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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097293
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20240710BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20240710BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240710BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B60C1/00 B
B60C1/00 A
B60C13/00 E
B60C11/00 D
C08F210/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205259
(22)【出願日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2023000749
(32)【優先日】2023-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北郷 亮太
【テーマコード(参考)】
3D131
4J100
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA06
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BB09
3D131BB11
3D131BC35
3D131EA02U
3D131EA10U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131GA19
4J100AA02P
4J100AS03Q
4J100AS06Q
4J100AS21Q
4J100CA04
4J100CA10
4J100DA01
4J100DA25
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】オゾン劣化後の耐久性能が向上したタイヤを提供すること。
【解決手段】少なくとも1つのゴム層を有するトレッド部、サイドウォール部、およびカーカス層を備えたタイヤであって、トレッド部およびサイドウォール部が、それぞれゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、トレッド部を構成するゴム成分およびサイドウォール部を構成するゴム成分のうち少なくとも一方が、エチレン単位および分枝共役ジエン単位を有する共重合体Aを含み、トレッド部を構成するトレッドゴムのゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS1(質量部)、サイドウォール部を構成するゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS2(質量部)としたとき、S1+S2が1.0質量部未満であるタイヤ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのゴム層を有するトレッド部、サイドウォール部、およびカーカス層を備えたタイヤであって、
前記トレッド部および前記サイドウォール部が、それぞれゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、
前記トレッド部を構成するゴム成分および前記サイドウォール部を構成するゴム成分のうち少なくとも一方が、エチレン単位および分枝共役ジエン単位を有する共重合体Aを含み、
前記トレッド部を構成するトレッドゴムのゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS1(質量部)、前記サイドウォール部を構成するゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS2(質量部)としたとき、S1+S2が1.0質量部未満であるタイヤ。
【請求項2】
前記共重合体Aがランダム共重合体である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記共重合体Aにおける分枝共役ジエン単位が10モル%以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記共重合体Aにおける分枝共役ジエン単位が30モル%以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項5】
前記分分枝ジエン単位が3,4配置を含み、3,4配置が分枝共役ジエン単位全体の70モル%以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項6】
前記共重合体Aのガラス転移温度が-60℃以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項7】
前記共重合体Aのガラス転移温度が-40℃以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項8】
前記共重合体Aの重量平均分子量が10000以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項9】
前記サイドウォール部を構成するゴム組成物の破断強度が12MPa以上、かつ破断伸びが600%以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項10】
前記サイドウォール部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量をCSW(質量%)、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みをT(mm)としたとき、CSW/Tが10以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項11】
前記サイドウォール部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量をCSW(質量%)、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みをT(mm)としたとき、CSW/Tが60以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項12】
SWが50質量%以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項13】
トレッド部を構成する少なくとも1層のゴム層の30℃におけるtanδ(30℃tanδT)が0.35以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項14】
トレッド部を構成する少なくとも1層のゴム層のゴム成分中の共重合体Aの含有量CTが60質量%以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項15】
S1が0.1質量部以上である、請求項1または2記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの耐摩耗性が向上し、市場での使用期間が長期化しているため、タイヤの長期的な損傷や劣化による耐劣化性能、耐き裂成長性などの各種性能を改善することが要求されている。
【0003】
タイヤ用ゴム組成物には、オゾン存在下でのクラックの発生やその進行を抑制するために、老化防止剤やワックスなどを配合することが知られている。例えば、特許文献1には所定のワックスおよび所定の界面活性剤を配合したタイヤトレッド用ゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-177873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オゾン劣化後の耐久性能が向上したタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のタイヤに関する。
少なくとも1つのゴム層を有するトレッド部、サイドウォール部、およびカーカス層を備えたタイヤであって、
前記トレッド部および前記サイドウォール部が、それぞれゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、
前記トレッド部を構成するゴム成分および前記サイドウォール部を構成するゴム成分のうち少なくとも一方が、エチレン単位および分枝共役ジエン単位を有する共重合体Aを含み、
前記トレッド部を構成するトレッドゴムのゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS1(質量部)、前記サイドウォール部を構成するゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS2(質量部)としたとき、S1+S2が1.0質量部未満であるタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オゾン劣化後の耐久性能が向上したタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施態様に係るタイヤの概略部分断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッド部の一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態であるタイヤ用ゴム組成物は、少なくとも1つのゴム層を有するトレッド部、サイドウォール部、およびカーカス層を備えたタイヤであって、前記トレッド部および前記サイドウォール部が、それぞれゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、前記トレッド部を構成するゴム成分および前記サイドウォール部を構成するゴム成分のうち少なくとも一方が、エチレン単位および分枝共役ジエン単位を有する共重合体Aを含み、前記トレッド部を構成するトレッドゴムのゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS1(質量部)、前記サイドウォール部を構成するゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS2(質量部)としたとき、S1+S2が1.0質量部未満であるタイヤである。
