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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097410
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】粉体の漏出抑止用シール材
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3288 20160101AFI20240711BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20240711BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240711BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
F16J15/3288
G03G15/08 390B
G03G15/00 550
F16J15/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000841
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】596116363
【氏名又は名称】三和テクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505094157
【氏名又は名称】庄司 進
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(72)【発明者】
【氏名】福井 和郎
(72)【発明者】
【氏名】庄司 進
(72)【発明者】
【氏名】田中 員稔
【テーマコード(参考)】
2H077
2H171
3J043
【Fターム(参考)】
2H077CA12
2H077FA21
2H077GA04
2H171FA25
2H171FA26
2H171FA30
2H171GA27
2H171TB20
2H171UA23
2H171UA29
2H171XA16
3J043AA15
3J043CA08
3J043CA13
3J043CA14
3J043CA15
3J043CB07
(57)【要約】
【課題】速運転化に適用可能な、摩擦帯電に対応しうる粉体の移動を抑止する粉体の漏出抑止用シール材の提供。
【解決手段】回転体に当接させるシール材の回転体との当接部は、天然繊維もしくは合成繊維を用いた繊維素材のファブリックからなり、摩擦帯電したときの帯電極性が粉体の帯電極性と同じであって、当接部の表面電位と回転体の摺擦部の表面電位との電位差と、および当接部の表面電位と回転体に付着している粉体の表面電位との電位差が、いずれも放電現象の生じない電位差であること、を特徴とする、粉体の漏出抑止用シール材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に当接させることで粉体の漏出を抑止するシール材において、
このシール材の回転体との当接部は、
天然繊維もしくは合成繊維を用いた繊維素材のファブリックからなり、
摩擦帯電したときの帯電極性が粉体の帯電極性と同じであって、
当接部の表面電位と回転体の摺擦部の表面電位との電位差と、および当接部の表面電位と回転体に付着している粉体の表面電位との電位差が、いずれも放電現象の生じない電位差であること、を特徴とする、粉体の漏出抑止用シール材。
【請求項2】
前記の電位差が絶対値で300V以下であることを特徴とする、請求項1に記載の粉体の漏出抑止用シール材。
【請求項3】
ファブリックの繊維素材には、少なくとも親水性繊維が含まれていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の粉体の漏出抑止用シール材。
【請求項4】
ファブリックは、疎水性繊維と親水性繊維の混紡糸又はマルチフィラメント糸からなるものであること、を特徴とする請求項3に記載の粉体の漏出抑止用シール材。
【請求項5】
ファブリックは、疎水性繊維からなる糸と親水性繊維なる糸を用いて交互又は縞模様状に形成させた織物もしくは編物からなること、を特徴とする請求項3に記載の粉体の漏出抑止用シール材。
【請求項6】
ファブリックが、パイルを備えた織物又は編物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粉体の漏出抑止用シール材。
【請求項7】
ファブリックが、回転体と摺擦するときの摩擦帯電の極性が負に帯電する負帯電性繊維と正に帯電する正帯電性繊維の少なくとも2つの素材の繊維からなる糸で構成された請求項1又は2に記載の粉体の漏出抑止用シール材。
【請求項8】
ファブリックが、パイルを備えた織物又は編物であって、回転体と摺擦するときの摩擦帯電の極性が負に帯電する負帯電性繊維と正に帯電する正帯電性繊維の少なくとも2つの素材の繊維からなる糸で構成された請求項1又は2に記載の粉体の漏出抑止用シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を扱う装置に適用される粉体の移動を抑止する粉体の漏出防止用シール材に関する。とりわけ、電子写真方式を用いた画像形成装置に好適な粉体の移動を抑止する粉体の漏出防止用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を視野に入れたシール材として、出願人らは、これまでに織物もしくは編物(以下、これらをまとめて織編物とも称する。)からなるストライプ状のシール部やパイル状のシール材を提案している(特許文献1~14参照)。
【0003】
粉体の移動を抑止するためのシール材を回転体に当接させて適用する場合、シール材は回転体との摺擦部から粉体が漏れ出ることを抑止するべく、シール材を回転体と当接させるようにして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7093938号公報
【特許文献2】特開2021-179477号公報
【特許文献3】特開2021-127832号公報
【特許文献4】国際公開第2020/071515号
【特許文献5】国際公開第2020/071514号
【特許文献6】国際公開第2017/216975号
【特許文献7】特許第5255168号公報
【特許文献8】特開2011-203390号公報
【特許文献9】国際公開第2011/018948号
【特許文献10】特開2010-243728号公報
【特許文献11】特開2010-128449号公報
【特許文献12】特開2008-026729号公報
【特許文献13】特開2008-026728号公報
【特許文献14】特開2005-200811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、近年は、トナー等の粉体が微細形状になっていることに加えて、電子写真などにおける回転機構の高速動作化が一層進んでいる。高速化していくに連れて、求められるシール材も高速運動に対応できるシール材が必要な状況となっている。
【0006】
そして装置の高速運転化に伴い、回転体とシール材の摺擦部における摩擦力が格段に増加してくる。すると、従来は問題にならなかった摩擦帯電や摩擦熱による問題が生じてきている。
【0007】
とりわけ、電子写真方式の画像形成装置においては、樹脂粒子からなるトナーの特性が、かつてよりも低軟化点で低融点のトナーが使用されるようになりつつあるので、従来よりもシビアであり、摩擦帯電と摩擦熱による問題は喫緊の課題といえる。
【0008】
