(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097451
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000904
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB29
2C056EB38
2C056EB40
2C056EB45
2C056EB46
2C056EB58
2C056EC26
2C056EC79
(57)【要約】
【課題】ユーザが再度記録を行う際のデメリットが少ない記録条件の場合には異常ノズルがあっても補完記録を行わない。
【解決手段】異常ノズルが所定数以上である場合に(S102:YES)、記録用紙の種類と記録する画像の解像度とに応じて所定長さを設定する(S103)。記録用紙の搬送方向の長さが所定長さ以上の場合に(S104:YES)、異常ノズルからのインクの吐出を異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出で補完する補完記録によって記録を行う(S106)。記録用紙の搬送方向の長さが所定長さ未満の場合に(S104:NO)、異常ノズルからのインクの吐出を異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出で補完しない非補完記録によって記録を行う(S105)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有し、前記複数のノズルからインクを吐出するヘッドと、
被記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送方向の長さが所定長さ以上の第1被記録媒体への記録を行わせるときに、インクの吐出に異常のある異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完する補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御し、
前記搬送方向の長さが前記所定長さ未満の第2被記録媒体への記録を行わせるときに、前記異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完しない非補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
被記録媒体の種類によって前記所定長さが異なることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
記録する画像の解像度によって前記所定長さが異なることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1被記録媒体を供給する第1供給部と、
前記第2被記録媒体を供給する第2供給部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1供給部から供給された前記第1被記録媒体への記録を行わせるときに、前記補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御し、
前記第2供給部から供給された前記第2被記録媒体への記録を行わせるときに、前記非補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1被記録媒体がロール紙であり、
前記第2被記録媒体がカット紙であることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
表示部、を備え、
前記制御部は、
前記第1被記録媒体に記録を行わせる前に、前記補完記録を行わせるか否かをユーザに選択させるためのオブジェクトを前記表示部に表示させ、
前記オブジェクトに基づくユーザの選択結果を示す選択信号を受信した後に、前記第1被記録媒体への記録を行わせ、
前記第1被記録媒体への記録を行わせるときに、
前記選択信号が前記補完記録を行うことを示している場合には、前記補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御し、
前記選択信号が前記補完記録を行わないことを示している場合には、前記非補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第2被記録媒体に記録を行わせるときには、前記オブジェクトを前記表示部に表示させることなく前記非補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御することを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記複数のノズルの各々について、前記異常ノズルであるか否かに関する異常情報を記憶する記憶部、を備え、
前記制御部は、
前記異常情報が、前記異常ノズルが所定数以上あることを示している場合に、
前記第1被記録媒体への記録を行わせるときに、前記補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御し、
前記第2被記録媒体への記録を行わせるときに、前記非補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項9】
複数のノズルを有し、前記複数のノズルからインクを吐出するヘッドと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
1つの被記録媒体に画像を記録するための記録データであってデータ量が所定量以上の前記記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて記録を行わせるときには、インクの吐出に異常のある異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完する補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御し、
データ量が前記所定量未満の前記記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて記録を行わせるときには、前記異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完しない非補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御することを特徴とする記録装置。
【請求項10】
前記複数のノズルの各々について、前記異常ノズルであるか否かに関する異常情報を記憶する記憶部、を備え、
