(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097327
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】揺動発電装置及び蓄電方法
(51)【国際特許分類】
F03B 13/16 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
F03B13/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071080
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2022177959の分割
【原出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】523361334
【氏名又は名称】Yellow Duck株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】中山 繁生
(57)【要約】
【課題】第2支持体の振り子運動をその両方向において発電に活用し、効率の良い発電する波力発電装置及び波力発電方法を提供する。
【解決手段】水平方向に設けられる回動軸20と、前記回動軸から垂下されて振り子運動をする第2支持体30と、前記第2支持体にバネ32で支持されて前記第2支持体の振り子運動による遠心力で前記第2支持体に沿って往復運動をする発電用錘33と、前記発電用錘の往復運動によって発電する発電機構40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持体に水平方向に設けられる回動軸と、
前記回動軸から垂下されて振り子運動をする第2支持体と、
前記第2支持体にバネで支持されて前記第2支持体の振り子運動による遠心力で前記第2支持体に沿って往復運動をする発電用錘と、
前記発電用錘の往復運動によって発電する発電機構と、
を備えることを特徴とする揺動発電装置。
【請求項2】
前記発電機構が、前記発電用錘の往復運動を回転運動に変換するために、
前記第2支持体又は前記発電用錘の一方に設けられ、同軸上に配置され回転方向が互いに逆になる2つのピニオンギヤと、
前記第2支持体又は前記発電用錘の他方に設けられ、前記ピニオンギヤに対応する2つのラックギヤと、
2つの前記ピニオンギヤから1方向の回転運動を取り出すワンウェイクラッチと、
前記ワンウェイクラッチの出力軸に接続される発電機と、
を備える請求項1に記載の揺動発電装置。
【請求項3】
前記第1支持体の軸が上下方向になるように配置され、
前記第1支持体をその軸を中心に回動可能にするために、前記第1支持体に方向調整用軸受を備える請求項1又は2に記載の揺動発電装置。
【請求項4】
前記回動軸の高さを前記第1支持体に対して調整可能にする重心調整機構を備える請求項3に記載の揺動発電装置。
【請求項5】
前記バネと前記発電用錘の高さを前記第2支持体に対して調整可能にする振動周期調整機構を備える請求項1又は2に記載の揺動発電装置。
【請求項6】
前記発電用錘に当接させて前記第2支持体の振り子運動を制限する振動抑制機構を備える請求項1又は2に記載の揺動発電装置。
【請求項7】
前記振動抑制機構が、前記発電用錘に当接されて回転する制動輪、及び前記制動輪の回転によって発電する補助発電機を備える請求項6に記載の揺動発電装置。
【請求項8】
前記回動軸に設置されて風の向きによって回動可能な風向調整軸、及び前記風向調整軸に取付けられて風を受ける風受板を備える風受部を備える請求項1又は2に記載の揺動発電装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の揺動発電装置を用いる蓄電方法であって、
余剰電力が発生したとき、アクチュエータによって前記回動軸を回動させて前記第2支持体を持ち上げておき、
