(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097299
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物および羽化阻害製品、ならびに不完全羽化体形成組成物および不完全羽化体形成製品
(51)【国際特許分類】
A01N 53/06 20060101AFI20240710BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20240710BHJP
A01N 53/10 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
A01N53/06 110
A01P7/04
A01N53/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217865
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2023000473
(32)【優先日】2023-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 太洋
(72)【発明者】
【氏名】三石 帆波
(72)【発明者】
【氏名】猪口 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】引土 知幸
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC08
4H011BB15
4H011BC01
4H011BC03
4H011BC05
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】本発明は、効果の持続に優れ、より広い空間で効果的なハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物を含む、ハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物であり、ハエ類の発生を予防する用途に有効であり、特に、ショウジョウバエ、ノミバエ、チョウバエ、キノコバエ等のコバエの防除に好適に利用可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物を含む、ハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物。
【請求項2】
さらに炭化水素系溶剤を含む、請求項1に記載のハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物。
【請求項3】
前記羽化阻害が不完全羽化体形成作用によるものである、請求項1に記載のハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の羽化阻害組成物を含むハエ類の蛹に対する羽化阻害製品。
【請求項5】
前記羽化阻害組成物が担持体に含浸された非加熱蒸散製品として調製され、処理空間に設置される、請求項4に記載のハエ類の蛹に対する羽化阻害製品。
【請求項6】
前記処理空間の容積は、5L以上である、請求項5に記載のハエ類の蛹に対する羽化阻害製品。
【請求項7】
25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物を含む、ハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成組成物。
【請求項8】
さらに炭化水素系溶剤を含む、請求項7に記載のハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成組成物。
【請求項9】
請求項7または8に記載の不完全羽化体形成組成物を含む、ハエ類の蛹に対する不完全羽化形成製品。
【請求項10】
前記不完全羽化体形成組成物が担持体に含浸された非加熱蒸散製品として調製され、処理空間に設置される、請求項9に記載のハエ類の蛹に対する不完全羽化形成製品。
【請求項11】
前記処理空間の容積は、5L以上である、請求項10に記載のハエ類の蛹に対する不完全羽化形成製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物および羽化阻害製品、ならびに不完全羽化体形成組成物および不完全羽化体形成製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハエは、卵が孵化して幼虫となり、その後に蛹化し、羽化して成虫となり、再び産卵するというライフサイクルを繰り返すが、特にコバエの類は、ライフサイクルが短く、増殖力が高いことから、成虫となる手前で防除できれば効果は大きい。一般に、幼虫や成虫は薬剤処理の効果が発揮されやすいものの、蛹については、比較的硬い外皮でおおわれることから、薬剤が効きにくいと考えられ、特に蛹に対して効果のある防除方法、つまりは蛹に作用して成虫への羽化を阻害することが検討されてきた。例えばある種の化合物がイエバエやオオチョウバエ等のハエの成虫に対して、優れた活性を有するとされ(特許文献1および特許文献2)、該化合物を有効成分とする防除剤が開発、検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-167131号公報
