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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097285
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】最適化方法及びその通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0456 20170101AFI20240710BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20240710BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H04B7/0456 100
H04B7/08 800
H04B7/06 956
H04B7/06 958
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076591
(22)【出願日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】112100333
(32)【優先日】2023-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】504429600
【氏名又は名称】緯創資通股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WISTRON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】陳 志明
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スループットを向上させる最適化方法とその通信装置を提供する。
【解決手段】スループットを最大化する最適化方法は、ベイズ最適化、因果ベイズ最適化又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを一緒に決定するステップと、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを出力するステップと、を備えている。少なくとも1つのプリコーディング行列は、送信機220の少なくとも1つのデジタルプリコーダ220pB、アナログプリコーダ220pFのために構成されている。少なくとも1つの結合行列は、少なくとも1つの受信機260の少なくとも1つのアナログコンバイナ260cF、デジタルコンバイナ260cBのために構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを一緒に決定するステップと、
少なくとも1つの前記プリコーディング行列と少なくとも1つの前記結合行列とを出力するステップであり、1つのプリコーディング行列は、送信機の少なくとも1つのプリコーダのために構成され、少なくとも1つの前記結合行列は、少なくとも1つの受信機の少なくとも1つのコンバイナのために構成されている、出力するステップとを備えている、最適化方法。
【請求項2】
ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つの前記プリコーディング行列と少なくとも1つの前記結合行列とを一緒に決定するステップは、
少なくとも1つの前記プリコーディング行列と少なくとも1つの前記結合行列とを決定するために、少なくとも1つのデータに前記ベイズ最適化、前記因果ベイズ最適化、又は前記動的因果ベイズ最適化を適用することを含み、
少なくとも1つのデータは、前記送信機により送信されたか又は少なくとも1つの前記受信機により受信された少なくとも1つの基準信号、ダウンリンク制御情報、アップリンク制御情報、又はシグナリングに関連する、請求項1記載の最適化方法。
【請求項3】
ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つの前記プリコーディング行列と少なくとも1つの前記結合行列とを一緒に決定するステップは、
前記ベイズ最適化、前記因果ベイズ最適化、又は前記動的因果ベイズ最適化によって、複数の独立変数最適値を一緒に決定することを含み、
複数の前記独立変数最適値は、少なくとも1つの前記プリコーディング行列に対応する少なくとも1つの第1位相調整の値と、少なくとも1つの前記プリコーディング行列に対応する少なくとも1つの第1振幅調整の値と、少なくとも1つの前記結合行列に対応する少なくとも1つの第2位相調整の値と、及び少なくとも1つの前記結合行列に対応する少なくとも1つの第2振幅調整の値とを含む、請求項1記載の最適化方法。
【請求項4】
ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つの前記プリコーディング行列と少なくとも1つの前記結合行列とを一緒に決定するステップは、
前記因果ベイズ最適化又は前記動的因果ベイズ最適化によって、複数の独立変数最適値を複数の独立変数から一緒に探索することを含み、
損失関数と少なくとも1つの独立変数とのために構成されている因果グラフの因果構造と、前記因果グラフの少なくとも1つの前記独立変数とは、一緒に決定され、前記損失関数は、前記送信機により送信されたか又は少なくとも1つの前記受信機により受信された少なくとも1つの基準信号の関数である、請求項1記載の最適化方法。
【請求項5】
通信装置であって、
命令を記憶するように構成されている記憶回路であり、前記命令は、即ち、
ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを一緒に決定する命令と、
少なくとも1つの前記プリコーディング行列と少なくとも1つの前記結合行列とを出力する命令であり、1つのプリコーディング行列は、送信機の少なくとも1つのプリコーダのために構成され、少なくとも1つの前記結合行列は、少なくとも1つの受信機の少なくとも1つのコンバイナのために構成されている、出力する命令と
を有する、記憶回路と、