電力を外部に供給するとき、前記アクチュエータと前記回動軸とを切り離し、前記第2支持体の振り子運動で発電することを特徴とする蓄電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然エネルギーを利用して発電をする揺動発電装置及び前記揺動発電装置を用いる蓄電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波浪を利用して発電することを目的として、実開昭60-159886号公報に、球体の内部に振り子を設け、振り子の振動をラチェットを介して弾み車に伝え、発電する波浪発電機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている発電機では、ラチェットを用いており振り子運動の一方向しか電力に変換することができなかった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、第2支持体の振り子運動(以下、振り子運動を「振動」と称することがある。)をその両方向において発電に活用し、効率の良い発電をする揺動発電装置及び蓄電方法を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、第2支持体を支持する回動軸に負荷を設けないことで、第2支持体の振動を継続させやすくして、発電量の変動が少なくなる揺動発電装置及び蓄電方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の揺動発電装置は、
第1支持体に水平方向に設けられる回動軸と、
前記回動軸から垂下されて振り子運動をする第2支持体と、
前記第2支持体にバネで支持されて前記第2支持体の振り子運動による遠心力で前記第2支持体に沿って往復運動をする発電用錘と、
前記発電用錘の往復運動によって発電する発電機構と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の揺動発電装置によれば、第2支持体の振動による遠心力で、第2支持体に沿って往復運動をする発電用錘によって発電をする。このため、振動の往復である両方向において発電することができる。また、第2支持体を支持する回動軸に負荷となるものがない。このため、第2支持体の振動が開始しやすくなるとともに継続しやすくなり、発電量の変化を少なくすることができる。
【0008】
本発明の揺動発電装置の好ましい例は、
前記発電機構が、前記発電用錘の往復運動を回転運動に変換するために、
前記第2支持体又は前記発電用錘の一方に設けられ、同軸上に配置され回転方向が互いに逆になる2つのピニオンギヤと、
前記第2支持体又は前記発電用錘の他方に設けられ、前記ピニオンギヤに対応する2つのラックギヤと、
2つの前記ピニオンギヤから1方向の回転運動を取り出すワンウェイクラッチと、
前記ワンウェイクラッチの出力軸に接続される発電機と、
を備える。
【0009】
本発明の揺動発電装置の好ましい例によれば、発電用錘の往復運動の双方向において発電することが可能となり、高効率な揺動発電装置とすることができる。
【0010】
本発明の揺動発電装置の好ましい例は、
前記第1支持体の軸が上下方向になるように配置され、
前記第1支持体をその軸を中心に回動可能にするために、前記第1支持体に方向調整用軸受を備える。
【0011】
本発明の揺動発電装置の好ましい例によれば、方向調整用軸受によって第1支持体が回動可能にされ、第1支持体に設けられている回動軸の向きも変わる。これにより、自然エネルギーの向かってくる方向に対して回動軸を直交させることができ、第2支持体を効率的に振動させることができる。
【0012】
本発明の揺動発電装置の好ましい例は、
前記回動軸の高さを前記第1支持体に対して調整可能にする重心調整機構を備える。
【0013】
本発明の揺動発電装置の好ましい例によれば、重心調整機構によって揺動発電装置全体の重心位置を変更することができる。これにより、例えば水に浮かべられる浮体に本発明の揺動発電装置を設けたときに、波の大きさ等による環境の変化に対して、最適な重心位置とすることができる。
【0014】
本発明の揺動発電装置の好ましい例は、
前記バネと前記発電用錘の高さを前記第2支持体に対して調整可能にする振動周期調整機構を備える。
【0015】
本発明の揺動発電装置の好ましい例によれば、振動周期調整機構によって、第2支持体の振動周期を調整することができる。これにより、周囲の変化する環境に合わせることができ、より効率の良い発電をすることができる。
【0016】
本発明の揺動発電装置の好ましい例は、
前記発電用錘に当接させて前記第2支持体の振り子運動を制限する振動抑制機構を備える。
【0017】
本発明の揺動発電装置の好ましい例によれば、振動抑制機構により第2支持体の振動を制限できるため、悪天候時等における揺動発電装置の破損を防止できる。
【0018】
本発明の揺動発電装置の好ましい例は、
前記振動抑制機構が、前記発電用錘に当接されて回転する制動輪、及び前記制動輪の回転によって発電する補助発電機を備える。
【0019】
