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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097274
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20240710BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20240710BHJP
   B62J 45/41 20200101ALI20240710BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B60W30/14
B62J45/00
B62J45/41
B60T7/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000745
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】山田 康夫
(72)【発明者】
【氏名】押田 裕樹
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241BA01
3D241BB21
3D241BC01
3D241CA12
3D241CC01
3D241CC08
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB16Z
3D241DB32Z
3D241DC45Z
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB33
3D246HA64A
3D246HB08A
(57)【要約】
【課題】本発明は、鞍乗り型車両の安全性及び快適性を向上させることができる制御装置及び制御方法を得るものである。
【解決手段】本発明に係る制御装置(20)及び制御方法では、制御装置(20)の実行部が、鞍乗り型車両(1)のライダーによる加減速操作によらずに鞍乗り型車両(1)に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を制御することによって鞍乗り型車両(1)の速度を自動で目標速度に近づける速度制御を実行し、さらに、制御装置(20)の取得部が、鞍乗り型車両(1)の進行方向における路面の勾配の変化に関する情報である勾配変化情報を取得し、実行部は、速度制御において、速度が目標速度に制御されている状態で、勾配変化情報に基づいて駆動力及び制動力の少なくとも一方を変化させる調整を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗り型車両(1)の挙動を制御する制御装置(20)であって、
前記鞍乗り型車両(1)のライダーによる加減速操作によらずに前記鞍乗り型車両(1)に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を制御することによって前記鞍乗り型車両(1)の速度を自動で目標速度に近づける速度制御を実行する実行部(22)を備え、
さらに、前記鞍乗り型車両(1)の進行方向における路面の勾配の変化に関する情報である勾配変化情報を取得する取得部(21)を備え、
前記実行部(22)は、前記速度制御において、前記速度が前記目標速度に制御されている状態で、前記勾配変化情報に基づいて前記駆動力及び前記制動力の少なくとも一方を変化させる調整を行う、
制御装置。
【請求項2】
前記実行部(22)は、前記速度制御において、前記勾配変化情報が、前記路面の勾配が減少することを示す情報である場合、前記速度が前記目標速度に制御されている状態で、前記鞍乗り型車両(1)に生じている前記駆動力を減少させる調整を行う、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記実行部(22)は、前記速度制御において、前記勾配変化情報が、前記路面の勾配が減少することを示す情報である場合、前記速度が前記目標速度に制御されている状態で、前記鞍乗り型車両(1)に生じている前記制動力を増加させる、又は、前記鞍乗り型車両(1)に前記制動力を生じさせる調整を行う、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記実行部(22)は、前記速度制御において、前記勾配変化情報が、前記路面の勾配が増加することを示す情報である場合、前記速度が前記目標速度に制御されている状態で、前記鞍乗り型車両(1)に生じている前記駆動力を増加させる、又は、前記鞍乗り型車両(1)に前記駆動力を生じさせる調整を行う、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記実行部(22)は、前記速度制御において、前記勾配変化情報が、前記路面の勾配が増加することを示す情報である場合、前記速度が前記目標速度に制御されている状態で、前記鞍乗り型車両(1)に生じている前記制動力を減少させる調整を行う、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記実行部(22)は、前記進行方向における前記路面の勾配の変化量に基づいて、前記調整における前記駆動力又は前記制動力の変化量を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記実行部(22)は、前記進行方向における前記路面の勾配の変化量に基づいて、前記調整における前記駆動力又は前記制動力の変化率を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記実行部(22)は、前記進行方向における前記路面の勾配の変化率に基づいて、前記調整における前記駆動力又は前記制動力の変化量を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記実行部(22)は、前記進行方向における前記路面の勾配の変化率に基づいて、前記調整における前記駆動力又は前記制動力の変化率を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
前記実行部(22)は、変化後の前記路面(3)の勾配に基づいて、前記調整における前記駆動力又は前記制動力の変化量を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
前記実行部(22)は、変化後の前記路面(3)の勾配に基づいて、前記調整における前記駆動力又は前記制動力の変化率を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項12】
前記実行部(22)は、前記路面の車線境界線の撮像データに基づいて、前記勾配変化情報を取得する、
請求項1~11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記実行部(22)は、前記鞍乗り型車両(1)の測位データに基づいて、前記勾配変化情報を取得する、
請求項1~11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
鞍乗り型車両(1)の挙動を制御する制御方法であって、
制御装置(20)の実行部(22)が、前記鞍乗り型車両(1)のライダーによる加減速操作によらずに前記鞍乗り型車両(1)に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を制御することによって前記鞍乗り型車両(1)の速度を自動で目標速度に近づける速度制御を実行し、
さらに、前記制御装置(20)の取得部(21)が、前記鞍乗り型車両(1)の進行方向における路面の勾配の変化に関する情報である勾配変化情報を取得し、
