(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097295
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】マルチリンク動作のための動的信号処理構成
(51)【国際特許分類】
H04B 1/40 20150101AFI20240710BHJP
H04B 1/10 20060101ALI20240710BHJP
H04B 1/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H04B1/40
H04B1/10 G
H04B1/00 264
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211107
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】63/478601
(32)【優先日】2023-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503031330
【氏名又は名称】スカイワークス ソリューションズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SKYWORKS SOLUTIONS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ポーリン、 グラント ダーシー
【テーマコード(参考)】
5K011
5K052
【Fターム(参考)】
5K011BA01
5K011BA04
5K011DA02
5K011DA12
5K011DA21
5K011DA27
5K052BB02
5K052DD15
5K052EE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マルチリンク動作における干渉を低減させるフロントエンドモジュール(FEM)を提供する。
【解決手段】RFフロントエンド500の送信モードにおいて、FEM502は、入力部と、フィルタ510と、複数のプログラム可能タップを含むノイズキャンセル回路512と、フィルタ、ノイズキャンセル及び受信ノード504間に結合される加算ノード508とを含み、複数のプログラム可能タップは、ノイズキャンセル回路がノイズをキャンセルする一以上の周波数帯域を、FEMが送信動作モードで動作しているか又は受信動作モードで動作しているかに応じて、さらには、ノイズキャンセル回路がノイズキャンセルを与える一以上の周波数帯域の、送信動作モード又は受信動作モードに関連付けられる周波数帯域との近接性に基づいて、決定するように動的にプログラムされる。加算ノードは、フィルタ及びノイズキャンセル回路の出力を加算する。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントエンドモジュール(FEM)であって、
第1セクションを含み、
前記第1セクションは、
第1ノードと、
第2ノードと、
第1フィルタと、
第1ノイズキャンセル回路と
を含み、
前記第1フィルタと前記第1ノイズキャンセル回路とは互いに前記第1ノードと前記第2ノードとの間に並列に結合され、
前記第1ノードは、第1電気信号を前記第1フィルタ及び前記第1ノイズキャンセル回路に与えるように構成され、
前記第1フィルタは、前記第1電気信号に基づいて前記第1コンディショニング済み信号をもたらすように構成され、
前記第1ノイズキャンセル回路は、前記第1電気信号に基づいて第1キャンセル信号をもたらすように構成され、
前記第2ノードは、前記第1コンディショニング済み信号及び前記第1キャンセル信号を受信するように構成される、FEM。
【請求項2】
前記FEMはさらに第2セクションを含み、
前記第2セクションは、
第3ノードと、
第4ノードと、
第2フィルタと、
第2ノイズキャンセル回路と
を含み、
前記第2フィルタと前記第2ノイズキャンセル回路とは互いに前記第3ノードと前記第4ノードとの間に並列に結合され、
前記第3ノードは、第2電気信号を前記第2フィルタ及び前記第2ノイズキャンセル回路に与えるように構成され、
前記第2フィルタは、前記第2電気信号に基づいて第2コンディショニング済み信号をもたらすように構成され、
前記第2ノイズキャンセル回路は、前記第2電気信号に基づいて第2キャンセル信号をもたらすように構成され、
前記第4ノードは、前記第2コンディショニング済み信号及び前記第2キャンセル信号を受信するように構成される、請求項1のFEM。
【請求項3】
前記第1電気信号は第1周波数帯域に対応し、前記第2電気信号は第2周波数帯域に対応する、請求項2のFEM。
【請求項4】
前記第1電気信号は6GHz周波数帯域に対応し、前記第2電気信号は5GHz周波数帯域に対応する、請求項2のFEM。
【請求項5】
前記第1ノイズキャンセル回路は、前記第1キャンセル信号を決定するように構成される複数の動的プログラム可能タップを含む、請求項1のFEM。
【請求項6】
前記第1電気信号は、第1周波数帯域の周波数成分及び第2周波数帯域の周波数成分を有し、
前記第1ノイズキャンセル回路が前記第1電気信号をもたらすことにより、前記第1キャンセル信号が前記第2ノードにおいて前記第1コンディショニング済み信号と一緒に加算されるときに前記第2周波数帯域の周波数成分の少なくとも一部分を減衰させる、請求項1のFEM。
【請求項7】
前記第1ノード又は前記第2ノードの一方に結合されるアンテナと、
前記第1ノード又は前記第2ノードのうち前記アンテナに結合されている方とは異なる方に結合されるスイッチと
をさらに含む、請求項1のFEM。
【請求項8】
受信経路及び送信経路をさらに含み、
前記スイッチは、前記受信経路に結合される第1端子と、前記送信経路に結合される第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子の一方に選択的に結合される第3端子とを有する、請求項7のFEM。
【請求項9】
前記第1電気信号重複部が、第2電気信号の周波数帯域と重複する周波数成分を含む、請求項1のFEM。
【請求項10】
前記第1ノイズキャンセル回路が前記第1キャンセル信号をもたらすことにより、前記第1キャンセル信号が、前記第2信号の周波数帯域と重複する周波数成分を、当該周波数帯域のエッジ近くにおいて減衰させる、請求項9のFEM。
【請求項11】
フロントエンドモジュールであって、
複数の無線テレコミュニケーション信号を送信及び受信するように構成される入力部と、
前記入力部と送信ノード又は受信ノードとの間に結合されるフィルタであって、前記無線テレコミュニケーション信号のうちの一以上をフィルタリングするように構成されるフィルタと、
前記無線テレコミュニケーション信号のうちの一以上にノイズキャンセルを与えるように構成されるノイズキャンセル回路であって、前記入力部と前記送信ノード又は前記受信ノードとの間に前記フィルタと並列に結合されて複数の動的プログラム可能タップを含み、前記複数の動的プログラム可能タップは、前記ノイズキャンセル回路がノイズキャンセルを与える一以上の周波数帯域を、前記FEMが送信動作モードで動作しているか又は受信動作モードで動作しているかに応じて、さらには、前記ノイズキャンセル回路がノイズキャンセルを与える前記一以上の周波数帯域の、前記送信動作モード又は前記受信動作モードに関連付けられる周波数帯域との近接性に基づいて、決定するように動的にプログラムされ得る、ノイズキャンセル回路と、
前記フィルタ、ノイズキャンセル回路、及び受信ノード間に結合されて前記フィルタ及び前記ノイズキャンセル回路の出力を加算するように構成される加算ノードと
を含む、フロントエンドモジュール。
【請求項12】
前記FEMは、前記送信動作モード及び前記受信動作モードを含む複数の動作モードを有する、請求項11のFEM。
【請求項13】
前記複数の動的プログラム可能タップの動的プログラム可能タップの、一以上の値を設定するように構成される制御器をさらに含む、請求項12のFEM。
【請求項14】
前記制御器は、前記送信動作モードにおいて前記動的プログラム可能タップの、一以上の値を第1セットの値に設定するように構成される、請求項13のFEM。
【請求項15】
前記動的プログラム可能タップを前記第1セットの値に設定することは、前記ノイズキャンセル回路を、前記送信動作モードに関連付けられる周波数帯域のエッジ近くの周波数のサブセットを占める少なくとも一つの信号の少なくとも一部分をキャンセルするように設定することに対応する、請求項14のFEM。
【請求項16】
前記制御器は、前記受信動作モードにおいて前記動的プログラム可能タップの、一以上の値を第2セットの値に設定するように構成される、請求項14のFEM。
【請求項17】