【0010】
理論に拘束されることは意図しないが、本発明のタイヤにおいてオゾン劣化後の耐久性能が向上するメカニズムは、以下のように考えられる。
【0011】
オゾン存在下でのクラックの発生やその進行を抑制するために、フェニレンジアミン系老化防止剤を多量に配合すると、接着不足による耐久性能の悪化が懸念される。一方で、フェニレンジアミン系老化防止剤を配合せずに、通常のジエン系ゴムのみの配合とすると、オゾンでの劣化が懸念される。本発明のタイヤは、(1)トレッド部を構成するゴム成分およびサイドウォール部を構成するゴム成分のうち少なくとも一方が、エチレン単位と分枝共役ジエン単位とを有する共重合体Aを含むことにより、ゴム成分の相溶性が向上し、フィラーとの相溶性も向上するため、耐久性能の向上に寄与すると考えられ、(2)トレッド部を構成するゴム組成物およびサイドウォール部を構成するゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の合計含有量を1.0質量部未満とすることで、トレッドゴムが、オゾン耐久性を維持しながら、低分子成分のゴム界面への移行を抑制するため、トレッド部とサイドウォール部での接着性が向上し、タイヤの耐久性の向上に寄与すると考えられる。そして、上記(1)および(2)が協働することで、オゾン劣化後の耐久性能が向上したタイヤが提供されるという特筆すべき効果が達成されると考えられる。
【0012】
共重合体Aは、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0013】
ランダム共重合体であることにより、分子内の凝集を抑制し、オゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0014】
共重合体Aにおける分枝共役ジエン単位は、10モル%以上30モル%以下であることが好ましい。
【0015】
共重合体Aにおける分枝共役ジエン単位が上記の範囲であることにより、タイヤ加硫時の架橋反応性を担保したまま、製品使用時のオゾンによる共重合体の分子鎖切断の進行を抑制し、オゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0016】
分枝共役ジエン単位が、3,4配置を含み、3,4配置が分枝共役ジエン単位全体の70モル%以上であることが好ましい。
【0017】
分枝共役ジエン単位が、3,4配置を含み、3,4配置が分枝共役ジエン単位全体の70モル%以上であることで、タイヤ加硫時の架橋反応性を担保したまま、製品使用時のオゾンによる共重合体の分子鎖切断を抑制し、オゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0018】
共重合体Aのガラス転移温度は、-60℃以上-40℃以下であることが好ましい。
【0019】
共重合体Aのガラス転移温度が上記の範囲であることにより、耐久性能の温度依存性が小さくなり、オゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0020】
共重合体Aの重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。
【0021】
共重合体Aの重量平均分子量が10000以上であることにより、共重合体同士の三次元的な分子の絡み合いが増加し、オゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0022】
本発明のサイドウォール部を構成するゴム組成物の破断強度は12MPa以上、かつ破断伸びは600%以上であることが好ましい。破断強度および破断伸びが前記範囲であることにより、オゾン劣化後の耐久性能がより向上すると考えられる。
【0023】
本発明のサイドウォール部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量をCSW(質量%)、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みをT(mm)としたとき、CSW/Tが10以上60以下であることが好ましい。
【0024】
SW/Tが上記の範囲であることにより、サイドウォールが薄い場合にも共重合体Aが一定量存在するため、共重合体Aによりゴム成分の相溶性が向上し、オゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0025】
SWは、50質量%以上であることが好ましい。CSWが、前記の範囲であることにより、サイドウォール部を構成するゴム組成物のゴム成分中に共重合体Aが十分に存在するため、ゴム成分の相溶性が向上し、オゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0026】
本発明のトレッド部を構成する少なくとも1層のゴム層の30℃におけるtanδ(30℃tanδT)は、0.40以下であることが好ましい。
【0027】
30℃tanδTを上記の値とすることにより、発熱性が下がり、耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0028】
本発明のトレッド部を構成する少なくとも1層のゴム層のゴム成分中の共重合体Aの含有量CTは、65質量%以上であることが好ましい。CTが前記の範囲であることにより、トレッド部を構成するゴム組成物のゴム成分中に共重合体Aが十分に存在するため、ゴム成分の相溶性が向上し、オゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0029】
S1は0.1質量部以上であることが好ましい。S1が0.1質量部以上であることで、オゾン存在下でのクラックの発生やその進行が抑制され、タイヤのオゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0030】
<定義>
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば“JATMA YEAR BOOK”に記載されている適用サイズにおける「標準リム」、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば“STANDARDS MANUAL”に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば“YEAR BOOK”に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0031】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば「最高空気圧」、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の「最大値」、とし、正規リムと同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。
【0032】
「正規状態」は、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。なお、前記の規格体系において定めを持たないサイズのタイヤの場合は、そのタイヤが前記の最小リムにリム組みされかつ250kPaが充填され、しかも、無負荷の状態をいうものとする。
【0033】
「タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みT」は、サイドウォールのタイヤ最大幅位置の法線に沿って計測される、サイドウォール表面からカーカスコード表面までの距離(mm)である。「タイヤ最大幅位置」とは、正規状態で測定されたタイヤ幅方向断面内の最大幅位置をいう。
【0034】
「トレッド部を構成するトレッドゴムのゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量S1(質量部)」は、トレッド部を構成するゴム層が2層以上である場合には、トレッドの表面に最も近い層であって、ゴム層の厚みが1mm以上であるゴム層(後述する「トレッド第一層6」)のゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をいう。
【0035】
「可塑剤の含有量」には、可塑剤によって伸展されたゴム成分中の可塑剤量も含む。同様に、「オイルの含有量」は、油展ゴムに含まれるオイル量も含む。
【0036】
<測定方法>
「共重合体のガラス転移温度」は、JIS K 7121にしたがい、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、測定される。
【0037】
「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。例えば、ゴム成分、樹脂成分等に適用される。
【0038】
「30℃tanδ」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、温度30℃、初期歪5%、動歪±1%、周波数10Hz、伸長モードの条件下で測定する損失正接である。損失正接測定用サンプルは、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmの加硫ゴム組成物である。タイヤのトレッド部から切り出して作製する場合には、長さ方向はタイヤの周方向である。
【0039】
「ゴム組成物の破断強度」は、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張試験特性の求め方」に準じて、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施することにより測定される。測定用試験片をタイヤから作製する場合には、タイヤ周方向が縦方向となるように厚さ1mmの7号ダンベル形状の試験片を作製する。
【0040】
「ゴム組成物の破断伸び」は、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張試験特性の求め方」に準じて、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施することにより測定される。測定用試験片をタイヤから作製する場合には、「ゴム組成物の破断強度」の場合と同様に作製する。
【0041】
