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特開2024-97303ヌマダイコン抽出物を含む皮膚炎を治療するための医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097303
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ヌマダイコン抽出物を含む皮膚炎を治療するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/28 20060101AFI20240710BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240710BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
A61K36/28
A61P17/00
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023220363
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】111150610
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】クオ-クエイ フアン
(72)【発明者】
【氏名】イ-ホン パン
(72)【発明者】
【氏名】イ-フアン ル
(72)【発明者】
【氏名】シュ-ファン ウェン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】副作用がほとんどまたは全く無い、皮膚炎のための天然薬品を提供する。
【解決手段】ヌマダイコンのエタノール抽出物と、薬学的に許容される担体または塩と、を含む、皮膚炎を治療するための医薬組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌマダイコン抽出物と、
薬学的に許容される担体または塩と、
を含む、皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項2】
前記ヌマダイコン抽出物がヌマダイコンのエタノール抽出物である、請求項1に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項3】
前記ヌマダイコンのエタノール抽出物が抽出方法によって得られ、前記抽出方法が、
(a)ヌマダイコンの植物原料を準備するステップと、
(b)前記ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから固液分離工程を行って、抽出溶液を得ると共に前記ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップであって、前記熱抽出工程中、第1のエタノール溶媒を抽出溶媒として用い、前記第1のエタノール溶媒と前記ヌマダイコンの植物原料との重量比が5~15:1である、ステップと、
を含む、請求項2に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項4】
ステップ(b)において、前記熱抽出工程を40~80℃で1~15時間行う、請求項3に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項5】
前記抽出方法が、
(c)前記ヌマダイコンの植物原料の前記ラフィネートを前記ヌマダイコンの植物原料として用い、ステップ(b)を少なくとも1回繰り返し、かつ全ての得られた抽出溶液を合わせて組合せ抽出溶液を得るステップ
をさらに含む、請求項3に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項6】
前記抽出方法が、
(d)前記組合せ抽出溶液に乾燥工程を行って乾燥抽出物を得るステップ
をさらに含む請求項5に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項7】
前記抽出方法が、
(e)前記乾燥抽出物に対し第2のエタノール溶媒中で前記乾燥抽出物が溶解して混合物を形成するまで加熱工程を行うステップであって、前記第2のエタノール溶媒と前記乾燥抽出物との重量比が5~15:1である、ステップ、および
(f)カラムクロマトグラフィーを前記混合物に行い、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有する少なくとも1つの画分を収集し、または収集して合わせ、活性画分とするステップであって、前記カラムクロマトグラフィーにおいてn-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を移動相として用いる、ステップ
をさらに含む請求項6に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項8】
前記加熱工程を30~70℃で行う、請求項7に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項9】
前記ヌマダイコンの植物原料がヌマダイコンの葉に由来する、請求項3に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項10】
前記ヌマダイコン抽出物がヌマダイコンの水抽出物である、請求項1に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項11】
前記ヌマダイコンの水抽出物が抽出方法によって得られ、前記抽出方法が、
(a)ヌマダイコンの植物原料を準備するステップと、
(b)前記ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから固液分離工程を行って、抽出溶液を得ると共に前記ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップであって、前記加圧抽出工程中、水を抽出溶媒として用い、前記水と前記ヌマダイコンの植物原料との重量比が10~50:1である、ステップと、
(c)前記ヌマダイコンの植物原料の前記ラフィネートを前記ヌマダイコンの植物原料として用い、ステップ(b)を少なくとも1回繰り返し、かつ全ての得られた抽出溶液を合わせて組合せ抽出溶液を得るステップと、
(d)第1のカラムクロマトグラフィーを前記組合せ抽出溶液に行うステップと、
を含み、前記第1のカラムクロマトグラフィーが、
(d1)前記組合せ抽出溶液を、樹脂を詰めたカラムに装填するステップ、
(d2)ステップ(d1)の後、前記カラムを水で溶出し、前記カラムから流出する溶出液を捨てるステップ、
(d3)ステップ(d2)の後、前記カラムを第3のエタノール溶媒で溶出し、前記カラムから流出する溶出液を捨てるステップ、および
(d4)ステップ(d3)の後、前記カラムを第4のエタノール溶媒で溶出し、前記カラムから流出する溶出液を収集して初期精製抽出溶液とするステップ
を含む、請求項10に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項12】
ステップ(b)では、前記加圧抽出工程を101.4~140.0kPaおよび100~140℃で5~60分行う、請求項11に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項13】
前記抽出方法が、
(e)第2のカラムクロマトグラフィーを前記初期精製抽出溶液に行い、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有する少なくとも1つの画分を収集し、または収集して合わせ、活性画分とするステップであって、前記第2のカラムクロマトグラフィーにおいてn-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を移動相として用いる、ステップ
をさらに含む、請求項11に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項14】
前記抽出方法が、
(f)前記活性画分を濃縮して濃縮活性画分を得るステップ、
(g)前記濃縮活性画分に加熱溶解工程を第5のエタノール溶媒で行って活性溶液を形成するステップ、
(h)前記活性溶液を静置して、その中に結晶を形成させるステップ、および
(i)前記結晶を収集するステップ、
をさらに含む、請求項13に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【請求項15】
前記ヌマダイコンの植物原料がヌマダイコンの葉に由来する、請求項11に記載の皮膚炎を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野はヌマダイコン(Adenostemma lavenia)抽出物を含む皮膚炎を治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎は、世界で最も一般的な慢性疾患の1つである。世界保健機関(WHO)により示された世界の疾病負荷研究(Global Burden of Disease)によると、世界中で少なくとも230億人がアトピー性皮膚炎を患っており、かつそれは致命的ではない皮膚疾病負荷の一番の原因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在入手可能なアトピー性皮膚炎用の外用薬のほとんどは副作用がある。例えば、ステロイドの使用は皮膚委縮、線状皮膚萎縮および毛細血管拡張のような副作用を引き起こし得る。よって、副作用がほとんどまたは全く無い皮膚炎のための天然薬品が、依然として緊急を要する開発の重点となっている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、皮膚炎を治療するための医薬組成物であって、ヌマダイコン抽出物と薬学的に許容される担体または塩とを含み、該皮膚炎にはアトピー性皮膚炎または接触性皮膚炎が含まれる、皮膚炎を治療するための医薬組成物を提供する。
【0005】
添付の図面を参照にしながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面を参照にして、以下の詳細な説明および例を読むことにより、本発明をより充分に理解することができる。
図1図1は、2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB)誘発皮膚炎の動物モデル実験において、感作処理していない群(Naive)、ビヒクルを投与した群、およびヌマダイコン抽出物0805を投与した群におけるマウスの背部皮膚組織部位のヘマトキシリン・エオシン染色結果を示している。矢印で印をつけたところは増生を示し、で印をつけたところは炎症を示す。
図2図2は、2,4-ジニトロクロロベンゼン誘発皮膚炎の動物モデル実験における感作処理していない群、ビヒクルを投与した群、およびヌマダイコン抽出物0805を投与した群におけるマウスの背部皮膚の表皮の厚さを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されている。統計分析はスチューデントのt検定により行った。ビヒクルを投与した群と比較し、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、***p<0.001である。
図3図3は、2,4-ジニトロクロロベンゼン誘発皮膚炎の動物モデル実験における、感作処理していない群、ビヒクルを投与した群、およびヌマダイコン抽出物0805を投与した群におけるマウスの背部皮膚の総合組織学的スコアを示している。データは平均値±標準誤差(n=5)で示されている。統計分析はマンホイットニー検定により行った。ビヒクルを投与した群と比較し、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。
図4図4は、2,4-ジニトロクロロベンゼン誘発皮膚炎の動物モデル実験における、実験30日目の感作処理していない群、ビヒクルを投与した群、ヌマダイコン抽出物0805-Fを投与した群、およびシクロスポリンAを投与した群におけるマウスの耳の写真を示している。
図5図5は、2,4-ジニトロクロロベンゼン誘発皮膚炎の動物モデル実験における、実験30日目の感作処理していない群、ビヒクルを投与した群、ヌマダイコン抽出物0805-Fを投与した群、およびシクロスポリンAを投与した群におけるマウスの耳の厚さの測定結果を示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されている。それぞれの群の耳の厚さとビヒクルを投与した群の耳の厚さとを比較するため、統計分析は、2元配置分散分析(two-way ANOVA)をダネットの多重比較検定と組み合わせて行った。ビヒクルを投与した群と比較して、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、***p<0.001である。ヌマダイコン抽出物0805-F 300mg/kgを投与した群の耳の厚さと、シクロスポリンAを投与した群の耳の厚さとを比較するため、統計分析をスチューデントのt検定により行った。p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、###p<0.001である。
図6図6は、感作処理していない群、ビヒクルを投与した群、ヌマダイコン抽出物0805-Fを投与した群、およびシクロスポリンAを投与した群におけるマウスの耳の皮膚組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色結果を示している。矢印で印をつけたところは増生を示し、で印をつけたところは炎症を示す。