前記記憶回路に結合され、前記記憶回路に記憶された前記命令を実行するように構成されている処理ユニットとを備えている、通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化方法及びその通信装置に関し、さらに詳しくは、スループットを向上させる最適化方法及びその通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局は、ユーザ機器(UE)に信号を送信し、UEは、好ましいプリコーディング行列指標(PMI)を推定し、チャンネル状態情報(CSI)レポートを介して基地局にフィードバックを提供する。基地局は、(CSIレポートに従ってプリコーディング行列を決定するのではなく)プリコーディング行列を決定するための提案としてCSIレポートのみを受け取り、UEは、自身の結合行列を推定する。このため、基地局とUEとの間の合計レート(即ちスループット)は、次善最適の可能性がある。従って、プリコーディング行列と結合行列をどのように決定するかについては、まだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【0003】
従って、本発明の主要な目的は、スループットを向上させるための最適化方法及びその通信装置を提供することである。
【0004】
本発明の実施形態は、最適化方法を開示する。最適化方法は、ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを一緒に決定するステップと;少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを出力するステップであり、1つのプリコーディング行列は、送信機の少なくとも1つのプリコーダのために構成され、少なくとも1つの結合行列は、少なくとも1つの受信機の少なくとも1つのコンバイナのために構成されている、出力するステップとを備えている。
【0005】
本発明の実施形態は、通信装置を開示する。通信装置は、命令を記憶するように構成されている記憶回路であり、命令は、即ち、ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを一緒に決定する命令と;少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを出力する命令であり、1つのプリコーディング行列は、送信機の少なくとも1つのプリコーダのために構成され、少なくとも1つの結合行列は、少なくとも1つの受信機の少なくとも1つのコンバイナのために構成されている、出力する命令とを有する、記憶回路と;記憶回路に結合され、記憶回路に記憶された命令を実行するように構成されている処理ユニットとを備えている。
【0006】
一実施形態では、ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを一緒に決定するステップは、ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、複数の独立変数最適値を一緒に決定することを含み;複数の独立変数最適値は、少なくとも1つのプリコーディング行列に対応する少なくとも1つの第1位相調整の値と、少なくとも1つのプリコーディング行列に対応する少なくとも1つの第1振幅調整の値と、少なくとも1つの結合行列に対応する少なくとも1つの第2位相調整の値と、及び少なくとも1つの結合行列に対応する少なくとも1つの第2振幅調整の値とを含む。複数の独立変数最適値は、さらに少なくとも1つの第1独立変数最適値を含み、少なくとも1つの第1独立変数最適値は、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とに直接関係しない。
【0007】
一実施形態では、ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを一緒に決定するステップは、因果ベイズ最適化又は動的因果ベイズ最適化によって、複数の独立変数最適値を複数の独立変数から一緒に探索することを含み;損失関数と少なくとも1つの独立変数とのために構成されている因果グラフの因果構造と、因果グラフの少なくとも1つの独立変数とは、一緒に決定され、損失関数は、送信機により送信されたか又は少なくとも1つの受信機により受信された少なくとも1つの基準信号の関数である。一実施形態では、因果グラフは、最大事後確率及び点推定に基づいて生成される。一実施形態では、基礎付けるデータの中の複数のサブデータを、複数の観測関数を使用して、損失関数及び因果グラフの少なくとも1つの独立変数にマッピングし、最大事後確率及び点推定に基づいて、基礎付けるデータから因果グラフを生成する。一実施形態では、因果意味生成モデルに基づいて複数の観測関数が取得される。
【0008】
一実施形態では、ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを一緒に決定するステップは、動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つの独立変数最適値を少なくとも1つの独立変数から探索することを含む。第2時刻での第2損失関数は、第2時刻での少なくとも1つの独立変数、第1時刻での少なくとも1つの独立変数、又は第1時刻での第1損失関数の関数である。
【0009】
一実施形態では、少なくとも1つの受信機は、ユーザ側機器と無線ユニットとのうちの1つであり、送信機は、ユーザ側機器と無線ユニットとのうちの他の1つである。
【0010】
本発明のこれらの目的及びその他の目的は、さまざまな図及び図面に示した好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読んだ後に、当業者に疑いなく明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による通信システムの概略図である。
図2】本発明の実施形態による通信システムの概略図である。
図3】本発明の実施形態による通信システムの概略図である。
図4】本発明の実施形態による最適化方法の概略図である。
図5】本発明の実施形態による損失関数、位相調整、及び振幅調整の間の関係の概略図である。
図6】本発明の実施形態による一次元問題に対するベイズ最適化の概略図である。
図7】本発明の実施形態による因果グラフの一部の概略図である。
図8】本発明の実施形態による基礎付けるデータと因果グラフの一部との概略図である。
図9】本発明の実施形態による原因変数とサブデータとの概略図である。