前記制御部は、
前記異常情報が、前記異常ノズルが所定数以上あることを示している場合に、
データ量が前記所定量以上の前記記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて記録を行わせるときには、前記補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御し、
データ量が前記所定量未満の前記記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて記録を行わせるときには、前記非補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御することを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
複数のノズルを有し、前記複数のノズルからインクを吐出するヘッドと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて記録を行うときに、
前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要な時間が所定時間以上であることを示している場合には、インクの吐出に異常のある異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完する補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御し、
前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要な時間が前記所定時間未満であることを示している場合には、前記異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完しない非補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御することを特徴とする記録装置。
【請求項12】
前記複数のノズルの各々について、前記異常ノズルであるか否かに関する異常情報を記憶する記憶部、を備え、
前記制御部は、
前記異常情報が、前記異常ノズルが所定数以上あることを示している場合に、
前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要な時間が前記所定時間以上であることを示している場合には、前記補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御し、
前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要な時間が前記所定時間未満であることを示している場合には、前記非補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御することを特徴とする請求項11に記載の記録装置。
【請求項13】
複数のノズルを有し、前記複数のノズルからインクを吐出するヘッドと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて被記録媒体への記録を行うときに、
前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要なインクの量が所定量以上であることを示している場合には、インクの吐出に異常のある異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完する補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御し、
前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要なインクの量が前記所定量未満であることを示している場合には、前記異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完しない非補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御することを特徴とする記録装置。
【請求項14】
前記複数のノズルの各々について、前記異常ノズルであるか否かに関する異常情報を記憶する記憶部、を備え、
前記制御部は、
前記異常情報が、前記異常ノズルが所定数以上あることを示している場合に、
前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要なインクの量が所定量以上であることを示している場合には、前記補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御し、
前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要なインクの量が前記所定量未満であることを示している場合には、前記非補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御することを特徴とする請求項13に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルからインクを吐出して記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを吐出して記録を行う記録装置の一例として、特許文献1には、ノズルからインクを吐出して記録を行うプリンタが記載されている。特許文献1のプリンタでは、ヘッドユニットに複数の吐出部が設けられている。各吐出部はノズルを有しノズルからインクを吐出する。また、特許文献1では、複数の吐出部の各々について、吐出異常が生じていないか否かを判定する吐出状態判定処理を実行する。
【0003】
そして、特許文献1のプリンタで印刷を行う際に、吐出異常状態となった吐出部である異常吐出部がない場合に通常印刷処理を実行する。一方、異常吐出部がある場合には、補完印刷処理が可能であるか否かを判定し、補完印刷処理が可能であると判断した場合には、補完印刷処理を実行する。補完印刷処理では、異常吐出部と隣接する補完吐出部からのインクの吐出量を通常印刷処理よりも多くして形成されるドットを大きくすることにより、異常吐出部に対応するドットの抜けを目立ちにくくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、異常吐出部がある場合には、補完印刷処理を実行して記録を行うと、通常印刷処理を実行して記録を行うよりもドットの抜けを目立ちにくくできることが記載されている。一方で、補完印刷処理をする場合には補完印刷処理をしない通常印刷処理よりも印刷時間が増加する。ユーザによっては、記録される画像の画質が多少悪くても補完印刷処理をせず記録時間が短いことを望むことがある。
