(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097400
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ダクト構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6563 20140101AFI20240711BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20240711BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240711BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240711BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240711BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240711BHJP
【FI】
H01M10/6563
B60K11/06
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000828
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 大悟
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC15
3D235HH07
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】ファンで発生した音をダクト部材内で十分に低減できるダクト構造を提供する。
【解決手段】吸気ダクト13は、車両Vに搭載されるバッテリモジュール11に冷却風を送風するファン12に接続される。吸気ダクト13は、ファン12に接続される下流側ダクト部材40を備え、下流側ダクト部材40は、ファン12と連通する開口部40aと、開口部40aを有し、ファン12の回転軸方向と直交する面内で曲線状に延在する曲線流路410と、曲線流路410に沿って曲線状に延在する整流部420と、開口部40aに設けられ、曲線流路410を流れる冷却風を開口部40aに案内するガイド部430と、を有する。開口部40aから仮想線L2に直交する方向を見たとき、曲線流路410の入口部41aは見えない位置に配置されている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリに冷却風を送風するファンに接続されるダクト構造であって、
前記ファンに接続されるダクト部材を備え、
前記ダクト部材は、
前記冷却風を導入する導入部と、
前記ファンと連通する開口部と、
前記開口部を有し、前記ファンの回転軸方向と直交する面内で曲線状に延在する曲線流路と、
前記曲線流路に沿って曲線状に延在し、前記曲線流路を流れる前記冷却風を整流する整流部と、
前記開口部に設けられ、前記曲線流路を流れる前記冷却風を前記開口部に案内するガイド部と、を有し、
前記曲線流路には、吸音材が設けられており、
前記ガイド部は、前記開口部の外縁部の一部から立設され、前記曲線流路を流れる前記冷却風を受けるガイド壁を有し、
前記ファンの前記回転軸方向と直交する前記面内において、前記開口部から前記ガイド壁の一方側端部と他方側端部とを直線状に結んだ仮想線に直交する方向を見たとき、前記導入部に繋がれる前記曲線流路の入口部は見えない位置に配置されている、
ダクト構造。
【請求項2】
請求項1に記載のダクト構造であって、
前記曲線流路は、前記整流部の内側に位置する内側曲線流路と、前記整流部の外側に位置する外側曲線流路と、を含み、
前記内側曲線流路には、前記開口部の周囲且つ前記内側曲線流路のさらに内側に、前記内側曲線流路から膨出する空間が設けられる、
ダクト構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダクト構造であって、
前記曲線流路は、前記整流部の内側に位置する内側曲線流路と、前記整流部の外側に位置する外側曲線流路と、を含み、
前記冷却風の流れ方向に直交する方向において、前記整流部の幅は、前記内側曲線流路の幅及び前記外側曲線流路の幅よりも小さい、
ダクト構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は、
前記導入部を有し、前記ファンの前記回転軸方向に延在する流路と、
前記回転軸方向に延在する前記流路と前記曲線流路の前記入口部とを接続する屈曲部と、を有する、
