(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097390
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240711BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000804
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】明石 彩
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】野口 祥太
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA07C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK05A
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4F100AL07B
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4F100JL01
4F100JL10A
4F100JL11B
4F100JN01C
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】植物由来の材料を用いて形成した場合であっても、表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シートを提供する。
【解決手段】化粧シート1は、着色熱可塑性樹脂層2と接着性樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層5と表面保護層6とがこの順に積層された積層体を有し、着色熱可塑性樹脂層2は、植物由来のポリエチレンを含み、透明熱可塑性樹脂層5は、ナノ化処理した造核剤が添加されたポリプロピレンを含み、表面保護層6は、紫外線硬化型樹脂を含む。透明熱可塑性樹脂層5はナノ化処理した造核剤が添加されたポリプロピレンを含み、表面保護層6は紫外線硬化型樹脂を含む構成としたため、着色熱可塑性樹脂層2が植物由来のポリエチレンを含む場合であっても、表面硬度の低下を抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色熱可塑性樹脂層と接着性樹脂層と透明熱可塑性樹脂層と表面保護層とがこの順に積層された積層体を有し、
前記着色熱可塑性樹脂層は、植物由来のポリエチレンを含み、
前記透明熱可塑性樹脂層は、ナノ化処理した造核剤が添加されたポリプロピレンを含み、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含むことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記造核剤は、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記着色熱可塑性樹脂層を形成する樹脂組成物は、植物由来のエチレンを、前記樹脂組成物の全体に対して5質量[%]以上含み、
前記着色熱可塑性樹脂層の密度は、0.92[g/cm3]以上1.45[g/cm3]以下の範囲内であり、
前記着色熱可塑性樹脂層の厚さは、40μm以上200μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。
【請求項4】
前記着色熱可塑性樹脂層と前記接着性樹脂層との間に絵柄層を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記絵柄層は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含み、
前記ポリオール、前記イソシアネート化合物、及び前記ヒドロキシ(メタ)アクリレートのうちいずれかは、植物由来の成分を含んでもよく、含んでいなくてもよい請求項4に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記ポリオールは、植物由来の成分を含むポリエステルポリオール、植物由来の成分を含むポリエーテルポリオール、及び植物由来の成分を含むポリカーボネートポリオールのうちいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記ポリエステルポリオールは、植物由来の成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の成分を含む多官能カルボン酸との反応物、又は、化石燃料由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含む多官能カルボン酸との反応物であることを特徴とする請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記ポリエーテルポリオールは、植物由来の成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の成分を含む多官能イソシアネートとの反応物、又は、化石燃料由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含む多官能イソシアネートとの反応物であることを特徴とする請求項6に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記ポリカーボネートポリオールは、植物由来の成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の成分を含むカーボネートとの反応物、又は、化石燃料由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含むカーボネートとの反応物であることを特徴とする請求項6に記載の化粧シート。
【請求項10】
前記イソシアネート化合物は、植物由来の成分を含むイソシアネート化合物であることを特徴とする請求項5に記載の化粧シート。
【請求項11】
前記着色熱可塑性樹脂層の前記接着性樹脂層とは逆側の面に、プライマー層を備えることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項12】
前記表面保護層は、前記電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項13】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1又は請求項2に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧シート及び化粧材の材料としては、化石燃料由来の材料を用いることが一般的であったが、近年では、環境問題を考慮して、化石燃料由来の材料から、植物由来の材料へ代替することが要求されている。このため、例えば、特許文献1に開示されているように、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレンやブチレンを、再生可能な天然原料から製造する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化石燃料の使用量を削減した化粧シートを形成する技術としては、特許文献1に開示されている技術の他に、植物由来(バイオマス)のプラスチックを用いて化粧シートを形成する技術が提案されている。しかしながら、現時点では、化粧シートの材料として適切な植物由来のプラスチックを得ることが困難であるため、化粧シートとして必要な表面硬度を得ることが困難である。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑み、植物由来の材料を用いた場合でも表面硬度の低下を抑制することが可能な化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、着色熱可塑性樹脂層と接着性樹脂層と透明熱可塑性樹脂層と表面保護層とがこの順に積層された積層体を有し、着色熱可塑性樹脂層は、植物由来のポリエチレンを含み、透明熱可塑性樹脂層は、ナノ化処理した造核剤が添加されたポリプロピレンを含み、表面保護層は、紫外線硬化型樹脂を含む、化粧シートが提供される。