図10】ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、及び動的因果ベイズ最適化の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態による通信システム10の概略図である。通信システム10は、多入力多出力(MIMO)伝送をサポートしてよい。通信システム10の送信機120は、複数のアンテナ120aとプリコーダ120pとを含んでよい。通信システム10の受信機160は、複数のアンテナ160aとコンバイナ160cとを含んでよい。通信システム10は、アルゴリズム(例えば、以下に述べる最適化方法)を使用して、プリコーダ120pのプリコーディング行列とコンバイナ160cの結合行列とを一緒に/組み合わせで(一度に、又は一遍に)最適化してよい。つまり、送信機120のプリコーディング行列と受信機160の結合行列とは、それぞれ送信機120と受信機160とにより個別に選択されることはない。このようにして、通信システム10は、送信機120と受信機160との間の合計レート(即ちスループット)を最大化することができる。
【0013】
図2は、本発明の実施形態による通信システム20の概略図である。通信システム10は、通信システム20の形で実施されてよい。通信システム20の送信機220は、Ntアンテナ120aと、デジタルプリコーダ220pBと、アナログプリコーダ220pFとを含んでよい。通信システム20の受信機260は、Nrアンテナ160aと、アナログコンバイナ260cFと、デジタルコンバイナ260cBとを含んでよい。
【0014】
送信機220は、受信機260にNs個のデータストリームを送信することを意図している。これに対応して、受信機260は受信信号Yを受信する。受信信号Yは、Y=HFBX+Nを満足してよい。ここで、Xは、送信機220が送信することを意図する信号、Bは、デジタルプリコーダ220pBのプリコーディング行列、Fは、アナログプリコーダ220pFのプリコーディング行列、Hは、チャンネル240のチャンネル行列、Nは、ノイズを示す。受信機260は、受信信号Yを処理して、信号Zを取得してよい。信号Zは、Z=WHFBX+WNを満足してよい。ここで、Wは、アナログコンバイナ260cFの結合行列、Wは、デジタルコンバイナ260cBの結合行列を示す。チャンネル行列H,プリコーディング行列F,B,及び結合行列W,Wは、それぞれNr×Nt,Nt×Ntf,Ntf×Ns,Nrf×Nr,及びNs×Nrf行列であり、ここで、Ntfは、Ns以上であり、Ntfは、Nt以下であり、Nrfは、Ns以上であり、Nrfは、Nr以下である。
【0015】
これに加えて、送信機220でNs個のデータストリームのそれぞれに1つの参照データが追加される。Ns個のデータストリームがあるので、Ns個の参照データは合計で追加される。Ns個の参照データは、1つの入力参照データθに対応してよい。受信機260は、(受信信号Yから)Ns個の参照データを検索/抽出し、Ns個の参照データは、1つの出力参照データTに対応してよい。入力参照データθと出力参照データTとは、それぞれNs×1ベクトルと1×Nsベクトルであってよい。本発明は、入力参照データθと出力参照データTとの間の誤差(つまり、Ns個の参照データを使用して)の二乗の期待値を最小化するアルゴリズム(例えば、ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、動的因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化に基づく最小平均二乗誤差)を使用してよく、送信機120が個別にプリコーディング行列を選択し、受信機160が結合行列を選択する代わりに、(最適な)プリコーディング行列F,B及び(最適な)結合行列W,Wを、一緒に/組み合わせで/同時に/並列に決定/検索/選択してよい。
【0016】
図3は、本発明の実施形態による通信システム30の概略図である。通信システム10又は20は、通信システム30の形で実施してよい。通信システム30の送信機320は、複数のアンテナ120aとプリコーダ320pK,320pUとを含んでよい。通信システム30は、受信機360,...,360,...,360を含んでよく、ここでK及びUは正の整数である。送信機320は、受信機360,360に対してマルチユーザ伝送を行うことができる。通信システム30の受信機360,360は、それぞれ複数のアンテナ160aとコンバイナ360cK,360cUとを含んでよい。送信機320で個別にプリコーディング行列を選択し、受信機360,360で結合行列を選択する代わりに、通信システム30は、プリコーダ320pK(及び/又は320pU)のプリコーディング行列とコンバイナ360cK(及び/又は360cU)の結合行列とを一緒に/組み合わせで最適化するアルゴリズムを使用してよい。このようにして、通信システム30は、ビームフォーミングのスループットを最大化することが可能である。
【0017】
図4は、本発明の実施形態による最適化方法40の概略図である。最適化方法40は、通信システム10、20又は30に利用可能である。最適化方法40は、コードにコンパイルされてよく、コードは、処理回路によって実行され、記憶回路に記憶されてよい。最適化方法40のステップは、次のステップを含んでよい。
【0018】
ステップS400:開始する。
【0019】
ステップS402:ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化によって、少なくとも1つのプリコーディング行列(例えば、デジタルプリコーダ220pBのプリコーディング行列B,アナログプリコーダ220pFのプリコーディング行列F,又はプリコーダ320pK,320pU,又は120pのプリコーディング行列)と、少なくとも1つの結合行列(例:アナログコンバイナ260cFの結合行列W,デジタルコンバイナ260cBの結合行列W,又はコンバイナ360cK,360cU,又は160cの結合行列)とを、一緒に決定/計算/更新する。ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化を少なくとも1つのデータに適用して、少なくとも1つのプリコーディング行列と少なくとも1つの結合行列とを決定してよい。少なくとも1つのデータは、送信機(例:120,220,又は320)から送信された信号、又は受信機(例:360ないし360,260,又は160)で受信された信号(例:基準信号(例えば、入力基準データθ又は出力基準データT)、ダウンリンク制御情報(DCI)、アップリンク制御情報(UCI)、CSIレポート、又はシグナリング)から抽出することができる。
【0020】
ステップS404:送信機に構成された少なくとも1つのプリコーディング行列と、受信機に構成された少なくとも1つの結合行列とに関する情報を、出力する。