前記動的プログラム可能タップを前記第2セットの値に設定することは、前記ノイズキャンセル回路を、前記受信動作モードに関連付けられる周波数帯域にわたる周波数のサブセットを占める少なくとも一つの信号の少なくとも一部分をキャンセルするように設定することに対応する、請求項16のFEM。
【請求項18】
時間領域二重化(TDD)を使用する無線テレコミュニケーションデバイスにおける信号をフィルタリングする方法であって、
第1周波数帯域における信号を受信することであって、前記信号は第2周波数帯域の中へと延びる周波数成分を有することと、
コンディショニング済み信号をもたらすべく前記信号をコンディショニングするように構成されるフィルタに前記信号を与えることと、
複数の動的プログラム可能タップを有するノイズキャンセル回路に前記信号の少なくとも一部分を与えることであって、前記ノイズキャンセル回路は、調整済み信号をもたらすべく前記信号の少なくとも一部分を調整するように構成されることと、
前記動的プログラム可能タップを、前記信号の前記少なくとも一部分の周波数に対応する値を有するように、前記FEMが送信動作モードで動作しているか又は受信動作モードにおいて動作しているかに基づいて、さらには前記信号の前記少なくとも一部分の周波数の、前記送信動作モード又は前記受信動作モードに関連付けられる周波数帯域との近接性に基づいて、動的にプログラムすることと、
前記コンディショニング済み信号と前記調整済み信号とを加算することと
を含む、方法。
【請求項19】
前記信号の前記少なくとも一部分を、前記ノイズキャンセル回路に与えることは、前記信号の前記少なくとも一部分が第1範囲の周波数内に存在することを含み、前記第1範囲の周波数は、前記信号の周波数のサブセットである、請求項18の方法。
【請求項20】
前記信号の前記少なくとも一部分を調整することは、前記信号の前記少なくとも一部分の位相を改変すること、又は前記信号の前記少なくとも一部分の振幅を改変することの少なくとも一方を含む、請求項18の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はマルチリンク動作のための動的信号処理構成に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタは、電気信号のような電磁信号をフィルタリングするべくテレコミュニケーション及び他のドメインにおいて使用される。バルク弾性波(BAW)フィルタは、Wi-Fi及びIEEE802.11規格のような無線インターネットネットワーキング技術において一般に使用される。
【発明の概要】
【0003】
本開示の少なくとも一つの側面によれば、フロントエンドモジュールが与えられる。このフロントエンドモジュール(FEM)は、第1ノード、第2ノード、第1フィルタ及び第1ノイズキャンセル回路を含む第1セクションを含み、第1フィルタと第1ノイズキャンセル回路とは互いに第1ノードと第2ノードとの間に並列に結合され、第1ノードは、第1電気信号を第1フィルタ及び第1ノイズキャンセル回路に与えるように構成され、第1フィルタは、第1電気信号に基づいて第1コンディショニング済み信号をもたらすように構成され、第1ノイズキャンセル回路は、第1電気信号に基づいて第1キャンセル信号をもたらすように構成され、第2ノードは、第1コンディショニング済み信号及び第1キャンセル信号を受信するように構成される。
【0004】
いくつかの例において、FEMはさらに、第3ノード、第4ノード、第2フィルタ及び第2ノイズキャンセル回路を含む第2セクションを含み、第2フィルタと第2ノイズキャンセル回路とは互いに第3ノードと第4ノードとの間に並列に結合され、第3ノードは、第2電気信号を第2フィルタ及び第2ノイズキャンセル回路に与えるように構成され、第2フィルタは、第2電気信号に基づいて第2コンディショニング済み信号をもたらすように構成され、第2ノイズキャンセル回路は、第2電気信号に基づいて第2キャンセル信号をもたらすように構成され、第4ノードは、第2コンディショニング済み信号及び第2キャンセル信号を受信するように構成される。いくつかの例において、第1電気信号は第1周波数帯域に対応し、第2電気信号は第2周波数帯域に対応する。いくつかの例において、第1電気信号は6GHz周波数帯域に対応し、第2電気信号は5GHz周波数帯域に対応する。いくつかの例において、第1ノイズキャンセル回路は、第1キャンセル信号を決定するべく構成される複数の動的プログラム可能タップを含む。いくつかの例において、第1電気信号は、第1周波数帯域の周波数成分及び第2周波数帯域の周波数成分を有し、第1ノイズキャンセル回路が第1電気信号をもたらすことにより、第1キャンセル信号が第2ノードにおいて第1コンディショニング済み信号と一緒に加算されるときに第2周波数帯域の周波数成分の少なくとも一部分を減衰させる。いくつかの例において、FEMはさらに、第1ノード又は第2ノードの一方に結合されるアンテナと、第1ノード又は第2ノードのうちアンテナに結合されている方とは異なる方に結合されるスイッチとを含む。いくつかの例において、FEMはさらに、受信経路及び送信経路を含み、スイッチは、受信経路に結合される第1端子と、送信経路に結合される第2端子と、第1端子及び第2端子の一方に選択的に結合されるように構成される第3端子とを有する。いくつかの例において、第1電気信号重複部が、第2電気信号の周波数帯域と重複する周波数成分を含む。いくつかの例において、第1ノイズキャンセル回路が第1キャンセル信号をもたらすことにより、第1キャンセル信号が、第2信号の周波数帯域と重複する周波数成分を、当該周波数帯域のエッジ近くにおいて減衰させる。
【0005】
本開示の少なくとも一側面によれば、フロントエンドモジュールが与えられる。このフロントエンドモジュールは、無線テレコミュニケーション信号を送信及び受信するように構成される入力部と、入力部と送信ノード又は受信ノードとの間に結合されて無線テレコミュニケーション信号の一以上をフィルタリングするように構成されるフィルタと、無線テレコミュニケーション信号の一以上にノイズキャンセルを与えるべく構成されるノイズキャンセル回路であって、入力部と送信ノード又は受信ノードとの間にフィルタと並列に結合されるノイズキャンセル回路と、フィルタ、ノイズキャンセル回路、及び受信ノード間に結合されてフィルタ及びノイズキャンセル回路の出力を加算するように構成される加算ノードとを含み、ノイズキャンセル回路は複数の動的プログラム可能タップを含み、複数の動的プログラム可能タップは、ノイズキャンセル回路がノイズキャンセルを与える一以上の周波数帯域を、FEMが送信動作モードで動作しているか又は受信動作モードで動作しているかに応じて、さらには、ノイズキャンセル回路がノイズキャンセルを与える一以上の周波数帯域の、送信動作モード又は受信動作モードに関連付けられる周波数帯域との近接性に基づいて、決定するように動的にプログラムされ得る。
【0006】
いくつかの例において、FEMは、送信動作モード及び受信動作モードを含む複数の動作モードを有する。いくつかの例において、FEMはさらに、複数の動的プログラム可能タップの動的プログラム可能タップの、一以上の値を設定するように構成される制御器を含む。いくつかの例において、制御器は、送信動作モードにおいて動的プログラム可能タップの、一以上の値を第1セットの値に設定するように構成される。いくつかの例において、動的プログラム可能タップを第1セットの値に設定することは、ノイズキャンセル回路を、送信動作モードに関連付けられる周波数帯域のエッジ近くの周波数のサブセットを占める少なくとも一つの信号の少なくとも一部分をキャンセルするように設定することに対応する。いくつかの例において、制御器は、受信動作モードにおいて動的プログラム可能タップの、一以上の値を第2セットの値に設定するように構成される。いくつかの例において、動的プログラム可能タップを第2セットの値に設定することは、ノイズキャンセル回路を、受信動作モードに関連付けられる周波数帯域にわたる周波数のサブセットを占める少なくとも一つの信号の少なくとも一部分をキャンセルするように設定することに対応する。
【0007】
本開示の少なくとも一つの側面によれば、時間領域二重化(TDD)を使用して無線テレコミュニケーションデバイスにおける信号をフィルタリングする方法が提示される。この方法は、第1周波数帯域の信号を受信することであって、信号は第2周波数帯域の中へと延びる周波数成分を有することと、信号をコンディショニングしてコンディショニング済み信号をもたらすべく構成されるフィルタに与えることと、信号の少なくとも一部分を、複数の動的プログラム可能タップを有するノイズキャンセル回路に与えることであって、ノイズキャンセル回路は、信号の少なくとも一部分を調整して調整済み信号をもたらすべく構成されることと、動的プログラム可能タップを、信号の少なくとも一部分の周波数に対応する値を有するように、FEMが送信動作モードで動作しているか又は受信動作モードで動作しているかに基づいて、さらには信号の少なくとも一部分の周波数の、送信動作モード又は受信動作モードに関連付けられる周波数帯域との近接性に基づいて、動的にプログラムすることと、コンディショニング済み信号と調整済み信号とを加算することとを含む。