運転速度のアップに伴い、摩擦力が増加すると摩擦帯電の上昇も生じさせる。すると、合成繊維などからなるシール材への静電的付着が多くなる。そして、これら繊維が粉体粒子であるトナーに被覆されたような付着状態となってしまう。さらに、こうしたトナーに覆われた付着状態で摩擦熱が加わっていくと、樹脂成分からなるトナーは摺擦部で軟化し、繊維上に固着した状態へと進んでしまう。繊維上にトナーなどの粉体が固着した状態が形成されてしまうと、今度はシール材の繊維に本来は存在しなかった隙間が形成されてしまうこととなり、粉体のシール材への侵入が生来されて漏れを生じさせてしまうことがある。さらには繊維上にトナーが固着した状態が形成されると回転体の表面を傷つけてしまうことともなる。回転体に傷が発生することによってさらに傷口から粉体の漏れが増長されることともなる。
【0009】
このように、従来の織編物からなるシール材を現状のシビアな環境に適用すると、当初の想定以上の高速回転に伴っての摩擦帯電が著しくなる。過剰な帯電上昇が生じた場合には、シール材の繊維に粉体粒子が静電的に付着するのと同じく、繊維の帯電の上昇によって粉体粒子や回転体との電位差が生じる。すると、近接放電を生じさせて粒子へ悪影響を及ぼす粒子凝集が発生したりする。また、トナーを用いる画像形成装置においては、摩擦帯電の上昇による電位差での放電現象や摩擦帯電性の高い繊維との擦れによってトナーが異常帯電し、トナー凝集や帯電不良を生じさせることとなる。すると、トナー飛散やトナー溢れ、さらには画像欠点などを生じさせてしまうなどの悪影響を生来してしまう。
【0010】
運転速度アップへの対応としては、これまで一般的には、摩擦力に増加に伴い摩擦熱の発生が大きくなることへの対応として、摺擦素材の低摩擦化が志向されてきた。そして、織編物からなるシール材においては、低摩擦係数のフッ素繊維を用いることが主流となっている。
【0011】
もっとも、フッ素繊維はコストが高く、かつ、帯電列が負の帯電性を有しているので、摺擦されることで負極性の高い帯電電位となる。すると、電位差による付着力が高くなり、繊維表面にトナーが被覆するようにして付着する状態が起こりやすくなり、トナーの漏出や侵入を引き起こしやすくなってしまい、シール性が十分とはいえない。
【0012】
そして、摩擦係数の低い素材であっても、摩擦帯電によって、部材の表面電位が高くなる場合には繊維との付着力が強くなるので、繊維に付着したトナーが回転体との摺擦による摩擦熱で軟化もしくは融着してしまうこととなる。そこで、摩擦係数を低くすることを志向するだけでは、シール性には未だ十分とはいえない。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高速運転化に適用可能な、摩擦帯電に対応しうる粉体の移動を抑止する粉体の漏出抑止用シール材を提供することである。すなわち、摩擦帯電によって火花放電が生じることを抑止した安全な粉体の漏出防止用シール材を提供することである。また、コストの高いフッ素素材などを用いずとも、高速運転に対応しうるシール材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、鋭意検討の結果、回転体及び粉体の摺擦で発生する各々の表面電位の電位差(電界)をパッシェンの法則に基づき火花放電が開始されるリスクのある電位差(電界)以下となるようにシール材を構成することで、電位差に伴って生じる繊維部材への粉体の付着を抑制し、付着によって生じる隙間から粉体が移動することによる漏出を抑止すること、摩擦帯電による粉体への異常帯電での粉体凝集を抑止すること、粉体凝集による飛散や粉体の漏れを抑止すること、さらには特殊素材であるフッ素繊維などの使用量を少なくするかもしくは使用しない構成であっても高速に対応するシール材を提供することを可能とすることがシール材として有用であると想起するに至った。そして、摩擦帯電によって生じる電位差(シール材と回転体ないし粉体との電位差)をパッシェンの法則に基づいて導出される火花放電の生じる電圧以下とするべく、以下の手段を発明した。
【0015】
本発明の課題を解決するための第1の手段は、回転体に当接させることで粉体の漏出を抑止するシール材において、このシール材の回転体との当接部は、天然繊維もしくは合成繊維を用いた繊維素材のファブリックからなり、摩擦帯電したときの帯電極性が粉体の帯電極性と同じであって、当接部の表面電位と回転体の摺擦部の表面電位との電位差と、および当接部の表面電位と回転体に付着している粉体の表面電位との電位差が、いずれも放電現象の生じない電位差であること、を特徴とする、粉体の漏出抑止用シール材である。本発明のファブリックとは、織物もしくは編物のいずれかで構成されている織編物である。
【0016】
その第2の手段は、前記の電位差が絶対値で300V以下であることを特徴とする、第1の手段に記載の粉体の漏出抑止用シール材である。
【0017】
その第3の手段は、ファブリックの繊維素材には、少なくとも親水性繊維が含まれていること、を特徴とする第1又は第2のいずれか1の手段に記載の粉体の漏出抑止用シール材である。なお、親水性繊維とは、繊維そのものが親水性であるか、もしくは繊維表面に親水性処理が付与された繊維をいう。
【0018】
その第4の手段は、ファブリックは疎水性繊維と親水性繊維の混紡糸又はマルチフィラメント糸からなるものであること、を特徴とする第1から第3のいずれか1の手段に記載の粉体の漏出抑止用シール材である。
【0019】
その第5の手段は、ファブリックは疎水性繊維からなる糸と親水性繊維なる糸を用いて交互又は縞模様状に形成させた織物もしくは編物からなること、を特徴とする第1から第4のいずれか1の手段に記載の粉体の漏出抑止用シール材である。
【0020】
その第6の手段は、ファブリックがパイルを備えた織物又は編物であることを特徴とする、第1~第5のいずれか1の手段に記載の粉体の漏出抑止用シール材である。
【0021】
その第7の手段は、ファブリックが回転体と摺擦するときの摩擦帯電の極性が負に帯電する負帯電性繊維と正に帯電する正帯電性繊維の少なくとも2つの素材の繊維からなる糸で構成された第1~第6のいずれか1のに記載の粉体の漏出抑止用シール材である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の粉体の漏出抑止用シール材を回転体との摺擦する部位に当接させると、粉体の移動が適切に抑止され、シール材としての機能を果たすことができる。とりわけ、高速で回転運転するような機器に適用した場合でも、適宜親水性繊維を含むことによって、電位差を絶対値で350V以下、312V以下、300V以下など適切に保持することができるので、摩擦による電位差の上昇を十分に抑制することができ、火花放電を生じることがなく粉体に対して安全に適用できるシール材となっている。また、摩擦熱や静電気によって粉体がファブリック繊維への粉体が過度に付着したり固着することを回避できるので、シール特性が低下しづらく、適切なシール性能を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1はシール材に使用する繊維および糸の断面の例を示した説明図である。図1aは混紡糸の断面の例である。図1bはシール材のファブリックに親水性繊維からなる糸と疎水性繊維からなる糸の2種類の糸を用いる場合の糸の構成例である。図1cは混紡糸に回転体と摺擦したときに、負帯電する繊維と正帯電する繊維を混紡した糸の繊維の構成例である。図1dは、負帯電する繊維からなる糸と正帯電する繊維からなる糸の2素類の糸をファブリックに用いる場合の糸の構成例である。
図2図2は親水性繊維と疎水性繊維の混紡糸を用いたカットパイルのファブリックを示した説明図である。
図3図3はストライブ状の凸部を当接部とした織物の構成例の原反を示した説明図である。図3(a)が原反の当接面側からの正面図で、図3(b)は原反の側面図であり、(c)は原反の側面図の部分拡大図である。
