数をNとしたときに、Nが偶数の場合は((N/2)+1)本の電極指またはNが奇数の場合は((N+1)/2)本の電極指を有し、前記第2励振部は、前記第1方向において前記第1励振部から見て前記反射器とは反対側に配置され、前記最外のIDTに含まれる前記複数の電極指のうちの前記第1励振部の電極指を除く、2本以上の電極指を有し、前記第1励振部が有する前記電極指の前記第1方向における平均の配列ピッチをpxとし、前記複数の反射電極指の前記第1方向における平均の配列ピッチをprとした場合に、pr/pxは、0.5以上0.97以下または1.15以上2.0以下の範囲内の値である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る弾性波フィルタによれば、通過帯域外の帯域に励振波が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る弾性波フィルタ、ならびに、弾性波フィルタに含まれるフィルタ回路および付加回路の回路構成を示す図である。
図2】付加回路に含まれる音響結合型共振器を模式的に示す図である。
図3】音響結合型共振器に含まれるIDTの第1励振部および第2励振部の電極指の平均の配列ピッチ、ならびに、反射器の反射電極指の平均の配列ピッチを示す図である。
図4】第1励振部および第2励振部の電極指の平均の配列ピッチ、ならびに、反射器の反射電極指の平均の配列ピッチの一例を示す図である。
図5】比較例1、2、3および実施例1の弾性波フィルタの通過特性を示す図である。
図6】第1励振部の電極指の平均の配列ピッチと反射器の反射電極指の平均の配列ピッチとの比である配列ピッチ比、および、音響結合型共振器のIDT間のギャップで発生する共振モードの励振波の大きさの関係を示す図である。
図7】比較例4、5、6および実施例2、3の弾性波フィルタの通過特性を示す図である。
図8】第1励振部の電極指の平均の配列ピッチと反射器の反射電極指の平均の配列ピッチとの比である配列ピッチ比、および、音響結合型共振器の音響結合により発生する共振モードの励振波の大きさの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、実施の形態および図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさ、または大きさの比は、必ずしも厳密ではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する場合がある。また、以下の実施の形態において、「接続される」とは、直接接続される場合だけでなく、他の素子等を介して電気的に接続される場合も含まれる。
【0010】
(実施の形態)
[弾性波フィルタの構成]
実施の形態に係る弾性波フィルタの構成について、図1を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る弾性波フィルタ1、ならびに、弾性波フィルタ1に含まれるフィルタ回路10および付加回路20の回路構成を示す図である。
【0012】
弾性波フィルタ1は、例えば、高周波信号が入出力される送受信フィルタである。弾性波フィルタ1には、自帯域の周波数を通過させ、通過帯域外の周波数を減衰させる特性が求められる。
【0013】
図1に示すように、弾性波フィルタ1は、フィルタ回路10と、付加回路20と、入出力端子T1と、入出力端子T2と、を備えている。
【0014】
入出力端子T1は、高周波信号が入力および出力される端子である。例えば、入出力端子T1は、増幅回路等(図示せず)を介して信号処理回路(図示せず)に接続される。
【0015】
入出力端子T2は、高周波信号が入力および出力される端子である。例えば、入出力端子T2は、アンテナ素子に接続される。
【0016】
フィルタ回路10は、通信規格により定められた、第1の周波数帯域を通過帯域とするフィルタ回路である。例えば、第1の周波数帯域は、Band41(2496MHz以上2690MHz以下)である。フィルタ回路10は、入出力端子T1および入出力端子T2を結ぶ第1経路r1に設けられている。
【0017】
図1に示すように、フィルタ回路10は、弾性波共振子である直列腕共振子S1、S2、S3、S4、S5、S6およびS7、ならびに、並列腕共振子P1、P2、P3、P4、P5およびP6を有している。
【0018】
直列腕共振子S1~S7は、入出力端子T1と入出力端子T2とを結ぶ第1経路r1上に配置されている。直列腕共振子S1~S7は、入出力端子T1から入出力端子T2に向かって、この順で直列に接続されている。