ダクト構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は不織布で形成されており、
前記曲線流路に設けられた前記吸音材は、前記ダクト部材の前記不織布である、
ダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリに冷却風を送風するファンに接続されるダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池(バッテリとも称する)に関する研究開発が行われている。
【0003】
車両の駆動源の電動化に伴って、車両にはモータ等に電力を供給するバッテリが搭載される。バッテリは電力供給時や充電時に発熱するので、車両にはバッテリを冷却する装置も搭載される。例えば、特許文献1には、冷却ファンにより冷却風を2次電池に送風して2次電池を冷却する冷却構造が記載されている。
【0004】
冷却ファンの駆動中、冷却ファンの風きり音やモータ音が騒音として車両室内に漏れることがある。特許文献1では、冷却ファンの騒音を小さくするために、通気口と冷却ファンとの間で少なくとも1回曲がった冷却風通路を設けた構成が記載されている。具体的に説明すると、特許文献1では、冷却風通路を形成するメインダクトは、約90°屈曲した略L字形状をなしており、メインダクトは下方に配置されたファンと上方に配置されたタンク部とを接続する。メインダクトの屈曲部では冷却ファンの騒音がメインダクトの内壁に反射されるので、騒音を通気口に達する前に減衰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ではメインダクトの屈曲部で冷却ファンの騒音を低減させる構成が記載されているが、騒音の低減が不十分な場合もあり得る。騒音低減性能を向上させるためにダクト部材に対して改善の余地があった。
【0007】
本発明は、ファンで発生した音をダクト部材内で十分に低減できるダクト構造を提供する。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車両に搭載されるバッテリに冷却風を送風するファンに接続されるダクト構造であって、
前記ファンに接続されるダクト部材を備え、
前記ダクト部材は、
前記冷却風を導入する導入部と、
前記ファンと連通する開口部と、
前記開口部を有し、前記ファンの回転軸方向と直交する面内で曲線状に延在する曲線流路と、
前記曲線流路に沿って曲線状に延在し、前記曲線流路を流れる前記冷却風を整流する整流部と、
前記開口部に設けられ、前記曲線流路を流れる前記冷却風を前記開口部に案内するガイド部と、を有し、
前記曲線流路には、吸音材が設けられており、
前記ガイド部は、前記開口部の外縁部の一部から立設され、前記曲線流路を流れる前記冷却風を受けるガイド壁を有し、
前記ファンの前記回転軸方向と直交する前記面内において、前記開口部から前記ガイド壁の一方側端部と他方側端部とを直線状に結んだ仮想線に直交する方向を見たとき、前記導入部に繋がれる前記曲線流路の入口部は見えない位置に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ファンで発生した音をダクト部材内で十分に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のダクト構造の一実施形態である吸気ダクト13が搭載されるバッテリパック1の斜視図である。
【
図3】ファン12に接続された吸気ダクト13の斜視図である。
【
図4】下流側ダクト部材40を下方から見た斜視図である。
【
図6】
図5におけるA-A線断面図であり、整流部420の構造を示す図である。
【
図7】ファン12で発生した音がガイド部430により曲線流路410内に進行する様子を模式的に示した図である。
【
図8】下流側ダクト部材40の上面図であり、ファン12で発生した音がガイド部430により曲線流路410に案内され、曲線流路410内を進行する様子を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のダクト構造の一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
[バッテリパック]
先ず、本発明のダクト構造の一実施形態である吸気ダクト13が搭載されるバッテリパック1について説明する。