【0006】
本発明の目的は、ユーザが再度記録を行うことによるデメリットが少ない場合には異常ノズルがあっても補完記録を行わないようにすることが可能な記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、複数のノズルを有し、前記複数のノズルからインクを吐出するヘッドと、被記録媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記搬送方向の長さが所定長さ以上の第1被記録媒体への記録を行わせるときに、インクの吐出に異常のある異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完する補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御し、前記搬送方向の長さが前記所定長さ未満の第2被記録媒体への記録を行わせるときに、前記異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完しない非補完記録を行わせるように前記ヘッドおよび前記搬送部を制御する。
【0008】
また、本発明の記録装置は、複数のノズルを有し、前記複数のノズルからインクを吐出するヘッドと、制御部と、を備え、前記制御部は、1つの被記録媒体に画像を記録するための記録データであってデータ量が所定量以上の前記記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて記録を行わせるときには、インクの吐出に異常のある異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完する補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御し、データ量が前記所定量未満の前記記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて記録を行わせるときには、前記異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完しない非補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御する。
【0009】
また、本発明の記録装置は、複数のノズルを有し、前記複数のノズルからインクを吐出するヘッドと、制御部と、を備え、前記制御部は、記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて記録を行うときに、前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要な時間が所定時間以上であることを示している場合には、インクの吐出に異常のある異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完する補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御し、前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要な時間が前記所定時間未満であることを示している場合には、前記異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完しない非補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御する。
【0010】
また、本発明の記録装置は、複数のノズルを有し、前記複数のノズルからインクを吐出するヘッドと、制御部と、を備え、前記制御部は、記録データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルからインクを吐出させて被記録媒体への記録を行うときに、前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要なインクの量が所定量以上であることを示している場合には、インクの吐出に異常のある異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完する補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御し、前記記録データが、1つの被記録媒体に画像を記録するのに必要なインクの量が前記所定量未満であることを示している場合には、前記異常ノズルからのインクの吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからのインクの吐出によって補完しない非補完記録を行わせるように前記ヘッドを制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、被記録媒体への記録のやり直しを行うことによるデメリットが大きい場合に、被記録媒体への記録のやり直しを生じにくくすることができる。一方、被記録媒体への記録のやり直しを行うことによるデメリットが小さい場合に、非補完記録によって記録を行うことにより、記録時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態のプリンタの概略構成図である。
【
図3】キャップ内に配置された電極およびこの電極に電圧を印加するための構成を説明するための図である。
【
図4】(a)はノズルが正常である場合に信号処理回路から出力される信号を説明するための図であり、(b)はノズルに吐出量異常がある場合に信号処理回路から出力される信号を説明するための図である。
【
図5】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】(a)は記録時の処理の流れを示すフローチャートであり、(b)は記録用紙の種類および記録する画像の解像度と所定長さとを関連付けたテーブルを説明するための図である。
【
図7】(a)は非補完記録による記録を説明するための図であり、(b)は1つのラスタラインを形成する記録パスの回数を多くする補完記録による記録を説明するための図である。
【
図8】(a)はロール紙およびカット紙への記録が可能なプリンタにおいて、カット紙に記録される場合を説明するための図であり、(b)はロール紙およびカット紙への記録が可能なプリンタにおいて、ロール紙に記録される場合を説明するための図である。
【
図9】