前記実行部(22)は、前記速度制御において、前記速度が前記目標速度に制御されている状態で、前記勾配変化情報に基づいて前記駆動力及び前記制動力の少なくとも一方を変化させる調整を行う、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、鞍乗り型車両の安全性及び快適性を向上させることができる制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータサイクル等の鞍乗り型車両のライダーによる運転を支援する種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1では、走行方向又は実質的に走行方向にある障害物を検出するセンサ装置により検出された情報に基づいて、不適切に障害物に接近していることをモータサイクルのライダーへ警告する運転者支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-116882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の運転を支援するための技術として、運転者による加減速操作によらずに車両に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を制御することによって車両の速度を自動で目標速度に近づける速度制御がある。鞍乗り型車両の速度を自動で目標速度に維持できるようにするために、上記の速度制御を鞍乗り型車両に適用することが考えられる。しかしながら、上記の速度制御が実行されている場合においても、路面の勾配が変化する箇所では、重力の影響によって鞍乗り型車両の速度が目標速度から一時的に乖離するおそれがある。ここで、鞍乗り型車両の姿勢は、四輪の自動車等と比べて不安定であるので、鞍乗り型車両の速度の一時的な変化は、安全性及び快適性を損ねる要因となりやすい。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、鞍乗り型車両の安全性及び快適性を向上させることができる制御装置及び制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、鞍乗り型車両の挙動を制御する制御装置であって、前記鞍乗り型車両のライダーによる加減速操作によらずに前記鞍乗り型車両に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を制御することによって前記鞍乗り型車両の速度を自動で目標速度に近づける速度制御を実行する実行部を備え、さらに、前記鞍乗り型車両の進行方向における路面の勾配の変化に関する情報である勾配変化情報を取得する取得部を備え、前記実行部は、前記速度制御において、前記速度が前記目標速度に制御されている状態で、前記勾配変化情報に基づいて前記駆動力及び前記制動力の少なくとも一方を変化させる調整を行う。
【0007】
本発明に係る制御方法は、鞍乗り型車両の挙動を制御する制御方法であって、制御装置の実行部が、前記鞍乗り型車両のライダーによる加減速操作によらずに前記鞍乗り型車両に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を制御することによって前記鞍乗り型車両の速度を自動で目標速度に近づける速度制御を実行し、さらに、前記制御装置の取得部が、前記鞍乗り型車両の進行方向における路面の勾配の変化に関する情報である勾配変化情報を取得し、前記実行部は、前記速度制御において、前記速度が前記目標速度に制御されている状態で、前記勾配変化情報に基づいて前記駆動力及び前記制動力の少なくとも一方を変化させる調整を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、制御装置の実行部が、鞍乗り型車両のライダーによる加減速操作によらずに鞍乗り型車両に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を制御することによって鞍乗り型車両の速度を自動で目標速度に近づける速度制御を実行し、さらに、制御装置の取得部が、鞍乗り型車両の進行方向における路面の勾配の変化に関する情報である勾配変化情報を取得し、実行部は、速度制御において、速度が目標速度に制御されている状態で、勾配変化情報に基づいて駆動力及び制動力の少なくとも一方を変化させる調整を行う。それにより、速度制御の実行中に、路面の勾配が変化する箇所において、重力の影響によって鞍乗り型車両の速度が目標速度から一時的に乖離することを抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両の安全性及び快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両の前方において路面の勾配が減少している様子を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両の前方において路面の勾配が増加している様子を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両の前方の勾配変化箇所において勾配が緩やかに変化している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る制御装置及び制御方法について、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、二輪のモータサイクルに用いられる制御装置について説明しているが(図1中の鞍乗り型車両1を参照)、本発明に係る制御装置の制御対象となる車両は、二輪のモータサイクル以外の他の鞍乗り型車両であってもよい。鞍乗り型車両は、ライダーが跨って乗車する車両を意味する。鞍乗り型車両には、例えば、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、自転車等が含まれる。モータサイクルには、エンジンを動力源とする車両、電気モータを動力源とする車両等が含まれる。モータサイクルには、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な車両を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0012】
また、以下では、駆動輪を駆動するための動力を出力可能な駆動源としてエンジン(具体的には、後述される図1中のエンジン11)が搭載されている場合を説明しているが、駆動源としてエンジン以外の他の駆動源(例えば、電気モータ)が搭載されていてもよく、複数の駆動源が搭載されていてもよい。
【0013】
また、以下では、車輪に生じる制動力の制御ユニットとして、ブレーキ液の液圧を制御する制御ユニット(具体的には、後述される図1中の液圧制御ユニット12)が採用される場合を説明しているが、車輪に生じる制動力の制御ユニットとして、車輪の制動部自体の位置を電気的信号によって制御する制御ユニット(いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ)が採用されてもよい。
【0014】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
【0015】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0016】
<鞍乗り型車両の構成>
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る鞍乗り型車両1の構成について説明する。
【0017】
図1は、鞍乗り型車両1の概略構成を示す模式図である。鞍乗り型車両1は、本発明に係る鞍乗り型車両の一例に相当する二輪のモータサイクルである。鞍乗り型車両1は、図1に示されるように、エンジン11と、液圧制御ユニット12と、入力装置13と、周囲環境センサ14と、慣性計測装置(IMU)15と、前輪車輪速センサ16と、後輪車輪速センサ17と、制御装置(ECU)20とを備える。