図1に示すように、バッテリパック1は、車両Vに搭載されている。車両Vは、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両であって、バッテリパック1に蓄電された電力によってモータを駆動することで走行可能に構成される。バッテリパック1は、前後方向に沿って延びる左右一対の骨格フレーム部材3の間において、フロアパネル2に載置され、フロアパネル2に固定される。フロアパネル2は車室及び荷室の床部を構成し、バッテリパック1の上方には、後部座席(不図示)が配置される。
【0013】
図2に示すように、バッテリパック1は、バッテリモジュール11と、ファン12と、吸気ダクト13と、送風ダクト14と、バッテリECU(Electronic Control Unit)15と、ジャンクションボード16と、これらの部材を収容するバッテリケース17と、を備える。
【0014】
バッテリケース17は、ベースプレート171と、ベースプレート171を上方から覆うカバー172と、を有する。ベースプレート171には、バッテリモジュール11、ファン12、及び送風ダクト14が載置される。カバー172は、ベースプレート171を覆い、フロアパネル2に固定される。カバー172の前面には吸気口17aが形成されており、吸気口17aは通気可能なグリル18により覆われている。
【0015】
バッテリモジュール11は、車幅方向に長い略直方体形状を有し、ベースプレート171に固定されている。バッテリモジュール11は、車幅方向に積層された複数のバッテリセルを有する。隣り合うバッテリセルの間には、セル間流路(不図示)が形成されており、送風ダクト14から送出された冷却風がセル間流路を流れることで、バッテリモジュール11が冷却される。
【0016】
ファン12は、ベースプレート171に固定されている。ファン12は、例えばシロッコファンである。ファン12は、回転軸方向(本実施形態では上下方向)に設けられた吸込口12aから冷却風を吸い込んで、遠心方向に設けられた吹出口12bから冷却風を送風ダクト14へ吹き出す。
【0017】
吸気ダクト13は、
図2及び
図3に示すように、カバー172に設けられた吸気口17aとファン12の吸込口12aとを接続する。吸気ダクト13は、車室の空気を冷却風として、吸気口17aからファン12まで案内する。
【0018】
吸気ダクト13は、上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とを備える。上流側ダクト部材30は、吸気口17aに接続され、バッテリモジュール11の上方に配置される。下流側ダクト部材40は、ファン12の吸込口12aに接続され、バッテリモジュール11の右側に配置される。吸気ダクト13の詳細については、後述する。
【0019】
送風ダクト14は、バッテリモジュール11とファン12の間に設けられ、ファン12の吹出口12bと連結している。送風ダクト14は、吹出口12bから吹き出された冷却風をバッテリモジュール11の下面に沿うように送出する。バッテリモジュール11の下方に送出された冷却風は、セル間流路を下方から上方に流れてバッテリモジュール11を冷却し、バッテリモジュール11の上面から排出される。その後、冷却風は、バッテリケース17内を流れ、
図1の矢印が示すように、バッテリケース17の外部に排出される。
【0020】
バッテリECU15は、バッテリモジュール11の充電及び放電を制御する。バッテリECU15は、バッテリモジュール11に取り付けられたブラケット19に載置されており、上流側ダクト部材30とバッテリモジュール11との間に配置されている。バッテリECU15は、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備える。
【0021】
ジャンクションボード16は、バッテリモジュール11と外部機器(不図示)とを電気的に接続し、バッテリモジュール11の充電電力及び放電電力が流れる配線部品を含む。ジャンクションボード16は、下流側ダクト部材40の上方、且つ上流側ダクト部材30の右側に配置される。ジャンクションボード16は、下流側ダクト部材40の上方に設けられたブラケット60に載置される。
【0022】
[吸気ダクト]
次に、吸気ダクト13の詳細について、
図3~
図8を参照して説明する。
【0023】
吸気ダクト13は、前述のとおり、車両Vに搭載されるバッテリパック1の内部に設けられている。吸気ダクト13は、バッテリパック1の吸気口17aとファン12とを接続する。
【0024】
図3に示すように、吸気ダクト13は上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とを備える。上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とは、上流側ダクト部材30の端部を下流側ダクト部材40の端部内に上方から挿入することで接続される。