本発明の揺動発電装置の好ましい例によれば、振動抑制機構によっても発電が可能なため、装置の破損を防止しつつ、悪天候時にも発電を継続させることができる。
【0020】
本発明の揺動発電装置の好ましい例は、
前記回動軸に設置されて風の向きによって回動可能な風向調整軸、及び前記風向調整軸に取付けられて風を受ける風受板を備える風受部を備える。
【0021】
本発明の揺動発電装置の好ましい例によれば、風によっても発電することができ、自然エネルギーをより効率的に利用することができる。
【0022】
本発明の蓄電方法は、
請求項1又は2に記載の揺動発電装置を用いる蓄電方法であって、
余剰電力が発生したとき、アクチュエータによって前記回動軸を回動させて前記第2支持体を持ち上げておき、
電力を外部に供給するとき、前記アクチュエータと前記回動軸とを切り離し、前記第2支持体の振り子運動で発電することを特徴とする。
【0023】
本発明の蓄電方法によれば、上記の揺動発電装置の特徴を備えつつ、容易に蓄電が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
上述したように、本発明の揺動発電装置及び蓄電方法によれば、第2支持体の振動をその両方向において発電に活用し、効率の良い発電をすることができる。また、別の効果として、第2支持体を支持する回動軸に負荷を設けないことで、第2支持体の振動を継続させやすくして、発電量の変動が少なくなる揺動発電装置及び蓄電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る揺動発電装置の正面断面図である。
【
図3】第2支持体が振動している状態を説明する図である。
【
図4】第2支持体の振動と発電用錘の往復運動を説明する図である。
【
図5】
図1のA-A線を模式的に表わした拡大断面図である。
【
図10】他の実施形態に係る揺動発電装置を説明する平面図と側面図である。
【
図11】他の実施形態に係る揺動発電装置を説明する平面図である。
【
図12】他の実施形態に係る揺動発電装置を説明する平面図と側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る揺動発電装置及び蓄電方法の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、先に揺動発電装置の実施形態を説明する。また、第1実施形態と第2実施形態は、本発明の揺動発電装置を波力を利用する装置に組み込んで使用している。
【0027】
[第1実施形態]
図1及び
図2に示すように、本実施形態の揺動発電装置1は、浮体2と、第1支持体10と、回動軸20と、第2支持体30と、発電用錘33と、発電機構40(
図5参照)と、振動抑制機構50と、図示しない制御部、制御用バッテリ、及び蓄電用バッテリを備える。
【0028】
浮体2は、その中が中空状にされて水面Wに浮かべられるものである。この浮体2の形状は略卵形をなしており、その中に各構成要素が収められている。本実施形態では、卵形をなす浮体2のうち、尖った鋭端部3が上を向いて水面Wから突出され、丸い鈍端部4が下を向いて水中にある。また、鈍端部4の内部には、浮体2の姿勢を保つための下部錘5が適宜設けられる。
【0029】
第1支持体10は、浮体2の中にその軸が上下方向になるように設けられるもので、本実施形態では1本の柱からなる上柱部11と下柱部12、及び正面視で縦長の略ロ字状をなす中間柱部13と、方向調整用軸受14a,14bとを備える。上柱部11と下柱部12は、その端部が方向調整用軸受14a,14bによって支持されている。このため、第1支持体10はその長手方向を軸として回動可能とされている。そして、第1支持体10が回動することによって、回転軸が常に波の進行方向に対して直交するようになる。なお、第1支持体として、本実施形態のような柱状の部材ではなく、例えば浮体2の壁面を第1支持体として用いることや、その他の躯体や構造物を用いることも可能である。
【0030】
上記の方向調整用軸受14a,14bのうち、上側に設けられるものは浮体2の内面に直接又は図示しないブラケット等を介して間接的に設置される。また、下側に設けられるものは、下部錘5に埋め込まれる形で設置される。なお、下柱部12の周囲にその他の構成要素がある場合は、例えば下側の方向調整用軸受14bとして下部錘5に設置するターンテーブル15(
図1及び