【0019】
並列腕共振子P1~P6は、直列腕共振子S1~S7の間の各ノードとグランド(基準端子)とを結ぶ経路上に互いに並列に接続されている。具体的には、並列腕共振子P1~P6のうち、入出力端子T1に最も近い並列腕共振子P1は、一端が直列腕共振子S1とS2との間のノードに接続され、他端がグランドに接続されている。並列腕共振子P2は、一端が直列腕共振子S2とS3との間のノードに接続され、他端がグランドに接続されている。並列腕共振子P3は、一端が直列腕共振子S3とS4との間のノードに接続され、他端がグランドに接続されている。並列腕共振子P4は、一端が直列腕共振子S4とS5との間のノードに接続され、他端がグランドに接続されている。並列腕共振子P5は、一端が直列腕共振子S5とS6との間のノードに接続され、他端がグランドに接続されている。並列腕共振子P6は、一端が直列腕共振子S6とS7との間のノードに接続され、他端がグランドに接続されている。
【0020】
このようにフィルタ回路10は、第1経路r1上に配置された7つの直列腕共振子S1~S7、および、第1経路r1とグランドとを結ぶ経路上に配置された6つの並列腕共振子P1~P6で構成されるラダーフィルタ構造を有している。
【0021】
なお、フィルタ回路10を構成する直列腕共振子および並列腕共振子の数は、7つまたは6つに限定されず、直列腕共振子が1つ以上かつ並列腕共振子が1つ以上であればよい。また、複数の並列腕共振子のうちの一部の並列腕共振子の他端が共通化され、グランドに接続されていてもよい。
【0022】
図1に示す付加回路20は、フィルタ回路10の通過帯域外の減衰特性を改善するため、フィルタ回路10と逆位相・同振幅の相殺成分を有するキャンセル回路である。
【0023】
付加回路20は、第1経路r1の少なくとも一部に並列接続される第2経路r2に設けられている。例えば、付加回路20は、第1経路r1上の複数のノードに接続される。
【0024】
付加回路20は、複数のIDT(InterDigital Transducer)31およびIDT32を含む音響結合型共振器25を有している。複数のIDT31、32のうち、IDT31は、音響結合型共振器25から見て入出力端子T1側の第1経路r1、具体的には入出力端子T1と直列腕共振子S1との間のノードn1に接続されている。IDT32は、音響結合型共振器25から見て入出力端子T2側の第1経路r1、具体的には直列腕共振子S7と入出力端子T2との間のノードn8に接続されている。言い換えると、IDT31は、音響結合型共振器25に並列接続されている直列腕共振子S1~S7から見て入出力端子T1側の第1経路r1に接続され、IDT32は、直列腕共振子S1~S7から見て入出力端子T2側の第1経路r1に接続されている。
【0025】
[付加回路の構成]
付加回路20の構成について、図2を参照しながら説明する。
【0026】
図2は、付加回路20に含まれる音響結合型共振器25を模式的に示す図である。
【0027】
図2に示すように、音響結合型共振器25は、複数のIDT31および32と、複数の反射器41および42と、を有している。音響結合型共振器25は、縦結合型共振器を構成している。
【0028】
音響結合型共振器25は、例えば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子によって構成される。音響結合型共振器25は、圧電性基板と、圧電性基板上に設けられたIDT電極および反射器電極を構成する電極層と、電極層を覆うように圧電性基板上に設けられた誘電体層と、によって形成される。
【0029】
圧電性基板は、シリコン基板上にSiN、SiO、LiTaOがこの順で積層された構造を有している。例えばSiNの厚みは50nm、SiOの膜厚は400nm、LiTaOの膜厚は300nmである。電極層は、圧電性基板側から順にTi、AlCuおよびTiが積層された構造を有し、それぞれの厚みは、18nm、100nm、4nmである。誘電体層は、SiOであり、厚みは30nmである。
【0030】
複数のIDT31、32は、圧電性基板の主面に平行な第1方向d1に沿って配置される。IDT31は、一対となる第1の櫛形電極31aおよび第2の櫛形電極31bを有している。IDT32は、一対となる第1の櫛形電極32aおよび第2の櫛形電極32bを有している。
【0031】
第1の櫛形電極31a、32aのそれぞれは、第1方向d1に延びるバスバー電極36aと、バスバー電極36aに接続されて第1方向d1に直交する第2方向d2に延びる複数の電極指35aと、を有している。バスバー電極36aは、複数の電極指35aの一端同士を接続している。