【0008】
いくつかの例において、信号の少なくとも一部分を、ノイズキャンセル回路に与えることは、信号の少なくとも一部分が第1範囲の周波数内に存在することを含み、第1範囲の周波数は、信号の周波数のサブセットである。いくつかの例において、信号の少なくとも一部分を調整することは、信号の少なくとも一部分の位相を改変すること、又は信号の少なくとも一部分の振幅を改変することの少なくとも一方を含む。
【0009】
本開示の少なくとも一つの側面によれば、フロントエンドモジュール(FEM)が開示される。いくつかの例において、FEMは、無線テレコミュニケーション信号を送信及び受信するように構成される入力部と、入力部と送信ノード又は受信ノードとの間に結合されて無線テレコミュニケーション信号の一以上をフィルタリングするように構成されるフィルタと、無線テレコミュニケーション信号の一以上にノイズキャンセルを与えるべく構成されるノイズキャンセル回路であって、入力部と送信ノード又は受信ノードとの間にフィルタと並列に結合されるノイズキャンセル回路と、フィルタ、ノイズキャンセル回路、及び受信ノード間に結合されてフィルタ及びノイズキャンセル回路の出力を加算するように構成される加算ノードとを含み、ノイズキャンセル回路は複数のプログラム可能タップを含み、複数のプログラム可能タップは、ノイズキャンセル回路がノイズキャンセルを与える一以上の周波数帯域を、FEMが送信動作モードで動作しているか又は受信動作モードで動作しているかに応じて、さらに、ノイズキャンセル回路がノイズキャンセルを与える一以上の周波数帯域の、送信動作モード又は受信動作モードに関連付けられる周波数帯域との近接性に基づいて、決定するように動的にプログラムされ得る。
【0010】
様々な例において、FEMは、送信動作モード及び受信動作モードを含む複数の動作モードを有する。いくつかの例において、FEMはさらに、送信ノードに結合される第1端子と、受信ノードに結合される第2端子と、加算ノードに結合される第3端子とを含む複数の端子を有するスイッチを含む。いくつかの例において、FEMはさらに、送信動作モードにおいて第1端子と第3端子とを接続するように、及び受信動作モードにおいて第2端子と第3端子とを接続するようにスイッチを動作させるべく構成される制御器を含む。多くの例において、FEMはさらに、複数のプログラム可能タップのプログラム可能タップの、一以上の値を設定するべく構成される制御器を含む。いくつかの例において、制御器は、送信動作モードにおいてプログラム可能タップの、一以上の値を第1セットの値に設定するように構成される。様々な例において、プログラム可能タップを第1セットの値に設定することは、ノイズキャンセル回路を、送信動作モードに関連付けられる周波数帯域のエッジ近くの周波数のサブセットを占める少なくとも一つの信号の少なくとも一部分をキャンセルするように設定することに対応する。多くの例において、制御器は、受信動作モードにおいてプログラム可能タップの、一以上の値を第2セットの値に設定するように構成される。いくつかの例において、プログラム可能タップを第2セットの値に設定することは、ノイズキャンセル回路を、受信動作モードに関連付けられる周波数帯域にわたる周波数のサブセットを占める少なくとも一つの信号の少なくとも一部分をキャンセルするように設定することに対応する。様々な例において、フィルタはバルク弾性波フィルタである。多くの例において、ノイズキャンセル回路はアナログ回路である。いくつかの例において、アナログ回路であることは、ノイズキャンセル回路が、無線テレコミュニケーション信号のいずれのデジタル処理も行わないことを意味する。様々な例において、入力部は第1入力部であり、フィルタは第1フィルタであり、ノイズキャンセル回路は第1ノイズキャンセル回路であり、加算ノードは第1加算ノードであり、FEMはさらに、第2入力部と、第2入力部と第2加算ノードとの間に結合される第2フィルタと、第2入力部と第2加算ノードとの間に第2フィルタに並列に結合される第2ノイズキャンセル回路と、第2加算ノードに結合される送信ノードとを含む。いくつかの例において、送信ノードは第2送信ノードであり、FEMはさらに、第1スイッチを介して第1加算ノードに結合される第1送信ノードであって、第1スイッチは第1送信ノード及び第1受信ノードを第1加算ノードに選択的に結合するように構成される、第1送信ノードと、第2スイッチを介して第2加算ノードに結合される第2受信ノードであって、第2スイッチは第2送信ノード及び第2受信ノードを第2加算ノードに選択的に結合するように構成される、第2受信ノードとを含み、第1送信ノードが第1スイッチを介して第1加算ノードに結合されるときに、第2送信ノードは第2スイッチを介して第2加算ノードに結合されない。
【0011】
本開示の少なくとも一つの側面によれば、信号をフィルタリングする方法が与えられる。いくつかの例において、時間領域二重化(TDD)を使用して無線テレコミュニケーションデバイスにおける信号をフィルタリングする方法は、第1周波数帯域の信号を受信することであって、信号は第2周波数帯域の中へと延びる周波数成分を有することと、信号をコンディショニングしてコンディショニング済み信号をもたらすべく構成されるフィルタに与えることと、信号の少なくとも一部分を、複数の動的プログラム可能タップを有するノイズキャンセル回路に与えることであって、ノイズキャンセル回路は、信号の少なくとも一部分を調整して調整済み信号をもたらすべく構成されることと、動的プログラム可能タップを、信号の少なくとも一部分の周波数に対応する値を有するように、FEMが送信動作モードで動作しているか又は受信動作モードで動作しているかに基づいて、さらには信号の少なくとも一部分の周波数の、送信動作モード又は受信動作モードに関連付けられる周波数帯域との近接性に基づいて、動的にプログラムすることと、コンディショニング済み信号と調整済み信号とを加算することとを含む。
【0012】
いくつかの例において、方法はさらに、複数の動作モードの中から一の動作モードを選択することを含み、複数の動作モードは送信動作モード及び受信動作モードを含む。様々な例において、信号の少なくとも一部分を、ノイズキャンセル回路に与えることは、信号の少なくとも一部分が第1範囲の周波数内に存在することを含み、第1範囲の周波数は、信号の周波数のサブセットである。多くの例において、信号の少なくとも一部分を調整することは、信号の少なくとも一部分の位相を改変すること、又は信号の少なくとも一部分の振幅を改変することの少なくとも一方を含む。いくつかの例において、動的プログラム可能タップをプログラムすることは、動的プログラム可能タップの値を設定して、ノイズキャンセル回路が信号の少なくとも一部分をサンプリングする一周波数帯域を決定することを含む。様々な例において、フィルタ又はノイズキャンセル回路はいすれも、信号を、又は信号の少なくとも一部分を、デジタル形式に変換しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
少なくとも一つの実施形態の様々な側面が、縮尺どおりに描かれることを意図いない添付図面を参照して以下に説明される。図面は、様々な側面及び実施形態の例示及びさらなる理解を与えるべく含まれており、本明細書に組み入れられて本明細書の一部を構成するが、いずれかの特定の実施形態の限界の画定として意図されるわけではない。図面は、本明細書の残りの部分とともに、記載され及び請求される側面及び実施形態の原理及び動作を説明する助けとなる。図面において、様々な図面に示される同一又はほぼ同一のコンポーネントはそれぞれが同じ番号によって表される。明確性を目的として、すべての図面にすべてのコンポーネントが標識されるわけではない。
【0014】
【
図1】一例に係るRFフロントエンドモジュール(FEM)を示す。
【
図2】一例に係るFEMに関連する対応周波数帯域の送信干渉を示す。
【
図3】一例に係るFEMの少なくとも一部分が受信動作モードにあるときの信号干渉を示す。
【
図4】一例に係る例示的なフィルタリング回路を示す。
【
図5A】一例に係る送信動作モードにあるFEMを示す。
【
図5B】一例に係る受信動作モードにあるFEMを示す。
【
図6】一例に係るFEMの有効フィルタリング特性のグラフを示す。
【
図7】一例に係る送信動作モードにおけるFEMの有効フィルタリングを有する送信信号のオーバーレイを示すグラフを示す。
【
図8】一例に係る受信動作モードにおけるFEMの有効フィルタリングのオーバーレイを示すグラフを示す。
【