図2の破線部分)を用い、このターンテーブル15の上にその他の構成要素を載置させてもよい。なお、第1支持体10の回動には、制御部と制御用バッテリ、及び図示しないアクチュエータを設け、何らかの制御を行なってもよいが、本実施形態では第2支持体30の振動による慣性で、自動的に回動軸20の軸と直交する方向を波に向けることができる。
【0031】
回動軸20は、第1支持体10に水平方向に設けられるものであり、水平軸21と振り子用軸受22とを備える。水平軸21は、2本の中間柱部13の間に設けられ、その左右両端部が中間柱部13に嵌るように設置される。振り子用軸受22は、水平軸21の中央部に設けられ、水平軸21に対して回動するとともに第2支持体30が取付けられる。なお、本実施形態では、回動軸20の軸から直接に動力を取り出すような、発電のための負荷となるものを回動軸20に接続してはいない。
【0032】
第2支持体30は、回動軸20から垂下されて振り子運動をするもので、本実施形態では平行な2本の支柱が垂下されている。また、2本の第2支持体30の間には後述するバネ32の上端を支持するバネ支持部31が設けられる。
【0033】
発電用錘33は、第2支持体30に設けられるバネ支持部31にバネ32で支持されて、第2支持体30の振り子運動による遠心力で第2支持体30に沿って往復運動をするものである。この発電用錘33は、直動軸受35によって第2支持体30にスライド可能に取付けられている。また、バネ32の下端は、発電用錘33の上面中央に設置されるバネ取付板34に取付けられている(
図5破線部分参照)。また、発電用錘33の下面は、側面視で弧状をなしており、発電用錘33の位置を下げたとき等に、発電用錘33の下面が略同じ強さで後述する制動輪51に当接されるようになっている。
【0034】
この発電用錘33の動きを
図3及び
図4(A)~(D)を参照して説明する。
図3は、浮体2が波によって振動した時に、その揺れで第2支持体30が振り子運動をしている状態を説明する図である。このとき、回動軸20には特に負荷となるものがないため、第2支持体30は容易に振動を開始することができる。
【0035】
次に、
図4(A)~(D)を用いて、発電用錘33の往復運動を説明する。なお、これらの図は説明をわかりやすくするため、模式的に表わしている。
図4(A)は、第2支持体30が静止した状態である。浮体2の振動を受けて、ここから図の右側に向かって第2支持体30が動くとする。
図4(A)に示す位置から、右側に第2支持体30が振動すると、当初は遠心力によって発電用錘33が回動軸20と反対側に移動する。次に、
図4(B)に示すように、第2支持体30がその振幅の端まで行くと、発電用錘33に働く遠心力がなくなり、発電用錘33が回動軸20の側に移動する。次に、第2支持体30は左側に向かって動き出し、
図4(C)に示す状態となる、すると発電用錘33に遠心力が働き、回動軸20と反対側に移動する。さらに第2支持体30が動き、
図4(D)に示す状態になると、発電用錘33に働く遠心力がなくなり、発電用錘33が回動軸20の側に移動する。これらを繰り返すことで、発電用錘33が第2支持体30に沿った往復運動を繰り返すのである。
【0036】
発電機構40は、発電用錘33の往復運動によって発電するものである。この発電機構40を
図5ないし
図7を参照して説明する。本実施形態では、発電機構40は第2支持体30と発電用錘33の内側に取付けられている。これを具体的に説明すると、発電機構40は2つのラックギヤ41a,41b、同軸上に配置される2つのピニオンギヤ42a,42b、ワンウェイクラッチ43、トルクコンバータ44、フライホイール45、発電機46、及びワンウェイクラッチ43(ピニオンギヤ42a,42b)から発電機46までの構成を接続する複数の出力軸47a,47b,47cを備える。これらのうち、トルクコンバータ44、フライホイール45、発電機46、及び出力軸47a,47b,47cの一部が発電機用箱48に収められる(又は発電機用基板48に取付けられる)。そして、発電機用箱48がブラケット49cを介して第2支持体30に取付けられる。これにより、2つのピニオンギヤ42a,42bは間接的に第2支持体30に取付けられることになる。
【0037】
また、発電機用箱48から露出した2つのピニオンギヤ42a,42bにそれぞれ対応するように、2つのラックギヤ41a,41bが互いに対向して設けられる。この2つのラックギヤ41a,41bは、ブラケット49a,49bを介して発電用錘33に取付けられる。また、ラックギヤ41a,41bの取付けられる方向は、ラックギヤ41a,41bの長手方向が第2支持体30に沿った方向、すなわち発電用錘33の往復運動に沿った方向である。これにより、ラックギヤ41a,41bは第2支持体30に対して往復運動をする発電用錘33に間接的に固定されることになる。ワンウェイクラッチ43は、ピニオンギヤ42a,42bに内蔵されており、2つのピニオンギヤ42a,42bの回転方向にかかわらず、出力軸47aを同じ方向に回転させるものである。