また、本発明の他の態様によれば、基材と、基材の少なくとも一方の面に積層された上記態様の化粧シートと、を有する、化粧材が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、植物由来の材料を用いた場合でも表面硬度の低下を抑制することが可能な、化粧シート及び化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態に係る化粧シートの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】第一実施形態の変形例に係る化粧シートの構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】第二実施形態に係る化粧材の構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】第二実施形態の変形例に係る化粧材の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
(第一実施形態)
以下、
図1を参照して、第一実施形態における化粧シート1の構成について説明する。
化粧シート1は、
図1に示すように、着色熱可塑性樹脂層2(着色基材層)と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明熱可塑性樹脂層5(透明樹脂層)と、表面保護層6と、を備える。
【0011】
<着色熱可塑性樹脂層>
着色熱可塑性樹脂層2は、熱可塑性樹脂を用いて形成された樹脂層であり、植物由来(バイオマス由来)のポリエチレンを含む樹脂組成物で形成されている。
【0012】
(植物由来のポリエチレン)
第一実施形態において、着色熱可塑性樹脂層2を形成する樹脂組成物が含む植物由来のポリエチレンは、植物由来のエチレンを含むモノマーを重合して形成されている。植物由来のエチレンは、特に限定されず、従来から公知の方法により製造されたエチレンを用いることが可能である。すなわち、原料であるモノマーとして植物由来のエチレンを用いるため、重合して形成されたポリエチレンは、植物由来のポリエチレンとなる。
なお、ポリエチレンの原料であるモノマーの構成は、植物由来のエチレンを100質量[%]含む構成に限定されるものではない。
したがって、着色熱可塑性樹脂層2を形成する樹脂組成物が含む植物由来のポリエチレンを、植物由来の原料であるエチレンを用いて形成することで、理論上では、100[%]植物由来の成分により、植物由来のポリエチレンを製造することが可能となる。
【0013】
上述したポリエチレン中の植物由来のエチレン濃度(以下、「バイオマス度」と記載する場合がある)は、放射性炭素(C14)測定による植物由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えば、トウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中には、C14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエチレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、植物由来の炭素の割合を算出することが可能である。第一実施形態においては、ポリエチレン中のC14の含有量をPC14とした場合の、植物由来の炭素の含有量Pbioを、以下の式を用いて算出することが可能である。
Pbio([%])=PC14/105.5×100
【0014】
第一実施形態においては、理論上、ポリエチレンの原料として、全て、植物由来のエチレンを用いることで、植物由来のエチレン濃度が100[%]となり、植物由来のポリエチレンのバイオマス度が100となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来が含むポリエチレン中の、植物由来のエチレン濃度は0[%]であり、化石燃料由来のポリエチレンの、バイオマス度は0となる。
なお、第一実施形態において、植物由来のポリエチレンや、植物由来のポリエチレンを含んで構成された化粧シート1は、バイオマス度が100である必要はない。
また、第一実施形態において、植物由来のエチレンを含むモノマーの重合方法は、特に限定されず、従来から公知の方法により行うことが可能である。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節することが好適である。また、重合装置についても特に限定されず、従来から公知の装置を用いることが可能である。
【0015】
以下、エチレンを含むモノマーの重合方法の一例を説明する。
エチレン重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体の重合方法は、目的とするポリエチレンの種類、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の密度や分岐の違いにより、適宜選択することが可能である。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合、及び高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で行うことが好ましい。
また、植物由来のポリエチレンとして、エチレンの重合体やエチレンとα-オレフィンの共重合体を、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0016】
(植物由来のポリエチレンを含む樹脂組成物)
第一実施形態において、着色熱可塑性樹脂層2を形成する樹脂組成物は、上述したポリエチレンを主成分として含む。着色熱可塑性樹脂層2を形成する樹脂組成物は、植物由来のエチレンを、樹脂組成物の全体に対して5質量[%]以上、好ましくは5質量[%]以上95質量[%]以下、より好ましくは25質量[%]以上80質量[%]以下の範囲内で含む。これは、樹脂組成物が含む植物由来のエチレンの濃度が5質量[%]以上であれば、従来と比較して化石燃料の使用量を削減することが可能であり、カーボンニュートラルな化粧シートを実現することが可能となることに起因する。
【0017】
また、着色熱可塑性樹脂層2を形成する樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリエチレンを2種以上含むものであってもよく、樹脂組成物全体として、植物由来のエチレンの濃度が、上述した範囲内であればよい。
着色熱可塑性樹脂層2は、植物由来のポリエチレンとして、植物由来の高密度ポリエチレンと、植物由来の低密度ポリエチレンや化石燃料由来の低密度ポリエチレンとを含むものであってもよい。また、着色熱可塑性樹脂層2全体のバイオマス度が、10[%]以上90[%]以下の範囲内であってもよい。
なお、植物由来の高密度ポリエチレンとは、密度が0.94[g/cm3]を超えるポリエチレンを示す。また、植物由来の低密度ポリエチレンとは、密度が0.94[g/cm3]以下のポリエチレンを示す。
【0018】
着色熱可塑性樹脂層2は、植物由来のポリエチレンとして、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとが100:0以上70:30以下の範囲内でブレンドされたものであってもよい。これは、低密度ポリエチレンの含有量が少ないと製膜安定性が悪く、低密度ポリエチレンの含有量が多いと柔らかくなりすぎてしまうという問題を抑制するためである。
着色熱可塑性樹脂層2の製造方法は、特に限定されず、従来から公知の方法を用いることが可能である。第一実施形態では、一例として、着色熱可塑性樹脂層2を、カレンダー成形により形成した場合について説明する。
【0019】
また、着色熱可塑性樹脂層2には、必要に応じて、特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリエチレン以外に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤、艶調整剤、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、耐候剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料等を添加することが可能である。