【0032】
第2の櫛形電極31b、32bのそれぞれは、第1方向d1に延びるバスバー電極36bと、バスバー電極36bに接続されて第2方向d2に延びる複数の電極指35bとを有している。バスバー電極36bは、複数の電極指35bの一端同士を接続している。複数の電極指35aおよび35bは、第2方向d2に互いに間挿し合い、互いに平行に配置されている。
【0033】
第1の櫛形電極31a、32aは、第2経路r2上の信号配線に接続され、第2の櫛形電極31b、32bは、グランドに接続される。つまり、バスバー電極36aおよび電極指35aは、信号電位に設定され、バスバー電極36bおよび電極指35bは、グランド電位に設定される。以下、電極指35aおよび35bの両方を指して電極指35と呼ぶ場合がある。
【0034】
反射器41は、第1方向d1において複数のIDT31、32のうちの最も外側に位置する最外のIDT31の隣に配置されている。反射器42は、第1方向d1において複数のIDT31、32のうちの最も外側に位置する最外のIDT32の隣に配置されている。つまり、複数の反射器41、42は、第1方向d1において、複数のIDT31、32を挟み込むように、IDT31、32の両外側に配置されている。
【0035】
各反射器41、42は、複数の反射電極指45および複数の反射バスバー46を有している。複数の反射電極指45は、第2方向d2に延び、かつ、第1方向d1に沿って配列されている。各反射バスバー46は、複数の反射電極指45の一端同士または他端同士を接続し、第1方向d1に延びるように配置されている。
【0036】
図2に示すように、IDT31は、第1励振部51xおよび第2励振部51yを有し、IDT32は、第1励振部52xおよび第2励振部52yを有している。第1励振部51x、52xは、付加回路20の本来の目的である、フィルタ回路10と逆位相・同振幅の相殺成分を生成するための部分である。第2励振部51y、52yは、第1励振部51x、52x同士が強く励振しすぎることを抑制するための狭ピッチ部分である。
【0037】
IDT31の第1励振部51xは、第1方向d1において反射器41の隣に配置されている。第1励振部51xは、最外のIDT31に含まれる複数の電極指35のうちの半数本よりも多い電極指を有している。より具体的には、第1励振部51xは、最外のIDT31に含まれる電極指の総数をNとしたときに、Nが偶数の場合は((N/2)+1)本の電極指またはNが奇数の場合は((N+1)/2)本の電極指を有している。第1励振部51xは、最外のIDT31が有する対数(ついすう)のうちの60%以上の対数を有していてもよい。
【0038】
IDT31の第2励振部51yは、第1方向d1において第1励振部51xから見て反射器41とは反対側に配置されている。第2励振部51yは、最外のIDT31に含まれる複数の電極指35のうちの第1励振部51xの電極指を除く、2本以上の電極指を有している。第2励振部51yは、第1励振部51xよりも、電極指35の本数および対数が少ない。
【0039】
IDT32の第1励振部52xは、第1方向d1において反射器42の隣に配置されている。第1励振部52xは、最外のIDT32に含まれる複数の電極指35のうちの半数本よりも多い電極指を有している。より具体的には、第1励振部52xは、最外のIDT32に含まれる電極指の総数をNとしたときに、Nが偶数の場合は((N/2)+1)本の電極指またはNが奇数の場合は((N+1)/2)本の電極指を有している。第1励振部52xは、最外のIDT32が有する対数のうちの60%以上の対数を有していてもよい。
【0040】
IDT32の第2励振部52yは、第1方向d1において第1励振部52xから見て反射器42とは反対側に配置されている。第2励振部52yは、最外のIDT32に含まれる複数の電極指35のうちの第1励振部52xの電極指を除く、2本以上の電極指を有している。第2励振部52yは、第1励振部52xよりも、電極指35の本数および対数が少ない。
【0041】
本実施の形態では、第1励振部51x、52xが有する電極指35の配列ピッチと、反射器41、42が有する反射電極指45の配列ピッチとが、以下に示す関係を有している。
【0042】
具体的には、IDT31の第1励振部51xが有する電極指35の第1方向d1における平均の配列ピッチをpxとし、反射器41が有する反射電極指45の第1方向d1における平均の配列ピッチをprとした場合に、pxに対するprの比である配列ピッチ比(pr/px)は、0.5以上0.97以下または1.15以上2.0以下の範囲内の値である。