【0018】
エンジン11は、鞍乗り型車両1の駆動源の一例に相当し、駆動輪(具体的には、後輪)を駆動するための動力を出力可能である。例えば、エンジン11には、内部に燃焼室が形成される1又は複数の気筒と、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、点火プラグとが設けられている。燃料噴射弁から燃料が噴射されることにより燃焼室内に空気及び燃料を含む混合気が形成され、当該混合気が点火プラグにより点火されて燃焼する。それにより、気筒内に設けられたピストンが往復運動し、クランクシャフトが回転するようになっている。また、エンジン11の吸気管には、スロットル弁が設けられており、スロットル弁の開度であるスロットル開度に応じて燃焼室への吸気量が変化するようになっている。
【0019】
液圧制御ユニット12は、車輪に生じる制動力を制御する機能を担うユニットである。例えば、液圧制御ユニット12は、マスタシリンダとホイールシリンダとを接続する油路上に設けられ、ホイールシリンダのブレーキ液圧を制御するためのコンポーネント(例えば、制御弁及びポンプ)を含む。液圧制御ユニット12のコンポーネントの動作が制御されることによって、車輪に生じる制動力が制御される。なお、液圧制御ユニット12は、前輪及び後輪の双方に生じる制動力をそれぞれ制御するものであってもよく、前輪及び後輪の一方に生じる制動力のみを制御するものであってもよい。
【0020】
入力装置13は、ライダーによる各種操作を受け付ける。入力装置13は、例えば、ハンドルに設けられ、ライダーの操作に利用される押しボタン等を含む。入力装置13を用いたライダーの操作に関する情報は、制御装置20に出力される。
【0021】
周囲環境センサ14は、鞍乗り型車両1の周囲の環境に関する周囲環境情報を検出する。具体的には、周囲環境センサ14は、鞍乗り型車両1の前部に設けられており、鞍乗り型車両1の前方の周囲環境情報を検出する。周囲環境センサ14により検出された周囲環境情報は、制御装置20に出力される。
【0022】
周囲環境センサ14により検出される周囲環境情報は、鞍乗り型車両1の周辺に位置する被検体までの距離又は方位に関連する情報(例えば、相対位置、相対距離、相対速度、相対加速度等)であってもよく、また、鞍乗り型車両1の周辺に位置する被検体の特徴(例えば、被検体の種別、被検体自体の形状、被検体に付されているマーク等)であってもよい。周囲環境センサ14は、例えば、レーダー、Lidarセンサ、超音波センサ、カメラ等である。
【0023】
なお、周囲環境情報は、他車両に搭載される周囲環境センサ、又は、インフラストラクチャ設備によっても検出され得る。つまり、制御装置20は、他車両又はインフラストラクチャ設備との無線通信を介して、周囲環境情報を取得することもできる。
【0024】
慣性計測装置15は、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサを備えており、鞍乗り型車両1の姿勢を検出する。慣性計測装置15は、例えば、鞍乗り型車両1の胴体に設けられている。例えば、慣性計測装置15は、水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角を検出し、検出結果を出力する。慣性計測装置15が、水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。ピッチ角は、鞍乗り型車両1の車体(具体的には、胴体)の縦方向の傾きを表す角度に相当する。よって、水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角は、車両左右方向の軸を中心とする回転方向であるピッチ方向において、鞍乗り型車両1の車体が水平方向に対してどの程度回転したかを表す角度に相当する。慣性計測装置15が、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサの一部のみを備えていてもよい。
【0025】
前輪車輪速センサ16は、前輪の車輪速(例えば、前輪の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。前輪車輪速センサ16が、前輪の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。前輪車輪速センサ16は、前輪に設けられている。
【0026】
後輪車輪速センサ17は、後輪の車輪速(例えば、後輪の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。後輪車輪速センサ17が、後輪の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。後輪車輪速センサ17は、後輪に設けられている。
【0027】
制御装置20は、鞍乗り型車両1の挙動を制御する。例えば、制御装置20の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置20の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置20は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0028】
制御装置20は、図2に示されるように、例えば、取得部21と、実行部22とを備える。制御装置20は、鞍乗り型車両1の各装置(例えば、エンジン11、液圧制御ユニット12、入力装置13、周囲環境センサ14、慣性計測装置15、前輪車輪速センサ16及び後輪車輪速センサ17)と通信する。また、制御装置20は、鞍乗り型車両1の各装置(例えば、エンジン11及び液圧制御ユニット12)の動作を制御することができる。
【0029】
取得部21は、鞍乗り型車両1の各装置から情報を取得し、実行部22へ出力する。例えば、取得部21は、入力装置13、周囲環境センサ14、慣性計測装置15、前輪車輪速センサ16及び後輪車輪速センサ17から情報を取得する。なお、本明細書において、情報の取得には、情報の抽出又は生成(例えば、演算)等が含まれ得る。
【0030】
実行部22は、鞍乗り型車両1の各装置の動作を制御することによって、各種制御を実行する。実行部22は、例えば、エンジン11及び液圧制御ユニット12の動作を制御する。
【0031】
ここで、実行部22は、鞍乗り型車両1のライダーによる加減速操作によらずに鞍乗り型車両1の速度を自動で目標速度に近づける速度制御を実行することができる。具体的には、実行部22は、速度制御において、鞍乗り型車両1に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を制御することによって鞍乗り型車両1の速度を自動で制御する。例えば、鞍乗り型車両1では、ライダーが、入力装置13を操作することによって、速度制御が実行されるモードと、速度制御が実行されないモードとを選択できるようになっている。
【0032】
上記の速度制御としては、例えば、クルーズコントロールモードと呼ばれる制御が挙げられる。クルーズコントロールモードでは、目標速度が予め設定されており、実行部22は、鞍乗り型車両1の速度が目標速度より高い場合には鞍乗り型車両1を減速させ、鞍乗り型車両1の速度が目標速度より低い場合には鞍乗り型車両1を加速させる。それにより、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に近づくように制御される。例えば、実行部22は、前輪の車輪速、及び、後輪の車輪速に基づいて取得される鞍乗り型車両1の速度の値を監視することによって、鞍乗り型車両1の速度を上記のように制御することができる。
【0033】