また、添加剤は、着色熱可塑性樹脂層2を形成する樹脂組成物100質量[%]に対して、例えば、1質量[%]以上20質量[%]以下の範囲内、好ましくは、1質量[%]以上10質量[%]以下の範囲内で添加する。
【0020】
着色熱可塑性樹脂層2の密度は、0.92[g/cm3]以上1.45[g/cm3]以下の範囲内であることが好ましく、1.02[g/cm3]以上1.40[g/cm3]以下の範囲内であることがより好ましい。これは、着色熱可塑性樹脂層2の密度が0.92[g/cm3]以上である場合、着色熱可塑性樹脂層2の剛性を高めることが可能であることに起因する。また、着色熱可塑性樹脂層2の密度が1.45[g/cm3]以下の範囲内である場合、着色熱可塑性樹脂層2の隠蔽性や機械的強度を高めることが可能であることに起因する。
また、着色熱可塑性樹脂層2の密度は、着色熱可塑性樹脂層2に対して、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。
【0021】
着色熱可塑性樹脂層2の厚さは、40[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることが好ましく、50[μm]以上100[μm]以下の範囲内であることがより好ましい。
これは、着色熱可塑性樹脂層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、着色熱可塑性樹脂層2の厚さが200[μm]以下である場合、着色熱可塑性樹脂層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0022】
<絵柄層>
絵柄層3は、着色熱可塑性樹脂層2の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄層3は、着色熱可塑性樹脂層2の着色で代用することが可能である場合には、省略することも可能である。
また、絵柄層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
絵柄層3は、着色剤とバインダ樹脂とを含んで形成される。
以下、絵柄層3が含むバインダ樹脂について説明する
【0023】
〔バインダ樹脂〕
絵柄層3が含むバインダ樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレートを含む。ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物である。
また、絵柄層3において、ウレタン(メタ)アクリレートを構成するポリオール、イソシアネート化合物、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ポリオール、イソシアネート化合物、ヒドロキシ(メタ)アクリレートのうちいずれかは、植物由来の成分を含んでもよく、含んでいなくてもよい。以下の説明において、植物由来の成分を含むウレタン(メタ)アクリレートを、バイオウレタン(メタ)アクリレートと記載する場合がある。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールと、イソシアネートと、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。バイオウレタン(メタ)アクリレ
ートにおいては、ポリオールとして植物由来のポリオール、イソシアネートとして植物由来のイソシアネート、又はポリオール及びイソシアネートが植物由来のものを使用することが可能である。
【0025】
植物由来のポリオールとしては、植物由来の成分を含むポリエステルポリオール、植物由来の成分を含むポリエーテルポリオール、植物由来の成分を含むポリカーボネートポリオールのうちいずれかである。
植物由来の成分を含むポリエステルポリオールは、官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物である。植物由来の成分を含むポリエーテルポリオールは、官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物である。植物由来の成分を含むポリカーボネートポリオールは、官能アルコールとカーボネートとの反応物である。
以下、各ポリオールについて説明する。
【0026】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールが植物由来の成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能カルボン酸のうち少なくとも一方が植物由来の成分を含む。植物由来の成分を含むポリエステルポリオールとしては、以下の例がある。
・植物由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含む多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含む多官能カルボン酸との反応物
・植物由来の成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の成分を含む多官能カルボン酸との反応物
【0027】
植物由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、及びサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることが可能である。植物由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用することが可能である。これらは、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0028】
植物由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法のような、バイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較して、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、さらに、製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
植物由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、コハク酸を水添することによって製造することが可能である。
植物由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することが可能である。
【0029】
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることが可能である。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することが可能であり、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノ
ナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することが可能である。これらは、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
植物由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることが可能である。植物由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等がある。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本発明では、特に、植物由来のコハク酸又は植物由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0031】