【0043】
同様に、IDT32の第1励振部52xが有する電極指35の第1方向d1における平均の配列ピッチをpxとし、反射器42が有する反射電極指45の第1方向d1における平均の配列ピッチをprとした場合に、配列ピッチ比(pr/px)は、0.5以上0.97以下または1.15以上2.0以下の範囲内の値である。
【0044】
このように、pxに対するprの比である配列ピッチ比(pr/px)を、0.5以上0.97以下または1.15以上2.0以下の範囲内の値とすることで、通過帯域外の帯域に励振波が発生することを抑制できる。この数値範囲については後述する。
【0045】
なお、本実施の形態では、第2励振部51yが有する電極指35の第1方向d1における平均の配列ピッチをpyとした場合に、px>pyという関係を有している。つまり第2励振部51yは、第1励振部51xよりも、電極指35の間隔が狭ピッチとなっている。また、第2励振部52yが有する電極指35の第1方向d1における平均の配列ピッチをpyとした場合に、px>pyという関係を有している。つまり第2励振部52yは、第1励振部52xよりも、電極指35の間隔が狭ピッチとなっている。
【0046】
[配列ピッチの求め方]
上記の平均の配列ピッチpx、py、および、上記の平均の配列ピッチprの求め方について説明する。
【0047】
図3は、音響結合型共振器25に含まれるIDT31、32の第1励振部51x、52xおよび第2励振部51y、52yの電極指35の配列ピッチ、ならびに、反射器41、42の反射電極指45の配列ピッチを示す図である。
【0048】
第1励振部51x(または52x)の電極指35の配列ピッチは、IDT31(または32)に含まれる複数の電極指35において、第1方向d1に隣り合う電極指同士の中心間距離である。第1励振部51x(または52x)内における複数の電極指35の全ての配列ピッチは同じであってもよく、一部もしくは全ての配列ピッチが異なっていてもよい。以下、2つの電極指間の第1方向d1における中心同士の距離を、単に「中心間距離」と称することがある。
【0049】
第1励振部51xの電極指35の平均の配列ピッチpxは、次のように導出される。例えば、第1励振部51xに含まれる電極指の総本数をNx本とする。そして、第1励振部51xの、第1方向d1における一方端に位置する電極指と、他方端に位置する電極指との中心間距離をDxとする。すると、平均の配列ピッチpxは、px=Dx/(Nx-1)という式で表せる。なお、(Nx-1)は、第1励振部51xにおける、隣接する電極指が作るギャップの総個数ともいえる。IDT32の第1励振部52xの電極指35の平均の配列ピッチpxも同様に導出される。
【0050】
第2励振部51y(または52y)の電極指の配列ピッチは、IDT31(または32)に含まれる複数の電極指35において、第1方向d1に隣り合う電極指同士の中心間距離である。第2励振部51y(または52y)内における複数の電極指35の全ての配列ピッチは同じであってもよく、一部もしくは全ての配列ピッチが異なっていてもよい。
【0051】
第2励振部51yの電極指35の平均の配列ピッチpyは、次のように導出される。例えば、第2励振部51yに含まれる電極指の総本数をNy本とする。そして、第2励振部51yの、第1方向d1における一方端に位置する電極指と、他方端に位置する電極指との中心間距離をDyとする。すると、平均の配列ピッチpyは、py=Dy/(Ny-1)という式で表せる。なお、(Ny-1)は、第2励振部51yにおける、隣接する電極指が作るギャップの総個数ともいえる。IDT32の第2励振部52yの電極指35の平均の配列ピッチpyも同様に導出される。
【0052】
反射器41、42の反射電極指45の配列ピッチは、反射器42、42のそれぞれに含まれる複数の反射電極指45において、第1方向d1に隣り合う反射電極指同士の中心間距離である。反射器41、42内における複数の反射電極指45の全ての配列ピッチは同じであってもよく、一部もしくは全ての配列ピッチが異なっていてもよい。
【0053】
反射器41の反射電極指45の平均の配列ピッチprは、次のように導出される。例えば、反射器41に含まれる反射電極指45の総本数をNr本とする。そして、反射器41の、第1方向d1における一方端に位置する反射電極指と、他方端に位置する反射電極指との中心間距離をDrとする。すると、平均の配列ピッチprは、pr=Dr/(Nr-1)という式で表せる。なお、(Nr-1)は、反射器41における、隣接する反射電極指が作るギャップの総個数ともいえる。反射器42の反射電極指45の平均の配列ピッチprも同様に導出される。
