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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097270
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/00 20200101AFI20240710BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20240710BHJP
   B62J 45/40 20200101ALI20240710BHJP
   B62K 25/00 20060101ALI20240710BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B62J45/00
B62J27/00
B62J45/40
B62K25/00
B60T7/12 C
B60T7/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000736
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】プファウ ラース
(72)【発明者】
【氏名】モリアーティ ダニエル
【テーマコード(参考)】
3D014
3D246
【Fターム(参考)】
3D014DD01
3D014DD02
3D014DD09
3D014DE23
3D014DF23
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246EA02
3D246EA17
3D246GB30
3D246GB34
3D246GB37
3D246HA81A
3D246HA84A
3D246HA94A
3D246HA95A
3D246HB12A
3D246HB13A
3D246KA15
3D246KA19
3D246MA37
3D246MA38
(57)【要約】
【課題】本発明は、鞍乗り型車両のライダーによる運転を適切に支援することができる制御装置及び制御方法を得るものである。
【解決手段】本発明に係る制御装置(20)及び制御方法では、制御装置(20)の取得部が、鞍乗り型車両(1)に搭載され他車両を検出する周囲環境センサ(14)の出力結果を取得し、制御装置(20)の実行部が、ライダーによる運転を支援するライダー支援動作を実行し、取得部は、周囲環境センサ(14)の出力結果に基づいて、道路に対する鞍乗り型車両(1)のピッチ情報を取得し、実行部は、ピッチ情報に基づいて、ライダー支援動作を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両(1)のライダーによる運転を支援するライダー支援システム(10)の制御装置(20)であって、
前記鞍乗り型車両(1)に搭載され他車両を検出する周囲環境センサ(14)の出力結果を取得する取得部(21)と、
前記ライダーによる運転を支援するライダー支援動作を実行する実行部(22)と、
を備え、
前記取得部(21)は、前記周囲環境センサ(14)の出力結果に基づいて、道路に対する前記鞍乗り型車両(1)のピッチ情報を取得し、
前記実行部(22)は、前記ピッチ情報に基づいて、前記ライダー支援動作を実行する、
制御装置。
【請求項2】
前記周囲環境センサ(14)は、前記鞍乗り型車両(1)の前方の周囲環境情報を検出する前方周囲環境センサ(14f)であり、
前記実行部(22)は、前記ピッチ情報が、前記鞍乗り型車両(1)の前輪(3)が接地しており後輪(4)が離地しているストッピーが生じていることを示す情報である場合、前記ライダー支援動作を実行する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記ライダー支援動作は、前記ライダーに対して警告を行う動作を含む、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ライダー支援動作は、前記鞍乗り型車両(1)の前輪(3)に生じている制動力を低下する動作を含む、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記ライダー支援動作は、外部装置に無線信号を送信する動作を含む、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記周囲環境センサ(14)は、前記鞍乗り型車両(1)の後方の周囲環境情報を検出する後方周囲環境センサ(14r)であり、
前記実行部(22)は、前記ピッチ情報が、前記鞍乗り型車両(1)の後輪(4)が接地しており前輪(3)が離地しているウィリーが生じていることを示す情報である場合、前記ライダー支援動作を実行する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記ライダー支援動作は、前記ライダーに対して警告を行う動作を含む、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記ライダー支援動作は、前記鞍乗り型車両(1)の後輪(4)に生じている駆動力を低下する動作を含む、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項9】
前記ライダー支援動作は、前記鞍乗り型車両(1)の後輪(4)に制動力を生じさせる動作を含む、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項10】
前記ライダー支援動作は、外部装置に無線信号を送信する動作を含む、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項11】
前記取得部(21)は、前記鞍乗り型車両(1)に搭載された慣性計測装置(15)の出力結果を取得し、前記慣性計測装置(15)の出力結果、及び、前記ピッチ情報に基づいて、道路の勾配情報を取得し、
前記実行部(22)は、前記勾配情報に基づいて、前記ライダー支援動作を実行する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項12】
前記ライダー支援動作は、前記ピッチ情報に基づいて、前記周囲環境センサ(14)の検出対象範囲、及び、前記鞍乗り型車両(1)に搭載され前記周囲環境センサ(14)とは異なる他の周囲環境センサ(14)の検出対象範囲の少なくとも一方を変化させる動作を含む、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項13】
前記ライダー支援動作は、前記ピッチ情報に基づいて、前記鞍乗り型車両(1)のサスペンション(6、8)を制御する動作を含む、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項14】
前記周囲環境センサ(14)は、超音波センサである、
請求項1~13のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