図4図4はカットパイルの原反の裏面に発泡体を貼り合わせてから、ファブリックを短冊状に打ち抜きして形成した、カットパイルのシール材を示した説明図である。
図5図5はカットパイルの編物のファブリックからなるシール材を示した説明図である。
図6図6は表面電位の測定方法を示した説明図である。
図7図7は染料の成分の構造式である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の回転体と接し摺擦するシール材は、電位差が絶対値で300V以下のシール材として、回転体と当接するシール材のファブリックに、たとえば親水性繊維と疎水性繊維からなるファブリックや、少なくとも親水性繊維を有したファブリックを用いている。水分によって電荷をリークさせることができると考えられるところ、親水性繊維は吸水率の高い繊維であり、親水性繊維は繊維の分子構造に親水基を有した繊維である。そして、疎水性繊維と親水性繊維を備えることで帯電し易い疎水性繊維の近傍に親水性繊維が配されることによって、親水性繊維が保持している水分により帯電性の高い疎水性繊維の電荷をリークさせ、回転体や粉体の表面電位とシール材の表面電位の電位差を小さくして、放電を生じ難くさせている。
【0025】
また、回転体との摩擦帯電により回転体に対し負帯電する繊維と回転体に対し正帯電する繊維を回転体と接するシール材のファブリックに、少なくとも2種類の繊維として負帯電する繊維と正帯電する繊維を用いることで、電気的な中和作用によりシール材の表面電位を回転体や粉体に対し放電が生じさせない電位差としたシール材としてもよい。
【0026】
さらに、繊維に対し摺擦速度の増加による摩擦帯電に上昇を抑制するためにコーティングや染色、グラフト重合などを施し、コーティング処理では摩擦係数の低減、親水性染料による染色での帯電性の抑制、繊維に対するグラフト重合による親水性モノマーでの重合を行い、シール材の表面電位を回転体や粉体に対し放電が生じさせない電位差としたシール材であってもよい。
【0027】
図1に本発明を実施するためのシール材に使用する繊維および糸の断面図の例を示す。図1aは混紡糸の断面を示した模式図である。混紡糸は親水性繊維(1)と疎水性繊維(2)の短繊維(ステープル)が撚られた紡績糸の混紡糸である。もしくは、親水性繊維と疎水性繊維の長繊維を組み合わせたマルチフィラメントの混紡糸としている。このように親水性繊維(1)と疎水性繊維(2)からなる混紡糸を用いた織編物を回転体と当接させるシール部のファブリック(3)として用いるには、ファブリック(3)を基台となる発泡体(4)に貼り合せて保持させる。たとえばクッション製のある基台であればシール材(5)として、ファブリックを回転体に好適に当接させることができる。
【0028】
なお、シール材(5)の基台として、発泡プラスチック樹脂以外に、プラスチック樹脂板や金属板材も用いることができるが、回転体との当接時の緩衝性、追従性に鑑みれば、基台には発泡ポリウレタン樹脂、発泡ポリオレフィン樹脂などの、弾性のある発泡体が好ましい。
【0029】
疎水性繊維(2)に加えて親水性繊維(1)を備えることで、ファブリック(3)は帯電し易い疎水性繊維(2)に対し親水性繊維(1)が近傍にあることとなるので、親水性繊維(1)が保持する水分によってファブリック(3)の繊維間での電荷のリークが生じてファブリック(3)内で中和された状態になると推察される。すると、回転体(6)との摺擦によるファブリック(3)の表面電位の上昇を抑制することができる。
【0030】
親水性繊維としては、レーヨン繊維、セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、アクリレート系繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、プロミックス繊維、シルク繊維、タンパク繊維などが挙げられる。
【0031】
疎水性繊維としてはフッ素繊維、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリアルキレン、ポリエステル、ポリスチレン、アセテート繊維、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、アクリル繊維、モダアクリル繊維並びにこれらの組合わせ及び共重合体からなる繊維が挙げられる。
【0032】
さらに、他の構成として、カットパイルのパイル織編物のシール材においては回転体との当接面を形成するパイル糸として、これら親水性繊維(1)と疎水性繊維(2)を少なくとも含む混紡糸を使用したカットパイル織編物を用いたシール材であってもよい。そこで、シール材の構成例として図2にカットパイル編物のシール材の例を示す。カットパイル(6)に使用する混紡糸(11)のパイル糸には、短繊維の紡績糸、長繊維の紡糸のどちらを用いてもよい。カットパイル織編物のファブリックは、地糸(7)の下に樹脂コート層(8)を設けてもよい。なお、カットパイルは地糸から垂直に直立するものであってもよいが、図2に示すように、カットパイル部が一方向に傾倒しているものとしてもよい。予め傾倒していることで、回転方向に逆らわずにフィットするので隙間が生じずに密にシールできる。
【0033】
他のファブリックの構成として、図1bにシール材を構成するファブリックの組織に用いられる異なる2本の糸の構成例を示す。1本の糸は親水性繊維(1)からなる糸であり、他方は、疎水性繊維(2)からなる糸である。少なくともこの2本の糸を用いて交織、交編、交撚されることでファブリックの組織が構成されることで、織編物のシール材(5)を得ることができる。
【0034】
図3は、親水性繊維の糸(12)と疎水性繊維の糸(13)を用いてストライプ織(繻子織と平織の組合わせ)にて構成したファブリック(3)及び発泡体(4)をシール材(5)として貼合わせたシール材原反(16)の構成図の例を示す。
【0035】
図3に示すように、親水性繊維の糸(12)と疎水性繊維の糸(13)を用い、ストライプの凸部(17)となる経糸に親水性繊維の糸(12)と疎水性繊維の糸(13)を用いて凸部(17)が交互に疎水性繊維の糸(13)の繻子織部と親水性繊維の糸(12)で組織された例を示す。これらのストライプ部が順次に回転体(20)と当接することで掻き出すようにして粉体の移動を抑止する。また、親水性繊維の糸(12)と疎水性繊維の糸(13)が交互となるよう繻子織でファブリックを形成させることでもよい。
【0036】
他の構成のファブリックは、カットパイル(6)のパイル織編物のファブリック(3)のシール材においては、この親水性繊維の糸(12)と疎水性繊維の糸(13)をパイルとなる糸に用い2つのパイルとなる糸がランダム、交互、縞模様状のいずれかの配列になるように構成し、少なくとも回転体(20)との当接の際には親水性繊維(1)のパイルと疎水性繊維(2)のパイルが回転体(20)に当接するように配したシール材(5)である。
【0037】
図4図5は、カットパイル織編物によるシール材及びシールの構成例である。図4には、縞模様の段差を備えたカットパイル織物の構成例を示している。図5は、カットパイル編物の構成例である。これらの縞模様は、カットパイル(6)の太さや材質を変えることで斜毛工程での斜毛角度による段差を設けて、縞模様に形成している。たとえば、図4では、斜毛後の厚みの厚いほうのカットパイル(6L)に水分を吸湿し難い疎水性繊維の糸(13)を、厚みの薄いほうのカットパイル(6S)には水分を吸湿し易い親水性繊維の糸(12)を用いている。繊維の吸湿の特性の差によって斜毛工程での斜毛角度に差が生じることから、段差が形成されることとなり、斜毛後のパイルの厚みの違いとなっている。
