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  • 特開-曳航用浮体及び曳航方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097278
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】曳航用浮体及び曳航方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/02 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
E02D23/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000759
(22)【出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】栗本 卓
(72)【発明者】
【氏名】松岡 義博
(72)【発明者】
【氏名】山下 力蔵
(72)【発明者】
【氏名】胡 長洪
(72)【発明者】
【氏名】末吉 誠
(57)【要約】
【課題】従来のようにフローティングクレーンによって揚重して曳航することなく、サクションバケットジャケットを直接設置場所まで安定して曳航することが可能な、曳航用浮体及び曳航方法を提供する。
【解決手段】複数のサクションバケット10を有するサクションバケットジャケット100の曳航用浮体40であって、前記曳航用浮体40は、中空の本体部41と、該本体部41の周囲に設けられるとともにそれぞれの前記サクションバケット10を保持することが可能なバケット保持部42と、を少なくとも有し、前記本体部41は、浮遊する複数の前記サクションバケット10に囲われた位置に出入させることが可能であることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサクションバケットを有するサクションバケットジャケットの曳航用浮体であって、
前記曳航用浮体は、中空の本体部と、該本体部の周囲に設けられるとともにそれぞれの前記サクションバケットを保持することが可能なバケット保持部と、を少なくとも有し、
前記本体部は、浮遊する複数の前記サクションバケットに囲われた位置に出入させることが可能である
ことを特徴とする曳航用浮体。
【請求項2】
前記本体部は、隣接する前記サクションバケットが互いに連結された補強フレームを、把持することが可能なフレーム把持部を有している
請求項1に記載の曳航用浮体。
【請求項3】
複数のサクションバケットを有するサクションバケットジャケットの曳航方法であって、
浮遊する複数の前記サクションバケットに囲われた位置に曳航用浮体を配置し、前記曳航用浮体の本体部の周囲に設けられたバケット保持部によってそれぞれの前記サクションバケットを保持して、前記サクションバケットジャケットを曳航する
ことを特徴とする曳航方法。
【請求項4】
隣接する前記サクションバケットを補強フレームによって互いに連結し、前記曳航用浮体の本体部に設けられたフレーム把持部によって該補強フレームを把持する
請求項3に記載の曳航方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上においてサクションバケットジャケットを設置場所まで安定して曳航することが可能な、曳航用浮体及び曳航方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンエネルギーである洋上風力発電は世界中で広く利用される状況にあるが、従来、これら装置の基礎(例えば、サクションバケットとジャケット)を設置する際は、フローティングクレーンによって完全に揚重した状態で、洋上の設置場所まで曳航していた。
【0003】
しかし、風車や塔体の大型化に伴って基礎も大型化してくると、数少ない超大型のフローティングクレーンが必要となってしまう。そこで、例えば非特許文献1では、トリプルバケットジャケット基礎自体を、直接曳航船によって浮遊曳航させる方法について室内実験とシミュレーションを行って安定性の評価を行っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chaojun Yan、他4名、“Laboratory Study of Integrated Wet-Towing of a Triple-Bucket Jacket Foundation for Far-Offshore Applications”、[online]、Journal of Marine Science and Engineering、[令和4年10月20日検索]、インターネット<https://www.mdpi.com/2077-1312/9/11/1152>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1に開示された方法では、トリプルバケットジャケット基礎の浮力を3つのバケットのみから得ているため、風や波といった外力を受け、曳航中にバケット内の空気が漏れて大量の海水がバケット内に流れ込んだ場合には、トリプルバケットジャケット基礎が大きく傾いて転覆してしまう可能性がある。つまり風や波といった外力の作用による姿勢の変化も考慮した曳航の安定性について、なお課題がある。
【0006】
そこで本願発明は、上記した問題点等に鑑み、従来のようにフローティングクレーンによって揚重して曳航することなく、サクションバケットジャケットを設置場所まで安定して曳航することが可能な、曳航用浮体及び曳航方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)に係る発明は、複数のサクションバケットを有するサクションバケットジャケットの曳航用浮体であって、前記曳航用浮体は、中空の本体部と、該本体部の周囲に設けられるとともにそれぞれの前記サクションバケットを保持することが可能なバケット保持部と、を少なくとも有し、前記本体部は、浮遊する複数の前記サクションバケットに囲われた位置に出入させることが可能であることを特徴とする曳航用浮体である。