鞍乗り型車両(1)のライダーによる運転を支援するライダー支援システム(10)の制御方法であって、
制御装置(20)の取得部(21)が、前記鞍乗り型車両(1)に搭載され他車両を検出する周囲環境センサ(14)の出力結果を取得し、
前記制御装置(20)の実行部(22)が、前記ライダーによる運転を支援するライダー支援動作を実行し、
前記取得部(21)は、前記周囲環境センサ(14)の出力結果に基づいて、道路に対する前記鞍乗り型車両(1)のピッチ情報を取得し、
前記実行部(22)は、前記ピッチ情報に基づいて、前記ライダー支援動作を実行する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、鞍乗り型車両のライダーによる運転を適切に支援することができる制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータサイクル等の鞍乗り型車両のライダーによる運転を支援する種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1では、走行方向又は実質的に走行方向にある障害物を検出するセンサ装置により検出された情報に基づいて、不適切に障害物に接近していることをモータサイクルのライダーへ警告する運転者支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-116882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライダーによる運転を支援するライダー支援動作として、鞍乗り型車両の姿勢に応じて実行される動作がある。ここで、鞍乗り型車両の姿勢は、四輪の自動車等の姿勢と比べて、変化しやすい。ゆえに、上記のライダー支援動作を鞍乗り型車両の姿勢に応じて適切に実行することによって、鞍乗り型車両のライダーによる運転を適切に支援する必要性が高い。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、鞍乗り型車両のライダーによる運転を適切に支援することができる制御装置及び制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、鞍乗り型車両のライダーによる運転を支援するライダー支援システムの制御装置であって、前記鞍乗り型車両に搭載され他車両を検出する周囲環境センサの出力結果を取得する取得部と、前記ライダーによる運転を支援するライダー支援動作を実行する実行部と、を備え、前記取得部は、前記周囲環境センサの出力結果に基づいて、道路に対する前記鞍乗り型車両のピッチ情報を取得し、前記実行部は、前記ピッチ情報に基づいて、前記ライダー支援動作を実行する。
【0007】
本発明に係る制御方法は、鞍乗り型車両のライダーによる運転を支援するライダー支援システムの制御方法であって、制御装置の取得部が、前記鞍乗り型車両に搭載され他車両を検出する周囲環境センサの出力結果を取得し、前記制御装置の実行部が、前記ライダーによる運転を支援するライダー支援動作を実行し、前記取得部は、前記周囲環境センサの出力結果に基づいて、道路に対する前記鞍乗り型車両のピッチ情報を取得し、前記実行部は、前記ピッチ情報に基づいて、前記ライダー支援動作を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、制御装置の取得部が、鞍乗り型車両に搭載され他車両を検出する周囲環境センサの出力結果を取得し、制御装置の実行部が、ライダーによる運転を支援するライダー支援動作を実行し、取得部は、周囲環境センサの出力結果に基づいて、道路に対する鞍乗り型車両のピッチ情報を取得し、実行部は、ピッチ情報に基づいて、ライダー支援動作を実行する。それにより、鞍乗り型車両の姿勢に応じてライダー支援動作を適切に実行することができる。ゆえに、鞍乗り型車両のライダーによる運転を適切に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る制御装置が行う第1処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両においてストッピーが生じている様子を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る制御装置が行う第2処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両においてウィリーが生じている様子を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る制御装置が行う第3処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る制御装置及び制御方法について、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、以下では、二輪のモータサイクルに用いられる制御装置について説明しているが(図1中の鞍乗り型車両1を参照)、本発明に係る制御装置の制御対象となる車両は、二輪のモータサイクル以外の他の鞍乗り型車両であってもよい。鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味する。鞍乗り型車両には、例えば、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、自転車等が含まれる。モータサイクルには、エンジンを動力源とする車両、電気モータを動力源とする車両等が含まれる。モータサイクルには、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な車両を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0012】
また、以下では、駆動輪(具体的には、図1中の後輪4)を駆動するための動力を出力可能な駆動源としてエンジン(具体的には、後述される図1中のエンジン11)が搭載されている場合を説明しているが、駆動源としてエンジン以外の他の駆動源(例えば、電気モータ)が搭載されていてもよく、複数の駆動源が搭載されていてもよい。
【0013】
また、以下では、車輪に生じる制動力の制御ユニットとして、ブレーキ液の液圧を制御する制御ユニット(具体的には、後述される図1中の液圧制御ユニット12)が採用される場合を説明しているが、車輪に生じる制動力の制御ユニットとして、車輪の制動部自体の位置を電気的信号によって制御する制御ユニット(いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ)が採用されてもよい。
【0014】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
【0015】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0016】