【特許文献2】特開2014-214119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、オイゲノールを含む、クローブ油、ピメンタ油、ベイ油、シナモンリーフ油等の植物精油が、ショウジョウバエに対して羽化阻害効果を有することが記載されている。また特許文献2には、特定の4種のピレスロイド化合物が、ハエの羽化阻害剤として機能することが記載されている。しかしながら、特許文献1記載の羽化阻害成分は、オイゲノールを含む植物精油であり、特異な芳香を有することから、台所周りでの使用には適さないことが懸念された。また特許文献2においては、その実施例の内容を精査するに、ハエ幼虫を含有する物体(プラスチックカップ)内という小空間に対しての薬剤処理の結果を示しており、より広い空間にて、純粋に蛹のみに対して薬剤処理されていないことから、蛹に対する羽化阻害剤としての効果については明らかにはされておらず、実用的とはいい難かった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、効果の持続に優れ、より広い空間で効果的に羽化阻害効果を発揮することができるハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物および羽化阻害製品、ならびに不完全羽化体形成組成物および不完全羽化体形成製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係るハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物の特徴構成は、
25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物を含むことにある。
【0007】
本構成のハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物によれば、25℃で特定の蒸気圧を有するピレスロイド化合物を含む組成物を、ハエ類、特にコバエが発生する場所に処理することにより、コバエの蛹から成虫へ羽化することを阻害することができ、その結果、コバエの成虫が発生し飛び回ることを防ぐ(予防する)ことができる。また、羽化阻害効果の持続に優れ、より広い空間で効果的に羽化を阻害することができる。
なお、本発明における羽化阻害とは、蛹から完全に(全く)羽化しない状態(非羽化)だけでなく、蛹から不完全な状態での羽化に留まり、完全な成虫に至らない状態(不完全羽化)をも含むものである。
【0008】
本発明に係るハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物において、
さらに炭化水素系溶剤を含むことが好ましい。
【0009】
本構成のハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物によれば、炭化水素系溶剤を含むことにより、ハエ類の蛹に対する羽化阻害効果の持続性が高まり、ハエ類、特にコバエの発生をより長期間にわたって防ぐことができる。
【0010】
本発明に係るハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物において、
前記羽化阻害が不完全羽化体形成作用によるものであることが好ましい。
【0011】
本構成のハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物によれば、羽化阻害は蛹から完全に羽化することなく不完全に羽化した状況で死滅するため、完全に羽化した成虫が発生し、飛び回ることを防ぐことができる。
【0012】
上記課題を解決するための別の本発明に係るハエ類の蛹に対する羽化阻害製品の特徴構成は、
上記羽化阻害組成物を含むことにある。
【0013】
本構成のハエ類の蛹に対する羽化阻害製品によれば、上記羽化阻害組成物を含むことにより、効果の持続に優れ、より広い空間で効果的に羽化阻害効果を発揮することができるものとなる。
【0014】
本発明に係るハエ類の蛹に対する羽化阻害製品において、
前記羽化阻害組成物が担持体に含浸された非加熱蒸散製品として調製され、処理空間に設置されることが好ましい。
【0015】
本構成のハエ類の蛹に対する羽化阻害製品によれば、上記非加熱蒸散製品として調製され、処理空間に設置されることにより、上記ピレスロイド化合物が非加熱で蒸散し、ハエ類の蛹に対する羽化阻害効果を発揮することができる。
【0016】
本発明に係るハエ類の蛹に対する羽化阻害製品において、
前記処理空間の容積は、5L以上であることが好ましい。
【0017】
本構成のハエ類の蛹に対する羽化阻害製品によれば、処理空間の容積を上記適切な範囲に設定することにより、ゴミ箱等の狭い空間から食堂や居間等の比較的広い空間までハエ類の蛹に対する羽化阻害効果を高めることができる。
【0018】
上記課題を解決するための別の本発明に係るハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成組成物の特徴構成は、
25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物を含むことにある。
【0019】
本構成のハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成組成物によれば、25℃で特定の蒸気圧を有するピレスロイド化合物を含む組成物を、ハエ類、特にコバエが発生する場所に処理することにより、通常はコバエの蛹は成虫へ羽化するところ、不完全な状態での羽化に留まり、成虫化することなく死滅させることができる。その結果、コバエの成虫が発生し、処理場所から逃避することや、周辺で飛び回ることを防ぐことができる。