図7図7は、感作処理していない群、ビヒクルを投与した群、ヌマダイコン抽出物0805-Fを投与した群、およびシクロスポリンAを投与した群におけるマウスの耳の皮膚の総合組織学的スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されている。それぞれの群の総合組織学的スコアとビヒクルを投与した群の総合組織学的スコアとを比較するため、統計分析をマンホイットニー検定により行った。p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。ヌマダイコン抽出物0805-F 300mg/kgを投与した群の総合組織学的スコアと、シクロスポリンAを投与した群の総合組織学的スコアとを比較するため、統計分析をマンホイットニー検定により行った。p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05である。
図8図8は、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験における各群のマウス血清IgE濃度の測定結果を示している。データは平均値±標準誤差(n=5)で示されている。統計分析はスチューデントのt検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、##p<0.01である。
図9図9は、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験において、実験42日目、犠牲死させる前の各群におけるマウスの背中の写真を示している。
図10A図10Aは、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験において、ヌマダイコン抽出物F4ABを投与したマウスの背中の総合的皮膚炎臨床重症度スコアを示している。データは平均値±標準誤差(n=5)で示されている。統計分析はマンホイットニー検定により行った。そのビヒクルを投与した群と比較し、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。
図10B図10Bは、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験において、ウパダシチニブを投与したマウスの背中の総合的皮膚炎臨床重症度スコアを示している。データは平均値±標準誤差(n=5)で示されている。統計分析はマンホイットニー検定により行った。そのビヒクルを投与した群と比較し、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、##p<0.01である。
図10C図10Cは、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験において、実験42日目、犠牲死させる前のマウスの背中の総合的皮膚炎臨床重症度スコア(皮膚損傷のスコア)の結果を示している。データは平均値±標準誤差(n=5)で示されている。統計分析はマンホイットニー検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、***p<0.001である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、###p<0.001である。
図11図11は、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験における、感作処理していない群、ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群、およびビヒクルを投与した群におけるマウスの背部皮膚組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色結果を示している。矢印で印をつけたところは増生を示し、で印をつけたところは炎症を示す。
図12図12は、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験における、感作処理していない群、ウパダシチニブを投与した群、およびビヒクルを投与した群のマウスの背部皮膚組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色結果を示している。で印をつけたところは炎症を示す。
図13図13は、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験における、感作処理していない群、ヌマダイコンのビヒクルを投与した群、ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群、ウパダシチニブのビヒクルを投与した群、ウパダシチニブを投与した群のマウスの背部皮膚の表皮の厚さを示している。データは平均値±標準誤差(n=5)で示されている。統計分析はスチューデントのt検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、**p<0.01である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、##p<0.01である。
図14A図14Aは、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験におけるマウスの背部皮膚の組織病理切片分析の炎症スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されており、統計分析はマンホイットニー検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、**p<0.01である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、##p<0.01である。
図14B図14BはNC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験におけるマウスの背部皮膚の組織病理切片分析の壊死スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されており、統計分析はマンホイットニー検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01、である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、##p<0.01である。
図14C図14Cは、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験におけるマウスの背部皮膚の組織病理切片分析の増生スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されており、統計分析はマンホイットニー検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、##p<0.01である。
図14D図14Dは、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験におけるマウスの背部皮膚の組織病理切片分析の過角化(hyperkeratosis)スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されており、統計分析はマンホイットニー検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、##p<0.01である。
図14E図14Eは、NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデル実験におけるマウスの背部皮膚の組織病理切片分析の皮膚総合組織病理学的重症度スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されており、統計分析はマンホイットニー検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、**p<0.01である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較において、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、##p<0.01である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な記載では、本開示が充分に理解されるよう、説明の目的で、多数の特定の詳細が示される。しかしながら、これら特定の詳細が無くとも1つまたはそれ以上の実施形態を実施することができるということは明らかであろう。また、図面を簡潔にするため、周知の構造および装置は概略的に示される。
【0008】
本開示はヌマダイコン抽出物を提供し得る。本開示により提供されるヌマダイコン抽出物は、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有し、かつ皮膚炎の症状を少なくとも治療および/または軽減することができる。
【0009】
上述した皮膚炎の例には、限定はされないが、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、またはその任意の組み合わせが含まれ得る。一実施形態において、上述した皮膚炎はアトピー性皮膚炎であり得る。別の実施形態において、上述した皮膚炎は接触性皮膚炎であり得る。
【0010】
また、上述した皮膚炎の症状には、紅斑、出血、傷跡、乾燥、水腫、表皮剥脱、びらん、炎症、壊死、増生、過角化、表皮肥厚、かゆみ等、またはその任意の組み合わせが含まれ得るが、これに限定はされない。
【0011】
上述したヌマダイコン抽出物はヌマダイコンの任意の器官または部位に由来するものであってよく、特に限定はない。例えば、上述したヌマダイコン抽出物は、ヌマダイコンの全草、根、茎、葉、花、種子、またはその任意の組み合わせに由来するものであってよい。
【0012】
さらに、上述したヌマダイコン抽出物は、任意の抽出溶媒および/または任意の抽出方法を用いて得ることができるものであって、得られたヌマダイコン抽出物が皮膚炎の症状を治療および/または軽減することができ、かつ人体または動物体に害を及ぼさないものであればよい。例えば、上述したヌマダイコン抽出物は、抽出溶媒を用い1回の抽出を行うことにより得ることができる、または同じもしくは異なる抽出溶媒を順次用いて複数回の抽出を行うことにより得ることもできる。上述した抽出溶媒には、限定はされないが、水、アルコール、エステル、アルカン等、または任意の比率でのその任意の組み合わせが含まれ得る。上述したアルコールの例には、限定はされないが、メタノールまたはエタノールが含まれ得る。上述したエステルの例には酢酸エチルが含まれるが、これに限定はされない。上述したアルカンの例には、限定はされないが、n-ヘキサン、シクロヘキサンまたはヘプタンが含まれ得る。
【0013】
一実施形態において、上述したヌマダイコン抽出物はヌマダイコンのエタノール抽出物であってよい。
【0014】
前述したヌマダイコンのエタノール抽出物の抽出方法に特に限定はなく、得られるヌマダイコンのエタノール抽出物が皮膚炎の症状を治療および/または軽減することができ、かつ人体または動物体に害を及ぼさないものであればよい。
【0015】
一実施形態において、前述したヌマダイコンのエタノール抽出物の抽出方法は次のステップを含んでいてよいが、これに限定はされない。
【0016】
先ず、ヌマダイコンの植物原料を準備する。前述のヌマダイコンの植物原料のソースにはヌマダイコンの全草、根、茎、葉、花、種子、またはその任意の組み合わせが含まれ得るが、これに限定はされない。一実施形態において、前述のヌマダイコンの植物原料のソースはヌマダイコンの葉であってよい。前述のヌマダイコンの植物原料のソースは、前述のヌマダイコンの植物原料として直接用いることができる。あるいは、前述のヌマダイコンの植物原料のソースは、前処理を行ってから、前述のヌマダイコンの植物原料として用いることもできる。上述した前処理には、限定はされないが、乾燥、スライス、粉砕、フィルターバッグへの装填等、または任意の順序でのその任意の組み合わせが含まれ得る。
【0017】
次いで、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行うことができ、次に固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成することができる。熱抽出工程では、第1のエタノール溶媒を抽出溶媒として用いることができる。また、当該抽出溶液を上述したヌマダイコンのエタノール抽出物として用いることができる。
【0018】
上述した熱抽出工程において、上記第1のエタノール溶媒のエタノール濃度に特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上記第1のエタノール溶媒のエタノール濃度は、抽出工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、ヌマダイコンの植物原料のソースの種類(全草、根、茎、葉、花、種子等)、ヌマダイコンの植物原料の状態(含水量、重量等)、用いられる第1のエタノール溶媒とヌマダイコンの植物原料との重量比、用いられる抽出温度および/または実施される抽出時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上記第1のエタノール溶媒のエタノール濃度は、約30~100vol%、例えば約40~95vol%、約45~90vol%、約50~85vol%、約60~80vol%、約70~75vol%、約30vol%、約40vol%、約45vol%、約50vol%、約55vol%、約60vol%、約65vol%、約70vol%、約75vol%、約80vol%、約85vol%、約90vol%、約95vol%とすることができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上記第1のエタノール溶媒のエタノール濃度は約95%であってよい。さらに、一実施形態において、上記第1のエタノール溶媒はエタノール水溶液であってよいが、これに限定はされない。