「スチレン含量」は、1H-NMR測定により算出される値であり、例えば、SBR等のスチレンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。「ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される値であり、例えば、SBR、BR等のブタジエンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。「シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される値であり、例えば、BR等のブタジエンに由来する繰り返し単位を有するゴム成分に適用される。
【0042】
「平均一次粒子径」は、粒子を透過型または走査型電子顕微鏡で写真撮影し、粒子の形状がほぼ球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状または棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には短径と直径の平均を粒子径としたときの、粒子400個の算術平均により求められる値である。なお、粒子の形状がほぼ球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状または棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には短径と長径の平均を粒子径とする。
【0043】
「カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)」は、JIS K 6217-2:2017に準じて測定される。「シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。
【0044】
[タイヤ]
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態のタイヤを説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明のタイヤは、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0045】
図1に、本発明の一実施形態であるタイヤを例示するが、これに限定されるものではない。図1には、このタイヤの周方向に対して垂直な断面の一部が示されている。図1において、上下方向がタイヤ半径方向であり、左右方向がタイヤ軸方向であり、紙面に垂直な方向がタイヤ周方向である。
【0046】
本発明のゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤ(以下、本発明のタイヤという)は、周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部31と、ビードコア21を有する一対のビード部と、ビードコア21に係留された少なくとも1層のカーカス33と、カーカス33のタイヤ半径方向外側に配された少なくとも1層のベルト2とを備えている。図1においては、ベルト2は2層になっている。
【0047】
本発明のタイヤのビード部は、サイドウォール部31のタイヤ軸方向内側に位置している。該ビード部は、ビードコア21と、このコアからタイヤ半径方向外側に延びるビードエイペックス22とを備えている。ビードエイペックス22は、タイヤ半径方向外向きに先細りである。
【0048】
図1において、カーカス33は、ビードコア21の周りを、タイヤ軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカス33には、主部と折り返し部とが形成されている。ストリップエイペックス25は、概してタイヤ半径方向に延在している。ストリップエイペックス25は、そのタイヤ半径方向内側端の近傍において、ビードエイペックス22と積層されている。ストリップエイペックス25は、その半径方向内側端の近傍において、カーカス33の主部および折り返し部に挟まれている。
【0049】
「タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みT」は、サイドウォール部31のタイヤ最大幅位置PWの法線に沿って計測される、サイドウォール表面からカーカス33表面までの距離(mm)である。本発明において、「タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みT」は、1.0mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、1.7mm以上が特に好ましい。また、T(mm)は、本発明の効果の観点から、12.0mm以下が好ましく、11.0mm以下がより好ましく、10.0mm以下がさらに好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。
【0050】
タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みT(mm)に対するサイドウォール部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量CSW(質量部)の比CSW/Tは、50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上がさらに好ましい。また、CSW/Tは、100以下が好ましく、90以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。
【0051】
≪破断強度≫
本発明において、サイドウォール部31を構成するゴム組成物の破断強度は、10MPa以上が好ましく、11MPa以上がより好ましく、12MPa以上がさらに好ましく、12MPa超がさらに好ましく、13MPa超が特に好ましい。一方、サイドウォール部31を構成するゴム組成物の破断強度の上限値は特に制限されないが、例えば、50MPa以下、45MPa以下、40MPa以下とすることができる。破断強度は、ゴム成分の配合量や架橋剤の種類などによって調節できる。例えば、イソプレン系ゴムの含有量を下げることで破断強度を上げることができる。
【0052】
≪破断伸び≫
本発明において、サイドウォール部31を構成するゴム組成物の破断伸びは、本発明の効果の観点から、580%以上が好ましく、590%以上がより好ましく、600%以上がさらに好ましく、610%以上がさらに好ましく、615%以上がさらに好ましく、620%以上が特に好ましい。一方、破壊伸びの上限値は特に制限されないが、例えば、900%以下、850%以下、800%以下とすることができる。ゴム組成物の破断伸びは、ゴム成分の配合量や樹脂成分の配合量、樹脂成分の種類などによって調節できる。例えば、イソプレン系ゴムの含有量を下げることで破断伸びを上げることができる。
【0053】
図2は、タイヤのトレッド部の一部が示された断面図である。図2において、上下方向がタイヤ半径方向であり、左右方向がタイヤ幅方向であり、紙面に垂直な方向がタイヤ周方向である。
【0054】
本発明のタイヤのトレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝12を有していることが好ましい。周方向溝12は、周方向に沿って直線状に延びていてもよく、周方向に沿ってジグザグ状に延びていてもよい。
【0055】
本発明のタイヤのトレッド部は、単一のゴム層より構成されていてもよく、2層以上のゴム層により構成されていてもよい。図2には、トレッド面を構成する第一層6と、第一層6のタイヤ半径方向内側に存在する第二層7が示されている。第一層6は、典型的にはキャップトレッドに相当する。第二層7とバンドとの間に、1以上のゴム層が存在してもよい。
【0056】
図2において、両矢印t1は第一層6の厚み、両矢印t2は第二層7の厚みである。図2には、陸部3のタイヤ幅方向の中点が、符号Pとして示されている。符号Nで示される直線は、点Pを通り、この点Pにおける接平面に垂直な直線(法線)である。本明細書では、厚みt1およびt2は、図2の断面において、溝が存在しない位置におけるトレッド面上の点Pから引いた法線Nに沿って測定される。
【0057】
本発明において、トレッド部の総厚みは特に限定されないが、30mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましく、20mm以下がさらに好ましく、15mm以下が特に好ましい。また、トレッド部の総厚みは、3.0mm以上がより好ましく、5.0mm以上がより好ましく、7.0mm以上がさらに好ましい。
【0058】
本発明において、トレッド第一層6の厚みt1は、1.0mm以上が好ましく、1.2mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。また、トレッド第一層6の厚みt1は、特に制限されないが、10.0mm以下が好ましく、9.0mm以下がより好ましく、8.0mm以下がさらに好ましい。すなわち、本発明において、トレッド第一層6とは、トレッド表面に最も近い層のうち、厚みが1.0mm以上の層をいう。
【0059】
トレッド第一層6の厚みt1(mm)に対するトレッド第一層を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量Ct1(質量部)の比Ct1/t1は、60以上が好ましく、65以上がより好ましく、70以上がさらに好ましい。また、Ct1/t1は、100以下が好ましく、95以下がより好ましく、90以下がさらに好ましい。Ct1/t1が前記の範囲であることにより、トレッド第一層が薄い場合にも共重合体Aが一定量存在するため、共重合体Aによりゴム成分の相溶性が向上し、オゾン劣化後の耐久性能がさらに向上すると考えられる。
【0060】
本発明において、トレッド第二層7の厚みt2は、特に制限されないが、0.8mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。また、トレッド第二層7の厚みt2は、特に制限されないが、10.0mm以下が好ましく、9.0mm以下がより好ましく、8.0mm以下がさらに好ましい。
【0061】
本発明において、トレッド部を構成する少なくとも1層のゴム層の30℃tanδ(30℃tanδT)は、本発明の効果の観点から、0.22以下であることが好ましく、0.21以下であることがより好ましく、0.20以下でることがさらに好ましく、0.19以下であることがさらに好ましい。また、30℃tanδTは、グリップ性能の観点から、0.14以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.155以上がさらに好ましい。