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることが可能である。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することが可能であり、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、及びダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等がある。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することが可能であり、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、及びピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることが可能である。これらは、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0032】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールが植物由来の成分を含む場合、多官能アルコール及び多官能イソシアネートのうち少なくとも一方が植物由来の成分を含む。植物由来の成分を含むポリエーテルポリオールとしては、以下の例がある。
・植物由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含む多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含む多官能イソシアネートとの反応物
・植物由来の成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の成分を含む多官能イソシアネートとの反応物
植物由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述したポリエステルポリオールにおいて説明した、植物由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることが可能である。
【0033】
植物由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることが可能である。植物由来の多官能イソシアネートは、例えば、植物由来のジイソシアネートである。植物由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等がある。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることが可能である。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0034】
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法がある。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミン又はその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本発明において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(商品名:スタビオ(登録商標))がある。
【0035】
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず、従来から公知の物を使用することが可能であり、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジル等の芳香族ジイソシアネート等がある。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0036】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールが植物由来の成分を含む場合、ポリカーボネートポリオールとしては、植物由来の成分を含む多官能アルコールと、化石燃料由来の成分を含むカーボネートとの反応物、又は、化石燃料由来成分を含む多官能アルコールと、植物由来の成分を含むカーボネートとの反応物を用いることが可能である。
カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
植物由来の多官能アルコールとしては、上述したポリエステルポリオールにおいて説明した植物由来の多官能アルコールを用いることが可能である。
【0037】
<イソシアネート化合物>
イソシアネート化合物は、植物由来の成分を含むイソシアネート化合物である。
植物由来の成分を含むイソシアネート化合物としては、ポリエーテルポリオールにおいて説明した植物由来の多官能イソシアネートを用いることが可能である。
【0038】
<ヒドロキシ(メタ)アクリレート>
次に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートについて説明する。
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2 -ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を一つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を二つ以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
また、絵柄層3のバインダ樹脂は、上述したバイオウレタン(メタ)アクリレートに加えて、ニトロセルロースを含んで形成されていてもよい。つまり、絵柄層3は、上述のバイオウレタン(メタ)アクリレートを含んでいてもよいし、バイオウレタン(メタ)アクリレートに加えてニトロセルロースを含んでいてもよい。
【0039】
<ニトロセルロース>
ニトロセルロースは、セルロース骨格の水酸基の一部を硝酸エステル化した、ニトロ基置換体のセルロース系樹脂である。ニトロセルロース樹脂のセルロース骨格は、バイオマス材料である。ニトロセルロースとしては、一般的なニトロセルロースを支障無く利用することが可能であるが、とりわけ、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個あたり、平均して1.3個以上2.7個以下の範囲内であるニトロ基で置換されたものを利用することが好ましい。
ニトロセルロースには、分子量に応じてLタイプとHタイプがある。有機溶剤に対する溶解性の面からは、Lタイプのものを利用することが好ましい。
【0040】
絵柄層3は、バイオマス由来の材料を含む場合、好ましくは5[%]以上、より好ましくは5[%]以上50[%]以下の範囲内、さらに好ましくは10[%]以上50[%]以下の範囲内であるバイオマス度を有する。バイオマス度が上述した範囲内であれば、化石燃料の使用量を削減することが可能となり、環境負荷を減らすことが可能となる。
絵柄層3の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m2]以上15[g/m2]以下の範囲内、より好ましくは3[g/m2]以上10[g/m2]以下の範囲内、さらに好ましくは6[g/m2]以上9[g/m2]以下の範囲内である。
「バイオマス度」について、例えばバイオウレタン(メタ)アクリレートの場合には、上述のとおり、放射性炭素(C14)測定による植物由来の炭素の含有量を測定した値として求められる。
【0041】
また「バイオマス度」について、例えば、ニトロセルロースの場合には、出発物質であるセルロース骨格を構成するグルコース単位1個(式量=172)当たりに含まれる水酸基の数が3個であるから、水酸基の1~3個が硝酸エステル化し(水素がニトロ基(非バイオマス材料、式量=46)に置換され)得る。そうすると、元のセルロース骨格がバイオマス材料100重量[%]であるとして、グルコース単位1個当たりの置換されたニトロ基の数が平均してn個の場合、ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合(重量[%])は、(172-n)×100/(172-n+46n)で算出される。
ニトロセルロース分子全体に占めるバイオマス材料の割合は、セルロース骨格を構成するグルコース単位1個当たり、平均して1個のニトロ基で置換された場合は約78.8重量[%]、2個のニトロ基で置換された場合は約64.9重量[%]、3個のニトロ基に置換された場合は約55.0重量[%]になる(上述した式を用いた計算値)。