<鞍乗り型車両の構成>
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両1の構成について説明する。
【0017】
図1は、鞍乗り型車両1の概略構成を示す模式図である。鞍乗り型車両1は、本発明に係る鞍乗り型車両の一例に相当する二輪のモータサイクルである。鞍乗り型車両1は、図1に示されるように、ハンドル2と、前輪3と、後輪4と、フロントフォーク5、フロントサスペンション6と、スイングアーム7と、リアサスペンション8と、エンジン11と、液圧制御ユニット12と、表示装置13と、周囲環境センサ14と、慣性計測装置(IMU)15と、制御装置(ECU)20とを備える。周囲環境センサ14は、前方周囲環境センサ14fと、後方周囲環境センサ14rとを含む。
【0018】
鞍乗り型車両1は、鞍乗り型車両1のライダーによる運転を支援するライダー支援システム10を備える。ライダー支援システム10には、上記の構成要素(具体的には、フロントサスペンション6、リアサスペンション8、エンジン11、液圧制御ユニット12、表示装置13、周囲環境センサ14、慣性計測装置15及び制御装置20)が含まれる。
【0019】
フロントサスペンション6及びリアサスペンション8は、鞍乗り型車両1のサスペンションの一例に相当し、鞍乗り型車両1の胴体と車輪との間に介在する。具体的には、フロントサスペンション6は、ハンドル2と前輪3とを接続するフロントフォーク5に設けられ、当該フロントサスペンション6の軸方向に沿って伸縮可能になっている。また、リアサスペンション8は、胴体に搖動可能に支持され後輪4を旋回自在に保持するスイングアーム7と胴体とを接続し、当該リアサスペンション8の軸方向に沿って伸縮可能になっている。各サスペンションの作動油の流路には、各サスペンションの減衰特性(具体的には、各サスペンションのストローク速度に対する減衰力の特性)を制御するための制御弁が設けられている。
【0020】
エンジン11は、鞍乗り型車両1の駆動源の一例に相当し、駆動輪(具体的には、後輪4)を駆動するための動力を出力可能である。例えば、エンジン11には、内部に燃焼室が形成される1又は複数の気筒と、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、点火プラグとが設けられている。燃料噴射弁から燃料が噴射されることにより燃焼室内に空気及び燃料を含む混合気が形成され、当該混合気が点火プラグにより点火されて燃焼する。それにより、気筒内に設けられたピストンが往復運動し、クランクシャフトが回転するようになっている。また、エンジン11の吸気管には、スロットル弁が設けられており、スロットル弁の開度であるスロットル開度に応じて燃焼室への吸気量が変化するようになっている。
【0021】
液圧制御ユニット12は、車輪に生じる制動力を制御する機能を担うユニットである。例えば、液圧制御ユニット12は、マスタシリンダとホイールシリンダとを接続する油路上に設けられ、ホイールシリンダのブレーキ液圧を制御するためのコンポーネント(例えば、制御弁及びポンプ)を含む。液圧制御ユニット12のコンポーネントの動作が制御されることによって、車輪に生じる制動力が制御される。なお、液圧制御ユニット12は、前輪3及び後輪4の双方に生じる制動力をそれぞれ制御するものであってもよく、前輪3及び後輪4の一方に生じる制動力のみを制御するものであってもよい。
【0022】
表示装置13は、情報を視覚的に表示する表示機能を有する。表示装置13としては、例えば、液晶ディスプレイ又はランプ等が挙げられる。表示装置13の車体に対する配置は、特に限定されない。例えば、表示装置13は、鞍乗り型車両1のうちハンドル2に対して前方に設けられてもよく、鞍乗り型車両1のミラーの近傍に設けられてもよい。
【0023】
周囲環境センサ14は、鞍乗り型車両1の周囲の環境に関する周囲環境情報を検出する。周囲環境センサ14は、鞍乗り型車両1に搭載され、少なくとも他車両を検出することができる。
【0024】
周囲環境センサ14により検出される周囲環境情報は、鞍乗り型車両1の周辺に位置する被検体までの距離又は方位に関連する情報(例えば、相対位置、相対距離、相対速度、相対加速度等)であってもよく、また、鞍乗り型車両1の周辺に位置する被検体の特徴(例えば、被検体の種別、被検体自体の形状、被検体に付されているマーク等)であってもよい。周囲環境センサ14は、例えば、レーダー、Lidarセンサ、超音波センサ、カメラ等である。
【0025】
前方周囲環境センサ14fは、鞍乗り型車両1の前部に設けられており、鞍乗り型車両1の前方の周囲環境情報を検出する。後述されるストッピー又はウィリーが生じていない図1に示される状態において、前方周囲環境センサ14fは、地面と略平行な方向に向いており、前方周囲環境センサ14fの最大検出範囲は、前方周囲環境センサ14fから遠ざかるにつれて広がり、地面と略平行な中心軸を有する放射状の範囲となっている。
【0026】
後方周囲環境センサ14rは、鞍乗り型車両1の後部に設けられており、鞍乗り型車両1の後方の周囲環境情報を検出する。後述されるストッピー又はウィリーが生じていない図1に示される状態において、後方周囲環境センサ14rは、地面と略平行な方向に向いており、後方周囲環境センサ14rの最大検出範囲は、後方周囲環境センサ14rから遠ざかるにつれて広がり、地面と略平行な中心軸を有する放射状の範囲となっている。
【0027】
なお、上記の最大検出範囲は、検出可能な最大範囲を意味する。一方、検出対象範囲は、実際に検出対象となる範囲を意味する。最大検出範囲の全体が検出対象範囲となっていてもよく、最大検出範囲のうちの一部のみが検出対象範囲となっていてもよい。
【0028】
慣性計測装置15は、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサを備えており、鞍乗り型車両1の姿勢を検出する。慣性計測装置15は、例えば、鞍乗り型車両1の胴体に設けられている。例えば、慣性計測装置15は、水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角を検出し、検出結果を出力する。慣性計測装置15が、水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。ピッチ角は、鞍乗り型車両1の車体(具体的には、胴体)の縦方向の傾きを表す角度に相当する。よって、水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角は、車両左右方向の軸を中心とする回転方向であるピッチ方向において、鞍乗り型車両1の車体が水平方向に対してどの程度回転したかを表す角度に相当する。慣性計測装置15が、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサの一部のみを備えていてもよい。
【0029】