【0021】
ステップS406:終了する。
【0022】
ステップS402で、本発明は、独立変数(例えば、プリコーディング行列と結合行列)の最適な値/結果を選択するためにベイズ最適化、因果ベイズ最適化、又は動的因果ベイズ最適化を活用してよく、任意の時刻で最小損失関数値を達成するようにする。即ち、最適な値/結果は、任意の時刻で損失関数を最小化することができる。損失関数は、参照データの平均二乗誤差(MSE)であってよい(例えば、入力基準データθと出力基準データTとの間の誤差の二乗の期待値、即ちE((T-θ))又はE(||T-θ||)であってよい)。(入力基準データθ又は出力基準データTをその対角上で反転させて、入力基準データθ又は出力基準データTの転置を生成してから誤差を計算してよい。)
【0023】
ベイズ最適化を例にとるものとする。ベイズ最適化は、式が未知である関数の極限問題を解くためのブラックボックス最適化アルゴリズムである。例えば、L(Pdt,Adt,Prt,Art,Prr,Arr,Pdr,Adr)=uef(Pdt,Adt,Prt,Art,Prr,Arr,Pdr,Adr)である。ここでL()は、モデルの損失関数(目的関数として機能してよい)を表してよく、uef()は、式が未知な関数を表してよい。Pdtは、プリコーディング行列Bの位相調整(即ち、デジタルプリコーダ220pBが信号Xの位相にどのように影響するか)を表してよく、Adtは、プリコーディング行列Bの振幅調整(即ち、デジタルプリコーダ220pBが信号Xの振幅にどのように影響するか)を表してよい。Prtは、プリコーディング行列Fの位相調整(即ち、アナログプリコーダ220pFが信号Xの位相にさらにどのように影響するか)を表してよく、Artは、プリコーディング行列Fの振幅調整(即ち、アナログプリコーダ220pFが信号Xの振幅にさらにどのように影響するか)を表してよい。Prrは、結合行列Wの位相調整(即ち、アナログコンバイナ260cFが受信信号Yの位相にどのように影響するか)を表してよく、Arrは、結合行列Wの振幅調整(即ち、アナログコンバイナ260cFが受信信号Yの振幅にどのように影響するか)を表してよい。Pdrは、結合行列Wの位相調整(即ち、デジタルコンバイナ260cBが受信信号Yの位相にさらにどのように影響するか)を表してよく、Adrは、結合行列Wの振幅調整(即ち、デジタルコンバイナ260cBが受信信号Yの振幅にさらにどのように影響するか)を表してよい。別の実施形態では、L(B,F,W,W)=uef(B,F,W,W)である。別の実施形態では、L(M1,...,Mr)=uef(M1,...,Mr)であり、ここでrは正の整数である。M1ないしMrは、プリコーディング行列/行列(複数)(例:デジタルプリコーダ220pBのプリコーディング行列B、アナログプリコーダ220pFのプリコーディング行列F、又はプリコーダ320pK,320pU,120pのプリコーディング行列)と、結合行列/行列(複数)(例:アナログコンバイナ260cFの結合行列W、デジタルコンバイナ260cBの結合行列W、又はコンバイナ360cK,360cU,又は160cの結合行列)とを表してよい。別の実施形態では、L(P1,...,Pm,A1,...,An)=uef(P1,...,Pm,A1,...,An)であり、ここでm及びnは正の整数である。P1ないしPmは、プリコーディング行列/行列(複数)(例:デジタルプリコーダ220pBのプリコーディング行列B、アナログプリコーダ220pFのプリコーディング行列F、又はプリコーダ320pK,320pU,又は120pのプリコーディング行列)と、結合行列/行列(複数)(例:アナログコンバイナ260cFの結合行列W、デジタルコンバイナ260cBの結合行列W、又はコンバイナ360cK,360cU,又は160cの結合行列)との位相調整を表してよい。A1ないしAnは、プリコーディング行列/行列(複数)と、結合行列/行列(複数)との振幅調整を表してよい。
【0024】
つまり、モデルの損失関数L()と、位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr)と、振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr)との間の関係関数uef()の表現は、未知である。損失関数L()を最小化する任意の時間での位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr)と振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr)とは、ベイズ最適化を使用して計算されてよい。このようにして、送信機120/220/320と受信機160/260/360/360との間の合計レートが最大化されるように、デジタルプリコーダ220pB,アナログプリコーダ220pF(又はプリコーダ320pK,320pU,又は120p),アナログコンバイナ260cF,及びデジタルコンバイナ260cB(又はコンバイナ360cK,360cU,又は160c)を更新/再構成してよい。
【0025】
例えば、図5は、本発明の実施形態による損失関数L()と、位相調整Pdt,Prt,Prr,Pdr(又はP1ないしPm)と、振幅調整Adt,Art,Arr,Adr(又はA1ないしAn)との間の関係の概略図である。ただし、図5は、損失関数L()と、位相調整と、振幅調整との間に関係があることを明示するための例示であり、損失関数L()と、位相調整と、振幅調整との間の関係関数uef()の表現は、ほとんどの場合未知である。図5の横軸の1つの単一点の座標は、位相調整Pdt,Prt,Prr,Pdr(又はP1ないしPm)と、振幅調整Adt,Art,Arr,Adr(又はA1ないしAn)とによって形成/構成される多次元空間内の1点に対応してよい。
【0026】