【0062】
本発明において、トレッド第一層の30℃tanδ(30℃tanδT1)は、本発明の効果の観点から、0.22以下であることが好ましく、0.21以下であることがより好ましく、0.20以下でることがさらに好ましく、0.19以下であることがさらに好ましい。また、30℃tanδT1は、グリップ性能の観点から、0.14以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.155以上がさらに好ましい。
【0063】
ゴム組成物の30℃tanδは、タイヤ工業における常法により、調節することができる。例えば、ガラス転移温度の高いゴム成分を用いること、フィラーの量を多くすること、粒子径を小さくすること、可塑剤成分として樹脂成分を多くすること、硫黄および促進剤の量を減らすことなどにより、30℃tanδを大きくすることができる。
【0064】
本発明のタイヤは、いずれも以下に説明する原料を用いて、製造することができる。以下に詳細に説明する。
【0065】
<ゴム成分>
本発明において、トレッド部およびサイドウォール部を構成するゴム組成物の少なくとも一方が共重合体Aを含有し、トレッド部およびサイドウォール部を構成するゴム組成物のいずれもが共重合体Aを含有することが好ましい。また、トレッド部およびサイドウォール部を構成するゴム組成物は、共重合体Aのみからなるゴム成分としてもよい。
【0066】
<共重合体A>
共重合体Aは、ジエン系ゴムであり、エチレン単位と分枝共役ジエン単位とを有する共重合体であり、他のモノマー単位を有するものであってもよく、好ましくは、エチレン単位と分枝共役ジエン単位からなる共重合体、エチレン単位と分枝共役ジエン単位と他のモノマー単位からなる三元共重合体、および、エチレン単位と分枝共役ジエン単位と他のモノマー単位からなる四元共重合体である。共重合体Aは、エチレン単位と分枝共役ジエン単位とを有する共重合体である限り、各単位の配列に特に限定はなく、ランダム共重合により得られるランダム共重合体でも、ブロック共重合により得られるブロック共重合体でもよいが、ランダム共重合体が好ましい。これらの共重合体Aは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
エチレン単位とは、共重合体Aにおける、エチレン由来の構成単位である。エチレン単位は、1,3-ブタジエン由来の構成単位(ブタジエン単位)への水素添加によって形成されたものであってもよい。
【0068】
分枝共役ジエン単位とは、共重合体Aにおける、分枝共役ジエン化合物由来の構成単位を指す。
【0069】
分枝共役ジエン化合物は、下記式で表される1,3-ジエンであることが好ましい。
CH2=CR-CH=CH2
(式中、Rは1~20個の炭素原子を有する炭化水素を表す。)
【0070】
Rとしては、3~20個の炭素原子を有する炭化水素が好ましく、3~15個の炭素原子を有する炭化水素がより好ましく、5~12個の炭素原子を有する炭化水素がさらに好ましい。また、炭化水素としては特に制限されないが、脂肪族炭化水素が好ましい。
【0071】
分枝共役ジエン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。分枝共役ジエン化合物としては、イソプレン、ミルセン、およびファルネセンからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ミルセンおよび/またはファルネセンがより好ましい。ファルネセンとしては、α-ファルネセン、β-ファルネセンのいずれでもよい。なお、α-ファルネセンとβ-ファルネセンとは組み合わせて用いてもよい。
【0072】
上記分枝共役ジエン単位は、下記式(1)で表される1,2配置、下記式(2)で表される3,4配置、および下記式(3)で表される1,4配置を取り得る。本発明において、共重合体Aの分枝共役ジエン単位は、下記式(2)で表される3,4配置を含むことが好ましく、3,4配置は共重合体Aの分枝共役ジエン単位全体の60モル%以上であることが好ましく、65モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、75モル%以上であることが特に好ましい。
【化1】
【0073】
共重合体Aにおける分枝共役ジエン単位は、共架橋性の観点から、8モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、12モル%以上がさらに好ましく、15モル%以上が特に好ましい。また、分枝共役ジエン単位は、オゾンとの反応を抑制する観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましい。
【0074】
他のモノマー単位としては、ブタジエン単位、芳香族ビニル単位、非共役オレフィン単位などが挙げられる。
【0075】
芳香族ビニル単位とは、共重合体における、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を指す。ここで、芳香族ビニル化合物とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物をいう。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
非共役オレフィン単位とは、共重合体における、非共役オレフィン化合物に由来する構成単位を指す。ここで、非共役オレフィン化合物とは、不飽和の脂肪族炭化水素であって、炭素-炭素二重結合を1個以上有する非共役系の化合物をいう。非共役オレフィン化合物としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン;ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、N-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられ、1-ブテンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
共重合体Aは、所望により、変性剤で処理して、シリカと相互作用を有する官能基を導入した変性体とすることもできる。そのような官能基としては、この分野で通常使用するものをいずれも好適に使用することができ、例えば、アルコキシシリル基(例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基)等が挙げられる。例えば、上記共重合体を合成後水素添加処理する前に、変性剤としてクロロトリエトキシシランを用いて処理すれば、共重合体の活性末端にトリエトキシシリル基が導入された変性体を得ることができる。
【0078】
共重合体Aのガラス転移温度は、本発明の効果の観点から、-80℃以上が好ましく、-70℃以上がより好ましく、-65℃以上がさらに好ましく、-60℃以上が特に好ましい。また、共重合体Aのガラス転移温度は、本発明の効果の観点から、-20℃以下が好ましく、-30℃以下がより好ましく、-40℃以下がさらに好ましい。なお、共重合体Aのガラス転移温度は前記測定方法により求められる。
【0079】
共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、ウェットグリップ性能の観点から、10000以上が好ましく、12000以上がより好ましく、15000以上がさらに好ましい。また、架橋均一性の観点から、重量平均分子量は200万以下が好ましく、180万以下がより好ましく、150万以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、共重合体Aの重量平均分子量は、前記測定方法により測定される。
【0080】
共重合体AのMwは、常法により制御することができ、例えば、重合時に仕込む各モノマーの、触媒に対する量を調節することにより制御することができる。例えば、全モノマー/アニオン重合触媒比または全モノマー/配位重合触媒比を大きくすればMwを大きくすることができ、逆に小さくすればMwを小さくすることができる。
【0081】
共重合体Aは、それぞれモノマー成分を、常法により、例えば、アニオン重合、配位重合等による共重合反応に付することにより共重合体とすることにより製造することができる。さらに、該共重合体を水素添加することにより水添体とすることにより製造することができる。分枝共役ジエンの水素添加反応は、常法により実施することができ、金属触媒による接触水素添加、ヒドラジンを用いる方法などをいずれも好適に使用することができる。例えば、金属触媒による接触水素添加は、有機溶媒中、金属触媒の存在下、水素を加圧添加することにより実施することができ、該有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等をいずれも好適に使用することができる。これら有機溶媒は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、金属触媒としては、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケルなどをいずれも好適に使用することができる、これら金属触媒は1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。加圧する際の圧力としては、例えば、1~300kg重/cm2であることが好ましい。
【0082】
共重合体Aがエチレン単位と分枝共役ジエン単位とを有することの確認は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、1H-NMR、13C-NMR等の手法を用いることによって行うことができる。また、1H-NMRスペクトルや13C-NMRスペクトルに基づき、各単量体成分由来の単位の存在を確認することができる。
【0083】
共重合反応は、各モノマー成分を共重合させるものである限り、共重合させる順序において特に限定はなく、例えば、すべてのモノマーを一度にランダム共重合させてもよいし、あるいは、あらかじめ特定のモノマーを共重合させた後に、残りのモノマーを加えて共重合させても、特定のモノマー毎に予め共重合させたものをブロック共重合させてもよいが、本発明においては、ランダム共重合させることが好ましい。重合方法についても、特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法、気相重合法、バルク重合法などのいずれをも用いることができるが、このうち、溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、バッチ式および連続式のいずれであってもよい。