制御装置20は、ライダー支援システム10を制御する。例えば、制御装置20の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置20の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置20は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0030】
図2は、制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示されるように、制御装置20は、例えば、取得部21と、実行部22とを備える。また、制御装置20は、ライダー支援システム10の各装置と通信する。
【0031】
取得部21は、ライダー支援システム10の各装置から情報を取得する。例えば、取得部21は、前方周囲環境センサ14f、後方周囲環境センサ14r及び慣性計測装置15から情報を取得する。なお、本明細書において、情報の取得には、情報の抽出又は生成等が含まれ得る。情報の生成は、演算により実現される。
【0032】
実行部22は、ライダー支援動作を実行する。ライダー支援動作は、ライダーによる運転を支援する動作であり、種々の動作を含み得る。後述するように、実行部22は、ライダー支援動作において、フロントサスペンション6、リアサスペンション8、エンジン11、液圧制御ユニット12及び表示装置13を適宜制御する。
【0033】
特に、実行部22は、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報に基づいて、ライダー支援動作を実行する。道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報は、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ角に関する情報であり、当該ピッチ角の変化度合いに関する情報も含み得る。道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ角は、車両左右方向の軸を中心とする回転方向であるピッチ方向において、鞍乗り型車両1の車体が道路に対してどの程度回転したかを表す角度に相当する。後述されるように、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報は、取得部21によって、周囲環境センサ14の出力結果に基づいて取得される。
【0034】
また、実行部22は、鞍乗り型車両1と他車両との位置関係情報に基づいて、鞍乗り型車両1の装置に制御指令を出力する。上記の位置関係情報は、例えば、他車両に対する鞍乗り型車両1の相対位置、相対距離、相対速度、相対加速度、相対加加速度又は通過時間差等の情報を含み得る。また、上記の位置関係情報は、他車両が検出されているか否かを示す情報(換言すると、鞍乗り型車両1の近くに他車両が存在するか否かを示す情報)も含み得る。上記の位置関係情報は、これらの情報に実質的に換算可能な他の物理量の情報であってもよい。上記の位置関係情報は、取得部21によって、周囲環境センサ14の出力結果に基づいて取得される。
【0035】
位置関係情報に基づいて出力される制御指令としては、例えば、アダプティブクルーズコントロールを実行するための制御指令、又は、鞍乗り型車両1への他車両の接近をライダーに報知する報知動作を実行するための制御指令等が挙げられる。アダプティブクルーズコントロールでは、例えば、鞍乗り型車両1と前方車両(つまり、鞍乗り型車両1の前方に位置する他車両)との車間距離又は通過時間差が目標値に維持されるように、鞍乗り型車両1の速度が制御される。鞍乗り型車両1の速度の制御は、エンジン11及び液圧制御ユニット12を制御することによって実現される。上記の報知動作では、例えば、鞍乗り型車両1に他車両が接近している場合に、その旨がライダーに報知されるように、表示装置13が制御される。
【0036】
<制御装置の動作>
図3図7を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置20の動作について説明する。
【0037】
上述したように、制御装置20の実行部22は、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報に基づいて、ライダー支援動作を実行する。以下、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報に基づいてライダー支援動作が実行される処理例として、第1処理、第2処理及び第3処理をこの順に説明する。
【0038】
図3は、制御装置20が行う第1処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3におけるステップS101は、図3に示される制御フローの開始に対応する。
【0039】
図3に示される制御フローが開始されると、ステップS102において、取得部21は、前方周囲環境センサ14fの出力結果を取得する。次に、ステップS103において、取得部21は、前方周囲環境センサ14fの出力結果に基づいて、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報を取得する。
【0040】
後述するように、図3の第1処理では、ステップS103で取得されたピッチ情報は、ストッピーが生じているか否かを判定するために用いられる。図4は、鞍乗り型車両1においてストッピーが生じている様子を示す図である。図4に示されるように、ストッピーは、鞍乗り型車両1の前輪3が接地しており後輪4が離地している状態を意味する。ストッピーは、例えば、車速がある程度高くなっている状態において、前輪3の急ブレーキ(つまり、急激な制動力の変化を伴うブレーキ)が行われた場合に生じる。
【0041】
ストッピーが生じている場合、前方周囲環境センサ14fは、地面と略平行な方向に対して地面側に傾いた方向に向く。ゆえに、前方周囲環境センサ14fの検出対象範囲内に地面が入り込む。例えば、前方周囲環境センサ14fとして、超音波センサが用いられる場合、前方周囲環境センサ14fの検出対象範囲内に地面が入り込むと、前方周囲環境センサ14fの検出結果に多くのノイズが含まれるようになる。ゆえに、取得部21は、前方周囲環境センサ14fの検出結果を用いることによって、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報として、ストッピーが生じていることを示す情報を取得できる。
【0042】
なお、前方周囲環境センサ14fは、上述したように、超音波センサ以外のセンサ(例えば、レーダー等)であってもよい。その場合においても、取得部21は、前方周囲環境センサ14fが地面と略平行な方向に対して地面側に傾いた方向に向いているか否かを、前方周囲環境センサ14fの検出結果(例えば、地面との距離)に基づいて判断できるので、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報として、ストッピーが生じていることを示す情報を取得できる。