図9】一例に係るFEMにおいて受信される送信信号の少なくとも複数部分をキャンセルするプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここに記載される方法及びシステムの例は、その適用において、以下の説明に記載され又は添付図面に示される構成及び配列の詳細に限定されない。これらの方法及びシステムは、他の実施形態で実装することができ、様々な態様で実施し又は実行することができる。特定の実装例が単なる例示目的でここに与えられ、限定を意図しない。詳しくは、任意の一以上の例に関連して説明される作用、コンポーネント、要素及び特徴が、任意の他の例における同様の役割から除外されることを意図しない。
【0016】
また、ここで使用される表現及び用語は、説明のためのものであって、限定するものとみなすべきではない。ここで単数形で言及されるシステム及び方法の例、実施形態、コンポーネント、要素又は作用へのいかなる参照も、複数を含む実施形態を包含し、ここでの任意の実施形態、コンポーネント、要素又は作用への複数の参照も、特異点のみを含む実施形態を包含し得る。単数形又は複数形での参照は、ここで開示されるシステム又は方法、これらのコンポーネント、作用又は要素を限定することを意図しない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」、及びこれらのバリエーションの使用は、これらよりも後に列記される項目及び均等物並びに付加的な項目を包括することを意味する。
【0017】
「又は」及び「若しくは」への言及は包括的に解釈され、「又は」及び「若しくは」を使用して記載される任意の項目が、記載される項目のうち一つ、一を超えるもの、及びすべてのもののいずれかを示し得る。加えて、本文書と参照によりここに組み込まれる文書との間で用語の使用に矛盾がある場合、組み込まれる特徴における用語の使用は、本文書の用語の使用を補足し、調整できない差異については、本文書の用語の使用が支配的となる。
【0018】
無線コミュニケーション又は無線通信技術において、時間領域二重化(TDD)及び周波数領域二重化(FDD)が、データの送受信を容易にするべく使用される。TDDにおいて、データは順次に送信及び受信される。例えば、TDDにおいて、データは最初に送信されて次に受信されるが、同時に送信及び受信されることはない。これとは対照的に、FDDは、典型的には2つの異なる周波数を使用してデータを送信することによって、データが同時に送信及び受信されることを許容する。Wi-Fi規格は、FDDよりもむしろTDDを使用する。例えば、Wi-Fi6(登録商標)及び来るべきWi-Fi7(登録商標)もTDDである。しかしながら、Wi-Fi7規格によれば、デバイスが「マルチリンク」可能であることが必要となる。ここで、密に近接する場合が多い2つの別個の周波数帯域が、独立したTDDラジオ又はTDD無線として動作する必要がある。2つのTDD帯域は独立しているので、隣接する帯域間に協調は存在せず、一方の帯域が送信している間、それと同時に他方の帯域が受信をする場合が多い。いくつかの意味で、Wi-Fi7マルチリンク要件によれば、Wi-Fi7デバイスはTDDデバイスというよりもFDDデバイスのように動作する必要がある。
【0019】
マルチリンクのサポートには重大な問題がある。一つは、送信及び受信を同時に又はほぼ同時に行う場合、送信信号が受信信号と干渉し得ることである。加えて、送信及び受信のアンテナは一緒に密に配置され得る。これらのアンテナは、同じデバイスに近接して配置されるか、又は複数のデバイスゆえに、互いに近接しながら同時に独立して送信及び/又は受信を試みるかのいずれかとなる。アンテナが互いに密に近接している場合、RF信号がそれらの間で結合して強い干渉が生じ得る。
【0020】
干渉問題に対する一つの解決策は、一のデバイスに他のデバイス又は信号を聞かせ、その後、当該一のデバイスにデータを送信するための異なるチャネル又は時間を選択させ、それによって干渉を低減することである。しかしながら、この解決策は、単なるオンデマンド送信の代わりに、デバイスが送信する機会を求めて待機して聞く必要があるので、非効率的である。マルチリンクによれば、双方のデバイスが一つの帯域で送信しながら同時に他の帯域で受信できる必要があり、これによってデータスループットの有意な向上がもたらされ得る。
【0021】
本開示は、少なくとも一つの側面及び実施形態において、Wi-Fi7規格が要求するマルチリンク機能を容易にするべく、TDD(又はFDD)システムにおいてスペクトルを共有する効率的な手段を与える。フィルタが、デバイスの送信信号及び受信信号をフィルタリングするべく一般的に使用される。フィルタは、送信器において使用される場合、所望の信号に隣接するように現れる近接帯域外ノイズを抑制するために使用され、受信器において使用される場合、隣接する送信器によって引き起こされる大きな帯域外ブロッキング信号を抑制するために使用される。必要なフィルタ除去を達成することは、非常に困難となり得る。本開示は、ノイズキャンセル回路を使用することによって、送信信号に起因して受信帯域に現れる信号ノイズをキャンセルするとともに、送信信号に起因して受信帯域に現れる大きな帯域外信号をキャンセルする方法について説明する。いくつかの例において、フィルタとノイズキャンセル回路とは、互いに並列に構成される。様々な例において、ノイズキャンセル回路は、ノイズキャンセル回路の正確な特性を調整するようにプログラム可能である。フィルタ及びノイズキャンセル回路の正味の効果は、いくつかの例において、設定可能(configurable)フィルタとして又は設定可能フィルタのように動作する「ブラックボックス」回路を作成することである。様々な実施形態において、開示のシステム及び方法は、匹敵するフィルタリングシステムと比べて安価かつ効率的である。
【0022】
図1は、テレコミュニケーションデバイスのためのRFフロントエンド100を示す。RFフロントエンド100は、2つのRFフロントエンドモジュール(FEM)を含む。FEM102(第1セクション102)は、第1受信ノード104、第1送信ノード106、スイッチS1、第1フィルタ108及び第1アンテナ110を有する。FEM122(第2セクション122)は、第2受信ノード124、第2送信ノード126、スイッチS2、第2フィルタ128及び第2アンテナ130を有する。図示のように、スイッチS1、S2が、第1FEM102が第1受信ノード104において信号を受信している位置にあり、第2FEM122が第2送信ノード126において信号を送信している位置にある。
【0023】
第1セクション102は、第2セクション102が受信及び送信するように設計される範囲の周波数とは異なる第1範囲の周波数を受信及び送信するように設計され得る。例えば、第1セクション102が、5.17 GHzから5.835GHzまでの範囲にある帯域において5GHz信号のために構成されてよい一方、第2セクション122が、5.945GHzから7.125GHzまでの範囲にある帯域において6GHz信号のために構成されてよい。送信ノード及び受信ノード104、106、124、126はそれぞれが、対応するアンテナ110、130へ及び対応するアンテナ110、130から信号を受信及び送信するように動作する。フィルタ108、128はそれぞれが、送信又は受信されている信号をフィルタリングするべく動作する。いくつかの例において、スイッチS1、S2は、一方のアンテナが送信しているときに他方のアンテナが受信しているように構成される。すなわち、第1受信ノード104がスイッチS1を介して第1フィルタ108に結合されるように第1セクション102が切り替えられると、第2セクション122は、第2送信ノード126が第2スイッチS2を介して第2フィルタ128に結合されるように切り替えられる。すなわち、いくつかの例において、一方のスイッチがフィルタを受信ノードに結合させているときはいつでも、他方のスイッチがフィルタを送信ノードに結合する。
【0024】
上述した説明において、いくつかの例において、受信ノード104、124が低雑音(ノイズ)増幅器(LNA)を含み及び/又はLNAである。送信ノード106、126は電力増幅器(PA)を含み及び/又はPAである。
【0025】
一般に、フィルタ108、128は、セクション102、122のそれぞれに対して送信動作及び受信動作の双方において使用される。しかしながら、送信動作モードと受信動作モードとは、実質的に異なるフィルタリング要件を有する。各モードの特定のフィルタリング要件は、送信モード及び受信モードの双方において最適なフィルタリング特性及び性能を達成するための技術と同様に、以下に詳述される。以下の説明において、ここに説明されるフィルタの動作は、「信号をコンディショニングする」のように、「コンディショニング」という用語で言及される。コンディショニングとは、少なくとも、信号を減衰させること及び/又は信号の位相を修正することを意味し、「フィルタリング」という用語も含み得る。
【0026】
図2は、第2セクション122が送信動作モードにあるときの、第1セクション102及び第2セクション122のそれぞれの周波数帯域における送信干渉を示す。
