(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097357
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】RCS構法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20240711BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 505P
E04B1/58 508P
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000768
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】593013683
【氏名又は名称】株式会社イチケン
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 孝司
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB12
2E125AC01
2E125AC15
2E125AG41
2E125AG43
2E125BB06
2E125BE07
2E125BF05
2E125CA90
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート造(RC)の柱と鉄骨造(S)の梁で構成される混合構造体を構築するRCS構法を提供する。
【解決手段】柱本体部(1a)を仕口部位の下側に梁下空間(5)を残して形成すると共に、柱本体部の上端部にラグスクリューボルト(6)を埋設してその上端を仕口部位(4)に臨ませる工程と、接合金物(7)を仕口部位(4)に設置し、該接合金物の直交梁(8)の下フランジ(8c)を前記ラグスクリューボルト(6)に固定して支持させる工程と、前記接合金物の内部空間を含んで梁下空間(5)から上階スラブ天端の高さ位置(H)までの領域(R)にコンクリートを打設することにより、柱頭部(1b)を形成し、接合金物(7)の下側にラグスクリューボルト(6)を埋設した支持部(15)を形成する工程と、その後、前記接合金物の支圧板(9)に鉄骨造の梁(2)を連結固定する工程により構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の柱と鉄骨造の梁で構成される混合構造体を構築するRCS構法であり、仕口部位に接合金物を設ける構成において、
上方に主筋を延長させた鉄筋コンクリート造の柱本体部を仕口部位(4)に向けて形成し、その際、柱本体部(1a)を仕口部位の下側に梁下空間(5)を残して形成すると共に、柱本体部の上端部にラグスクリューボルト(6)を埋設し、ラグスクリューボルトの上端を仕口部位(4)に臨ませる工程と、
上下フランジを有する断面H形部材を直交させて連結した直交梁(8)の端面に支圧板(9)を固設すると共に、隣り合う支圧板の間にふさぎ板(10)を跨設することにより挿通空間を設けた接合金物(7)を仕口部位(4)に設置し、その際、主筋(3)を前記挿通空間(11)に貫通させた状態で、前記直交梁(8)の下フランジ(8c)を前記ラグスクリューボルト(6)に固定して支持させる工程と、
前記接合金物の内部空間を含んで前記梁下空間(5)から上階スラブ天端の高さ位置(H)までの領域にコンクリートを打設することにより、柱頭部(1b)を形成し、その際、接合金物(7)の下側において柱頭部にラグスクリューボルト(6)を埋設した支持部(15)を形成する工程と、
その後、前記接合金物の支圧板(9)に鉄骨造の梁(2)を連結固定する工程とから成ることを特徴とするRCS構法。
【請求項2】
断面が矩形とされた柱の断面中心で直交するX軸とY軸に関して、矩形のコーナー部の近傍に配置された主筋(3)に対して、前記ラグスクリューボルト(6)は、両軸の両側に近接して配置されたラグスクリューボルトにより1組のボルト群(6U)を構成し、前記1組のボルト群を両軸の交点から延びるX軸とY軸に対応する個所に配置しており、
前記接合金物(7)は、直交梁(8)を構成する断面H形部材のウエブ(8a)を前記X軸とY軸に沿って設置されて成ることを特徴とする請求項1に記載のRCS構法。
【請求項3】
前記接合金物(7)は、上フランジ(8b)よりも下フランジ(8c)を広幅に形成しており、該下フランジにラグスクリューボルト(6)の上端部をナット(13)により固定するように構成されて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のRCS構法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造(RC)の柱と鉄骨造(S)の梁で構成される混合構造体を構築するRCS構法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート造の柱と鉄骨造の梁で構成される混合構造体を構築するRCS構法が公知であり、その際、仕口部位に接合金物が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-275432号公報
【特許文献2】特開2019-78068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接合金物は、十字形の直交梁に帯筋を設けた「帯筋タイプ」や、十字形の直交梁にふさぎ板を設けた「ふさぎ板タイプ」や、上下に配置したダイアフラムに直交梁を形成してふさぎ板を設けた「ダイアフラムタイプ」等が提供されている。
