(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097266
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】触覚呈示タッチパネルディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240710BHJP
G06F 3/023 20060101ALI20240710BHJP
G06F 3/04886 20220101ALI20240710BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/041 600
G06F3/023
G06F3/04886
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000727
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】山本 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】杉田 靖博
(72)【発明者】
【氏名】山岸 慎治
【テーマコード(参考)】
5B020
5E555
【Fターム(参考)】
5B020DD30
5E555AA80
5E555BA03
5E555BB03
5E555BC04
5E555CA12
5E555CA22
5E555CB33
5E555DA05
5E555DA24
5E555DB20
5E555FA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より少ないアクチュエータで良好な触覚を呈示することが可能な触覚呈示機能付きタッチパネルディスプレイ及びパーソナルコンピュータを提供する。
【解決手段】パーソナルコンピュータにおいて、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211は、表示パネル40と、表示パネル40の上面又は表示パネル40内に配置されたタッチパネル50と、表示パネル40の下面を支持するバックベゼル30と、複数のアクチュエータ10と、バックベゼル30と複数のアクチュエータ10との間に配置され、それぞれが複数のアクチュエータ10の1つとバックベゼル30との間に位置し、接着剤21によってバックベゼルと接合されている剛性体20と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネルの上面、または、前記表示パネル内に配置されたタッチパネルと、
前記表示パネルの下面を支持するバックベゼルと、
複数のアクチュエータと、
前記バックベゼルと前記複数のアクチュエータとの間に配置された複数の剛性体であって、各剛性体が前記複数のアクチュエータの1つとバックベゼルとの間に位置している剛性体と、
を備えた触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項2】
前記各剛性体は平面視において矩形形状を有している、請求項1に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項3】
前記各剛性体は平面視において六角形形状を有している、請求項1に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項4】
前記各剛性体は、外縁の一部において隣接する剛性体と接続されており、モノリシックな剛性集合体を形成している、請求項1に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項5】
前記バックベゼルに直接接続された複数のバックベゼルアクチュエータをさらに備えた、請求項1に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項6】
前記複数のバックベゼルアクチュエータにおける隣接する2つのバックベゼルアクチュエータ間の最短距離は、前記複数のアクチュエータにおける隣接する2つのアクチュエータ間の最短距離よりも小さい、請求項1に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項7】
表示パネルと、
前記表示パネルの上面、または、前記表示パネル内に配置されたタッチパネルと、
前記表示パネルの下面を支持するバックベゼルと、
複数のアクチュエータと、
を備え、
前記バックベゼルは、支持面および支持面と反対側に位置する裏面を有し、前記支持面が前記表示パネルの下面と対向する支持部と、前記支持部を囲む枠部とを含み、
前記支持部は、複数の支持領域と、前記複数の支持領域間に配置された複数のスリットとを含み、
前記支持部の各支持領域の前記裏面に前記複数のアクチュエータの1つが位置している、触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項8】
前記アクチュエータは、前記表示パネルを厚さ方向に変位させる、請求項1に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項9】
タッチパネルコントローラと、ハプティックコントローラとをさらに備え、