【0020】
本発明に係るハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成組成物において、
さらに炭化水素系溶剤を含むことが好ましい。
【0021】
本構成のハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成組成物によれば、炭化水素系溶剤を含むことによりハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成効果の持続性が高まり、ハエ類、特にコバエの発生をより長期間にわたって防ぐことができる。
【0022】
上記課題を解決するための別の本発明に係るハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成製品の特徴構成は、
上記不完全羽化体形成組成物を含むことにある。
【0023】
本構成のハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成製品によれば、上記不完全羽化体形成組成物を含むことにより、効果の持続に優れ、より広い空間で効果的に不完全羽化体形成効果を発揮することができるものとなる。
【0024】
本発明に係るハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成製品において、
前記不完全羽化体形成組成物が担持体に含浸された非加熱蒸散製品として調製され、処理空間に設置されることが好ましい。
【0025】
本構成のハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成製品によれば、上記非加熱蒸散製品として調製され、処理空間に設置されることにより、上記ピレスロイド化合物が非加熱で蒸散し、ハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成効果を発揮することができる。
【0026】
本発明に係るハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成製品において、
前記処理空間の容積は、5L以上であることが好ましい。
【0027】
本構成のハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成製品によれば、処理空間の容積を上記適切な範囲に設定することにより、ゴミ箱等の狭い空間から食堂や居間等の比較的広い空間までハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、キイロショウジョウバエの蛹の写真である。
【
図2】
図2は、キイロショウジョウバエの蛹から正常に羽化した成虫の写真である。
【
図3】
図3は、キイロショウジョウバエの不完全羽化体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物および羽化阻害製品、ならびに不完全羽化体形組成物および不完全羽化体形成製品の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。以下、「ハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物」を「羽化阻害組成物」と称し、「ハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成組成物」を「不完全羽化体形成組成物」と称し、「ハエ類の蛹に対する羽化阻害製品」を「羽化阻害製品」と称し、「ハエ類の蛹に対する不完全羽化体形成製品」を「不完全羽化体形成製品」と称する場合がある。「不完全羽化体形成組成物」は、「羽化阻害組成物」のうち不完全な状態の羽化作用を奏するものであり、「不完全羽化体形成製品」は、「羽化阻害製品」のうち不完全な状態の羽化作用を奏するものである。また、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物、ならびに羽化阻害製品および不完全羽化体形成製品は、25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物を含む点で共通しており、以下、共通する構成については、まとめて説明する。
【0030】
本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物は、ハエ類である、イエバエ、クロイエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ類、オオキモンノミバエ等を含むノミバエ類、キイロショウジョウバエ等を含むショウジョウバエ類、ツヤホソバエ類、クロバエ類、ニクバエ類等の蛹に対して優れた羽化阻害および不完全羽化体形成効果をそれぞれ有する。
【0031】
羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の有効成分は、25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa(5×10-5mmHg)以上であるピレスロイド化合物を含む。ここで、1mmHg=1.33322×102Paであり、他のピレスロイド化合物の25℃における蒸気圧についても、単位Paの後にかっこ書きで単位mmHgを併記する。蒸気圧は、例えば、Donovan法(Journal of Chromatography A. Volume 749, Issues 1-2, 1996, Pages 123-129「New method for estimating vapor pressure by the use of gas chromatography」に記載された方法)によって測定することができる。25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物としては、例えば、プロフルトリン(10.2658×10-3Pa(7.7×10-5mmHg))、エムペントリン(21.9981×10-3Pa(16.5×10-5mmHg))等が挙げられ、特にプロフルトリンが好ましい。なお、これらのピレスロイド化合物には、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在するが、それらもピレスロイド化合物に含まれる。これらの特定の蒸気圧を有するピレスロイド化合物は、ハエ類の蛹に対して有効に作用し、その後の蛹から羽化して成虫へ生育することを、完全又は不完全に阻害する。このうち、特に蛹が羽化する際に、不完全に羽化した状態で生育が停止し死に至る作用を有することは、従来知られていなかった新たな知見である。
【0032】
なお、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物は、25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物以外にも、トランスフルトリン、メトフルトリン、モンフルオロトリン、フタルスリン、レスメトリン、シフルトリン、フェノトリン、ぺルメトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、イミプロトリン、ビフェントリン、エトフェンプロックス、天然ピレトリン等の他のピレスロイド化合物、シラフルオフェン等のケイ素化合物、ジクロルボス、フェニトロチオン等の有機リン化合物、プロポクスル等のカーバメート化合物、ブロフラニリド等のジアミド化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド化合物等を含有することができる。羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物は、これら化合物を含有し、総合的な害虫防除剤(害虫防除製品)とすることも可能である。
【0033】
羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物中の有効成分の配合量は、特に限定されないが、0.1~100質量%であることが好ましく、0.5~80質量%であることがより好ましく、1~60質量%であることがさらに好ましい。羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物をそれぞれ各種担持体へ含浸させ、有効成分を自然蒸散させる非加熱蒸散製品として使用する場合には、担持体を含む製品1個当たりの有効成分の配合量は、1~1000mgであることが好ましく、10~500mgであることがより好ましく、20~100mgであることが特に好ましい。
【0034】
本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物を調製するにあたって、使用できる溶剤や界面活性剤等の各種成分は特に限定されないが、例えば、水、この他にアルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、高級脂肪酸エステル系溶剤、炭化水素系溶剤等の各種(有機)溶剤や、界面活性剤(可溶化剤)等が適宜用いられる。アルコール系溶剤としては、エタノール、イソプロパノールのような炭素数が2~3の低級アルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。グリコール系溶剤としては、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が、グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が使用できる。高級脂肪酸エステル系溶剤としては、総炭素数が13~30のものが好ましく、さらに総炭素数が16~24のものがより好ましく、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等を例示できる。これら溶剤の中でも、炭化水素系溶剤であるノルマルパラフィン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤が、羽化阻害効果および不完全羽化体形成効果を高め得る点、また、当該効果の持続性を高め得る点で好ましく、さらにこれら溶剤は沸点が150℃以上であるものがより好ましく、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、へキシレングリコールがさらに好ましく、ノルマルパラフィン、ヘキシレングリコールが特に好ましい。
【0035】