関係関数uef()の式は未知であるので、ベイズ最適化は、極点を見出すように次のサンプリング点を決定するために、部分/有限のサンプリング点を使用して、関係関数uef()に大まかに適合させ、前のサンプリング点の情報を活用することができる。例えば、図6は、本発明の実施形態による一次元問題に対するベイズ最適化の概略図である。太い実線は、損失関数L()の推定関数値を表し、中実の黒点P1-P5は、それぞれ発見されたサンプリング点を表し、2本の点線で囲まれた領域は、各点での損失関数L()の変動範囲(平均値を中心とし、標準偏差に比例する)を表し、細い実線は、取得関数を表す。ベイズ最適化の考え方は、まず、初期候補解集合(例えば、中実の黒点P1に対応する損失関数L()、位相調整、及び振幅調整)を生成し、次に、初期候補解集合に基づいて、極値を有する可能性のある次のサンプリング点(例えば、中実の黒点P2)を探索し、反復が終了するまで、極値を有する可能性のある次のサンプリング点(例えば、中実の黒点P3-P5)を繰り返し探索し、探索した全てのサンプリング点(例えば、中実の黒点P1-P5)を候補解集合に追加するというものである。最後に、問題の解として候補解集合のサンプリング点から(グローバル)極点を見出す(例えば、中実の黒点P5に対応する損失関数L()、位相調整、及び振幅調整)ことにより、プリコーダに構成されたプリコーディング行列/行列(複数)と、コンバイナに構成された結合行列/行列(複数)とを、一緒に発見/決定する。
【0027】
ベイズ最適化は、見つかったサンプリング点の関数値(例えば、中実の黒点P1に対応する損失関数)に基づいて真の損失関数の平均値と分散とを推定し、既に見つかったサンプリング点(例えば、中実の黒点P1)に従って次のサンプリング点(例えば、中実の黒点P2)を決定する。図6の太い実線で表される推定損失関数(即ち、各点での損失関数の平均値)は、サンプリング点(例えば、中実の黒点P1-P4)を通過し、分散を最小化する。推定目的関数がサンプリング点(例えば、中実の黒点P1-P4)から遠い場合に、分散は一層大きい。図6の細い実線で表される取得関数は、平均値と分散とに従って構成してよい。つまり、取得関数は、平均値と分散との関数であってよい。ある点(例えば、中実の黒点P1-P5のいずれか)が損失関数の極点である可能性の推定は、その点が探索する価値がある程度を反映する。取得関数の相対的な極点は、損失関数の次のサンプリング点に対応してよい。例えば、図6の長方形のボックスで表される点P*5は、取得関数の最大点であり、損失関数(最大点に対応した位相調整及び振幅調整に応じて)の次のサンプリング点(即ち、中実の黒点P5)に対応してよい。
【0028】
本発明のアルゴリズムは、ガウス過程回帰を使用してよく、サンプリング点の集合での損失関数L()の関数値に基づいて、任意の点での損失関数L()の関数値の確率分布を予測する。ガウス過程回帰は、既知の分散の独立した正規分布ノイズを有する観測に拡張することができる。分散は未知である可能性があるため、ノイズは共通分散であり、ノイズはハイパーパラメータとして分散を含むと仮定してよい。本発明は、ノイズを含むガウス過程の事後平均を使用するが、これは信号対干渉+ノイズ比(SINR)のノイズではなく、ドリフト値である。一実施形態では、温度と湿度、又はプリコーダ/コンバイナなどの環境要因(即ち、干渉の原因となるノイズ)は、プリコーダ/コンバイナの出力に影響を与え、特定の位相調整と特定の振幅調整とに関する損失関数のドリフト値を引き起こす可能性がある。つまり、選択されたサンプリング点(例えば、中実の黒点P5)は、関数関係uef()の望ましい/予想される極値を、選択/対応させないことが可能であるが、関数関係uef()の望ましい/予想される極値(即ち、ノイズによって乱される関数関係uef()の極値)に近い相対的に最適化された極値を、選択/対応させることが可能である。
【0029】
ガウス過程回帰の結果に従って、損失関数の次のサンプリング点を決定するために、取得関数の(相対的な)極値を見出すために、取得関数(損失関数の各ポイントが探索する価値がある程度を測定するために使用される)を構築してよい。取得関数は、例えば、知識勾配(KG)、エントロピー探索(ES)、又は予測エントロピー探索(PES)であってよい。その後、(最初から発見された)サンプリング点の集合の関数値の極値が、損失関数の極値として返される(例えば、最適な位相調整と最適な振幅調整とに応じた最小損失関数)。従って、プリコーダ用に構成されたプリコーディング行列/行列(複数)と、コンバイナ用に構成された結合行列/行列(複数)とを見出すことができる。
【0030】
1つの実施形態では、(プリコーダ及びコンバイナに加えて)本発明のアルゴリズムによって考慮されようとする多くの独立変数があってよい。空間次元が大きくなると、ベイズ最適化のパフォーマンスは、指数関数的に低下する可能性がある。従って、本発明のアルゴリズムは、因果ベイズ最適化(CBO)に拡張してよい。つまり、本発明は、損失関数L()が位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr)、振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr)、及びその他の独立変数に関連する場合に、因果ベイズ最適化を使用して最適/最小損失関数を計算してよい。
【0031】
具体的には、本発明は、損失関数L(),位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr),振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr),及び/又はその他の独立変数(複数可)(例えば、損失関数L()の因果グラフ,位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr),振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr),及び/又は他の独立変数)の間の因果関係を見出すことができる。従って、損失関数L(),位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr),振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr),及び/又はその他の独立変数(複数可)を、原因変数とみなしてよい。例えば、図7は、本発明の実施形態による因果グラフCG1の一部の概略図である。原因変数として機能する損失関数L(),独立変数OないしO(任意であり省略可能),位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr),及び振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr)は、因果モデルで使用される因果グラフCG1を構成し、qは正の整数である。図7に示すように、因果ベイズ最適化で求められる因果の次元性は8+q(又は8以下の数)であることが可能である。その結果、最適化のために、因果ベイズ最適化の損失関数L()に与えられる8+q個の独立変数(又は8個の独立変数又は8個未満の独立変数)がある。これにより、損失関数L()を最小化できる8+q個の原因変数(又は8個の原因変数又は8個未満の原因変数)の値/結果が、計算される/見出される。因果グラフCG1は、最適な意思決定戦略について推論する能力を大幅に向上させることができ、それによって最適化コストを削減し、次善最適(suboptimal)の解決策を回避する。