前記タッチパネルコントローラは、前記タッチパネルにおいて操作者が前記タッチパネルの表面に接触した接触位置を検出し、接触位置検出信号を前記ホストコンピュータへ出力し、
前記ハプティックコントローラは、接触位置検出信号に基づき、前記複数のアクチュエータのうち、前記接触位置に近接した1または複数のアクチュエータを駆動する、請求項1または7に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項10】
前記ハプティックコントローラは、前記接触位置と前記接触位置に最も近接したアクチュエータとの距離が所定の値以下である場合、前記距離に応じた異なる電圧で、前記最も近接したアクチュエータを駆動する、請求項9に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項11】
前記ハプティックコントローラは、前記接触位置と、前記接触位置に最も近接したアクチュエータとの距離が所定の値より大きい場合、前記最も近接したアクチュエータと、前記接触位置に2番目に近接したアクチュエータとを駆動する、請求項9に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイ。
【請求項12】
請求項1に記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイと、
他のディスプレイと、
ホストコンピュータと
を備え、
前記触覚呈示タッチパネルディスプレイは、前記ホストコンピュータからの指令に基づき、キーボードの画像を表示する、パーソナルコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触覚呈示タッチパネルディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
使用者に良好な操作性を提供する目的で、触覚呈示機能を有するタッチパネルディスプレイパネルが開発されている。たとえば、特許文献1は、良好な視覚および触覚を得ることが可能な触覚呈示機能付き表示装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、より少ないアクチュエータで良好な触覚を呈示することが可能な触覚呈示機能付きタッチパネルディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある実施形態に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、表示パネルと、前記表示パネルの上面、または、前記表示パネル内に配置されたタッチパネルと、前記表示パネルの下面を支持するバックベゼルと、複数のアクチュエータと、前記バックベゼルと前記複数のアクチュエータとの間に配置された複数の剛性体であって、各剛性体が前記複数のアクチュエータの1つとバックベゼルとの間に位置している剛性体と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示のある実施形態によれば、より少ないアクチュエータで良好な触覚を呈示することが可能な触覚呈示機能付きタッチパネルディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態のパーソナルコンピュータの外観を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイの模式的断面図である。
【
図3】
図3は、触覚呈示タッチパネルディスプレイにキーボード画像を表示させた状態における剛性体およびアクチュエータの配置の一例を示す。
【
図4】
図4は、第1実施形態のパーソナルコンピュータおよび触覚呈示タッチパネルディスプレイの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、1つのアクチュエータを駆動させた場合に触覚呈示タッチパネルディスプレイの表面で検出される加速度の分布の一例を示す。
【
図6】
図6は、
図5に示される結果に基づき、アクチュエータを一次元に配置した場合の加速度の分布を示す。
【
図7】
図7は、アクチュエータの駆動方法を説明する模式図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイの模式的断面図である。
【
図9】
図9は、触覚呈示タッチパネルディスプレイにキーボード画像を表示させた状態における剛性体およびアクチュエータの配置の一例を示す。
【
図10】
図10は、第3実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイにキーボード画像を表示させた状態における剛性体およびアクチュエータの配置の一例を示している。
【
図11】
図11は、第3実施形態における剛性集合体の一例を平面図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイの模式的断面図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態におけるバックベゼルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
