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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097339
(43)【公開日】2024-07-18
(54)【発明の名称】設定システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
H04B1/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075596
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2023000332の分割
【原出願日】2023-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】中島 義人
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060HH06
5K060LL01
5K060LL11
(57)【要約】
【課題】無線回路の消費電力を低減することが可能となる設定システムを提供すること。
【解決手段】無線通信用IC2に設定値を設定する制御用IC3であって、複数の設定値と、複数の電源電圧の値と、少なくとも複数の設定値及び複数の電源電圧の値に対応する送信電力の値と、複数の設定値及び複数の電源電圧の値に対応する無線通信用IC2の消費電流の値とを相互に関連付けている送信電力設定用情報を格納する記録部31と、少なくとも無線通信用IC2に供給される電源電圧を測定する測定部321と、送信電力設定用情報と、測定した電源電圧の値とに基づいて、送信電力の値が基準範囲内となる設定値を選択する選択部322と、選択した設定値を設定する設定部323と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己に設定される設定値及び自己に供給される電源電圧に応じた無線送信用の送信電力を出力する無線回路に前記設定値を設定する設定システムであって、
複数の前記設定値と、複数の前記電源電圧の値と、少なくとも複数の前記設定値及び複数の前記電源電圧の値に対応する前記送信電力の値と、複数の前記設定値及び複数の前記電源電圧の値に対応する前記無線回路の消費電流の値とを相互に関連付けている設定用情報を格納する格納手段と、
少なくとも前記無線回路に供給される前記電源電圧を測定する測定手段と、
前記格納手段が格納している前記設定用情報と、前記測定手段が測定した前記電源電圧の値とに基づいて、前記送信電力の値が基準範囲内となる前記設定値を選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した前記設定値を前記無線回路に設定する設定手段と、
を備える設定システム。
【請求項2】
前記選択手段は、前記送信電力の値が基準範囲内となる前記設定値が複数存在する場合、複数の前記設定値に対応する前記消費電流の値に基づいて、1つの前記設定値を選択する、
請求項1に記載の設定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電波を送信するために用いられる無線ICが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、無線ICについては、一般的には、無線ICの電波の送信回路の構成から、無線ICに設定される無線ICが発射する電波の強度の設定値が固定値の場合に、無線ICに印加される電源電圧が変動すると電源電圧の変動に応じて無線ICが発射する電波の強度が変動することが知られている。電波法により空中線電力の偏差に範囲が定められていることから、無線ICに印加される電源電圧に応じて、無線ICから送信される電波の強度が、電波法に定める空中線電力の偏差の範囲内に収まるように、無線ICを制御することが一般的である。例えば、所定の範囲内の送信電力を出力させる手法として、あらかじめ、無線ICに供給される電源電圧の変動幅と、無線ICに設定される上記設定値と、実際に送信される送信電力値との相互間の関係を把握しておき、送信される電波の強度が一定になるように、相互間の関係に基づいて無線ICの設定値を適宜選択して設定するように制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-30020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者は、無線ICの消費電流に着目して、無線ICの設定値と送信電力の値と消費電流の値との相互間の関係を実験等で確認したところ、同様な値の送信電力を出力しているにも関わらず、相互間で消費電流の値が異なる場合があることに想到した。すなわち、例えば、無線ICの設定値を変更することにより、送信電力を増大させていった場合、消費電流の値が下がる場合があることに想到した。