【0084】
<共重合体Aの含有量>
サイドウォール部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量CSWは、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%としてもよい。サイドウォール部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量CSWの上限値は、100質量%としてもよく、特に制限されない。
【0085】
トレッド部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量CTは、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%としてもよい。トレッド部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量CTの上限値は、100質量%としてもよく、特に制限されない。
【0086】
トレッド部が二層以上である場合には、トレッド部を構成する少なくとも1層の共重合体Aの含有量CTが、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%としてもよい。トレッド部を構成する2以上のゴム層のうち、第一層が、前記CTを満たすことがより好ましい。
【0087】
<共重合体A以外のゴム成分>
共重合体A以外のゴム成分としては、共重合体A以外のジエン系ゴムが好適に用いられる。共重合体A以外のジエン系ゴムとしては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらその他のジエン系ゴム成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
NRとしては、特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
【0090】
トレッド部およびサイドウォール部を構成するゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、ウェットグリップ性能の観点および共重合体Aの含有量を確保する観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましい。一方、該含有量の下限値は特に制限されないが、例えば、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上とすることができる。
【0091】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス含量が50モル%未満のBR(ローシスBR)、シス含量が90モル%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)、UBE(株)、JSR(株)等より市販されているものを使用することができる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。シス含量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは96モル%以上、さらに好ましくは97モル%以上、特に好ましくは98モル%以上である。なお、シス含量は、前記測定方法により測定される。
【0093】
変性BRとしては、末端および/または主鎖がケイ素、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む官能基によって変性された変性ブタジエンゴム(変性BR)が好適に用いられる。
【0094】
その他の変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)等が挙げられる。また、変性BRは、水素添加されていないもの、水素添加されているもののいずれであってもよい。
【0095】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性の観点からは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、BRの重量平均分子量は、前記測定方法により求めることができる。
【0096】
トレッド部およびサイドウォール部を構成するゴム成分中のBRの含有量は、ウェットグリップ性能の観点および共重合体Aの含有量を確保する観点からから、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましい。また、該含有量の下限値は特に制限されないが、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上とすることができる。
【0097】
(SBR)
SBRとしては特に限定はなく、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分枝構造を有するもの等)等が挙げられる。なかでも、低燃費性能および耐摩耗性能を良好に改善できるという点から、S-SBRおよび変性SBRが好ましい。これらのSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
トレッド部およびサイドウォール部を構成するゴム成分中のSBRの含有量は、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上とすることができる。一方、ジエン系ゴムゴム成分中のSBRの含有量は、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0099】
(その他のゴム成分)
ゴム成分は、本発明の効果に影響を与えない範囲で、ジエン系ゴム以外の他のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これら他のゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
<フィラー>
本発明に係るゴム組成物は、フィラーを含有することが好ましい。フィラーとしては、カーボンブラックおよび/またはシリカを含有することが好ましい。
【0101】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なお、一般的な鉱油を燃焼させて生成されるカーボンブラック以外に、リグニン等のバイオマス材料を用いたカーボンブラックを用いてもよい。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
トレッド部を構成するゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合の窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性の観点から、30m2/g以上が好ましく、50m2/g以上がより好ましく、70m2/g以上がさらに好ましく、90m2/g以上が特に好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、120m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0103】
サイドウォール部を構成するゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合の窒素吸着比表面積(N2SA)は、本発明の効果の観点から、20m2/g以上が好ましく、40m2/g以上がより好ましく、50m2/g以上がさらに好ましく、60m2/g以上が特に好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、120m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0104】
トレッド部を構成するゴム組成物における、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、耐摩耗性能およびウェットグリップ性能の観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、低燃費性能の観点からは、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0105】
サイドウォール部を構成するゴム組成物における、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、本発明の効果の観点から、30質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、45質量部以上が特に好ましい。また、耐久性能の観点からは、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましく、65質量部以下が特に好ましい。
【0106】
サイドウォール部を構成するゴム組成物は、フィラーとしてカーボンブラックを含有することが好ましく、フィラーとしてカーボンブラックのみを含有しても良い。
【0107】
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。なお、上記のシリカの他に、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカを適宜用いてもよい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのシリカの他、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカも用いることができる。
【0108】
シリカのN2SAは、本発明の効果の観点から、120m2/g以上が好ましく、140m2/g以上がより好ましく、160m2/g以上がさらに好ましく、180m2/g以上が特に好ましい。一方、分散性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、シリカのN2SAは、前記測定方法により測定される。
【0109】