図2は、受信動作モードにおける第1セクション102に対応する第1周波数帯域202、及び送信動作モードにおける第2セクション122に対応する第2周波数帯域204を示す。第1トレース206は、周波数スペクトルにわたっての第2セクション122からの送信信号の、周波数成分のような成分を示す。第1トレース206は、様々な周波数にわたっての第2セクション122からの送信信号のエネルギーを表す。フィルタ領域208は、送信信号のエネルギー(すなわち成分)をフィルタ除去すること、さもなければ除去又は低減することが望まれる領域を示す。
【0027】
図2に示されるように、第2セクション122からの送信は、第1セクション102の受信ノード104に対する広帯域ノイズとして現れる。このノイズは、帯域外(out-of-band)ノイズ(OOBノイズ)と称される。OOBノイズは、FEM100における電力増幅器又は他の増幅器における非線形性を含む多くの異なる因子によって引き起こされ得る。OOBノイズの程度は、5.8GHzにおける所望受信信号の帯域エッジで高いが、トレースが5.8GHzから離れて5.1GHzに向かうにつれて急速に低下する。ただし、これは一例であり、中心周波数はいずれの方向の周波数でもよい。その結果、送信周波数チャネル(このチャネルは、所与のセクション102、122の周波数帯域内で減衰又はフィルタリングがまったく又はほとんど所望されない周波数のサブセットである)のエッジ近くで大量のフィルタリングが必要となり得るが、周波数成分が中心周波数及びエッジから離れるにつれて、必要とされるフィルタリングは少なくなる。
【0028】
その結果、送信モードにおいて(すなわち第2セクション122が送信しているとき)、送信信号によってもたらされるOOBノイズを除去するべく、フィルタ領域208内にかなりの量のフィルタリングを与えるのが望ましい。送信信号のフィルタリングは、第1アンテナ110のような別のアンテナによって受信される前にOOBノイズを除去するように、第2セクション122の送信経路において行うことが望ましい。ここに説明されるフィルタリングを達成するためのフィルタリング及び/又はノイズキャンセルプロセスが、
図6及び
図7を参照して詳述される。
【0029】
図2に関し、「通過(transit)周波数チャネルのエッジ近く」は相対的な用語であるが、明確な定義を有する。いくつかの例において、「近さ」は、無線信号送信のための周波数範囲及びチャネルを定義する規制機関によって決定される。例えば、米国の連邦規制によれば、6GHz送信信号(すなわち第1トレース206)は、5.945から5.965GHzまでの周波数帯域に配置する必要があり、受信トレース(例えば
図3の第2トレース210)は5.815から5.835GHzまでの周波数帯域に配置する必要がある。「近さ」の他の尺度は、送信信号及び/又は受信信号を構成する様々なトーンを考慮することによって得ることができる。OOBノイズは、送信信号及び/又は受信信号を構成する様々なトーンの相互変調によって費い起され得る。相互変調は、非線形デバイスが存在する場合(例えば、電力増幅器又は低雑音増幅器が線形範囲で動作していない場合(例えば、かかるデバイスがクリップする場合)に生じる。したがって、相互変調が生じる場合、周波数帯域は「近い」とみなしてよい。相互変調の問題に関する「近さ」の他の測定基準は、所与の周波数又は周波数帯域の+/-160MHz内の周波数は近いとみなしてよいというものである。当該周波数及び/又は周波数帯域からさらに160MHzの距離が離れるごとに、徐々に近くなくなるとみなし得る。
【0030】
図3は、第2セクション122が受信動作モードにあるときの信号干渉を示す第2の場合を示す。この動作モードにおいて、第1セクション102は、第2トレース210によって表される信号を送信する。第2トレース210は、第1セクション102の送信信号の成分を示す。これは、例えば、様々な周波数における送信信号のエネルギーを示す。第1セクション102の送信信号は、第2セクション122の受信ノード124に対する大きな帯域外ジャマー(OOBジャマー(jammer))として現れ、この大きな信号は、LNA104を非線形方式で動作させるので、システム性能を劣化させ得る。第3トレース207は、第1トレース206と比較すると、この例では6.3GHzに近い中心周波数を有する。送信モードの場合と同様に、ここでは、第2セクション122の受信ノード126の経路上に現れる第1セクション102の送信信号成分をフィルタリングすることが望ましい。
【0031】
図2及び
図3を総合すると、(FEM100のような)FEMのための理想的なフィルタが、第2セクション122が送信モードにある場合に大量の近接阻止(送信器周波数帯域のエッジ近くの大量のフィルタリング及び/又は減衰)を与え、第2セクション122が受信モードにある場合に第1セクション102の周波数帯域全体にわたって少なくとも中程度の量のフィルタリングを与えるフィルタであることが示される。
【0032】
図4は、一例に係るフィルタリング回路400の一例を示す。フィルタリング回路400は、入力部402、フィルタ404、ノイズキャンセル回路406、加算ノード408及び出力部410を含む。フィルタリング回路400は、上述したFEMにとって理想的な又は理想に近いフィルタリング特性を与えるように構成され得る。
【0033】
フィルタリング回路400は、出力部410がアンテナに結合されるように、又は送信若しくは受信ノード(例えば送信ノード106、126及び受信ノード140、124)に結合されるように、配向することができる。
図5A及び
図5Bは、FEM500のセクション502、522それぞれに関する双方の配向を示す。
【0034】
入力部402は、フィルタ404及びノイズキャンセル回路406に結合される。入力部402は、入力信号を受信し、その入力信号の少なくとも一部分をフィルタ404及びノイズキャンセル回路406に与えるように構成される。入力信号は、アンテナ又は受信ノードを含む任意の場所から入来し得る。いくつかの例において、フィルタ404は入力信号全体を受信し、ノイズキャンセル回路406は、ノイズキャンセルが行われるべき所望周波数範囲に対応する入力信号の少なくとも一部分を受信する。加算ノード408は、出力部410、フィルタ404及びノイズキャンセル回路406に結合される。加算ノード408は、フィルタ404及びノイズキャンセル回路406の出力を加算し、加算された出力を出力信号として出力部410に与えるように構成される。
【0035】
フィルタ404は任意の種類のフィルタであってよい。好ましい実施形態において、フィルタ404はバルク弾性波(BAW)フィルタである。BAWフィルタは、圧電材料を使用するなどして、電気エネルギーを音響エネルギー又は機械エネルギーに変換するフィルタである。BAWフィルタは、高周波数で動作することができ、テレコミュニケーション技術に適している。いくつかの例において、フィルタ404は帯域通過フィルタである。いくつかの例において、フィルタ404は高域通過フィルタ又は低域通過フィルタである。いくつかの例において、フィルタ404は、任意のタイプのフィルタであってよい。
【0036】
ノイズキャンセル回路406は、入力信号の少なくとも一部分を受信し、受信した入力信号の一部分の位相及び大きさを調整するように構成される回路である。ノイズキャンセル回路406は、キャンセル対象の入力信号の当該一部分を調整し得るように、プログラム可能タップを有する。いくつかの例において、プログラム可能タップは、制御器によって制御され(例えばプログラムされ)てよく、制御器はタップをデジタル的に制御してよい。ノイズキャンセル回路406の制御は、アナログ又はデジタルの方法を使用して行い得る。いくつかの例において、ノイズキャンセル回路406はアナログ回路であり、これは、信号のノイズキャンセル及び/又はフィルタリングのプロセスが、アナログのコンポーネント及び方法を使用して行われることを意味する。ノイズキャンセル回路406がアナログである例において、ノイズキャンセル回路406は、依然としてデジタル的に制御されてよい(例えば、プログラマブルタップは、依然としてプロセッサのような制御器を使用して所望値に設定されてよい)。
【0037】
ノイズキャンセル回路406がキャンセルする入力信号の当該一部分の周波数範囲は、少なくとも、フィルタリング回路400がディプロイされるFEMの動作モード(送信又は受信)に基づいて、所望周波数範囲まで調整することができ、いくつかの例において、ノイズキャンセル回路406によって入力信号に与えられる減衰及び/又は利得も調整することができる。いくつかの例において、ノイズキャンセル回路406は、入力信号の当該一部分の位相を180度だけ調整し、非ゼロ利得(すなわち-30dB、-20dB、-10dB等)を入力信号の当該一部分に適用する。ノイズキャンセル回路406は、入力信号の当該一部分の位相を任意量だけ調整してよく、任意の利得係数を信号に適用してよい。