【0006】
しかしながら、無線ICに設定値を設定する従来の制御手法においては、消費電流について考慮されていなかったので、無線ICの消費電力が増大してしまう可能性があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、無線回路の消費電力を低減することが可能となる設定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の設定システムは、自己に設定される設定値及び自己に供給される電源電圧に応じた無線送信用の送信電力を出力する無線回路に前記設定値を設定する設定システムであって、複数の前記設定値と、複数の前記電源電圧の値と、少なくとも複数の前記設定値及び複数の前記電源電圧の値に対応する前記送信電力の値と、複数の前記設定値及び複数の前記電源電圧の値に対応する前記無線回路の消費電流の値とを相互に関連付けている設定用情報を格納する格納手段と、少なくとも前記無線回路に供給される前記電源電圧を測定する測定手段と、前記格納手段が格納している前記設定用情報と、前記測定手段が測定した前記電源電圧の値とに基づいて、前記送信電力の値が基準範囲内となる前記設定値を選択する選択手段と、前記選択手段が選択した前記設定値を前記無線回路に設定する設定手段と、を備える。
【0009】
また、請求項2に記載の設定システムは、請求項1に記載の設定システムにおいて、前記選択手段は、前記送信電力の値が基準範囲内となる前記設定値が複数存在する場合、複数の前記設定値に対応する前記消費電流の値に基づいて、1つの前記設定値を選択する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の設定システムによれば、例えば、本願の課題を解決することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る回路システムのブロック図である。
図2】送信電力設定用情報を例示した図である。
図3】基準情報を説明するための図である。
図4】設定処理のフローチャートである。
図5】温度対応送信電力設定用情報を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る設定システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
〔実施の形態の基本的概念〕
まずは、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、設定システムに関するものである。
【0014】
「設定システム」とは、設定値を無線回路に設定するシステムであり、例えば、1個の集積回路、あるいは、複数の集積回路にて実現されるシステム等を含む概念であり、一例としては、格納手段、測定手段、選択手段、及び設定手段を備える。
【0015】
「無線回路」とは、電波を用いて通信を行うために用いられる回路であり、具体的には、自己に設定される設定値及び自己に供給される電源電圧に応じた無線送信用の送信電力を出力する回路であり、例えば、無線送受信用の回路である無線送受信回路、及び無線送信専用の回路である無線送信専用回路等を含む概念である。また、「無線回路」とは、例えば、バッテリ又は商用電源の内の何れか一方から電源電圧が供給される回路等を含む概念である。
【0016】
「無線回路」が適用される機器は任意であるが、例えば、住宅用火災警報器、センサ送信機、及び施錠確認センサ機器等を含む防災機器、または、セキュリティ機器、あるいは防災目的およびセキュリティ目的以外の任意の機器等に適用することもできる。
【0017】
「設定値」とは、無線回路から出力される送信電力を設定するための値であり、例えば、無線回路の仕様に基づいて複数個定義されているもの等を含む概念である。「送信電力」とは、電波を出力するために無線回路から出力される電力であり、例えば、無線回路からアンテナ側に出力される電力等を含む概念である。
【0018】
「格納手段」とは、設定用情報を格納する手段である。「設定用情報」とは、例えば、無線回路に対して設定値を設定するために用いられる情報であり、一例としては、複数の設定値と、複数の電源電圧の値と、少なくとも複数の設定値及び複数の電源電圧の値に対応する送信電力の値と、複数の設定値及び複数の電源電圧の値に対応する無線回路の消費電流の値とを相互に関連付けている情報等を含む概念である。また、「設定用情報」とは、例えば、複数の設定値と、複数の電源電圧の値と、複数の周辺温度の値と、複数の設定値、複数の電源電圧の値、及び複数の周辺温度の値に対応する送信電力の値と、複数の設定値、複数の電源電圧の値、及び複数の周辺温度の値に対応する無線回路の消費電流の値とを相互に関連付けている情報等を含む概念である。
【0019】
「測定手段」とは、少なくとも無線回路に供給される電源電圧を測定する手段であり、例えば、無線回路の周辺温度も測定する手段等を含む概念である。
