(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097408
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ダクト構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20240711BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240711BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240711BHJP
H01M 50/207 20210101ALI20240711BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240711BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240711BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240711BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K1/04 Z
H01M50/204 401H
H01M50/207
H01M50/204 101
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000839
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 大悟
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC04
3D038AC06
3D038AC11
3D038AC12
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB22
3D235BB36
3D235CC15
3D235DD25
3D235EE63
3D235FF02
3D235FF12
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH03
3D235HH07
5H031AA09
5H031KK08
5H040AA28
5H040AA33
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
(57)【要約】
【課題】不織布で形成された第1ダクト部材と第1ダクト部材とは異なる第2ダクト部材との接続箇所におけるシール性能を向上させることができるダクト構造を提供する。
【解決手段】吸気ダクト13には、車両Vに搭載されるバッテリモジュール11を冷却する冷却風が流通する。吸気ダクト13は、不織布により形成された下流側ダクト部材40と、端部35が下流側ダクト部材40に挿入されて接続される上流側ダクト部材30と、上流側ダクト部材30の端部35に設けられ、下流側ダクト部材40の内周面と上流側ダクト部材30の外周面との間をシールするシール部材50と、を備える。下流側ダクト部材40は、流路を形成する本体部401と、シール部材50が当接する当接部402と、を有する。当接部402の厚みは本体部401の厚みよりも小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリを冷却する冷却風が流通するダクト構造であって、
不織布により形成された第1ダクト部材と、
端部が前記第1ダクト部材に挿入されて接続される第2ダクト部材と、
前記第2ダクト部材の前記端部に設けられ、前記第1ダクト部材の内周面と前記第2ダクト部材の外周面との間をシールするシール部材と、を備え、
前記第1ダクト部材は、
流路を形成する本体部と、
前記シール部材が当接する当接部と、を有し、
前記当接部の厚みは前記本体部の厚みよりも小さい、
ダクト構造。
【請求項2】
請求項1に記載のダクト構造であって、
前記第1ダクト部材は、前記当接部における前記不織布の密度が前記本体部における前記不織布の密度よりも高く構成される、
ダクト構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダクト構造であって、
前記当接部のうち少なくとも一部の厚みは、前記当接部における前記第1ダクト部材の前記内周面が外周側に圧縮されることにより、前記本体部の厚みよりも小さく形成される、
ダクト構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のダクト構造であって、
前記当接部のうち少なくとも一部の厚みは、前記当接部における前記第1ダクト部材の外周面が内周側に圧縮されることにより、前記本体部の厚みよりも小さく形成される、
ダクト構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のダクト構造であって、
前記ダクト構造は、前記車両に搭載されるバッテリパックの内部に設けられ、該バッテリパックの吸気口とファンとを接続し、
前記第1ダクト部材は前記ファンに連通し、前記第2ダクト部材は前記吸気口に接続され且つ前記第1ダクト部材の上流側に接続される、
ダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに接続された2つのダクト部材を備えるダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池(バッテリとも称する)に関する研究開発が行われている。