【0032】
一実施形態では、損失関数、位相調整、振幅調整、及び/又は他の独立変数の因果グラフを取得/導出するために、最大事後確率(MAP)と点推定とに基づいて最適化の因果モデルを選択することができる。従って、因果モデルの因果グラフの原因変数(例:どの原因変数が選択されているか、原因変数の数、原因変数が有する属性、又は原因変数の属性の数)と因果グラフの因果構造(例:どのように属性が相互に接続するか)とが、一緒に(一度に、又は一遍に)決定/発見/作成される。原因変数と因果構造とを同時に/並行して決定することで、第1の原因変数を決定してから因果構造を決定することで生じる問題を回避することが可能である。
【0033】
例えば、図8は、本発明の実施形態による基礎付けるデータ(grounding data)80gと因果グラフCG2の一部との概略図である。図8で(a)と(b)とは、それぞれ基礎付けるデータ80gと因果グラフCG2との2つの可能性を示している。因果グラフCG2は、因果グラフCG1を兼ねてよい。一実施形態では、基礎付けるデータ80gは、全ての観測可能なサンプルの空間から取得又は導出されてよく、従って観測データと称してよい。一実施形態では、任意の時点で、任意の方式で、基礎付けるデータ80gは、通信される全ての信号(例えば、図1ないし3で通信される信号(例えば、信号X,Z,受信信号Y,入力基準データθ,出力基準データT,DCI,UCI,CSIレポート,又はシグナリング)、他の信号、又は内部に記憶されている他のデータ(例えば、コードブック、又はプリコーディング行列/行列(複数)又は結合行列/行列(複数)の可能な組み合わせに関する任意の情報))を含んでよく、又はそれに関連してよい。
【0034】
図8では、因果グラフCG2の因果構造は、原因変数(例:cv(i-1),cv,cv(j-1),及びcv)の関係を表してよい。観測関数f(i-1),f,f(j-1),及びfを使用して、基礎付けるデータ80gのサブデータw(i-1),w,w(j-1),及びwを原因変数cv(i-1),cv,cv(j-1),cvにマッピングしてよく、原因変数cv(i-1),cv,cv(j-1),cvと基礎付けるデータ80gのサブデータw(i-1),w,w(j-1),wとの間の関係を示すことができる。ここで、i,jは正の整数である。ここでのマッピングは、(全体の)基礎付けるデータ80gの代わりに、対応するサブデータ(例:w(i-1),w,w(j-1),w)(例えば、図8の枠付き領域)に基づいている。例えば、原因変数cv(i-1)が位相調整Pdtに対応する場合に、サブデータw(i-1)は、原因変数cv(i-1)(の属性)に関連する(例えば、サブデータw(i-1)は、位相調整Pdtに関する全てのデータに関連する)。
【0035】
一実施形態では、基礎付けるデータ80gのサブデータwを観測関数fと因果グラフCGの因果構造Cとに割り当てる、事後確率P(f,C|w)を最大化することができ、基礎付けるデータ80gのサブデータwに基づいて、対応する因果構造Cと、対応する因果変数cv(即ち、位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr),振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr),損失関数L(),又は独立変数OないしO)とを、決定/導出/選択するようにする。従って、因果モデルの推論は、ベイジアンネットワーク(例えば、因果構造のための)を観測関数(例:f(i-1),f,f(j-1),及びf)と組み合わせて記述することができる。なお、因果変数(例:cv(i-1),cv,cv(j-1),及びcv)と、対応する因果グラフ(例:CG)の対応する因果構造(例:C)が一緒に取得/決定され(即ち、因果変数(例:cv(i-1),cv,cv(j-1),及びcv)を、因果構造(例:C)に沿って/とともに学習する)、その結果、因果変数(例:cv(i-1),cv,cv(j-1),及びcv)と因果構造(例:C)とは相互に作用/影響/制約することが可能であることは言及に値する。
【0036】
一実施形態では、事後確率P(f,C|w,Int(f,C))は、ベイジアンルールに従って、
【数1】
を満足してよい。ここで、fは、対応する観測関数を表してよく、Cは、対応する因果構造を表してよく、wは、基礎付けるデータ80gの一部(例えばサブデータ)を表してよく、Intは、介入を表してよい。一実施形態では、事後確率P(f,C|w)は、P(f,C)P(w|f,C)、又は、
【数2】
に比例してよい。ここで、wi,tは、時刻tでの原因変数cvに対応するサブデータを表してよく、Cは、因果構造を表し、st-1は、時刻t-1での(全ての原因変数の)状態を表してよく、Tは、現在/目下の時刻を表してよく、γは、0.5のような実数であってよいが、それに限定されない。一実施形態では、P(w|f,C)は、
【数3】
であってよい。一実施形態では、P(wi,t|st-1,C,f)は、
【数4】
又は
【数5】
であってよく、ここで、si,tは、時刻tでの原因変数cvの状態を表してよく、sは、時刻tでの状態を表してよく、Ncvは、全ての原因変数(例えば、原因変数cv(i-1),cv,cv(j-1),及びcvを含む)の総数を表してよく、Ncvは、正の整数であり、Rstは、基礎付けるデータ80g内で原因変数cvの状態sと互換性のあるサブデータwのデータ量を表してよい。一実施形態では、本発明は、データ量Rstを最小にする原因変数cvを選択する/見出すことが可能であり、頻繁に使用される基礎付けるデータ80g内のデータ(例えば、サブデータw)を、まれにしか使用されないデータよりも細かいピースに切り分けることを可能にする。
【0037】