【0054】
なお、配列ピッチの測定箇所は、所定の隣り合う電極指の交差幅の、第1方向d1における中間点を通る、第2方向d2に平行な仮想線上における距離で代用できる。配列ピッチの測定方法は、上面(第1方向d1および第2方向d2の両方に垂直な方向)からの光学顕微鏡またはSEM観察、もしくは、研磨等により上記仮想線を通る断面を出し、光学顕微鏡またはSEM観察、による測長で測定できる。
【0055】
[弾性波フィルタの通過特性]
実施例および比較例の弾性波フィルタの通過特性等について説明する。
【0056】
図4は、第1励振部51x、52xおよび第2励振部51y、52yの電極指35の平均の配列ピッチpx、py、ならびに、反射器41、42の反射電極指45の平均の配列ピッチprの一例を示す図である。
【0057】
図4の左の縦軸には、配列ピッチを2倍した値である波長が示されている。また、図4の右の縦軸には、電極指35および反射電極指45の対数が示されている。なお、反射器41、42の対数は、2本の反射電極指45を一対とした場合の値である。
【0058】
図4に示すように、第2励振部51yは、第1励振部51xよりも、平均の配列ピッチpxが小さく、第2励振部52yは、第1励振部52xよりも、平均の配列ピッチpyが小さくなっている。なお、第1励振部および第2励振部のデューティは同じであり、交差幅も同じである。
【0059】
また、第2励振部51yは、第1励振部51xよりも対数が少なく、第2励振部52yは、第1励振部52xよりも対数が少なくなっている。言い換えると、第1励振部51x(または52x)の電極指35の本数は、第2励振部51y(または52y)の電極指35の本数よりも多い。なお、第1励振部51xおよび52xの対数は同じであり、第2励振部51yおよび52yの対数は同じである。
【0060】
また、反射器41は、第1励振部51xよりも対数が多く、反射器42は、第1励振部52xよりも対数が多くなっている。この例では、反射器41(または42)の反射電極指45の本数は、第1励振部51x(または52x)の電極指35の本数よりも多い。なお、反射器41および42の対数は同じである。
【0061】
上記の電極パラメータの条件の下、配列ピッチ比(pr/px)を変えた場合の通過特性について説明する。
【0062】
まず、通過帯域よりも低周波数側の帯域にて発生する共振モードM1の励振波について説明する。
【0063】
図5は、比較例1、2、3および実施例1の弾性波フィルタの通過特性を示す図である。
【0064】
比較例1は、配列ピッチ比(pr/px)を1.01としたときの通過特性である。比較例2は、配列ピッチ比(pr/px)を0.995としたときの通過特性である。比較例3は、付加回路が設けられていないフィルタ回路のみの通過特性である。実施例1は、配列ピッチ比(pr/px)を0.96としたときの通過特性である。
【0065】
図5に示すように、フィルタ回路10に付加回路が接続された比較例1、2および実施例1では、付加回路が設けられていない比較例3に比べて、周波数2350MHz-2420MHzにおける減衰量を大きくすることができている。
【0066】
しかし、比較例1、2では、通過帯域よりも低周波数側に位置する2450MHz付近において、ピーク値が30dBを超える励振波(レスポンス)が発生している。この励振波は、音響結合型共振器25のIDT31、32間のギャップで発生する共振モードM1の励振波である。
【0067】
それに対し実施例1では、通過帯域よりも低周波数側に位置する帯域(図5に示す2420MHz-2490MHz)において、共振モードM1の励振波が抑制されている。実施例1の弾性波フィルタ1によれば、通過帯域よりも低周波数側に位置する帯域にて減衰量を確保することができる。
【0068】
さらに、実施例1では、比較例1、2に比べて、通過帯域よりも高周波数側に位置する帯域(図5に示す2720MHz-2740MHz)において、励振波が発生することを抑制できる。実施例1の弾性波フィルタ1によれば、通過帯域よりも高周波数側に位置する帯域にて減衰量を確保することも可能である。
【0069】
ここで、共振モードM1の励振波を抑制するのに適した配列ピッチ比(pr/px)の範囲について説明する。
【0070】
図6は、第1励振部の電極指35の平均の配列ピッチpxと反射器の反射電極指45の平均の配列ピッチprとの比である配列ピッチ比(pr/px)、および、音響結合型共振器25のIDT31、32間のギャップで発生する共振モードM1の励振波の大きさの関係を示す図である。なお、図6のグラフの元データは、表1に示すとおりである。
