(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097305
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】支援システム、及び、支援方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/36 20180101AFI20240710BHJP
F24F 11/62 20180101ALI20240710BHJP
【FI】
F24F11/36
F24F11/62
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223522
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2023000693
(32)【優先日】2023-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】西村 忠史
(72)【発明者】
【氏名】國井 大地
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA52
3L260DA10
3L260EA26
(57)【要約】
【課題】安全上の観点からは、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、空調機が選定されたり、冷媒系統が設計されたりすることが好ましい。
【解決手段】支援システム100は、室外ユニット51、室内ユニット52、及び、室外ユニット51と室内ユニット52とを接続する冷媒配管53が属する冷媒系統の更新を支援する。支援システム100は、制御部12を備える。制御部は、更新前の冷媒系統に属する室外ユニット、室内ユニット及び冷媒配管の少なくとも1つに関する情報に基づいて、更新後の冷媒系統に充填される冷媒の量である第1量を算出する。制御部は、更新後の冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量又は滞留許容量である第2量を取得する。制御部は、算出した第1量が、取得した第2量を超えない冷媒系統に関する情報を、更新後の冷媒系統に関する情報として提示することで、冷媒系統の更新を支援する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外ユニット(51)、室内ユニット(52)、及び、前記室外ユニットと前記室内ユニットとを接続する冷媒配管(53)が属する冷媒系統の更新を支援する、制御部(12)を備える支援システムであって、
前記制御部は、
更新前の前記冷媒系統に属する前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記冷媒配管の少なくとも1つに関する情報に基づいて、更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の量である第1量を算出し、
更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量、又は、更新後の前記冷媒系統に属する前記室内ユニット及び前記冷媒配管から冷媒が部屋に漏洩した場合に前記部屋において滞留が許容される冷媒の最大量である第2量を取得し、
算出した前記第1量が、取得した前記第2量を超えない前記冷媒系統に関する情報を、更新後の前記冷媒系統に関する情報として提示することで、前記冷媒系統の更新を支援する、
支援システム(100)。
【請求項2】
前記制御部は、算出した前記第1量が、取得した前記第2量を超えない前記冷媒系統であって、更新前の前記冷媒系統の能力に基づく所定の能力を少なくとも有する前記冷媒系統に関する情報を、更新後の前記冷媒系統に関する情報として提示することで、前記冷媒系統の更新を支援する、
請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記制御部は、更新後の前記冷媒系統に属する前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記冷媒配管の少なくとも1つに関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援する、
請求項1又は2に記載の支援システム。
【請求項4】
前記制御部は、更新前の前記冷媒系統を複数に分割する場合、分割前の前記冷媒系統に属する前記室内ユニットが分割後の複数の前記冷媒系統のいずれかに属するように、更新後の前記冷媒系統の接続状態に関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記接続状態に関する情報は、前記冷媒配管がどの前記室外ユニット及びどの前記室内ユニットに接続されるのかに関する情報を含む、
請求項1又は2に記載の支援システム。
【請求項5】
前記制御部は、更新前の複数の前記冷媒系統のいずれかに属する前記室内ユニットが、更新後において異なる前記冷媒系統に属するように、更新後の前記冷媒系統の接続状態に関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記接続状態に関する情報は、前記冷媒配管がどの前記室外ユニット及びどの前記室内ユニットに接続されるのかに関する情報を含む、
請求項1又は2に記載の支援システム。
【請求項6】
前記制御部は、更新前の複数の前記冷媒系統のいずれかの第1の冷媒系統に属する複数の前記室内ユニットが複数の部屋に亘って配置される場合に、前記複数の部屋の一部に配置される前記室内ユニットが、更新後において前記第1の冷媒系統と異なる第2の冷媒系統に属するように、更新後の前記冷媒系統の前記接続状態に関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記制御部は、前記第2の冷媒系統が、前記第1の冷媒系統よりも、属する前記室内ユニットの数、又は、充填される冷媒の量が、より少なくなるように、更新後の前記冷媒系統の前記接続状態に関する情報を提示する、
請求項5に記載の支援システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記冷媒系統に充填される冷媒の燃焼下限界を取得し、
取得した冷媒の燃焼下限界に基づいて、前記冷媒系統に安全装置を設置する必要があるか否かを判定し、
判定結果に基づいて、前記冷媒系統の更新を支援する、
請求項1又は2に記載の支援システム。
【請求項8】
室外ユニット(51)、室内ユニット(52)、及び、前記室外ユニットと前記室内ユニットとを接続する冷媒配管(53)が属する冷媒系統の更新を支援する支援方法であって、
更新前の前記冷媒系統に属する前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記冷媒配管の少なくとも1つに関する情報に基づいて、更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の量である第1量を算出するステップと、
更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量、又は、更新後の前記冷媒系統に属する前記室内ユニット及び前記冷媒配管から冷媒が部屋に漏洩した場合に前記部屋において滞留が許容される冷媒の最大量である第2量を取得するステップと、
算出した前記第1量が、取得した前記第2量を超えない前記冷媒系統に関する情報を、更新後の前記冷媒系統に関する情報として提示することで、前記冷媒系統の更新を支援するステップと、
を実行する、
支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
支援システム、及び、支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物に設置され、空調機及び冷媒配管が属する冷媒系統を更新する際に、最適な冷媒系統を選定するための方法が求められている。特許文献1(特開平8-94150号公報)には、冷媒系統に属する空調機を選定するシステムとして、建物の空調設計に関するデータに基づいて、空調機が設置される各部屋の冷房及び暖房の熱負荷を算出し、算出結果に基づいて各部屋に設置される空調機を選定するシステムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
空調機に使用される冷媒が微燃性又は毒性を有する場合、空調機が属する冷媒系統に封入できる冷媒の量が、冷媒の種類に応じて規制されている。そのため、安全上の観点からは、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、更新後の冷媒系統が選定されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の支援システムは、室外ユニット、室内ユニット、及び、室外ユニットと室内ユニットとを接続する冷媒配管が属する冷媒系統の更新を支援する。支援システムは、制御部を備える。制御部は、以下の処理を行う。
・更新前の冷媒系統に属する室外ユニット、室内ユニット及び冷媒配管の少なくとも1つに関する情報に基づいて、更新後の冷媒系統に充填される冷媒の量である第1量を算出する。