【0042】
絵柄層3の絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いることが可能である。
また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層3と着色熱可塑性樹脂層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
【0043】
絵柄層3の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、より好ましくは0.5[μm]以上5[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは0.7[μm]以上3[μm]以下の範囲内に設定する。これは、絵柄層3の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
なお、絵柄層3は、化粧シート1に複数設けられていてもよい。
【0044】
また、絵柄層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色熱可塑性樹脂層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
【0045】
<接着性樹脂層>
接着性樹脂層4は、絵柄層3の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、絵柄層3と透明熱可塑性樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着性樹脂層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に、透明熱可塑性樹脂層5との接着性から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0046】
<透明熱可塑性樹脂層>
透明熱可塑性樹脂層5は、接着性樹脂層4の一方の面(
図1では、上側の面)に積層された層である。
透明熱可塑性樹脂層5を形成する樹脂組成物は、透明な化石燃料由来のポリプロピレンを含む。
また、透明熱可塑性樹脂層5には、ナノサイズの添加剤が含まれている。
ナノサイズの添加剤とは、添加剤をナノサイズ化する手法(ナノ化処理)によってナノサイズの粒子とされた添加剤のことである。
ナノ化処理としては、例えば、固相法、液相法、気相法等の方法を用いることが可能である。
【0047】
固相法は、添加剤に対して、主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る方法である。また、固相法としては、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等を用いることが可能である。
液相法は、添加剤や当該添加剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う方法である。また、液相法としては、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等を用いることが可能である。
気相法は、添加剤や当該添加剤からなるガスや蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う方法である。また、気相法としては、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等を用いることが可能である。
【0048】
以下、ナノ化処理のより具体的な方法を説明する。
固相法の具体例では、例えば、100[g]のイソプロピルアルコールと、50[g]の2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウムとの混合物を、ビーズミルで60分間、30[μm]の安定化ジルコニアビーズを用いて、平均粒子径が100[nm]以上150[nm]以下程度の範囲内である、ナノサイズの造核剤粒子を得る。
また、晶析法の具体例では、例えば、キシレン96[g]、72[g]のイソプロピルアルコールと、24[g]の水とを混合した混合溶媒に、50[g]の2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウムを溶解させた溶液を、マイクロリアクター内でエタノール等の貧溶媒と接触させることで、平均粒子径が1[nm]以上150[nm]以下の範囲内である、ナノサイズの造核剤粒子を析出させる。
【0049】
また、添加剤内包ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞状のカプセルのことであり、特に、内部に液相を含むものが添加剤内包ベシクルと呼ばれている。本発明においては、液相中に添加剤が含まれている場合について説明する。また、添加剤内包ベシクルは、互いの外膜同士が反発し合う作用によって粒子が凝集することがなく、極めて高い分散性を有している。そして、互いの外膜同士が反発し合う作用によって、各樹脂層を構成する樹脂組成物中に対し、添加剤を均一に分散させることを可能とする。
ナノ化処理の中で、ナノサイズの添加剤を添加剤内包ベシクルとして得る手法(ベシクル化処理)としては、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法等を用いることが可能である。
【0050】
以下、ベシクル化処理について説明する。
Bangham法は、フラスコ等の容器にクロロホルム又はクロロホルム/メタノール混合溶媒を入れ、さらにリン脂質を入れて溶解させる。その後、エバポレータを用いて溶媒を除去することで、脂質を含む薄膜を形成し、添加剤の分散液を加えた後、ボルテックスミキサーで水和・分散させることにより、ベシクルを得る方法である。
エクストルージョン法は、薄膜のリン脂質溶液を調液し、Bangham法において外部摂動として用いたミキサーに代えてフィルターを通過させることにより、ベシクルを得る方法である。
水和法は、Bangham法とほぼ同じ調製方法であるが、ミキサーを用いずに、穏やかに攪拌することで分散させてベシクルを得る方法である。
【0051】
逆相蒸発法は、リン脂質をジエチルエーテルやクロロホルムに溶解し、添加剤を含んだ溶液を加えてW/Oエマルジョンを形成し、形成したエマルジョンから減圧下において有機溶媒を除去した後、水を添加することによりベシクルを得る方法である。
凍結融解法は、外部摂動として冷却・加熱を用いる方法であり、冷却・加熱を繰り返すことによりベシクルを得る方法である。
特に、単層膜の外膜を備える添加剤内包ベシクルを得るための方法として、超臨界逆相蒸発法が挙げられる。
【0052】
超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下、もしくは、圧力条件下の二酸化炭素を用いて、対象物質を内包したカプセルを作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98[℃])及び臨界圧力(7.3773±0.0030[MPa])以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味する。また、臨界点以上の温度条件下、もしくは、圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0053】
超臨界逆相蒸発法による具体的なベシクル化処理は、超臨界二酸化炭素と、分散剤としてのリン脂質と、内包物質としての添加剤の混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって超臨界二酸化炭素と水相のエマルションを生成する。その後に減圧すると、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が添加剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセルが生成される。超臨界逆相蒸発法を用いることにより、添加剤粒子表面で分散剤が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することが可能となるので、より小径なカプセルを調製することが可能となる。なお、多重膜のカプセルとしたい場合には、リン脂質、添加剤、水相の混合流体中に超臨界二酸化炭素を注入することで、容易に作製することが可能となる。添加剤内包ベシクルを調製する際に用いるリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセルロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質等が挙げられる。また、添加剤内包ベシクルは、リン脂質の外膜を備えることにより、樹脂材料との優れた相溶性を実現することが可能である。