触覚を呈示できる種々のタッチパネルディスプレイが実現されている。例えばスマートフォンなどにおいて、ディスプレイ全体を振動させる触覚呈示が採用されている。一方、ソフトウエアキーボードが使用されるような、比較的大きな画面上で複数の指を用いて操作を行うタッチパネルディスプレイの場合、タッチパネルディスプレイの全体が振動すると、誤って接触してしまっている指や手のひらなどにも振動が伝わる。この場合、どの接触が入力操作としてタッチパネルディスプレイに認識されているのか、操作者には識別が困難になる。
【0009】
このため、このような用途に使用されるタッチパネルディスプレイでは、接触した指の周辺のみを振動させることが好ましく、タッチパネルディスプレイに複数のアクチュエータを配置することが好ましい。本願発明者が詳細に検討したところ、ディスプレイの裏面側にアクチュエータを配置する場合、ディスプレイの薄さやディスプレイ内部の構造に起因してアクチュエータによる振動がタッチパネルディスプレイで減衰しやすいことが分かった。
【0010】
十分な振動強度でタッチパネルディスプレイを部分的に振動させるためには、アクチュエータを高密度で配置することが好ましい。一方、アクチュエータの数が増えるとコストの増加やシステムの複雑化という課題も生じる。
【0011】
本願発明者はこのような課題に鑑み、新規な触覚呈示タッチパネルディスプレイを想到した。
【0012】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されていたり、一部の構成部材が省略されていたりする場合がある。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は本実施形態のパーソナルコンピュータ201の外観を模式的に示す斜視図である。パーソナルコンピュータ201は、例えば折り畳み可能な筐体210と筐体210内に配置された触覚呈示タッチパネルディスプレイ(haptic touch panel display)211およびディスプレイ221とを含む。ディスプレイ221は、タッチパネル機能を備えていてもよいし、触覚呈示機能をさらに備えていてもよい。また、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211とディスプレイ221とは一体的に1つの画面を構成するディスプレイであってもよい。筐体210は、例えば、軸210aを中心として折りたたむことおよび開くことが可能なように構成されている。
【0014】
図2は、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211の模式的断面図である。触覚呈示タッチパネルディスプレイ211は、表示パネル40と、タッチパネル50と、バックベゼル30と、複数のアクチュエータ10と、複数の剛性体20とを備える。触覚呈示タッチパネルディスプレイ211は、カバープレート60をさらに備えていてもよい。
【0015】
表示パネル40は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどであり、駆動方法に特に制限はない。表示パネル40のサイズは、例えば、6インチ以上15インチ以下である。
【0016】
タッチパネル50は、表示パネル40の上面40a側に配置されている。タッチパネル50は、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211の表示面211aにおいて、手指やタッチペンなどで接触した位置を検出する。タッチパネル50は、静電容量方式、抵抗膜方式、超音波表面弾性波方式、赤外線方式など種々の方式のタッチパネルであってよい。また、タッチパネル50は、インセル、オンセル、アウトセルのいずれの方式でディスプレイパネルに配置されていてもよい。つまり、タッチパネル50の一部または全部が表示パネル40の上面40aに配置されていてもよいし、表示パネル40内に配置されていてもよい。
【0017】
また、タッチパネル50は、位置と押圧の大きさとを検出するタッチパネルであってもよい。タッチパネル50は、例えば、駆動電極、位置センス電極および押圧センス電極を備え、駆動電極に駆動信号を印加し、手指等の接触による容量変化を位置センス電極で検出し、手指等の押圧による容量変化を押圧センス電極で検出する。このようなタッチパネル50は、例えば、特開2021-128511号公報に開示されている。特開2021-128511号公報の開示を参照によってここに引用する。
【0018】
カバープレート60は、タッチパネル50の上面50a上に配置されている。例えば、表示パネル40とタッチパネル50とは、光学用透明接着剤(OCA)41によって接合され、タッチパネル50とカバープレート60とは、光学用透明接着剤(OCA)51によって接合されている。
【0019】
バックベゼル30は、表示パネル40を支持する。バックベゼル30は、例えば、枠部30cと支持部30dとを有する。支持部30dは、表示パネル40の下面40bと対向する支持面30aと支持面30aと反対側に位置する裏面30bとを有する。支持部30dは表示パネル40の下面40bに対応する矩形形状を有している。
【0020】
枠部30cは支持部30dを囲むフレーム形状を有しており、支持部30dの外縁が枠部30cに接続されていることによって、支持部30dに剛性を与えている。