・更新後の冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量、又は、更新後の冷媒系統に属する室内ユニット及び冷媒配管から冷媒が部屋に漏洩した場合に部屋において滞留が許容される冷媒の最大量である第2量を取得する。
・算出した第1量が、取得した第2量を超えない冷媒系統に関する情報を、更新後の冷媒系統に関する情報として提示することで、冷媒系統の更新を支援する。
【0005】
第1観点の支援システムでは、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて冷媒系統を設計することができる。
【0006】
第2観点の支援システムは、第1観点の支援システムであって、制御部は、算出した第1量が、取得した第2量を超えない冷媒系統であって、更新前の冷媒系統の能力に基づく所定の能力を少なくとも有する冷媒系統に関する情報を、更新後の冷媒系統に関する情報として提示することで、冷媒系統の更新を支援する。
【0007】
第2観点の支援システムでは、各冷媒系統の能力を維持しつつ、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて冷媒系統を設計することができる。
【0008】
第3観点の支援システムは、第1観点又は第2観点の支援システムであって、制御部は、更新後の冷媒系統に属する室外ユニット、室内ユニット及び冷媒配管の少なくとも1つに関する情報を提示することで、冷媒系統の更新を支援する。
【0009】
第3観点の支援システムでは、利用者は、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、冷媒系統の最適な設計を容易に行うことができる。
【0010】
第4観点の支援システムは、第1乃至第3観点のいずれか1つの支援システムであって、制御部は、更新前の冷媒系統を複数に分割する場合、分割前の冷媒系統に属する室内ユニットが分割後の複数の冷媒系統のいずれかに属するように、更新後の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示することで、冷媒系統の更新を支援する。接続状態に関する情報は、冷媒配管がどの室外ユニット及びどの室内ユニットに接続されるのかに関する情報を含む。
【0011】
第4観点の支援システムでは、利用者は、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、冷媒系統の最適な設計を容易に行うことができる。
【0012】
第5観点の支援システムは、第1乃至第4観点のいずれか1つの支援システムであって、制御部は、更新前の複数の冷媒系統のいずれかに属する室内ユニットが、更新後において異なる冷媒系統に属するように、更新後の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示することで、冷媒系統の更新を支援する。接続状態に関する情報は、冷媒配管がどの室外ユニット及びどの室内ユニットに接続されるのかに関する情報を含む。
【0013】
第5観点の支援システムでは、利用者は、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、冷媒系統の最適な設計を容易に行うことができる。
【0014】
第6観点の支援システムは、第5観点の支援システムであって、制御部は、更新前の複数の冷媒系統のいずれかの第1の冷媒系統に属する複数の室内ユニットが複数の部屋に亘って配置される場合に、複数の部屋の一部に配置される室内ユニットが、更新後において第1の冷媒系統と異なる第2の冷媒系統に属するように、更新後の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示することで、冷媒系統の更新を支援する。制御部は、第2の冷媒系統が、第1の冷媒系統よりも、属する室内ユニットの数、又は、充填される冷媒の量が、より少なくなるように、更新後の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示する。
【0015】
第6観点の支援システムでは、利用者は、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、冷媒系統の最適な設計を容易に行うことができる。
【0016】
第7観点の支援システムは、第1乃至第6観点のいずれか1つの支援システムであって、制御部は、冷媒系統に充填される冷媒の燃焼下限界を取得し、取得した冷媒の燃焼下限界に基づいて、冷媒系統に安全装置を設置する必要があるか否かを判定し、判定結果に基づいて、冷媒系統の更新を支援する。
【0017】
第7観点の支援システムでは、冷媒系統を変更する代わりに冷媒系統に安全装置を設置することで、コストを抑えることができる。
【0018】
第8観点の支援方法は、室外ユニット、室内ユニット、及び、室外ユニットと室内ユニットとを接続する冷媒配管が属する冷媒系統の更新を支援する。この支援方法は、以下のステップを実行する。
・更新前の冷媒系統に属する室外ユニット、室内ユニット及び冷媒配管の少なくとも1つに関する情報に基づいて、更新後の冷媒系統に充填される冷媒の量である第1量を算出するステップ。
・更新後の冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量、又は、更新後の冷媒系統に属する室内ユニット及び冷媒配管から冷媒が部屋に漏洩した場合に部屋において滞留が許容される冷媒の最大量である第2量を取得するステップ。
・算出した第1量が、取得した第2量を超えない冷媒系統に関する情報を、更新後の冷媒系統に関する情報として提示することで、冷媒系統の更新を支援するステップ。
【0019】
第8観点の支援方法では、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて冷媒系統を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】空調システム50の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】支援システム100の全体構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の制御部12の処理のフローチャートである。
【
図4】実施形態の冷媒系統の分割の具体例を説明するための図である。
【
図5】実施形態の冷媒系統の変更の具体例を説明するための図である。
【
図6】変形例Aの支援システム100の全体構成を示すブロック図である。
【
図7】変形例Cの冷媒系統の分割の具体例を説明するための図である。
【
図8】変形例Dの冷媒系統の変更の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)全体構成
本実施形態の支援システム100は、冷媒系統の更新を支援するためのシステムである。冷媒系統の更新とは、建物に既設の冷媒系統を新しいものに置き換える作業である。冷媒系統の更新を支援するとは、例えば、所定の条件に基づいて選定した更新後の冷媒系統に関する情報を人に提示すること、又は、更新後の冷媒系統の人による選定のために更新後の冷媒系統の候補を人に提示すること、である。所定の条件とは、例えば、法律等に基づく安全基準要件である。
【0022】
冷媒系統とは、冷媒システムの構成を意味する。本実施形態において、冷媒システムは、複数台の室外ユニット51と複数台の室内ユニット52とが冷媒配管53を介して接続される空調システム50であるとする。この場合、空調システム50の冷媒系統は、各冷媒配管53が、どの室外ユニット51と、どの室内ユニット52とを接続するのかに関する接続状態を含む。空調システム50の冷媒系統では、1台の室外ユニット51が、1台又は複数台の室内ユニット52に、冷媒配管53を介して接続される。また、冷媒系統は、冷媒システムを構成する機器に関する機器情報を含む。機器情報は、例えば、冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52の機種及び能力、及び、冷媒系統に属する冷媒配管53の径及び長さを含む。
【0023】
図1に示されるように、空調システム50は、例えば、複数の部屋3を有する物件1に設置される。物件1は、オフィスビル等の建物である。物件1には、複数の冷媒系統を有する空調システム50が設置される。各冷媒系統は、1台の室外ユニット51と、複数台の室内ユニット52と、を備える、パッケージ型空調機である。室外ユニット51は、圧縮機、熱交換器、膨張機構及びファン等を備える空調ユニットである。室外ユニット51は、物件1の外に設置される。室内ユニット52は、熱交換器及びファン等を備える空調ユニットである。室内ユニット52は、物件1内の部屋3に設置される。部屋3は、空調システム50による空調の対象となる空間である。1つの部屋3には、1台又は複数台の室内ユニット52が設置される。室外ユニット51及び室内ユニット52は、冷媒配管53によって接続されることで、冷媒が循環する冷媒回路を構成する。空調システム50が複数の冷媒系統を有する場合、各冷媒系統の冷媒回路は互いに独立している。
【0024】
支援システム100は、物件1に設置される空調システム50の冷媒系統の更新の支援に用いられる。例えば、物件1の工事担当者は、支援システム100によって提示された更新後の冷媒系統に関する情報に基づいて、物件1に設置される空調システム50の冷媒系統を更新する工事を行う。この場合、工事担当者は、冷媒系統の接続状態を変更したり、冷媒系統に属する機器を変更したりする。