【0043】
図3中のステップS103の次に、ステップS104において、実行部22は、ステップS103で取得されたピッチ情報が、ストッピーが生じていることを示す情報であるか否かを判定する。
【0044】
ピッチ情報が、ストッピーが生じていることを示す情報ではないと判定された場合(ステップS104/NO)、ステップS102に戻る。一方、ピッチ情報が、ストッピーが生じていることを示す情報であると判定された場合(ステップS104/YES)、ステップS105に進む。
【0045】
ステップS104でYESと判定された場合、ステップS105において、実行部22は、ライダー支援動作を実行し、ステップS102に戻る。
【0046】
ステップS105で実行されるライダー支援動作は、ストッピーが生じた際にライダーによる運転を支援するための動作であり、種々の動作を含み得る。
【0047】
例えば、ステップS105において、実行部22は、ライダー支援動作として、ライダーに対して警告を行う動作を実行してもよい。実行部22は、例えば、表示装置13を用いて、ライダーに対して警告を行うことができる。それにより、ライダーにストッピーが生じていることを認識させ、ストッピーを解消するための操作をライダーに促すことができる。
【0048】
ただし、ライダーに対する警告は、表示装置13を用いる例に限定されない。例えば、ライダーに対する警告は、ライダーの着用物(例えば、ヘルメット、グローブ等)に搭載された表示装置を用いて行われてもよい。また、例えば、ライダーに対する警告は、音を用いて行われてもよい。この場合、ライダーに対する警告は、例えば、鞍乗り型車両1、又は、ライダーの着用物に搭載された音出力装置を用いて行われる。また、例えば、ライダーに対する警告は、振動を用いて行われてもよい。この場合、ライダーに対する警告は、例えば、鞍乗り型車両1、又は、ライダーの着用物に搭載された振動発生装置を用いて行われる。
【0049】
また、例えば、ステップS105において、実行部22は、ライダー支援動作として、鞍乗り型車両1の前輪3に生じている制動力を低下する動作を実行してもよい。実行部22は、例えば、液圧制御ユニット12の動作を制御することによって、前輪3に生じている制動力を低下することができる。それにより、ストッピーを解消することができる。
【0050】
また、例えば、ステップS105において、実行部22は、ライダー支援動作として、外部装置に無線信号を送信する動作を実行してもよい。上記の無線信号は、例えば、鞍乗り型車両1においてストッピーが生じていることを示す信号、又は、鞍乗り型車両1においてストッピーが生じていることに対応した処理(具体的には、安全性を確保するための処理)を促すための信号である。例えば、実行部22は、鞍乗り型車両1の周囲の他車両に対して無線信号を送信する。それにより、周囲の他車両は、安全を確保するための処理を実行できる。また、例えば、実行部22は、病院等のインフラストラクチャーに対して無線信号を送信する。それにより、仮に事故が発生した場合であっても、病院等が迅速に対応できる。なお、ストッピーが過度に及び/又は急激に生じていると判定される場合に、実行部22がライダー支援動作(例えば、外部装置への無線信号の送信、エアバッグの作動等)を実行してもよい。
【0051】
上記では、図3のフローチャートを参照して、第1処理の流れの一例を説明した。ただし、図3のフローチャートに対して、各種処理の追加又は変更が施されてもよい。
【0052】
例えば、実行部22は、ストッピーが生じているか否かを判定するための処理(つまり、図3のステップS102、S103、S104)の前に、前輪3を制動するための操作がライダーによって行われているか否かの判定を追加して行ってもよい。例えば、実行部22は、前輪3を制動するための操作に用いられる操作部の操作状態に関する情報、又は、前輪3用のブレーキ液の圧力(例えば、液圧制御ユニット12において前輪3用のホイールシリンダと連通する流路のブレーキ液の圧力)等に基づいて、前輪3を制動するための操作がライダーによって行われているか否かを判定できる。前輪3を制動するための操作がライダーによって行われていないと判定された場合、ストッピーが生じていないと判断できるため、図3のステップS102に進まず、前輪3を制動するための操作がライダーによって行われているか否かの判定が繰り返される。なお、前輪3を制動するための操作がライダーによって行われていると判定された場合、図3のステップS102に進む。
【0053】
また、例えば、実行部22は、ストッピーが生じているか否かを判定するための処理(つまり、図3のステップS102、S103、S104)の前に、鞍乗り型車両1の車速、前輪3と後輪4の少なくとも一方の車輪速、鞍乗り型車両1の減速度、又は、前輪3用のブレーキ液の圧力が閾値を超えているか否かの判定を追加して行ってもよい。上記の閾値は、例えば、ストッピーが生じる可能性の有無を判断できる程度の値に設定される。鞍乗り型車両1の車速、前輪3と後輪4の少なくとも一方の車輪速、鞍乗り型車両1の減速度、又は、前輪3用のブレーキ液の圧力が閾値を超えていないと判定された場合、ストッピーが生じていないと判断できるため、図3のステップS102に進まず、鞍乗り型車両1の車速、前輪3と後輪4の少なくとも一方の車輪速、鞍乗り型車両1の減速度、又は、前輪3用のブレーキ液の圧力が閾値を超えているか否かの判定が繰り返される。なお、鞍乗り型車両1の車速、前輪3と後輪4の少なくとも一方の車輪速、鞍乗り型車両1の減速度、又は、前輪3用のブレーキ液の圧力が閾値を超えていると判定された場合、図3のステップS102に進む。
【0054】
図5は、制御装置20が行う第2処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5におけるステップS201は、図5に示される制御フローの開始に対応する。
【0055】
図5に示される制御フローが開始されると、ステップS202において、取得部21は、後方周囲環境センサ14rの出力結果を取得する。次に、ステップS203において、取得部21は、後方周囲環境センサ14rの出力結果に基づいて、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報を取得する。
【0056】
後述するように、図5の第2処理では、ステップS203で取得されたピッチ情報は、ウィリーが生じているか否かを判定するために用いられる。図6は、鞍乗り型車両1においてウィリーが生じている様子を示す図である。図6に示されるように、ウィリーは、鞍乗り型車両1の後輪4が接地しており前輪3が離地している状態を意味する。ウィリーは、例えば、急加速(つまり、急激な加速度の変化を伴う加速)が行われた場合に生じる。
【0057】