【0038】
これらの構成により、発電用錘33が第2支持体30に対して往復運動すると、発電用錘33に取付けられたラックギヤ41a,41bによって2つのピニオンギヤ42a,42bが互いに逆回転する。例えば、
図6及び
図7に示すラックギヤ41a,41bが
図6の下方向に移動すると、右側のラックギヤ41aに当接されたピニオンギヤ42aは正面から見て右回転し、左側のラックギヤ41bに当接されたピニオンギヤ42bは左回転する。このとき、仮に出力軸47aを右回転のみにさせるようにワンウェイクラッチ43を配置していれば、右側のラックギヤ41aに当接されたピニオンギヤ42aが出力軸47aを回転させ、左側のラックギヤ41bに当接されたピニオンギヤ42bは空転する。逆に、ラックギヤ41a,41bが上方向に移動すると、右側のラックギヤ41aに当接されたピニオンギヤ42aは正面から見て左回転し、左側のラックギヤ41bに当接されたピニオンギヤ42bは右回転する。すると、右側のラックギヤ41aに当接されたピニオンギヤ42aは空転し、左側のラックギヤ41bに当接されたピニオンギヤ42bが出力軸47aを回転させる。この出力軸47a,47b,47cの回転により、後段に接続されたトルクコンバータ44、フライホイール45、及び発電機46を駆動させ発電する。発電された電力は、図示しないケーブルを通して蓄電用バッテリに蓄電される。なお、上記の構成とは逆に、ラックギヤ41a,41bを第2支持体30に取付けて、発電機用箱48又は発電機用基板48を発電用錘33に取付けることもできる。また、トルクコンバータ44とフライホイール45は必須の構成でなく省略することもできる。
【0039】
図1及び
図2に戻り、振動抑制機構50を説明する。振動抑制機構50は、発電用錘33に当接させて第2支持体30の振り子運動を制限するものである。これは、後述する重心調整機構60及び振動抑制機構50によって、発電用錘33の位置を下げて振動抑制機構50に当接させることでなされる。本実施形態では、振動抑制機構50は制動輪51、制動軸52、ブラケット53、及び補助発電機54を備える。制動輪51は、発電用錘33が当接されて回転するものである。制動軸52は、制動輪51の回転を伝達する作用と、ブラケット53に軸支されて制動輪51を支持するものである。ブラケット53は、第1支持体10に取付けられ制動軸52を回転可能に支持するものである。補助発電機54は、制動軸52の回転を電力に変換するものである。なお、振動抑制機構50を
図2において第1支持体10の右側にも設けることで補助発電機54による発電量を倍にすることもできる。また、振動抑制機構50として、本実施形態のように発電するものでなく、摩擦材等の抵抗となるものをアクチュエータ(いずれも図示せず)で駆動させて発電用錘33に押し付けてもよい。
【0040】
次に、
図8を参照して、重心調整機構60及び重心調整機構60を用いる発電方法を説明する。重心調整機構60は、回動軸20の高さを第1支持体10に対して調整可能にして揺動発電装置1全体の重心位置を変更するものである。本実施形態では、回動軸20の左右両端部を第1支持体10の中間柱部13の中に入れて、その端部をナット61として、中間柱部13の中を通るねじ軸62に貫通させるボールねじ機構を用いている。なお、回動軸20の上下方向における移動範囲においては、中間柱部13の互いに対向する面には回動軸20が移動するための図示しないスリットが設けられる。ねじ軸62は、中間柱部13の側面に設けられるアクチュエータ63により駆動される。なお、このアクチュエータ63の動作は、既に述べた図示しない制御部と制御用バッテリによってなされる。
【0041】
この回動軸20を上下させることにより、浮体2の重心位置が調整可能となり、浮体2の復元力の強弱を調整することができ、浮体2の振動数を制御することができる。例えば、波高が高く波の周期が短い場合は、重心位置を下げて浮体2の復元力を強くし、浮体2の振動数を増やすことで第2支持体30の振動数を増加させることができる。逆に、波高が低く波の周期が長い場合は、重心位置を上げて浮体2の復元力を弱くし、浮体2の振動数を下げる代わりに弱い波でも浮体2が傾き易い状態を作って、第2支持体30を積極的に振動させることができる。