【0054】
また、添加剤内包ベシクルは、分散剤を含む外膜を備えていてもよい。分散剤としては、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂等が挙げられる。高分子系の界面活性剤としては、脂肪族多価ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アルキルアミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸、ラウリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、モンタン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ミリスチン酸等とリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム等が結合したものが挙げられる。シランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。チタネートカップリング剤としては、テトラキス[2,2-ビス(アリルオキシメチル)ブトキシ]チタン(IV)、ジ-i-プロポキシチタンジオソステアレート、(2-nーブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン等が挙げられる。シリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等のオレフィンを重合又は、ポリオレフィンを熱分解したもので、それをさらに酸化又はマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸等によって変性したものが挙げられる。樹脂としては、ポリオレフィンをマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸等によって変性したものが挙げられる。
【0055】
以上により、透明熱可塑性樹脂層5には、ナノ化処理した造核剤が添加されている。
また、透明熱可塑性樹脂層5に添加されている造核剤は、例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウムを含む。
透明熱可塑性樹脂層5の厚さは、例えば、10[μm]以上150[μm]以下の範囲内、好ましくは55[μm]以上100[μm]以下の範囲内、より好ましくは60[μm]以上80[μm]以下の範囲内とする。
これは、透明熱可塑性樹脂層5の厚さが10[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、透明熱可塑性樹脂層5の厚さが150[μm]以下である場合、透明熱可塑性樹脂層5を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0056】
透明熱可塑性樹脂層5の密度は、0.90[g/cm3]以上0.96[g/cm3]以下の範囲内であることが好ましく、好ましくは0.90[g/cm3]以上0.91[g/cm3]以下の範囲内であることがより好ましい。
これは、透明熱可塑性樹脂層5の密度が0.90[g/cm3]以上である場合、透明熱可塑性樹脂層5の剛性を高めることが可能であることに起因する。また、透明熱可塑性樹脂層5の密度が0.96[g/cm3]以下である場合、透明熱可塑性樹脂層5の透明性や機械的強度を高めることが可能であることに起因する。
【0057】
また、透明熱可塑性樹脂層5の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。
透明熱可塑性樹脂層5を製造する方法は、特に限定されず、従来から公知の方法を用いることが可能である。第一実施形態では、透明熱可塑性樹脂層5を押出成形で形成する場合について説明する。また、押出成形は、Tダイ法又はインフレーション法により行われることが好ましい。
【0058】
透明熱可塑性樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明熱可塑性樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
【0059】
<表面保護層>
表面保護層6は、透明熱可塑性樹脂層5の一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。表面保護層6は、透明熱可塑性樹脂層5及び接着性樹脂層4を通して、絵柄層3の絵柄及び着色熱可塑性樹脂層2を透視できる程度に透明又は半透明な材料で形成されている。
表面保護層6の材料としては、紫外線硬化型樹脂が用いられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。
表面保護層6を、硬度が高い紫外線硬化型樹脂を用いて形成することにより、化粧シート1の最表面層の硬度を向上でき、化粧シート1の耐摩耗性や、耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性を向上できる。なお、表面保護層6の材料として、紫外線硬化型樹脂に替えて、他の電離放射線硬化型樹脂を用いてもよい。
また、表面保護層6には、紫外線硬化型樹脂の他に、熱硬化型樹脂等が添加されていてもよい。
表面保護層6の厚さは、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、より好ましくは3[μm]以上10[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは6[μm]以上9[μm]以下の範囲内である。
【0060】
表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。
また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この第一実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0061】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)化粧シート1は、着色熱可塑性樹脂層2と接着性樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層5と表面保護層6とがこの順に積層された積層体を備える。また、着色熱可塑性樹脂層2は、植物由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成されており、透明熱可塑性樹脂層5には、ナノ化処理した造核剤が添加され、さらに、表面保護層6は、紫外線硬化型樹脂を含んで形成されている。
その結果、ナノ化処理した造核剤を透明熱可塑性樹脂層5に添加し、さらに表面保護層6そ紫外線硬化型樹脂を含んで形成することで、植物由来のプラスチックを着色熱可塑性樹脂層2の材料として用いた構成であっても、表面の耐擦傷性を向上させることが可能となる。これにより、表面硬度の低下を抑制することが可能な、化粧シート1を実現することができる。
(2)また、植物由来のプラスチックを材料として用いることで、製造に要する化石燃料の使用量を削減することができる。
【0062】
(3)また、再生可能な資源である植物由来のポリエチレンを原料に用いて化粧シート1を形成するため、石油資源の節約を可能とすると共に、二酸化炭素の排出量削減を削減させて、環境に与える負荷を低減させることが可能となる。これにより、持続可能な社会への貢献度を向上させることができる。