また、上記の速度制御としては、例えば、アダプティブクルーズコントロールモードと呼ばれる制御が挙げられる。アダプティブクルーズコントロールモードでは、鞍乗り型車両1の速度は、目標速度に近づくように制御されるのみならず、鞍乗り型車両1と、鞍乗り型車両1に対して前方に位置する前方車両との位置関係が調整されるようにも制御され得る。例えば、実行部22は、アダプティブクルーズコントロールモードにおいて、前方車両が周囲環境センサ14により検出されている場合、鞍乗り型車両1と前方車両との車間距離が目標車間距離に維持されるように、鞍乗り型車両1の速度を制御する。なお、アダプティブクルーズコントロールモードにおいて、通過時間差(具体的には、現時点から鞍乗り型車両1が前方車両の現在位置を通過するまでにかかる時間)が目標通過時間差に維持されるように、鞍乗り型車両1の速度が制御されてもよい。
【0034】
<制御装置の動作>
図3図6を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置20の動作について説明する。
【0035】
図3は、制御装置20が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3に示される制御フローは、例えば、速度制御が実行されるモードが選択されており、速度制御が実行されている場合に実行される。図3におけるステップS101は、図3に示される制御フローの開始に対応する。
【0036】
図3に示される制御フローが開始されると、ステップS102において、実行部22は、勾配変化情報が、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少することを示す情報であるか否かを判定する。なお、路面の勾配は、路面の傾斜が進行方向に対して鉛直上側に向くほど大きく、路面の傾斜が進行方向に対して鉛直下側に向くほど小さくなる。つまり、路面の勾配は、例えば、進行方向に対して鉛直上方向を正方向とし、進行方向に対して鉛直下方向を負方向とする値によって表現され得る。
【0037】
勾配変化情報は、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配の変化に関する情報である。なお、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配の変化は、鞍乗り型車両1が現在位置する地点の勾配に対する当該地点よりも前方の地点の勾配の変化を意味してもよく、鞍乗り型車両1の現在位置の近傍の地点の勾配に対する当該地点よりも前方の地点の勾配の変化を意味してもよい。
【0038】
勾配変化情報は、取得部21によって取得される。例えば、周囲環境センサ14としてカメラが用いられる場合、取得部21は、当該カメラにより撮像される画像に対して画像認識処理を施すことによって、勾配変化情報を取得することができる。例えば、取得部21は、カメラにより撮像される画像に映る路面の車線境界線(例えば、レーンの両側の白線)の撮像データに基づいて、勾配変化情報を取得できる。具体的には、取得部21は、カメラにより撮像される画像における車線境界線の曲がり具合に基づいて、鞍乗り型車両1が現在位置している路面の勾配と比べ、当該路面と進行方向に接続されている路面の勾配が減少しているか増加しているかを示す情報を勾配変化情報として取得できる。
【0039】
図4は、鞍乗り型車両1の前方において路面の勾配が減少している様子を示す図である。図4では、鞍乗り型車両1の現在の位置が実線によって示されており、鞍乗り型車両1の将来の位置が二点鎖線によって示されている。図4の例では、鞍乗り型車両1が現在位置している路面2は平坦路であり、路面2と進行方向に接続されている路面3は、降坂路である。路面2と路面3との接続箇所が、勾配変化箇所4に相当する。鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配は、勾配変化箇所4において減少している。よって、勾配変化情報として、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少することを示す情報が取得される。
【0040】
図5は、鞍乗り型車両1の前方において路面の勾配が増加している様子を示す図である。図5では、図4と同様に、鞍乗り型車両1の現在の位置が実線によって示されており、鞍乗り型車両1の将来の位置が二点鎖線によって示されている。図5の例では、鞍乗り型車両1が現在位置している路面2は平坦路であり、路面2と進行方向に接続されている路面3は、登坂路である。路面2と路面3との接続箇所が、勾配変化箇所4に相当する。鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配は、勾配変化箇所4において増加している。よって、勾配変化情報として、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加することを示す情報が取得される。
【0041】
なお、取得部21は、上記の方法以外の他の方法によって勾配変化情報を取得してもよい。例えば、取得部21は、鞍乗り型車両1の測位データに基づいて、勾配変化情報を取得してもよい。具体的には、取得部21は、ナビゲーション装置等を用いて、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される情報に基づいて、鞍乗り型車両1の位置情報(つまり、測位データ)を取得できる。そして、取得部21は、このように得られる鞍乗り型車両1の測位データと、ナビゲーション装置等から取得される地図データとを照合することによって、鞍乗り型車両1が現在位置している路面の勾配と比べ、当該路面と進行方向に接続されている路面の勾配が減少しているか増加しているかを示す情報を勾配変化情報として取得できる。
【0042】
上記では、勾配変化情報が、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少しているか増加しているかを示す情報である例について説明した。ただし、勾配変化情報は、後述されるように、進行方向における路面の勾配の変化量、進行方向における路面の勾配の変化率、及び、変化後の路面の勾配等も含み得る。
【0043】
図3の制御フローにおいて、勾配変化情報が、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少することを示す情報であると判定された場合(ステップS102/YES)、ステップS103に進む。一方、勾配変化情報が、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少することを示す情報ではないと判定された場合(ステップS102/NO)、ステップS105に進む。
【0044】
ステップS102でYESと判定された場合、ステップS103において、実行部22は、鞍乗り型車両1が勾配変化箇所4に到達したか否かを判定する。例えば、実行部22は、鞍乗り型車両1の位置情報及び地図データに基づいて、鞍乗り型車両1が勾配変化箇所4に到達したか否かを判定できる。
【0045】
後述されるように、ステップS103でYESと判定された場合、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を変化させる調整(具体的には、後述される第1調整)が実行される。ここで、ステップS103において、実行部22は、詳細には、鞍乗り型車両1が勾配変化箇所4の直前の地点に到達したか否かを判定する。それにより、後述されるように、勾配変化が生じる箇所において、鞍乗り型車両1に作用する駆動力又は制動力が予測的に調整され、鞍乗り型車両1の速度の変化が抑制される。勾配変化箇所4の直前の地点と、勾配変化箇所4との間の距離は、例えば、上記の調整において調整される駆動力又は制動力の応答遅れを加味して設定され得る。
【0046】