上記のように、ベイズ確率メカニズムは、原因変数の数(即ち、どの位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr)であるか、どの振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr)であるか、独立変数OないしOのどれを選択して因果グラフCG2を作成するか)、原因変数(例えば、原因変数cv(i-1),cv,cv(j-1),及びcvを含む)の状態、原因変数の因果構造、又は原因変数の観測関数(例えば、観測関数f(i-1),f,f(j-1),及びfを含む)を組み合わせてよい。ベイズ確率メカニズムは、関連する共同推論を描画し、基礎付けるデータ80gを説明/解釈してよく、これによって、因果グラフCG2を作成する。因果グラフCG2の原因変数(例えば、原因変数cv(i-1),cv,cv(j-1),及びcvを含む)(又は原因変数の数)と、因果構造(例:C)とを、同時に決定することによって、図8の(a)を(b)から区別し、その逆も同様である。
【0038】
図8に示すように、各原因変数(例:cv)は、観測関数(例:f)に対応してよい。一実施形態では、高次元の環境変数(例:基礎付けるデータ80g)から低次元の状態属性(例えば、原因変数cvの状態の属性)を予測するために、因果意味生成(CSG)モデルを使用して、観測関数(例:f)を計算/導出してよい。原因変数(例:cv(i-1),cv,cv(j-1),及びcv))が、マニュアルで定義される場合に、各原因変数(例:cv)は、対応するサブデータ(例:w)(例えば、図8の枠付き領域)に原因変数を基礎付けるための専用のCSG観測関数を有してよい。これは、サブデータ(例えば、図8の枠付き領域に対応するサブデータw(i-1),w,w(j-1),又はw)は、ドメインエキスパートにより特定の原因変数の定義に従って決定されることを意味する。さらに、CSGモデルは、変動要因が原因変数の原因であるとみなすことを避け(例:cv)、意味的要因が原因変数の原因となると正しく決定することができる(例:cv)。一実施形態では、変動要因と意味的要因とは、観測データを構成してよく、これに属してよい。一実施形態では、CSGモデルは主に因果不変原理に基づくのであり、変分ベイズを含む。
【0039】
一実施形態では、観測関数fは、s=f(w)を満足してよい。一実施形態では、観測関数fは、多変量ガウス分布を使用して実施してよい。例えば、観測関数fは、
【数6】
を満足してよい。あるいは、観測関数fは、
【数7】
に関係してよい。ここで、zは、基礎付けるデータ80g内のサブデータ(因果変数cvに寄与しない)を表してよく、μw,μ(μ)は、0ベクトルとして固定された平均(means)を表してよく、Σは、例えばΣ=LLを満足するようにコレスキー分解によってパラメータ化されてよい。行列Lは、正の対角要素を有する下三角行列であってよく、例えば、
【数8】
を満足するようにパラメータ化されてよい。各行列Lw,Lzzは、一層小さい下三角行列であってよい。行列Mzwは、任意の行列であってよい。各行列Lw,Lzzは、(指数写像によって保証される)正の対角要素と(正の対角要素のない)下三角行列との和によってパラメータ化されてよい。
【0040】
一実施形態では、原因変数(例:cv)とサブデータ(例:w)との間の関係は未知である可能性があるが、原因変数は、CSGモデルを使用してサブデータから予測/推論することができる。例えば、図9は、本発明の実施形態による原因変数cvとサブデータwとの概略図である。(a)、(b)、(c)及び(d)は、それぞれCSGモデルの構造的可能性を示す。scは、意味的要因を表してよく、vは、変動要因を表してよく、実線の矢印は、因果メカニズムp(w|sc,v)及びp(cv|sc)を表してよく、破線の矢印は、学習のための推論モデルq(sc,v|w)を表してよい。図9の(a)では、意味的要因scと変動要因vとの間の無向実線は、領域固有の事前分布(prior)であるp(sc,v)を表してよい。図9の(a)で意味的要因scと変動要因vとの間の無向実線と比較して、図9の(b)は、独立の事前分布
【数9】
を導入して、分布外一般化のパフォーマンスを向上させるように介入を反映している。図9の(a)で意味的要因scと変動要因vとの間の無向実線と比較して、図9の(c)は、意味的要因scと変動要因vとの間に点線で示される事前分布p~(sc,v)を導入して、監視されていないデータを活用するように、因果不変原理に従って介入を反映している。一実施形態では、本発明は、尤度を最大化することによって、CSGモデルp:=<p(sc,v),p(w|sc,v),p(cv|sc)>をサブデータに適合させ、変分推論と証拠下界(ELBO)とを使用して計算を実行し、再パラメータ化トリックを適用した後に、モンテカルロ法を使用して期待値を推定することができる。
【0041】
一実施形態では、因果ベイズ最適化は、損失関数L()に直接関連する原因変数(例えば、位相調整Pdt,Prt,Prr,Pdr,振幅調整Adt,Art,Arr,Adr,及び/又は因果グラフCG1の独立変数OないしOであり、損失関数L()を直接指し示したり、損失関数に影響を与えたりするもの)に対してのみ、最適化を実行してよい。つまり、因果ベイズ最適化の因果の固有次元性は、独立変数OないしO、位相調整Pdt,Prt,Prr,Pdr,及び/又は振幅調整Adt,Art,Arr,Adrの原因である原因変数の数ではなく、損失関数L()の原因/親である、独立変数OないしO(任意であり省略可能)、位相調整Pdt,Prt,Prr,Pdr,及び/又は振幅調整Adt,Art,Arr,Adrの数(例:8又は8+q)によって与えられる。それによって最適な意思決定戦略について推論する能力が向上する。
【0042】
一実施形態では、原因変数(例えば、原因変数として機能する位相調整Pdt,Prt,Prr,Pdr,振幅調整Adt,Art,Arr,Adr,独立変数OないしO,又は原因変数cv(i-1),cv,cv(j-1),cv)は、マニュアルで定義される(例えば、ドメインエキスパートにより)。例えば、原因変数は、ドメインエキスパートにより(非自動的かつ個別に)定義され;あるいは、原因変数は、ドメインエキスパートにより記述された規則を有するプログラムを使用して、自動的に定義される。一実施形態では、サブデータ(例えば、図8の枠付き領域に対応するサブデータw(i-1),w,w(j-1),及びw)は、ドメインエキスパートにより特定の原因変数の定義に従って定義/決定される。
【0043】