【0025】
上流側ダクト部材30は、正面視で略L字形状のダクトである。上流側ダクト部材30は、例えば樹脂により形成される。上流側ダクト部材30には、前方に開口した吸気口接続部30aが設けられており、吸気口接続部30aは、カバー172の内側から吸気口17aに接続する。
【0026】
上流側ダクト部材30は、水平部31と、鉛直部32と、屈曲部33と、を有する。水平部31は、バッテリモジュール11の上面に沿って水平方向に延在する。鉛直部32は、バッテリモジュール11の右面に沿って鉛直方向に延在する。鉛直部32の下端は、下方に開口しており、下流側ダクト部材40に接続する。屈曲部33は、水平部31と鉛直部32とを接続する。屈曲部33は、水平部31内を流れる冷却風の進行方向を水平方向から鉛直方向に変更させて、冷却風を鉛直部32に案内する。
【0027】
下流側ダクト部材40は、正面視で略L字形状のダクトである。下流側ダクト部材40は、
図3及び
図4に示すように、ファン12に接続して連通する開口部40aと、冷却風を内部に導入する導入部40bと、を有する。開口部40aは下方に開口しており、シール部材90(
図7参照)を介して上方からファン12の吸込口12aと連通する。導入部40bは、上方に開口しており、上流側ダクト部材30に接続する。
【0028】
下流側ダクト部材40は、上側部材40Aと下側部材40Bとにより構成される。下側部材40Bは、前述した開口部40aを有し、ファン12に接続される。上側部材40Aは、下側部材40Bに上方から取り付けられる。上側部材40Aと下側部材40Bとは、水平方向に延在する外縁部において当接し、接着剤等により接合され、ファン12に連通する流路を区画形成する。
【0029】
下流側ダクト部材40は、水平部41と、鉛直部42と、屈曲部43と、を有する。水平部41は、ファン12の上方で水平方向に延在する。鉛直部42は、バッテリモジュール11の右面に沿って鉛直方向に延在する。鉛直部42の上端は、前述した導入部40bであり、上流側ダクト部材30に接続する。屈曲部43は、水平部41と鉛直部42とを接続する。屈曲部43は、鉛直部42内を流れる冷却風の進行方向を鉛直方向から水平方向に変更させて、冷却風を水平部41に案内する。
【0030】
下流側ダクト部材40の上側部材40A及び下側部材40Bの外縁部における当接部44には、3つの固定部13aが設けられている。固定部13aは、例えば、不図示のピン状のクリップのような締結手段が挿通可能な挿通孔を有する。下流側ダクト部材40は、固定部13aとベースプレート171に設けられた固定部(不図示)とにクリップを差し込むことで、ベースプレート171に固定される。なお、締結手段はボルト等でもよい。また、ベースプレート171に対する下流側ダクト部材40の固定は、これらに限られず、任意の固定方法を採用できる。
【0031】
下流側ダクト部材40は、不織布により形成される。具体的には、シート状の不織布をプレス加工して上側部材40A及び下側部材40Bを成形し、上側部材40A及び下側部材40Bを接合して下流側ダクト部材40が形成される。不織布は、吸音性能に優れており、ファン12が駆動する時に発生する駆動音や、冷却風が流れる時に発生する流体音の音響エネルギーを吸収する。ファン12に連通する下流側ダクト部材40を不織布により形成することで、ファン12の駆動音を吸音し、吸気ダクト13を伝って吸気口17aから車室に漏れる駆動音を低減できる。また、下流側ダクト部材40の外側面はラミネートフィルムで覆われており、下流側ダクト部材40の内部の冷却風が外部に漏れないように構成されている。
【0032】
続いて、下流側ダクト部材40の内部に形成される流路のうち、水平部41の内部に形成される流路について詳しく説明する。
【0033】
下流側ダクト部材40は、前述した導入部40b及び開口部40aと、曲線流路410と、整流部420と、ガイド部430と、を有する。
【0034】
曲線流路410は、
図5に示すように、屈曲部43に連通する入口部41aからファン12に連通する開口部40aまで設けられている。曲線流路410は、ファン12の回転軸方向と直交する面内(本実施形態では水平面内)で曲線状に延在する。また、ファン12の回転軸方向と直交する面内において、入口部41aと開口部40aは、前後方向に重なる位置に設けられている。
【0035】