鞍乗り型車両1が勾配変化箇所4に到達していないと判定された場合(ステップS103/NO)、ステップS103が繰り返される。一方、鞍乗り型車両1が勾配変化箇所4に到達したと判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS104に進む。
【0047】
ステップS103でYESと判定された場合、ステップS104において、実行部22は、第1調整を行い、ステップS102に戻る。第1調整は、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を変化させる調整である。特に、第1調整は、このような調整のうち、勾配変化情報が、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少することを示す情報である場合に行われる調整である。
【0048】
実行部22は、例えば、第1調整として、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を減少させる調整を行う。例えば、実行部22は、エンジン11の出力を減少させることによって、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を減少させる調整を行うことができる。具体的には、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を減少させる調整は、勾配変化が生じる箇所において、鞍乗り型車両1の速度の変化が抑制されるように、予測的に調整される。
【0049】
また、実行部22は、例えば、第1調整として、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に生じている制動力を増加させる、又は、鞍乗り型車両1に制動力を生じさせる調整を行う。例えば、実行部22は、鞍乗り型車両1に制動力が作用している場合において、液圧制御ユニット12の動作を制御することによって、鞍乗り型車両1に生じている制動力を増加させる調整を行うことができる。また、例えば、実行部22は、鞍乗り型車両1に制動力が作用していない場合において、液圧制御ユニット12の動作を制御することによって、鞍乗り型車両1に制動力を生じさせる調整を行うことができる。具体的には、鞍乗り型車両1に生じている制動力を増加させる、又は、鞍乗り型車両1に制動力を生じさせる調整は、勾配変化が生じる箇所において、鞍乗り型車両1の速度の変化が抑制されるように、予測的に調整される。
【0050】
例えば、図4の例では、鞍乗り型車両1が平坦路である路面2を走行している間、鞍乗り型車両1の速度は、基本的には目標速度に維持されている。ここで、路面の勾配が減少する勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、仮に第1調整が行われない場合、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に上昇するおそれがある。一方、図3の制御フローでは、路面の勾配が減少する勾配変化箇所4において、第1調整が行われるので、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に上昇することを抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性を向上させることができる。
【0051】
なお、上記では、第1調整の例として、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を減少させる調整と、鞍乗り型車両1に生じている制動力を増加させる、又は、鞍乗り型車両1に制動力を生じさせる調整の2種類の調整を説明した。ただし、第1調整として、上記の2種類の調整のうちの一方のみが行われてもよく、両方が行われてもよい。
【0052】
上記では、ステップS102でYESと判定された場合について説明した。以下、ステップS102でNOと判定された場合について説明する。
【0053】
ステップS102でNOと判定された場合、ステップS105において、実行部22は、勾配変化情報が、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加することを示す情報であるか否かを判定する。
【0054】
勾配変化情報が、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加することを示す情報であると判定された場合(ステップS105/YES)、ステップS106に進む。一方、勾配変化情報が、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加することを示す情報ではないと判定された場合(ステップS105/NO)、ステップS102に戻る。
【0055】
ステップS105でYESと判定された場合、ステップS106において、実行部22は、鞍乗り型車両1が勾配変化箇所4に到達したか否かを判定する。ステップS106の処理は、上述したステップS103の処理と同様である。なお、ステップS106において、上述したステップS103と同様に、実行部22は、詳細には、鞍乗り型車両1が勾配変化箇所4の直前の地点に到達したか否かを判定してもよい。
【0056】
鞍乗り型車両1が勾配変化箇所4に到達していないと判定された場合(ステップS106/NO)、ステップS106が繰り返される。一方、鞍乗り型車両1が勾配変化箇所4に到達したと判定された場合(ステップS106/YES)、ステップS107に進む。
【0057】
ステップS106でYESと判定された場合、ステップS107において、実行部22は、第2調整を行い、ステップS102に戻る。第2調整は、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を変化させる調整である。特に、第2調整は、このような調整のうち、勾配変化情報が、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加することを示す情報である場合に行われる調整である。
【0058】
例えば、実行部22は、第2調整として、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を増加させる、又は、鞍乗り型車両1に駆動力を生じさせる調整を行う。例えば、実行部22は、鞍乗り型車両1に駆動力が作用している場合において、エンジン11の出力を増加させることによって、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を増加させる調整を行うことができる。また、例えば、実行部22は、鞍乗り型車両1に駆動力が作用していない場合において、エンジン11を始動させることによって、鞍乗り型車両1に駆動力を生じさせる調整を行うことができる。具体的には、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を増加させる、又は、鞍乗り型車両1に駆動力を生じさせる調整は、勾配変化が生じる箇所において、鞍乗り型車両1の速度の変化が抑制されるように、予測的に調整される。
【0059】
また、例えば、実行部22は、第2調整として、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に生じている制動力を減少させる調整を行う。例えば、実行部22は、液圧制御ユニット12の動作を制御することによって、鞍乗り型車両1に生じている制動力を減少させる調整を行うことができる。具体的には、鞍乗り型車両1に生じている制動力を減少させる調整は、勾配変化が生じる箇所において、鞍乗り型車両1の速度の変化が抑制されるように、予測的に調整される。
【0060】