シリカの平均一次粒子径は、本発明の効果の観点から、22nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、18nm以下がさらに好ましく、17nm以下が特に好ましい。一方、分散性の観点からは、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上がさらに好ましい。なお、シリカの平均一次粒子径は、前記測定方法により測定される。
【0110】
トレッド部を構成するゴム組成物における、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、40質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、150質量部以下が好ましく、140質量部以下がより好ましく、130質量部以下がさらに好ましい。
【0111】
トレッド部を構成するゴム組成物は、フィラーとしてカーボンブラックおよびシリカを含有することが好ましい。トレッド部を構成するゴム組成物における、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックとシリカの合計含有量は、40質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、50質量部超がさらに好ましい。また、加工性の観点からは、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、130質量部以下がさらに好ましい。
【0112】
トレッド部を構成するゴム組成物がフィラーとしてカーボンブラックおよびシリカを含有する場合のカーボンブラックに対するシリカの含有量の比は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましい。また該含有量の比は、0.8以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、2.0以上がさらに好ましく、2.5以上が特に好ましい。
【0113】
サイドウォール部を構成するゴム組成物は、シリカを含有せず0質量部としても良い。サイドウォール部を構成するゴム組成物がシリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は特に制限されず、例えば1質量部超、3質量部超、5質量部超とすることができる。
【0114】
(その他のフィラー)
フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ以外に、さらにその他のフィラーを用いてもよい。そのようなフィラーとしては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー等この分野で一般的に使用される充填剤をいずれも用いることができる。これらのフィラーの他、バイオ炭(BIOCHAR)を適宜用いてもよい。これらのフィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来シリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、モメンティブ社等より市販されているものを使用することができる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
シランカップリング剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、シリカの分散性を高める観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましく、4.0質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましい。
【0117】
シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量は、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましい。また、コストおよび加工性の観点からは、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましい。
【0118】
<その他の配合剤>
本発明に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、可塑剤、ワックス、加工助剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0119】
(可塑剤)
本発明に係るゴム組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤としては、例えば、樹脂、オイル、液状ゴム等が挙げられる。
【0120】
樹脂としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられ、これらが水素添加されたものであってもよい。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
本明細書において「C5系石油樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、シクロペンタジエン系樹脂が好適に用いられる。シクロペンタジエン系樹脂としては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)、シクロペンタジエン樹脂、メチルシクロペンタジエン樹脂(水素添加されていないシクロペンタジエン系樹脂)、ならびにこれらのシクロペンタジエン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたシクロペンタジエン系樹脂)が挙げられる。シクロペンタジエン系樹脂としては、例えば、エクソンモービルケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0122】
本明細書において「芳香族系石油樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。
【0123】
芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレン誘導体もしくはスチレン誘導体の単独重合体またはα-メチルスチレン誘導体とスチレン誘導体および/またはインデンとの共重合体が好ましい。なお、前記の「α-メチルスチレン誘導体」とは、ベンゼン環上が置換されていてもα-メチルスチレン化合物(好ましくは、ベンゼン環上が炭素数1~4の飽和炭化水素基で置換されていてもよいα-メチルスチレン化合物)を意味し、前記の「スチレン誘導体」とは、ベンゼン環上が置換されていてもスチレン化合物(好ましくは、ベンゼン環上が炭素数1~4の飽和炭化水素基で置換されていてもよいスチレン化合物)を意味する。前記の芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、三井化学(株)、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0124】
本明細書において「C5C9系石油樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0125】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。テルペン系樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0126】
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、変性ロジン樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、荒川化学工業(株)、ハリマ化成(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0127】
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0128】
樹脂としては、石油樹脂およびテルペン系樹脂からなる群から選ばれる1以上が好ましく、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、およびテルペン系樹脂からなる群から選ばれる1以上がより好ましい。
【0129】
樹脂を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、樹脂の含有量は、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
【0130】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合機やエンジンに用いられた後の廃油や、飲食店で使用された廃食用油を精製したものを用いてもよい。
【0131】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、6質量部以上がさらに好ましく、9質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、120質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
【0132】
本発明のゴム組成物における、ゴム成分100質量部に対する可塑剤の含有量(複数の可塑剤を併用する場合は全ての合計量)は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましく、18質量部以上がさらに好ましく、25質量部以上が特に好ましい。また、該含有量は、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましく、70質量部以下が特に好ましい。
【0133】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0134】
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤としては、例えば、Schill+Seilacher社、パフォーマンスアディティブス社等より市販されているものを使用することができる。
【0135】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8.0質量部以下がより好ましい。