【0042】
次に、
図9を参照して、振動周期調整機構70及び振動周期調整機構70を用いる発電方法を説明する。振動周期調整機構70は、バネ32と発電用錘33の高さを第2支持体30に対して調整可能にして、第2支持体30の振り子運動の周期を調整するものである。本実施形態では、バネ支持部31の左右両端部を第2支持体30の中に入れて、その端部をナット71として、第2支持体30の中を通るねじ軸72に貫通させるボールねじ機構を用いている。なお、バネ支持部31の移動範囲においては、第2支持体30の互いに対向する面には回動軸20が移動するための図示しないスリットが設けられる。ねじ軸72は、第2支持体30の側面に設けられるアクチュエータ73により駆動される。なお、このアクチュエータ73の動作は、重心調整機構60同様に図示しない制御部と制御用バッテリによってなされる。
【0043】
この発電用錘33を上下させることで、第2支持体30の振動周期を調整し、浮体2の振動周期と共振させるのである。すなわち、浮体2の単位時間あたりの振動数が多いときは、バネ32と発電用錘33の高さを上げて第2支持体30の振動周期を短くする。一方、浮体2の単位時間あたりの振動数が少ないときは、バネ32と発電用錘33の高さを下げて第2支持体30の振動周期を長くする等である。これにより、より効率的に第2支持体30を振動させることが可能となる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、
図10及び
図11を参照して、他の実施形態に係る揺動発電装置101,201及び蓄電方法を説明する。
図10(A)は本実施形態に係る揺動発電装置101の平面図、
図10(B)は側面図である。なお、
図10と
図11においては、発電機構40等の記載を省略している。本実施形態では、浮体102の床面FLに取付けられる一対の第1支持体110が側面視で略A字状をなしており、略A字の頂点に回動軸20がわたされている。また、振動抑制機構150はブラケット153が床面FLに取付けられている。第2支持体30、発電用錘33等のその他の構成は上述した第1実施形態と同じであり、同じ符号を付してその説明を省略する。なお、浮体2の構成は第1実施形態のような卵形を採用しても良いし、第1実施形態のような重心調整機構や振動周期調整機構を設けることもできる。
【0045】
また、
図11に示すように、
図10(A)(B)に示す揺動発電装置101のうち浮体102を除く構成を複数用意して、比較的大きな浮体202の床面FLに放射状に配置する揺動発電装置201とすることもできる。このようにすることで、あらゆる方向の波に対応させることができる。さらに、
図10(A)(B)に示す揺動発電装置101のうち浮体102を除く構成を陸上等に設置して、蓄電装置として利用することができ蓄電方法の実施ができる。係る場合、回動軸20に図示しないアクチュエータを設け、余剰電力が発生したときに当該アクチュエータを駆動して第2支持体30を持ち上げて傾斜した状態にしておく。そして、電力が必要なときは回動軸20をアクチュエータから切り離して、第2支持体30の振り子運動によって発電を行なえばよい。なお、アクチュエータは回動軸に直接設けるだけでなく、間接的に設けることもできる。例えば、第2支持体30にアクチュエータを設け、第2支持体を動かすことで回動軸を回動させることもできる。なお、第1実施形態、第2実施形態ともに、浮体を小型船舶に置き換えて、船上に設置することも可能である。
【0046】
[第3実施形態]
次に、
図12(A)(B)を参照して、風力を用いて発電を行う揺動発電装置301を説明する。本実施形態でも発電機構40等の記載を省略し、第1実施形態又は第2実施形態と同じところは同じ符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、回動軸20の上方に風受部80を備える。この風受部80は、回動軸20に設置される風向調整軸81、及び風向調整軸81に取付けられてその方向が調整可能な風受板82を備える(図中矢印a,b)。風向調整軸81は、そのときの風の向きによって風受板82を最適な向きに調整するものであり、図示しないアクチュエータ、風向センサ、及び制御部等によって動作する。なお、第1支持体110は地面GL等の陸上に設置されるが、第2実施形態に示す浮体202に設置して洋上に置くことや、船上に置くこともできる。
【0047】