【0020】
「選択手段」とは、格納手段が格納している設定用情報と、測定手段が測定した電源電圧の値とに基づいて、送信電力の値が基準範囲内となる設定値を選択する手段であり、具体的には、送信電力の値が基準範囲内となる設定値が複数存在する場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に基づいて、1つの設定値を選択する手段である。
【0021】
また、「選択手段」とは、例えば、格納手段が格納している設定用情報と、測定手段が測定した電源電圧の値及び周辺温度の値とに基づいて、送信電力の値が基準範囲内となる設定値を選択する手段等を含む概念である。
【0022】
また、「選択手段」とは、例えば、バッテリから無線回路に電源電圧が供給されている場合において、送信電力の値が基準範囲内となる設定値が複数存在する場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に基づいて、1つの設定値を選択し、商用電源から無線回路に電源電圧が供給されている場合において、送信電力の値が基準範囲内となる設定値が複数存在する場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に関わらず、1つの設定値を選択する手段等を含むが概念である。
【0023】
「基準範囲」とは、送信電力の値について予め定められている範囲であり、具体的には、1つの基準値を基準にした範囲であり、例えば、法令に基づいて定めらたり、あるいは、法令以外に基づいて定められたりする範囲である。
【0024】
「バッテリ」とは、例えば、蓄電している電力を供給する供給手段である。「商用電源」とは、例えば、電力会社側から送られる電力を供給する供給手段である。
【0025】
そして、以下の実施形態では、設定システムが周辺温度を考慮しないで設定値を設定する場合について説明し、周辺温度を考慮する場合については、変形例において説明する。
【0026】
[実施の形態の具体的内容]
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0027】
(構成)
まず、本実施の形態に係る回路システムの構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る回路システムのブロック図である。
【0028】
回路システム100は、例えば、防災機器に実装されている電気回路のシステムであり、一例としては、バッテリ11、アンテナ12、電気抵抗13、14、無線通信用集積回路(以下、集積回路を「IC」とも称する)2、及び制御用IC3を備える。
【0029】
(構成-バッテリ)
バッテリ11は、前述の供給手段である。このバッテリ11の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、少なくとも無線通信用IC2、及び制御用IC3に対して電源電圧を供給するものであり、また、二次電池等を用いて構成するとができる。なお、このバッテリ11から供給される電源電圧の値については、回路システム100に設けられている不図示の構成要素であって、当該バッテリ11からの電源電圧によって動作する構成要素の動作状況や当該バッテリ11の残充電量等に応じて変動する可能性がある。
【0030】
(構成-アンテナ)
アンテナ12は、無線通信用IC2から出力される送信電力に基づいて電波を出力するものである。このアンテナ12の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、ループアンテナ等を用いることができる。
【0031】
(構成-電気抵抗)
電気抵抗13、14は、電源電圧を分圧する分圧手段である。この電気抵抗13、14の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、チップ抵抗器等を用いることができる。
【0032】
(構成-無線通信用IC)
無線通信用IC2は、前述の無線回路である。この無線通信用IC2の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、無線送信専用回路であり、また、バッテリ11から供給される電源電圧を利用して動作するものであり、また、自己に設定される送信電力についての設定値及び当該電源電圧の値に応じた値の送信電力を出力するものであり、また、無線側第1端子T21、無線側第2端子T22、及び無線側第3端子T23を備える。
【0033】
(構成-無線通信用IC-端子)
無線側第1端子T21は、バッテリ11からの電源電圧が入力される端子である。無線側第2端子T22は、制御用IC3との間で通信を行うための端子である。無線側第3端子T23は、アンテナ12に対して送信電力を出力する端子である。
【0034】
(構成-制御用IC)