【0038】
なお、これらの親水性繊維、疎水性繊維の糸(12,13)に代えて、粉体が負帯電性の粉体をシールする場合は負帯電する繊維の糸(15)を厚みの厚いほうのカットパイル(6L)に、正帯電する繊維の糸(14)を厚みの薄いほうのカットパイル(6S)に用いることもできる。
【0039】
カットパイルの織編物は、図4の側面図(a)、正面図(b)、側面図(c)、平面図(d)例に示すように、ファブリックをあらかじめ発泡体(4)と貼り合わせた原反(16)を、トムソン刃で長方形に打ち抜き、長方形(短冊状)のシール材(5)を得ている。この打ち抜きの向きは、打ち抜き跡(22)に示すように、たとえば原反の縞模様の向きに対して、斜交させることとする。すると、打抜かれたシール材(5)は図4の正面図(e)と側面図(f)の形状をとなり、カットパイルは図4の平面図(e)では右側上方向に斜毛した状態のシール材(5)となり、シール材(5)を回転体の周囲にカットパイル面を内周にして巻きまわすようにシール材を用いると、回転による粉体の漏れ方向への移動を阻止しやすくなるようにストライプを斜交させて当接させることができるので、より漏出抑止がしやすくなる。さらに、シール材の表面電位を抑制したシール材とすることで繊維と粉体の付着力を低下させ繊維からの粉体の離脱を容易にし、粉体が同じ場所に留まることを防止することができ粉体の融着を防止できる。そして、斜毛方向及びストライプ構成で繊維から掻き落とされた粉体を装置内に戻すことができる。
【0040】
図4図5に示すようにパイルは、疎水性繊維の糸(13)と親水性繊維の糸(12)が交互に配置されている構成の例である。なお、カットパイルとなるパイル糸は短繊維の紡績糸、長繊維の紡糸のどちらを用いることもできる。
【0041】
その他の実施例として、図1cは、混紡糸に回転体(20)と摺擦し繊維が負帯電する繊維(9)と正帯電する繊維(10)を混紡した糸の繊維の構成例を示す。
【0042】
この糸は、少なくとも負帯電性繊維素材と正帯電性繊維素材を混紡しており、織編物のシール材には、この混紡糸(11)をパイル糸として使用することでカットパイル織編物のシール材とすることができる。織編物の具体的な態様としては図2と同じ構成が適用できる。
【0043】
図1dには、回転体と摺擦させ負帯電性になる負帯電する繊維(9)の糸と正帯電する繊維(10)の糸を用いた例を示す。シール材及びシール材の組織は、図4図5と同じ構成例の織編物とすることができるので、カットパイル織編物のシール材を得ることができる。
【0044】
さらに他の構成として、図示はしていないが繊維を染色あるいは表面コーティングすることによって摩擦帯電における電位差を抑えるようにしたものを糸として用いることもできる。
【0045】
さて、粉体や回転体との当接させたシール材の適用によって、火花放電が生じることは避けなければならない。火花放電に要する必要な最小電圧(火花電圧)については、パッシェンの法則に基づいて求めることができる。
すなわち、放電開始に至らない電位差は、パッシェンの法則に基づくと次のようになる。
空隙gにおける放電開始電圧Vdsは、
Vds=312+6.2g
ただし、空隙幅:g(μm)である。
【0046】
また、誘電体への帯電としては、誘電体の帯電電圧Vs、放電開始電圧Vdsは下式で与えられる。
Vs=Vb―Vds
Vds=312+6.2(d/ε’)+√(7736.7×(d/ε’))
ただし,dは厚さ(μm),ε‘は比誘電率,Vbは印加バイアスである。
【0047】
上述の式から、空隙で火花放電しない電位差は、絶対値で312+6.2g(V)以下である。誘電体であるトナー(粉体)は微細な場合でも5~10μmの粒径である。トナー粒径を6μmとし、比誘電率が1.5である場合の放電開始電圧Vdsは、上記式から、513Vの電位差であると求まる。
【0048】
上記の式と、粉体に適用するシール材であることを踏まえ、放電を開始しない電位差に鑑みると、本発明の当接部の表面電位と回転体の摺擦部の表面電位との電位差、および当接部の表面電位と回転体に付着している粉体の表面電位との電位差は、いずれも絶対値で上記の式の係数である312V以下であれば安全が担保できる。312Vの電位差は、理論上、粒径を無視しても成り立つ値だからである。
さらに電位差を絶対値300V以下にすると、パッシェンの法則上、火花放電は理論上全く想起しえないこととなるので、安全マージンがより十分に図られているといえる。そこで、本発明では、電位差は絶対値で300V以下とする。
【0049】
(電位差の測定条件及び測定方法について)
実施例における測定では、回転体は金属製ローラ及び画像形成装置に用いられる1成分用の負帯電用弾性現像ローラ(エラストマーローラ)を用いた。現像ローラの抵抗値は0.15MΩ(250V印加時)を使用し、回転体の表面速度で摺擦速度は214mm/sec~855mm/secの範囲で測定をしている。なお、この速度は、A4用紙を縦送りで27枚/分~110枚/分に相当する印刷速度であるから、実用域の速度を踏まえた試験といえる。
【0050】
また、表面電位の測定においては、シール材に2mmの発泡体を貼付けシール材厚みとしては3.5mm程度とし回転体とシール材貼付け面の隙間を1.5mm(当接荷重としては100~150g/cm2程度)の条件で測定をした。
【0051】
回転体の電気条件として、粉体を扱う画像形成装置では粉体であるトナーを所定の帯電極性となるようにトナーの帯電極性及び帯電量が制御され、現像ローラへ電圧が印加され感光体の静電潜像にトナーが現像される。
【0052】
現像ローラへの印加電圧は、装置の動作に伴い所定のタイミングで現像ローラへ電圧が印加され、装置の動作終了時には所定のタイミングで現像ローラへの印加電圧はオフになる。このように粉体を扱う画像形成装置においては、装置が駆動し現像ローラ(回転体)へ電圧が印加されシール材と摺擦される印加電圧条件aと、現像ローラへの電圧がオフ(電圧0V)になる印加電圧条件bとを少なくとも有し、シール材と摺擦する現像ローラへの印加電圧条件は少なくとも2つの条件を有している。
【0053】
ゆえに、この2つの条件abにおいてシール材の繊維にトナーが付着し難い構成にすることが必要であり、2つの電圧印加条件で確認することが望ましい。
【0054】
なお、画像形成の為の現像ローラ印加電圧は負帯電トナー使用で反転現像の場合は感光体表面電位が-400V~-600V程度でありレーザーなどの露光後後電位が-50V~200V程度であるため現像の為の現像ローラ印加電圧は-200V~-400V程度であり印加電圧条件aは-300Vの印加電圧で確認を行っている。
【0055】
評価方法としては、回転体に印加電圧条件aと印加電圧条件bで各々回転体とシール材と摺擦させ、その時のシール材の表面電位Vsealと回転体の表面電位Vrを測定し電位差Vg=Vseal-Vrを算出している。尚、回転体は金属ローラと抵抗値0.15Mの現像ローラを使用し回転体の表面電位はローラが導体であることから印加電圧と同じ電位となる。
【0056】
図6に、シール材(5)の表面電位測定方法について示す。図6に示すように設定した印加電圧条件下で設定した表面速度で30秒間回転させた後に回転を停止し回転体(20)を取外し表面電位プローブ(トレック製 Model555-P1)と表面電位計(トレック製 Model344)を用いてシール材のファブリック(3)の表面電位を測定した。
【0057】
表面電位の測定は、摺擦回転後に回転体を取外し後10秒以内に測定を行った。また、シール材の繊維への粉体(トナー)の付着については、評価装置を用いて855mm/secの現像ローラ表面速度条件下でシール材の繊維に付着した粉体(トナー)の粉体の付着状態を顕微鏡で観察し判断している。
【0058】