【0008】
(2)に係る発明は、前記本体部は、隣接する前記サクションバケットが互いに連結された補強フレームを、把持することが可能なフレーム把持部を有している前記(1)に記載の曳航用浮体である。
【0009】
(3)に係る発明は、複数のサクションバケットを有するサクションバケットジャケットの曳航方法であって、浮遊する複数の前記サクションバケットに囲われた位置に曳航用浮体を配置し、前記曳航用浮体の本体部の周囲に設けられたバケット保持部によってそれぞれの前記サクションバケットを保持して、前記サクションバケットジャケットを曳航することを特徴とする曳航方法である。
【0010】
(4)に係る発明は、隣接する前記サクションバケットを補強フレームによって互いに連結し、前記曳航用浮体の本体部に設けられたフレーム把持部によって該補強フレームを把持する前記(3)に記載の曳航方法である。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)及び(3)に係る発明によれば、中空の本体部を有する曳航用浮体は、サクションバケットを保持することが可能であるとともに、浮遊する複数のサクションバケットに囲われた位置に出し入れできるように構成したので、洋上の設置場所までサクションバケットジャケットを安定して曳航することが可能となる。これにより、従来のように、フローティングクレーンによってサクションバケットジャケットを揚重して曳航する必要がなくなり、大幅に曳航によるコストや手間を削減することが可能となる。
【0012】
上記(2)及び(4)に係る発明によれば、隣接するサクションバケットを補強フレームによって互いに連結するとともに、曳航用浮体の本体部に設けられたフレーム把持部によって補強フレームを把持するように構成したので、サクションバケットジャケットが補強され、曳航時に生じる曳航抵抗によってサクションバケットジャケットが損傷することを防ぐことができる。加えて、曳航用浮体の浮力を各サクションバケットへ均等に伝達することが可能となり、安定的・安全にサクションバケットジャケットを曳航することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における、サクションバケットジャケットの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における、サクションバケットの構成を説明する断面図である。
図3】本発明の一実施形態における、サクションバケットジャケットの曳航態様を説明する斜視図である。
図4】本発明の一実施形態における、曳航用浮体の斜視図である。
図5】本発明の一実施形態における、補強フレームの設置態様を説明する斜視図である。
図6】本発明の別実施形態において、汎用のフラットバージを曳航用浮体とする場合における、サクションバケットジャケットの曳航態様を説明する斜視図である。
図7】本発明の別実施形態において、汎用のフラットバージを曳航用浮体とする場合の、サクションバケットジャケットとの固定態様を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の曳航用浮体及び曳航方法の一実施形態について説明する。
【0015】
図1には、本発明の一実施形態において、曳航の対象となるサクションバケットジャケット100の斜視図が示されている。図示されるように、3つのサクションバケット10の上部にはトラス構造から成るジャケット部20が接続されている。
【0016】
図2には、サクションバケット10の構成を説明する断面図が示されているが、サクションバケット10の頂版12から下方に伸びた円筒形の側壁11を海底地盤中に貫入し、洋上風車の安定性を確保する構造となっている。
【0017】
すなわち、側壁11と海底地盤面で囲まれた空洞13内の海水を、配管を通してポンプで排水し、水圧の低減によって得られるサクション(排水によって空洞13内が静水圧以下となること)と、サクションバケットジャケット100の自重によって側壁11を貫入することが可能となっている。
【0018】
図3には、本実施形態におけるサクションバケットジャケット100の曳航態様が示されている。すなわち、本実施形態の曳航用浮体40は、2つのサクションバケット10の間から出し入れすることが可能となっており、浮遊する複数のサクションバケット10(図示される例では3つ)に囲われた位置に、曳航用浮体40が配置される。
【0019】
そして、サクションバケット10の浮力に、曳航用浮体40による浮力が加わった状態で、サクションバケットジャケット100は曳航されるように構成されている。
【0020】
これにより、従来のように、フローティングクレーンによってサクションバケットジャケット100を揚重することなく、洋上の設置場所まで安定して曳航することが可能となり、大幅に曳航によるコストや手間を削減することが可能となる。また、特に波浪中の安定性の増強を図ることが可能となり、曳航中、仮に一つのサクションバケット10において空気漏れが発生した場合であっても、サクションバケットジャケット100が転覆することを効果的に防ぐことが可能となる。
【0021】
続いて図4には、本実施形態における曳航用浮体40の一例として、その斜視図が示されている。図示されるように、曳航用浮体40は、中空角型の本体部41と、当該本体部41の周囲に設けられるとともに、それぞれのサクションバケット10を保持することが可能なバケット保持部42と、を少なくとも有している。
【0022】
上記バケット保持部42は、サクションバケット10の形状に応じてしっかりと保持できるような形状とすることで、サクションバケットジャケット100を安定して曳航することが可能となる。