制御用IC3は、前述の設定システムである。この制御用IC3の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、防災機器を制御するためのマイクロコンピュータであり、また、バッテリ11から供給される電源電圧を利用して動作するものであり、また、無線通信用IC2との間で通信を行うように構成されているものである。制御用IC3は、例えば、制御側第1端子T31、制御側第2端子T32、制御側第3端子T33、記録部31、及び制御部32を備える。なお、制御用IC3は、図1で図示されている構成以外に様々な構成を備え得るが、ここでは、本願に特徴的な構成のみ図示して説明する。
【0035】
(構成-制御用IC-端子)
制御側第1端子T31は、バッテリ11からの電源電圧が入力される端子である。制御側第2端子T32は、無線通信用IC2との間で通信を行うための端子である。制御側第3端子T33は、バッテリ11からの電源電圧の値を測定するための端子であって、電気抵抗13、14で分圧された電源電圧が入力される測定用の端子である。
【0036】
(構成-制御用IC-記録部)
記録部31は、前述の格納手段であり、具体的には、制御用IC3の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、フラッシュメモリ等を用いて構成することができる。この記録部31には、送信電力設定用情報、及び基準情報が記録されている。
【0037】
(構成-制御用IC-記録部-送信電力設定用情報)
「送信電力設定用情報」とは、前述の設定用情報である。図2は、送信電力設定用情報を例示した図である。送信電力設定用情報は、この図2に示すように、項目「設定値情報」と、項目「電源電圧情報」と、各項目に対応する情報とが対応付けられている。項目「設定値情報」に対応する情報は、無線通信用IC2の送信電力の設定値を特定する設定値情報である(図2では、16進数で示されており、「C」、「D」等である)。項目「電源電圧情報」に対応する情報は、バッテリ11から無線通信用IC2に供給される電源電圧の値を特定する電源電圧情報である(図2では、3.6Vを特定する「3.6」等)。なお、この電源電圧情報については、図2では、「3.6」、「3.4」のように、0.2V刻みの情報が説明の便宜上のために図示されている。また、この電源電圧情報は、項目「電力情報」と、項目「消費電流情報」と、各項目に対応する情報とが対応付けられている。項目「電力情報」に対応する情報は、無線通信用IC2から出力される送信電力の値を特定する電力情報である(図2では、4.2dBmを示す「4.2」等である)。項目「消費電流情報」に対応する情報は、無線通信用IC2での消費電流の値の特定する消費電流情報である(図2では、14mAを特定する「14」等である)。そして、これらの電力情報及消費電流情報は、各電源電圧情報及び各設定値情報に対応付けられている。なお、ここでの送信電力設定用情報の具体的な格納手法は任意であるが、例えば、無線通信用IC2についての実験又はシミュレーション等に基づいて、各設定値及び各電源電圧における送信電力及び消費電流を把握した上で、把握した当該情報を任意の手法で制御用IC3に入力することにより格納される。
【0038】
(構成-制御用IC-記録部-基準情報)
図1の「基準情報」とは、前述の基準範囲を特定する基準情報である。図3は、基準情報を説明するための図である。図1の基準情報としては、例えば、図3の第1~第6閾値を特定する情報が法令に基づいて記録されていることとして、以下説明する。第1~第6閾値は、出力するべき送信電力の基準となる基準値を基準にした基準範囲を規定する情報であり、具体的には、第1閾値は基準範囲の上限値であり、また、第6閾値は基準範囲の下限値であり、また、第2~第5閾値は基準範囲を複数の範囲に区分するための閾値である。そして、これらの基準値及び第1~第6閾値の具体的な値は任意であるが、ここでは、例えば、基準値として7dBm(つまり、5.0mW)が記録されており、第1値として基準値の+20%に対応する7.8dBm(つまり、6.0mW)が記録されており、第6閾値として基準値の-50%に対応する4.0dBm(つまり、2.5mW)が記録されており、第2~第5閾値として基準値の+10%、+5%、-5%、-25%に対応する7.4dBm(つまり、5.5mW)、7.2dBm(つまり、5.3mW)、6.8dBm(つまり、4.8mW)、5.7dBm(つまり、4.0mW)が記録されている場合を例示説明する。そして、図3に示すように、これらの第1~第6閾値によって、基準範囲が第1範囲、第2上側範囲、第3上側範囲、第2下側範囲、及び第3下側範囲の5個の範囲に区分されることになる。
【0039】
(構成-制御用IC-制御部)