表1に、本発明の比較例として、ファブリックに適用する繊維素材について検討した結果を示す。
【0059】
表1に記載のものは、単独素材の繊維からなる糸を用いカットパイル織編物のシール材である。表1には、シール材のファブリックの裏面に発泡体を設け、シール材となるパイルを回転体と摺擦させ、その時のシール材の表面電位を測定した結果と、繊維への粉体(トナー)の付着レベルの結果を示している。単独素材の繊維のファブリックとしては8種類の素材を検討している。
【0060】
表1に示すように、合成繊維からなり疎水性の繊維シール材として、アクリル繊維(商品名:エクスラン)、ポリエステル繊維(商品名:テトロン)、ポリプロピレン繊維、PFA繊維(フッ素繊維)、PTFE繊維(商品名:トヨフロン)の5種類では摩擦帯電極性が負帯電用現像ローラ及び金属ローラとの摺擦で負の帯電極性を示し、印加電圧条件b(V=0V)ではシール材の表面電位が速度の増速に伴い負の電位が大きくなった。
【0061】
回転体であるエラストマー部材の負帯電用弾性現像ローラとの電位差は300V超を生じる結果を示した。また、繊維への粉体(トナー)の付着は繊維に被覆した状態を形成した。そこで、不可(NG)の評価レベルであった。
【0062】
合成繊維で親水性のポリアミド繊維(ナイロン6繊維)を単体で用いたシール材では、摩擦帯電極性が正帯電極性を有し、シール材の表面電位は速度の増速に伴い表面電位が低くなる傾向を示し、エラストマー部材からなる負帯電用弾性現像ローラとの摺擦では、ローラへの印加電圧が-300V時の印加電圧条件aでは電位差が300V超になる結果を有しており、繊維への粉体(トナー)の付着は不可(NG)の評価レベルであった。
【0063】
親水性繊維で再生繊維であるレーヨン繊維を単体で用いたシール材では、摩擦帯電極性が正帯電極性を有し、シール材の表面電位は速度の増速に伴い表面電位が低くなる傾向を示し、負帯電用弾性現像ローラとの摺擦では、ローラへの印加電圧Vbが-300Vの印加電圧条件aでは電位差Vgが300V超になる結果を有し、電位差としては不可(NG)の評価レベルである。
【0064】
親水性繊維である天然繊維のコットン(綿)を用いた場合も、摩擦帯電極性が正帯電極性を有し、シール材の表面電位は速度の増速に伴い表面電位が低くなる傾向を示し、エラストマー部材からなる負帯電用弾性現像ローラとの摺擦では、ローラへの印加電圧Vbが-300Vの印加電圧条件aでは電位差Vgが絶対値で300V超になる結果を有し、繊維への粉体(トナー)付着レベルは不可(NG)の評価レベルであった。
【0065】
このように、疎水性の合成繊維を用いたシール材の表面電位Vsealはマイナス極性に帯電をし、負帯電用弾性現像ローラとの摺擦及び速度の増速でシール材の表面電位Vsealが上昇している。そして、回転体との摺擦で生じたシール材の表面電位はパッシェンの法則に基づく放電を開始する電位差Vgを印加電圧条件b(Vb=0V)で生じさせている。
【0066】
親水性繊維である合成繊維、再生繊維、天然繊維を用いたシール材の表面電位Vsealは摩擦帯電によってプラス極性の表面電位となり、現像ローラに印加電圧条件a(Vb=-300V)の場合に放電を開始する電位差Vgを生じさせている。また、親水性繊維のシール材は、疎水性繊維のシール材と比較すると速度の変化による表面電位の変化が小さい傾向を有している。しかし、シール材である繊維への粉体付着は許容できるレベルではなく、繊維表面に粉体が被覆された状態で、良好とはいえる結果ではなかった。
【0067】
しかし、疎水性繊維と親水性繊維の摩擦帯電では電圧印加などで挙動が異なることより、摩擦帯電によるシール材の表面電位を改善できる可能性があることを見出し、本発明に至っている。
【0068】
さて、表1の結果より下記の点が明確となっている。
1)疎水性繊維のシール材は金属ローラ、エラストマーローラで摺擦することで負極性の帯電極性を示し速度の増速と共に負の電圧が上昇する。
2)コットン、レーヨン、ナイロンの親水性繊維は金属ローラ、エラストマーローラで摺擦することで正の帯電極性を示し、速度の増速により帯電の変化量が少ない。
【0069】
そして、分子構造から考えた場合は親水性繊維は親水基を有し、コットン及びレーヨンは親水基であるヒドロキシル基(-OH)を有し、ナイロンは親水基のアミド基(―CONHH―)を有している。
【0070】
このことから、摩擦帯電において親水基を繊維素材に有することで速度の増速での摩擦帯電による表面電位の変化を抑止できると考えられる。また、親水性繊維は摩擦帯電によって正帯電極性を有することから負極性の粉体を取扱う場合は負帯電極性の疎水性繊維と組み合わせて使用することが望ましい。なお、正帯電性の粉体の使用であればそのまま親水性繊維を使用してもよい。
【0071】
なお、親水基としては上記ヒドロキシル基(-OH)、アミド基(―CONHH―)、アミノ基(―NH2)、カルボキシル基(―COOH)、スルホン基(―SO3H)などの親水基が上げられ繊維に親水基を有することで吸水し易い繊維となる。ヒドロキシル基を有する繊維はセルロース系繊維で、綿、レーヨン繊維などが挙げられる。アミノ基を有する繊維は絹などで、基本的にはタンパク質から構成される繊維などが挙げられる。カルボキシル基、アミド基、スルホン基を有する繊維は合成繊維であり、アミド基を有する繊維はポリアミド(ナイロン)繊維などである。
【0072】
また、疎水性繊維はフッ素繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリプロピレン繊維などの合成繊維からなる疎水性の繊維で親水性の官能基を有していない繊維である。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
本発明の実施例を表2に示す。表2にはシール材となる糸に親水性繊維と疎水性繊維からなる混紡糸を用いてカットパイル織編物を形成しシール材とした実施例、親水性繊維からなる糸と疎水性繊維からなる糸の2種類の糸をパイル糸として用い交編したカットパイル編物からなるシール材の実施例、親水性繊維からなる糸と疎水性繊維からなる糸の2種類の糸をパイル糸として用い、交織したカットパイル織物を用いたシール材の実施例を示している。
【0076】
実施例1では、疎水性繊維のアクリル繊維(商品名;エクスラン)30%と親水性繊維のコットン70%の比率で混紡した糸を用い、この混紡糸をパイル糸としてパイル編物を編み立てその後にシャーリングを行い、シャーリング後に洗いを行い乾燥させパイルを開繊した状態にした。その後に伸びを押させるために裏面に樹脂コーティングを施してシール材とした。このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-36V~-61Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で、良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-8V~-47Vで、良好な結果であった。そして、負帯電性のトナーの付着性も、良好な結果であった。
【0077】
実施例2では、実施例1に対し混紡率を変更したアクリル繊維(商品名;エクスラン)70%とコットン30%の比率で混紡した糸を用い、この混紡糸をパイル糸としてパイル編物を編み立てその後にシャーリングを行い、シャーリング後に洗いを行い乾燥させパイルを開繊した状態にした。その後に伸びを押させるために裏面に樹脂コーティングを施してシール材とした。このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-80V~-103Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で、良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-8V~-81Vで、良好な結果であった。そして、負帯電性のトナーの付着性も、良好な結果であった。