例えば、図5の例では、鞍乗り型車両1が平坦路である路面2を走行している間、鞍乗り型車両1の速度は、基本的には目標速度に維持されている。ここで、路面の勾配が増加する勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、仮に第2調整が行われない場合、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に低下するおそれがある。一方、図3の制御フローでは、路面の勾配が減少する勾配変化箇所4において、第2調整が行われるので、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に低下することを抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性を向上させることができる。
【0061】
なお、上記では、第2調整の例として、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を増加させる、又は、鞍乗り型車両1に駆動力を生じさせる調整と、鞍乗り型車両1に生じている制動力を減少させる調整の2種類の調整を説明した。ただし、第2調整として、上記の2種類の調整のうちの一方のみが行われてもよく、両方が行われてもよい。
【0062】
以上説明したように、実行部22は、速度制御において、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、勾配変化情報に基づいて鞍乗り型車両1に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を変化させる調整(上記の例では、第1調整及び第2調整)を行う。それにより、速度制御の実行中に、路面の勾配が変化する箇所(例えば、図4又は図5の勾配変化箇所4)において、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に乖離することを抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性を向上させることができる。なお、理想的には、速度制御によって、鞍乗り型車両1に生じる駆動力が、走行抵抗と重力の進行方向成分の合力と釣り合うようにすることで、鞍乗り型車両1の速度を変化させずに維持することができる。
【0063】
なお、上記では、勾配変化情報に基づいて鞍乗り型車両1に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を変化させる調整として、第1調整及び第2調整が行われる例を説明した。ただし、勾配変化情報に基づいて鞍乗り型車両1に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を変化させる調整として、第1調整及び第2調整の一方のみが行われてもよい。
【0064】
ここで、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性をより適切に向上させる観点では、上記の調整(具体的には、第1調整又は第2調整)において、駆動力又は制動力の変化量、及び、駆動力又は制動力の変化率の少なくとも一方を勾配変化情報に基づいて変化させることが好ましい。ただし、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量、及び、駆動力又は制動力の変化率は、一定であってもよい。
【0065】
なお、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量は、上記の調整によって駆動力又は制動力がどの程度変化するかを表す量(つまり、変化幅)に相当する。また、上記の調整における駆動力又は制動力の変化率は、上記の調整における駆動力又は制動力の単位時間当たりの変化量(つまり、変化速度)に相当する。
【0066】
例えば、実行部22は、進行方向における路面の勾配の変化量に基づいて、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量を変化させてもよい。また、実行部22は、進行方向における路面の勾配の変化量に基づいて、上記の調整における駆動力又は制動力の変化率を変化させてもよい。
【0067】
進行方向における路面の勾配の変化量は、勾配変化箇所4の前後における路面の勾配の変化量である。例えば、図4の例、又は、図5の例では、路面2の勾配と、路面3の勾配との差が、進行方向における路面の勾配の変化量に相当する。例えば、周囲環境センサ14としてカメラが用いられる場合、取得部21は、当該カメラにより撮像される画像に対して画像認識処理を施すことによって、進行方向における路面の勾配の変化量を勾配変化情報として取得することができる。例えば、取得部21は、カメラにより撮像される画像における路面2の車線境界線の曲がり具合と、路面3の車線境界線の曲がり具合との比較結果に基づいて、進行方向における路面の勾配の変化量を取得できる。
【0068】
なお、取得部21は、上記の方法以外の他の方法によって進行方向における路面の勾配の変化量を取得してもよい。例えば、取得部21は、鞍乗り型車両1の測位データと、ナビゲーション装置等から取得される地図データとを照合することによって、進行方向における路面の勾配の変化量を勾配変化情報として取得してもよい。
【0069】
実行部22は、例えば、進行方向における路面の勾配の変化量が大きいほど、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量を大きくしてもよい。また、実行部22は、例えば、進行方向における路面の勾配の変化量が大きいほど、上記の調整における駆動力又は制動力の変化率を大きくしてもよい。
【0070】
また、例えば、実行部22は、進行方向における路面の勾配の変化率に基づいて、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量を変化させてもよい。また、実行部22は、進行方向における路面の勾配の変化率に基づいて、上記の調整における駆動力又は制動力の変化率を変化させてもよい。
【0071】
図6は、鞍乗り型車両1の前方の勾配変化箇所4において勾配が緩やかに変化している様子を示す図である。図6では、図4と同様に、鞍乗り型車両1の走行する路面が、平坦路である路面2から降坂路である路面3に変化する場合が示されている。ただし、図5と同様に、鞍乗り型車両1の走行する路面が、平坦路である路面2から登坂路である路面3に変化する場合に、勾配変化箇所4において勾配が緩やかに変化していてもよい。
【0072】
進行方向における路面の勾配の変化率は、勾配の変化が開始してから終了するまでにおける勾配の変化率である。例えば、図6の例では、勾配変化箇所4はある曲率半径を有する形状を有しており、勾配変化箇所4の曲率が、進行方向における路面の勾配の変化率に相当する。例えば、周囲環境センサ14としてカメラが用いられる場合、取得部21は、当該カメラにより撮像される画像に対して画像認識処理を施すことによって、進行方向における路面の勾配の変化率を勾配変化情報として取得することができる。例えば、取得部21は、カメラにより撮像される画像における勾配変化箇所4の車線境界線の曲がり具合に基づいて、勾配変化箇所4の曲率を進行方向における路面の勾配の変化率として取得できる。
【0073】
なお、取得部21は、上記の方法以外の他の方法によって進行方向における路面の勾配の変化率を取得してもよい。例えば、取得部21は、鞍乗り型車両1の測位データと、ナビゲーション装置等から取得される地図データとを照合することによって、進行方向における路面の勾配の変化率を勾配変化情報として取得してもよい。
【0074】
実行部22は、例えば、進行方向における路面の勾配の変化率が大きいほど、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量を大きくしてもよい。また、実行部22は、例えば、進行方向における路面の勾配の変化率が大きいほど、上記の調整における駆動力又は制動力の変化率を大きくしてもよい。