【0021】
バックベゼル30は、剛性の高い材料によって構成されていることが好ましく、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属によって構成されていることが好ましい。また、バックベゼル30が上述した金属によって構成されている場合、支持部30dの厚さは、0.2mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0022】
アクチュエータ10は、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211において、触覚を呈示する駆動体である。以下において詳述するようにアクチュエータ10は、表示パネル40の直下、つまり、平面視において、表示パネル40と重なる位置に配置され、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211を厚さ方向に振動させる。
【0023】
アクチュエータ10は、電気機械変換によって電気エネルギを機械エネルギに変換する素子であり、具体的には、圧電素子である。例えば、アクチュエータ10は、振動面の1辺が、9mm~30mm程度であり、10V~100V程度の交流電圧を印加することによって、数十から数百Hzで振動することが好ましい。
【0024】
剛性体20は、バックベゼル30の下面40bとアクチュエータ10との間に配置され、アクチュエータ10の振動をアクチュエータ10の振動領域よりも拡大させてバックベゼル30に伝搬させる。触覚呈示タッチパネルディスプレイ211において、局所的に触覚を呈示できるように各剛性体20が複数のアクチュエータ10の1つと対応して配置されていることが好ましい。剛性体20とバックベゼル30とは接着剤21によって接合されている。接着剤21は、硬化後の弾性率が高いことが好ましい。
【0025】
剛性体20は、バックベゼルと同様、剛性の高い材料によって構成されていることが好ましい。例えば、剛性体20は、アルミニウム、ステンレス等の金属やセラミックなどによって構成されていることが好ましい。より好ましくは、剛性体20を構成する材料は、バックベゼル30を構成する材料よりも硬いこと、つまり、高いヤング率を有していることが好ましい。また、剛性体20が上述した金属によって構成されている場合、剛性体20の厚さは、0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましい。アクチュエータ10も接着剤11によって剛性体20に接合されている。
【0026】
図3は、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211の表示パネル40にキーボード画像を表示させた状態における剛性体20およびアクチュエータ10の配置の一例を示している。本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイ211は、例えばソフトウエアキーボードとして使用される場合において、キーに接触した指に触覚を呈示する。このため、キーの大きさ、キーの配列ピッチおよびキーの位置、に応じてアクチュエータ10の数、配置、剛性体の形状大きさおよび配置が決定される。
【0027】
たとえば、本実施形態では、13インチの画面に対して、アクチュエータは3行5列に配置されている。また、剛性体20の平面視における形状は四角形であり、例えば1辺が60mmの正方形である。また、複数の剛性体20は、互いに独立している。隣接する一対の剛性体20の間には、幅1.0mm~3.0mmを有し、配列方向に伸びる間隙が設けられている。アクチュエータ10は、平面視において、剛性体20の中央に配置されている。
【0028】
図4は、パーソナルコンピュータ201および触覚呈示タッチパネルディスプレイ211の構成例を示すブロック図である。パーソナルコンピュータ201はホストコンピュータ55を備え、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211およびディスプレイ221を制御する。
【0029】
触覚呈示タッチパネルディスプレイ211は、タッチパネルコントローラ51およびハプティック(haptic)コントローラ54をさらに備える。
【0030】
タッチパネルコントローラ51は、タッチパネル50に駆動信号を印加し、操作者が手指などで触覚呈示タッチパネルディスプレイ211の表面に接触した接触位置を検出し、接触位置検出信号をホストコンピュータ55へ出力する。
【0031】
ハプティックコントローラ54は、アクチュエータ10に対応した数のドライバ52と、マイコン53とを備える。ホストコンピュータ55から接触位置検出信号を受け取ると、ハプティックコントローラ54は、後述するように駆動すべきアクチュエータ10および駆動電圧を決定し、接触位置に近接した1または複数のアクチュエータ10を駆動するように、ドライバ52を制御する。
【0032】
次に本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイ211の動作を説明する。