【0023】
また、本実施形態では、図示されるように弾性体からなるバケット当接部材421をバケット保持部42に設けているので、サクションバケット10を傷つけることなく保持することが可能である。
【0024】
加えて、バケット保持部42は開閉可能な可動装置を設けてもよい。すなわち、曳航用浮体40を2つのサクションバケット10の間から出し入れする際は、バケット保持部42がサクションバケット10に緩衝しないように動作させ、曳航用浮体40をサクションバケットジャケット100に固定する際には、サクションバケット10を保持するように動作させるように構成することも可能である。
【0025】
さらに本実施形態では、図3に示されるように、隣接するサクションバケット10を補強フレーム14によって互いに連結している。すなわち、図5に示されるように、サクションバケット10の頂版12には上記補強フレーム14を固定するためのフレーム固定部材15が設けられ、各サクションバケット10が補強フレーム14によって強固に連結されている。
【0026】
さらに、曳航用浮体40には、図4に示されるように、上記補強フレーム14を把持するフレーム把持部43が設けられており、当該フレーム把持部43によって補強フレーム14を把持することが可能となっている。
【0027】
このような構成により、曳航用浮体40はサクションバケットジャケット100を強固に保持することが可能となり、補強フレーム14を介して、曳航用浮体40の浮力を均等に各サクションバケット10へ伝達することが可能となる。
【0028】
上記フレーム把持部43の把持機構については、種々の方法が利用可能であるが、例えば、2つの挟持アームをシリンダによって開閉し、上記補強フレーム14を挟持するように構成することが可能である。このような構成によれば、波浪による不安定な環境下においても、容易にフレーム把持部43が補強フレーム14を把持することが可能となる。
【0029】
また、フレーム把持部43に、上下方向に可動変位することが可能な位置調整機構を備えるようにしてもよい。このような構成とすることで、曳航用浮体40が2つのサクションバケット10の間を出入りする際に、フレーム把持部43が補強フレーム14に緩衝してしまうことを効果的に防止することが可能となる。
【0030】
さらに、曳航用浮体40の本体部41に、浮力調整機構を備えるようにしてもよい。浮力調整の方法にあっては、種々の方法が利用でき、例えば、注水機構を備えることができる。このような構成を有することで、サクションバケットジャケット100の規模等に応じて、適切な浮力を付加することが可能となる。加えて、曳航用浮体40が2つのサクションバケット10の間を出入りする際、浮力を調整することで、例えば、補強フレーム14等が曳航用浮体40の設備に緩衝することを防ぐことが可能となる。
【0031】
(別実施形態)
以上、本実施形態の曳航用浮体40及び曳航方法について説明したが、以下に別の実施形態について説明する。なお、前述の実施形態と共通する構成については、その説明を割愛する。
【0032】
図6には、本発明の別実施形態として、汎用のフラットバージを曳航用浮体40とする場合のサクションバケットジャケット100の曳航態様が斜視図で示されている。
【0033】
すなわち、別実施形態では、汎用のフラットバージを曳航用浮体40として利用することが可能であり、図7に示されるように、補強フレーム14を把持するために2つの補助浮体411を本体部41に接続している。
【0034】
また、本体部41と補助浮体411には、上記補強フレーム14を把持するフレーム把持部43が設けられており、当該フレーム把持部43によって補強フレーム14を把持することで、サクションバケットジャケット100を強固に保持して、安定的にサクションバケットジャケット100を曳航することが可能となる。
【0035】
上記した別実施形態の構成によれば、汎用のフラットバージを曳航用浮体40として利用することで、曳航用浮体40の製造コストを大きく削減することが可能となり、今後、増加が見込まれる洋上風力発電の建設工事において、容易に曳航用浮体40を供給することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の実施形態及び別実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上記各実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、前述した各実施形態では、3つのサクションバケット10を有するサクションバケットジャケット100を例にして説明したが、2つ以上のサクションバケット10を備えたサクションバケットジャケット100であれば、本発明の曳航用浮体40を使用して曳航することが可能である。
【0038】
また、前述した各実施形態では、曳航用浮体40の形状を方形としたが、必ずしもこのような形状に限定されるものではなく、複数のサクションバケット10に囲われた位置に適切に配置することが可能な形状であれば、その形状は特に限定されない。
【0039】
また、本発明の範囲は、上記した各実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施形態に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 サクションバケット
11 側壁
12 頂版
13 空洞
14 補強フレーム
15 フレーム固定部材
20 ジャケット部
40 曳航用浮体
41 本体部
42 バケット保持部
43 フレーム把持部
100 サクションバケットジャケット
411 補助浮体
421 バケット当接部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7