図8(a)、(b)のプリンタにおける記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】1枚の記録用紙への記録に対応するデータ量に基づいて非補完記録および補完記録のいずれで記録するかを判断する例における記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】1枚の記録用紙への記録時間に基づいて非補完記録および補完記録のいずれ記録するかを判断する例における記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】1枚の記録用紙への記録に使用されるインク量に基づいて非補完記録および補完記録のいずれで記録するかを判断する例における記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】補完記録での記録を行うか否かをユーザに選択させる例における記録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】表示信号に基づいて表示される選択画面の一例を示す図である。
【
図15】(a)は解像度を高くする補完記録を説明するための図であり、(b)は異常ノズルに隣接するノズルからのインクの吐出量を多くする補完記録を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0014】
<プリンタの全体構成>
図1、
図2に示すように、本実施形態に係るプリンタ1は、直方体状の筐体2と、記録部3と、用紙トレイ4と、排紙トレイ5とを備えている。なお、本実施形態では、プリンタ1が、本発明の「記録装置」に相当する。
【0015】
<記録部>
記録部3は、筐体2内に設けられ、キャリッジ12、インクジェットヘッド14、プラテン15、搬送ローラ16,17、メンテナンスユニット18などを備えている。なお、本実施形態では、インクジェットヘッド14が、本発明の「ヘッド」に相当する。
【0016】
キャリッジ12は、走査方向に延びた2本のガイドレール21,22に支持されている。なお、以下では、
図2に示すように、走査方向の右側および左側を定義して説明を行う。キャリッジ12は、図示しないベルトなどを介して、キャリッジモータ86(
図5参照)に接続されている。キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ12がガイドレール21,22に沿って走査方向に移動する。
【0017】
インクジェットヘッド14は、キャリッジ12に搭載されている。インクジェットヘッド14には、図示しないインクカートリッジからブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド14は、その下面であるノズル面14aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面14aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0018】
プラテン15は、インクジェットヘッド14の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン15は、走査方向に記録用紙Sの全長にわたって延び、記録用紙Sを下方から支持する。搬送ローラ16は、インクジェットヘッド14およびプラテン15よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ17は、インクジェットヘッド14およびプラテン15よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ16,17は、図示しないギヤなどを介して搬送モータ87(
図5参照)に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ16,17が回転し、記録用紙Sが搬送方向に搬送される。なお、本実施形態では、搬送ローラ16,17が、本発明の「搬送部」に相当する。また、本実施形態では、記録用紙Sが、本発明の「被記録媒体」に相当する。
【0019】
メンテナンスユニット18は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン15よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ12を、プラテン15よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0020】
また、キャップ71は、キャップ昇降機構88(
図5参照)に接続されている。キャップ昇降機構88を駆動させると、キャップ71が昇降する。キャリッジ12を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面14aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われるキャップ状態となる。キャップ71を降下させた状態では、複数のノズル10がキャップ71に覆われない。なお、キャップ71はノズル面14aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド14のノズル面14aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0021】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71および廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット18では、上記キャップ状態で吸引ポンプ72を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド14内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0022】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド14内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインクを吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド14内のブラックインクおよびカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0023】
また、