(4)さらに、ナノ化処理した造核剤を透明熱可塑性樹脂層5に添加することで、透明度を向上させることが可能となり、化粧シート1の意匠性を向上させることができる。これに加え、V溝曲げ加工等、後加工の影響を低減させることが可能となり、化粧シート1の耐後加工性、例えば、化粧シート1の曲げ加工適正を向上させることができる。
【0063】
<第一実施形態の変形例>
第一実施形態では、化粧シート1の構成を、着色熱可塑性樹脂層2と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明熱可塑性樹脂層5と、表面保護層6を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧シート1の構成を、
図2に示すように、着色熱可塑性樹脂層2と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明熱可塑性樹脂層5と、表面保護層6に加え、凹凸部7を備える構成としてもよい。なお、凹凸部7は、表面保護層6から透明熱可塑性樹脂層5にかけて、複数箇所に設けた凹部によって形成されている。
【0064】
(第二実施形態)
以下、
図1及び
図2を参照しつつ、
図3を用いて、第二実施形態における化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、
図3に示すように、化粧シート1と、基材9と、を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
基材9は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を用いて板状に形成されており、一方の面(
図3では、上側の面)に、化粧シート1が積層されている。すなわち、化粧材10は、基材9と、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える。
【0065】
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、
図3に示すように、着色熱可塑性樹脂層2(着色基材層)と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明熱可塑性樹脂層5(透明樹脂層)と、表面保護層6と、プライマー層8と、を備える。なお、プライマー層8以外の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色熱可塑性樹脂層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色熱可塑性樹脂層2の他方の面(
図3では、下側の面)に積層されている。
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合しても良い。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
【0067】
なお、上述した第二実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第二実施形態に限定されることはなく、この第二実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0068】
(第二実施形態の効果)
第二実施形態の化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)化粧材10は、基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1と、を備える。
その結果、ナノ化処理した造核剤を透明熱可塑性樹脂層5に添加し、表面保護層6に紫外線硬化型樹脂を含むことで、植物由来のプラスチックを着色熱可塑性樹脂層2の材料として用いた構成であっても、表面の耐擦傷性を向上させることができる。これにより、表面硬度の低下を抑制することが可能な、化粧材10を提供することができる。
(2)また、植物由来のプラスチックを材料として用いることで、製造に要する化石燃料の使用量を削減することができる。
【0069】
(3)また、再生可能な資源である植物由来のポリエチレンを原料に用いて化粧材10を形成するため、石油資源の節約を可能とすると共に、二酸化炭素の排出量削減を削減させて、環境に与える負荷を低減させることが可能となる。これにより、持続可能な社会への貢献度を向上させることができる。
(4)さらに、ナノ化処理した造核剤を透明熱可塑性樹脂層5に添加することで、透明度を向上させることが可能となり、化粧材10の意匠性を向上させることが可能となる。これに加え、V溝曲げ加工等、後加工の影響を低減させることが可能となり、化粧材10の耐後加工性、例えば、化粧材10の曲げ加工適正を向上させることができる。
【0070】
<第二実施形態の変形例>
(1)第二実施形態では、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に加え、基材9の他方の面(
図3では、下側の面)に積層された化粧シート1を備える構成としてもよい。
(2)第二実施形態では、化粧シート1の構成を、着色熱可塑性樹脂層2と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明熱可塑性樹脂層5と、表面保護層6を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧シート1の構成を、
図4に示すように、着色熱可塑性樹脂層2と、絵柄層3と、接着性樹脂層4と、透明熱可塑性樹脂層5と、表面保護層6と、プライマー層8と、に加え、さらに凹凸部7を備える構成としてもよい。
【実施例0071】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例1の化粧シートと、比較例1及び2の化粧シート、さらに参考例1の化粧シートについて説明する。
【0072】
(実施例1)
着色熱可塑性樹脂層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含み、密度が0.96[g/cm3]である樹脂組成物を用いて、厚さを55[μm]として形成した。なお、着色熱可塑性樹脂層のバイオマス度は、約80%である。
絵柄層は、着色熱可塑性樹脂層の一方の面にコロナ放電処理を施した後に、ウレタン系印刷インキを用いて形成した。
【0073】
接着性樹脂層は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を用いて透明な接着性樹脂層を形成した。また、接着性樹脂層と透明熱可塑性樹脂層との間に、ウレタン系の接着剤層を設けた。
透明熱可塑性樹脂層は、まず、アイソタクチックペンタッド分率が97.8[%]であり、MFR(メルトフローレート)が15[g/10min(230℃)]であり、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944)を2000PPMと、固相法によりナノ化処理した2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム1000PPMとを添加した樹脂を、溶融押出機を用いて押出し、透明熱可塑性樹脂層として使用する厚さが100[μm]の高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した、さらに、製膜した透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施して、表面の濡れ張力を40[dyn/cm]以上として、厚さが70[μm]の透明熱可塑性樹脂層を形成した。なお、押出製膜時における冷却条件のコントロールにより、製膜された透明樹脂シートの結晶性ポリプロピレン樹脂のヘイズ値は8.5%となった。
すなわち、透明熱可塑性樹脂層は、ナノ化処理した造核剤を添加した化石燃料由来のホモポリプロピレン樹脂を用いて形成した。
【0074】
表面保護層は、ウレタン系の紫外線硬化型樹脂を含む樹脂組成物を主成分として形成した。
プライマー層は、ポリエステルウレタン樹脂を用いて、着色熱可塑性樹脂層の絵柄層とは逆側の面にコロナ放電処理を施した後に、厚さを1[μm]以上2[μm]以下の範囲内として形成した。
そして、ルーダーラミネートを実施することで、厚さが135[μm]である実施例1の化粧シートを形成した。
【0075】
(比較例1)