【0075】
また、例えば、実行部22は、変化後の路面の勾配に基づいて、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量を変化させてもよい。また、実行部22は、変化後の路面の勾配に基づいて、上記の調整における駆動力又は制動力の変化率を変化させてもよい。
【0076】
図4の例、又は、図5の例では、路面3の勾配が、変化後の路面の勾配に相当する。例えば、取得部21は、進行方向における路面の勾配の変化量と、慣性計測装置15により得られる水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角とに基づいて、変化後の路面の勾配を勾配変化情報として取得することができる。例えば、図4の例、又は、図5の例では、慣性計測装置15により得られる水平方向に対する鞍乗り型車両1のピッチ角は、路面2の勾配とみなせる。また、取得部21は、路面2の勾配と路面3の勾配との差を、進行方向における路面の勾配の変化量として取得できる。ゆえに、取得部21は、これらの情報を用いて路面3の勾配を勾配変化情報として取得することができる。
【0077】
なお、取得部21は、上記の方法以外の他の方法によって変化後の路面の勾配を取得してもよい。例えば、取得部21は、鞍乗り型車両1の測位データと、ナビゲーション装置等から取得される地図データとを照合することによって、変化後の路面の勾配を勾配変化情報として取得してもよい。
【0078】
実行部22は、例えば、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少する場合に行われる第1調整において、変化後の路面の勾配が小さいほど、駆動力又は制動力の変化量を大きくしてもよい。一方、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加する場合に行われる第2調整において、変化後の路面の勾配が大きいほど、駆動力又は制動力の変化量を大きくしてもよい。また、実行部22は、例えば、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少する場合に行われる第1調整において、変化後の路面の勾配が小さいほど、駆動力又は制動力の変化率を大きくしてもよい。一方、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加する場合に行われる第2調整において、変化後の路面の勾配が大きいほど、駆動力又は制動力の変化率を大きくしてもよい。
【0079】
なお、上記では、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量又は変化率を変化させる処理に用いられる勾配変化情報として、進行方向における路面の勾配の変化量、進行方向における路面の勾配の変化率、及び、変化後の路面の勾配の3種類の情報を説明した。ただし、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量又は変化率を変化させる処理において、これらの3種類の情報のうちの任意の複数種類の情報が併用されてもよい。また、上記の調整における駆動力又は制動力の変化量又は変化率を変化させる処理において、これらの3種類の情報以外の情報が用いられてもよい。また、駆動力又は制動力の変化量を変化させる処理、及び、駆動力又は制動力の変化率を変化させる処理の両方が行われてもよく、一方のみが行われてもよい。
【0080】
また、上記では、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少する場合の例として図4の例を説明した。図4の例では、鞍乗り型車両1の走行する路面が、平坦路である路面2から降坂路である路面3に変化する。ただし、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少する場合は、この例に限定されない。例えば、鞍乗り型車両1の走行する路面が、登坂路から平坦路、降坂路、又は、当該登坂路よりも勾配が小さい登坂路に変化する場合も、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少する場合に該当する。また、例えば、鞍乗り型車両1の走行する路面が、降坂路から当該降坂路よりも勾配が小さい降坂路に変化する場合も、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が減少する場合に該当する。
【0081】
また、上記では、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加する場合の例として図5の例を説明した。図5の例では、鞍乗り型車両1の走行する路面が、平坦路である路面2から登坂路である路面3に変化する。ただし、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加する場合は、この例に限定されない。例えば、鞍乗り型車両1の走行する路面が、降坂路から平坦路、登坂路、又は、当該降坂路よりも勾配が大きい降坂路に変化する場合も、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加する場合に該当する。また、例えば、鞍乗り型車両1の走行する路面が、登坂路から当該登坂路よりも勾配が大きい登坂路に変化する場合も、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配が増加する場合に該当する。
【0082】
<制御装置の効果>
本発明の実施形態に係る制御装置20の効果について説明する。
【0083】
制御装置20は、鞍乗り型車両1のライダーによる加減速操作によらずに鞍乗り型車両1に作用する駆動力及び制動力の少なくとも一方を制御することによって鞍乗り型車両1の速度を自動で目標速度に近づける速度制御を実行する実行部22を備え、さらに、鞍乗り型車両1の進行方向における路面の勾配の変化に関する情報である勾配変化情報を取得する取得部21を備える。そして、実行部22は、速度制御において、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、勾配変化情報に基づいて駆動力及び制動力の少なくとも一方を変化させる調整(上記の例では、第1調整及び第2調整)を行う。それにより、速度制御の実行中に、路面の勾配が変化する箇所(例えば、図4又は図5の勾配変化箇所4)において、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に乖離することを抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性を向上させることができる。
【0084】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、速度制御において、勾配変化情報が、路面の勾配が減少することを示す情報である場合、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を減少させる調整(例えば、上記の第1調整)を行う。それにより、路面の勾配が減少する勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に上昇することを抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性を向上させることが適切に実現される。