【0003】
車両の駆動源の電動化に伴って、車両にはモータ等に電力を供給するバッテリが搭載される。バッテリは電力供給時や充電時に発熱するので、バッテリを冷却する必要がある。例えば、特許文献1には、自動車に搭載された電池に対して冷却風を送風して電池を冷却する構成が記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、電池ケースや送風ファンに接続され、冷却風を電池に送風するための通気ダクトが記載されている。特許文献1の通気ダクトは、プレス加工によって不織布が賦形された一対の半割れ体を組み合わせて一体化された部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不織布は吸音性能に優れており、特許文献1のように通気ダクトを不織布により形成することで、ファン等の駆動音を吸音できる。一方で、不織布は樹脂や金属等と比較すると剛性が低い。よって、不織布で形成されたダクトをシール部材を挟んで別のダクトに接続する際、接続箇所において不織布で形成されたダクトが変形し、十分なシール性能が発揮できない虞がある。
【0007】
本発明は、不織布で形成された第1ダクト部材と第1ダクト部材とは異なる第2ダクト部材との接続箇所におけるシール性能を向上させることができるダクト構造を提供する。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車両に搭載されるバッテリを冷却する冷却風が流通するダクト構造であって、
不織布により形成された第1ダクト部材と、
端部が前記第1ダクト部材に挿入されて接続される第2ダクト部材と、
前記第2ダクト部材の前記端部に設けられ、前記第1ダクト部材の内周面と前記第2ダクト部材の外周面との間をシールするシール部材と、を備え、
前記第1ダクト部材は、
流路を形成する本体部と、
前記シール部材が当接する当接部と、を有し、
前記当接部の厚みは前記本体部の厚みよりも小さい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不織布で形成された第1ダクト部材と第1ダクト部材とは異なる第2ダクト部材との接続箇所におけるシール性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のダクト構造の一実施形態である吸気ダクト13が搭載されるバッテリパック1の斜視図である。
【
図3】ファン12に接続された吸気ダクト13の斜視図である。
【
図4】
図3のA-A線断面図であり、上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40との接続箇所を示す図である。
【
図5】不織布で形成された部材の厚みと引張剛性との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のダクト構造の一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
[バッテリパック]
先ず、本発明のダクト構造の一実施形態である吸気ダクト13が搭載されるバッテリパック1について説明する。
図1に示すように、バッテリパック1は、車両Vに搭載されている。車両Vは、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両であって、バッテリパック1に蓄電された電力によってモータを駆動することで走行可能に構成される。バッテリパック1は、前後方向に沿って延びる左右一対の骨格フレーム部材3の間において、フロアパネル2に載置され、フロアパネル2に固定される。フロアパネル2は車室及び荷室の床部を構成し、バッテリパック1の上方には、後部座席(不図示)が配置される。
【0013】
図2に示すように、バッテリパック1は、バッテリモジュール11と、ファン12と、吸気ダクト13と、送風ダクト14と、バッテリECU(Electronic Control Unit)15と、ジャンクションボード16と、これらの部材を収容するバッテリケース17と、を備える。
【0014】
バッテリケース17は、ベースプレート171と、ベースプレート171を上方から覆うカバー172と、を有する。ベースプレート171には、バッテリモジュール11、ファン12、及び送風ダクト14が載置される。カバー172は、ベースプレート171を覆い、フロアパネル2に固定される。カバー172の前面には吸気口17aが形成されており、吸気口17aは通気可能なグリル18により覆われている。
【0015】
バッテリモジュール11は、車幅方向に長い略直方体形状を有し、ベースプレート171に固定されている。バッテリモジュール11は、車幅方向に積層された複数のバッテリセルを有する。隣り合うバッテリセルの間には、セル間流路(不図示)が形成されており、送風ダクト14から送出された冷却風がセル間流路を流れることで、バッテリモジュール11が冷却される。
【0016】
ファン12は、ベースプレート171に固定されている。ファン12は、例えばシロッコファンである。ファン12は、回転軸方向(本実施形態では上下方向)に設けられた吸込口12aから冷却風を吸い込んで、遠心方向に設けられた吹出口12bから冷却風を送風ダクト14へ吹き出す。
【0017】
吸気ダクト13は、
図2及び
図3に示すように、カバー172に設けられた吸気口17aとファン12の吸込口12aとを接続する。吸気ダクト13は、車室の空気を冷却風として、吸気口17aからファン12まで案内する。