図1の制御部32は、制御用IC3を制御する制御手段である。この制御部32の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、演算回路、及びメモリ等を用いて構成することができるものであり、また、機能概念的には、測定部321、選択部322、及び設定部323を備える。測定部321は、無線通信用IC2に供給される電源電圧を測定する測定手段である。選択部322は、記録部31が格納している送信電力設定用情報と、測定部321が測定した電源電圧の値とに基づいて、送信電力の値が基準範囲内となる設定値を選択する選択手段であり、具体的には、送信電力の値が基準範囲内となる設定値が複数存在する場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に基づいて、1つの設定値を選択する手段である。設定部323は、選択部322が選択した設定値を無線通信用IC2に設定する設定手段である。そして、このような制御部32の各部によって実行される処理については後述する。
【0040】
(処理)
次に、このように構成される回路システム100によって実行される設定処理について説明する。図4は、設定処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。「設定処理」とは、概略的には、制御用IC3にて実行される処理であり、例えば、無線通信用IC2に設定値を設定するための処理である。この設定処理を実行するタイミングは任意であるが、例えば、図1のバッテリ11からの電源電圧が無線通信用IC2及び制御用IC3に供給された後において、電波を出力する場合に繰り返し実行を開始するものとして、実行が開始されたところから説明する。
【0041】
図4のSA1において制御用IC3の測定部321は、無線通信用IC2に供給される電源電圧を測定する。具体的には任意であるが、例えば、無線通信用IC2及び制御用IC3に対して相互に同じ値の電源電圧が供給されているものとして、以下の処理を行う。より具体的には、制御側第3端子T33に印加される電圧を測定し、測定した電圧の値について所定の演算(例えば、電気抵抗13、14の抵抗値を考慮して制御側第1端子T31に印加される電圧(つまり、無線通信用IC2の無線側第1端子T21)に換算する演算)を行うことにより、制御用IC3に供給される電源電圧の値を演算して、当該演算結果を無線通信用IC2に供給される電源電圧とする。
【0042】
ここでは、例えば、無線通信用IC2に供給される電源電圧として2.6Vを測定したこととして、以下説明する。
【0043】
図4のSA2において制御用IC3の選択部322は、設定値を選択する。具体的には任意であるが、SA1で測定した電源電圧の値と、図1の記録部31の基準情報とを取得した上で、図2の送信電力設定用情報において、取得した電源電圧の値に対応する電源電圧情報に対応付けられている電力情報を参照して、当該電力情報が前述の取得した基準情報が特定する基準範囲内となる設定値情報を特定する。詳細には、図3において、基準値に対してより近い送信電力を出力することが好ましい点を考慮して、第1範囲、第2上側範囲及び第2下側範囲(以下、「第2範囲」とも称する)、第3上側範囲第及び第3下側範囲(以下、「第3範囲」とも称る)の3個のグループに分けて、第1~第3範囲の順で優先度(つまり、第1範囲が最高の優先度となり、第3範囲が最低の優先順位となる優先度)を設定した上で、優先度がより高い範囲に対応する設定値情報を特定する。
【0044】
より詳細には、前述の参照している図2の電力情報において、第1範囲に属する電力情報が存在するか否かを判定し、存在するものと判定した場合、第2及び第3範囲に属する電力情報の有無に関わらず、当該第1範囲に属する電力情報に対応する設定値情報を特定する。また、第1範囲に属する電力情報が存在しないものと判定した場合、第2範囲に属する電力情報が存在するか否かを判定し、存在するものと判定した場合、第3範囲に属する電力情報の有無に関わらず、当該第2範囲に属する電力情報に対応する設定値情報を特定する。また、第2範囲に属する電力情報が存在しないものと判定した場合、第3範囲に属する電力情報に対応する設定値情報を特定する。
【0045】
そして、特定した設定値情報が1個のみである場合、当該特定した設定値情報が示す設定値を選択する。一方、特定した設定値情報が2個以上(つまり、複数)存在する場合、当該特定した2個以上の設定値情報に対応する消費電流情報を参照して、当該参照した消費電流情報が最小となる設定情報が示す設定値を選択する。なお、消費電流情報が最小となる設定情報も2個以上存在することも想定されるが、この場合、任意の手法(例えば、最も数値が小さいものを選択する手法、あるいは、無線通信用IC2に対して現在設定されている設定値に最も近いものを選択する手法等)で1個のみ設定情報が示す設定値を選択することとする。
【0046】