曲線流路410についてより詳細に説明すると、曲線流路410は、入口部41a近傍において左右方向に略直線状に延在する。そして、曲線流路410は、入口部41a近傍よりも下流側において、前方に弧を描くように延在する。より詳細には、曲線流路410を区画形成する側壁部413が前方に弧を描くように延在する。このような弧を描く曲線に沿って流れる冷却風は、水平部41が延在する方向(ここでは左右方向)に対してゼロより大きい所定の角度θで開口部40aに流入する。
【0036】
整流部420は、曲線流路410に沿って曲線状に延在し、曲線流路410を流れる冷却風を整流する。整流部420は、曲線流路410の幅方向(図中の前後方向)の略中央位置に設けられており、曲線流路410と同様に、前方に弧を描くように延在している。
【0037】
整流部420は、
図6に示すように、下流側ダクト部材40の上側部材40Aの上壁部414を下側部材40Bに向かって凹ませた上側凹部421と、下側部材40Bの下壁部415を上側部材40Aに向かって凹ませた下側凹部422と、を当接させて形成される。
【0038】
整流部420により、曲線流路410は2つに分割されている。曲線流路410は、
図5に示すように、曲線状の整流部420の内側に位置する内側曲線流路411と、曲線状の整流部420の外側に位置する外側曲線流路412と、を含む。内側曲線流路411及び外側曲線流路412を流れる冷却風は、いずれも整流部420に沿って流れる。詳細は後述するが、開口部40aに設けられたガイド部430は冷却風の流れ方向に対向するように設けられるので、内側曲線流路411及び外側曲線流路412を流れる冷却風は互いに略平行にファン12に流入する。このとき、冷却風は、水平部41が延在する方向(左右方向)に対して所定の角度θでファン12に流入する。内側曲線流路411及び外側曲線流路412を流れる冷却風は、ファン12に流入するとき、流れ方向が略平行であるので圧力損失が小さく、スムーズにファン12に流入できる。
【0039】
ガイド部430は、
図4に示すように、下流側ダクト部材40の開口部40aに設けられ、曲線流路410を流れる冷却風を開口部40aに案内する。ガイド部430は、例えば下流側ダクト部材40の下側部材40Bの下面の一部を上方に凹ませて形成される。すなわち、ガイド部430は、下流側ダクト部材40と一体に設けられる。
【0040】
ガイド部430は、
図4、
図5、及び
図7に示すように、ガイド壁431と天板部434とを有する。
【0041】
ガイド壁431は、開口部40aの外縁部の一部から立設され、曲線流路410を流れる冷却風を受ける。本実施形態では、ガイド壁431は、開口部40aの外縁部のうち右側部分に設けられている。開口部40aの外縁部に沿った方向(すなわち周方向)において、ガイド壁431は一方側端部432から他方側端部433まで周方向約180°の範囲に設けられている。また、ガイド壁431は、開口部40aの外縁部から傾斜して立設されている。
【0042】
天板部434は、ガイド壁431の上端に設けられ、開口部40a及びファン12に対向して設けられている。天板部434は、開口部40aの一部(本実施形態では、右側半分)を覆っている。
【0043】
天板部434は、上側部材40Aの上壁部414との間に隙間を隔てて設けられている。また、天板部434には、複数の貫通孔435が設けられている。
【0044】
ガイド部430は、
図5に示すように、曲線流路410の下流側において、冷却風が流れる方向に対向するように設けられている。このとき、ガイド部430は、整流部420の下流側端部423に対向している。ここでより詳細な説明のため、開口部40aの中心を通り且つ水平部41が延在する方向と直交する方向(ここでは前後方向)に延びる直線状の仮想線をL1とし、ガイド壁431の一方側端部432と他方側端部433とを直線状に結んだ仮想線をL2とする。ガイド部430は、仮想線L1と仮想線L2とのなす角が所定の角度θとなるように設けられる。この角度θは、冷却風が開口部40aに流入するときの水平部41が延在する方向に対する角度θに等しい。換言すると、ガイド部430は、ファン12の回転軸方向から見たとき、仮想線L2と、開口部40aに流入するときの冷却風の流れ方向とが直交するように設けられる。
【0045】
ガイド部430は冷却風が流れる方向に対向するように設けられているので、曲線流路410を流れる冷却風を圧力損失が大きくなることなくスムーズにファン12に案内することができる。
【0046】
ところで、前述のとおり、下流側ダクト部材40の外側面は不図示のラミネートフィルムで覆われている。ガイド部430は下側部材40Bの外側面である下面を上方に凹ませて形成されるので、ガイド部430の面のうち曲線流路410に対向する面(すなわち、ガイド壁431の内側面及び天板部434の下面)はラミネートフィルムで覆われている。ラミネートフィルムは不織布と異なり音響エネルギーを吸収せず、音を反射する。