【0078】
実施例3では、親水性繊維のレーヨン繊維80%とアクリレート系繊維20%の比率で混紡した糸を用い、この混紡糸をパイル糸としてパイル編物を編み立てその後にシャーリングを行い、シャーリング後に洗いを行い乾燥させ、パイルを開繊した状態にした。その後に伸びを押させるために裏面に樹脂コーティングを施してシール材とした。なお、アクリレート系繊維はアクリル酸ナトリウムが共重合された繊維で、ポリアクリル酸ナトリウムは吸水性を有する素材であるが、現像ローラとの帯電性においては負帯電性を有している。
【0079】
よって、この混紡糸は、正帯電性繊維と負帯電性繊維の混紡糸である。このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-51V~-47Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で、良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-12V~―11Vで、良好な結果であった。そして、負帯電性のトナーの付着性も良好な結果であった。
【0080】
実施例4には、親水性繊維のレーヨン繊維と疎水性繊維のアクリル繊維(商品名:エクスラン)をレーヨン53%、アクリル繊維47%の比率で混紡した糸を用い、この混紡糸をパイル糸としてパイル編物を編み立てその後にシャーリングを行い、シャーリング後に洗いを行い乾燥させパイルを開繊した状態にした。その後に伸びを押させるために裏面に樹脂コーティングを施してシール材とした。このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-32V~-39Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で、良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-7V~-13Vで、良好な結果であった。そして、負帯電性のトナーの付着性も良好な結果であった。
【0081】
実施例5には、パイル糸に疎水性繊維のポリプロピレン繊維の糸と親水性繊維のレーヨン繊維の糸を用い交互に配置されるパイル編物(縞模様のパイル編物:交編)を編み立てし、その後にシャーリングを行い、シャーリング後に洗いを行い乾燥させパイルを開繊した状態にした。その後に伸びを押させるために裏面に樹脂コーティングを施してシール材とした。このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)ではローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-340V~-400Vで現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-50V~-120Vで、良好な結果であった。そして、負帯電性のトナーの付着性も良好な結果であった。
【0082】
実施例6には、パイル糸に親水性繊維のナイロン繊維の糸とポリエステルとナイロンからなる分割繊維(商品名:ベリーマ)の糸を用い交互に配置されるパイル織物(縞模様のカットパイル織物:交織)を製作し、分割繊維を割繊した後、パイルの斜毛と湯洗いを行いパイルが開繊され斜毛されたシール材を得た。尚、ポリエステルは疎水性である。そして、このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)ではローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-129V~-135Vで現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が+1V~+1Vで、電位差としては良好な結果であった。
【0083】
実施例7には、パイル糸に疎水性繊維のPTFE繊維の糸とポリエステルとナイロンからなる分割繊維(商品名:ベリーマ)の糸を用い、PTFEの繊維の糸の列比率が75%でベリーマが25%の列比率で交互に配置されるパイル織物(縞模様のカットパイル織物:交織)を製作し、分割繊維を割繊した後、パイルの斜毛と湯洗いを行いパイルが開繊され斜毛されたシール材を得た。なお、ポリエステルは疎水性である。そして、このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-70V~-71Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で、良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-80V~-90Vで、電位差としては良好な結果であった。
【0084】
実施例8には、パイル糸に疎水性繊維のPTFE繊維の糸とポリエステルとナイロンからなる分割繊維(商品名:ベリーマ)の糸を用い、PTFEの繊維の糸の列比率が25%でベリーマが75%の列比率で交互に配置されるパイル織物(縞模様のカットパイル織物:交織)を製作し、分割繊維を割繊した後、パイルの斜毛と湯洗いを行いパイルが開繊され斜毛されたシール材を得た。尚、ポリエステルは疎水性である。そして、このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-57V~-70Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で、良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-135V~-210Vで、電位差としては良好な結果であった。
【0085】
実施例9には、パイル糸に疎水性繊維のPTFE繊維の糸と親水性繊維のレーヨン繊維の糸を用い、PTFE繊維の糸の列比率が50%でレーヨン繊維の糸の列比率が50%の列比率で交互に配置されるパイル織物(縞模様のカットパイル織物:交織)を製作し、パイルの斜毛と湯洗いを行いパイルが開繊され斜毛されたシール材を得た。このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-157V~――83Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で、良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-19V~-6Vで、電位差としては良好な結果であった。
【0086】
実施例10には、パイル糸に疎水性繊維のPFA繊維の糸とポリエステルとナイロンからなる分割繊維(商品名:ベリーマ)の糸を用い、PFA繊維の糸の列比率が75%でベリーマの糸の列比率が25%で交互に配置されるパイル織物(縞模様のカットパイル織物:交織)を製作し、分割繊維を割繊した後、パイルの斜毛と湯洗いを行いパイルが開繊され斜毛されたシール材を得た。尚、ポリエステルは疎水性である。そして、このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が――120V~-130Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で、良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-80V~-100Vで、電位差としては良好な結果であった。
【0087】