【0025】
また、例えば、物件1の施工担当者は、支援システム100によって提示された更新後の冷媒系統の複数の候補の中から、所定の基準に基づいて1つの冷媒系統を選定し、選定した冷媒系統に基づいて、物件1に設置される空調システム50の冷媒系統を更新する工事を行う。この場合、施工担当者は、選定した冷媒系統に基づいて、室外ユニット51及び室内ユニット52を冷媒配管53で接続したり、冷媒系統に属する室外ユニット51、室内ユニット52及び冷媒配管53を選択したりする。
【0026】
図2は、支援システム100の全体構成を示すブロック図である。支援システム100は、主として、コンピュータ10と、外部入力装置20とを備える。物件1の施工担当者は、コンピュータ10と外部入力装置20とを用いて、所定の安全基準要件に関する情報を入力することができる。
【0027】
コンピュータ10は、主に、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、出力部14と、入力部15と、を備える。コンピュータ10は、例えば、ラップトップ型のパソコンである。
【0028】
通信部11は、通信ネットワーク及び外部デバイスのためのインターフェイスである。通信部11は、例えば、インターネット等の通信ネットワークにコンピュータ10を接続するためのネットワークインターフェイス、及び、プリンタ等の外部デバイスにコンピュータ10を接続するための汎用インターフェイスである。
【0029】
制御部12は、主に、CPUから構成される。制御部12は、算出部12aと、第1取得部12bと、第1判定部12fと、支援部12cと、を実行する。これらは、制御部12が実行するプログラムによって実現される機能に相当する。
【0030】
記憶部13は、主に、RAM、HDD及びSSD等の記憶装置から構成される。記憶部13は、制御部12が実行するプログラム、及び、当該プログラムによって使用されるデータ等を記憶する。記憶部13は、充填冷媒量情報13aと、許容冷媒量情報13bと、支援情報13cと、を記憶する。
【0031】
出力部14は、ディスプレイ及びプリンタ等の、コンピュータ10の出力装置である。出力部14であるディスプレイには、例えば、制御部12が実行するプログラムの処理を開始するためのインターフェイス、及び、制御部12が実行するプログラムの処理結果等が表示される。
【0032】
入力部15は、キーボード及びマウス等の、コンピュータ10の入力装置である。物件1の工事担当者及び施工担当者等である支援システム100の利用者は、入力部15を操作することで、支援システム100により実行される処理に必要な情報を入力することができる。
【0033】
出力部14及び入力部15は、例えば、タッチパネル機能及びスピーカ機能付きディスプレイとして一体的に構成されていてもよい。
【0034】
外部入力装置20は、例えば、カメラ及びイメージスキャナである。外部入力装置20は、コンピュータ10の通信部11に接続される。外部入力装置20は、通信部11を介して、コンピュータ10にデータを送信することができる。
【0035】
(2)制御部12の詳細構成
以下において、空調システム50が複数の冷媒系統を有する場合、制御部12は、各冷媒系統に対して処理を実行する。次に、
図3のフローチャートを参照しながら、制御部12の各機能の詳細、及び、制御部12が実行する処理について説明する。
【0036】
(2-1)算出部12a
算出部12aは、空調システム50の更新前の冷媒系統の系統情報に基づいて、更新後の冷媒系統に充填される冷媒の量である充填冷媒量(第1量)を算出する(
図3のステップS1)。算出部12aが算出する充填冷媒量は、更新後の冷媒系統に必要となる冷媒の量であって、更新後の冷媒系統に理論的に充填され得る冷媒の量である。算出部12aが算出した充填冷媒量は、充填冷媒量情報13aとして記憶部13に保存される。充填冷媒量は、キログラム単位で算出されて記憶される。
【0037】
冷媒系統の系統情報とは、その冷媒系統に属する室外ユニット51、室内ユニット52及び冷媒配管53の少なくとも1つに関する情報である。系統情報は、室外ユニット51及び室内ユニット52の能力及び仕様、室内ユニット52の台数、及び、冷媒配管53の寸法(長さ及び径)を含む。室外ユニット51及び室内ユニット52の仕様とは、例えば、室外ユニット51の圧縮機の容積、及び、室外ユニット51及び室内ユニット52の熱交換器の冷媒流路の容積である。室外ユニット51及び室内ユニット52の仕様は、これらの容積の代わりに、室外ユニット51及び室内ユニット52の機種ごとに予め設定される冷媒充填量であってもよい。系統情報は、各冷媒配管53がどの室外ユニット51とどの室内ユニット52とを接続するのかに関する情報、各室内ユニット52が設置される部屋3の容積、及び、各部屋3に設置される室内ユニット52の位置及び向きに関する情報、をさらに含む。
【0038】
更新前の冷媒系統の系統情報は、記憶部13に予め記憶される。系統情報は、支援システム100の利用者によって入力部15を介して入力されて記憶部13に保存されることで、予め記憶されてもよい。系統情報は、所定のデータに基づいて制御部12によって取得されて記憶部13に保存されることで、予め記憶される。例えば、制御部12は、物件1内の冷媒配管53の設置位置に関する情報が含まれる図面データに基づいて、系統情報に含まれる冷媒配管53の長さを取得してもよい。
【0039】
記憶部13には、さらに、更新後の冷媒系統の決定に用いられる更新用情報が予め記憶される。更新用情報とは、例えば、更新後の冷媒系統に用いることができる、室外ユニット51、室内ユニット52及び冷媒配管53に関する情報である。
【0040】
算出部12aは、更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量と同じ量を充填冷媒量として算出する。この場合、算出部12aは、記憶部13に記憶される更新前の冷媒系統の系統情報に基づいて、更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量を算出して、算出した量を充填冷媒量として採用する。
【0041】
算出部12aは、記憶部13に記憶される更新用情報を用いて、充填冷媒量を算出してもよい。この場合、算出部12aは、更新用情報を用いて、更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量と同じ量の冷媒が充填される仮の冷媒系統を決定して、仮の冷媒系統に充填される冷媒の量を充填冷媒量として算出する。
【0042】
算出部12aは、更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量から所定量少ない量を充填冷媒量として算出してもよい。この場合、算出部12aは、更新用情報を用いて、更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量より少ない量の冷媒が充填される仮の冷媒系統を決定して、仮の冷媒系統に充填される冷媒の量を充填冷媒量として算出する。更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量より少ない量は、例えば、記憶部13に記憶される充填冷媒量の目標値に基づいて、算出部12aによって取得される。充填冷媒量の目標値は、例えば、支援システム100の利用者によって入力部15を介して入力されて、記憶部13に記憶される。
【0043】
このように、算出部12aは、更新前の冷媒系統の系統情報に基づいて、更新後の冷媒系統に充填される冷媒の量である充填冷媒量を算出する。
【0044】
以下の説明では、算出部12aは、最初は、更新用情報を用いずに、更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量を充填冷媒量として算出するとする。
【0045】
(2-2)第1取得部12b
第1取得部12bは、空調システム50の更新後の冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量である許容冷媒量(第2量)を取得する。第1取得部12bは、算出部12aが充填冷媒量を算出した後に、許容冷媒量を取得する(
図3のステップS2)。第1取得部12bが取得する許容冷媒量は、更新後の冷媒系統が使用することができる冷媒の量の最大値である。第1取得部12bは、記憶部13に記憶される許容冷媒量情報13bに基づいて許容冷媒量を取得する。許容冷媒量は、キログラム単位で算出されて記憶される。
【0046】
許容冷媒量は、許容冷媒量情報13bとして記憶部13に予め記憶される。許容冷媒量情報13bは、支援システム100の利用者によって入力部15を介して入力されて記憶部13に保存されることで、予め記憶されてもよい。
【0047】
許容冷媒量は、所定の安全基準要件に基づいて設定される。許容冷媒量は、例えば、冷凍システムの安全な設計及び運用等のための国際規格であるISO 5149で規定されている最大冷媒量である。ISO 5149のパート1は、冷媒の漏洩時における適切な安全対策を取ることを目的として、1つの冷媒系統に充填することができる冷媒の総量の上限値である最大冷媒量を規定している。ISO 5149で規定されている最大冷媒量(kg)は、195×LFLにより算出される値である。LFL(kg/m3)は、冷媒系統に充填される冷媒の燃焼下限界である。冷媒の燃焼下限界とは、燃焼範囲における、冷媒の濃度の下限値である。燃焼範囲において、冷媒と空気との混合物は、燃焼可能又は発火可能である。冷媒のLFLは、ISO 817において、冷媒の毒性及び燃焼性に基づいて冷媒の種類に応じて規定されている。例えば、R32のLFLは、ドライ条件(23℃、50%RH)において0.307kg/m3であるので、R32の最大冷媒量は、59.8kgである。従って、冷媒としてR32が充填されている冷媒系統の許容冷媒量は、59.8kgである。