【0019】
加えて、上述の熱抽出工程において、前述した第1のエタノール溶媒と前述したヌマダイコンの植物原料との重量比にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、前述した第1のエタノール溶媒と前述したヌマダイコンの植物原料と重量比は、抽出工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、ヌマダイコンの植物原料のソースの種類(全草、根、茎、葉、花、種子等)、ヌマダイコンの植物原料の状態(含水量、重量等)、用いられる第1のエタノール溶媒のエタノール濃度、用いられる抽出温度および/または実施される抽出時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、前述した第1のエタノール溶媒と前述したヌマダイコンの植物原料との重量比は約5~15:1、例えば約6~12:1、約7~11:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、前述した第1のエタノール溶媒と前述したヌマダイコンの植物原料との重量比は約8:1であってよい。
【0020】
また、上述した熱抽出工程で用いられる抽出温度にも特に限定はなく、操作時における室温よりも高ければよく、かつ必要に応じて調整可能である。例えば、上述した熱抽出工程で用いられる抽出温度は、抽出工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、ヌマダイコンの植物原料のソースの種類(全草、根、茎、葉、花、種子等)、ヌマダイコンの植物原料の状態(含水量、重量等)、用いられる第1のエタノール溶媒のエタノール濃度、用いられる第1のエタノール溶媒とヌマダイコンの植物原料との重量比、および/または実施される抽出時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した熱抽出工程に用いられる温度は約40~80℃、例えば約45~75℃、約50~70℃、約55~65℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述した熱抽出工程に用いられる温度は約60℃であってよい。
【0021】
同様に、上述した熱抽出工程を実施する時間にも特に限定はなく、必要に応じて調整可能である。例えば、上述した熱抽出工程を実施する時間は、抽出工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、ヌマダイコンの植物原料のソースの種類(全草、根、茎、葉、花、種子等)、ヌマダイコンの植物原料の状態(含水量、重量等)、用いられる第1のエタノール溶媒のエタノール濃度、用いられる第1のエタノール溶媒とヌマダイコンの植物原料との重量比、および/または用いられる抽出温度等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した熱抽出工程を実施する時間は約1~15時間、例えば約2~12時間、約3~10時間、約4~8時間、約5~6時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述した熱抽出工程を実施する時間は約8時間であってよい。
【0022】
さらに、前述した固液分離工程にも特に限定はなく、上述した熱抽出工程の後に、前述した抽出溶液および前述したヌマダイコンの植物原料のラフィネートをそれぞれ得ることができればよい。前述した固液分離工程の例には、限定はされないが、遠心分離、濾過、またはその任意の組み合わせが含まれ得る。一実施形態において、前述した固液分離工程は濾過工程であり得る。
【0023】
別の実施形態において、上述したヌマダイコンのエタノール抽出物の抽出方法は、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行う前述したステップの後に、上述の得られた抽出溶液に乾燥工程を行って乾燥抽出物を形成するステップをさらに含んでいてよいが、同様にこれに限定されることはない。加えて、ここで得られる乾燥抽出物は、上述したヌマダイコンのエタノール抽出物として使用することができる。
【0024】
前述した乾燥工程に特に限定はなく、上述の抽出溶液を乾燥させて乾燥抽出物にすることができ、かつ抽出溶液の皮膚炎の症状を治療および/または軽減する効果に悪い影響がないものであればよい。例えば、前述した乾燥工程にはオーブン乾燥、回転乾燥、減圧下での濃縮および乾燥が含まれ得るが、これに限定はされない。一実施形態において、上記乾燥工程は減圧下での濃縮および乾燥の工程であってよい。
【0025】
別の実施形態において、上述したヌマダイコンのエタノール抽出物の抽出方法は、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成する前述したステップの後に、限定はされないが、上述したヌマダイコンの植物原料のラフィネートをヌマダイコンの植物原料として用い、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成する前述したステップを少なくとも1回繰り返し、かつ全ての得られた抽出溶液を合わせて組合せ抽出溶液を得るステップをさらに含んでいてよい。
【0026】
繰り返しの、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップ中の熱抽出および固液分離工程に関する説明(例えば、用いられる方式、操作パラメータ/条件)は、上述した熱抽出工程および固液分離工程に関する記載を参照することができるため、ここで詳細は繰り返さない。
【0027】
加えて、繰り返されるときの、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共にヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップにおける熱抽出および/または固液分離工程に用いられる方式、操作パラメータ/条件(例えば、第1のエタノール溶媒のエタノール濃度、第1のエタノール溶媒とヌマダイコンの植物原料との重量比、熱抽出工程に用いる温度、熱抽出工程を実施する時間)と、初回に行うときの、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップにおける熱抽出および/または固液分離工程に用いられる方式、操作パラメータ/条件とは、必要に応じて、または操作時における条件に応じて、同じでもまたは異なっていてもよく、特に限定はない。一実施形態において、繰り返されるときの、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップにおける熱抽出および/または固液分離工程に用いられる方式、操作パラメータ/条件と、初回に行うときの、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップにおける熱抽出および/または固液分離工程に用いられる方式、操作パラメータ/条件とは、同じである。
【0028】
さらに、繰り返しの、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するそれぞれのステップにおけるそれぞれの熱抽出および/またはそれぞれの固液分離工程で用いられる方式、操作パラメータ/条件(例えば、第1のエタノール溶媒のエタノール濃度、第1のエタノール溶媒とヌマダイコンの植物原料との重量比、熱抽出工程に用いられる温度、熱抽出工程を実施する時間)も、必要に応じて、または操作時における条件に応じて、同じでもまたは異なっていてもよく、特に限定はない。一実施形態において、繰り返しの、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するそれぞれのステップにおけるそれぞれの熱抽出および/またはそれぞれの固液分離工程で用いられる方式、操作パラメータ/条件(例えば、第1のエタノール溶媒のエタノール濃度、第1のエタノール溶媒とヌマダイコンの植物原料との重量比、熱抽出工程に用いられる温度、熱抽出工程を実施する時間)は、同じである。
【0029】
さらなる別の実施形態では、上述したヌマダイコンのエタノール抽出物の抽出方法は、全ての得られた抽出溶液を合わせて組合せ抽出溶液を得る前述したステップの後に、組合せ抽出溶液に乾燥工程を行って乾燥抽出物を得るステップをさらに含んでいてよいが、同様にこれに限定はされない。ここに述べた乾燥工程に特に限定はなく、上述した組合せ抽出溶液を乾燥させて乾燥抽出物にすることができ、かつ組合せ抽出溶液の皮膚炎の症状を治療および/または軽減する効果に悪い影響がないものであればよい。例えば、ここに述べた乾燥工程にはオーブン乾燥、回転乾燥、減圧下での濃縮および乾燥が含まれ得るが、これに限定はされない。一実施形態において、ここに述べた乾燥工程は、減圧下での濃縮および乾燥の工程であってよい。また、ここで得られる乾燥抽出物は、上述したヌマダイコンのエタノール抽出物として用いることができる。
【0030】
加えて、特定の一実施形態において、上述したヌマダイコンのエタノール抽出物の抽出方法は、組合せ抽出溶液に乾燥工程を行って乾燥抽出物を得る前述したステップの後に、以下のステップをさらに含んでいてよいが、同様にこれに限定はされない。
【0031】
先ず、第2のエタノール溶媒中で前述した乾燥抽出物に、前述した乾燥抽出物が溶解して混合物が形成されるまで、加熱工程を行う。
【0032】
上述した加熱工程において、上記第2のエタノール溶媒のエタノール濃度にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上記第2のエタノール溶媒のエタノール濃度は、加熱工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、乾燥抽出物の状態(含水量、重量等)、用いられる第2のエタノール溶媒と乾燥抽出物との重量比、用いられる加熱温度および/または実施される加熱時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上記第2のエタノール溶媒のエタノール濃度は、約30~100vol%、例えば約40~95vol%、約45~90vol%、約50~85vol%、約60~80vol%、約70~75vol%、約30vol%、約40vol%、約45vol%、約50vol%、約55vol%、約60vol%、約65vol%、約70vol%、約75vol%、約80vol%、約85vol%、約90vol%、約95vol%であってよいが、これに限定はされない。一実施形態において、上記第2のエタノール溶媒のエタノール濃度は約95%であってよい。また、一実施形態において、上記第2のエタノール溶媒はエタノール水溶液であってよいが、同様にこれに限定はされない。
【0033】
さらに、上述した加熱工程において、上記第2のエタノール溶媒と上記乾燥抽出物との重量比にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上記第1のエタノール溶媒と上記乾燥抽出物との重量比は、加熱工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、乾燥抽出物の状態(含水量、重量等)、用いられる第2のエタノール溶媒のエタノール濃度、用いられる加熱温度および/または実施される加熱時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上記第2のエタノール溶媒と上記乾燥抽出物との重量比は約5~15:1、例えば約6~12:1、約7~11:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上記第2のエタノール溶媒と上記乾燥抽出物との重量比は約8:1であってよい。
【0034】
さらに、上述した加熱工程で用いられる温度にも特に限定はなく、操作時における室温よりも高ければよく、かつ必要に応じて調整可能である。例えば、上述した加熱工程で用いられる温度は、加熱工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、乾燥抽出物の状態(含水量、重量等)、用いられる第2のエタノール溶媒のエタノール濃度、用いられる第2のエタノール溶媒と乾燥抽出物との重量比、および/または実施される加熱時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した加熱工程に用いられる温度は約30~70℃、例えば約35~65℃、約40~60℃、約45~55℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述した加熱工程に用いられる温度は約50℃であり得る。
【0035】
次いで、上述した混合物を形成した後、カラムクロマトグラフィーを上述した混合物に行い、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有する少なくとも1つの画分を収集し、または収集して合わせて、活性画分とする。また、ここで得られる活性画分は上述したヌマダイコンのエタノール抽出物として用いることができる。
【0036】