【0071】
【表1】
【0072】
図6の縦軸には、IDT31、32間のギャップで発生する共振モードM1の励振波のピーク値が示されている。同図の横軸には、上記の配列ピッチ比(pr/px)が示されている。なお、配列ピッチ比(pr/px)は、pxを固定し、prを変えることで値を変化させた。
【0073】
共振モードM1の励振波の評価について、この例では励振波のピーク値が35dB以下である場合に、励振波の発生を抑制できていることとした。例えば挿入損失が30dB以下のときに減衰量を確保できているとすることもできるが、共振モードM1は、弾性波フィルタ1の通過帯域に近い帯域に表れるので、この例では35dBを評価基準とした。
【0074】
弾性波フィルタ1では、図6に示すように、配列ピッチ(pr/px)が、0.5以上0.97以下の範囲内の値である場合、または、1.04以上2.0以下の範囲内の値である場合、共振モードM1の励振波のピーク値を35dBよりも小さくすることができる。
【0075】
なお、配列ピッチ比(pr/px)の下限を0.5以上とし、上限を2.0以上としているのは、配列ピッチ比(pr/px)が0.5未満または2.0よりも大きい場合、反射器とIDTで発生した波とが結合せず、反射器が他の共振子との音響結合を防ぐという役割を達成できなくなるからである。
【0076】
次に、共振モードM1よりも低周波数側の帯域にて発生する共振モードM2の励振波について説明する。
【0077】
図7は、比較例4、5、6および実施例2、3の弾性波フィルタの通過特性を示す図である。同図には、弾性波フィルタの通過帯域の一部、および、通過帯域よりも低周波数側の通過特性が示されている。
【0078】
比較例4は、配列ピッチ比(pr/px)を1.06としたときの通過特性である。比較例5は、配列ピッチ比(pr/px)を1.10としたときの通過特性である。比較例6は、付加回路が設けられていないフィルタ回路のみの通過特性である。なお、比較例6は前述した比較例3と同じである。実施例2は、配列ピッチ比(pr/px)を1.15としたときの通過特性である。実施例3は、配列ピッチ比(pr/px)を1.21としたときの通過特性である。
【0079】
図7に示すように、フィルタ回路10に付加回路が接続された比較例4、5および実施例2、3では、付加回路が設けられていない比較例6に比べて、周波数2310MHz-2390MHzにおける減衰量を大きくすることができている。
【0080】
しかし、比較例4、5では、通過帯域よりも低周波数側に位置する2250MHz-2290MHzの帯域において、ピーク値が25dBを超える励振波(レスポンス)が発生している。この励振波は、音響結合型共振器の音響結合により発生する共振モードM2の励振波である。
【0081】
それに対し実施例2、3では、通過帯域よりも低周波数側に位置する帯域(図7に示す2230MHz付近)において、共振モードM2の励振波が抑制されている。実施例2、3の弾性波フィルタ1によれば、通過帯域よりも低周波数側に位置する帯域にて減衰量を確保することができる。
【0082】
ここで、共振モードM2の励振波を抑制するのに適した配列ピッチ比(pr/px)の範囲について説明する。
【0083】
図8は、第1励振部の電極指35の平均の配列ピッチpxと反射器の反射電極指45の平均の配列ピッチprとの比である配列ピッチ比(pr/px)、および、音響結合型共振器25の音響結合により発生する共振モードM2の励振波の大きさの関係を示す図である。なお、図8のグラフの元データは、表2に示す通りである。
【0084】
【表2】
【0085】
図8の縦軸には、音響結合型共振器25の音響結合により発生する共振モードM2の励振波のピーク値が示されている。同図の横軸には、上記の配列ピッチ比(pr/px)が示されている。なお、配列ピッチ比(pr/px)は、pxを固定し、prを変えることで値を変化させた。
【0086】
共振モードM2の励振波の評価について、この例では励振波のピーク値が27dB以下である場合に、励振波の発生を抑制できていることとした。共振モードM2は、通過帯域から遠い位置にあるので、例えば挿入損失が25dB以下のときに減衰量を確保できているとすることもできるが、この例では27dBを評価基準とした。
【0087】