【0018】
吸気ダクト13は、上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とを備える。上流側ダクト部材30は、吸気口17aに接続され、バッテリモジュール11の上方に配置される。下流側ダクト部材40は、ファン12の吸込口12aに接続され、バッテリモジュール11の右側に配置される。吸気ダクト13の詳細については、後述する。
【0019】
送風ダクト14は、バッテリモジュール11とファン12の間に設けられ、ファン12の吹出口12bと連結している。送風ダクト14は、吹出口12bから吹き出された冷却風をバッテリモジュール11の下面に沿うように送出する。バッテリモジュール11の下方に送出された冷却風は、セル間流路を下方から上方に流れてバッテリモジュール11を冷却し、バッテリモジュール11の上面から排出される。その後、冷却風は、バッテリケース17内を流れ、
図1の矢印が示すように、バッテリケース17の外部に排出される。
【0020】
バッテリECU15は、バッテリモジュール11の充電及び放電を制御する。バッテリECU15は、バッテリモジュール11に取り付けられたブラケット19に載置されており、上流側ダクト部材30とバッテリモジュール11との間に配置されている。バッテリECU15は、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備える。
【0021】
ジャンクションボード16は、バッテリモジュール11と外部機器(不図示)とを電気的に接続し、バッテリモジュール11の充電電力及び放電電力が流れる配線部品を含む。ジャンクションボード16は、下流側ダクト部材40の上方、且つ上流側ダクト部材30の右側に配置される。ジャンクションボード16は、下流側ダクト部材40の上方に設けられたブラケット60に載置される。
【0022】
[吸気ダクト]
次に、吸気ダクト13の詳細について、
図3~
図5を参照して説明する。
【0023】
吸気ダクト13は、前述のとおり、車両Vに搭載されるバッテリパック1の内部に設けられている。吸気ダクト13は、バッテリパック1の吸気口17aとファン12とを接続する。
【0024】
上流側ダクト部材30は、
図3に示すように、正面視で略L字形状のダクトである。上流側ダクト部材30は、例えば樹脂により形成される。上流側ダクト部材30には、前方に開口した吸気口接続部30aが設けられており、吸気口接続部30aは、カバー172の内側から吸気口17aに接続する。
【0025】
上流側ダクト部材30は、水平部31と、鉛直部32と、屈曲部33と、を有する。水平部31は、バッテリモジュール11の上面に沿って水平方向に延在する。鉛直部32は、バッテリモジュール11の右面に沿って鉛直方向に延在する。鉛直部32の下端は、下方に開口しており、後述する下流側ダクト部材40の鉛直部42に接続する。屈曲部33は、水平部31と鉛直部32とを接続する。屈曲部33は、水平部31内を流れる冷却風の進行方向を水平方向から鉛直方向に変更させて、冷却風を鉛直部32に案内する。
【0026】
下流側ダクト部材40は、正面視で略L字形状のダクトである。下流側ダクト部材40には、下方に開口したファン接続部(不図示)が設けられており、ファン接続部は、上方からファン12の吸込口12aに接続する。
【0027】
下流側ダクト部材40は、上側部材40Aと下側部材40Bとにより構成される。下側部材40Bは、前述したファン接続部を有し、ファン12に接続される。上側部材40Aは、下側部材40Bに上方から取り付けられる。上側部材40Aと下側部材40Bとは、外縁部において接着剤等により接合され、ファン12に連通する吸気流路を区画形成する。
【0028】
下流側ダクト部材40は、流路を形成する本体部401と、後述するシール部材50が当接する当接部402と、を有する。
【0029】
本体部401は、水平部41と、鉛直部42と、屈曲部43と、を有する。水平部41は、ファン12の上方で水平方向に延在する。鉛直部42は、バッテリモジュール11の右面に沿って鉛直方向に延在する。鉛直部42の上端は、上方に開口しており、上流側ダクト部材30の鉛直部32に接続する。屈曲部43は、水平部41と鉛直部42とを接続する。屈曲部43は、鉛直部42内を流れる冷却風の進行方向を鉛直方向から水平方向に変更させて、冷却風を水平部41に案内する。
【0030】
当接部402は、
図4に示すように、シール部材50が当接する部分であり、下流側ダクト部材40の鉛直部42の端部45と、後述するガイド構造44と、を含む。
【0031】
図3に戻り、下流側ダクト部材40は、不織布により形成される。具体的には、シート状の不織布をプレス加工して上側部材40A及び下側部材40Bを成形し、上側部材40A及び下側部材40Bを接合して下流側ダクト部材40が形成される。不織布は、吸音性能に優れており、ファン12が駆動する時に発生する駆動音や、冷却風が流れる時に発生する流体音の音響エネルギーを吸収する。ファン12に連通する下流側ダクト部材40を不織布により形成することで、ファン12の駆動音を吸音し、吸気ダクト13を伝って吸気口17aから車室に漏れる駆動音を低減できる。
【0032】
下流側ダクト部材40には、3つの固定部13aが設けられている。固定部13aは、例えば、不図示のピン状のクリップが挿通可能な挿通孔である。図示は省略するが、下流側ダクト部材40は、固定部13aとベースプレート171に設けられた固定部とにクリップを差し込んで、ベースプレート171に固定される。ただし、ベースプレート171に対する下流側ダクト部材40の固定は、これに限られず、任意の固定方法を採用できる。