上述したカラムクロマトグラフィーにおいて、移動相として用いることのできる溶媒に特に限定はなく、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有し、かつ人体または動物体に害を及ぼさない少なくとも1つの画分を得ることのできるものであればよい。移動相として用いることのできる溶媒には、限定はされないが、水、アルコール、エステル、アルカン等、または任意の比率でのその任意の組み合わせが含まれ得る。上述したアルコールの例には、限定はされないが、メタノールまたはエタノールが含まれ得る。上述したエステルの例には酢酸エチルが含まれ得るが、これに限定はされない。上述したアルカンの例には、限定はされないが、n-ヘキサン、シクロヘキサンまたはヘプタンが含まれ得る。一実施形態では、上述したカラムクロマトグラフィーにおいて、メタノール溶媒が移動相として用いられてよい。別の実施形態では、上述したカラムクロマトグラフィーにおいて、n-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒が移動相として用いられてよい。上述したn-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒のn-ヘキサンと酢酸エチルとの体積比にも特に限定はなく、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有し、かつ人体または動物体に害を及ぼさない少なくとも1つの画分を得ることのできるものであればよい。例えば、上述したn-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒のn-ヘキサンと酢酸エチルとの体積比は約0.1~1:1、例えば0.2~0.8:1、0.3~0.7:1、0.4~0.5:1、0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1であってよいが、これに限定はされない。
【0037】
上述したカラムクロマトグラフィーの種類に特に限定はない。一実施形態において、上述したカラムクロマトグラフィーはシリカゲルカラムクロマトグラフィーであり得る。別の実施形態において、上述したカラムクロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)であってよいが、これに限定はされない。
【0038】
さらに別の特定の実施形態において、上述したヌマダイコンのエタノール抽出物の抽出方法は、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有する少なくとも1つの画分を収集し、または収集して合わせて、活性画分とするステップの後に、活性画分に乾燥工程を行って乾燥活性画分を得るステップをさらに含んでいてよいが、同様にこれに限定はされない。さらに、ここで得られる乾燥活性画分は、上述したヌマダイコンのエタノール抽出物として用いることができる。
【0039】
加えて、本開示の別の実施形態では、上述したヌマダイコン抽出物はヌマダイコンの水抽出物であってよい。
【0040】
上述したヌマダイコンの水抽出物の抽出方法に特に限定はなく、得られるヌマダイコンの水抽出物が、皮膚炎の症状を治療および/または軽減することができ、かつ人体または動物体に害を及ぼさないものであればよい。
【0041】
一実施形態において、前述したヌマダイコンの水抽出物の抽出方法は以下のステップを含み得るが、これに限定はされない。
【0042】
先ず、ヌマダイコンの植物原料を準備する。前述のヌマダイコンの植物原料のソースにはヌマダイコンの全草、根、茎、葉、花、種子、またはその任意の組み合わせが含まれ得るが、これに限定はされない。一実施形態において、前述のヌマダイコンの植物原料のソースはヌマダイコンの葉であってよい。前述のヌマダイコンの植物原料のソースは、前述したヌマダイコンの植物原料として直接用いることができる。あるいは、前述したヌマダイコンの植物原料のソースは、前処理を行ってから、前述したヌマダイコンの植物原料として用いることもできる。上述した前処理には、限定はされないが、乾燥、スライス、粉砕、フィルターバッグへの装填等、または任意の順序でのその任意の組み合わせが含まれ得る。
【0043】
次いで、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行うことができ、次に固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成することができる。加圧抽出工程では、水を抽出溶媒として用いることができる。また、ここで得られる抽出溶液を、上述したヌマダイコンの水抽出物として用いることができる。
【0044】
上述した加圧抽出工程において、上記水と上記ヌマダイコンの植物原料との重量比にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上記水と上記ヌマダイコンの植物原料との重量比は、抽出工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、ヌマダイコンの植物原料のソースの種類(全草、根、茎、葉、花、種子等)、ヌマダイコンの植物原料の状態(含水量、重量等)、用いられる抽出圧力、用いられる抽出温度および/または実施される抽出時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上記水と上記ヌマダイコンの植物原料との重量比は約10~50:1、例えば約15~45:1、約20~40:1、約25~35:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約35:1、約40:1、約45:1、約50:1であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上記水と上記ヌマダイコンの植物原料との重量比は約30:1であってよい。
【0045】
上述した加圧抽出工程に用いられる圧力に特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上述した加圧抽出工程に用いられる圧力は、加圧抽出工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、ヌマダイコンの植物原料のソースの種類(全草、根、茎、葉、花、種子等)、ヌマダイコンの植物原料の状態(含水量、重量等)、用いられる水とヌマダイコンの植物原料との重量比、用いられる抽出温度および/または実施される抽出時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した加圧抽出工程に用いられる圧力は約101.4~140.0kPa、例えば約101.5~135.0kPa、約101.6~130.0kPa、約101.8~125.0kPa、約102.0~120.0kPa、約102.2~115.0kPa、約102.4~110.0kPa、約102.6~105.0kPa、約102.8~104.0kPa、約101.5kPa、約101.6kPa、約101.7kPa、約101.8kPa、約101.9kPa、約102.0kPa、約102.1kPa、約102.2kPa、約102.25kPa、約102.3kPa、約102.4kPa、約102.5kPa、約102.6kPa、約102.7kPa、約102.8kPa、約102.9kPa、約102.92kPa、約102.94kPa、約102.96kPa、約102.97kPa、約102.98kPa、約103.0kPa、約105.0kPa、約107.0kPa、約108.0kPa、約110.0kPa、約112.0kPa、約115.0kPa、約120.0kPa、約125.0kPa、約130.0kPa、約135.0kPa、約140.0kPaであってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述した加圧抽出工程に用いられる圧力は約102.97kPaであってよい。
【0046】
上述した加圧抽出工程に用いられる抽出温度に特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上述した加圧抽出工程に用いられる抽出温度は、加圧抽出工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、ヌマダイコンの植物原料のソースの種類(全草、根、茎、葉、花、種子等)、ヌマダイコンの植物原料の状態(含水量、重量等)、用いられる水とヌマダイコンの植物原料との重量比、用いられる抽出圧力および/または実施される抽出時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した加圧抽出工程に用いられる抽出温度は、約100~140℃、例えば約102~135℃、約105~130℃、約108~125℃、約110~120℃、約100℃、約101℃、約103℃、約105℃、約110℃、約112℃、約115℃、約120℃等であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述した加圧抽出工程に用いられる抽出温度は約120℃であってよい。
【0047】
上述した加圧抽出工程を実施する時間にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上述した加圧抽出工程を実施する時間は、加圧抽出工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、ヌマダイコンの植物原料のソースの種類(全草、根、茎、葉、花、種子等)、ヌマダイコンの植物原料の状態(含水量、重量等)、用いられる水とヌマダイコンの植物原料との重量比、用いられる抽出圧力および/または用いられる抽出温度等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した加圧抽出工程を実施する時間は、約5~60分、約10~55分、約15~50分、約20~45分、約25~40分、約30~35分、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分等であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述した加圧抽出工程を実施する時間は約20分であってよい。
【0048】
別の実施形態において、上述したヌマダイコンの水抽出物の抽出方法は、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから、固液分離工程を行う前述したステップの後、上述の得られた抽出溶液に乾燥工程を行って乾燥抽出物を形成するステップをさらに含んでいてよい。加えて、ここで得られる乾燥抽出物は、上述したヌマダイコンの水抽出物として使用することができる。
【0049】
同様に、ここに述べた乾燥工程に特に限定はなく、上述した抽出溶液を乾燥させて乾燥抽出物にすることができ、かつ抽出溶液の皮膚炎の症状を治療および/または軽減する効果に悪い影響がないものであればよい。例えば、ここに述べた乾燥工程にはオーブン乾燥、回転乾燥、減圧下での濃縮および乾燥が含まれ得るが、これに限定はされない。
【0050】
別の実施形態において、上述したヌマダイコンの水抽出物の抽出方法は、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成する前述したステップの後に、限定はされないが、上述したヌマダイコンの植物原料のラフィネートをヌマダイコンの植物原料として用い、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成する前述したステップを少なくとも1回繰り返し、かつ全ての得られた抽出溶液を合わせて組合せ抽出溶液を得るステップをさらに含んでいてよい。また、ここで得られる組合せ抽出溶液は、上述したヌマダイコンの水抽出物として用いることができる。特定の一実施形態において、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成する前述したステップを3回繰り返し、全ての抽出溶液を合わせて組合せ抽出溶液を得る。さらに、ここで得られる組合せ抽出溶液も上述したヌマダイコンの水抽出物として用いることができる。
【0051】
繰り返されるときの、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップにおける加圧抽出工程および固液分離工程に関する記載(例えば用いられる方式、操作パラメータ/条件)については、上述した加圧抽出工程および固液分離工程に関する記載を参照とすることができるため、ここで詳細は繰り返さない。
【0052】
加えて、繰り返されるときの、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップにおける熱抽出および/または固液分離工程で用いられる方式、操作パラメータ/条件(例えば、水とヌマダイコンの植物原料との重量比、加圧抽出工程で用いられる圧力、加圧抽出工程で用いられる温度、加圧抽出工程を実施する時間)と、1回目に行われるときの、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップにおける加圧抽出工程および/または固液分離工程で用いられる方式、操作パラメータ/条件とは、必要に応じて、または操作時の条件に応じて、同じであっても、または異なっていてもよく、特に限定はない。一実施形態において、繰り返されるときの、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップにおける加圧抽出工程および/または固液分離工程で用いられる方式、操作パラメータ/条件と、1回目に行われるときの、ヌマダイコンの植物原料に熱抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するステップにおける加圧抽出工程および固液分離工程で用いられる方式、操作パラメータ/条件と、は同じである。
【0053】
さらに、繰り返しの、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するそれぞれのステップにおけるそれぞれの加圧抽出工程および/またはそれぞれの固液分離工程で用いられる方式、操作パラメータ/条件(例えば、水とヌマダイコンの植物原料との重量比、加圧抽出工程で用いられる圧力、加圧抽出工程で用いられる温度、加圧抽出工程を実施する時間)も、必要に応じて、または操作時における条件に応じて、同じでもまたは異なっていてもよく、特に限定はない。一実施形態において、繰り返しの、ヌマダイコンの植物原料に加圧抽出工程を行ってから、固液分離工程を行って抽出溶液を得ると共に、ヌマダイコンの植物原料のラフィネートを生成するそれぞれのステップにおけるそれぞれの加圧抽出工程および/またはそれぞれの固液分離工程で用いられる方式、操作パラメータ/条件は同じである。