【0048】
第1取得部12bは、更新後の冷媒系統に充填される冷媒の種類と、ISO 5149で規定されている最大冷媒量とに基づいて、更新後の冷媒系統の許容冷媒量を取得してもよい。
【0049】
(2-3)第1判定部12f
第1判定部12fは、算出部12aが算出した充填冷媒量、及び、第1取得部12bが取得した冷媒系統の許容冷媒量に基づいて、冷媒系統の更新内容を見直す必要があるか否かを判定する。冷媒系統の更新内容は、算出部12aが算出した充填冷媒量に関する情報を含む。
【0050】
具体的には、第1判定部12fは、充填冷媒量が許容冷媒量を超えているか否かを判定する(
図3のステップS3)。第1判定部12fは、算出部12aが算出した充填冷媒量が許容冷媒量を超えている場合、許容冷媒量を超えない充填冷媒量が算出されるように、冷媒系統の更新内容を見直す必要があると判定する。この場合、算出部12aは、前回とは異なる方法で充填冷媒量を算出し直すことで冷媒系統の更新内容を見直す(
図3のステップS1a)。算出部12aは、例えば、更新用情報を用いて、更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量より少ない量の冷媒の量を充填冷媒量として算出する。第1判定部12fは、算出部12aが充填冷媒量を算出し直して冷媒系統の更新内容を見直した後、前回と同じ判定処理を行う(
図3のステップS3)。
【0051】
第1判定部12fは、算出部12aが算出した充填冷媒量が許容冷媒量を超えていない場合、冷媒系統の更新内容を見直す必要がないので、算出部12aが算出した充填冷媒量に基づいて冷媒系統の更新を支援できると判定する。
【0052】
(2-4)支援部12c
支援部12cは、算出部12aが算出した充填冷媒量が許容冷媒量を超えていないと第1判定部12fが判定した場合に、算出部12aが算出した充填冷媒量、及び、第1取得部12bが取得した許容冷媒量に基づいて、冷媒系統の更新を支援する(
図3のステップS4)。支援部12cは、更新後の冷媒系統の候補に関する情報を提示することで、冷媒系統の更新を支援する。支援部12cは、例えば、記憶部13に記憶される更新用情報を用いて、更新後の冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52の機種、位置及び台数、冷媒配管53の位置、数及び寸法を決定して、更新後の冷媒系統の候補に関する情報を生成して提示する。支援部12cが提示する、更新後の冷媒系統の候補に関する情報は、記憶部13に保存される。
【0053】
支援部12cは、更新後の冷媒系統の候補として、充填冷媒量が許容冷媒量を超えない冷媒系統に関する情報を提示する。充填冷媒量が許容冷媒量を超える冷媒系統は、国際規格に基づく所定の安全基準要件を満たさず、冷媒系統の候補として支援部12cによって提示されない。
【0054】
また、支援部12cは、充填冷媒量が許容冷媒量を超えない冷媒系統であって、所定の必要能力を少なくとも有する冷媒系統を、更新後の冷媒系統の候補として提示する。記憶部13に予め記憶される、更新前の冷媒系統の系統情報は、更新前の冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52の能力(更新前能力)を含む。制御部12は、記憶部13に記憶される更新前能力に基づいて、更新前の冷媒系統の冷暖房能力を取得し、それに基づいて所定の必要能力を決定する。制御部12は、例えば、所定の必要能力を、更新前の冷媒系統の冷暖房能力と同じ値に決定するか、更新前の冷媒系統の冷暖房能力よりも低い値に設定する。
【0055】
支援部12cは、以下の第1支援処理又は第2支援処理を実行することにより、更新後の冷媒系統の候補に関する情報を提示して、冷媒系統の更新を支援する。支援システム100の利用者は、支援部12cによって提示された冷媒系統の候補の中から、更新後の冷媒系統を選択して、空調システム50の冷媒系統を更新する。
【0056】
支援部12cは、第1支援処理を第2支援処理よりも優先的に実行してもよい。支援部12cは、第1支援処理及び第2支援処理の実現可能性及びコストを考慮して、第1支援処理及び第2支援処理のいずれの処理を実行するのか決定してもよい。
【0057】
支援部12cが第1支援処理又は第2支援処理を実行することで得られた情報は、支援情報13cとして記憶部13に保存される。支援部12cは、支援情報13cを、出力部14を介して出力することで提示する。支援システム100の利用者は、支援部12cが提示した情報に基づいて、空調システム50の冷媒系統を更新する。次に、第1支援処理又は第2支援処理のそれぞれの具体例について説明する。
【0058】
(2-4-1)第1支援処理
第1支援処理を実行する支援部12cは、更新後の冷媒系統の候補に関する情報として、支援システム100の利用者が、更新の際に冷媒系統の構成要素を交換、追加又は除去するために必要な情報を提示する。冷媒系統の構成要素とは、冷媒系統に属する室外ユニット51、室内ユニット52及び冷媒配管53の少なくとも1つである。
【0059】
支援部12cは、更新後の冷媒系統の候補に関する情報に基づいて、更新前の冷媒系統の構成要素の内、更新時に交換、追加又は除去の対象となる構成要素、及び、更新後の冷媒系統の候補の構成要素の内、更新時に交換又は追加の対象となる構成要素、を選定する。その後、支援部12cは、選定した構成要素に関する情報を提示する。
【0060】
支援部12cは、候補となる複数の冷媒系統を、冷媒系統の所定の指標値が高い順に出力してもよい。指標値は、支援システム100の利用者が冷媒系統を選択する際の基準となるパラメータである。指標値は、例えば、冷媒系統の更新に要する費用が少ないほど高くなるパラメータである。支援部12cは、指標値が所定値以上の冷媒系統を選択して、冷媒系統の候補として提示してもよい。冷媒系統の更新に要する費用は、例えば、制御部12により、冷媒系統の系統情報から算出される。
【0061】
次に、支援部12cが、室外ユニット51及び室内ユニット52の少なくとも一部が変更された冷媒系統の候補を提示する処理、及び、冷媒配管53の少なくとも一部が変更された冷媒系統の候補を提示する処理の具体例について説明する。支援部12cは、これらの2つの処理の少なくとも1つを実行する。
【0062】
(2-4-1-1)室外ユニット及び室内ユニットが変更された冷媒系統の候補の提示
支援部12cは、更新前の冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52の少なくとも一部が変更された冷媒系統の候補を、更新後の冷媒系統の候補に関する情報として提示する。候補となる冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52は、例えば、更新前の冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52よりも冷媒使用量が少ない機種である。支援部12cは、記憶部13に記憶される更新前の冷媒系統の系統情報に基づいて、更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量を取得し、許容冷媒量と比較する。支援部12cは、記憶部13に記憶される更新前の冷媒系統の系統情報、及び、更新後の冷媒系統の候補の系統情報に基づいて、冷媒使用量を取得する。
【0063】
支援部12cは、更新前の冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52のどれを変更するべきかに関する情報、及び、更新後の冷媒系統の候補に属する室外ユニット51及び室内ユニット52に関する情報を出力する。例えば、支援部12cは、冷媒系統の候補に属する室外ユニット51及び室内ユニット52の仕様を出力する。支援部12cは、冷媒系統の候補に属する室外ユニット51及び室内ユニット52の費用、及び、室外ユニット51及び室内ユニット52の設置又は置き換えに要する費用をさらに出力してもよい。支援部12cは、記憶部13に記憶される更新後の冷媒系統の系統情報に基づいて、更新後の冷媒系統の候補に属する室外ユニット51及び室内ユニット52に関する情報を取得する。
【0064】
(2-4-1-2)冷媒配管が変更された冷媒系統の候補の提示
支援部12cは、更新前の冷媒系統に属する冷媒配管53の少なくとも一部が変更された冷媒系統の候補を、更新後の冷媒系統の候補に関する情報として提示する。候補となる冷媒系統に属する冷媒配管53は、例えば、更新前の冷媒系統に属する冷媒配管53よりも径が小さい。支援部12cは、記憶部13に記憶される更新前の冷媒系統の系統情報に基づいて、更新前の冷媒系統に充填される冷媒の量を取得し、許容冷媒量と比較する。支援部12cは、記憶部13に記憶される更新前の冷媒系統の系統情報、及び、更新後の冷媒系統の候補の系統情報に基づいて、冷媒配管53の径を取得する。
【0065】