図5は、1つのアクチュエータ10を駆動させた場合に触覚呈示タッチパネルディスプレイの表面で検出される加速度の分布の一例を示す。実線は本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイ211の例(以下、実施例と呼ぶ)を示し、点線は、剛性体20を備えていないことを除き同様の構造を備えた触覚呈示タッチパネルディスプレイにおける加速度の分布の例(以下、参考例と呼ぶ)を示す。
【0033】
図5において実線で示すように、実施例では、アクチュエータ10の中心において最も大きな加速が検出され、中心から遠ざかるにつれて、加速度の値は小さくなる。つまり、振動が小さくなる。しかし、中心からの距離が20mm程度離れると、それ以降の減衰は小さくなり、中心からの距離が30mm程度であっても1.8g程度の加速度が検出される。
【0034】
これに対し、参考例では、中心における加速度の値は、本実施形態よりも1割程度大きい。しかし、中心からの距離が大きくなるにつれて、加速度は大きく減衰する。このため、加速度の大きさは、中心から10mm以上離れると、実施例の方が大きくなっている。また、参考例では、中心から30mm程度離れると加速度は1g程度まで減衰する。
【0035】
これは、触覚呈示タッチパネルディスプレイにおける厚さ方向の振動の伝搬については、剛性体20がないことによって、実施例よりも参考例の方が振動の減衰が少ないことを意味していると考えられる。一方、触覚呈示タッチパネルディスプレイにおける厚さ方向と垂直な方向(横方向)への伝搬については、表示パネルよりも剛性体20の方が横方向に振動が伝搬する際、減衰が少ないことを意味していると考えられる。つまり、実施例によれば、アクチュエータによって励振できる最大振動強度は、参考例(剛性体がない場合)よりも1割程度小さくなるが、1つのアクチュエータによって一定の強度で振動させることができる面積は参考例よりも大きくできる。
【0036】
図6は、
図5に示される結果に基づき、1.8g以上の加速度が得られるように、実施例および比較例においてアクチュエータを一次元に配置した場合の加速度の分布を示す。実線は実施例を示し、破線は参考例を示す。
図6に示すように、参考例では、3つのアクチュエータを配置する必要があるが、実施例では、2つのアクチュエータで同様の振動分布を得ることができる。このように本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイによれば、表示パネルの背面に配置するアクチュエータの数を減らしても同等の振動を得ることができる。
【0037】
次にアクチュエータの駆動方法を説明する。本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイでは、ホストコンピュータ55の指令に基づきハプティックコントローラ54が、タッチパネル50が検出した手指等の接触位置に最も近接したアクティエータを駆動し、表示パネル40を局所的に振動させる。上述したように、本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイによれば、表示パネルの裏面に配置するアクチュエータの数を減らすことができる。しかし、
図5および
図6に示すように、振動の強度は、各アクチュエータが配置された直上において最も高いため、強度のピークとなる位置の間隔が広くなり、全体として振動の分布にはばらつきが大きくなる。例えば、触覚呈示タッチパネルディスプレイの表面に接触した位置によって、手指が知覚する振動の大きさが異なることが考えられる。このような触覚のばらつきが問題となる場合には、駆動するアクチュエータの数やアクチュエータを駆動する電圧を変化させることによって、振動強度の分布を抑制してもよい。
【0038】
図7は、アクチュエータ10の駆動方法の一例を説明する模式図である、ここでは、アクチュエータ10は2行2列に配列されており、4つのアクチュエータ10を区別するために、アクチュエータ10-1、10-2、10-3、10-4と参照符号を付す。
【0039】
例えば、アクチュエータ10-1の中心と一致する点を中心とする半径r1の円の領域A内に手指等の接触位置P1がある場合、接触位置P1に最も近接するアクチュエータ10-1に、例えば、60Vの電圧を印加し、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211に振動を与える。また、接触位置P2が領域Aの外側であって、かつ、半径r2の円内である領域B内にある場合には、接触位置P2に最も近接するアクチュエータ10-1に、例えば、80Vの電圧を印加し、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211に振動を与える。
【0040】
一方、接触位置P3が領域Bの外側である領域Cにある場合、接触位置P3に最も近接するアクチュエータ10-1と、2番目に近接するアクチュエータ10-2に、例えば、80Vの電圧を印加し、触覚呈示タッチパネルディスプレイ211に振動を与える。
【0041】
以下の表1にこのような制御方法をまとめて示す。触覚呈示タッチパネルディスプレイのタッチパネル50が検出した接触位置P1,P2と接触位置に最も近接したアクチュエータ10-1との距離が所定の値(r2)以下である場合、距離dがr1より大きいか否かに応じて最も近接したアクチュエータに印加する電圧を変化させる。これにより、接触位置と最も近接したアクチュエータとの距離が大きい場合でも、印加する電圧をより大きくすることによって、振動の減衰を補うことができる。