【0054】
さらに別の実施形態では、上述したヌマダイコンの水抽出物の抽出方法は、全ての得られた抽出溶液を合わせて組合せ抽出溶液を得る前述したステップの後に、限定はされないが、組合せ抽出溶液に乾燥工程を行って乾燥抽出物を得るステップをさらに含んでいてよい。また、ここで得られる乾燥抽出物も、上述したヌマダイコンの水抽出物として用いることができる。ここに述べる乾燥工程に特に限定はなく、上述した組合せ抽出溶液を乾燥させて乾燥抽出物にすることができ、かつ組合せ抽出溶液の皮膚炎の症状を治療および/または軽減する効果に悪い影響がないものであればよい。例えば、ここに述べた乾燥工程にはオーブン乾燥、回転乾燥、減圧下での濃縮および乾燥が含まれ得るが、これに限定はされない。一実施形態において、ここに述べた乾燥工程は、減圧下での濃縮および乾燥の工程であってよい。
【0055】
さらに、特定の一実施形態において、上述したヌマダイコンの水抽出物の抽出方法は、全ての得られた抽出溶液を合わせて組合せ抽出溶液を得る前述したステップの後に、第1のカラムクロマトグラフィーを上述した組合せ抽出溶液に行うステップをさらに含んでいてよいが、これに限定はされない。前述した第1のカラムクロマトグラフィーは以下のステップを含んでいてよいが、これに限定はされない。
【0056】
先ず、上述した組合せ抽出溶液を、樹脂を詰めたカラムに装填する。上述したカラムに詰める樹脂の種類に特に限定はなく、組合せ抽出溶液中の有効成分を吸着できるものであればよい。例えば、上述したカラムに詰める樹脂の種類にはスチレン・ジビニルベンゼン系吸着樹脂(例えばHP20、DIAION)等が含まれ得るが、これに限定はされない。
【0057】
次いで、上述した組合せ抽出溶液を、樹脂を詰めたカラムに装填した後に、そのカラムを水で溶出し、カラムから流出する溶出液を捨てる。
【0058】
上述したカラムを溶出するのに用いられる水と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上述したカラムを溶出するのに用いられる水と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比は、カラム溶出時の環境(環境の温度、湿度、圧力等)、カラムに装填される組合せ抽出溶液の量、カラム溶出時にカラムから流出する溶出液の状況に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述したカラムを溶出するのに用いられる水と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比は約0.5~10:1、例えば約1~8:1、約1.5~7:1、約2~6:1、約2.5~5:1、約3~4:1、約0.5:1、約1:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述したカラムを溶出するのに用いられる水と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比は1:1であってよい。
【0059】
次いで、カラムを水で溶出し、カラムから流出する溶出液を捨てた後、カラムを第3のエタノール溶媒で溶出し、カラムから流出する溶出液を捨てる。
【0060】
上述したカラムを溶出するのに用いられる第3のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上述したカラムを溶出するのに用いられる第3のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比は、カラム溶出時の環境(環境の温度、湿度、圧力等)、カラムに装填される組合せ抽出溶液の量、第3のエタノール溶媒のエタノール濃度、水でカラムを溶出することによりカラムから流出する溶出液の前述した状況および/または第3のエタノール溶媒でカラムを溶出することによりカラムから溶出液が流出するときの状況に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述したカラムを溶出するのに用いられる第3のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比は、約0.5~10:1、例えば約1~8:1、約1.5~7:1、約2~6:1、約2.5~5:1、約3~4:1、約0.5:1、約1:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述したカラムを溶出するのに用いられる第3のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比は1:1であり得る。
【0061】
カラムを溶出するのに用いられる第3のエタノール溶媒のエタノール濃度にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、第3のエタノール溶媒のエタノール濃度は、カラム溶出時の環境(環境の温度、湿度、圧力等)、カラムに装填される組合せ抽出溶液の量、上述したカラムを溶出するのに用いられる第3のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比、水でカラムを溶出することによりカラムから流出する溶出液の前述した状況および/または第3のエタノール溶媒でカラムを溶出することによりカラムから溶出液が流出するときの状況に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した第3のエタノール溶媒のエタノール濃度は約30~100vol%、例えば約40~95vol%、約45~90vol%、約50~85vol%、約60~80vol%、約70~75vol%、約30vol%、約40vol%、約45vol%、約50vol%、約55vol%、約60vol%、約65vol%、約70vol%、約75vol%、約80vol%、約85vol%、約90vol%、約95vol%であってよいが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した第3のエタノール溶媒のエタノール濃度は約50%であり得る。また、一実施形態において、上述した第3のエタノール溶媒はエタノール水溶液であってよいが、同様にこれに限定はされない。
【0062】
次いで、上述した第3のエタノール溶媒でカラムを溶出し、カラムから流出する溶出液を捨てた後、カラムを第4のエタノール溶媒で溶出し、カラムから流出する溶出液を初期精製(preliminary purified)抽出溶液として収集する。ここで得られる初期精製抽出溶液は、上述したヌマダイコンの水抽出物として用いることができる。
【0063】
同様に、上述したカラムを溶出するのに用いられる第4のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、上述したカラムを溶出するのに用いられる第4のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比は、カラム溶出時の環境(環境の温度、湿度、圧力等)、カラムに装填される組合せ抽出溶液の量、第4のエタノール溶媒のエタノール濃度、第3のエタノール溶媒でカラムを溶出することによりカラムから流出する溶出液の前述した状況および/または第4のエタノール溶媒でカラムを溶出することによりカラムから溶出液が流出するときの状況に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述したカラムを溶出するのに用いられる第4のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比は、約0.5~10:1、例えば約1~8:1、約1.5~7:1、約2~6:1、約2.5~5:1、約3~4:1、約0.5:1、約1:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述したカラムを溶出するのに用いられる第4のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比は1:1であってよい。
【0064】
カラムを溶出するのに用いられる第4のエタノール溶媒のエタノール濃度にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、第4のエタノール溶媒のエタノール濃度は、カラム溶出時の環境(環境の温度、湿度、圧力等)、カラムに装填される組合せ抽出溶液の量、上述したカラムを溶出するのに用いられる第4のエタノール溶媒と上述したカラムに装填される組合せ抽出溶液との体積比、第3のエタノール溶媒でカラムを溶出することによりカラムから流出する溶出液の前述した状況および/または第4のエタノール溶媒でカラムを溶出することによりカラムから溶出液が流出するときの状況に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した第4のエタノール溶媒のエタノール濃度は約30~100vol%、例えば約40~95vol%、約45~90vol%、約50~85vol%、約60~80vol%、約70~75vol%、約30vol%、約40vol%、約45vol%、約50vol%、約55vol%、約60vol%、約65vol%、約70vol%、約75vol%、約80vol%、約85vol%、約90vol%、約95vol%であってよいが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した第4のエタノール溶媒のエタノール濃度は約75%であってよい。また、一実施形態において、上述した第4のエタノール溶媒はエタノール水溶液であってよいが、これに限定はされない。
【0065】
さらに別の実施形態では、上述したヌマダイコンの水抽出物の抽出方法は、カラムを第4のエタノール溶媒で溶出し、カラムから流出する溶出液を初期精製抽出溶液として収集した後、上述した初期精製抽出溶液に第2のカラムクロマトグラフィーを行い、かつ細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有する少なくとも1つの画分を収集し、または収集して合わせ、活性画分とするステップをさらに含んでいてよいが、これに限定はされない。さらに、ここで得られる活性画分は、上述したヌマダイコンの水抽出物として用いることができる。
【0066】
上述した第2のカラムクロマトグラフィーにおいて、移動相として用いることのできる溶媒に特に限定はなく、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有し、かつ人体または動物体に悪い影響がない少なくとも1つの画分を得ることのできるものであればよい。移動相として用いることのできる溶媒には、限定はされないが、水、アルコール、エステル、アルカン等、または任意の比率でのその任意の組み合わせが含まれ得る。上述したアルコールの例には、限定はされないが、メタノールまたはエタノールが含まれ得る。上述したエステルの例には酢酸エチルが含まれ得るが、これに限定はされない。上述したアルカンの例には、限定はされないが、n-ヘキサン、シクロヘキサンまたはヘプタンが含まれ得る。一実施形態では、上述した第2のカラムクロマトグラフィーにおいて、メタノール溶媒が移動相として用いられてよい。別の実施形態では、上述した第2のカラムクロマトグラフィーにおいて、n-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒が移動相として用いられてよい。上述したn-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒のn-ヘキサンと酢酸エチルとの体積比にも特に限定はなく、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有し、かつ人体または動物体に悪い影響がない少なくとも1つの画分を得ることのできるものであればよい。例えば、上述したn-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒のn-ヘキサンと酢酸エチルとの体積比は約0.1~1:1、例えば0.2~0.8:1、0.3~0.7:1、0.4~0.5:1、0.1:1、0.2:1、0.25:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述したn-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒のn-ヘキサンと酢酸エチルとの体積比は約1:1であってよい。
【0067】
上述した第2のカラムクロマトグラフィーの種類に特に限定はない。一実施形態において、上述した第2のカラムクロマトグラフィーはシリカゲルカラムクロマトグラフィーであってよい。別の実施形態において、上述した第2のカラムクロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)であってよい。
【0068】
さらに別の特定の実施形態において、上述したヌマダイコンの水抽出物の抽出方法は、第2のカラムクロマトグラフィーを初期精製抽出溶液に行い、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有する少なくとも1つの画分を収集し、または収集して合わせ、活性画分とするステップの後に、上述した活性画分を濃縮して濃縮活性画分を得るステップをさらに含んでいてよいが、同様にこれに限定はされない。また、ここで得られる濃縮活性画分も、上述したヌマダイコンの水抽出物として用いることができる。
【0069】
加えて、この特定の実施形態において、上述したヌマダイコンの水抽出物の抽出方法は、上述した活性画分を濃縮して濃縮活性画分を得るステップの後に、以下のステップをさらに含んでいてよいが、これに限定はされない。
【0070】
先ず、上述した濃縮活性画分に第5のエタノール溶媒で加熱溶解工程を行って、活性溶液を形成する。
【0071】