支援部12cは、冷媒配管53を接続する室外ユニット51と室内ユニット52との間の距離が所定値以下である冷媒系統を候補として提示してもよい。
【0066】
また、支援部12cは、更新前の冷媒系統に属する冷媒配管53を、径がより小さい冷媒配管53に置き換えた場合の冷媒配管53の圧損を計算する。そして、支援部12cは、冷媒配管53の圧損を所定値以下に抑える条件で、冷媒配管53を径がより小さいものに置き換えた場合に、冷媒系統の充填冷媒量をどこまで下げることができるのかを算出してもよい。
【0067】
支援部12cは、更新前の冷媒系統に属する冷媒配管53のどれを変更するべきかに関する情報、及び、更新後の冷媒系統の候補に属する冷媒配管53に関する情報を出力する。例えば、支援部12cは、冷媒系統の候補に属する冷媒配管53の径及び長さを出力する。支援部12cは、冷媒配管53の設置又は置き換えに要する費用をさらに出力してもよい。支援部12cは、記憶部13に記憶される更新後の冷媒系統の候補の系統情報に基づいて、更新後の冷媒系統の候補に属する冷媒配管53に関する情報を取得する。
【0068】
(2-4-2)第2支援処理
第2支援処理を実行する支援部12cは、更新後の冷媒系統の候補に関する情報として、支援システム100の利用者が、冷媒系統の接続状態を変更するために必要な情報を提示する。冷媒系統の接続状態とは、冷媒配管53がどの室外ユニット51及びどの室内ユニット52に接続されるのかに関する情報である。冷媒系統の接続状態に関する情報は、系統情報として記憶部13に記憶される。
【0069】
支援部12cは、更新前の一つ又は複数の冷媒系統に関する情報に基づいて、更新後の複数の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示する。支援部12cは、更新後の複数の冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52の性能が確保できるように、更新後の複数の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示する。
【0070】
支援部12cは、更新前のいずれか一つの冷媒系統を複数の冷媒系統に分割する場合、分割前の冷媒系統に属する室内ユニットが分割後の複数の冷媒系統のいずれかに属するように、更新後の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示する。
【0071】
支援部12cは、更新前の複数の冷媒系統のいずれかに属する室内ユニットが、更新後において異なる冷媒系統に属するように、更新後の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示する。
【0072】
支援部12cは、更新後の冷媒系統の接続状態の候補を選定して提示する。支援システム100の利用者は、支援部12cによって提示された接続状態の候補の中から、更新後の冷媒系統の接続状態を選択する。
【0073】
次に、支援部12cが、更新後の冷媒系統の接続状態の候補を提示する処理の2つの具体例について説明する。支援部12cは、これらの2つの処理の少なくとも1つを実行する。
【0074】
(2-4-2-1)冷媒系統の分割処理
冷媒系統に充填される冷媒量が許容冷媒量を超えている場合、冷媒系統には、所定の安全基準要件を満たさない量の冷媒が充填されていることになる。例えば、ISO 5149により規定されるR32の許容冷媒量は59.8kgである。そのため、R32が充填されている冷媒系統に65kgの冷媒が充填されている場合、支援部12cは、冷媒系統に充填される冷媒量は許容冷媒量を超えているので、冷媒系統を分割する必要があると判定する。空調システム50が複数の冷媒系統を有する場合、支援部12cは、各冷媒系統について、冷媒系統を分割する必要があるか否かを判定する。また、支援部12cは、冷媒系統に充填される冷媒量が許容冷媒量に基づく値を超える場合に、冷媒系統を分割する必要があると判定してもよい。例えば、支援部12cは、冷媒系統に充填される冷媒量が許容冷媒量の0.8倍を超える場合に、冷媒系統を分割する必要があると判定してもよい。
【0075】
次に、支援部12cが、更新前の冷媒系統を分割する必要があると判定した場合に、支援部12cが提示する情報の具体例について、
図4(a)及び
図4(b)を参照しながら説明する。
【0076】
図4(a)には、分割前の1つの冷媒系統61aが示されている。
図4(b)には、分割後の2つの冷媒系統61b,61cが示されている。冷媒系統61b,61cは、冷媒系統61aを2つに分割した冷媒系統である。分割前の冷媒系統61aに充填される冷媒量が許容冷媒量を超える場合、支援部12cは、冷媒系統61aを複数の冷媒系統に分割する必要があると判定する。支援部12cは、例えば、分割前の冷媒系統61aに充填される冷媒量及び許容冷媒量に基づいて、冷媒系統61aをいくつに分割する必要があるのかを算出して、算出結果を出力する。例えば、支援部12cは、分割前の冷媒系統61aに充填される冷媒量が許容冷媒量の0.9倍以上1.8倍未満である場合、冷媒系統61aを2つに分割する必要があると出力する。また、支援部12cは、分割前の冷媒系統61aに充填される冷媒量が許容冷媒量の1.8倍以上2.7倍未満である場合、冷媒系統61aを3つに分割する必要があると出力する。
【0077】
支援部12cは、分割後の冷媒系統61b,61cの設計案を提示する。冷媒系統61b,61cの設計案とは、例えば、分割前の冷媒系統61aに属する各室内ユニット52が、分割後の冷媒系統61b,61cのどれに属するのかに関する情報である。この場合、支援部12cは、分割後の冷媒系統のそれぞれに充填される冷媒量を算出する。そして、支援部12cは、分割後の冷媒系統のそれぞれに充填される冷媒量が許容冷媒量以下となるような冷媒系統の接続状態を取得して、冷媒系統61b,61cの設計案として提示する。支援部12cは、分割前及び分割後の冷媒系統の接続状態を示す、
図4(a)及び
図4(b)に示されるようなブロック図を設計案として出力してもよい。支援部12cは、冷媒系統61aの分割に要する費用に関する情報をさらに出力してもよい。
【0078】
支援部12cは、分割後の冷媒系統61b,61cの設計案を複数提示して出力してもよい。この場合、支援システム100の利用者は、支援部12cが提示した複数の設計案の中から、物件1に設置する1つの設計案を選択する。
【0079】
支援部12cは、複数の設計案を、所定の指標値が高い順に出力してもよい。指標値は、支援システム100の利用者が設計案を選択する際の基準となるパラメータである。指標値は、例えば、冷媒系統の分割に要する費用が少ないほど高くなるパラメータである。支援部12cは、指標値が一番高い設計案を自動的に選択して、設計案の候補として提示してもよい。
【0080】
支援部12cは、冷媒系統を複数に分割することで、冷媒系統の接続状態を変更する設計案を提示する場合に、分割後の冷媒系統をさらに分割する必要があるか否かについてさらに判定してもよい。この場合、支援部12cは、例えば、設計案として、再分割後の冷媒系統のブロック図を、出力部14であるディスプレイ上にさらに表示してもよい。
【0081】
支援部12cは、冷媒系統を複数に分割することで、冷媒系統の接続状態を変更する設計案を提示する場合に、分割後の冷媒系統の能力が実質的に均等になるような設計案を提示することが好ましい。この場合、支援部12cは、分割前の冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52に関する情報に基づいて、分割対象の冷媒系統に属する室外ユニット51及び室内ユニット52の能力(馬力)及び数を取得する。支援部12cは、これらの情報に基づいて、例えば、分割後の冷媒系統の能力が同程度になるように、冷媒系統の接続状態を変更する設計案を提示する。
【0082】
(2-4-2-2)冷媒系統の変更処理
支援部12cは、更新前の冷媒系統が複数存在する場合、各冷媒系統に充填される冷媒量が許容冷媒量を超えているか否かを判定する。支援部12cは、更新前のいずれかの冷媒系統に充填される冷媒量が許容冷媒量を超えている場合、冷媒系統の変更が必要であると判定する。具体的には、支援部12cは、充填される冷媒量が許容冷媒量を超えている冷媒系統に属する室内ユニット52が別の冷媒系統に属するように、更新後の冷媒系統の接続状態の候補を提示する。
【0083】
次に、支援部12cが、更新前の冷媒系統を変更する必要があると判定した場合に、支援部12cが提示する情報の具体例について、
図5(a)及び
図5(b)を参照しながら説明する。
【0084】
図5(a)には、変更前の2つの冷媒系統62a,62bが示されている。
図5(b)には、変更後の2つの冷媒系統62c,62dが示されている。変更前の冷媒系統62aに充填される冷媒量が許容冷媒量を超えており、かつ、変更前の冷媒系統62bに充填される冷媒量が許容冷媒量を超えていないと判定したとする。この場合、支援部12cは、冷媒系統62aに属する室内ユニット52の一部が冷媒系統62bに属すると仮定した場合における、仮の冷媒系統62a,62bの充填冷媒量を算出する。そして、支援部12cは、充填される冷媒量が許容冷媒量以下となるような仮の冷媒系統62a,62bの接続状態を取得して、変更後の冷媒系統62c,62dの設計案として提示する。支援部12cは、変更前及び変更後の冷媒系統の接続状態を示す、
図5(a)及び