ウィリーが生じている場合、後方周囲環境センサ14rは、地面と略平行な方向に対して地面側に傾いた方向に向く。ゆえに、後方周囲環境センサ14rの検出対象範囲内に地面が入り込む。例えば、後方周囲環境センサ14rとして、超音波センサが用いられる場合、後方周囲環境センサ14rの検出対象範囲内に地面が入り込むと、後方周囲環境センサ14rの検出結果に多くのノイズが含まれるようになる。ゆえに、取得部21は、後方周囲環境センサ14rの検出結果を用いることによって、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報として、ウィリーが生じていることを示す情報を取得できる。
【0058】
なお、後方周囲環境センサ14rは、上述したように、超音波センサ以外のセンサ(例えば、レーダー等)であってもよい。その場合においても、取得部21は、後方周囲環境センサ14rが地面と略平行な方向に対して地面側に傾いた方向に向いているか否かを、後方周囲環境センサ14rの検出結果(例えば、地面との距離)に基づいて判断できるので、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報として、ウィリーが生じていることを示す情報を取得できる。
【0059】
図5中のステップS203の次に、ステップS204において、実行部22は、ステップS203で取得されたピッチ情報が、ウィリーが生じていることを示す情報であるか否かを判定する。
【0060】
ピッチ情報が、ウィリーが生じていることを示す情報ではないと判定された場合(ステップS204/NO)、ステップS202に戻る。一方、ピッチ情報が、ウィリーが生じていることを示す情報であると判定された場合(ステップS204/YES)、ステップS205に進む。
【0061】
ステップS204でYESと判定された場合、ステップS205において、実行部22は、ライダー支援動作を実行し、ステップS202に戻る。
【0062】
ステップS205で実行されるライダー支援動作は、ウィリーが生じた際にライダーによる運転を支援するための動作であり、種々の動作を含み得る。
【0063】
例えば、ステップS205において、実行部22は、ライダー支援動作として、ライダーに対して警告を行う動作を実行してもよい。実行部22は、例えば、表示装置13を用いて、ライダーに対して警告を行うことができる。それにより、ライダーにウィリーが生じていることを認識させ、ウィリーを解消するための操作をライダーに促すことができる。
【0064】
ただし、ライダーに対する警告は、表示装置13を用いる例に限定されない。例えば、ライダーに対する警告は、ライダーの着用物(例えば、ヘルメット、グローブ等)に搭載された表示装置を用いて行われてもよい。また、例えば、ライダーに対する警告は、音を用いて行われてもよい。この場合、ライダーに対する警告は、例えば、鞍乗り型車両1、又は、ライダーの着用物に搭載された音出力装置を用いて行われる。また、例えば、ライダーに対する警告は、振動を用いて行われてもよい。この場合、ライダーに対する警告は、例えば、鞍乗り型車両1、又は、ライダーの着用物に搭載された振動発生装置を用いて行われる。
【0065】
また、例えば、ステップS205において、実行部22は、ライダー支援動作として、鞍乗り型車両1の後輪4に生じている駆動力を低下する動作を実行してもよい。実行部22は、例えば、エンジン11の動作を制御することによって、後輪4に生じている駆動力を低下することができる。それにより、ウィリーを解消することができる。
【0066】
また、例えば、ステップS205において、実行部22は、ライダー支援動作として、鞍乗り型車両1の後輪4に制動力を生じさせる動作を実行してもよい。実行部22は、例えば、液圧制御ユニット12の動作を制御することによって、後輪4に制動力を生じさせることができる。それにより、ウィリーを解消することができる。
【0067】
また、例えば、ステップS205において、実行部22は、ライダー支援動作として、外部装置に無線信号を送信する動作を実行してもよい。上記の無線信号は、例えば、鞍乗り型車両1においてウィリーが生じていることを示す信号、又は、鞍乗り型車両1においてウィリーが生じていることに対応した処理(具体的には、安全性を確保するための処理)を促すための信号である。例えば、実行部22は、鞍乗り型車両1の周囲の他車両に対して無線信号を送信する。それにより、周囲の他車両は、安全を確保するための処理を実行できる。また、例えば、実行部22は、病院等のインフラストラクチャーに対して無線信号を送信する。それにより、仮に事故が発生した場合であっても、病院等が迅速に対応できる。なお、ウィリーが過度に及び/又は急激に生じていると判定される場合に、実行部22がライダー支援動作(例えば、外部装置への無線信号の送信、エアバッグの作動等)を実行してもよい。
【0068】
上記では、図5のフローチャートを参照して、第2処理の流れの一例を説明した。ただし、図5のフローチャートに対して、各種処理の追加又は変更が施されてもよい。
【0069】
例えば、実行部22は、ウィリーが生じているか否かを判定するための処理(つまり、図5のステップS202、S203、S204)の前に、鞍乗り型車両1の車速、前輪3と後輪4の少なくとも一方の車輪速、又は、前輪3の車輪速と後輪4の車輪速の差が閾値を超えているか否かの判定を追加して行ってもよい。上記の閾値は、例えば、ウィリーが生じる可能性の有無を判断できる程度の値に設定される。鞍乗り型車両1の車速、前輪3と後輪4の少なくとも一方の車輪速、又は、前輪3の車輪速と後輪4の車輪速の差が閾値を超えていないと判定された場合、ウィリーが生じていないと判断できるため、図5のステップS202に進まず、鞍乗り型車両1の車速、前輪3と後輪4の少なくとも一方の車輪速、又は、前輪3の車輪速と後輪4の車輪速の差が閾値を超えているか否かの判定が繰り返される。なお、鞍乗り型車両1の車速、前輪3と後輪4の少なくとも一方の車輪速、又は、前輪3の車輪速と後輪4の車輪速の差が閾値を超えていると判定された場合、図5のステップS202に進む。
【0070】
図7は、制御装置20が行う第3処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7におけるステップS301は、図7に示される制御フローの開始に対応する。
【0071】
図7に示される制御フローが開始されると、ステップS302において、取得部21は、周囲環境センサ14の出力結果を取得する。なお、図7の第3処理における周囲環境センサ14は、前方周囲環境センサ14fであってもよく、後方周囲環境センサ14rであってもよい。次に、ステップS303において、取得部21は、周囲環境センサ14の出力結果に基づいて、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報を取得する。
【0072】
ステップS303の次に、ステップS304において、取得部21は、慣性計測装置15の出力結果を取得する。次に、ステップS305において、取得部21は、慣性計測装置15の出力結果、及び、ステップS303で取得されたピッチ情報に基づいて、道路の勾配情報を取得する。道路の勾配情報は、道路の勾配に関する情報である。
【0073】