第5のエタノール溶媒と上記濃縮活性画分との重量比にも特に限定はなく、必要に応じて調整することができる。例えば、第5のエタノール溶媒と上記濃縮活性画分との重量比は、加熱溶解工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、および/または上述した濃縮活性画分の状態(含水量、重量等)等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、第5のエタノール溶媒と上記濃縮活性画分との重量比は約1~10:1、例えば約1.5~8:1、約2~5:1、約2.5~4.5:1、約1:1、約1.5:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約1:10であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、第5のエタノール溶媒と上記活性溶液との重量比は約4:1であってよい。
【0072】
上述した加熱溶解工程に用いられる温度に特に限定はなく、室温より高く、かつ上述した濃縮活性画分を溶解させることができるものであればよく、必要に応じて調整することができる。例えば、上述した加熱溶解工程に用いられる温度は、加熱溶解工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、濃縮活性画分の状態(含水量、重量等)、第5のエタノール溶媒と上記濃縮活性画分との重量比および/または実施される加熱時間等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、加熱溶解工程に用いられる温度は、約40~100℃、例えば約45~95℃、約50~90℃、約55~85℃、約60~80℃、約65~75℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、加熱溶解工程に用いられる温度は約60℃であってよい。
【0073】
上述した加熱溶解工程を実施する時間に特に限定はなく、上述した濃縮活性画分を溶解させることができるものであればよく、必要に応じて調整することができる。例えば、上述した加熱溶解工程を実施する時間は、加熱溶解工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、濃縮活性画分の状態(含水量、重量等)、第5のエタノール溶媒と上記濃縮活性画分との重量比および/または用いられる加熱温度等に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した加熱溶解工程を実施する時間は、約5~60分、例えば約10~55分、約15~50分、約20~45分、約25~40分、約30~35分、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述した加熱溶解工程を実施する時間は60分であってよい。
【0074】
次いで、上述した濃縮活性画分に第5のエタノール溶媒で加熱溶解工程を行って、活性溶液を形成した後に、その活性溶液を静置してその中に結晶を形成させる。
【0075】
上述した活性溶液を静置する時間にも特に限定はなく、上述した活性溶液に結晶を形成させることができるものであればよく、必要に応じて調整することができる。例えば、上述した活性溶液を静置する時間は、加熱溶解工程実施時の外部環境(外部環境の温度、湿度、圧力等)、活性溶液の状態(重量等)に応じて調整することができるが、これに限定はされない。一実施形態において、上述した活性溶液を静置する時間は、約6~48時間、約9~45時間、約12~42時間、約15~39時間、約18~36時間、約21~33時間、約24~30時間、約6時間、約9時間、約12時間、約15時間、約18時間、約21時間、約24時間、約27時間、約30時間、約33時間、約36時間、約39時間、約42時間、約45時間、約48時間であってよいが、これに限定はされない。特定の一実施形態において、上述した活性溶液を静置する時間は約24時間であってよい。
【0076】
上述した結晶を形成した後、上述した結晶を収集する。ここで収集した結晶は、上述したヌマダイコンの水抽出物として用いることができる。
【0077】
加えて、収集した結晶に乾燥工程を行うことができる。
【0078】
上述したいずれかの抽出方法により得られる本開示のヌマダイコン抽出物は、細胞のIL-4分泌を抑制する効果を有し、かつ皮膚炎の症状を少なくとも治療および/または軽減することができる。
【0079】
さらに、本開示は、皮膚炎を治療するための薬剤の製造におけるヌマダイコン抽出物の用途も提供する。
【0080】
本開示の皮膚炎を治療するための薬剤の製造におけるヌマダイコン抽出物の用途において、ヌマダイコン抽出物に特に限定はなく、皮膚炎の症状を治療および/または軽減する効果を有するものであればよい。例えば、上述した本開示の任意のヌマダイコン抽出物を、本開示の皮膚炎を治療するための薬剤の製造におけるヌマダイコン抽出物の用途におけるヌマダイコン抽出物として用いることができる。
【0081】
加えて、本開示の皮膚炎を治療するための薬剤の製造におけるヌマダイコン抽出物の用途において、皮膚炎を治療するための薬剤は、薬学的に許容される担体または塩をさらに含んでいてよいが、これに限定はされない。
【0082】
本開示は、皮膚炎を治療するための医薬組成物も提供する。
【0083】
本開示の上記皮膚炎を治療するための医薬組成物は、限定はされないが、ヌマダイコン抽出物を含んでいてよい。本開示の皮膚炎を治療するための医薬組成物中のヌマダイコン抽出物にも特に限定はなく、皮膚炎の症状を治療および/または軽減する効果を有するものであればよい。例えば、本開示の上記皮膚炎を治療するための医薬組成物中のヌマダイコン抽出物は、上述した本開示のヌマダイコン抽出物のいずれかであってよい。
【0084】
加えて、本開示の皮膚炎を治療するための医薬組成物は、薬学的に許容される担体または塩をさらに含んでいてよいが、これに限定はされない。
【0085】
上述した薬学的に許容される担体には、限定はされないが、溶剤、分散媒体、コーティング、抗菌および抗真菌剤、または等張および吸収遅延剤等、医薬投与に適したものが含まれ得る。医薬組成物は、従来の方法を利用して、異なる投与経路に合う剤型(dosage forms)に製剤することができる。
【0086】
さらに、上述した薬学的に許容される塩には、限定はされないが、無機カチオンを含む塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩またはアミン塩のようなアルカリ金属塩、例えばマグネシウム塩またはカルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、例えば亜鉛塩、アルミニウム塩、またはジルコニウム塩のような二価または四価カチオンを含む塩が含まれ得る。加えて、薬学的に許容される塩は、ジシクロヘキシルアミン塩、メチル-D-グルカミンのような有機塩、およびアルギニン、リジン、ヒスチジンまたはグルタミンのようなアミノ酸塩であってもよい。
【0087】
加えて、本開示のヌマダイコン抽出物、本開示の皮膚炎を治療するための医薬組成物、および/または本開示の皮膚炎を治療するための薬剤の製造におけるヌマダイコン抽出物の用途において作製される薬剤は、それを必要とする対象被験体に投与することができるが、これに限定はされない。
【0088】
本開示のヌマダイコン抽出物、本開示の皮膚炎を治療するための医薬組成物、および/または本開示の皮膚炎を治療するための薬剤の製造におけるヌマダイコン抽出物の用途において作製される薬剤は、非経口、経口、吸入噴霧(inhalation spray)により、または埋込型リザーバー(implanted reservoir)を介して投与することができるが、これに限定はされない。非経口の方法には、患部への塗抹、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、関節滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内および病巣内注射、ならびに注入技術等が含まれ得る。
【0089】
塗抹の局部使用の形式には、軟膏、乳剤、液剤、ゲル、ムース等が含まれ得るが、これに限定はされない。
【0090】
また、本開示のヌマダイコン抽出物、本開示の皮膚炎を治療するための医薬組成物、および/または本開示の皮膚炎を治療するための薬剤の製造におけるヌマダイコン抽出物の用途において作製される薬剤を投与することが必要な被験体には、限定はされないが、脊椎動物が含まれ得る。さらに、上述した脊椎動物には、魚類、両生類、爬虫類、鳥類または哺乳類が含まれ得るが、これに限定はされない。哺乳類の例には、限定はされないが、ヒト、オラウータン、サル、ウマ、ロバ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラットおよびマウスが含まれ得る。一実施形態において、上述した被験体はヒトであり得る。
【0091】
加えて、本開示は、皮膚炎を治療するための方法も提供し得る。本開示の皮膚炎を治療するための方法は、限定はされないが、それを必要とする被験者に、有効量のヌマダイコン抽出物を投与する、または有効量の皮膚炎を治療するための医薬組成物を投与するステップを含んでいてよい。
【0092】
上記皮膚炎の例には、限定はされないが、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、またはその任意の組み合わせが含まれ得る。一実施形態において、上記皮膚炎はアトピー性皮膚炎であってよい。別の実施形態において、上記皮膚炎は接触性皮膚炎であってよい。
【0093】
さらに、本開示の皮膚炎を治療するための方法に用いられるヌマダイコン抽出物 は、上述した本開示の任意のヌマダイコン抽出物である。同様に、本開示の皮膚炎を治療するための方法中で用いられる皮膚炎を治療するための医薬組成物は、上述した本開示の任意の皮膚炎を治療するための医薬組成物であってよい。
【0094】
また、本開示の皮膚炎を治療するための方法において、本開示のヌマダイコン抽出物または本開示の皮膚炎を治療するための医薬組成物を必要とする被験体には、限定はされないが、脊椎動物が含まれ得る。さらに、上述した脊椎動物には、魚類、両生類、爬虫類、鳥類または哺乳類が含まれ得るが、これに限定はされない。哺乳類の例には、限定はされないが、ヒト、オラウータン、サル、ウマ、ロバ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラットおよびマウスが含まれ得る。一実施形態において、被験体はヒトであり得る。
【0095】
実施例
【0096】
A.方法
【0097】
1.EL4細胞によるIL-4分泌抑制活性の評価
【0098】
EL4細胞を96-ウェル培養プレート(1×10細胞/ウェル)中に播種した。次いで、適度な濃度の被試験サンプルをその細胞に加え(10μL/ウェル)、よく混合した。その後、その96-ウェル培養プレートを、37℃、5%COの細胞培養器中で2時間培養した。次いで、刺激物A23187およびホルボール12-ミリステート-13-アセテート(phorbol 12-myristate -13-acetate, PMA)をその96-ウェル培養プレート中の細胞に加えた。よく混合した後、その96-ウェル培養プレートを細胞培養器中で18時間培養した。
【0099】
その後、上述した96-ウェル培養プレートを1,200rpmで5分遠心分離し、上清を新たな96-ウェル培養プレートに収集した。
【0100】
元の96-ウェル培養プレート中に残っている細胞にMTTを加えてから、その元の96-ウェル培養プレートを37℃、5%COの細胞培養器中に1時間置いた。その後、DMSOをその細胞に加え、クリスタルバイオレットを溶出させた。均一に混合した後、各ウェルの570nmにおける吸光度を測定し、細胞生存率を算出した。そして、新たな96-ウェルプレート中にある上述の上清を希釈し、そのIL-4含量をMouse IL-4 ELISAキット(R&D systems, Mouse IL-4 DuoSet ELISA, Catalog : DY404)で検出した。
【0101】
全ての実験結果について、A23187およびPMAのみを加えた群を100%として用いて、IL-4分泌の抑制率を算出し、さらに半数阻害濃度(IC50)および半数細胞毒性濃度(CC50)を算出した。
【0102】
2. 2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB)誘発皮膚炎の動物モデルの実験
【0103】
2.1 実験動物
【0104】
6週齢のBALB/c雄マウスを国家実験動物センター(National Laboratory Animal Center)(台湾、台北市)より購入した。工業技術研究院の動物実験ステーション(Animal Experiment Station)の一般マウス実験エリア(general mouse experiment area)に入った後、マウスに標識を付け、ケージ分けし、体重を測定し、一週間検疫を行った。
【0105】
検疫期間中に動物を環境に慣れさせ、その活動力を観察した。動物の体重が正常に増加していたら、その動物を給餌エリアに移し、実施される実験に備えた。飼育エリアでは、照明を12時間の明暗サイクル(午前7:30~午後7:30が明サイクル)に設定し、室温は23±2℃に設定した。動物に自由に摂食および摂水させた。飼育条件は国家実験動物基準(national laboratory animal standards)に従った。この系統の実験動物については豊富な基礎参考資料およびデータがあり、それらはアトピー性皮膚炎および/または接触性皮膚炎の機能性評価試験に用いるのに適している。実験方法は、工業技術研究院の実験動物ケアおよび使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee,IACUC)による審査を経て承認を受けたものである。
【0106】
2.2 2,4-ジニトロクロロベンゼンでマウスのアトピー性皮膚炎を誘発する方法