図5(b)に示されるようなブロック図を設計案として出力してもよい。支援部12cは、冷媒系統62a,62bの変更に要する費用に関する情報をさらに出力してもよい。
【0085】
支援部12cは、変更後の冷媒系統62c,62dの設計案を複数提示して出力してもよい。この場合、支援システム100の利用者は、支援部12cが提示した複数の設計案の中から、物件1に設置する1つの設計案を選択する。
【0086】
支援部12cは、複数の設計案を、所定の指標値が高い順に出力してもよい。指標値は、支援システム100の利用者が設計案を選択する際の基準となるパラメータである。指標値は、例えば、冷媒系統の変更に要する費用が少ないほど高くなるパラメータである。支援部12cは、指標値が一番高い設計案を自動的に選択して、設計案の候補として提示してもよい。
【0087】
(3)特徴
(3-1)
支援システム100は、物件1に設置される空調システム50の冷媒系統の更新を支援する。支援システム100の支援部12cは、更新前の冷媒系統に充填される冷媒量が許容冷媒量を超えている場合に、第1支援処理又は第2支援処理を実行して、更新後の冷媒系統の候補に関する情報を提示する。
【0088】
第1支援処理を実行する支援部12cは、所定の安全基準要件を満たす冷媒系統として、算出部12aが算出した充填冷媒量が、第1取得部12bが取得した許容冷媒量を超えない冷媒系統の候補を出力する。
【0089】
第2支援処理を実行する支援部12cは、充填される冷媒量が許容冷媒量を超えるため所定の安全基準要件を満たさない冷媒系統が空調システム50に存在する場合、当該冷媒系統を分割又は変更する必要があると判定し、分割又は変更後の冷媒系統の候補に関する情報を出力する。
【0090】
これにより、支援システム100の利用者は、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、更新後の冷媒系統の最適な設計を容易に行うことができる。
【0091】
(3-2)
支援システム100において、支援部12cは、所定の安全基準要件を満たす更新後の冷媒系統の複数の候補に関する情報を、出力部14であるディスプレイ上に表示する。支援システム100の利用者は、ディスプレイ上に表示された複数の候補の中から、設置に要する費用が一番少ない冷媒系統を、物件1に設置する1つの冷媒系統として選択する。これにより、支援システム100の利用者は、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、更新後の冷媒系統の最適な設計を容易に行うことができる。
【0092】
(3-3)
支援システム100において、第1支援処理を実行する支援部12cは、冷媒系統の候補に関する情報として、更新の際に冷媒系統に属する室外ユニット51、室内ユニット52及び冷媒配管53の少なくとも1つを交換、追加又は除去するために必要な情報を提示する。支援部12cは、更新前の冷媒系統の構成要素の内、交換、追加又は除去の対象となる構成要素、及び、更新後の冷媒系統の候補の構成要素の内、交換又は追加の対象となる構成要素に関する情報を提示する。
【0093】
支援部12cは、例えば、変更前及び変更後の室外ユニット51及び室内ユニット52の機種を、出力部14であるディスプレイ上に表示する。支援システム100の利用者は、ディスプレイ上に表示された情報に基づいて、変更対象の室外ユニット51及び室内ユニット52を容量がより小さい機種と交換する作業を行うことで、冷媒系統を更新する。
【0094】
支援部12cは、例えば、変更前及び変更後の冷媒配管53の径を、出力部14であるディスプレイ上に表示する。支援システム100の利用者は、ディスプレイ上に表示された情報に基づいて、変更対象の冷媒配管53を径がより小さい冷媒配管53に交換する作業を行うことで、冷媒系統を更新する。
【0095】
これにより、支援システム100の利用者は、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、更新後の各冷媒系統の能力を維持しつつ、一系統当たりの充填冷媒量を低減できる。
【0096】
(3-4)
支援システム100において、第2支援処理を実行する支援部12cは、冷媒系統の候補に関する情報として、分割後の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示する。冷媒系統の接続状態に関する情報は、各冷媒配管53がどの室外ユニット51及びどの室内ユニット52に接続されるのかに関する情報を含む。
【0097】
支援部12cは、例えば、
図4(a)及び
図4(b)に示されるようなブロック図を、出力部14であるディスプレイ上に表示する。支援システム100の利用者は、ディスプレイ上に表示された情報に基づいて、分割対象の冷媒系統に属する冷媒配管53を繋ぎ変える作業を行うことで、空調システム50の冷媒系統を分割して冷媒系統を更新する。これにより、支援システム100の利用者は、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、更新後の各冷媒系統の能力を維持しつつ、一系統当たりの充填冷媒量を低減できる。
【0098】
(3-5)
支援システム100において、第2支援処理を実行する支援部12cは、冷媒系統の候補に関する情報として、変更後の冷媒系統の接続状態に関する情報を提示する。冷媒系統の接続状態に関する情報は、各冷媒配管53がどの室外ユニット51及びどの室内ユニット52に接続されるのかに関する情報を含む。
【0099】
支援部12cは、例えば、
図5(a)及び
図5(b)に示されるようなブロック図を、出力部14であるディスプレイ上に表示する。支援システム100の利用者は、ディスプレイ上に表示された情報に基づいて、変更対象の冷媒系統に属する冷媒配管53を繋ぎ変える作業を行うことで、空調システム50の冷媒系統を変更して冷媒系統を更新する。これにより、支援システム100の利用者は、1つの冷媒系統に封入できる冷媒の量に関する規制を考慮に入れて、更新後の各冷媒系統の能力を維持しつつ、一系統当たりの充填冷媒量を低減できる。
【0100】
(4)変形例
(4-1)変形例A
支援システム100の制御部12は、
図6に示されるように、第2取得部12dと、第2判定部12eと、をさらに実行してもよい。
【0101】
第2取得部12dは、滞留許容量(第2量)を取得する。滞留許容量とは、更新後の冷媒系統に属する室内ユニット52及び冷媒配管53から冷媒が部屋に漏洩した場合に当該部屋において滞留が許容される冷媒の最大量である。滞留許容量Vは、キログラム単位で算出されて記憶される。
【0102】
第2判定部12eは、第2取得部12dが取得した滞留許容量に基づいて、冷媒系統の更新内容を見直す必要があるか否かを判定する。第2判定部12eは、算出部12aが算出した充填冷媒量が滞留許容量を超えているか否かを判定する。第2判定部12eは、算出部12aが算出した充填冷媒量が滞留許容量を超えている場合、滞留許容量を超えない充填冷媒量が算出されるように、冷媒系統の更新内容を見直す必要があると判定する。この場合、算出部12aは、前回とは異なる方法で充填冷媒量を算出し直す。第2判定部12eは、算出部12aが算出した充填冷媒量が滞留許容量を超えていない場合、冷媒系統の更新内容を見直す必要がないので、算出部12aが算出した充填冷媒量に基づいて冷媒系統の更新を支援できると判定する。
【0103】
支援部12cは、算出部12aが算出した充填冷媒量が滞留許容量を超えていないと第2判定部12eが判定した場合に、算出部12aが算出した充填冷媒量、及び、第2取得部12dが取得した滞留許容量に基づいて、冷媒系統の更新を支援する。具体的には、支援部12cは、更新前冷媒量が滞留許容量を超えている冷媒系統の分割又は変更、及び、当該冷媒系統への安全装置の設置の少なくとも一方に必要な情報を提示して、冷媒系統の更新を支援する。安全装置は、例えば、物件1の部屋3に設置される室内ユニット52及び冷媒配管53から冷媒が漏洩した場合において、漏洩した冷媒を物件1の外に排出するための換気装置である。安全装置は、部屋3で冷媒が漏洩したことを検知するためのセンサであってもよい。冷媒系統の分割又は変更に必要な情報を提示する場合、支援部12cは、上述の第2支援処理を行う。安全装置の設置に必要な情報を提示する場合、支援部12cは、例えば、安全装置に関する情報、安全装置の設置位置に関する情報、及び、安全装置の設置に要する費用に関する情報を出力する。
【0104】
本変形例では、支援システム100の利用者は、冷媒系統に安全装置を設置することで、冷媒系統を分割又は変更することなく所定の安全基準要件を満たす冷媒系統の最適な設計を容易に行うことができる。
【0105】
また、支援システム100は、第2支援処理によって冷媒系統を分割又は変更するために要する費用と、冷媒系統に安全装置を設置するために必要な費用とを比較する情報を出力してもよい。この場合、支援システム100の利用者は、冷媒系統の分割又は変更、及び、安全装置の設置のうち、費用がより少ない方を採用して、冷媒系統の変更を行うことができる。
【0106】
支援部12cは、第1判定部12f及び第2判定部12eの両方の判定結果に基づいて、冷媒系統の更新を支援してもよい。具体的には、支援部12cは、算出部12aが算出した充填冷媒量が許容冷媒量を超えていないと第1判定部12fが判定し、かつ、算出部12aが算出した充填冷媒量が滞留許容量を超えていないと第2判定部12eが判定した場合に、冷媒系統の更新を支援してもよい。この場合、第1判定部12f又は第2判定部12eが、算出部12aが算出した充填冷媒量が許容冷媒量又は滞留許容量を超えると判定した場合、冷媒系統の更新内容が見直される。