図3に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する電極76が配置されている。電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77に接続されている。そして、高電圧電源回路77は、電極76に例えば600V程度の所定電圧を印加する。一方で、インクジェットヘッド14は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド14と電極76との間に電位差が生じる。電極76には、信号処理回路78が接続されている。信号処理回路78は、微分回路などを含み、電極76の電圧に応じた信号を出力する。ただし、信号処理回路78から出力される信号は、電流の信号であってもよい。
【0024】
上記キャップ状態としたうえで、高電圧電源回路77により電極76に所定電圧を印加させ、かつ、後述する検査用駆動を行わせていない状態では、信号処理回路78から出力される信号の電圧は、
図4(a)、(b)に示す電圧V0となる。
【0025】
また、第1実施形態では、上記キャップ状態としたうえで、高電圧電源回路77により電極76に電圧を印加させた状態で、インクジェットヘッド14に、ノズル10から電極76に向けてインクを吐出させるための吐出駆動を行わせることができる。
【0026】
吐出駆動によってノズル10からインクが吐出された場合、電極76とインクジェットヘッド14との電位差により、吐出されたインクは帯電している。そのため、帯電したインクが電極76に近づき、電極76にインクが着弾するまで、電極76の電位が変化する。そして、帯電したインクが電極76に着弾した後、電極76の電位が減衰しながらインクの吐出前の電位に戻る。
【0027】
これにより、吐出駆動によってノズル10からインクが正常に吐出された場合には、信号処理回路78から出力される信号は、
図4(a)に示すように、電圧V0から、電圧V0よりも大きい電圧V1まで上昇し、その後、電圧V0よりも小さい電圧V2まで低下し、その後、減衰しながら上昇と低下とを繰り返して電圧V0に戻る。
【0028】
一方、ノズル10に異常があり、吐出駆動によってノズル10から吐出されるインク量が正常時よりも少ない場合には、
図4(b)に示すように、ノズル10から正常にインクが吐出されたときよりも信号処理回路78から出力される信号の変化が小さい。ここで、ノズル10から正常にインクが吐出されたときよりもインクの吐出量が少ないことは、インクが吐出されないことも含む。吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されない場合には信号処理回路78から出力される信号は電圧V0からほとんど変化しない。
【0029】
このように、本実施形態では、吐出駆動を行わせたときにノズル10から正常にインクが吐出されたか否かによって、信号処理回路78から出力される信号が異なる。そして、本実施形態では、このことを利用して、ノズル10が、インクの吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0030】
ここで、本実施形態では、電極76に所定電圧を印加し、インクジェットヘッド14をグランド電位に保持し、信号処理回路78が電極76の電圧に応じた信号を出力するように構成したが、これには限られない。電極76をグランド電位に保持し、インクジェットヘッド14に所定電圧を印加することによって、電極76とインクジェットヘッド14との間に電位差を生じさせ、信号処理回路78が、インクジェットヘッド14に接続され、インクジェットヘッド14の電圧に応じた信号を出力するように構成してもよい。
【0031】
<用紙トレイ>
用紙トレイ4は、筐体2の記録部3よりも下方に位置する部分に設けられたトレイ装着部40に取り外し可能に装着されている。より詳細に説明すると、トレイ装着部40は、搬送方向の下流側の端が開口しており、用紙トレイ4を搬送方向の下流側からトレイ装着部40に挿入することにより、用紙トレイ4をトレイ装着部40に装着することができる。また、トレイ装着部40に装着された用紙トレイ4を搬送方向の下流側に引き抜くことにより、用紙トレイ4をトレイ装着部40から取り外すことができる。
【0032】
用紙トレイ4は上面が開口した用紙収容部4aを有する。用紙収容部4aには、記録用紙Sを上下方向に複数枚重ねた状態で収容することができる。本実施形態における記録用紙Sはカット紙である。また、用紙収容部4aには、複数のサイズの記録用紙Sを収容可能である。用紙収容部4aに収容可能な複数のサイズの記録用紙Sのうち少なくとも2つのサイズの記録用紙Sの搬送方向の長さが異なる。
【0033】
また、トレイ装着部40は、ピックアップローラ43を備えている。ピックアップローラ43は、図示しないギヤ等を介して給紙モータ89(
図5参照)と接続されている。給紙モータ89を駆動させると、ピックアップローラ43が回転し、用紙収容部4aに収容された複数の記録用紙Sのうち最も上方に位置する1枚の記録用紙Sが、所定の搬送経路に沿って、搬送方向の上流側から、搬送ローラ16に供給される。なお、
図1では、搬送経路を形成する部材の図示を省略している。
【0034】
<排紙トレイ>
排紙トレイ5は、上下方向において搬送ローラ17とトレイ装着部40との間に位置し、搬送方向において搬送ローラ17よりも下流側に位置している。記録部3での記録が完了した記録用紙Sは、搬送ローラ16,17によって搬送方向に搬送されて、排紙トレイ5に排出される。
【0035】
<プリンタの電気的構成>
次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。
図5に示すように、プリンタ1は、制御部80を備えている。制御部80は、CPU81、ROM82、RAM83、フラッシュメモリ84、ASIC85などからなる。なお、CPUはCentral Processing Unitの略語である。ROMはRead Only Memoryの略語である。RAMはRandom Access Memoryの略語である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略語である。制御部80は、ピックアップローラ43、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド14、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、給紙モータ89、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77、信号処理回路78などを制御する。
【0036】