【0136】
本発明のタイヤは、オゾン劣化後の耐久性能を向上するために、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0137】
老化防止剤としては、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられる。アミン系としては、アミン-ケトン系、芳香族第二級アミン系が挙げられ、芳香族第二級アミン系を含むことが好ましく、オゾン存在下でのクラックの発生やその進行を抑制する観点からは、芳香族第二級アミン系のなかでも、フェニレンジアミン系老化防止剤を含有することがより好ましい。フェニレンジアミン系老化防止剤としては、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等が挙げられ、なかでもN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンが好適に用いられる。これらの老化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
トレッド部を構成するゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量S1は、0質量部とすることもできるが、トレッド部の耐久性能の観点から、0.1質量部以上であることが好ましく、0.1質量部超であることがより好ましい。一方、S1の上限値は、本発明の効果の観点から、1.0質量部未満であり、0.8質量部未満が好ましく、0.7質量部未満がより好ましく、0.6質量部未満がさらに好ましく、0.5質量部未満が特に好ましい。
【0139】
サイドウォール部を構成するゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量S2は、本発明の効果の観点から、1.0質量部未満であり、0.8質量部未満が好ましく、0.6質量部未満がより好ましく、0.5質量部未満がさらに好ましく、0.4質量部未満がさらに好ましく、0.3質量部未満が特に好ましい。また、S2の下限値は特に制限されず、例えば、0質量部、0.1質量部以上、0.1質量部超、0.2質量部超とすることができる。
【0140】
本発明において、S1+S2は、1.0質量部未満であり、0.8質量部未満であることが好ましく、0.7質量部未満であることがより好ましく、0.6質量部未満であることがさらに好ましく、0.5質量部未満であることが特に好ましい。S1+S2下限値は、0質量部とすることもできるが、トレッド部の耐久性能の観点から、0.1質量部以上であることが好ましく、0.1質量部超であることがより好ましい。S1+S2が上記の範囲であることにより、接着不良による耐久性能の悪化を防ぎつつ、オゾン耐久性を向上させることができる。
【0141】
キノリン系老化防止剤としては、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等が挙げられる。本発明において、トレッド部を構成するゴム組成物は、キノリン系老化防止剤を含有することが好ましい。
【0142】
老化防止剤のゴム成分100質量部に対する合計含有量(複数の老化防止剤を併用する場合は全ての合計量)は、本発明の効果の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性やグリップ性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0143】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0144】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0145】
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0146】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましく、2.5質量部以下が特に好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0147】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0148】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上の加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤がより好ましい。
【0149】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
【0150】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
【0151】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0152】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量(複数の加硫促進剤を併用する場合は全ての合計量)は、1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上がさらに好ましい。また、該含有量は、8.0質量部以下が好ましく、7.0質量部以下がより好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
【0153】
<製造>
本発明に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0154】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
【0155】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0156】
本発明のタイヤは、通常の方法により製造できる。すなわち、前記の方法により得たそれぞれのゴム層に対応する未加硫のゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機で各ゴム層の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0157】
<用途>
本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤに好適に用いることができ、なかでも乗用車用タイヤに用いることが好ましい。なお、乗用車用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、その最大負荷能力が1000kg以下のものを指す。また、本発明のタイヤは、全シーズン用タイヤ、夏用タイヤ、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤに使用可能である。
【実施例0158】
以下に示す各種薬品を用いて配合を変化させて得られるゴム組成物を用いて作製されるトレッド部およびサイドウォール部を備えるタイヤを検討して、下記評価方法に基づいて算出した結果を示す。
共重合体A1:後述の製造例1で製造される共重合体(エチレン-ファルネセン共重合体、Mw:45万、Tg:-55℃)
共重合体A2:後述の製造例2で製造される共重合体(エチレン-フェルネセン共重合体、Mw:46万、Tg:-64℃)
共重合体A3:後述の製造例3で製造される共重合体(エチレン-ミルセン共重合体、Mw:45万、Tg:-55℃)
共重合体1:後述の製造例4で製造される共重合体(ファルネセン重合体、Mw:76万、Tg:-70℃)
SBR:ZSエラストマー(株)製のNipolNS616(S-SBR、スチレン含量:21.0質量%、ビニル含量:61モル%、Tg:-25℃、Mw:51万、非油展)
BR:UBE(株)製のUBEPOL BR(登録商標)150B(シス含量:97モル%、Mw:44万)
NR:TSR20
EPDM:住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)EPDM 505A(エチレン含量:50%、ジエン含量:9.5%、非油展)
カーボンブラック1:三菱ケミカル(株)製のダイアブラック(登録商標)N220(N2SA:114m2/g)
カーボンブラック2:三菱ケミカル(株)製のダイアブラック(登録商標)N330(N2SA:79m2/g)
カーボンブラック3:三菱ケミカル(株)製のダイアブラック(登録商標)E(FEF、N550、N2SA:41m2/g)
シリカ:エボニックデグサ社製のULTRASIL VN3(N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:17nm)
シランカップリング剤:エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オイル:H&R社製のVivaTec400(TDAEオイル)
樹脂:クレイトン社製のSylvares SA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)
ワックス:日本精蝋(株)のオゾエース0355
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛1号
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS))
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン(DPG))
【0159】
製造例1:共重合体A1の製造
メチルシクロヘキサンを含む反応器に、共触媒、ブチロクチルマグネシウム(ランクセス社製)、メタロセンBを加える。20℃で10分間撹拌し、アルキル化させる。次に、ファルネセンおよびエチレンを表1に示す量で連続的に加え、40℃、0.8MPaで重合反応を行う。冷却、脱気、エタノールの添加により重合反応を停止させる。重合反応により製造されたポリマー溶液に酸化防止剤を添加し、真空下のオーブンで乾燥させ、共重合体A1を得る。
【0160】
製造例2:共重合体A2の製造
メチルシクロヘキサンを含む反応器に、共触媒、ブチロクチルマグネシウム(ランクセス社製)、メタロセンBを加える。20℃で10分間撹拌し、アルキル化させる。次に、ファルネセンおよびエチレンを表1に示す量で連続的に加え、40℃、0.8MPaで重合反応を行う。冷却、脱気、エタノールの添加により重合反応を停止させる。重合反応により製造されたポリマー溶液に酸化防止剤を添加し、真空下のオーブンで乾燥させ、共重合体A2を得る。