ここでは、例えば、SA1で測定した電源電圧の値である2.6Vと、図1の記録部31の基準情報とを取得した上で、図2の送信電力設定用情報において、取得した電源電圧の値である2.6Vに対応する電源電圧情報に対応する「電力情報」=「3.7」、「4.5」・・・「8.6」等を参照して、当該電力情報が前述の取得した基準情報が特定する基準範囲内となる設定値情報を特定する。ここでは、第1範囲である6.8以上~7.未満に属する電力情報が「7.0」、「7.1」であり、第2範囲である7.2以上~7.4未満又は5.7以上~6.8未満に属する電力情報が「5.9」、「6.1」、「6.4」、「7.3」であり、第3範囲である7.4以上~7.8未満又は4.0以上~5.7未満に属する電力情報が「4.5」、「5.0」、「5.6」、「7.7」であるので、前述の優先度に従って、第1範囲に属する電力情報が「7.0」、「7.1」の2個存在することになる。そして、これらの「7.0」、「7.1」に対応する消費電流情報は「13.9」、「13.8」であるので、小さい方の「消費電流情報」=「13.8」に対応する設定値情報が示す設定値として「14」を選択する。
【0047】
図4のSA3において制御用IC3の設定部323は、無線通信用IC2に対して設定値を設定する。具体的には任意であるが、例えば、SA2で選択した設定値を取得し、選択した設定値を示す信号を、図1の制御側第2端子T32を介して無線通信用IC2に対して出力することにより設定する。この場合、制御用IC3から出力された信号は、無線側第2端子T22を介して無線通信用IC2に対して入力されて、入力された信号が示す設定値が無線通信用IC2に設定されることになり、当該無線通信用IC2は、自己に設定されている設定値に対応する送信電力を無線側第3端子T23を介してアンテナ12側に出力して、電波を出力することになる。
【0048】
ここでは、例えば、制御用IC3の設定部323は、SA2で選択した設定値である「14」を取得し、選択した設定値である「14」を示す信号を、図1の制御側第2端子T32を介して無線通信用IC2に対して出力することにより設定する。この場合、無線通信用IC2は、送信電力を出力するための設定値として「14」が設定されて、当該14に対応する送信電力として例えば7.1dBmの電力をアンテナ12側に出力することになる。これにて、設定処理を終了する。
【0049】
(送信電力と消費電力)
前述のSA2において、電力情報が基準範囲内となり、且つ、消費電流情報が最小となる設定値情報が示す設定値を選択しているので、任意の要因で電源電圧の値が変動した場合であっても、設定処理を繰り返し実行することにより、法令に従って適切な値の送信電力を低消費電力で出力することが可能となる。
【0050】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、送信電力の値が基準範囲内となる設定値が複数存在する場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に基づいて、1つの設定値を選択することにより、例えば、消費電流の値を考慮して適切な設定値を選択することができるので、無線通信用IC2の消費電力を低減することが可能となる。
【0051】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0052】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の詳細に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
【0053】
(分散や統合について)
また、上述した構成は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。また、本出願における「装置」とは、単一の装置によって構成されたものに限定されず、複数の装置によって構成されたものを含む。
【0054】
(測定について)
また、上記実施の形態の図4のSA1においては、図1の制御側第3端子T33に印加される電圧を測定し、測定した電圧の値について、電気抵抗13、14の抵抗値を考慮して制御側第1端子T31に印加される電圧に換算する場合について説明したが、これに限らない。例えば、図2の電源電圧情報として、電気抵抗13、14で分圧された値を記録した上で、制御側第3端子T33に印加される電圧を測定し、測定した電圧の値をについて換算を行わずに、無線通信用IC2に供給される電源電圧の値として用いてもよい。
【0055】
(基準範囲について)
また、上記実施の形態の図4のSA2においては、図3に図示されているように、基準範囲が5個の範囲に分けられている場合について説明したが、これに限らない。基準範囲を1個のみの範囲(一例としては、第6閾値以上~第1閾値未満の範囲等の任意の範囲)とした上で、前述の優先度を考慮せずに処理を行うように構成してもよいし、あるいは、2個~4個の範囲、又は6個以上の範囲として、前述の優先度を考慮して処理を行うように構成してもよい。
【0056】
(優先度について)