【0033】
続いて、上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40との接続箇所について説明する。
【0034】
図4に示すように、上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とは、上流側ダクト部材30の鉛直部32の端部35を下流側ダクト部材40の内部に挿入することで接続される。以下では、上流側ダクト部材30を下流側ダクト部材40に挿入する方向を挿入方向(本実施形態では下方向)とも称する。
【0035】
上流側ダクト部材30の端部35には、下流側ダクト部材40の内周面と上流側ダクト部材30の外周面との間をシールするシール部材50が設けられている。シール部材50は、例えばゴム等の弾性部材である。上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とが接続される前では、挿入方向と直交する方向において、シール部材50の厚み(
図4の左右方向の厚み)は、上流側ダクト部材30の端部35における外周面と下流側ダクト部材40の端部45における内周面との隙間の長さよりも大きい。したがって、上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とを接続するとき、シール部材50は挿入方向と直交する方向に圧縮されて隙間を埋めることができ、十分なシール性能を確保できる。
【0036】
下流側ダクト部材40の端部45には、上流側ダクト部材30及びシール部材50の挿入をガイドするガイド構造44が設けられている。ガイド構造44は、水平方向に延在する水平ガイド部441と鉛直方向に延在する鉛直ガイド部442とを有する。吸気ダクト13を組み立てるとき、先ず下流側ダクト部材40に対して上流側ダクト部材30を右方向へ水平移動させる。次に、上流側ダクト部材30に設けられたシール部材50を、右方向から下流側ダクト部材40の鉛直ガイド部442に当接させる。次に、シール部材50と鉛直ガイド部442とが当接した状態で、上流側ダクト部材30及びシール部材50を下方に移動させて下流側ダクト部材40に挿入する。このとき、水平ガイド部441及び鉛直ガイド部442により、上流側ダクト部材30及びシール部材50が適切に下流側ダクト部材40の内部に案内される。
【0037】
ところで、前述のとおり下流側ダクト部材40は不織布により形成される。不織布は、樹脂や金属等と比較すると剛性が低く、変形しやすい。例えば、上流側ダクト部材30及びシール部材50を下流側ダクト部材40に挿入したとき、下流側ダクト部材40の当接部402には、圧縮されたシール部材50からの反力が挿入方向と直交する方向に加わる。シール部材50からの反力により当接部402が引っ張られて伸びると、シール部材50による十分なシール性能が発揮できない虞がある。よって、当接部402は引っ張られても変形しにくい、すなわち引張剛性が高い構成であることが好ましい。
【0038】
図5は、不織布で形成された部材(以下、不織布部材とも称する)の厚みと引張剛性との関係を示したグラフである。ここで、不織布部材の厚みは、不織布部材がプレス加工等により圧縮されることで変化する。不織布部材の厚みが小さいとき、不織布部材が圧縮されて高密度の状態となっており、引張剛性は高い値をとる。一方で、不織布部材の厚みが大きいとき、不織布部材が圧縮されず(若しくは圧縮の程度が小さく)低密度の状態となっており、引張剛性は低い値をとる。
【0039】
本実施形態では、下流側ダクト部材40の当接部402の厚みは、本体部401の厚みよりも小さい。具体的には、下流側ダクト部材40を不織布により成形するとき、当接部402に対応する部分に対して局所的に圧縮率が高くなるようにプレス加工等を行う。当接部402の厚みが本体部401の厚みよりも小さいことにより、本体部401と比較して当接部402の引張剛性は高くなる。よって、当接部402は、シール部材50から反力が加わっても伸びにくくなり、シール部材50は上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40との間の隙間をしっかりとシールでき、シール性能が向上する。したがって、上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40との接続箇所における冷却風の漏れが低減するので、バッテリモジュール11の冷却性能の向上に寄与する。
【0040】
また、不織布部材は、樹脂と比較すると寸法にばらつきが出やすく、すなわち、寸法精度が低くなりやすい。しかしながら、本実施形態では、当接部402の厚みは本体部401の厚みよりも小さいので、当接部402の寸法精度が向上する。よって、上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40との接続を高精度に行うことができる。
【0041】
前述のとおり、成形時、不織布材料の当接部402に対応する部分を圧縮して厚みを小さくするので、下流側ダクト部材40は、当接部402における不織布の密度が本体部401における不織布の密度よりも高く構成される。このように、圧縮により当接部402における不織布の密度を高くすることで、当接部402の厚みを本体部401の厚みよりも小さくできる。
【0042】
また、