次に、本実施形態に係る揺動発電装置301の動作を説明する。前提として、風が
図12(B)の左から右に向かって吹いているとする。先ず、風受板82を風に向かってその広い面が向くように風向調整軸81を回転させる。すると、風の影響で回動軸20が回動して、風受部80が右に傾き(図中矢印c)、第2支持体30が左に振れる(図中矢印d)。その状態で、風向板82を90度回転させて風の影響を受けないようにする。すると、第2支持体20が振動を開始して発電をする。また、風が強く吹いたりやんだりするときには、風向板82の向きを固定したままでも発電が可能なときがある。
【0048】
以上、本実施形態の揺動発電装置によれば、浮体が卵形をなし鈍端部が下を向いているため、波によって適度に浮体が振動しつつ、復元力も有する。これにより、波による連続した振動が可能となる。また、浮体の上部が比較的多く水面から突出しているため、風によっても浮体が振動して発電をすることができる。また、回動軸の軸から動力を取り出すような直接の負荷がないため、浮体が振動したときに速やかに第2支持体の振動が開始されるとともに、波が収まって浮体の振動が停止したときも第2支持体の振動が継続される。これにより、波と波との合間においても発電を継続することができる。また、第2支持体が振り子運動をすると、その1往復で発電用錘が2往復して4回ほど発電機構に動力を供給する。これにより、高効率で安定的な発電が可能となる。
【0049】
また、方向調整用軸受によって第1支持体の向きが変わる。このとき、第2支持体の振動による発電用錘の慣性によって、特段の制御や動力を必要とせずに自動的に第1支持体の向きを変えて、回動軸を波の進行方向に直交させることができる。このため、構成が簡素でありながら効率の良い発電とすることができる。また、重心調整機構によって波高の高さによって重心を調整することができ、波の状況に応じて浮体の振動を最適なものとすることができる。また、振動周期調整機構によって、第2支持体の振動周期を変えることができ、そのときの浮体の振動数に第2支持体の振動数を合わせることができ、発電効率を向上させることができる。
【0050】
また、振動抑制機構によって、悪天候時等における第2支持体の振動を抑制することができ、装置の破損を防止することができるとともに、補助発電機によって発電することもできる。このとき、重心調整機構と振動周期調整機構によって発電用錘が制動輪に当接されるのであるが、発電用錘はバネによって吊られているため、このバネが懸架装置の代わりとなり制動輪との当接の具合を調整することができる。また、回動軸の上方に風受部を設けることで、風力による発電にも対応することができる。
【0051】
また、本実施形態の蓄電方法によれば、第2支持体等からなる振り子を持ち上げて傾斜させておくだけでエネルギーを溜めることができ、実施が容易である。また、溜めたエネルギーを解放するとき、既に述べたように回動軸に直接負荷となるものが接続されておらず、第2支持体の振り子運動が継続されやすくなり、比較的長時間発電をすることができる。
【0052】
なお、上述した揺動発電装置及び蓄電方法は、本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲においてその構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,101,201,301・・揺動発電装置、2,102,202・・浮体、3・・鋭端部、4・・鈍端部、5・・下部錘、W・・水面、FL・・床面、GL・・地面、10,110・・第1支持体、11・・上柱部、12・・下柱部、13・・中間柱部、14a,14b・・方向調整用軸受、15・・ターンテーブル、20・・回動軸、21・・水平軸、22・・振り子用軸受、30・・第2支持体、31・・バネ支持部、32・・バネ、33・・発電用錘、34・・バネ取付板、35・・直動軸受、40・・発電機構、41a,41b・・ラックギヤ、42a,42b・・ピニオンギヤ、43・・ワンウェイクラッチ、44・・トルクコンバータ、45・・フライホイール、46・・発電機、47a,47b,47c・・出力軸、48・・発電機用箱(発電機用基板)、49a,49b,49c・・ブラケット、50,150・・振動抑制機構、51・・制動輪、52・・制動軸、53,153・・ブラケット、54・・補助発電機、60・・重心調整機構、61・・ナット、62・・ねじ軸、63・・アクチュエータ、70・・振動周期調整機構、71・・ナット、72・・ねじ軸、73・・アクチュエータ、80・・風受部、81・・風向調整軸、82・・風受板