また、上記実施の形態の図4のSA2においては、第1~第3範囲の順で優先度を設定する場合について説明したが、これに限らず、他の任意の順で優先度を設定してもよい。
【0057】
(周辺温度について)
また、上記実施の形態の図2の送信電力設定用情報に対して温度情報も対応付けた上で、図1の無線通信用IC2の周辺の温度も考慮して、設定値を選択するように構成してもよい。図5は、温度対応送信電力設定用情報を例示した図である。「温度対応送信電力設定用情報」とは、前述の設定用情報であり、例えば、図2の送信電力用情報の各情報と温度情報とを対応付けた情報である。なお、「温度情報」とは、無線通信用IC2の周辺の温度を特定する温度情報である(図5では、摂氏34度を特定する「34」等)。
【0058】
具体的な実現手法は任意であるが、例えば、温度対応送信電力設定用情報が、図2の送信電力設定用情報の代わりに、当該送信電力設定用情報と同様な手法で記録部31に記録されていることとする。
【0059】
そして、図4のSA2において、まず、測定部321が、無線通信用IC2の周辺の温度を測定する。具体的な手法は任意であるが、例えば、無線通信用IC2に温度測定機能が実装されていることとし、無線通信用IC2との間で通信を行って、当該温度測定機能を利用して無線通信用IC2の周辺の温度を測定する。なお、温度測定用の不図示の温度測定用の素子が実装されていることとし、当該素子を用いて温度を測定するように構成してもよい。ここでは、例えば、34度を測定する場合を例示して説明する。
【0060】
次に、選択部322が、前述の測定した温度の値を取得し、図5の温度対応送信電力設定用情報のうちの、当該取得した温度の値に対応する情報を参照して、実施の形態で説明した場合と同様にして、設定値を選択する。ここでは、例えば、測定部321が測定した34度を取得し、図5の「温度情報」=「34」に対応する情報を参照した上で、設定値を選択する。
【0061】
このように構成することにより、測定した電源電圧の値及び周辺温度の値に基づいて、送信電力の値が基準範囲内となる設定値を選択することにより、例えば、周辺温度を考慮して適切な設定値を選択することができるので、温度変化が発生した場合であっても送信電力の値を確実に基準範囲内とすることが可能となる。
【0062】
(商用電源について)
また、上記実施の形態の図1の回路システム100の制御用IC3及び無線通信用IC2に対して、バッテリ11又は不図示の商用電源の内の何れか一方から電源電圧が供給されるように構成した上で、何れから電源電圧が供給されているかに基づいて設定値を選択するように構成してもよい。具体的な実現手法は任意であるが、例えば、図1のバッテリ11と電気抵抗13とが相互に接続されている接続点よりもバッテリ11側にスイッチング回路(接続先を切り替える任意の回路)を設け、また、商用電源からの交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換回路を当該スイッチング回路に接続した上で、制御用IC3の制御部32の制御によってスイッチング回路を切り替えることにより、バッテリ11側からの電源電圧の供給に切り替えたり、あるいは、商用電源側からの電源電圧の供給に切り替えたりできるように構成する。そして、図4のSA2において、まず、選択部322が、スイッチング回路の切り替え状態に基づいて、バッテリ11から無線通信用IC2に電源電圧が供給されているか、商用電源から無線通信用IC2に電源電圧が供給されているかを判定する。バッテリ11から無線通信用IC2に電源電圧が供給されいるものと判定した場合、実施の形態で説明した場合と同様にして図2の消費電流情報を適宜用いて1つの設定値を選択し、一方、商用電源から無線通信用IC2に電源電圧が供給されているかを判定した場合、図2の消費電流情報を用いずに、1つの設定値を選択するように構成する。なお、消費電流情報を用いずに1つの設定値を選択する場合については、例えば、図2において基準範囲内となるものと特定した設定値情報が複数存在する場合、任意の手法(例えば、最も数値が小さいものを選択する手法、あるいは、無線通信用IC2に対して現在設定されている設定値に最も近いものを選択する手法等)で1個のみ設定情報を特定し、特定した設定情報が示す設定値を選択することとしてもよい。
【0063】
このように構成することにより、バッテリ11から電源電圧が供給されている場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に基づいて1つの設定値を選択し、また、商用電源から電源電圧が供給されている場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に関わらず1つの設定値を選択することにより、例えば、バッテリ11からの電源電圧で動作しており低消費電力化が特に必要な場合にのみ消費電流を考慮することができるので、設定値を選択する処理の内容を、商用電流から電源電圧が供給されている場合簡略化することが可能となる。