【0047】
よって、
図7に示すように、ファン12で発生した音(ファン12の駆動音等)はガイド部430で反射し、曲線流路410内を進行する。さらに、
図8に示すように、ガイド部430で反射したファン12からの音は、ガイド部430が向く方向、すなわち仮想線L2と直交する方向に集中的に進行する。
【0048】
本実施形態では、ファン12の回転軸方向と直交する面内(ここでは水平面内)において、開口部40aから仮想線L2に直交する方向を見たとき、曲線流路410の入口部41aは見えない位置に配置されている。
【0049】
具体的に説明すると、ガイド壁431の一方側端部432から仮想線L2に直交する方向に延びる仮想線L3a上には整流部420が配置されているので、開口部40aから仮想線L3aに沿った方向を見たとき、入口部41aは見えない位置に配置されている。また、ガイド部430の他方側端部433から仮想線L2に直交する方向に延びる仮想線L3b上には側壁部413が配置されているので、開口部40aから仮想線L3bに沿った方向を見たとき、入口部41aは見えない位置に配置されている。すなわち、ファン12で発生した音は、ガイド部430に反射されて仮想線L2と直交する方向に進行した後、整流部420及び/又は側壁部413で少なくとも1回反射された後に入口部41aに到達する。
【0050】
不織布で形成された下流側ダクト部材40は吸音性能が高いので、ファン12で発生した音は整流部420及び/又は側壁部413で反射することにより減衰する。よって、入口部41aに到達するファン12の駆動音を低減させることができ、結果として、吸気口17aから車室に漏れる騒音を低減できる。また、前述のとおり、下流側ダクト部材40は圧力損失が大きくなることなく冷却風をファン12に案内できるので、下流側ダクト部材40は圧力損失が小さく、且つ、吸音性能も高いダクト部材となる。
【0051】
さらに、ファン12の回転軸方向と直交する面内においてファン12で発生した音を減衰させた後、ファン12で発生した音を屈曲部43でさらに反射させて減衰させることができる。よって、吸気口17aから車室に漏れる騒音をより低減できる。
【0052】
また、内側曲線流路411には、開口部40aの周囲且つ内側曲線流路411のさらに内側に、内側曲線流路411から膨出する凸状空間45が設けられている。凸状空間45は、内側曲線流路411の内側(ここでは後側)に膨出する。
【0053】
ファン12で発生した音の一部が開口部40aから凸状空間45に進行すると、凸状空間45に進入した音は凸状空間45内で繰り返し反射する。これにより、凸状空間45に進入した音は大きく減衰する。換言すると、凸状空間45は、ファン12で発生した音を捕集し減衰させることができる。結果として、入口部41aに到達するファン12からの音を低減させ、吸気口17aから車室に漏れる騒音を低減できる。
【0054】
また、内側曲線流路411を流れる冷却風は、内側曲線流路411の外側に位置する整流部420に沿って流れるので、内側曲線流路411のさらに内側の位置は冷却風があまり流れない位置である。内側曲線流路411のさらに内側に凸状空間45を設けても冷却風の流れに影響を与えにくく、圧力損失が増大することを抑制できる。
【0055】
ところで、ファン12で発生した音のうち高周波の音は、整流部420及び側壁部413で反射することで大きく減衰する。一方で、ファン12で発生した音のうち低周波の音は、整流部420及び側壁部413で反射しても、高周波の音よりは減衰しにくい。しかし、低周波の音が進行する空間の容積を大きくすると、低周波の音が拡散し減衰しやすい。
【0056】
そこで、本実施形態では、
図5に示すように、冷却風の流れ方向に直交する方向において、整流部420の幅W0は、内側曲線流路411の幅W1及び外側曲線流路412の幅W2よりも小さく形成される。このように整流部420の幅W0を小さくすることで、曲線流路410の容積は大きくなり、低周波の音が減衰しやすくなる。
【0057】
なお、ファン12で発生した音の一部は、ガイド部430に設けられた複数の貫通孔435を通過し、ガイド部430の上方及び右方の空間46(
図7参照)内に入射する。ファン12で発生した音はこの空間46内で繰り返し反射することで減衰する。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0059】
例えば、前述した実施形態では、下流側ダクト部材40を不織布で形成したが、当該不織布を下流側ダクト部材40に設けられた吸音材に対応付けたが、これに限られない。下流側ダクト部材40を例えば樹脂等で形成し、下流側ダクト部材40の内面に吸音材を別途設ける構成であってもよい。