透明熱可塑性樹脂層を、ナノ化処理していない通常の造核剤を添加した化石燃料由来のホモポリプロピレン樹脂を用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の化粧シートを形成した。
(比較例2)
透明熱可塑性樹脂層を、ナノ化処理していない通常の造核剤を添加した植物由来のポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成した点と、表面保護層を、熱硬化型樹脂を用いて形成した点と、を除き、実施例1と同様に形成して、比較例2の化粧シートを形成した。
(参考例1)
着色熱可塑性樹脂層を化石燃料由来のポリエチレンを含み、密度が0.98[g/cm3]である樹脂組成物を用いて、厚さを55[μm]として形成した点と、透明熱可塑性樹脂層を形成する樹脂組成物に通常の造核剤を添加した点とを除き、実施例1と同様に形成して、参考例1の化粧シートを形成した。
【0076】
(性能評価、評価結果)
実施例1の化粧シートと、比較例1及び比較例2の化粧シートと、参考例1の化粧シートに対し、それぞれ、表面強度、押出適正、曲げ加工適正及び石油依存性を評価した。なお、参考例1の化粧シートは、従来品として用いられている化粧シートである。
評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0077】
<表面硬度>
化粧材に対し、硬度の異なる鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面(表面保護層)に発生した損傷(抉れ)を確認して、鉛筆硬度による表面硬度を評価した。そして、硬度が4B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場 合を「◎」と評価し、硬度が5B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価した。これに加え、硬度が6B以下の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。
また、ホフマンスクラッチ試験による表面硬度を評価した。ホフマンスクラッチ試験は、化粧シート表面に対して45度の角度で接するようにスクラッチ刃(直径が7[mm]の円柱形の刃)をセットし、試験機を化粧シートの上で移動させて行った。そして、荷重が200[g]以上2000[g]以下の範囲内で、徐々に(200[g]刻みで)荷重(錘)を高めて引っかき、サンプルの表面に傷がついた荷重([g])で評価した。なお、荷重800[g]で傷が付いた場合には、「600[g]」を耐荷重として表に記載した。なお、耐荷重が「200[g]」の場合を不合格とした。
【0078】
<押出適正>
透明熱可塑性樹脂層を押出成形により形成し、形成した透明熱可塑性樹脂層の生産適正(押出適正)を確認した。そして、問題無く製造(成形)することが可能であれば、「〇」(合格)と評価し、不良が出る可能性が有るものを「△」(不合格)と評価した。
<曲げ加工適正>
化粧材を用いて、Vカット加工適性(折り曲げ白化の有無)を確認した。そして、白化が生じなかったものを「〇」(合格)と評価し、少しの白化が生じたものを「△」(合格)と評価し、多くの白化が生じたものを「×」(不合格)と評価した。
【0079】
【表1】
表1に示すように、実施例1の化粧シートは、全ての評価試験に対して、優れた性能を示し、従来品である参考例1の化粧シートに比較してより高い表面硬度を実現することができた。一方、通常造核剤を用いた比較例1では、表面硬度は参考例1と同等であるが、曲げ加工適正が参考例1よりも低下した。また、通常造核剤を用いさらに表面保護層として熱硬化型樹脂を用いた比較例2では、参考例1よりも表面硬度(ホフマンスクラッチ試験)が低下し、さらに曲げ加工適正の点でも低下することが確認された。
なお、本発明は、例えば、以下のような構成をとることができる。
(1)
着色熱可塑性樹脂層と接着性樹脂層と透明熱可塑性樹脂層と表面保護層とがこの順に積層された積層体を有し、
前記着色熱可塑性樹脂層は、植物由来のポリエチレンを含み、
前記透明熱可塑性樹脂層は、ナノ化処理した造核剤が添加されたポリプロピレンを含み、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含むことを特徴とする化粧シート。
(2)
前記造核剤は、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウムを含むことを特徴とする上記(1)に記載の化粧シート。
(3)
前記着色熱可塑性樹脂層を形成する樹脂組成物は、植物由来のエチレンを、前記樹脂組成物の全体に対して5質量[%]以上含み、
前記着色熱可塑性樹脂層の密度は、0.92[g/cm
3]以上1.45[g/cm
3]以下の範囲内であり、
前記着色熱可塑性樹脂層の厚さは、40μm以上200μm以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の化粧シート。
(4)
前記着色熱可塑性樹脂層と前記接着性樹脂層との間に絵柄層を有することを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(5)
前記絵柄層は、ポリオールとイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを少なくとも含む樹脂組成物であるウレタン(メタ)アクリレートを含み、
前記ポリオール、前記イソシアネート化合物、及び前記ヒドロキシ(メタ)アクリレートのうちいずれかは、植物由来の成分を含んでもよく、含んでいなくてもよい請求項(4)に記載の化粧シート。
(6)
前記ポリオールは、植物由来の成分を含むポリエステルポリオール、植物由来の成分を含むポリエーテルポリオール、及び植物由来の成分を含むポリカーボネートポリオールのうちいずれかであることを特徴とする上記(5)に記載の化粧シート。
(7)
前記ポリエステルポリオールは、植物由来の成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の成分を含む多官能カルボン酸との反応物、又は、化石燃料由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含む多官能カルボン酸との反応物であることを特徴とする上記(6)に記載の化粧シート。
(8)
前記ポリエーテルポリオールは、植物由来の成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の成分を含む多官能イソシアネートとの反応物、又は、化石燃料由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含む多官能イソシアネートとの反応物であることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の化粧シート。
(9)
前記ポリカーボネートポリオールは、植物由来の成分を含む多官能アルコールと化石燃料由来の成分を含むカーボネートとの反応物、又は、化石燃料由来の成分を含む多官能アルコールと植物由来の成分を含むカーボネートとの反応物であることを特徴とする上記(6)から(8)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(10)
前記イソシアネート化合物は、植物由来の成分を含むイソシアネート化合物であることを特徴とする上記(5)から(9)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(11)
前記着色熱可塑性樹脂層の前記接着性樹脂層とは逆側の面に、プライマー層を備える上記(1)から(10)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(12)
前記表面保護層は、前記電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を含む上記(1)から(11)のいずれか一項に記載の化粧シート。
(13)
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された上記(1)から(12)のいずれか一項に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧材。