【0107】
実験の前に電気シェーバーでBALB/c雄マウスの背部の毛を剃った。実験期間の1日目(Day1)に、1% 2,4-ジニトロクロロベンゼン100μL(アセトンとオリーブオイルとを体積比4:1で混合することにより作った溶液中で調製)で、マウスの背中の面積約2×3cmの皮膚に感作/刺激を行った。その後、0.5% 2,4-ジニトロクロロベンゼン100μLおよび20μL(アセトンとオリーブオイルとを体積比4:1で混合することにより作った溶液中で調製)でそれぞれマウスの背部皮膚および耳の皮膚に感作/刺激を週に2回の頻度で行い、3週間続け(Day4~Day28)、マウスにアトピー性皮膚炎の症状を発症させた。
【0108】
感作処理していない群(何らの処理もしていない(Naive))を除く、他の群のマウスに、試験サンプルまたは対照薬剤を実験期間の10日目から3週間、毎日経口投与した(10日目(Day10))から30日目(Day30)まで)。2,4-ジニトロクロロベンゼンで誘発したアトピー性皮膚炎の動物モデル実験において、シクロスポリンA(CsA)(Sandimmun, Capsules)を対照薬剤として用い、30mg/kgを毎日経口投与した。
【0109】
実験期間中、定期的に写真を撮って、マウス皮膚の腫脹(swelling)および損傷(皮膚病変)の状況を記録した。実験31日目に、動物を過剰量のCOで犠牲死させた。マウスの背中および耳の皮膚サンプルを収集し、ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色を行って、マウスの表皮の厚さおよび総合組織学的スコアを分析した。
【0110】
2.3 皮膚組織病理分析
【0111】
犠牲死させたときに収集したマウスの背部皮膚検体を小さな紙片に載せ、平らにした。耳皮膚検体と共に、中性ホルマリン溶液中でそれらの組織形状および構造を固定した。次いで、固定された検体を脱水し、パラフィンで包埋し、完成したパラフィン検体をミクロトームでカットして3~4μmのパラフィン切片にしてから、ヘマトキシリン・エオジンで染色した。そのヘマトキシリン・エオジン染色切片について、文献Shackelford C, Long G, Wolf J, Okerberg C, Herbert R. Qualitative and quantitative analysis of nonneoplastic lesions in toxicology studies. Toxicologic pathology. 2002;30(1):93-6. 中に挙げられている方法に基づき、病理専門医が表皮の厚さを測定し、かつ皮膚組織病理学的重症度を評価した。
【0112】
組織病理学的グレード分類基準は次のとおりである。グレード0=存在せず(not present)、グレード1=極微(minimal)(<1%)、グレード2=軽微(slight)(1~25%)、グレード3=中度(moderate)(26~50%)、グレード4=中重度(moderately severe)(51~75%)、グレード5=重度/高度(severe/high)(76~100%)。
【0113】
2.4 データ分析
【0114】
本実験におけるデータは平均値の標準誤差(SEM)=平均値±標準誤差で表す。全ての群を主にビヒクルを投与した群と比較した。データの性質に応じ、1元配置分散分析(one-way ANOVA)または2元配置分散分析(two-way ANOVA)をダネットの多重比較検定、スチューデントのt検定またはマンホイットニー検定と組み合わせて用い、差があるか否かを計算した。p値が0.05未満であると、それは群間で統計的に有意な差があることを表す。
【0115】
3.NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデルの実験
【0116】
3.1 実験動物
6週齢 NC/NgaTndCrlj雄マウスをCharles River Japan(日本、東京)より購入した。工業技術研究院の動物実験ステーション(Animal Experiment Station)の一般マウス実験エリア(general mouse experiment area)に入った後、マウスに標識を付け、ケージ分けし、体重を測定し、一週間検疫を行った。
【0117】
検疫期間中に動物を環境に慣れさせ、その活動力を観察した。動物の体重が正常に増加していたら、その動物を給餌エリアに移し、実施される実験に備えた。飼育エリアでは、照明を12時間の明暗サイクル(午前7:30~午後7:30が明サイクル)に設定し、室温は23±2℃に設定した。動物に自由に摂食および摂水させた。飼育条件は国家実験動物基準(national laboratory animal standards)に従った。この系統の実験動物については豊富な基礎参考資料およびデータがあり、それらはアトピー性皮膚炎の機能性評価試験に用いるのに適している。実験方法は、工業技術研究院の実験動物ケアおよび使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee,IACUC)による審査を経て承認を受けたものである。
【0118】
3.2.NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎を誘発する方法
【0119】
実験開始時、およそ10~12週齢となったNC/Ngaマウスについて、体重に応じてS型のグループ分けを行い、各群の平均体重および体重分布のトレンドを似通ったものとした。
【0120】
実験開始の1日前に実験動物の背部の毛を剃った。毛を剃った面積は約4×2cmであった。実験初日(Day0)に、4%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)150μLおよび20μLを、皮膚への塗抹(skin smearing)によりマウスの背部皮膚および耳の皮膚にそれぞれ投与した。3時間後、コナヒョウヒダニ虫体(Dfb)軟膏(Biostir AD)(Biostir(日本、大阪)より購入)100mgおよび10mgを同じ方式で投与して、マウスの背部皮膚および耳の皮膚に感作/刺激を行った。感作/刺激の頻度は、連続する6週間で、週に2回とした。
【0121】
試験サンプルまたは溶媒を実験計画に基づいて投与し、投与量は10mL/kgとした。F4ABを30、100、200または400mg/kgで毎日経口投与した。JAK阻害薬であるウパダシチニブ(MedChemExpress(Monmouth Junction, NJ, USA)より購入)を対照薬剤として用い、1、3または10mg/kgで毎日経口投与した。Day0の感作/刺激後に動物に試験薬剤を与え、Day0、7日目(Day7)、14日目(Day14)、21日目(Day21),28日目(Day28)、35日目(Day35)および42日目(Day42)に背部皮膚の臨床観察採点を行った。実験42日目(Day42)に、動物を犠牲死させ、血液を収集し、IgE分析を行うと共に、背部皮膚組織を取って病理分析を行った。
【0122】
3.3 皮膚臨床症状の観察
【0123】
コナヒョウヒダニ虫体により誘発したNC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎の皮膚臨床観察採点は、背部皮膚に生じる紅斑/出血、傷跡/乾燥、水腫、表皮剥脱/びらん等の皮膚損傷症状を対象とし、観察、評価および記録をそれぞれ行った。上記臨床症状のスケーリング基準は次のとおりである。スケール0は症状無し(no symptoms)、スケール1は軽微(mild)、スケール2は中度(moderate)、スケール3は重度(severe)。皮膚炎の臨床重症度の総合スコア(皮膚病変(skin lesion)のスコア)は、上述した臨床症状採点項目のスコアの合計である。
【0124】
3.4 皮膚組織病理分析
【0125】
犠牲死させたときに収集したマウスの背部皮膚検体を小さな紙片に載せ、平らにした。耳皮膚検体と共に、中性ホルマリン溶液中でそれらの組織形状および構造を固定した。次いで、固定された検体を脱水し、パラフィンで包埋し、完成したパラフィン検体をミクロトームでカットして3~4μmのパラフィン切片にしてから、ヘマトキシリン・エオジンで染色した。そのヘマトキシリン・エオジン染色切片について、文献Shackelford C, Long G, Wolf J, Okerberg C, Herbert R. Qualitative and quantitative analysis of nonneoplastic lesions in toxicology studies. Toxicologic pathology. 2002;30(1):93-6. 中に挙げられている方法に基づき、病理専門医が表皮の厚さを測定し、かつ皮膚組織病理学的重症度、炎症、壊死、増生、過角化等の項目を評価した。
【0126】
組織病理学的グレード分類基準は次のとおりである。グレード0=存在せず(not present)、グレード1=極微(minimal)(<1%)、グレード2=軽微(slight)(1~25%)、グレード3=中度(moderate)(26~50%)、グレード4=中重度(moderately severe)(51~75%)、グレード5=重度/高度(severe/high)(76~100%)。
【0127】
3.5 データ分析
【0128】
本実験におけるデータは平均値の標準誤差(SEM)=平均値±標準誤差で表す。全ての群を主にビヒクルを投与した群と比較した。データの性質に応じ、1元配置分散分析(one-way ANOVA)または2元配置分散分析(two-way ANOVA)をダネットの多重比較検定、スチューデントのt検定またはマンホイットニー検定と組み合わせて用い、差があるか否かを計算した。p値が0.05未満であると、それは群間で統計的に有意な差があることを表す。
【0129】
B.ヌマダイコン抽出物の調製
【0130】
1.ヌマダイコンのエタノール抽出物の調製
【0131】
1.1 ヌマダイコン抽出物0805の調製
【0132】
先ず、乾燥したヌマダイコンの葉を粉砕してヌマダイコンの植物原料を得た。
【0133】
次に、上述したヌマダイコンの植物原料を、その8倍の重量の95%エタノールを用い、60℃で8時間抽出してから、濾過し、1回目の抽出の抽出溶液およびヌマダイコンの植物原料のラフィネートを得た。
【0134】
その後、前述したヌマダイコンの植物原料のラフィネートを、その8倍の重量の95%エタノールを用い、再び60℃で8時間抽出してから、濾過し、2回目の抽出の抽出溶液およびヌマダイコンの植物原料のラフィネートを得た。
【0135】
2回の抽出の抽出溶液を合わせ、組合せ抽出溶液を得た。最後に、その組合せ抽出溶液をロータリーエバポレーター中で減圧下、濃縮し、溶媒を除去して抽出物を得た。それをヌマダイコン抽出物0805と命名した。
【0136】
1.2 ヌマダイコン抽出物0805-Fの調製
【0137】
上述で得られたヌマダイコン抽出物0805 50gを、その8倍の重量の95%エタノールで50℃に加熱してそれを溶解させ、混合溶液を得た。
【0138】
5倍の重量のシリカゲル(250g)をその混合溶液に加えて固定化を行い、n-ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を移動相として用い、カラムクロマトグラフィー(2kgのシリカゲルが充填された内径10cmのガラスカラム、)を行った。
【0139】
カラムクロマトグラフィー中に6個の画分を得ると共に、順次0805-f1、0805-f2、0805-f3、0805-f4、0805-f5および0805-f6と命名した。
【0140】
その後、上の「A.方法」の「1.EL4細胞によるIL-4分泌抑制活性の評価」に記載されている方法に基づき、EL4細胞によりヌマダイコン抽出物0805およびその6個の画分のIL-4分泌抑制活性を評価した。その結果は表1に示されている。
【0141】
【表1】
【0142】
表1は、ヌマダイコン抽出物0805がIL-4分泌を抑制できる(IC50=55.4μg/mL)ことを示している。上記6個の画分のうち、0805-f3および0805-f4はより優れたIL-4分泌抑制活性を有しており、それぞれIC50が4.6±1.2μg/mLおよび4.4±0.5μg/mLであった。よって、画分0805-f3および画分0805-f4を合わせ、組合せ画分を得た。
【0143】
その後、その組合せ画分をロータリーエバポレーターにより減圧下で濃縮し、溶媒を除去し、生成物を得た。それをヌマダイコン抽出物0805-Fと命名した。
【0144】
2.ヌマダイコンの水抽出物の調製
【0145】
2.1 ヌマダイコン抽出物Wの調製
【0146】
先ず、ヌマダイコンの葉を粉砕してからフィルターバッグに入れて、ヌマダイコンの植物原料を得た。
【0147】
次に、上述したヌマダイコンの植物原料を加圧反応槽中で、その重量の30倍の純水で抽出して(抽出条件:102.97kPa、120℃、20分)抽出物を得、その抽出物を加圧反応槽から取り出し、同じ条件で上述したヌマダイコンの植物原料を繰り返し抽出した。トータルで3回の抽出を行った。3回の抽出より得られた抽出物を合わせ、組合せ抽出物を得ると共に、ヌマダイコン抽出物Wと命名した。
【0148】
2.2ヌマダイコン抽出物F4ABの調製
【0149】
カラムクロマトグラフィーI
【0150】
上記ヌマダイコン抽出物Wをカラム(直径12インチ、HP20樹脂100L含有)にロードした。その後、そのカラムを純水(200L)で溶出し、溶出液を捨ててから、そのカラムを50%エタノール水溶液(200L)で溶出し、溶出液を捨てた。次いで、そのカラムを75%エタノール水溶液(200L)で溶出し、溶出液を収集して初期精製抽出溶液とした。
【0151】
その初期精製抽出物をさらに濃縮し、濃縮初期精製抽出溶液を得た。
【0152】
カラムクロマトグラフィーII
【0153】
濃縮初期精製抽出溶液を、その固形分重量の5倍の重量のシリカゲルで固定した後、シリカゲルカラム(濃縮初期精製抽出溶液の固形分重量の20倍の重量のシリカゲルが充填された直径10cmのカラム)を用い、n-ヘキサン/酢酸エチル(1:1)を移動相とし、カラムクロマトグラフィーを行った。画分をセクションごとに収集した。