本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物には、それぞれ上記成分に加え、カビ類や菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤、殺菌剤、芳香剤、消臭剤、安定化剤、帯電防止剤、消泡剤、賦形剤等を適宜配合することもできる。防カビ剤、抗菌剤、及び殺菌剤としては、ヒノキチオール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、トリホリン、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、オルト-フェニルフェノール等が挙げられる。芳香剤としては、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、シトロネラ油、ライム油、ユズ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α-ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、ベンジルアセテート等の芳香成分、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド配合の香料成分等が挙げられる。
【0036】
本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物は、使用する際のハエの幼虫(蛹になる前の状態)又は蛹のいる場所、周囲の状況等に応じて、以下に記載するような製剤(製品)形態にて使用することができる。その製剤形態としては、例えば油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、エアゾール剤、炭酸ガス製剤、加熱蒸散剤(殺虫線香、電気殺虫マット、吸液芯型加熱蒸散剤等)、非加熱蒸散剤等が適用可能である。これらの中でも処理のしやすさの観点からはエアゾール剤(エアゾール製品)、非加熱蒸散剤(非加熱蒸散製品)としての使用が好ましく、非加熱蒸散製品としての使用が特に好ましい。中でも後述する担持体を用いた非加熱蒸散製品は、ゴミ箱の内部に吊下げたり貼り付けたりして設置でき、その後のゴミの出し入れの邪魔にならず連続して使用することができ、使い勝手の良い製品となる点で、特に好ましい。
【0037】
非加熱蒸散製品に用いられる担持体としては、特に限定されないが、例えば、カオリン、珪藻土、ベントナイト、酸性白土等の粘土類、タルク、セラミックあるいは炭酸カルシウム等のその他の無機鉱物やトリオキサン、ナフタリン、p-ジクロロベンゼン、樟脳、アダマンタン等といった常温で固体の昇華性物質、並びに紙、羊毛、絹、綿、麻、パルプ、各種合成樹脂や不織布体、セルロース発泡体、多孔質体等が挙げられる。なかでも吸液性の担持体に薬液を染み込ませ、自然蒸散による揮散性が発揮できる点では、シート状や板状の紙、パルプ、繊維体、フェルトを使用することが好ましい。これら担持体を肉厚にするために、薄手の物を複数枚積層しても構わない。またパルプ板やフェルトは、形状を保持しつつ、薬液を効率良く吸収するために、屈曲化や有孔化処理したりエンボス加工を施したりすることができる。
【0038】
本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物をスプレー製品として用いる場合、有効成分と、その他、任意に配合される成分と、各種溶剤からなる原液(薬液)と、必要に応じて噴射剤とを選択し、これらを耐圧容器あるいはトリガー式やポンプ式のスプレー容器に封入することで、スプレー製品が完成する。このようなスプレー製品において、有効成分である25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物を原液中1.0~30.0w/v%含有するように調整し得る。このような範囲に調整すれば、少ない噴射量でもハエ類の蛹からの羽化を防ぐことができる。
【0039】
このようなスプレー製品の中で特にエアゾール製品は、主に、耐圧容器、噴射バルブ、及び噴射ノズルから構成されている。噴射バルブには、薬液(原液)を噴射するための作動部である噴射ボタンが接続されてあり、噴射ノズルには、薬液がエアゾール容器から外部へ噴出する噴射口が設けられてある。また噴射バルブは定量噴射バルブが好ましく用いられる。この際スプレー製品の噴射ボタンを1回押下げた場合、噴射剤の圧力によって定量噴射バルブが作動し、耐圧容器内の薬液が噴射口に上昇し、噴射対象物に噴射される。このときの薬液の噴射容量は、好ましくは0.1~3mLに調整され、より好ましくは0.2~1mLに調整される。このような範囲であれば、噴射された薬液から形成される噴射粒子は、噴射対象物において効果的に防除効果を発揮し得るものとなる。また噴射粒子の好ましい粒子径は、25℃、噴射距離15cmにおける体積積算分布での50%粒子径(D50)が10~45μmである。このような範囲であれば、ゴミ箱容器の内表面や内容物といった噴射対象物に噴射された噴射粒子は、噴射対象物の表面に確実に付着、あるいは揮散、気化した状態でハエ類の卵や虫体、特に蛹に作用することができる。
【0040】
噴射ノズルに設けられた噴射口の噴口径は0.2~1.0mmに設定することが好ましく、0.7~1.0mmに設定することがより好ましい。この範囲であれば、適切な噴射パターンが得られ、噴射粒子をゴミ箱容器の内表面や内容物といった噴射対象物に付着させやすくなり、直接、あるいは揮散、気化した状態でハエ類の卵や虫体、特に蛹に作用することができる。