また、プリンタ1は、以上に説明した構成のほかに、表示部69と操作部68とを備えている。表示部69はプリンタ1の筐体2に設けられたディスプレイ等であり、制御部80の制御により、操作画面、メッセージ等を表示する。操作部68は、プリンタ1の筐体2に設けられたボタン、表示部69に設けられたタッチパネルなどである。ユーザに操作部68が操作されることにより、制御部80にユーザの操作に応じた信号が送信される。
【0037】
なお、制御部80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。
【0038】
<記録時の制御>
次に、プリンタ1において記録用紙Sに記録を行うために制御部80が行う処理について説明する。プリンタ1において記録用紙Sに記録を行うために、制御部80は、
図6(a)のフローチャートに沿って処理を行う。
図6(a)のフローチャートは、制御部80が、記録を行うことを指示する記録指令を受信したときに開始される。記録指令は、例えば、ユーザによる操作部68の操作に基づいて操作部68から制御部80に送信される。あるいは、記録指令は、ユーザによるプリンタ1に接続された図示しないPC、スマートフォンなどの外部装置の操作に基づいて、外部装置から制御部80に送信される。また、このとき、制御部80は、記録指令とともに、後述する記録パスにおける各ノズル10からのインクの吐出タイミング、記録用紙Sの種類およびサイズ、記録する画像の解像度等の情報を含む記録データを受信する。
【0039】
図6(a)のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部80は、まず、給紙処理を実行する(S101)。給紙処理において、制御部80は、給紙モータ89を制御して、ピックアップローラ43に用紙トレイ4から記録部3に記録用紙Sを供給させ、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ16,17に供給された記録用紙Sをインクジェットヘッド14の複数のノズル10と対向する位置まで搬送させる。
【0040】
続いて、制御部80は、異常ノズルが所定数以上であるか否かを判断する(S102)。ここで、プリンタ1では、記録用紙Sへの記録を行うよりも前の時点で、制御部80の制御により、インクジェットヘッド14の複数のノズル10の各々について、上述したように、吐出駆動を行ったときに信号処理回路78から出力される信号に基づいて異常ノズルであるか否かを判定し、判定結果に基づいて異常ノズルであるか否かに関する異常情報をフラッシュメモリ84に記憶させている。ただし、インクジェットヘッド14の複数のノズル10の各々について、異常ノズルであるか否かを判定して、フラッシュメモリ84に異常情報を記憶させる処理は、従来と同様であるので、これ以上の詳細な説明は省略する。そして、制御部80は、フラッシュメモリ84に記憶された、インクジェットヘッド14の複数のノズル10の各々についての異常ノズルであるか否かの情報に基づいて、S102の判断を行う。なお、本実施形態では、フラッシュメモリ84が、本発明の「記憶部」に相当する。
【0041】
異常ノズルが所定数未満の場合(S102:NO)、制御部80は、非補完記録処理を実行する(S105)。非補完記録処理については、後ほど詳細に説明する。
【0042】
異常ノズルが所定数以上の場合(S102:YES)、制御部80は、受信した記録データが示す、記録用紙Sの種類と、記録される画像の解像度とに基づいて、次のS104の判断に用いる所定長さを設定する(S103)。例えば、
図6(b)に示すように、記録用紙Sの種類および記録される画像の解像度と、所定長さL11~L33とが関連付けられたテーブルが記憶されている。S103において、受信した記録データが示す記録用紙Sの種類および記録される画像の解像度と、このテーブルとに基づいて所定長さを設定する。
【0043】
ここで、
図6(b)では、記録用紙Sの種類として、普通紙、光沢紙、インクジェット紙を挙げているが、記録用紙Sの種類はこれらとは別のものであってもよい。また、
図6(b)では、3種類の記録用紙Sを所定長さと関連付けているが、所定長さと関連付ける記録用紙Sの種類は2種類または4種類以上であってもよい。
【0044】
また、
図6(b)では、記録される画像の解像度として1200dpi、600dpi、300dpiを挙げているが、記録される画像の解像度はこれらとは別の解像度であってもよい。また、
図6(b)では、3種類の解像度を所定長さと関連付けているが、所定長さと関連付ける解像度の種類は2種類または4種類以上であってもよい。また、所定長さと関連付ける解像度は、搬送方向の解像度であってもよいし、走査方向の解像度であってもよい。また、搬送方向の解像度と走査方向の解像度の両方を所定長さと関連付けてもよい。
【0045】
続いて、制御部80は、受信した記録データが示す、記録用紙Sのサイズと、S103で設定した所定長さとに基づいて、記録用紙Sの搬送方向の長さが所定長さ以上であるか否かを判断する(S104)。記録用紙Sの搬送方向の長さが所定長さ未満の場合(S104:NO)、制御部80は、非補完記録処理を実行する(S105)。記録用紙Sの搬送方向の長さが所定長さ以上の場合(S104:YES)、制御部80は、補完記録処理を実行する(S106)。補完記録処理については、後ほど詳細に説明する。なお、本実施形態では、搬送方向の長さが所定長さ以上の記録用紙Sが、本発明の「第1被記録媒体」に相当し、搬送方向の長さが所定長さ未満の記録用紙Sが、本発明の「第2被記録媒体」に相当する。
【0046】
S105の非補完記録処理およびS106の補完記録処理の後、制御部80は、排紙処理を実行する(S107)。排紙処理において、制御部80は、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ16,17に記録用紙Sを搬送方向に搬送させることによって、記録が完了した記録用紙Sを排紙トレイ5に排出させる。
【0047】
S107の排紙処理の後、制御部80は、受信した記録データに基づいて、次の記録用紙Sへの記録を行うか否かを判断する(S108)。次の記録用紙Sへの記録を行う場合(S108:YES)、処理がS101に戻り、次の記録用紙Sへの記録を行わない場合には(S108:NO)、処理が終了する。
【0048】
<非補完記録処理および補完記録処理>
S105の非補完記録処理およびS106の補完記録処理について説明する。S105の非補完記録処理およびS106の補完記録処理のいずれにおいても、制御部80は、キャリッジモータ86を制御して、キャリッジ12を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド14を制御して複数のノズル10から記録用紙Sに向けてインクを吐出させる記録パスと、搬送モータ87を制御して搬送ローラ16,17に記録用紙Sを搬送させる搬送動作とを繰り返し行わせることによって、記録用紙Sへの画像の記録を行わせる。