図4に示すように、当接部402のうち下側部材40Bが設けられる部分402Bの厚みは、当接部402における内周面が外周側に圧縮されることにより、本体部401の厚みよりも小さく形成される。これにより、下流側ダクト部材40は、当接部402における流路断面積が本体部401における流路断面積よりも大きく構成される。当接部402における下流側ダクト部材40の流路断面積が大きくなると、当接部402の内部に挿入される上流側ダクト部材30の流路断面積も大きくなる。よって、吸気ダクト13の内部を流れる冷却風の圧力損失を低減でき、結果としてバッテリモジュール11の冷却効率を向上できる。
【0043】
また、当接部402のうち上側部材40Aが設けられる部分402Aの厚みは、当接部402における外周面が内周側に圧縮されることにより、本体部401の厚みよりも小さく形成される。これにより、当接部402における吸気ダクト13の寸法が小さくなり、当接部402の周囲にスペースを確保できる。したがって、例えば、当接部402の部分402Aの右側に配置されるジャンクションボード16の配置に関して、自由度を高めることができる。
【0044】
一方で、下流側ダクト部材40の本体部401の厚みは、当接部402よりも大きいので、本体部401の吸音性能は高い。そして、本体部401はファン12近傍に配置されるので、ファン12の駆動音を十分に吸音できる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0046】
例えば、前述した実施形態では、吸気ダクト13をバッテリパック1の内部に配置したがこれに限られない。例えば、吸気ダクト13をバッテリパック1の外部に配置した構成であってもよい。
【0047】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0048】
(1) 車両(車両V)に搭載されるバッテリ(バッテリモジュール11)を冷却する冷却風が流通するダクト構造(吸気ダクト13)であって、
不織布により形成された第1ダクト部材(下流側ダクト部材40)と、
端部(端部35)が前記第1ダクト部材に挿入されて接続される第2ダクト部材(上流側ダクト部材30)と、
前記第2ダクト部材の前記端部に設けられ、前記第1ダクト部材の内周面と前記第2ダクト部材の外周面との間をシールするシール部材(シール部材50)と、を備え、
前記第1ダクト部材は、
流路を形成する本体部(本体部401)と、
前記シール部材が当接する当接部(当接部402)と、を有し、
前記当接部の厚みは前記本体部の厚みよりも小さい、
ダクト構造。
【0049】
不織布により形成された部材の引張剛性は、厚みが小さいほど大きくなる。(1)によれば、不織布により形成された第1ダクト部材において、当接部の厚みは本体部の厚みよりも小さいので、当接部の引張剛性は大きい。よって、第1ダクト部材の当接部は、シール部材からの反力を受けても伸びにくく、変形しにくい。よって、シール性能を向上させることができる。
【0050】
(2) (1)に記載のダクト構造であって、
前記第1ダクト部材は、前記当接部における前記不織布の密度が前記本体部における前記不織布の密度よりも高く構成される、
ダクト構造。
【0051】
(2)によれば、圧縮により当接部における不織布の密度を高くすることで、当接部の厚みを本体部の厚みよりも小さくできる。
【0052】
(3) (1)又は(2)に記載のダクト構造であって、
前記当接部のうち少なくとも一部(部分402B)の厚みは、前記当接部における前記第1ダクト部材の前記内周面が外周側に圧縮されることにより、前記本体部の厚みよりも小さく形成される、
ダクト構造。
【0053】
(3)によれば、第1ダクト部材の当接部における流路断面積が大きくなる。よって、第2ダクト部材の流路断面積も大きくなり、バッテリの冷却効率が向上する。
【0054】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のダクト構造であって、
前記当接部のうち少なくとも一部(部分402A)の厚みは、前記当接部における前記第1ダクト部材の外周面が内周側に圧縮されることにより、前記本体部の厚みよりも小さく形成される、
ダクト構造。
【0055】
(4)によれば、当接部における第1ダクト部材の外周面が内周側に圧縮されることにより、当接部における寸法が小さくなるので、当接部の周囲にスペースを確保できる。したがって、例えば、当接部の周囲に配置される他の部品の配置に関して、自由度を高めることができる。
【0056】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載のダクト構造であって、
前記ダクト構造は、前記車両に搭載されるバッテリパック(バッテリパック1)の内部に設けられ、該バッテリパックの吸気口(吸気口17a)とファン(ファン12)とを接続し、
前記第1ダクト部材は前記ファンに連通し、前記第2ダクト部材は前記吸気口に接続され且つ前記第1ダクト部材の上流側に接続される、
ダクト構造。
【0057】
(5)によれば、不織布により形成された第1ダクト部材をファンに連通して設けるので、第1ダクト部材によりファンの駆動音を効率的に吸音できる。
【符号の説明】
【0058】
1 バッテリパック
11 バッテリモジュール(バッテリ)
12 ファン
13 吸気ダクト(ダクト構造)
17a 吸気口
30 上流側ダクト部材(第2ダクト部材)
35 端部
40 下流側ダクト部材(第1ダクト部材)
401 本体部
402 当接部
50 シール部材
V 車両