【0042】
触覚呈示タッチパネルディスプレイのタッチパネル50が検出した接触位置と接触位置に最も近接したアクチュエータとの距離が所定の値(r2)よりも大きい場合には、最も近接したアクチュエータと、接触位置に2番目に近接したアクチュエータとを駆動させる。これにより、接触位置と最も近接したアクチュエータとの距離がより大きい場合でも、2つのアクチュエータで表示パネル40を振動させることによって、振動の減衰を補うことができる。
【0043】
【表1】
上述の例では、接触位置と、最も近接したアクチュエータとの距離dが所定の値(r2)以下である場合において、距離dがd≦r1を満たすか、r1<d≦r2を満たすかによって、アクチュエータに印加する電圧を異ならせている。しかし、距離の区分をさらに増やし、印加する電圧を異ならせもよい。例えば、r1よりもさらに近い距離r0を設定し、
距離dが、r0<d≦r1を満たす場合には、60Vの電圧をアクチュエータに印加し、d≦r0を満たす場合には、より低い電圧、例えば50Vの電圧をアクチュエータに印加してもよい。
【0044】
また、
図7に示すように、手指が接触する位置が、アクチュエータ10-3に近接する接触位置P4である場合には、接触位置P4に3番目に近接するアクチュエータ10-3も駆動させてもよい。つまり、3つのアクチュエータ10-1、10-2、10-3を駆動させてもよい。これにより、接触位置P4と最も近接したアクチュエータ10-1との距離dがより大きくなっても、振動が大きく減衰することが抑制される。
【0045】
このように本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイによれば、剛性体がアクチュエータとバックベゼルとの間に配置されていることによって、アクチュエータの振動領域を剛性体で拡大し、より広い面積で表示パネルを振動させることができる。このため、表示パネルが、内部で振動の減衰が生じやすい構造を有していても、アクチュエータの振動を、減衰を抑制して表示パネルの表面の広い領域に伝えることができる。よって、アクチュエータの数を減らし、製造コストを低減させながら、局所的に触覚を呈示することができる触覚呈示タッチパネルディスプレイが実現する。
【0046】
(第2実施形態)
図8は、本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイ212の模式的断面図である。触覚呈示タッチパネルディスプレイ212は、複数のアクチュエータのうち、一部のアクチュエータとバックベゼルとの間にのみ剛性体が配置されている点で第1実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイ211と異なる。
【0047】
図8に示すように、バックベゼル30の支持部30dは、領域R1および領域R2を含み、領域R1では、アクチュエータ10は、剛性体20を介さずに直接バックベゼル30の裏面30bに取り付けられている。また、支持部30dの領域R2では、バックベゼル30と、アクチュエータ10との間に第1実施形態と同様、剛性体20が配置されている。
【0048】
図9は、触覚呈示タッチパネルディスプレイ212にキーボード画像を表示させた状態における剛性体20およびアクチュエータ10の配置の一例を示している。
【0049】
図9に示すように、領域R1に配置されているアクチュエータ10における、隣接する2つのアクチュエータ10間の最短距離d1は、領域R2に配置されているアクチュエータ10における、隣接する2つのアクチュエータ10間の最短距離d2よりも小さい。言い換えると、領域R1では、アクチュエータ10は相対的に高い密度(単位面積当たりのアクチュエータの個数)で配置されており、領域R2では、アクチュエータ10は相対的に低い密度で配置されている。領域R1に配置されたアクチュエータ10をバックベゼルアクチュエータともいう。領域R1に配置されるアクチュエータ10と領域R2に配置されるアクチュエータ10とは同じ特性および同じ仕様であってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
図9に示すように、触覚呈示タッチパネルディスプレイ212の表示面211aにソフトウエアキーボードを表示したときに、領域R1には、アルファベットキーや数字キーなどが表示されるため、操作者の手指が接触する接触位置も、キーの大きさおよび配置に応じて、領域R1内で細かく変化する。このため、領域R1では、剛性体20を配置せず、アクチュエータ10を多く配置することによって、接触位置に対応して、狭い領域に局所的に触覚を呈示できる。
【0051】
一方、領域R2にはタッチパッドなどが表示される。タッチパッドに手指が接触していることを操作者に知覚させるという観点では、触覚を呈示する領域を細かく制御しなくてよい。このため、剛性体20を配置して、アクチュエータ10の数を減らすことができる。
【0052】
図9では、領域R1では、3行8列にアクチュエータ10を配置し、領域R2では、1行5列にアクチュエータ10を配置している。アクチュエータ10の数や配置、隣接するアクチュエータとのピッチは、表示されるキーボードのキーの大きさ、配置、ピッチ、タッチパッドの大きさや位置などに応じて決定し得る。