上述したように、慣性計測装置15の出力結果には、水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角が含まれる。そして、ステップS303で取得されたピッチ情報は、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ角に関する情報である。よって、取得部21は、水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角、及び、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ角に基づいて、道路の勾配情報を取得できる。例えば、取得部21は、水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角と、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ角との差を、道路の勾配として特定できる。
【0074】
ステップS305の次に、ステップS306において、実行部22は、ステップS305で取得された勾配情報に基づいて、ライダー支援動作を実行し、ステップS302に戻る。
【0075】
ステップS306で実行されるライダー支援動作は、勾配情報を用いてライダーによる運転を支援するための動作であり、種々の動作を含み得る。例えば、ステップS306において、実行部22は、ライダー支援動作として、ヒルホールドコントロールを実行する。ヒルホールドコントロールは、停車中の鞍乗り型車両1が重力の影響によりずり下がることを抑制するための制御であり、鞍乗り型車両1に生じている制動力をライダーによるブレーキ操作によらずに保持する制御である。実行部22は、ヒルホールドコントロールにおいて、道路の勾配に基づいて、鞍乗り型車両1に生じている制動力を制御する。
【0076】
なお、ステップS306で実行されるライダー支援動作は、ヒルホールドコントロール以外のライダー支援動作であってもよい。例えば、ステップS306で実行されるライダー支援動作は、道路の勾配に基づいて鞍乗り型車両1の車速を制御することにより、鞍乗り型車両1の車速を目標車速に維持するヒルディセントコントロール等であってもよい。
【0077】
上記では、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報に基づいてライダー支援動作が実行される処理例として、第1処理、第2処理及び第3処理を説明した。ただし、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報に基づいてライダー支援動作が実行される処理例として、第1処理、第2処理及び第3処理以外の処理が行われてもよい。
【0078】
例えば、実行部22は、ライダー支援動作として、ピッチ情報に基づいて、周囲環境センサ14の検出対象範囲を変化させる動作を実行してもよい。例えば、実行部22は、前方周囲環境センサ14fを用いて得られるピッチ情報が、前方周囲環境センサ14fが地面を向いていることを示す情報である場合、前方周囲環境センサ14fの検出対象範囲を地面から離れる方向に移動させてもよい。それにより、前方周囲環境センサ14fの検出対象範囲に地面が入り込むことを抑制し、鞍乗り型車両1の前方の他車両を適切に検出できる。また、例えば、実行部22は、後方周囲環境センサ14rを用いて得られるピッチ情報が、後方周囲環境センサ14rが地面を向いていることを示す情報である場合、後方周囲環境センサ14rの検出対象範囲を地面から離れる方向に移動させてもよい。それにより、後方周囲環境センサ14rの検出対象範囲に地面が入り込むことを抑制し、鞍乗り型車両1の後方の他車両を適切に検出できる。
【0079】
なお、周囲環境センサ14の検出対象範囲を移動させる方法は、制御装置20の内部における検出対象範囲の設定情報を変化させる方法(つまり、ソフトウェア的な方法)であってもよく、鞍乗り型車両1に対する周囲環境センサ14の位置又は姿勢を変化させる方法(つまり、物理的な方法)であってもよい。また、周囲環境センサ14の検出対象範囲を変化させることは、周囲環境センサ14の検出対象範囲を移動させることに限定されず、例えば、周囲環境センサ14の検出対象範囲のうちの一部の範囲(例えば、地面側の範囲)を検出対象範囲から除外することであってもよい。
【0080】
なお、上記の例では、ピッチ情報の取得に用いられる周囲環境センサ14の検出対象範囲を変化させる例を説明した。ただし、実行部22は、ライダー支援動作として、ピッチ情報に基づいて、鞍乗り型車両1に搭載され上記の周囲環境センサ14(つまり、ピッチ情報の取得に用いられる周囲環境センサ14)とは異なる他の周囲環境センサ14の検出対象範囲を変化させる動作を実行してもよい。例えば、ピッチ情報の取得に前方周囲環境センサ14fが用いられる場合において、実行部22は、後方周囲環境センサ14rの検出対象範囲を変化させてもよい。また、例えば、ピッチ情報の取得に後方周囲環境センサ14rが用いられる場合において、実行部22は、前方周囲環境センサ14fの検出対象範囲を変化させてもよい。
【0081】
また、例えば、実行部22は、ライダー支援動作として、ピッチ情報に基づいて、鞍乗り型車両1のサスペンション(上記の例では、フロントサスペンション6及びリアサスペンション8の少なくとも一方)を制御する動作を実行してもよい。サスペンションの制御としては、例えば、サスペンションの減衰特性の制御、又は、サスペンションのストローク量の制御等が挙げられる。
【0082】
なお、上記の例では、周囲環境センサ14の出力結果に基づいて、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報が取得される。ここで、慣性計測装置15の出力結果に基づいて、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報をある程度推定することもできる。このように、2つの方法で道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報を特定することによって、周囲環境センサ14及び慣性計測装置15の一方が故障した場合であっても、上記のピッチ情報を特定することができる。
【0083】
<制御装置の効果>
本発明の実施形態に係る制御装置20の効果について説明する。
【0084】
制御装置20は、鞍乗り型車両1に搭載され他車両を検出する周囲環境センサ14の出力結果を取得する取得部21と、ライダーによる運転を支援するライダー支援動作を実行する実行部22と、を備える。そして、取得部21は、周囲環境センサ14の出力結果に基づいて、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報を取得し、実行部22は、ピッチ情報に基づいて、ライダー支援動作を実行する。それにより、鞍乗り型車両1の姿勢に応じてライダー支援動作を適切に実行することができる。ゆえに、鞍乗り型車両1のライダーによる運転を適切に支援することができる。