【0107】
(4-2)変形例B
変形例Aにおいて、第2取得部12dは、部屋3の滞留許容量Vを、以下の式(I)に基づいて算出してもよい。
V=k×L×h×S (I)
【0108】
式(I)において、変数kは、空調システム50が使用する冷媒の燃焼性に基づく、無次元の値である。例えば、冷媒が可燃性である場合、kは0.25に設定され、冷媒が不燃性である場合、kは0.50に設定される。可燃性の冷媒は、例えば、R32である。不燃性の冷媒は、例えば、二酸化炭素である。変数kは、記憶部13に予め保存される。
【0109】
式(I)において、変数Lは、空調システム50が使用する冷媒の燃焼下限界である。変数Lは、無次元の値である。冷媒の燃焼下限界は、記憶部13に予め保存される。
【0110】
式(I)において、変数hは、部屋3の漏洩高さ(m)である。部屋3の漏洩高さとは、部屋3において空調システム50から冷媒が漏洩し得る高さ位置である。部屋3の漏洩高さは、部屋3の床の高さ位置を基準とする位置である。部屋3の漏洩高さは、部屋3に設置される室内ユニット52のタイプに応じて異なる。例えば、部屋3の天井に埋め込まれるタイプの室内ユニット52の場合、部屋3の漏洩高さは、部屋3の天井の高さ位置である。また、部屋3の壁に取り付けられるタイプの室内ユニット52の場合、部屋3の漏洩高さは、室内ユニット52の吹き出し口の高さ位置である。部屋3の漏洩高さは、部屋3の寸法、及び、部屋3に設置される室内ユニット52のタイプに応じて、所定の値が予め設定されてもよい。部屋3の漏洩高さhは、記憶部13に予め保存される。
【0111】
式(I)において、変数Sは、部屋3の床面積(m2)である。床面積とは、部屋3の空間形状を柱体と見なした場合に、当該柱体の底面の面積である。ここで、柱体とは、四角柱及び円柱等である。制御部12は、部屋3の内部空間に関する部屋空間情報を外部から取り込み、当該部屋空間情報に基づいて部屋3の床面積を取得する。記憶部13は、制御部12が取得した床面積を記憶する。部屋空間情報は、例えば、部屋3の図面データ、外部入力装置20であるイメージスキャナを用いて部屋3の印刷された図面をスキャンした画像データ、及び、外部入力装置20であるカメラを用いて部屋3の内部の様子を撮影して取得した画像データ、である。部屋空間情報、又は、部屋3の床面積Sは、記憶部13に予め保存される。
【0112】
支援部12cは、冷媒系統に充填される冷媒量が、式(I)によって算出される滞留許容量よりも多い場合に、冷媒系統を分割又は変更するか、又は、冷媒系統に安全装置を設置する必要があると判定する。これにより、支援システム100の利用者は、冷媒系統に充填される冷媒の性質に応じて、部屋3に冷媒が漏洩した場合における安全基準要件を満たすために、冷媒系統を分割又は変更するか、又は、冷媒系統に安全装置を設置するかを適切に決定することができる。特に、支援システム100は、R32等の可燃性冷媒が部屋3に漏洩した場合における安全基準要件を満たすために有用である。
【0113】
(4-3)変形例C
支援システム100において、第2支援処理を実行する支援部12cは、更新前の冷媒系統の分割が必要であると判定した場合、更新後の冷媒系統の接続状態の候補を提示する。次に、冷媒系統の分割の具体例について説明する。
【0114】
図7(a)は、冷媒系統の一例である。
図7(b)は、第2支援処理の実行により
図7(a)の冷媒系統を分割して生成される冷媒系統の一例である。
図7(a)では、1つの部屋3で1つの冷媒系統S1が用いられる。冷媒系統S1は、1台の室外ユニット51aと4台の室内ユニット52a~52dとを有する。4台の室内ユニット52a~52dは、同一の部屋3に設置される。
【0115】
図7(a)の冷媒系統S1に充填される冷媒量が許容冷媒量を超えるため、
図7(b)に示されるように冷媒系統が分割される。
図7(b)では、1つの部屋3で2つの冷媒系統S1a,S1bが用いられる。冷媒系統S1aは、1台の室外ユニット51aと2台の室内ユニット52a,52bとを有する。冷媒系統S1bは、1台の室外ユニット51bと2台の室内ユニット52c,52dとを有する。この場合、室外ユニット51bは、新規に設置される。
【0116】
図7(b)に示される例では、2つの冷媒系統S1a,S1bの負荷ができるだけ均等になることが好ましい。具体的には、分割後の冷媒系統S1a,S1bのそれぞれの負荷が、分割前の冷媒系統S1の半分となるように、冷媒系統が分割されることが好ましい。
【0117】
(4-4)変形例D
支援システム100において、第2支援処理を実行する支援部12cは、更新前の冷媒系統の変更が必要であると判定した場合、更新後の冷媒系統の接続状態の候補を提示する。
【0118】
本変形例では、複数の冷媒系統に属する複数の室内ユニット52が、複数の部屋に亘って設置される。また、第1の冷媒系統に属する複数の室内ユニット52の一部が、第2の冷媒系統に属するように、冷媒系統が変更される。この場合、支援部12cは、第2の冷媒系統が、第1の冷媒系統よりも、属する室内ユニット52の数、又は、充填される冷媒の量がより少なくなるように、更新後の冷媒系統の接続状態の候補を提示する。次に、冷媒系統の変更の具体例について説明する。
【0119】
図8(a)は、冷媒系統の一例である。
図8(b)は、第2支援処理の実行により
図8(a)の冷媒系統を変更して生成される冷媒系統の一例である。
図8(a)では、3つの部屋3a~3cで2つの冷媒系統S1a,S1bが用いられる。冷媒系統S1aは、1台の室外ユニット51aと4台の室内ユニット52a~52dとを有する。冷媒系統S1bは、1台の室外ユニット51bと1台の室内ユニット52eとを有する。室内ユニット52a~52cは、部屋3aに設置される。室内ユニット52dは、部屋3bに設置される。室内ユニット52eは、部屋3cに設置される。部屋3a~3cの容量は、部屋3aが最も大きく、部屋3bが最も小さい。
【0120】
図8(a)において、冷媒系統S1aに充填される冷媒量は、部屋3aの滞留許容量を超えておらず、かつ、部屋3bの滞留許容量を超えているとする。また、
図8(a)において、冷媒系統S1bに充填される冷媒量は、部屋3cの滞留許容量を超えていないとする。この場合、冷媒系統S1aから部屋3bに冷媒が漏洩すると、部屋3bに漏洩した冷媒の量は、部屋3bの滞留許容量を超えるおそれがあるため、冷媒系統S1aは、冷媒が漏洩した場合における安全基準要件を満たさない。また、冷媒系統S1bは、安全基準要件を満たす。
【0121】
この場合、冷媒系統S1aの安全基準要件が満たされるようにするため、
図8(a)に示される状態から、
図8(b)に示される状態に冷媒系統が変更される。具体的には、部屋3bに設置される室内ユニット52dが属する冷媒系統が、冷媒系統S1aから冷媒系統S1bに変更される。冷媒系統の変更後において、冷媒系統S1aは、3台の室内ユニット52a~52cを有し、冷媒系統S1bは、2台の室内ユニット52d~52eを有する。
【0122】
図8(b)において、冷媒系統S1bに属する室内ユニット52の数は、冷媒系統S1aに属する室内ユニット52の数より少ないため、冷媒系統S1bに充填される冷媒量は、冷媒系統S1aに充填される冷媒量より少ない。そのため、冷媒系統S1bから部屋3bに漏洩した冷媒の量が、部屋3bの滞留許容量を超えない場合、部屋3cの滞留許容量も超えないので、冷媒系統S1bは、冷媒が漏洩した場合における安全基準要件を満たす。また、冷媒系統S1aは、安全基準要件を満たす。
【0123】
図8(b)に示される例では、2つの冷媒系統S1a,S1bの負荷ができるだけ均等になることが好ましい。また、
図8(a)の冷媒系統S1aのように、複数の室内ユニット52が複数の部屋3a~3cに分かれて設置され、かつ、各部屋3a~3cにおける室内ユニット52の設置台数が異なる場合、冷媒系統の変更に要するコストを抑えるため、最も設置台数が少ない部屋に設置される室内ユニット52が属する冷媒系統を変更する。冷媒系統の変更に要するコストは、例えば、冷媒配管53の引き直しに要するコストを含む。
【0124】
また、各部屋3a~3cにおける室内ユニット52の設置台数が全て同じである場合、例えば、床面積又は容量が小さい部屋3a~3cに設置される室内ユニット52が属する冷媒系統を優先的に変更する。これにより、冷媒が漏洩した場合における安全基準要件を満たさなくなるリスクが高い部屋に設置される室内ユニット52が属する冷媒系統を優先的に変更される。
【0125】
また、室内ユニット52が属する冷媒系統を変更する場合、複数の室内ユニット52が設置される複数の部屋3a~3cの配置や容積、及び、冷媒配管53の敷設位置に基づいて、冷媒系統の変更に要するコストが最小となるように室内ユニット52が属する冷媒系統を決定することが好ましい。
【0126】
なお、変更後の冷媒系統が、冷媒が漏洩した場合における安全基準要件を依然として満たさない場合、変形例Cのように、変更後の冷媒系統を分割してもよい。
図8(b)の場合、変更後の冷媒系統S1bに充填される冷媒量が部屋3bの滞留許容量を超える場合、室内ユニット52dが新規の冷媒系統に属するように、冷媒系統S1bを分割してもよい。この場合、新規の冷媒系統に充填される冷媒量は、部屋3bの滞留許容量を超えない。