【0064】
(特徴について)
また、実施の形態の特徴及び変形例の特徴を任意に組み合わせてもよい。
【0065】
(付記)
付記1の設定システムは、自己に設定される設定値及び自己に供給される電源電圧に応じた無線送信用の送信電力を出力する無線回路に前記設定値を設定する設定システムであって、複数の前記設定値と、複数の前記電源電圧の値と、少なくとも複数の前記設定値及び複数の前記電源電圧の値に対応する前記送信電力の値と、複数の前記設定値及び複数の前記電源電圧の値に対応する前記無線回路の消費電流の値とを相互に関連付けている設定用情報を格納する格納手段と、少なくとも前記無線回路に供給される前記電源電圧を測定する測定手段と、前記格納手段が格納している前記設定用情報と、前記測定手段が測定した前記電源電圧の値とに基づいて、前記送信電力の値が基準範囲内となる前記設定値を選択する選択手段と、前記選択手段が選択した前記設定値を前記無線回路に設定する設定手段と、を備え、前記選択手段は、前記送信電力の値が基準範囲内となる前記設定値が複数存在する場合、複数の前記設定値に対応する前記消費電流の値に基づいて、1つの前記設定値を選択する。
【0066】
付記2の設定システムは、付記1に記載の設定システムにおいて、前記設定用情報は、複数の前記設定値と、複数の前記電源電圧の値と、複数の周辺温度の値と、複数の前記設定値、複数の前記電源電圧の値、及び複数の前記周辺温度の値に対応する前記送信電力の値と、複数の前記設定値、複数の前記電源電圧の値、及び複数の前記周辺温度の値に対応する前記無線回路の消費電流の値とを相互に関連付けており、前記測定手段は、更に、前記無線回路の前記周辺温度を測定し、前記選択手段は、前記格納手段が格納している前記設定用情報と、前記測定手段が測定した前記電源電圧の値及び前記周辺温度の値とに基づいて、前記送信電力の値が基準範囲内となる前記設定値を選択する。
【0067】
付記3の設定システムは、付記1又は2に記載の設定システムにおいて、前記無線回路は、バッテリ又は商用電源の内の何れか一方から前記電源電圧が供給され、前記選択手段は、前記バッテリから前記無線回路に前記電源電圧が供給されている場合において、前記送信電力の値が基準範囲内となる前記設定値が複数存在する場合、複数の前記設定値に対応する前記消費電流の値に基づいて、1つの前記設定値を選択し、前記商用電源から前記無線回路に前記電源電圧が供給されている場合において、前記送信電力の値が基準範囲内となる前記設定値が複数存在する場合、複数の前記設定値に対応する前記消費電流の値に関わらず、1つの前記設定値を選択する。
【0068】
付記4の設定システムは、付記1から3の何れか一項に記載の設定システムにおいて、前記無線回路は、無線送受信回路、又は無線送信専用回路を含む。
【0069】
(付記の効果)
付記1に記載の設定システムによれば、送信電力の値が基準範囲内となる設定値が複数存在する場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に基づいて、1つの設定値を選択することにより、例えば、消費電流の値を考慮して適切な設定値を選択することができるので、無線回路の消費電力を低減することが可能となる。
【0070】
付記2に記載の設定システムによれば、測定した電源電圧の値及び周辺温度の値に基づいて、送信電力の値が基準範囲内となる設定値を選択することにより、例えば、周辺温度を考慮して適切な設定値を選択することができるので、温度変化が発生した場合であっても送信電力の値を確実に基準範囲内とすることが可能となる。
【0071】
付記3に記載の設定システムによれば、バッテリから電源電圧が供給されている場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に基づいて1つの設定値を選択し、また、商用電源から電源電圧が供給されている場合、複数の設定値に対応する消費電流の値に関わらず1つの設定値を選択することにより、例えば、バッテリからの電源電圧で動作しており低消費電力化が特に必要な場合にのみ消費電流を考慮することができるので、設定値を選択する処理の内容を、商用電流から電源電圧が供給されている場合簡略化することが可能となる。
【0072】
付記4に記載の設定システムによれば、無線回路は、無線送受信回路、又は無線送信専用回路を含むことにより、例えば、無線送受信回路又は無線送信専用回路の消費電力を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
2 無線通信用集積回路
3 制御用IC
11 バッテリ
12 アンテナ
13 電気抵抗
14 電気抵抗
31 記録部
32 制御部
100 回路システム
321 測定部
322 選択部
323 設定部
T21 無線側第1端子
T22 無線側第2端子
T23 無線側第3端子
T31 制御側第1端子
T32 制御側第2端子
T33 制御側第3端子
図1
図2
図3
図4
図5