【0005】
一般的に、RCS構法は、上方に主筋を延長させた鉄筋コンクリート造の柱を形成する際、柱本体部を仕口部位まで形成した後、仕口部位に接合金物を設置し、その際、主筋を接合金物に貫通させ、その状態で、接合金物の内部空間を含んでコンクリートを打設することにより、柱頭部を形成し、その後、接合金物の直交梁に鉄骨造の梁を連結固定することにより、実施されている。
【0006】
従来は、接合金物を仕口部位の所定位置に正確に設置することが容易でなく、仮に正確に設置した場合でもコンクリート打設時に、位置ずれを生じるおそれがある。
【0007】
このため、接合金物は、位置決め可能な状態で容易に設置することができると共に、安定した状態で固定可能となるように構成することが望ましく、この点に解決すべき課題がある。
【0008】
更に、鉄骨造の梁を連結固定した接合金物は、仕口部位に形成された柱頭部に位置して支持されており、安定した支持が可能とされるように構成することが望ましく、この点も解決すべき課題となる。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決したRCS構法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明が手段として構成したところは、鉄筋コンクリート造の柱と鉄骨造の梁で構成される混合構造体を構築するRCS構法であり、仕口部位に接合金物を設ける構成において、上方に主筋を延長させた鉄筋コンクリート造の柱本体部を仕口部位に向けて形成し、その際、柱本体部を仕口部位の下側に梁下空間を残して形成すると共に、柱本体部の上端部にラグスクリューボルトを埋設し、ラグスクリューボルトの上端を仕口部位に臨ませる工程と、上下フランジを有する断面H形部材を直交させて連結した直交梁の端面に支圧板を固設すると共に、隣り合う支圧板の間にふさぎ板を跨設することにより挿通空間を設けた接合金物を仕口部位に設置し、その際、主筋を前記挿通空間に貫通させた状態で、前記直交梁の下フランジを前記ラグスクリューボルトに固定して支持させる工程と、前記接合金物の内部空間を含んで前記梁下空間から上階スラブ天端の高さ位置までの領域にコンクリートを打設することにより、柱頭部を形成し、その際、接合金物の下側において柱頭部にラグスクリューボルトを埋設した支持部を形成する工程と、その後、前記接合金物の支圧板に鉄骨造の梁を連結固定する工程とから成る点にある。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、断面が矩形とされた柱の断面中心で直交するX軸とY軸に関して、矩形のコーナー部の近傍に配置された主筋に対して、前記ラグスクリューボルトは、両軸の両側に近接して配置されたラグスクリューボルトにより1組のボルト群を構成し、前記1組のボルト群を両軸の交点から延びるX軸とY軸に対応する個所に配置しており、前記接合金物は、直交梁を構成する断面H形部材のウエブを前記X軸とY軸に沿って設置されている。
【0012】
前記接合金物は、上フランジよりも下フランジを広幅に形成していることが好ましく、該下フランジにラグスクリューボルトの上端部をナットにより固定するように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接合金物7を仕口部位4に設置する際、ラグスクリューボルト6により固定支持するように構成しているので、位置決めと安定状態での固定が容易になる。特に、接合金物7を含んでコンクリートを打設することにより柱頭部1bを形成したとき、接合金物7の下側には、主筋3の埋設に加えて、雄ネジを係合状態としたラグスクリューボルト6が埋設された支持部15が形成され、剛強な構造体が構成されるので、柱梁接合部の耐力向上に貢献することができる。そして、支持部15に結合されたラグスクリューボルト6に対して連結された接合金物7の連結強度が優れており、しかも、支持部15により接合金物7を下方向のみならず横方向にも強固に支持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のRCS構法の実施形態を示しており、鉄筋コンクリート造の柱の柱本体部が形成され、接合金物が設置される前の状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に関し、(A)は柱本体部の頂面を示す平面図、(B)は接合金物の構成部材を分解状態として示す斜視図である。
【
図3】柱本体部の上方で仕口部位に接合金物が設置された状態を示す斜視図である。
【
図4】仕口部位に設置された接合金物の一部を破断した状態で示す斜視図である。
【
図7】柱頭部が形成された状態を示す斜視図である。
【
図9】接合金物の別の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0016】
本発明は、鉄筋コンクリート造の柱1と鉄骨造の梁2で構成される混合構造体を構築するRCS構法に関するものであり、下記の工程により実施される。
【0017】
(柱本体部の形成工程)
鉄筋コンクリート造の柱は、従来と同様に、柱の全高にわたり延びる柱鉄筋をセットした後、型枠建込を行い、コンクリートを打設することにより形成されるが、
図1に示すように、柱1の主要部を構成する柱本体部1aが形成される。尚、図面において、フープ筋は図示省略している。
【0018】
柱本体部1aは、主筋3を上方に延ばした状態で、仕口部位4に向けて形成される。その際、仕口部位4の下側に梁下空間5を残して形成され、梁下空間5に臨む柱本体部1aの上端部にラグスクリューボルト6が埋設される。