弾性波フィルタ1では、図8に示すように、配列ピッチ(pr/px)が、0.5以上1.03以下の範囲内の値である場合、または、1.15以上2.0以下の範囲内の値である場合、共振モードM2の励振波のピーク値を27dBよりも小さくすることができる。
【0088】
なお、配列ピッチ比(pr/px)の下限を0.5以上とし、上限を2.0以上としているのは、配列ピッチ比(pr/px)が0.5未満または2.0よりも大きい場合、反射器とIDTで発生した波とが結合せず、反射器が他の共振子との音響結合を防ぐという役割を達成できなくなるからである。
【0089】
さらに、上記で示した図6および図8に基づき、共振モードM1およびM2の両方の励振波を抑制するためには、配列ピッチ比(pr/px)を以下のようにすることが望ましいと考えられる。具体的には、図6および図8の両方の範囲を満たすように、配列ピッチ比(pr/px)を、0.5以上0.97以下または1.15以上2.0以下の範囲内の値とすることで、共振モードM1およびM2の両方の励振波を抑制することができる。これにより、通過帯域外の帯域に励振波が発生することを抑制できる。
【0090】
(まとめ)
本実施の形態に係る弾性波フィルタ1は、以下に示す態様をとり得る。
【0091】
[態様1]
本実施の形態に係る弾性波フィルタ1は、複数の入出力端子T1、T2と、複数の入出力端子T1、T2を結ぶ第1経路r1に設けられたフィルタ回路10と、第1経路r1の少なくとも一部と並列接続される第2経路r2に設けられた付加回路20と、を備える。付加回路20は、複数のIDT31、32および反射器41を含む共振器(例えば音響結合型共振器25)を有する。複数のIDT31、32は、第1方向d1に沿って配置されている。IDT31、32のそれぞれは、第1方向d1に交差する第2方向d2に延び、かつ、第1方向d1に沿って配列された複数の電極指35を有している。反射器41は、第1方向d1において複数のIDT31、32のうちの最も外側に位置する最外のIDT31の隣に配置され、第2方向d2に延び、かつ、第1方向d1に沿って配列された複数の反射電極指45を有する。最外のIDT31は、第1励振部51xおよび第2励振部51yを有する。第1励振部51xは、第1方向d1において反射器41の隣に配置され、最外のIDT31に含まれる複数の電極指35のうち、当該IDT31に含まれる電極指35の総数をNとしたときに、Nが偶数の場合は((N/2)+1)本の電極指またはNが奇数の場合は((N+1)/2)本の電極指を有する。第2励振部51yは、第1方向d1において第1励振部51xから見て反射器41とは反対側に配置され、最外のIDT31に含まれる複数の電極指35のうちの第1励振部51xの電極指を除く、2本以上の電極指を有する。第1励振部51xが有する電極指の第1方向d1における平均の配列ピッチをpxとし、複数の反射電極指45の第1方向d1における平均の配列ピッチをprとした場合に、pr/pxは、0.5以上0.97以下または1.15以上2.0以下の範囲内の値である。
【0092】
このように、平均の配列ピッチの比であるpr/pxを0.5以上0.97以下または1.15以上2.0以下の範囲内の値とすることで、弾性波フィルタ1の通過帯域外の帯域に、共振モードM1、M2による励振波が発生することを抑制できる。これにより、通過帯域外の帯域における減衰特性を確保することができる。
【0093】
なお、態様1において、反射器41を反射器42に置き換え、最外のIDT31を最外のIDT32に置き換え、第1励振部51xを第1励振部52xに置き換え、第2励振部51yを第2励振部52yに置き換えても同様である。
【0094】
[態様2]
態様1に記載の弾性波フィルタ1において、第2励振部51yが有する電極指の第1方向d1における平均の配列ピッチをpyとした場合に、px>pyであってもよい。
【0095】
これによれば、第2励振部51yの電極指35の配列ピッチを第1励振部51xの電極指の35配列ピッチよりも狭くすることができ、共振モードM1による励振波が発生することを抑制できる。これにより、通過帯域外の帯域における減衰特性を確保することができる。
【0096】
[態様3]
態様1または2に記載の弾性波フィルタ1において、付加回路20は、複数の反射器41、42を有し、複数の反射器41、42は、第1方向d1において複数のIDT31、32の両外側に配置されていてもよい。
【0097】
この構成によれば、複数の反射器41、42を有することでQ値を向上させることができる。また、複数の反射器41、42を用いる場合であっても、pr/pxの値を上記の範囲内の値とすることで、共振モードM1、M2による励振波が発生することを抑制できる。これにより、通過帯域外の帯域における減衰特性を確保することができる。