【0041】
本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物は、ハエ類の蛹に対して施用するが、具体的に幼虫や蛹が生息していることが予想される場所に施用する形態も含む。本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の施用方法としては、製品の形態、使用場所等に応じて、本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物をそのままハエ類の蛹、或いはハエ類の蛹が存在していると予想される場所に散布する処理法や、本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物をハエ類の蛹が存在している場所にて、自然に揮散させる処理方法等を適宜選択できる。
【0042】
本発明の羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物を使用する空間としては、例えば台所や台所のゴミ箱や三角コーナー、食堂、居間、トイレ、浴室、物置、倉庫等が挙げられ、さらに住宅地のゴミステーション、野外のキャンプ場やバーベキューコーナーのゴミ収集所等で施用、使用することもできる。非加熱蒸散製品として使用する際の処理空間(処理容器)の容積は1L以上とすることができ、3L以上が好ましく、5L以上がより好ましく、10L以上がさらに好ましい。また非加熱蒸散製品として使用する際の処理空間(処理容器)の容積の上限は100L以下とすることができ、75L以下が好ましく、50L以下がより好ましく、45L以下がさらに好ましい。また、非加熱蒸散製品として使用する際の処理空間(処理容器)としては密閉性が高いことが好ましく、蓋付きのゴミ箱が例示される。蓋付きのゴミ箱の容積は5~45Lが一般的であり、この容積は、処理空間の容積としても好適である。このように非加熱蒸散製品に調製する際、25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるピレスロイド化合物の配合量は、処理空間の単位容積あたりの使用量(処理量)が好ましくは400mg/m3以上、より好ましくは800mg/m3以上、さらに好ましくは1500mg/m3以上、特に好ましくは3000mg/m3以上となるように設定され得る。配合量の上限値については、薬液の担持体への吸液許容量やコスト等を考慮して適宜決定され得る。また、ハエ類を不完全に羽化させ得るという点では、上記ピレスロイド化合物の配合量は、処理空間の単位容積あたりの使用量(処理量)が好ましくは800~5000mg/m3、より好ましくは1500~4000mg/m3、さらに好ましくは1800~3100mg/m3となるように設定され得る。
【実施例0043】
以下、製剤例および実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれら製剤例および実施例に限定されるものではない。なお、下記の製剤例において、特に明記しない限り、部は質量部を意味する。
【0044】
製剤例1
プロフルトリン25部をカクタスノルマルパラフィンN-11(ノルマルパラフィン、ENEOS株式会社製、沸点180~220℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の少なくとも一方としての薬液を調製した。プロフルトリンの含有量(処理量)が40mgとなるようにこの薬液をパルプ製の担持体(縦6cm×横6cm 面積36cm2)に滴下、含浸させて、非加熱蒸散製品としての蒸散剤1を作製した。
【0045】
製剤例2
エムペントリン25部をカクタスノルマルパラフィンN-11(ノルマルパラフィン、ENEOS株式会社製、沸点180~220℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の少なくとも一方としての薬液を調製した。エムペントリンの含有量(処理量)が40mgとなるようにこの薬液をパルプ製の担持体(縦6cm×横6cm 面積36cm2)に滴下、含浸させて、非加熱蒸散製品としての蒸散剤2を作製した。
【0046】
製剤例3
プロフルトリン25部をアセトン(富士フイルム和光純薬株式会社製、沸点56℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の少なくとも一方としての薬液を調製した。プロフルトリンの含有量(処理量)が40mgとなるようにこの薬液をパルプ製の担持体(縦6cm×横6cm 面積36cm2)に滴下、含浸させて、非加熱蒸散製品としての蒸散剤3を作製した。
【0047】
製剤例4
プロフルトリン25部をIPソルベント1620(イソパラフィン、出光興産株式会社製、沸点166~202℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の少なくとも一方としての薬液を調製した。プロフルトリンの含有量(処理量)が40mgとなるようにこの薬液をパルプ製の担持体(縦6cm×横6cm 面積36cm2)に滴下、含浸させて、非加熱蒸散製品としての蒸散剤4を作製した。
【0048】
製剤例5
プロフルトリン25部をエタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製、沸点79℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成製品の少なくとも一方としての薬液を調製した。プロフルトリンの含有量(処理量)が40mgとなるようにこの薬液をパルプ製の担持体(縦6cm×横6cm 面積36cm2)に滴下、含浸させて、非加熱蒸散製品としての蒸散剤5を作製した。