【0019】
図示省略しているが、ラグスクリューボルト6は、外周に雄ネジを設けると共に、上端面に雌ネジ穴を設けた公知のものであり、所定長さのラグスクリューボルト6を柱本体部1aに埋入し、その上端の高さを整列した状態で仕口部位6に臨まされる。
【0020】
この際、
図2(A)に示すように、断面が矩形とされた柱本体部1aの断面中心で直交するX軸とY軸に関して、主筋3は、矩形のコーナー部の近傍に位置してコーナーのL形のラインに沿うように列設されている。これに対して、ラグスクリューボルト6は、X軸及びY軸の両側に近接して2本ずつ配置された4本により1組のボルト群6Uを構成し、このような1組のボルト群6UをX軸及びY軸の交点から延びるそれぞれのX軸及びY軸に対応する4個所に配置している。尚、図示実施形態においては、1組のボルト群6Uを4本のラグスクリューボルトより構成しているが、2本のラグスクリューボルトにより構成するようにしても良い。
【0021】
(接合金物の設置工程)
次いで、
図3に示すように、仕口部位4に接合金物7が設置される。
【0022】
図2(B)並びに
図3ないし
図6に示すように、接合金物7は、鋼板により形成されており、断面H形部材を直交させて連結した直交梁8を備え、直交梁8の端面に支圧板9を固設し、隣り合う支圧板9、9の間にふさぎ板10を跨設することにより挿通空間11を形成している。
【0023】
直交梁8を構成する断面H形部材は、ウエブ8aの上下に上フランジ8bと下フランジ8cを設けている。この際、上フランジ8bよりも下フランジ8cが広幅に形成されており、下フランジ8cには、前記ラグスクリューボルト6の上端に対応する位置に、取付孔12が穿設されている。
【0024】
そこで、接合金物7は、仕口部位4において、前記X軸とY軸に対して、直交梁8を構成する断面H形部材のウエブ8aが沿わされるようにして、設置される。この際、主筋3を前記挿通空間11に貫通させた状態で、直交梁8の下フランジ8cが前記ラグスクリューボルト6の上端部に支持されて固定される。
【0025】
下フランジ8cとラグスクリューボルト6を固定するための手段は、特に限定されないが、図示実施形態の場合、
図6に示すように、ラグスクリューボルト6の上端近傍部に螺着した支持ナット13に下フランジ8cを載置させ、支持ナット13から挿出したラグスクリューボルト6の上端を前記取付孔12に挿通し、該上端の端面に形成されている雌ネジ穴に締結ボルト14を螺着することにより固定している。これにより、接合金物7を設置する際の位置決めと固定が容易であり、しかも、支持ナット13を調節することにより接合金物7のレベル調整も可能である。
【0026】
(柱頭部の形成工程)
上述のように接合金物7を仕口部位4においてラグスクリューボルト6により固定した状態で、型枠を組むことにより、
図7及び
図8に示すように、接合金物7の内部空間を含んで前記梁下空間5から上階スラブ天端の高さ位置Hまでの領域Rにコンクリートを打設し、これにより柱頭部1bを形成する。
【0027】
この際、ラグスクリューボルト6は、外周に雄ネジを設けているので、コンクリートに係合状態で埋設される。このため、柱頭部1bには、接合金物7の下側の前記梁下空間5に対応する部分において、コンクリート中に主筋3だけでなく同時にラグスクリューボルト6を埋設した支持部15が形成される。
図2(A)に示したように、矩形断面のコーナー部に主筋3が埋設され、X軸及びY軸に沿う4個所にラグスクリューボルト6のボルト群6Uが埋設されるので、剛強な支持部15が形成される。
【0028】
接合金物7は、内部空間に充填されたコンクリートを上下方向に挿通された主筋3と共に拘束し、圧縮束(ストラット)の形成に寄与すると共に、直交梁8をコンクリート中に埋入することにより、柱頭部1bに一体結合される。
【0029】
前記支持部15は、コンクリート中に主筋3とラグスクリューボルト6を埋設した剛強な構造体を形成しており、ラグスクリューボルト6を接合金物7の下フランジ8cに連結することにより、接合金物7を強固に支持する。これにより、柱梁接合部の耐力が大きく向上することになる。そして、支持部15により、接合金物7の下向き荷重が支持されるだけでなく、接合金物7が柱頭部1bを剪断する方向の横向き荷重を強固に支持することができる。
【0030】
(梁の連結工程)
以上の工程の後、
図7に示すように、柱頭部1bに一体結合された接合金物7の支圧板9に対して、鉄骨造の梁2が連結固定される。連結固定の方法は、従来と同様に、溶接その他により行われる。
【0031】
(接合金物の別の実施形態)
図9は、接合金物7の別の実施形態を示している。接合金物7は、前記支圧板9に断面H形の梁接続部材16を溶接等により固設している。この場合、梁接続部材16は、鉄骨造の梁2を構成するH形鋼と同様に、同幅に形成された上下フランジ16a、16bを有しているおり、下フランジ16bに水平ハンチ17を設けた状態で支圧板9に固着されている。
【0032】
接合金物7のその他の構成は、上述した実施形態の構成と同様であり、
図9に示すように、鉄骨造の梁2は、前記梁接続部材16に連結固定される。
【符号の説明】
【0033】
1 鉄筋コンクリート造の柱
1a 柱本体部
1b 柱頭部
2 鉄骨造の梁
3 主筋
4 仕口部位
5 梁下空間
6 ラグスクリューボルト
7 接合金物
8 直交梁
8a ウエブ
8b 上フランジ
8c 下フランジ
9 支圧板
10 ふさぎ板
11 挿通空間
12 取付孔
13 支持ナット
14 締結ボルト
15 支持部
16 梁接続部材
16a 上フランジ
16b 下フランジ
17 水平ハンチ