【0098】
[態様4]
態様1~3のいずれか1つに記載の弾性波フィルタ1において、フィルタ回路10の通過帯域は、2496MHz以上2690MHz以下の周波数帯域を含んでいてもよい。
【0099】
これによれば、上記周波数帯域の範囲外の帯域に、共振モードM1、M2による励振波が発生することを抑制できる。これにより、通過帯域外の帯域における減衰特性を確保することができる。
【0100】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタについて、実施の形態を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る弾性波フィルタを含むマルチプレクサ、高周波フロントエンド回路および通信装置も本発明に含まれる。
【0101】
上記では、音響結合型共振器25が2つのIDT31、32を有する例を示したが、それに限られず、音響結合型共振器25は、3以上のIDTを有していてもよい。音響結合型共振器25が3以上のIDTを有する場合であっても、IDT31および32が最外のIDTとなり、配列ピッチ比(pr/px)は同様の範囲内の値となる。
【0102】
上記では、IDT31、32が第1経路r1のノードn1、n8に直接接続されている例を示したが、それに限られず、各IDT31、32は、容量素子を介して各ノードn1、n8に接続されてもよい。
【0103】
上記では、弾性波フィルタ1が送受信フィルタである例を示したが、それに限られず、弾性波フィルタは、送信フィルタ、または、受信フィルタであってもよい。
【0104】
また、入出力端子T1およびT2は、入力端子および出力端子のいずれかであってもよい。例えば、入出力端子T1が入力端子である場合は、入出力端子T2が出力端子となり、入出力端子T2が入力端子である場合は、入出力端子T1が出力端子となる。
【0105】
また、IDT電極は、積層構造でなくてもよい。IDT電極は、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属または合金から構成されてもよく、また、上記の金属または合金から構成される複数の積層体から構成されてもよい。
【0106】
また、実施の形態では、基板として圧電性を有する基板を示したが、当該基板は、圧電体層の単層からなる圧電基板であってもよい。この場合の圧電基板は、例えば、LiTaOの圧電単結晶、または、LiNbOなどの他の圧電単結晶で構成される。また、IDT電極が形成される基板は、圧電性を有する限り、全体が圧電体層からなるものの他、支持基板上に圧電体層が積層されている構造を用いてもよい。また、上記実施の形態に係る基板のカット角は限定されない。つまり、弾性波フィルタの要求通過特性などに応じて、適宜、積層構造、材料、および厚みを変更してもよく、上記実施の形態に示すカット角以外のカット角を有するLiTaO圧電基板またはLiNbO圧電基板などを用いた弾性表面波フィルタであっても、同様の効果を奏することが可能となる。
【0107】
なお、付加回路20は、音響結合型の弾性波共振器でなくトランスバーサル型の弾性波共振器を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、弾性波フィルタを含むマルチプレクサ、フロントエンド回路および通信装置として、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0109】
1 弾性波フィルタ
10 フィルタ回路
20 付加回路
25 音響結合型共振器
31、32 IDT
31a、32a 第1の櫛形電極
31b、32b 第2の櫛形電極
35、35a、35b 電極指
36a、36b バスバー電極
41、42 反射器
45 反射電極指
46 反射バスバー
51x、52x 第1励振部
51y、52y 第2励振部
d1 第1方向
d2 第2方向
M1、M2 共振モード
n1、n8 ノード
pr 反射器の反射電極指の平均の配列ピッチ
pr/px 配列ピッチ比
px 第1励振部の電極指の平均の配列ピッチ
py 第2励振部の電極指の平均の配列ピッチ
P1、P2、P3、P4、P5、P6 並列腕共振子
r1 第1経路
r2 第2経路
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7 直列腕共振子
T1、T2 入出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8