【0049】
製剤例6
プロフルトリン25部をブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル、富士フイルム和光純薬株式会社製、沸点231℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の少なくとも一方としての薬液を調製した。プロフルトリンの含有量(処理量)が40mgとなるようにこの薬液をパルプ製の担持体(縦6cm×横6cm 面積36cm2)に滴下、含浸させて、非加熱蒸散製品としての蒸散剤6を作製した。
【0050】
製剤例7
プロフルトリン25部をヘキシレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製、沸点196~198℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の少なくとも一方としての薬液を調製した。プロフルトリンの含有量(処理量)が40mgとなるようにこの薬液をパルプ製の担持体(縦6cm×横6cm 面積36cm2)に滴下、含浸させて、非加熱蒸散製品としての蒸散剤7を作製した。
【0051】
比較製剤例1
トランスフルトリン(25℃蒸気圧:3.4664×10-3Pa(2.6×10-5mmHg))25部をカクタスノルマルパラフィンN-11(ノルマルパラフィン、ENEOS株式会社製、沸点180~220℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の少なくとも一方としての薬液を調製した。トランスフルトリンの含有量(処理量)が40mgとなるようにこの薬液をパルプ製の担持体(縦6cm×横6cm 面積36cm2)に滴下、含浸させて、非加熱蒸散製品としての比較蒸散剤1を作製した。
【0052】
比較製剤例2
メトフルトリン(25℃蒸気圧:1.8665×10-3Pa(1.4×10-5mmHg))25部をカクタスノルマルパラフィンN-11(ノルマルパラフィン、ENEOS株式会社製、沸点180~220℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の少なくとも一方としての薬液を調製した。メトフルトリンの含有量(処理量)が40mgとなるようにこの薬液をパルプ製の担持体(縦6cm×横6cm 面積36cm2)に滴下、含浸させて、非加熱蒸散製品としての比較蒸散剤2を作製した。
【0053】
製剤例8
プロフルトリン25部をカクタスノルマルパラフィンN-11(ノルマルパラフィン、ENEOS株式会社製、沸点180~220℃)75部に溶解させて、羽化阻害組成物および不完全羽化体形成組成物の少なくとも一方としてのエアゾール原液(薬液)を調製した。このエアゾール原液3.52mLと、噴射剤として液化石油ガス5.28mLとを、噴射容量が0.4mLである定量噴射バルブ付きの耐圧容器に加圧充填して、エアゾール製品を作製した。
【0054】
〔羽化阻害効果確認試験〕
プラスチックカップに、2枚重ねた脱脂綿を入れ、その上にプルーンを1つ置き、水2Lに対し三温糖20gと乾燥酵母10gとを溶解させた溶液を60g加えて、培地カップを作製した。この培地カップにキイロショウジョウバエの蛹20個体を置床させた。容積13Lの円筒(内径20cm、高さ43m)の天面をガラス板(蓋に相当する)で封じ、そのガラス板の裏側に、その中央に位置するように、供試する蒸散剤1(実施例1)、蒸散剤2(実施例2)、蒸散剤3(実施例3)、蒸散剤4(実施例4)、蒸散剤5(実施例5)、蒸散剤6(実施例6)、蒸散剤7(実施例7)、比較蒸散剤1(比較例1)および比較蒸散剤2(比較例2)をそれぞれ1つずつ貼り付け、24時間静置した後、円筒の底面に培地カップを設置した(製品処理区)。処理後4日目に、各製品処理区の蛹の状態を観察した。供試した蛹の数量(供試蛹数)のうち、完全に羽化が阻害された蛹の数量(蛹数(非羽化))と、不完全に羽化が阻害された蛹の数量(不完全羽化体数)との合計の比率を、羽化阻害率として算出した。供試した蛹の数量(供試蛹数)のうち、不完全に羽化が阻害された蛹の数量(不完全羽化体数)の比率を不完全羽化率として算出した。結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
プロフルトリンを含有する実施例1およびエムペントリンを含有する実施例2においては、表1に示すように、羽化阻害率がそれぞれ100%、90%であった。その中でも一度羽化はしたものの羽根の形態に奇形を生じ不完全羽化体となり、正常な成虫と成り得ない状態を示す不完全羽化率は65%、70%と特異的に高い比率を示した。これに対してトランスフルトリンを含有する比較例1およびメトフルトリンを含有する比較例2は、不完全羽化作用率はいずれも5%止まりであり、最終的にそれぞれの総合の羽化阻害率も20%および15%と低い結果となった。このことから、同じ常温揮散性とされるピレスロイド化合物であっても、25℃における蒸気圧が6.6661×10-3Pa以上であるプロフルトリンおよびエムペントリンは、この蒸気圧を満たさない他のピレスロイド化合物とは異なり、羽化阻害効果が顕著に優れることが明らかとなった。また、プロフルトリンを含有する実施例1において溶剤の種類を変更した実施例3~7においても、比較例1および2と比較して、羽化阻害率および不完全羽化率は顕著に優れることも明らかとなった。