位相調整(例:Pdt,Prt,Prr,Pdr,P1ないしPm),振幅調整(例:Adt,Art,Arr,Adr,A1ないしAn),プリコーディング行列(例:F,B),結合行列(例:W,W)は、時間の関数であり(つまり、異なる時刻での値は異なる)、各時刻で適切な角度又は強度を伴ってビームを送受信するようにする。因果ベイズ最適化では、出力される原因変数(例えば、損失関数L())と、入力される原因変数(例えば、位相調整Pdt,Prt,Prr,Pdr,振幅調整Adt,Art,Arr,Adr,及び/又は独立変数OないしO)とを、インバリアント独立変数として扱い、出力される原因変数と入力される原因変数との両方に時間発展が存在すること(即ち、出力される原因変数と入力される原因変数とが時間の経過とともに変化するかどうか)を無視して、原因変数の間に存在する時間依存構造をなくさせる(break)。時間を無視することで問題が大幅に単純化される可能性があるが、その一方で、あらゆる時刻に最適な介入を特定することが阻止される。(特に定常でないシナリオでは)任意の時刻に現在の最適解を提供する代わりに、次善最適の解をもたらす可能性がある。従って、本発明は、動的因果ベイズ最適化に拡張してよい。これは、原因変数の間の因果関係を提供/説明し、因果関係は、時間の経過とともに発展/変化することができ、従って、因果グラフ内の全ての因果効果が時間の経過とともに変化するシナリオの中で容易になる。
【0044】
例えば、図10は、ベイズ最適化、因果ベイズ最適化、及び動的因果ベイズ最適化の概略図である。図10では、XないしXは、3つの異なる時刻での原因変数を表す。YないしYは、3つの異なる時刻での、他の原因変数を表す。ZないしZは、3つの異なる時刻での、その他の原因変数を表す。しかし、本発明はそれに限定されず、一層多くの時刻又は一層多くの原因変数に拡張してよい。動的因果ベイズ最適化は、原因変数の間の因果関係を説明するために、ベイズ最適化と因果ベイズ最適化とを組み合わせる。因果関係は、時間の経過とともに発展する可能性がある。例えば、動的因果ベイズ最適化では、図10に示すように、第1時刻での原因変数Yは、第1時刻での原因変数Zとの関数である。従って、原因変数Yの極値(損失関数L()を表してよく、又はこれに対応してよい)は、原因変数Yに直接関係する原因変数Zのみを使用して求めることができ、因果の固有次元性は1である。同様に、第2時刻での原因変数Yは、第2時刻での原因変数Zと第1時刻での原因変数Yとの関数である。従って、原因変数Yの極値(損失関数L()を表してよく、又はこれに対応してよい)は、原因変数Yに直接関係する原因変数Y及びZのみを使用して求めることができ、因果の固有次元性は2である。同様に、第3時刻での原因変数Yは、第3時刻での原因変数Zと第2時刻での原因変数Yとの関数である。従って、原因変数Yの極値(損失関数L()を表してよく、又はこれに対応してよい)は、原因変数Yに直接関係する原因変数Y及びZのみを使用して求めることができ、因果の固有次元性は2である。言い換えれば、1つの時刻で従属変数として機能する原因変数は、前の時刻での原因変数(従属変数又は独立変数のいずれかとして機能する)の関数である。従って、前者(即ち、特定の時刻で従属変数として機能する原因変数)の極値は、前者(即ち、前の時刻で従属変数又は独立変数として機能する原因変数)に直接関係する後者のみを使用して、求めることが可能である。
【0045】
動的因果ベイズ最適化を使用して求められる最適なプリコーディング行列/行列(複数)と、最適な結合行列/行列(複数)とは、最大合計レートを達成するために、プリコーダとコンバイナとに適用されてよい。
【0046】
一実施形態では、記憶回路は、画像データ又は命令を記憶するように構成されている。記憶回路は、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスク、不揮発性記憶装置、非一時的なコンピュータ可読媒体であってよいが、これに限定されない。一実施形態では、処理回路は(記憶回路に記憶された)命令を実行するように構成されている。処理回路はマイクロプロセッサ、又は特定用途向け集積回路(ASIC)であってよいが、これに限定されない。
【0047】
一実施形態では、信号Z,X及び受信信号Yは、無線周波数信号であってよい。周波数スペクトルは1kHzないし300GHzの範囲であってよいが、これに限定されない。
【0048】
一実施形態では、送信機(例:120,220,320)は、無線ユニット(RU)であってよく、受信機(例:360ないし360,260,又は160)は、顧客宅内機器(CPE)であってよい。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、送信機は、ユーザ側や他の基地局とデータや制御情報を交換する、固定局などの、基地局であってよい。受信機は、ユーザ機器(UE)、ユーザ側機器、又は固定又はモバイル装置などのユーザ側であってよい。
【0049】
別の実施形態では、送信機はCPEであってよく、受信機はRUであってよいが、本発明はこれに限定されない。例えば、送信機はユーザ側であってよく、受信機は基地局であってよい。
【0050】
一実施形態では、通信システム(例:10,20,30)は、RU,UE又はCPEに加えて、他の通信装置(例:サーバ,分散ユニット(DU),又は無線リソース管理ユニット)をさらに含んでよい。一実施形態では、DUは、無線リソース管理ユニットを含んでよく、DCI,UCI,又はシグナリングを送信又は受信してよく、ユーザ側又はユーザ側のクエリ情報を制御してよい。一実施形態では、本発明の因果モデル又はアルゴリズム(例えば、最適化方法40)は、無線リソース管理ユニット又はDUに記憶することができるが、それに限定されない。最適化方法は、無線リソース管理ユニット又はDUによって実行することができるが、それに限定されない。
【0051】
要約すると、DUの場合に、本発明はビームフォーミングスループットを最大化する方法論を提案する。本発明は、動的因果ベイズ最適化に基づく平均二乗誤差を最小化する。ビームフォーミング総和レート(即ちスループット)を最大化するために、別々に、送信でのプリコーディングと受信での結合とを行うことを伴う、動的因果ベイズ最適化を使用して、送信機と受信機とでの、個別に構成されたアナログ及びデジタルビームフォーマーを、本発明は提供する。
【0052】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、装置及び方法の多数の修正及び改変が行われてよいことを容易に観察することである。従って、上記の開示は、添付された請求項の内容及び範囲によってのみ制限されるものと解釈されるものとする。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10