【0053】
このように本実施形態によれば、1つのアクチュエータが触覚を呈示する領域の大きさを表示面211a内において異ならせることができる。よって、機能とコストとのバランスに優れた触覚呈示タッチパネルディスプレイを実現し得る。
【0054】
(第3実施形態)
図10は、本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイ213の表示面213aにキーボード画像を表示させた状態における剛性体20およびアクチュエータ10の配置の一例を示している。触覚呈示タッチパネルディスプレイ213は、平面視における剛性体20の平面形状が六角形である点で、第1実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイ211と異なる。
図10に示すように、剛性体20の平面形状は例えば正六角形である。
【0055】
触覚呈示タッチパネルディスプレイ213によれば、剛性体20の平面形状は例えば正六角形であることによって、各アクチュエータ10は、いずれの方向において隣接するアクチュエータ10までの距離が等しい。つまり、各アクチュエータ10に対して、同心円状に隣接するアクチュエータ10が配置される。各アクチュエータ10を振動の点源とみれば、振動は同心円状に広がるため、振動の分布とアクチュエータ10の配置とが等しくなり、表示面211a全体をより均一に振動させることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、剛性体20は互いに独立しているが、互いに接続された集合体を形成していてもよい。
図11に示すように、剛性体20は、六角形の外縁の一部である各頂点近傍において互いに接続され、モノリシックな剛性集合体22を構成している。剛性集合体22を用いることによって、独立した複数の剛性体20をバックベゼル30に貼り付ける場合に比べて、製造工程を簡便にすることができる。
【0057】
(第4実施形態)
図12は、本実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイ214の模式的断面図である。触覚呈示タッチパネルディスプレイ214は、剛性体を備えておらず、バックベゼルにスリットが設けられている点で第1実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイ211と異なる。
【0058】
図13は、バックベゼル33の平面図である。バックベゼル33は、第1実施形態と同様枠部33cおよび支持部33dを含み支持部33dは、複数の支持領域33eと、支持領域33eの間に配置された複数のスリット33fを有する。
【0059】
支持部33dはたとえば、x方向およびy方向に伸びるスリット33fによって、矩形形状に区切られており、頂点が隣接する支持領域33eと接続されている。
【0060】
アクチュエータ10は、各支持領域33eの中央において、剛性体20を介さずに支持部33dに接合されている。
【0061】
バックベゼル33の支持部33dにスリットが設けられていることによって、アクチュエータ10から伝えられる振動は、区画された各支持領域33eに制限される。これによって、振動が支持領域33e内に閉じ込められ、アクチュエータ10からの振動が各支持領域33eで均一化するともに隣接する支持領域33eに伝わるのが抑制される。よって局所的に触覚を呈示することが可能となる。
【0062】
[他の形態]
本開示のタッチパネル用ディスプレイドライバおよび表示モジュールは上記実施形態に限られず、種々の改変が可能である。
【0063】
第2から第4の実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイは第1実施形態で説明したように好適にパーソナルコンピュータとして実現することができる。
【0064】
また、上記第1から第4実施形態は適宜組み合わせて実施することができる。例えば第1の実施形態の触覚呈示タッチパネルディスプレイに第4実施形態で説明したバックベゼル33を用いてもよい。また、第2の実施形態のバックベゼルの領域R1に第4実施形態で説明したバックベゼルのスリットを配置してもよい。この他、矛盾が生じない限り、第1かた第4の実施形態は2以上の実施形態で説明した特徴を組み合わせて実施してもよい。
【0065】
また、第1実施形態で説明したように、表示パネル40およびタッチパネル50の構造、駆動方式などに特に制限はない。
本開示のタッチパネル用ディスプレイドライバおよび表示モジュールは、以下のようにも説明することができる。
【0066】
第1の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、表示パネルと、表示パネルの上面、または、表示パネル内に配置されたタッチパネルと、表示パネルの下面を支持するバックベゼルと、複数のアクチュエータと、バックベゼルと複数のアクチュエータとの間に配置された複数の剛性体であって、各剛性体が複数のアクチュエータの1つとバックベゼルとの間に位置している剛性体とを備える。
【0067】