【0049】
また、非補完記録処理において、制御部80は、
図7(a)に示すように、複数のドットDが走査方向に並ぶことによって形成される1つのラスタラインRを、1回の記録パスによって形成させる非補完記録を行わせる。これにより、非補完記録によって記録された画像において、1つのラスタラインRを形成する複数のドットDは、すべて1つのノズル10から吐出されたインクによって形成されたものとなる。また、非補完記録処理において、制御部80は、搬送動作において、記録用紙Sを搬送量B1搬送させる。搬送量B1は、搬送方向におけるノズル列9の長さに対応している。ここで、
図7(a)では、Kを1以上の整数として、K番目の記録パスで形成されるドットDと、(K+1)番目の記録パスで形成されるドットDとを示している。
【0050】
なお、
図7(a)では、ハッチングを付したドットDが各記録パスで形成されるドットDを示し、ハッチングを付していないドットDが、それまでの記録パスで形成されたドットDを示している。後述する
図15(a)、(b)においても同様である。
【0051】
異常ノズルがある状態で非補完記録を行うと、異常ノズルに対応するラスタラインRを形成する複数のドットDがすべて形成されないことになり、記録される画像に、走査方向に延びた白スジWが発生する。白スジWとは、ドットDが形成されないことによって記録用紙Sが露出する走査方向に画像の全長にわたって延びる直線状の領域のことである。異常ノズルの数が多いときほど、白スジWの数が多くなる、あるいは、白スジWの搬送方向の長さが長くなる。その結果、画質の低下が目立ちやすい。
【0052】
なお、
図7(a)では、×を付けたノズル10が異常ノズルを示し、破線で示すドットDが、異常ノズルに対応する形成されないドットDを示している。後述する
図15(a)、(b)においても同様である。
【0053】
補完記録処理において、制御部80は、
図7(b)に示すように、搬送動作における記録用紙の搬送量を、搬送量B1の3分の1の搬送量B2とし、各記録パスにおいて、ノズル10からインクを吐出させることによって、ラスタラインRを形成する複数のドットDのうち約3分の1のドットDのみを形成させる補完記録を行わせる。これにより、補完記録では、1つのラスタラインRが3回の記録パスで形成され、1つのラスタラインRを形成する複数のドットDが3つの異なるノズル10から吐出されたインクによって形成される。
【0054】
そして、この場合には、1つのラスタラインRを形成するのに使用する3つのノズル10のうち1つまたは2つのノズル10が異常ノズルであっても、これら3つのノズル10のうち異常ノズルでない残りのノズル10からインクが吐出されることにより、ラスタラインRを形成する複数のドットDのうち、異常ノズルでないノズル10に対応するドットDが形成される。したがって、記録される画像に上述したような記録される画像の走査方向における全長にわたって延びる白スジWが発生しにくく、画質の低下を目立ちにくくすることができる。ここで、補完記録により記録を行う場合には、非補完記録により記録を行う場合より、記録パスの回数が多くなるため、記録時間が長くなる。
【0055】
このように、本実施形態では、補完記録において、非補完記録で記録を行う場合に異常ノズルに対応するラスタラインRを形成する複数のドットDの一部が、異常ノズルでない他のノズル10から吐出されるインクによって形成される。すなわち、異常ノズルからのインクの吐出が、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出によって補完される。
【0056】
<効果>
記録用紙Sの搬送方向の長さが長いときほど、記録用紙Sへの記録に使用されるインクの量が多くなる可能性が高い。また、記録用紙Sの搬送方向の長さが長いときほど、記録時間が長くなる可能性が高い。そのため、本実施形態と異なり、搬送方向の長さの長い記録用紙Sに非補完記録によって記録を行うと、この非補完記録によって記録された画像の画質が悪く記録をやり直す場合に、最初の非補完記録によりインクが無駄に消費されるというデメリット、および、最初の非補完記録による無駄な記録時間が長くなるというデメリットが大きくなる。一方で、補完記録によって記録を行う場合には、非補完記録によって記録を行う場合よりも、記録をやり直さない場合の記録時間が長くなってしまうことがある。また、異常ノズルの数が多いほど非補完記録で記録を行ったときの画質が悪くなり、記録をやり直すことになる可能性が高い。
【0057】
そこで、本実施形態では、異常ノズルが所定数以上である場合に、搬送方向の長さが所定長さ以上の記録用紙Sには補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが大きい場合に、記録のやり直しを生じにくくすることができる。一方、異常ノズルが所定数以上である場合に、搬送方向の長さが所定長さ未満の記録用紙Sには非補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが小さい場合に、記録時間を短くすることができる。
【0058】
記録用紙Sの種類によって、ユーザが記録をやり直すか否かを判断する画質の基準が変わることがある。また、記録する画像の解像度によって、ユーザが記録をやり直すか否かを判断する画質の基準が変わることがある。そこで、本実施形態では、補完記録および非補完記録のどちらで記録を行うかを判断する基準となる所定長さを、被記録媒体の種類と記録する画像の解像度とによって異ならせる。
【0059】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0060】
上述の実施形態では、記録用紙Sの種類と記録する画像の解像度とに応じて所定長さを設定する。そして、異常ノズルが所定数以上ある場合に、記録用紙Sの搬送方向の長さと所定長さとの大小関係に応じて、補完記録および非補完記録のいずれかによって記録用紙Sへの記録を行う。しかしながら、これには限られない。
【0061】
例えば、記録用紙Sの種類と記録する画像の解像度のうち、片方に応じて所定長さを設定してもよい。あるいは、記録用紙Sの種類および記録する画像の解像度とは別の条件に応じて所定長さを設定してもよい。あるいは、所定長さを一律の長さとしてもよい。
【0062】
また、例えば、変形例1では、