【0038】
デジタルの方法を使用するノイズキャンセル回路の一例は、「低電力アナログデジタル変換器」という名称の米国特許第9,520,895号であり、これは、すべての目的のためにその全体が参照によりここに組み入れられる。
【0039】
いくつかの例において、フィルタ404は静的フィルタであり、そのフィルタ特性を調整することができない。いくつかの場合、これは、BAWフィルタ(フィルタ404がBAWフィルタとして実装される場合)が一般に、製作時に設定される特性を有する静的コンポーネントだからである。BAWフィルタを容易に又は安価に調整することができないということは、フィルタ404が、
図2及び
図3において説明される送信信号の当該一部分をフィルタリングする便利な手段を与えることがないことを意味する。さらに、送信モード及び受信モードは、互いに実質的に異なる周波数で信号成分をフィルタリングする必要がある。
図2において、フィルタリング領域208(第2セクション122が信号を送信することに対応する)は、第1セクション102の周波数帯域のエッジ近くに位置している。対照的に、
図3においてフィルタリング領域212は、第3トレース207のエッジからはるかに遠くに位置している。その結果、第1のフィルタリング領域208をフィルタリングするのに適したフィルタは、第2のフィルタリング領域212を適切にフィルタリングできないかもしれず、第2のフィルタリング領域212を適切にフィルタリングできるフィルタは、第1のフィルタリング領域208を適切にフィルタリングできないかもしれない。
【0040】
しかしながら、フィルタリング回路400は、
図2及び
図3に記載された双方の場合に対して一つの回路が有効にフィルタリングすることを許容する解決策を与え得る。すなわち、フィルタリング回路400は、第1及び第2のフィルタリング領域208、212の双方を適切かつ有効にフィルタリングすることできる。加算ノード408においてノイズキャンセル回路406及びフィルタ404の出力を加算することにより、フィルタリング回路400は、設定可能BAWフィルタ又は他のフィルタのように動作し得る。
【0041】
フィルタ404は、入力信号の全体にフィルタリングを適用し、フィルタリングされた信号を加算ノード408に与える。ノイズキャンセル回路のプログラム可能タップは、入力信号の所望部分がノイズキャンセル回路406によって処理されるように設定される(例えば制御器又は他のデバイスによってプログラムされる)。ノイズキャンセル回路406は、ノイズキャンセル信号をもたらすべく入力信号の当該一部分の位相及び利得を調整し、ノイズキャンセル信号を加算ノード408に与える。
【0042】
ノイズキャンセル信号が加算ノード408において、フィルタ404が与えるフィルタリング済み信号と一緒に加算されるとき、ノイズキャンセル信号は、当該ノイズキャンセル信号に対応するフィルタリング済み信号の一部分を除去する。いくつかの例において、ノイズキャンセル回路406によりノイズキャンセル信号をもたらすべく使用される入力信号の当該一部分は、
図2及び
図3のフィルタ領域208、212においてフィルタリングされるべき信号に対応する入力信号の一部分である。
図5A、
図5B及び
図6は、フィルタリングプロセスを詳細に説明する。
【0043】
図5Aは、一例に係る、送信モードにおけるFEM502(第1セクション502)及び受信モードにおけるFEM522(第2セクション522)を示す。FEM502及びFEM522は、
図1のものと同様であるが、
図4の加算ノード、フィルタ及びノイズキャンセル回路を組み込んでいる。したがって、FEM502又はFEM522は、設定可能フィルタを有するFEMと同様に動作することができる。
【0044】
FEM502は、第1受信ノード504、第1送信ノード506、スイッチS1、第1加算ノード508、第1フィルタ510、第1ノイズキャンセル回路512(「第1NCC512」)、及び第1アンテナ514を含む。FEM522は、受信ノード524、送信ノード526、スイッチS2、第2加算ノード528、第2フィルタ530、第2ノイズキャンセル回路532(「第2NCC532」)、及び第2アンテナ534を含む。送信ノード及び受信ノード504、506、524、526は、電力増幅器(PA)及び低雑音増幅器(LNA) であってよく、及び/又はこれらを含んでよい。
【0045】
RFフロントエンド500は、RFフロントエンド100と同様に動作する。第1セクション502は第1範囲(又は帯域)の周波数に対応し、第2セクション522は第2範囲(又は帯域)の周波数に対応する。スイッチS1、S2は、セクション502、522がどの動作モードにあるかを選択する。セクション502とセクション522とは独立しているので、双方ともが送信モードであってよく、双方ともが受信モードであってよく、一方が送信モードで他方が受信モードであってもよい。最も困難な同時送受信(STR)の場合は、一方のセクションが送信している間に同時に第2セクションが受信しているときに生じる。
【0046】
一つのSTRのインスタンスにおいて、第2セクション522は、遠隔のデバイスに信号を送信するように設定され、第1セクション502は、遠隔のデバイスから信号を受信するように設定される。第2送信ノード526に由来する送信信号は、第1セクション502のための受信信号と干渉し得る。例えば、第2セクション522が約6GHzの第2周波数帯域において送信し、第1セクション502が約5GHzの第1周波数帯域において受信すると仮定すると、第2セクション522からの送信信号の信号成分は、5GHz帯域と干渉し、ノイズとして有効に動作して5GHz帯域のノイズフロアを持ち上げる。その結果、(信号を受信している)第1セクション502は、5GHz帯域において受信された信号の一部を受信不能となり得る(又は信号が送信信号によってもたらされたノイズの中に失われ得る)。したがって、6GHz送信器(すなわち第2セクション526)からの5GHz帯域に該当し得るノイズを、送信前にフィルタリングする必要がある。さらに、6GHz帯域における送信信号の周波数が5GHz帯域に近い場合にノイズは最悪となるので、5GHz周波数帯域の上側エッジ近くにおけるかなりの量の近接阻止(例えば50dB、60dB、100dB等)が望ましい。
【0047】
5GHz帯域における干渉を防止又は低減するべく、(第2送信ノード526に由来する)送信信号は、第2フィルタ530及び第2NCC532まで進行する。第2フィルタ530は、ある程度均一な一般的に静的な方法で送信信号をフィルタリングする。例えば、第2フィルタ530が高域通過フィルタである場合、低周波数はコンディショニングされ、高周波数がフィルタを通過する。第2フィルタ530が与えるフィルタリングの正確な特性は、第2フィルタ530の設計に依存する。
【0048】
第2フィルタ530と並列して、第2NCC532は送信信号の一部分をサンプリングする。近接阻止が望ましいので、制御器は、5GHz帯域の上側エッジ近くの周波数範囲(又は一般的に言えば、第1周波数帯域)を受信して減衰させるように第2NCC532のプログラム可能タップをプログラムし得る。第2NCC532はその後、送信信号の当該一部分を受信し、送信信号の当該一部分の位相及び/又は振幅を調整し、そして、送信信号の当該一部分を第2加算ノード528に与える。
【0049】
第2加算ノード528において、第2フィルタ530及び第2NCC532からの2つの信号が加算されて一緒になる。これが意味することをよく理解するために以下の例を考慮する。第2フィルタ530が第2周波数帯域(例えば6GHz帯域)を下回る周波数に40dBの減衰を与えると仮定する。これは、第2フィルタ530だけからの近接阻止が約40dBになることを意味する。第2NCC532は、第1周波数帯域のエッジ(例えば6GHz帯域に最も近い5GHz帯域のエッジ)に対応する送信信号成分をサンプリングする。第2NCC532は、40dBによってコンディショニングもされるように送信信号の当該一部分を調整し、その後、信号を反転する(すなわち180度の位相シフト又は-1の利得係数のいずれかを適用する)。第2NCC532は、前述の動作を行うことによって、送信信号が第2フィルタ530を通過し終えた後の送信信号と等しいが反対の大きさの信号を有効にもたらす。フィルタ530からのフィルタリング済み信号と第2NCC532からのノイズキャンセル信号と加算されて一緒になると、近接阻止周波数帯域におけるフィルタリング済み信号の周波数成分が、これらの周波数成分に対応するが反対の大きさを有するノイズキャンセル信号と加算されるので、近接阻止周波数帯域におけるフィルタリング済み信号の当該部分がゼロまで低減される(ノイズキャンセル信号とフィルタリング済み送信信号の近接阻止周波数帯域成分との破壊的干渉に類似する)。
【0050】