【0057】
〔容積別羽化阻害効果確認試験〕
プラスチックカップに、2枚重ねた脱脂綿を入れ、その上にプルーンを1つ置き、水2Lに対し三温糖20gと乾燥酵母10gとを溶解させた溶液を60g加えて、培地カップを作製した。この培地カップにキイロショウジョウバエの蛹20個体を置床させ、以下の試験に供した。結果を表2に示す。
【0058】
実施例8
容積1Lのプラスチック製カップ(底面が内径10cmの円形、開口部が内径12.5cmの円形、高さ10cm)の天面をガラス板(蓋に相当する)で封じ、そのガラス板の裏側に、その中央に位置するように、供試する蒸散剤1を1つ(処理量:40mg)貼り付け、24時間静置した後、カップの底面に培地カップを設置した(製品処理区)。処理後4日目に、製品処理区の蛹の状態を観察し、上記「羽化阻害効果確認試験」と同様に、羽化阻害率および不完全羽化率を算出した。
【0059】
実施例9
容積13Lの円筒(内径20cm、高さ43cm)の天面をガラス板(蓋に相当する)で封じ、そのガラス板の裏側に、その中央に位置するように、供試する蒸散剤1を1つ(処理量:40mg)貼り付け、24時間静置した後、円筒の底面に培地カップを設置した(製品処理区)。処理後4日目に、製品処理区の蛹の状態を観察し、上記「羽化阻害効果確認試験」と同様に、羽化阻害率および不完全羽化率を算出した。なお、実施例9の試験は、上記実施例1と同様の試験であるため、表2には、実施例9の結果として実施例1の結果(表1)を転記して示す。
【0060】
実施例10
容積20Lのプラスチック製ゴミ箱(底面が縦28cm横15cmの略長方形、開口部が縦30.5cm横18cmの略長方形、高さ46cm)の天面をガラス板(蓋に相当する)で封じ、そのガラス板の裏側に、その中央に位置するように、供試する蒸散剤1を1つ(処理量:40mg)貼り付け、24時間静置した後、ゴミ箱の底面に培地カップを設置した(製品処理区)。処理後4日目に、製品処理区の蛹の状態を観察し、上記「羽化阻害効果確認試験」と同様に、羽化阻害率および不完全羽化率を算出した。
【0061】
実施例11
容積45Lのプラスチック製ゴミ箱(底面が縦33.5cm横22cmの略長方形、開口部が縦39cm横27.5cmの略長方形、高さ52cm)の天面をガラス板(蓋に相当する)で封じ、そのガラス板の裏側に、その中央に位置するように、蒸散剤1を2つ(処理量:80mg)並べて貼り付け、24時間静置した後、ゴミ箱の底面に培地カップを設置した(製品処理区)。処理後4日目に、製品処理区の蛹の状態を観察し、上記「羽化阻害効果確認試験」と同様に、羽化阻害率および不完全羽化率を算出した。
【0062】
実施例12
ガラス板の裏側に蒸散剤1を2つ貼り付ける代わりに、ガラス板の裏側に、その中央に位置するように蒸散剤1を1つ、ゴミ箱の底面に、その中央に位置し、かつ上面が培地カップの底面と接するように蒸散剤1を1つ(合計2つ、処理量:80mg)貼り付けたこと以外は実施例11と同様にして、製品処理区の蛹の状態を観察し、上記「羽化阻害効果確認試験」と同様に、羽化阻害率および不完全羽化率を算出した。
【0063】
実施例13~17
蒸散剤1に代えて蒸散剤2を使用したこと以外は実施例8~12とそれぞれ同様にして、実施例13~17の試験を行い、羽化阻害率および不完全羽化率を算出した。なお、実施例14の試験は上記実施例2と同様の試験であるため、表2には、実施例14の結果として実施例2の結果(表1)を転記して示す。
【0064】
比較例3~5
蒸散剤1に代えて比較蒸散剤1を使用したこと以外は実施例8~10とそれぞれ同様にして、比較例3~5の試験を行い、羽化阻害率および不完全羽化率を算出した。なお、比較例4の試験は上記比較例1と同様の試験であるため、表2には、比較例4の結果として比較例1の結果(表1)を転記して示す。
【0065】
比較例6~8
蒸散剤1に代えて比較蒸散剤2を使用したこと以外は実施例8~10とそれぞれ同様にして、比較例6~8の試験を行い、羽化阻害率および不完全羽化率を算出した。なお、比較例7の試験は上記比較例2と同様の試験であるため、表2には、比較例7の結果として比較例2の結果(表1)を転記して示す。
【0066】
【0067】
実施例8~17より、プロフルトリンを含有する蒸散剤1およびエムペントリンを含有する蒸散剤2の何れにおいても、幅広い容積の処理空間において、ハエ類の羽化を阻害し得ることが明らかとなった。また、処理空間の容積に応じて蒸散剤1および2の数量(処理量)を調整することが、ハエ類の羽化を阻害するうえで効果的であることが明らかとなった。これに対し、トランスフルトリンを含有する比較蒸散剤1、およびメトフルトリンを含有する比較蒸散剤2の何れにおいても、処理空間の容積が1Lと極めて小さい場合には、ハエ類の羽化を阻害し得るが、処理空間の容積が大きい場合にはハエ類の羽化を顕著に阻害し難いことが明らかとなった。また、比較蒸散剤1および2においては、不完全羽化率は極めて低く、トランスフルトリン、メトフルトリンを使用する場合には、不完全羽化を生じさせ難いことが明らかとなった。
本発明のハエ類の蛹に対する羽化阻害組成物および羽化阻害製品、ならびに不完全羽化体形成組成物および不完全羽化体形成製品は、ハエ類の発生を予防する用途に有効であり、特に、ショウジョウバエ、ノミバエ、チョウバエ、キノコバエ等のコバエの防除に好適に利用可能である。