実施例11には、パイル糸に疎水性繊維のPFA繊維の糸とポリエステルとナイロンからなる分割繊維(商品名:ベリーマ)の糸を用い、PFA繊維の糸の列比率が25%でベリーマの糸の列比率が75%で交互に配置されるパイル織物(縞模様のカットパイル織物:交織)を製作し、分割繊維を割繊した後、パイルの斜毛と湯洗いを行いパイルが開繊され斜毛されたシール材を得た。なお、ポリエステルは疎水性である。そして、このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が――140V~-115Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で、良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-64V~-80Vで、電位差としては良好な結果であった。
【0088】
以上のように、表2に示す実施例において疎水性繊維と親水性繊維の混紡によるシール材、パイル織編物における交編(縞模様状のパイル編物)、交織(縞模様のパイル織物)での疎水性繊維の糸と親水性の糸を用いたシール材において回転体と摺擦させた時のシール材の表面電位は放電を起こさないシール材に構成することができる。
【0089】
【表3】
【0090】
表3には、染色による実施例と比較例を示す。実施例12では、疎水性繊維のアクリル繊維(商品名:エクスラン)の糸に親水性染料でカチオン染料(BasicYellow 28)を用いて染色した糸をパイル糸としてパイル編物を編み立てその後にシャーリングを行い、シャーリング後に洗いを行い乾燥させパイルを開繊した状態にした。
【0091】
このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)ではローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-215V~-427Vで現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-107V~―202Vで良好な結果であった。使用した染料の構造式を図7に示す。
【0092】
実施例13では、親水性繊維のレーヨン繊維(商品名:エクスラン)の糸を親水性染料の反応性染料(Reactive Black5)を用いて染色した糸をパイル糸としてパイル編物を編み立てその後にシャーリングを行い、シャーリング後に洗いを行い乾燥させパイルを開繊した状態にした。
【0093】
このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)ではローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-81V~-25Vで現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下で良好な結果であった。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が0V~―3Vで良好な結果であった。使用した染料の構造式を図7に示す。染料の構造式に示すように親水基であるアミノ基(―NH2)を有している。
【0094】
他方、比較例9では、疎水性繊維のアクリル繊維(商品名:エクスラン)の糸に疎水性染料(C.I.Basic Blue5)を用いて染色した糸をパイル糸としてパイル編物を編み立てその後にシャーリングを行い、シャーリング後に洗いを行い乾燥させパイルを開繊した状態にした。このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-500V~-1057Vで、現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300Vを超えており、放電を生じさせる電位差となっている。また、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてもシール材の表面電位が-210V~―642Vで、放電を生じさせる電位差となっている。この点については染料がハロゲン化合物の染料で塩素が結合している染料で且つ疎水性染料であるために負帯電性を高めていると推察される。染料の構造式を図7に示す。
【0095】
また、比較例10には、疎水性繊維のポリエステル繊維の糸に疎水性染料の分散染料を用いて染色した糸をパイル糸としてパイル編物を編み立てその後にシャーリングを行い、シャーリング後に洗いを行い乾燥させパイルを開繊した状態にした。このシール材を用いて負帯電用現像ローラ(エラストマーのローラ)と摺擦させた。この結果、現像ローラの印加電圧条件a(印加電圧=-300V)では、ローラ表面速度が214mm/sec~855mm/secにおいてシール材の表面電位が-153V~-355Vで現像ローラ表面電位(-300V)との電位差が300V以下であったが、印加電圧条件b(印加電圧0V)においてはシール材の表面電位が-193V~―474Vで、放電を生じさせる電位差となっている。ポリエステル繊維用の分散染料で水溶性でないため、速度の増速に伴って、シール材の表面電位は、その負帯電の表面電位を高めたものと推察される。
【0096】
以上のように、繊維の染料での染色においても、親水性染料を用いることで回転体との摺擦での速度増加によるシール材の表面電位を抑制でき、放電を生じさせない電位差にすることができる。
【0097】
なお、疎水性繊維においては分子構造から考えた場合に共重合によって親水性のモノマーを使用して共重合することで親水基を有する繊維とすることができる。この点についてはアクリル繊維、ポリエステル繊維などにおいてアニオン染料やカチオン染料、直接染料で染色可能にするために改質ポリマーとして技術開示がされており、親水基を有する改質ポリマーを用いることでも帯電の上昇を抑制できる。さらに繊維に対しグラフト重合を行うことで親水性モノマーをグラフト重合することで親水基を有する繊維とすることもできる。
【0098】
また、染色可能な繊維に対しては親水性染料によって染色することで速度の増速によるシール材の表面電位を抑止することができる。
【0099】
また、親水性を有するコーティング剤としてはヒドロキシ基の親水基を有するシラノール基を有したシリコン系のコーティング剤などが挙げられる。
【0100】
親水性繊維及び疎水性繊維の公定水分率については、親水性のセルロース系繊維である綿やレーヨンなどは20℃65%下11%前後の水分率で合成繊維からなる親水性繊維のナイロンやアセテートなどは5%前後の水分率を有している。さらに染色が困難な疎水性繊維は0%前後であり、カチオン染料などで染色可能な疎水性のアクリル繊維は2%となっている。加えて、低湿である20℃20%RH下ではセルロース系の親水性繊維の水分率は5.5%前後で親水性の合成繊維は1.8%前後まで低下しているが繊維には水分を有している。
【0101】
このように低湿下においても親水性繊維は水分率を保持しており、繊維の水分率もシール材の表面電位の上昇を抑制させるのに寄与していると推察され、水の比抵抗値でみると純水で1MΩ・cmであり理論純水の比抵抗値は18.248MΩ・cmであることからも繊維に水分を有することで半導電性の抵抗値を有し摺擦によるシール材表面電位の上昇を抑制することに寄与している推察される。
【0102】
なお、実施例及び比較例での測定においての環境は室温が約20℃、40%~60%RHの環境下で測定を行った。
【0103】
また、前記の表1(比較例)にも示すように親水性繊維は摺擦により正帯電性を有し、疎水性繊維は負帯電性を有していることから、親水性繊維と疎水性繊維を混紡、交編、交織することで電気的にも摩擦帯電による電荷の上昇を相殺する方向に働きシール材の表面電位の上昇を抑制できると推察される。このことから、より低湿の環境下や速度の増速においてもシール材の表面電位を抑制でき、親水性繊維と疎水性繊維の組合わせを適宜に選定することで負帯電性粉体や正帯電性粉体に対応することができる。