第2フィルタ530及び第2NCC532の現実又は実際の動作において、近接周波数帯域は完全に除去されるわけではなく、フィルタリング済み送信信号の他の部分のいくらかの減衰が生じ得る。送信信号はその後、第2アンテナ534を介して遠隔ユーザに送信される。送信信号の複数部分が、第1アンテナ514(又は他のアンテナ)においてピックアップされてよい。しかしながら、第2フィルタ530は、第1周波数帯域(例えば5GHz帯域)のエッジから遠くにある送信信号の周波数成分のエネルギー(すなわちコンディショニングされたもの)をノイズフロアよりも下になるように低減しており、第2NCC532は、ノイズフロアを上回っていたであろう送信信号の複数部分(第1周波数帯域(例えば6GHz帯域に近い5GHz帯域)の上側エッジ近くにある)を除去している(すなわちコンディショニングしている)ので、当該信号部分はここで、第1周波数帯域のノイズフロアを下回るようになる。その結果、第1周波数帯域のノイズフロアを上げていたであろう送信信号の複数部分が、第2フィルタ530及び第2NCC532によってコンディショニング及び/又は除去されているので、送信信号は、もはや受信信号及び/又は第1周波数帯域と干渉することがない。
【0051】
図5Bは、一例に係る受信動作モードにあるRFフロントエンド500を示す。
図5Bは、第1FEM502が現在送信信号を送信しており、第2FEM522が現在受信信号を受信しており、加算ノードの位置が変更されていることを除いて、
図5Aと同一である。
図5Aの加算ノード508、528は図示されておらず、代わりに第3加算ノード509及び第4加算ノード529が図示されている。第3加算ノード509は、第1アンテナ514と第1フィルタ510及び第1NCC512との間に結合される。第4加算ノード529は、第2スイッチS2と第2フィルタ530及び第2NCC532との間に結合される。最後に、第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、第1送信ノード506が第1アンテナ514に間接的に結合され、第2受信ノード524が第2アンテナ534に間接的に結合されるように切り替えられている。
【0052】
受信動作モードにおいて、送信信号(ここでは第1アンテナ514を介して第1FEM502によって送信される)は、第2FEM522に対する信号ジャマー(jammer)(詳しくは帯域外ジャマー)として作用する。例えば、第1FEM502の第1周波数帯域が5GHz周波数帯域であり、第2FEM522の第2周波数帯域が6GHz周波数帯域であると仮定すると(例えば
図2及び
図3に示されるように)、送信信号は、第2セクション522で受信される大きな信号のように動作する。特に、アンテナ514からの大きな送信信号が受信アンテナ534に漏洩することにより、LNA524にオーバードライブが引き起こされて非線形動作が生じ得る。LNA524が非線形範囲で動作する場合、受信信号が歪んでシステムのスループットが低下する。
【0053】
しかしながら、
図5Aの送信モードの場合とは異なり、送信経路における送信信号(例えば第1セクション502によって送信されるような)のフィルタリングは有効とはならない。送信信号はフィルタ510を通過しなければならず、アンテナ514から放射されなければならないからである。その代わりに、受信経路(例えば第2アンテナ534と第2スイッチS2との間)において受信アンテナ534に漏洩する送信信号をフィルタリングする必要がある。受信経路において送信信号をフィルタリングする利点の中には、受信経路におけるフィルタリングがLNA524に現れる歪みを防止する点がある。
【0054】
動作中、送信信号及び/又は受信信号は、第2アンテナ534によって受信される。合成された信号(簡潔性のため受信信号と称する)は、第2フィルタ530及び第2NCC532に与えられる。
図5Aと同様に、第2フィルタ530は、第2周波数帯域(例えば6GHz帯域)を通過させて第1周波数帯域(例えば5GHz帯域)内の受信信号に所定量の減衰を与える。第2NCC532は、所与の周波数帯域に対応する受信信号の複数部分をサンプリングする。所与の周波数帯域が周波数帯域のエッジに近接していた
図5Aとは異なり、ここでは、第2NCC532が、広帯域のノイズキャンセルを与えるようにプログラムされている。第2NCC532は、例えば、第1周波数帯域全体、若しくは第1周波数帯域の中間半分、又は第1周波数帯域若しくは他の周波数帯域の任意の他のセクションにわたって減衰を与えるようにプログラムされ得る。
【0055】
第2NCC532は、受信信号のサンプリングされた部分の位相及び/又は振幅を調整し、第4加算ノード529に与えられる調整済み信号を生成する。
図5Bと同様に、調整済み信号は、第2フィルタ530からのフィルタリング済み信号に加えられ、受信信号のサンプリング済み部分に対応するフィルタリング済み信号の成分が(破壊的干渉に類似した態様で)除去及び/又はコンディショニングされる。いくつかの例において、このプロセスにより、送信アンテナ514において送信されて受信アンテナ534へと結合される送信信号の成分が、LNA524がOOBジャマーによって歪むことがない程度に十分低いレベルまで低減される。
【0056】
加えて、いくつかの例において、2つの動作モード間にはトレードオフが存在する。
図5Aにおいて、第1周波数帯域の近接エッジに大きな減衰が与えられる。
図5Bにおいて、中程度の(そして一般に小さな)減衰量が、広い周波数帯域にわたって与えられる。すなわち、一例として、
図5Aでは第2NCC532が、狭帯域の周波数を除去する帯域除去フィルタと同様に作用する一方、
図5Bでは第2NCC532が、高域通過フィルタのように作用して所定周波数を下回る周波数を除去する。しかしながら、これらの例がフィルタの動作を対比する一方、双方の動作モードにおけるいくつかの例では、第2NCC532は帯域除去フィルタのように作用する。一般的な違いは、送信動作モードにおいては除去帯域が狭く、減衰が相対的に大きくなり、受信動作モードにおいては除去帯域が広く、減衰が相対的に小さくなることである。
【0057】
さらに、第1セクション502又は第2セクション522はいずれもが上記プロセスを行い得る。第1FEM502は、送信モードにあるとき、第2FEM522において受信信号に干渉するであろう望ましくない成分を除去するように、その送信信号を有効にフィルタリングし得る。同様に、ここに説明される周波数帯域は、純粋に例示的なものである。第1周波数帯域及び第2周波数帯域は、任意の周波数帯域としてよい。様々な加算ノードは、専用ハードウェアでなくてもよい。その代わり、加算ノードは、いくつかの例において、単に2つ以上の導体が結合して一緒になる場所(例えば2つ以上のワイヤ間のフォーク)であってよい。
【0058】
図6は、一例に係るFEM522のフィルタリング特性のグラフを示す。第1軸602は、フィルタ510、530及びNCC512、532が与える減衰をデシベル単位で示す。第2軸604は、周波数及び5GHz帯域604a及び6GHz帯域604bを示す。第1トレース606は、送信動作モード(この例においてこれはFEM502が5GHz範囲で受信している間に6GHz範囲で送信していると推定される)においてフィルタ530及びNCC532によって与えられるフィルタリングを示す。第2トレース608は、受信動作モード(この例においてこれはFEM502が5GHzの範囲で送信している間に6GHzの範囲で受信していると推定される)においてフィルタ530及びNCC532によって与えられるフィルタリングを示す。
【0059】
2つのトレース606、608間の差は主に、NCC532の位相及び振幅に対するタップ係数を調整したことに起因する。送信動作モードにおいて、タップは、6GHz周波数帯域の近く及び直下の6GHzアンテナにおいて送信されている信号をキャンセルするように選択される(例えばデジタル制御器又はプロセッサによってプログラムされる)。受信動作モードにおいて、タップは、5GHz周波数帯域全体にわたって6GHzアンテナにおいて受信されている信号をキャンセルするように選択される。
【0060】
図7は、一例に係る送信信号610に減衰が与えられる送信モードにおける第2セクション522からの送信信号610のオーバーレイを示すグラフを示す。点線の円612内の送信信号610の部分は、実質的な減衰を受けており、点線の円612内の送信信号610の最もコンディショニングされた部分は、ほぼ60dBだけ低減されている。その結果、点線の円612内の送信信号610の部分に存在するエネルギーの量は、通常のBAWフィルタの影響のもとにある場合よりも実質的に少なくなる。送信信号610の減衰すなわち有効なフィルタリングは、第1アンテナ514によってピックアップされる送信信号610の望ましくない部分をキャンセルするべく動作するフィルタ510及びノイズキャンセル回路512の動作の合計とみなすことができる。
【0061】