【0085】
好ましくは、制御装置20において、周囲環境センサ14は、鞍乗り型車両1の前方の周囲環境情報を検出する前方周囲環境センサ14fであり、実行部22は、ピッチ情報が、鞍乗り型車両1の前輪3が接地しており後輪4が離地しているストッピーが生じていることを示す情報である場合、ライダー支援動作を実行する。それにより、ストッピーが生じた際にライダー支援動作を実行することができる。ゆえに、ストッピーが生じた際に鞍乗り型車両1のライダーによる運転を適切に支援することができる。
【0086】
好ましくは、制御装置20において、ピッチ情報が、ストッピーが生じていることを示す情報である場合に実行されるライダー支援動作は、ライダーに対して警告を行う動作を含む。それにより、ライダーにストッピーが生じていることを認識させ、ストッピーを解消するための操作をライダーに促すことができる。
【0087】
好ましくは、制御装置20において、ピッチ情報が、ストッピーが生じていることを示す情報である場合に実行されるライダー支援動作は、鞍乗り型車両1の前輪3に生じている制動力を低下する動作を含む。それにより、ストッピーを解消することができる。
【0088】
好ましくは、制御装置20において、ピッチ情報が、ストッピーが生じていることを示す情報である場合に実行されるライダー支援動作は、外部装置に無線信号を送信する動作を含む。それにより、鞍乗り型車両1においてストッピーが生じていることに対応した適切な処理を、鞍乗り型車両1の周囲の他車両、又は、病院等のインフラストラクチャー等に行わせることができる。
【0089】
好ましくは、制御装置20において、周囲環境センサ14は、鞍乗り型車両1の後方の周囲環境情報を検出する後方周囲環境センサ14rであり、実行部22は、ピッチ情報が、鞍乗り型車両1の後輪4が接地しており前輪3が離地しているウィリーが生じていることを示すである場合、ライダー支援動作を実行する。それにより、ウィリーが生じた際にライダー支援動作を実行することができる。ゆえに、ウィリーが生じた際に鞍乗り型車両1のライダーによる運転を適切に支援することができる。
【0090】
好ましくは、制御装置20において、ピッチ情報が、ウィリーが生じていることを示す情報である場合に実行されるライダー支援動作は、ライダーに対して警告を行う動作を含む。それにより、ライダーにウィリーが生じていることを認識させ、ウィリーを解消するための操作をライダーに促すことができる。
【0091】
好ましくは、制御装置20において、ピッチ情報が、ウィリーが生じていることを示す情報である場合に実行されるライダー支援動作は、鞍乗り型車両1の後輪4に生じている駆動力を低下する動作を含む。それにより、ウィリーを解消することができる。
【0092】
好ましくは、制御装置20において、ピッチ情報が、ウィリーが生じていることを示す情報である場合に実行されるライダー支援動作は、鞍乗り型車両1の後輪4に制動力を生じさせる動作を含む。それにより、ウィリーを解消することができる。
【0093】
好ましくは、制御装置20において、ピッチ情報が、ウィリーが生じていることを示す情報である場合に実行されるライダー支援動作は、外部装置に無線信号を送信する動作を含む。それにより、鞍乗り型車両1においてウィリーが生じていることに対応した適切な処理を、鞍乗り型車両1の周囲の他車両、又は、病院等のインフラストラクチャー等に行わせることができる。
【0094】
好ましくは、制御装置20において、取得部21は、鞍乗り型車両1に搭載された慣性計測装置15の出力結果を取得し、慣性計測装置15の出力結果、及び、ピッチ情報に基づいて、道路の勾配情報を取得し、実行部22は、勾配情報に基づいて、ライダー支援動作を実行する。それにより、慣性計測装置15の出力結果、及び、ピッチ情報を用いることによって、道路の勾配情報を適切に取得することができる。ゆえに、勾配情報を用いたライダー支援動作を適切に実行することができる。
【0095】
好ましくは、制御装置20において、ライダー支援動作は、ピッチ情報に基づいて、周囲環境センサ14の検出対象範囲、及び、鞍乗り型車両1に搭載され上記の周囲環境センサ14(つまり、ピッチ情報の取得に用いられる周囲環境センサ14)とは異なる他の周囲環境センサ14の検出対象範囲の少なくとも一方を変化させる動作を含む。それにより、周囲環境センサ14の検出対象範囲を適正化できる。例えば、周囲環境センサ14の検出対象範囲に地面が入り込むことを抑制し、他車両を適切に検出できる。
【0096】
好ましくは、制御装置20において、ライダー支援動作は、ピッチ情報に基づいて、鞍乗り型車両1のサスペンション(上記の例では、フロントサスペンション6及びリアサスペンション8の少なくとも一方)を制御する動作を含む。それにより、鞍乗り型車両1の姿勢に応じて、適切にサスペンションを制御できる。
【0097】
好ましくは、制御装置20において、周囲環境センサ14は、超音波センサである。それにより、周囲環境センサ14の検出対象範囲内に地面が入り込んでいるか否かを、周囲環境センサ14の検出結果に含まれるノイズを考慮して適切に判断できる。ゆえに、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報を適切に取得できる。
【0098】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。
【0099】
なお、上記では、道路に対する鞍乗り型車両1のピッチ情報に基づいてライダー支援動作が実行される処理例として、第1処理、第2処理、第3処理、ピッチ情報に基づいて周囲環境センサ14の検出対象範囲を変化させる処理、及び、ピッチ情報に基づいて鞍乗り型車両1のサスペンションを制御する処理を説明した。これらの処理の全てが行われてもよく、これらの処理のうちの任意の一部のみが行われてもよい。
【0100】
また、上記では、ピッチ情報が、ストッピーが生じていることを示す情報である場合に実行されるライダー支援動作の各種の例を挙げたが、上記で挙げられた例の全てが行われてもよく、これらの例のうちの任意の一部のみが行われてもよい。
【0101】
また、上記では、ピッチ情報が、ウィリーが生じていることを示す情報である場合に実行されるライダー支援動作の各種の例を挙げたが、上記で挙げられた例の全てが行われてもよく、これらの例のうちの任意の一部のみが行われてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 鞍乗り型車両、2 ハンドル、3 前輪、4 後輪、5 フロントフォーク、6 フロントサスペンション、7 スイングアーム、8 リアサスペンション、10 ライダー支援システム、11 エンジン、12 液圧制御ユニット、13 表示装置、14 周囲環境センサ、14f 前方周囲環境センサ、14r 後方周囲環境センサ、15 慣性計測装置、20 制御装置、21 取得部、22 実行部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7