【0161】
製造例3:共重合体A3の製造
メチルシクロヘキサンを含む反応器に、共触媒、ブチロクチルマグネシウム(ランクセス社製)、メタロセンBを加える。20℃で10分間撹拌し、アルキル化させる。次に、ミルセンおよびエチレンを表1に示す量で連続的に加え、80℃、0.8MPaで重合反応を行う。冷却、脱気、エタノールの添加により重合反応を停止させる。重合反応により製造されたポリマー溶液に酸化防止剤を添加し、真空下のオーブンで乾燥させ、共重合体A3を得る。
【0162】
製造例4:共重合体1の製造
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン9,500g、有機金属開始剤としてsec-ブチルリチウムの10.5質量%シクロヘキサン溶液3.5g(sec-ブチルリチウム0.37g)を仕込み、70℃に昇温した後、15.1gのテトラヒドロフランを仕込み、さらに予め調製した518gのスチレンと777gのブタジエンの混合液を10mL/分で加えて30分間重合する。次いでβ-ファルネセン15.1gを加えて30分間重合した後、カップリング剤として0.08gのテトラエトキシシランを加えて1時間反応させる。得られた重合反応液にメタノールを0.2g添加して重合反応を停止させた後、TDAEを491g添加し、70℃で24時間熱風乾燥、12時間減圧乾燥することにより、共重合体1を得る。
【0163】
共重合体A1~A3、共重合体1の組成は表1に示す。
【0164】
(実施例および比較例)
表2~表3に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150~160℃になるまで1~10分間混練りし、混練物を得る。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。得られた未加硫ゴム組成物を用いて、トレッド部各層(厚さ:10.0mm、二層の場合には第一層の厚さ6.0mm、第二層の厚さ4.0mm)またはサイドウォール部の形状に合わせて成形し、表4に示すように、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて170℃で12分間プレス加硫して、試験用タイヤを得る。
【0165】
<剥離強度>
各未加硫ゴム組成物に、C5配合の未加硫のゴム組成物を重ねて、170℃の条件下で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得る。このとき、試験機の掴みしろとするため、端から60mm程度にセロファンを挟んで加硫を行う。得られた加硫接着させた組成物についてJIS K 6256(布と加硫ゴムの剥離試験)に準じて接着性能試験を行う。幅25mmの試験片を作製し、50mm/分の速度で剥離し、基準ゴム(C5+C5)の剥離強度を100として指数表示する。
【0166】
<30tanδTの測定>
各試験用タイヤのトレッド部第一層から、タイヤ周方向が長辺となるように、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmで切り出して作製した各加硫ゴム試験片について、動的粘弾性測定装置(GABO社製のイプレクサーシリーズ)を用い、温度30℃、初期歪5%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モードの条件で、損失正接(tanδ)を測定する。
【0167】
<サイドウォール破断強度、破断伸びの測定>
各試験用タイヤのサイドウォールから、タイヤ周方向が縦方向となるように厚さ1mmの7号ダンベル形状の試験片を作製し、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張試験特性の求め方」に準じて、23℃雰囲気下にて、引張速度3.3mm/秒の条件で引張試験を実施し、破断強度(TB)(MPa)および破断伸び(EB)(%)を測定する。
【0168】
<オゾン劣化後の耐久性能>
前記の各試験用タイヤを、温度40℃、オゾン濃度50±5ppmの管理室内に24時間静置し、オゾンに暴露する。オゾンに暴露した後の各試験用タイヤを、排気量2000ccの国産のFF乗用車の四輪にそれぞれ装着し、内圧が250kPaとなるよう調節し、過積載状態にて、乾燥路面のテストコース上を速度50km/hで10周走行し、速度80km/hで路面に設けた凹凸に乗り上げる動きを10回繰り返す。再度速度50km/hから周回走行し、速度を徐々に上げてテストドライバーが異変を感じた時点における速度を記録する。対象タイヤ(比較例3)における速度を100とし、下記計算式により、各タイヤのオゾン劣化後の耐久性能を指数表示する。指数が大きいほどオゾン劣化後の耐久性能が優れることを示す。なお、比較例2のタイヤは、トレッド部とサイドウォール部が剥離する懸念があるため、指数表示せず「-」とする。
(オゾン劣化後の耐久性能指数)=
(対照タイヤの速度)/(各試験用タイヤの速度)×100
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
【表4】
【0173】
【表5】
【0174】
<実施形態>
本発明の実施形態の例を以下に示す。
〔1〕少なくとも1つのゴム層を有するトレッド部、サイドウォール部、およびカーカス層を備えたタイヤであって、
前記トレッド部および前記サイドウォール部が、それぞれゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、
前記トレッド部を構成するゴム成分および前記サイドウォール部を構成するゴム成分のうち少なくとも一方が、エチレン単位および分枝共役ジエン単位を有する共重合体Aを含み、
前記トレッド部を構成するトレッドゴムのゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS1(質量部)、前記サイドウォール部を構成するゴム組成物のゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量をS2(質量部)としたとき、S1+S2が1.0質量部未満(好ましくは0.8質量部未満、より好ましくは0.7質量部未満、さらに好ましくは0.6質量部未満)であるタイヤ。
〔2〕前記共重合体Aがランダム共重合体である、上記〔1〕記載のタイヤ。
〔3〕前記共重合体Aにおける分枝共役ジエン単位が10モル%以上(好ましくは12モル以上、より好ましくは15モル以上)である、上記〔1〕または〔2〕記載のタイヤ。
〔4〕前記共重合体Aにおける分枝共役ジエン単位が30モル%以下である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔5〕前記分分枝ジエン単位が3,4配置を含み、3,4配置が分枝共役ジエン単位全体の70モル%以上(好ましくは75モル%以上)である、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔6〕前記共重合体Aのガラス転移温度が-60℃以上である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔7〕前記共重合体Aのガラス転移温度が-40℃以下である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔8〕前記共重合体Aの重量平均分子量が10000以上(好ましくは12000以上、より好ましくは15000以上)である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔9〕前記サイドウォール部を構成するゴム組成物の破断強度が12MPa以上、かつ破断伸びが600%以上である、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔10〕前記サイドウォール部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量をCSW(質量%)、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みをT(mm)としたとき、CSW/Tが10以上である、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔11〕前記サイドウォール部を構成するゴム成分中の共重合体Aの含有量をCSW(質量%)、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みをT(mm)としたとき、CSW/Tが60以下である、上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔12〕CSWが50質量%以上(好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)である、上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔13〕トレッド部を構成する少なくとも1層のゴム層の30℃におけるtanδ(30℃tanδT)が0.35以下(好ましくは0.22以下、より好ましくは0.20以下)である、上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔14〕トレッド部を構成する少なくとも1層のゴム層のゴム成分中の共重合体Aの含有量CTが60質量%以上(好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上)である、上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔15〕S1が0.1質量部以上である、上記〔1〕~〔14〕のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0175】
1 トレッド部
2 ベルト
3 陸部
4 トレッド表面端を結ぶ線分
5 第二層の外面の延長
6 第一層
7 第二層
12 周方向溝
21 ビートコア
22 ビートエイペックス
25 ストリップエイペックス
31 サイドウォール
32 インナーライナー
33 カーカス
CL タイヤ中心線
PW タイヤ最大幅位置における法線
T 表面ゴム層の厚み
P 陸部のタイヤ幅方向の中点
N 点Pから引いた法線
t1 トレッド第一層の厚み
t2 トレッド第二層の厚み
図1
図2