【0085】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、速度制御において、勾配変化情報が、路面の勾配が減少することを示す情報である場合、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に生じている制動力を増加させる、又は、鞍乗り型車両1に制動力を生じさせる調整(例えば、上記の第1調整)を行う。それにより、路面の勾配が減少する勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に上昇することを抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性を向上させることが適切に実現される。
【0086】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、速度制御において、勾配変化情報が、路面の勾配が増加することを示す情報である場合、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に生じている駆動力を増加させる、又は、鞍乗り型車両1に駆動力を生じさせる調整(例えば、上記の第2調整)を行う。それにより、路面の勾配が増加する勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に低下することを抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性を向上させることが適切に実現される。
【0087】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、速度制御において、勾配変化情報が、路面の勾配が増加することを示す情報である場合、鞍乗り型車両1の速度が目標速度に制御されている状態で、鞍乗り型車両1に生じている制動力を減少させる調整(例えば、上記の第2調整)を行う。それにより、路面の勾配が増加する勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に低下することを抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性を向上させることが適切に実現される。
【0088】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、進行方向における路面の勾配の変化量に基づいて、調整(例えば、上記の第1調整及び第2調整の少なくとも一方)における駆動力又は制動力の変化量を変化させる。それにより、調整における駆動力又は制動力の変化量を、進行方向における路面の勾配の変化量に応じて適正化できるので、勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に乖離することをより適切に抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性をより適切に向上させることができる。
【0089】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、進行方向における路面の勾配の変化量に基づいて、調整(例えば、上記の第1調整及び第2調整の少なくとも一方)における駆動力又は制動力の変化率を変化させる。それにより、調整における駆動力又は制動力の変化率を、進行方向における路面の勾配の変化量に応じて適正化できるので、勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に乖離することをより適切に抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性をより適切に向上させることができる。
【0090】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、進行方向における路面の勾配の変化率に基づいて、調整(例えば、上記の第1調整及び第2調整の少なくとも一方)における駆動力又は制動力の変化量を変化させる。それにより、調整における駆動力又は制動力の変化量を、進行方向における路面の勾配の変化率に応じて適正化できるので、勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に乖離することをより適切に抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性をより適切に向上させることができる。
【0091】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、進行方向における路面の勾配の変化率に基づいて、調整(例えば、上記の第1調整及び第2調整の少なくとも一方)における駆動力又は制動力の変化率を変化させる。それにより、調整における駆動力又は制動力の変化率を、進行方向における路面の勾配の変化率に応じて適正化できるので、勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に乖離することをより適切に抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性をより適切に向上させることができる。
【0092】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、変化後の路面(例えば、図4の例、又は、図5の例の路面3)の勾配に基づいて、調整(例えば、上記の第1調整及び第2調整の少なくとも一方)における駆動力又は制動力の変化量を変化させる。それにより、調整における駆動力又は制動力の変化量を、変化後の路面の勾配に応じて適正化できるので、勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に乖離することをより適切に抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性をより適切に向上させることができる。
【0093】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、変化後の路面(例えば、図4の例、又は、図5の例の路面3)の勾配に基づいて、調整(例えば、上記の第1調整及び第2調整の少なくとも一方)における駆動力又は制動力の変化率を変化させる。それにより、調整における駆動力又は制動力の変化率を、変化後の路面の勾配に応じて適正化できるので、勾配変化箇所4を鞍乗り型車両1が通過する際に、重力の影響によって鞍乗り型車両1の速度が目標速度から一時的に乖離することをより適切に抑制できる。ゆえに、鞍乗り型車両1の安全性及び快適性をより適切に向上させることができる。
【0094】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、路面の車線境界線の撮像データに基づいて、勾配変化情報を取得する。それにより、勾配変化情報を適切に取得できる。また、例えば、鞍乗り型車両1の測位データを取得できない状況においても、勾配変化情報を取得できる。
【0095】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、鞍乗り型車両1の測位データに基づいて、勾配変化情報を取得する。それにより、勾配変化情報を適切に取得できる。また、例えば、鞍乗り型車両1にカメラが搭載されていない場合においても、勾配変化情報を取得できる。
【0096】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 鞍乗り型車両、2 路面、3 路面、4 勾配変化箇所、11 エンジン、12 液圧制御ユニット、13 入力装置、14 周囲環境センサ、15 慣性計測装置、16 前輪車輪速センサ、17 後輪車輪速センサ、20 制御装置、21 取得部、22 実行部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6