【0127】
(4-5)変形例E
支援システム100の利用者は、支援部12cによって提示された情報に基づいて、冷媒系統に属する室外ユニット51、室内ユニット52及び冷媒配管53等の機器の種類を決定することができる。支援システム100は、さらに、利用者によって決定された機器を自動的に発注する機能を有してもよい。この場合、例えば、支援システム100は、ネットワークを介して、空調システム50の機器を発注するためのシステム及びウェブサイト等に接続される。
【0128】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0129】
12 :制御部
12a :算出部
12b :第1取得部
12f :第1判定部
12c :支援部
12d :第2取得部
12e :第2判定部
51 :室外ユニット
52 :室内ユニット
53 :冷媒配管
100 :支援システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0130】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外ユニット(51)、室内ユニット(52)、及び、前記室外ユニットと前記室内ユニットとを接続する冷媒配管(53)が属する冷媒系統の更新を支援する、制御部(12)を備える支援システムであって、
前記制御部は、
更新前の前記冷媒系統に属する前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記冷媒配管の少なくとも1つに関する情報に基づいて、更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の量である第1量を算出し、
更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量、又は、更新後の前記冷媒系統に属する前記室内ユニット及び前記冷媒配管から冷媒が部屋に漏洩した場合に前記部屋において滞留が許容される冷媒の最大量である第2量を取得し、
算出した前記第1量が、取得した前記第2量を超えない前記冷媒系統に関する情報を、更新後の前記冷媒系統に関する情報として提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記制御部は、更新前の前記冷媒系統を複数に分割する場合、分割前の前記冷媒系統に属する前記室内ユニットが分割後の複数の前記冷媒系統のいずれかに属するように、更新後の前記冷媒系統の接続状態に関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記接続状態に関する情報は、前記冷媒配管がどの前記室外ユニット及びどの前記室内ユニットに接続されるのかに関する情報を含む、
支援システム(100)。
【請求項2】
室外ユニット(51)、室内ユニット(52)、及び、前記室外ユニットと前記室内ユニットとを接続する冷媒配管(53)が属する冷媒系統の更新を支援する、制御部(12)を備える支援システムであって、
前記制御部は、
更新前の前記冷媒系統に属する前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記冷媒配管の少なくとも1つに関する情報に基づいて、更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の量である第1量を算出し、
更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量、又は、更新後の前記冷媒系統に属する前記室内ユニット及び前記冷媒配管から冷媒が部屋に漏洩した場合に前記部屋において滞留が許容される冷媒の最大量である第2量を取得し、
算出した前記第1量が、取得した前記第2量を超えない前記冷媒系統に関する情報を、更新後の前記冷媒系統に関する情報として提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記制御部は、更新前の複数の前記冷媒系統のいずれかに属する前記室内ユニットが、更新後において異なる前記冷媒系統に属するように、更新後の前記冷媒系統の接続状態に関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記接続状態に関する情報は、前記冷媒配管がどの前記室外ユニット及びどの前記室内ユニットに接続されるのかに関する情報を含む、
支援システム(100)。
【請求項3】
前記制御部は、更新前の複数の前記冷媒系統のいずれかの第1の冷媒系統に属する複数の前記室内ユニットが複数の部屋に亘って配置される場合に、前記複数の部屋の一部に配置される前記室内ユニットが、更新後において前記第1の冷媒系統と異なる第2の冷媒系統に属するように、更新後の前記冷媒系統の前記接続状態に関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記制御部は、前記第2の冷媒系統が、前記第1の冷媒系統よりも、属する前記室内ユニットの数、又は、充填される冷媒の量が、より少なくなるように、更新後の前記冷媒系統の前記接続状態に関する情報を提示する、
請求項2に記載の支援システム。
【請求項4】
前記制御部は、算出した前記第1量が、取得した前記第2量を超えない前記冷媒系統であって、更新前の前記冷媒系統の能力に基づく所定の能力を少なくとも有する前記冷媒系統に関する情報を、更新後の前記冷媒系統に関する情報として提示することで、前記冷媒系統の更新を支援する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の支援システム。
【請求項5】
前記制御部は、更新後の前記冷媒系統に属する前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記冷媒配管の少なくとも1つに関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の支援システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記冷媒系統に充填される冷媒の燃焼下限界を取得し、
取得した冷媒の燃焼下限界に基づいて、前記冷媒系統に安全装置を設置する必要があるか否かを判定し、
判定結果に基づいて、前記冷媒系統の更新を支援する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の支援システム。
【請求項7】
室外ユニット(51)、室内ユニット(52)、及び、前記室外ユニットと前記室内ユニットとを接続する冷媒配管(53)が属する冷媒系統の更新を支援する支援方法であって、
更新前の前記冷媒系統に属する前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記冷媒配管の少なくとも1つに関する情報に基づいて、更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の量である第1量を算出するステップと、
更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量、又は、更新後の前記冷媒系統に属する前記室内ユニット及び前記冷媒配管から冷媒が部屋に漏洩した場合に前記部屋において滞留が許容される冷媒の最大量である第2量を取得するステップと、
算出した前記第1量が、取得した前記第2量を超えない前記冷媒系統に関する情報を、更新後の前記冷媒系統に関する情報として提示することで、前記冷媒系統の更新を支援するステップと、
を実行し、
更新前の前記冷媒系統を複数に分割する場合、分割前の前記冷媒系統に属する前記室内ユニットが分割後の複数の前記冷媒系統のいずれかに属するように、更新後の前記冷媒系統の接続状態に関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記接続状態に関する情報は、前記冷媒配管がどの前記室外ユニット及びどの前記室内ユニットに接続されるのかに関する情報を含む、
支援方法。
【請求項8】
室外ユニット(51)、室内ユニット(52)、及び、前記室外ユニットと前記室内ユニットとを接続する冷媒配管(53)が属する冷媒系統の更新を支援する支援方法であって、
更新前の前記冷媒系統に属する前記室外ユニット、前記室内ユニット及び前記冷媒配管の少なくとも1つに関する情報に基づいて、更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の量である第1量を算出するステップと、
更新後の前記冷媒系統に充填される冷媒の最大許容量、又は、更新後の前記冷媒系統に属する前記室内ユニット及び前記冷媒配管から冷媒が部屋に漏洩した場合に前記部屋において滞留が許容される冷媒の最大量である第2量を取得するステップと、
算出した前記第1量が、取得した前記第2量を超えない前記冷媒系統に関する情報を、更新後の前記冷媒系統に関する情報として提示することで、前記冷媒系統の更新を支援するステップと、
を実行し、
更新前の複数の前記冷媒系統のいずれかに属する前記室内ユニットが、更新後において異なる前記冷媒系統に属するように、更新後の前記冷媒系統の接続状態に関する情報を提示することで、前記冷媒系統の更新を支援し、
前記接続状態に関する情報は、前記冷媒配管がどの前記室外ユニット及びどの前記室内ユニットに接続されるのかに関する情報を含む、
支援方法。