【0154】
上の「A.方法」の「1.EL4細胞によるIL-4分泌抑制活性の評価」に記載されている方法に基づき、カラムクロマトグラフィーで得られた全ての画分のIL-4分泌抑制活性をEL4細胞により評価し、IL-4分泌抑制活性を有する画分を合わせて活性画分を得た。
【0155】
上記活性画分をさらに濃縮して濃縮活性画分を得た。
【0156】
上述した濃縮活性画分を、その4倍の重量の95%エタノール水溶液を用い、60℃で加熱溶解し、活性溶液を形成した。
【0157】
上記活性溶液を24時間静置してその中に結晶を形成させた。最後に、その結晶を収集して乾燥させた。得られた乾燥結晶をヌマダイコン抽出物F4ABと命名した。
【0158】
C.ヌマダイコン抽出物0805の動物実験
【0159】
上の「A.方法」の「2.2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB)誘発皮膚炎の動物モデルの実験」に記載されている方法に基づき、ヌマダイコン抽出物0805の動物実験を行った。
【0160】
マウスを2,4-ジニトロクロロベンゼンで感作した後、実験の10日目から連続する3週間(10日目(Day10)から30日目(Day30)まで)、ヌマダイコン抽出物0805 300mg/kgを毎日経口投与した。
【0161】
実験31日目に、動物を過剰量のCOで犠牲死させてから、マウスの皮膚組織切片染色および病理切片分析、表皮の厚さの測定、ならびに総合皮膚病理的重症度採点を行った。実験結果が図1から図3に示されている。
【0162】
図1は、感作処理していない群(Naive)、ビヒクルを投与した群、およびヌマダイコン抽出物0805を投与した群におけるマウスの背部皮膚組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色結果を示している。矢印で印をつけたところは増生を示し、で印をつけたところは炎症を示す。
【0163】
図2は、感作処理していない群(Naive)、ビヒクルを投与した群、およびヌマダイコン抽出物0805を投与した群におけるマウスの背部皮膚の表皮の厚さを示しており、図3は、感作処理していない群(Naive)、ビヒクルを投与した群、およびヌマダイコン抽出物0805を投与した群におけるマウスの背部皮膚の総合組織学的スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されている。スチューデントのt検定(表皮厚さの測定)またはマンホイットニー検定(組織病理採点)を用い、統計分析を行った。ビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001である。
【0164】
図1から図3に示されている実験結果によれば、ヌマダイコン抽出物0805は背部表皮の増生および背部皮膚の全体的な病理的損傷を大幅に低減させ得ることがわかる。
【0165】
D.ヌマダイコン抽出物0805-Fの動物実験
【0166】
上の「A.方法」の「2.2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB)誘発皮膚炎の動物モデルの実験」に記載されている方法に基づき、ヌマダイコン抽出物0805-Fについて動物実験を行った。
【0167】
マウスを2,4-ジニトロクロロベンゼンで感作した後、実験の10日目から連続する3週間(10日目(Day10)から30日目(Day30)まで)、ヌマダイコン抽出物0805-F 300mg/kg、または対照薬剤であるシクロスポリンA 30mg/kgを毎日経口投与した。
【0168】
実験期間中、マウスの耳の写真を撮って、マウスの耳の皮膚の腫脹(swelling)および損傷(皮膚病変)の状況を記録すると共に、マウスの耳の厚さを測定した。実験30日目のマウスの耳の写真が図4に示されている。
【0169】
また、実験30日目のマウスの耳の厚さの測定結果が図5に示されている。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されている。図5中、それぞれの群の耳の厚さと、ビヒクルを投与した群の耳の厚さとを比較するため、2元配置分散分析にダネットの多重比較検定を合わせて統計分析を行った。p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、***p<0.001である。図5中、ヌマダイコン抽出物0805-F 300mg/kgを投与した群の耳の厚さと、シクロスポリンAを投与した群の耳の厚さとを比較するため、統計分析をスチューデントのt検定により行った。p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、###p<0.001である。
【0170】
実験31日目に、動物を過剰量のCOで犠牲死させてから、マウスの耳の皮膚組織切片染色および病理切片分析、ならびに耳の皮膚の総合病理的重症度採点を行った。実験結果が図6および7に示されている。
【0171】
図6は、感作処理していない群(Naive)、ビヒクルを投与した群、ヌマダイコン抽出物0805-Fを投与した群、およびシクロスポリンAを投与した群におけるマウスの耳皮膚組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色結果を示している。矢印で印をつけたところは増生を示し、で印をつけたところは炎症を示す。
【0172】
図7は、未感作処理群、ビヒクル投与群、ヌマダイコン抽出物0805-F投与群、およびシクロスポリンA投与群におけるマウスの耳の皮膚の総合組織学的スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されている。それぞれの群の総合組織学的スコアと、ビヒクルを投与した群の総合組織学的スコアとを比較するため、統計分析をマンホイットニー検定により行った。p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。ヌマダイコン抽出物0805-F 300mg/kgを投与した群の総合組織学的スコアと、シクロスポリンAを投与した群の総合組織学的スコアとを比較するために、統計分析をマンホイットニー検定により行った。p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05である。
【0173】
図4から図7に示される実験結果によれば、ヌマダイコン抽出物0805-Fは、マウスの耳の皮膚の臨床的外観、病理的症状および耳の厚さを著しく改善することができ、かつ用量効果(dose effect)を示し、その効能は臨床薬であるシクロスポリンAよりも優れている。
【0174】
E.ヌマダイコン抽出物F4ABの動物実験
【0175】
上の「A.方法」の「NC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎モデルの実験」に記載されている方法に基づき、ヌマダイコン抽出物F4ABについて動物実験を行った。
【0176】
F4ABを30、100、200または400mg/kgで毎日経口投与した。JAK阻害剤であるウパダシチニブを対照薬剤として用い、1、3または10mg/kgで毎日経口投与した。Day0の感作/刺激後に動物に試験薬剤を与え、Day0、7日目(Day7),14日目(Day14)、21日目(Day21)、28日目(Day28)、35日目(Day35)および42日目(Day42)に背部皮膚に対する臨床観察採点を行った。実験42日目(Day42)に、動物を犠牲死させ、血液を収集し、IgE分析を行うと共に、背部皮膚組織を取って病理分析を行った。
【0177】
各群のマウス血清IgE濃度の測定結果が図8に示されている。図8中、データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示されており、統計分析はスチューデントのt検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、##p<0.01である。
【0178】
実験42日目、マウスを犠牲死させる前に、背中の写真を撮り、皮膚外観の落屑および損傷(皮膚病変)を記録した。その結果が図9に示されている。
【0179】
実験期間中毎週、マウスの背中に対し、総合的皮膚炎臨床重症度採点(皮膚病変のスコア)を行った。結果が図10Aおよび10Bに示されている。図10Aは、ヌマダイコン抽出物F4ABを投与したマウスの背中の総合的皮膚炎臨床重症度スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示しており、統計分析はマンホイットニー検定により行った。そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。図10Bは、ウパダシチニブを投与したマウスの背中の総合的皮膚炎臨床重症度スコアを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示しており、統計分析はマンホイットニー検定により行った。そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、##p<0.01である。
【0180】
実験42日目、マウスを犠牲死させる前に、総合的皮膚炎臨床重症度採点(皮膚病変のスコア)をマウスの背中に対して行った。その結果が図10Cに示されている。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示しており、統計分析はマンホイットニー検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、***p<0.001である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、###p<0.001である。
【0181】
マウスを犠牲死させた後、マウスに皮膚組織切片染色、表皮厚さの測定および病理切片分析を行った。これら実験結果は図11、12、13および14Aから14Eに示されている。
【0182】
図11は、感作処理していない群、ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群、およびビヒクルを投与した群におけるマウスの背部皮膚組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色結果を示している。矢印で印をつけたところは増生を示し、で印をつけたところは炎症を示す。
【0183】
図12は、感作処理していない群、ウパダシチニブを投与した群、およびビヒクルを投与した群におけるマウスの背部皮膚組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色結果を示している。で印をつけたところは炎症を示している。
【0184】
図13は、感作処理していない群、ヌマダイコンのビヒクルを投与した群、ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群、ウパダシチニブのビヒクルを投与した群、ウパダシチニブを投与した群におけるマウスの背部皮膚の表皮の厚さを示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示しており、統計分析はスチューデントのt検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、**p<0.01である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、##p<0.01である。
【0185】
図14Aから図14Eは、マウスの背部皮膚組織の組織病理切片分析における炎症スコア、壊死スコア、増生スコア、過角化スコアおよび皮膚総合組織病理学的重症度スコアをそれぞれ示している。データは平均値±標準誤差(Mean±SEM)(n=5)で示しており、統計分析はマンホイットニー検定により行った。ヌマダイコン抽出物F4ABを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、**p<0.01である。ウパダシチニブを投与した群と、そのビヒクルを投与した群との比較で、p<0.05は統計的に有意な差があることを表し、p<0.05、##p<0.01である。
【0186】
上記実験結果によれば、ビヒクルを投与した群と比較して、ヌマダイコン抽出物F4AB 30~400mg/kgを投与した群におけるマウスの血液のIgE濃度は大幅に低下し、対照薬剤であるウパダシチニブ1~10mg/kgを投与した群は同じ効果を有している。
【0187】
マウスの背部皮膚に対する効果については、ヌマダイコン抽出物F4ABおよびウパダシチニブの経口投与はいずれも、実験期間中において背部皮膚の臨床的外観および皮膚損傷を著しく改善させることができており、かつその著しい改善および用量効果(dose effect)は犠牲死の日まで維持された。組織病理分析については、ヌマダイコン抽出物F4AB 30~400mg/kgおよびウパダシチニブ1~10mg/kgの経口投与はいずれも、背部皮膚の表皮の厚さを著しく改善させると同時に、炎症、過角化、増生、壊死および総合病理的損傷を著しく低減させることができていた。
【0188】
上の全ての実験は、本開示のヌマダイコン抽出物が皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎および接触性皮膚炎の治療に有効に使用され得ることを、明らかに証明している。
【0189】
当業者には、開示された実施形態に各種の修飾および変更を加えることができる、ということが明らかであろう。詳述および例は単なる例示としてみなされるよう意図されており、本開示の真の範囲は、以下のクレームおよびそれらの均等物によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
【外国語明細書】