図8は、第2FEM522が受信動作モードにあるグラフを示す。このグラフは、第1セクション502からの送信信号614と第2セクション522の受信信号616のオーバーレイを示し、一例に係る送信信号614に減衰が与えられている。この図において、受信フィルタ530に先だってアンテナ534に到着する受信信号が示される。上述したように、第1セクション502からの送信信号614は、受信信号616のジャマーのように動作する。詳しくは、フィルタリングがないときに送信信号614は非常に高いレベルになるので、LNA524が非線形の態様で動作する。第2トレース608は、第2アンテナ534によってピックアップされた送信信号614のフィルタリング530とノイズキャンセル回路532との組み合わせとしての、受信フィルタからの有効なフィルタリングを示す。点線の円618内の送信信号614の部分がコンディショニングされる。すなわち、送信信号614のエネルギーが第2セクション522の観点から減少される結果、受信信号616が妨害されることなく延びて、送信信号614が現在ブロックしている周波数帯域に現れるようになる。トレース608によって描かれるフィルタリングがひとたび適用されると、ジャマー信号614が非常に低いレベルにまで低減され、その結果、LNA524が線形動作範囲で動作することができるので、全体的な受信動作はOOBジャマーの存在の影響を受けない。
【0062】
図9は、FEMの一セクションにおいて受信された一以上の送信信号の少なくとも一部分をキャンセルするプロセス700を示す。
【0063】
動作702において、制御器は、FEMが共有すべきスペクトルにおいて送信信号を送信しているか否かを決定する。制御器は、送信信号がどの周波数で送信されているのかを決定し、送信信号が受信信号と干渉する可能性があるか否かを決定することができる。代替的に、制御器は、他のデバイスが信号を受信している又は受信する可能性があるスペクトルにおいてFEMが送信していると決定してよい。FEMが信号を送信していると制御器が決定した場合(702Y)、プロセス700は動作704へ進む。FEMが信号を送信していないと制御器が決定した場合(702N)、プロセス700は動作710へ進む。
【0064】
動作704において、制御器はFEMを、送信信号の送信に対応するべく送信モードで動作するように設定する。プロセス700はその後、動作706へ進む。
【0065】
動作706において、制御器は、FEMのタップ(例えば振幅タップ、周波数タップ、位相タップ等)が送信動作モード用に設定されているか否かを決定する。タップが送信動作モード用に設定されていると制御器が決定すると(706Y)、プロセス700は動作718へと続く。タップが送信動作モード用に設定されていないと制御器が決定すると(706N)、プロセス700は動作708へと続く。
【0066】
動作708において、制御器は、送信動作モードに対応する値にタップを調整及び/又は設定する。これは、例えば
図6のトレース606又は
図7に関して説明したように、受信周波数帯域のエッジ近くで実質的な減衰を与えるように制御器がタップを設定することを意味する。プロセス700はその後、動作718へ進む。
【0067】
動作710を参照すると、動作710において、制御器はFEMを、受信信号の受信に対応するべく受信モードで動作するように設定する。プロセス700はその後、動作712へ進む。
【0068】
動作712において、制御器は、タップが受信動作モード用に設定されているか否かを決定する。タップが受信動作モード用に設定されていると制御器が決定すると(712Y)、プロセス700は動作718へと進む。タップが受信動作モード用に設定されていないと制御器が決定すると(712N)、プロセス700は動作714へと続く。
【0069】
動作714において、制御器は、受信動作モードに対応する値にタップを調整及び/又は設定する。これは、例えば
図6のトレース608又は
図8に関して説明したように、送信周波数帯域にわたって適度な減衰を与えるように制御器がタップを設定することを意味する。いくつかの例において、制御器は、信号が送信されている正確な周波数及び/又は周波数帯域を決定することができる。制御器が正確な周波数及び/又は周波数帯域を決定することができるこのような場合において、制御器は、所望の周波数帯域及び/又はサブ帯域に所望レベルの除去(例えばノイズキャンセリング)を与えるようにタップをプログラムすることができる。プロセス700はその後、動作718へ進む。
【0070】
動作718において、制御器はFEMを制御して信号を処理する。制御器は、例えば、フィルタ処理及びノイズキャンセルされた入力信号を取り出して、それを他のデバイスに与え、それに対して様々な形態の後処理を行い、又はそれを任意の他の目的のために使用してよい。いくつかの例において、プロセス700はその後、動作702に戻り、将来の信号に対して繰り返すことができる。
【0071】
動作中に第1NCC512又は第2NCC532のようなノイズキャンセル回路を動的に調整する能力は、隣接する周波数帯域で送信及び受信される信号間の干渉を低減するために使用されるのみならず、他の現実世界の問題を補償又は調整するためにも使用してよい。例えば、送信中に、信号の送信に関与する回路が加熱されると、温度変化が送信信号及び/又は受信信号の位相変化に影響を与える。例えば、30度以上の位相変化が、しきい値温度量を超える温度変化によって引き起こされ得る。かかる変化は、ノイズキャンセル回路及び/又はフィルタのためのタップの値を動的に変更することによって、位相変化を打ち消し、又はさらに位相変化を所望レベルまで調整することで説明され得る。いくつかの例において、制御器(例えばプロセス700の制御器)は、FEMのノイズキャンセル回路のタップ及び/又はフィルタのタップを制御することによって、温度変化又は他の現実世界の問題に起因する送信信号及び/又は受信信号の位相変化を調整し得る。
【0072】
前述の例において、RFフロントエンド(例えば
図1のRFフロントエンド100)は典型的に、2つのFEM(例えば第1FEM102及び第2FEM122)で描かれている。しかしながら、ここに描かれるRFフロントエンドは、単数のFEMのみを有してよい。すなわち、
図1のRFフロントエンド100は、FEM122又はFEM102を省略してよい。一般に、RFフロントエンドは、単数のFEM又は複数のFEM(例えば、2、3、5、10等)を有してよい。
【0073】
マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA及び他の回路のような制御器が、上述した様々な動作の制御及び/又は実行に役立ち得る。関連付けられるメモリ及び/又はストレージに格納されたデータを使用して、制御器は、例えば、上述したFEMの動作モードを制御し得る。いくつかの例において、制御器は、FEMの一以上のセクションに関し、受信モード又は送信モードにおいてFEMを動作させるように選択してよい。制御器は、例えば、ネットワークにおけるFEMと他のデバイスとの間の通信を可能にすることによって、サポート機能を与えてよい。
【0074】
いくつかの例において、一以上の制御器(「制御器」)はまた、操作されたデータをもたらし得る一以上の非一時的コンピュータ可読媒体に格納された一以上の命令を実行し、制御器はこの非一時的コンピュータ可読媒体を含み及び/又はこの非一時的コンピュータ可読媒体に結合されてよい。いくつかの例において、制御器は、一以上のプロセッサ又は他のタイプの制御器を含んでよい。一例において、制御器は少なくとも一つのプロセッサであり、又は少なくとも一つのプロセッサを含む。他例において、制御器は、汎用プロセッサに加えて又は汎用プロセッサの代わりに特定の動作を実行するようにあつらえられた特定用途向け集積回路を使用して、上述した動作の少なくとも一部分を実行する。
【0075】
これらの例により示されるように、本開示に係る複数の例が、ハードウェア及びソフトウェアの多くの特定の組み合わせを使用して、ここに記載される動作を実行することができ、本開示は、ハードウェア及びソフトウェアのコンポーネントの任意の特定の組み合わせに限られない。本開示の例は、上述した方法、プロセス及び/又は動作を実行するように構成されるコンピュータプログラム製品を含み得る。コンピュータプログラム製品は、上述した方法、プロセス及び/又は動作を行うべく命令を実行するように構成される一以上の制御器及び/又はプロセッサとしてよく、又はこれらを含み得る。
【0076】
このように、少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が記載されたので、当業者にとって様々な改変、修正及び改善が容易に想起されることが理解される。かかる改変、修正及び改善は、本開示の一部であることが意図され、本開示の要旨及び範囲の中にあることが意図される。したがって、上記説明及び図面は単なる例示にすぎない。
【外国語明細書】