【0060】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0061】
(1) 車両(車両V)に搭載されるバッテリ(バッテリモジュール11)に冷却風を送風するファン(ファン12)に接続されるダクト構造(吸気ダクト13)であって、
前記ファンに接続されるダクト部材(下流側ダクト部材40)を備え、
前記ダクト部材は、
前記冷却風を導入する導入部(導入部40b)と、
前記ファンと連通する開口部(開口部40a)と、
前記開口部を有し、前記ファンの回転軸方向と直交する面内で曲線状に延在する曲線流路(曲線流路410)と、
前記曲線流路に沿って曲線状に延在し、前記曲線流路を流れる前記冷却風を整流する整流部(整流部420)と、
前記開口部に設けられ、前記曲線流路を流れる前記冷却風を前記開口部に案内するガイド部(ガイド部430)と、を有し、
前記曲線流路には、吸音材が設けられており、
前記ガイド部は、前記開口部の外縁部の一部から立設され、前記曲線流路を流れる前記冷却風を受けるガイド壁(ガイド壁431)を有し、
前記ファンの前記回転軸方向と直交する前記面内において、前記開口部から前記ガイド壁の一方側端部(一方側端部432)と他方側端部(他方側端部433)とを直線状に結んだ仮想線(仮想線L2)に直交する方向を見たとき、前記導入部に繋がれる前記曲線流路の入口部(入口部41a)は見えない位置に配置されている、
ダクト構造。
【0062】
(1)によれば、ファンの回転軸方向と直交する面内において、ファンで発生した音を曲線流路の入口部に達するまでに曲線流路の壁部及び整流部で反射させて減衰させる。これにより、ファンで発生した音をダクト部材内で十分に低減できる。
【0063】
(2) (1)に記載のダクト構造であって、
前記曲線流路は、前記整流部の内側に位置する内側曲線流路(内側曲線流路411)と、前記整流部の外側に位置する外側曲線流路(外側曲線流路412)と、を含み、
前記内側曲線流路には、前記開口部の周囲且つ前記内側曲線流路のさらに内側に、前記内側曲線流路から膨出する空間(凸状空間45)が設けられる、
ダクト構造。
【0064】
(2)によれば、ファンで発生した音を内側曲線流路から膨出する空間で捕集して減衰させることで、ファンで発生した音をダクト部材内で十分に低減できる。また、当該空間は内側曲線流路のさらに内側に設けられているので、冷却風の流れに影響を与えない。
【0065】
(3) (1)又は(2)に記載のダクト構造であって、
前記曲線流路は、前記整流部の内側に位置する内側曲線流路(内側曲線流路411)と、前記整流部の外側に位置する外側曲線流路(外側曲線流路412)と、を含み、
前記冷却風の流れ方向に直交する方向において、前記整流部の幅(幅W0)は、前記内側曲線流路の幅(幅W1)及び前記外側曲線流路の幅(幅W2)よりも小さい、
ダクト構造。
【0066】
流路の容積が大きいほど低周波の音は減衰しやすくなる。(3)によれば、整流部の幅を小さくすることで曲線流路の容積は大きくなるので、ファンで発生した音のうち低周波の音の減衰効果を高めることができる。
【0067】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は、
前記導入部を有し、前記ファンの前記回転軸方向に延在する流路(鉛直部42内の流路)と、
前記回転軸方向に延在する前記流路と前記曲線流路の前記入口部とを接続する屈曲部(屈曲部43)と、を有する、
ダクト構造。
【0068】
(4)によれば、屈曲部において流路の方向が90°変わるので、ファンで発生した音を屈曲部でさらに反射させて減衰させることができる。
【0069】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は不織布で形成されており、
前記曲線流路に設けられた前記吸音材は、前記ダクト部材の前記不織布である、
ダクト構造。
【0070】
(5)によれば、ダクト部材を吸音材である不織布で形成することで、ファンで発生した音をダクト部材内で十分に低減できる。
【符号の説明】
【0071】
11 バッテリモジュール(バッテリ)
12 ファン
13 吸気ダクト(ダクト構造)
40 下流側ダクト部材(ダクト部材)
40a 開口部
40b 導入部
41a 入口部
410 曲線流路
411 内側曲線流路
412 外側曲線流路
420 整流部
430 ガイド部
431 ガイド壁
432 一方側端部
433 他方側端部
45 凸状空間(空間)
L2 仮想線
V 車両
W0 幅
W1 幅
W2 幅