【0104】
また、摩擦帯電にとって厳しい環境である絶対湿度の低い環境下、例えば10℃10%RH,20℃5%RHなどの環境下では絶対湿度が1.0g/m3以下で20℃20%RH~20℃65%の環境の絶対湿度は3.46g/m3~11.25g/m3に対し、絶対湿度が1.0g/m3以下の環境は非常に乾燥された環境で繊維の水分率を低下させることは容易に想像できる。ゆえにこのような環境下でもシール材の表面電位の上昇の抑制の為に半導電性の繊維をシール材に含ませることで繊維の水分率による依存を少なくすることができるためより好ましい。
なお、シール材に含ませる半導電性の繊維としては低抵抗値の部材は電気を通しやすく問題を起こし易いため装置に影響を与えない半導電性繊維(105Ωcm~1011Ωcm)を含ませることが好ましい。
【0105】
半導電性繊維としてはアクリル繊維を200℃~350℃にて焼成した耐炎化繊維などが好ましく比抵抗値108Ω・cm~1010Ω・cmであり電気抵抗値的に好ましい。商品名としてはパイロメックス(帝人製)、ラスタン(旭化成製)などが上げられる。
【0106】
また、シール材と摺擦する回転体においては一般的に産業用のローラは金属からなるローラが用いられ、錆び難い材質であるスレンレス(SUS材)やアルミ製のローラなどが挙げられる
【0107】
さらに粉体であるトナーを用いた画像形成装置においては、回転体が現像に用いられるトナー担持体の導電性現像ローラであり、現像ローラはシール材と摺擦し、且つ、シール材からなるシール材もしくはシール材と発泡体からなるシール材が座面に貼付けられ現像ローラからのトナーの洩れを防止されている。
【0108】
画像形成装置におけるトナーの極性は装置によって異なり、正帯電性トナーを用いた装置、負帯電性トナーを用いた装置がある。
【0109】
非磁性1成分現像に用いられる正帯電性トナーを用いた装置ではトナーを正帯電性にする為に現像ローラ表面は疎水性材料を主原材料とする導電性ゴムなどの導電性エラストマーからなる導電性現像ローラの形成や疎水性素材を主原料とする弾性部材の表面に導電性コーティング剤によるローラ表面へのコーティング、ローラの基材となる導電性ゴムなどの導電性エラストマーに粉体状の疎水性材料の練り込みが行われトナーを正帯電極性になるように構成された導電性現像ローラの回転体が挙げあれ、特に負極性の高いフッ素系の樹脂素材がローラ基材となるエラストマー(ゴム)に練り込まれた導電性ローラやフッ素系素材が導電性エラストマーに含浸された導電性ローラ、さらにはフッ化ウレタン樹脂などのフッ素系の導電化されたコーティング剤で基材表面にコーティングされた現像ローラの回転体などが挙げられ、回転体と摺擦する部材を正帯電極性に摩擦帯電させる回転体である。
【0110】
そして、画像形成装置においては上記の回転体である導電性現像ローラを用いて疎水性素材が回転体の表面に露出もしくは疎水性素材によるコーティング剤でコーティングされることで現像ローラ及び規制ブレードとの摩擦帯電にてトナーを正帯電し、且つ、シール材の表面も正帯電にすることでトナーとシール材の表面電位が同極性となることでシール材へのトナー付着が軽減される。
【0111】
シール材は上記現像ローラとの摺擦により正帯電に摩擦帯電させられることから、シール材に用いる繊維は、帯電が上昇する疎水性繊維よりも帯電の上昇を抑制する親水基を有する親水性繊維もしくは親水性処理が施された繊維を含むシール材が望ましい。親水性繊維の材質は、現像ローラとの摺擦での表面電位を測定し適宜に選定すれば良く、親水性繊維の比率も適宜に選定すれば良い。
【0112】
また、1成分現像に用いられる負帯電性トナーを用いた装置では、トナーを負帯電極性にする為に現像ローラ表面はトナーに対し摩擦帯電極性が正極性になる材料又は親水基を有する材料を主原材料とする導電性ゴムなどの導電性エラストマーからなる導電性現像ローラの形成やトナーに対し摩擦帯電極性が正極性になる素材又は親水基を有する素材を主原料とする導電性コーティング剤によるローラ表面へのコーティング、ローラの基材となる導電性ゴムなどの導電性エラストマーに粉体状のトナーに対し摩擦帯電極性が正極性になる材料又は親水基を有する材料の練り込みが行われトナーを負帯電極性になるように構成された導電性現像ローラの回転体が挙げられ、摩擦帯電系列で正極性を有するシリコーンゴムを基材としたローラやトナーに対し摩擦帯電極性が正極性になるアクリル系モノマーの重合体又は共重合された合成樹脂素材の粉体がローラ基材となるエラストマー(ゴム)に練り込まれたローラ、現像ローラ表面にシリコーン系の微粒子などの正帯電性微粒子を含浸させた導電性現像ローラ、さらにはトナーに対し摩擦帯電極性が正極性になるアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ヒドロキシ基を有するポリオールなどを主原料とした導電性コーティング剤で現像ローラ表面にコーティングされた導電性現像ローラの回転体が挙げられ、回転体と摺擦する部材を負帯電極性に摩擦帯電させる回転体である。
【0113】
そして、画像形成装置においては、上記の回転体である導電性現像ローラを用いてトナーとの摩擦帯電で正極性になす素材が現像ローラ表面に露出もしくは正極性を有する素材によるコーティング剤でコーティングされることで、現像ローラ及び規制ブレードとの摩擦帯電にてトナーを負帯電し、且つ、シール材の表面も負帯電にすることでトナーとシール材の表面電位が同極性となることで、シール材へのトナー付着が軽減される。シール材は上記現像ローラとの摺擦により負帯電に摩擦帯電させられることから、シール材に用いる繊維は、帯電が上昇する疎水性繊維のみでの構成よりも帯電の上昇を抑制する親水基を有する親水性繊維もしくは親水性処理が施された繊維を含むシール材が望ましい。なお、疎水性繊維への親水性処理もしくは親水性繊維の材質は現像ローラとの摺擦での表面電位を測定し適宜に選定すれば良く、親水性繊維の比率も適宜に選定すれば良い。
【0114】
このように、回転体の表面を必要な帯電極性になるように回転体の表面を構成することができる。さらに、回転体が樹脂ある部材に対しても粉体の摩擦帯電極性に準じてシール材を適宜に選定して対応することができる。このように、回転体が金属、エラストマー、樹脂からなる素材に対し粉体とシール材の表面電位を同極性にし、且つ、繊維に対し親水性処理を施した繊維又は親水性繊維を少なくとも含ませた繊維のシール材、さらにはアクリル繊維を200℃~350℃にて焼成した耐炎化繊維からなる半導電性繊維をシール材に含ませたシール材を用いてパッシェンの法則に基づく放電を生じさせないように構成したシール材もしくはシール材にすることができる。
【0115】
以上のように、既存繊維を用いて混紡、交編、交織、染色、繊維への親水性処理の少なくとも1つ以上の手段を用いて装置の速度が速くなっても放電を生じさせない安価なシール材を製作し、提供することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 親水性繊維
2 疎水性繊維
3 ファブリック
4 発泡体(基台)
5 シール材
6 カットパイル
7 地糸
8 樹脂コート層
9 負帯電する繊維
10 正帯電する繊維
11 混紡糸
12 親水性繊維の糸
13 疎水性繊維の糸
14 正帯電する糸
15 負帯電する糸
16 原反
17 凸部
18 経糸
19 緯糸
20 回転体
21 平織部の経糸
22 打ち抜き跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7