第1の構成によれば、剛性体がアクチュエータとバックベゼルとの間に配置されていることによって、アクチュエータの振動領域を剛性体で拡大し、より広い面積で表示パネルを振動させることができる。よって、アクチュエータの数を減らし、製造コストを低減させながら、局所的に触覚を呈示することができる触覚呈示タッチパネルディスプレイが実現する。
【0068】
第2の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、第1の構成において、各剛性体は平面視において矩形形状を有していてもよい。
【0069】
第3の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、第1の構成において、各剛性体は平面視において六角形形状を有していてもよい。
【0070】
第4の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、第1の構成において、各剛性体は、外縁の一部において隣接する剛性体と接続されており、モノリシックな剛性集合体を形成していてもよい。
【0071】
第5の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、第1の構成において、バックベゼルに直接接続された複数のバックベゼルアクチュエータをさらに備えていてもよい。
【0072】
第6の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、第5の構成において、複数のバックベゼルアクチュエータにおける隣接する2つのバックベゼルアクチュエータ間の最短距離は、複数のアクチュエータにおける隣接する2つのアクチュエータ間の最短距離よりも小さくてもよい。
【0073】
第7の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、表示パネルと、表示パネルの上面、または、表示パネル内に配置されたタッチパネルと、表示パネルの下面を支持するバックベゼルと、複数のアクチュエータと、を備え、バックベゼルは、支持面および支持面と反対側に位置する裏面を有し、支持面が表示パネルの下面と対向する支持部と、支持部を囲む枠部とを含み、支持部は、複数の支持領域と、複数の支持領域間に配置された複数のスリットとを含み、支持部の各支持領域の裏面に複数のアクチュエータの1つが位置している。
【0074】
第7の構成によれば、バックベゼルの支持部にスリットが設けられていることによって、アクチュエータから伝えられる振動は、区画された各支持領域に制限される。これによって、振動が支持領域内に閉じ込められ、アクチュエータからの振動が各支持領域で均一化するともに隣接する支持領域に伝わるのが抑制される。よって局所的に触覚を呈示することが可能となる。
【0075】
第8の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、第1または第7の構成において、アクチュエータは、表示パネルを厚さ方向に変位させてもよい。
【0076】
第9の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、第1または第7の構成において、タッチパネルコントローラと、ハプティックコントローラとをさらに備え、タッチパネルコントローラは、タッチパネルにおいて操作者がタッチパネルの表面に接触した接触位置を検出し、接触位置検出信号をホストコンピュータへ出力し、ハプティックコントローラは、接触位置検出信号に基づき、複数のアクチュエータのうち、接触位置に近接した1または複数のアクチュエータを駆動してもよい。
【0077】
第10の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、第9の構成において、ハプティックコントローラは、接触位置と接触位置に最も近接したアクチュエータとの距離が所定の値以下である場合、距離に応じた異なる電圧で、最も近接したアクチュエータを駆動してもよい。
【0078】
第11の構成に係る触覚呈示タッチパネルディスプレイは、第9の構成において、ハプティックコントローラは、接触位置と、接触位置に最も近接したアクチュエータとの距離が所定の値より大きい場合、最も近接したアクチュエータと、接触位置に2番目に近接したアクチュエータとを駆動してもよい。
【0079】
第12の構成に係るパーソナルコンピュータは、第1から第11の構成のいずれか1つに記載の触覚呈示タッチパネルディスプレイと、他のディスプレイと、ホストコンピュータとを備え、触覚呈示タッチパネルディスプレイは、ホストコンピュータからの指令に基づき、キーボードの画像を表示する。
【符号の説明】
【0080】
10,10-1~10-4…アクチュエータ、11,21…接着剤、22…剛性集合体
30,33…バックベゼル、30b…裏面、30c,33c…枠部、30d,33d…支持部、33e…支持領域、33f…スリット、40…表示パネル、40a,50a…上面、40b…下面、50…タッチパネル、51…タッチパネルコントローラ、52…ドライバ、53…マイコン、54…ハプティックコントローラ、55…ホストコンピュータ、60…カバープレート、201…パーソナルコンピュータ、210…筐体、210a…軸、211~214…触覚呈示タッチパネルディスプレイ、211a,213a…表示面、221…ディスプレイ