図8(a)、(b)に示すように、プリンタ100が、上述の実施形態のプリンタ1と同様の構成に加えて、ロール紙ホルダ101と、ロール紙供給ローラ102とを備えている。ロール紙ホルダ101は、筐体2の搬送方向の上流側の端部に設けられている。ロール紙ホルダ101には、記録用紙としてのロール紙Srが保持されている。なお、変形例1では、用紙トレイ4の用紙収容部4aに収容されている記録用紙Sをカット紙Scとして説明を行う。なお、変形例1では、ロール紙Srが本発明の「第1被記録媒体」に相当し、ロール紙Srを供給するためのロール紙ホルダ101およびロール紙供給ローラ102が、本発明の「第1供給部」に相当する。また、変形例1では、カット紙Scが本発明の「第2被記録媒体」に相当し、カット紙Scを供給するための用紙トレイ4およびピックアップローラ43が、本発明の「第2供給部」に相当する。また、変形例1では、カット紙Scの搬送方向の長さが所定長さ未満であり、ロール紙Srの搬送方向の長さが所定長さ以上である。
【0063】
ロール紙供給ローラ102は、搬送方向におけるロール紙ホルダ101と搬送ローラ16との間に位置している。変形例1では、給紙モータ89が、ピックアップローラ43およびロール紙供給ローラ102のいずれかと選択的に接続可能となっている。給紙モータ89がピックアップローラ43に接続された状態で給紙モータ89を駆動させると、上述の実施形態と同様、
図8(a)に示すように、ピックアップローラ43が回転して、用紙トレイ4の用紙収容部4aに収容されたカット紙Scが供給される。給紙モータ89がロール紙供給ローラ102に接続された状態で給紙モータ89を駆動させると、
図8(b)に示すように、ロール紙供給ローラ102が回転して、ロール紙ホルダ101に保持されたロール紙Srが供給される。
【0064】
変形例1では、ロール紙Srおよびカット紙Scへの記録時に、制御部80が
図9のフローチャートに沿って処理を行う。
図9のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部80は、給紙処理を実行する(S201)。
【0065】
カット紙Scへの記録を行うときには、S201の給紙処理において、制御部80は、給紙モータ89をピックアップローラ43に接続させたうえで給紙モータ89を制御して、上述の実施形態のS101の給紙処理と同様に、ピックアップローラ43に、用紙トレイ4から記録部3にカット紙Scを供給させ、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ16,17に供給されたカット紙Scをインクジェットヘッド14の複数のノズル10と対向する位置まで搬送させる。
【0066】
ロール紙Srへの記録を行うときには、S201の給紙処理において、制御部80は、給紙モータ89をロール紙供給ローラ102に接続させたうえで給紙モータ89を制御して、ロール紙供給ローラ102に、ロール紙ホルダ101から記録部3にロール紙Srを供給させ、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ16,17に供給されたロール紙Srをインクジェットヘッド14の複数のノズル10と対向する位置まで搬送させる。
【0067】
続いて、制御部80は、上述の実施形態のS102と同様、異常ノズルが所定数以上であるか否かを判断する(S202)。異常ノズルが所定数未満の場合には(S202:NO)、制御部80は、上述の実施形態のS105と同様の非補完記録処理を実行する(S204)。
【0068】
異常ノズルが所定数以上の場合には(S202:NO)、制御部80は、続いて、ロール紙Srへの記録であるか否かを判断する(S203)。ロール紙Srへの記録でない、つまり、カット紙Scへの記録である場合には(S203:NO)、制御部80は、非補完記録処理を実行する(S204)。ロール紙Srへの記録である場合には(S203:YES)、制御部80は、上述の実施形態のS106と同様の補完記録処理を実行する(S205)。
【0069】
S204の非補完記録処理およびS205の補完記録処理の後、制御部80は、排紙処理を実行する(S206)。S206の排紙処理において、制御部80は、上述の実施形態のS107の排紙処理と同様に、搬送モータ87を制御して、搬送ローラ16,17に、画像が記録されたロール紙Srまたはカット紙Scを排紙トレイ5に排出させる。ただし、ロール紙Srへの記録を行った場合には、排紙処理において、ロール紙Srの画像が記録された領域のうち少なくとも一部の領域が排紙トレイ5上に位置するようにロール紙Srを排出させる。
【0070】
続いて、制御部80は、ロール紙Srへの記録である場合には(S207:YES)、処理を終了する。一方、カット紙Scへの記録である場合(S207:NO)、制御部80は、受信した記録データに基づいて、次のカット紙Scへの記録を行うか否かを判断する(S208)。次のカット紙Scへの記録を行う場合(S208:YES)、処理がS201に戻り、次のカット紙Scへの記録を行わない場合には(S208:NO)、処理が終了する。
【0071】
ロール紙Srの画像が記録される領域の搬送方向の長さは、カット紙Scの搬送方向の長さよりも長い可能性が高い。したがって、ロール紙Srに記録を行うときには、カット紙Scに記録を行うときよりも、記録に使用されるインクの量が多くなる可能性が高い。また、ロール紙Srに記録を行うときには、カット紙Scに記録を行うときよりも、記録時間が長くなる可能性が高い。そのため、変形例1と異なり、ロール紙Srに非補完記録によって記録を行うと、この非補完記録によって記録された画像の画質が悪く記録をやり直す場合に、最初の非補完記録によりインクが無駄に消費されるというデメリット、最初の非補完記録による無駄な記録時間が長くなるというデメリット、および、最初の非補完記録により無駄になるロール紙Scの搬送方向の長さが長くなるというデメリットが大きくなる。一方で、補完記録によって記録を行う場合には、非補完記録によって記録を行う場合よりも、記録をやり直さない場合の記録時間が長くなってしまうことがある。また、異常ノズルの数が多いほど非補完記録で記録を行ったときの画質が悪くなり、記録をやり直すことになる可能性が高い。
【0072】
そこで、変形例1では、ロール紙ホルダ101から供給されたロール紙Srに補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが大きい場合に記録のやり直しを生じにくくすることができる。一方、用紙トレイ4から供給されたカット紙Scに非補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが小さい場合に、記録時間を短くすることができる。
【0073】
また、変形例1では、搬送方向の長さが異なる記録用紙としてロール紙Srおよびカット紙Scを供給可能となっていたが、これには限られない。例えば、プリンタが、用紙トレイ4およびピックアップローラ43の組を複数組備え、各用紙トレイ4の用紙収容部4aに搬送方向の長さの異なるカット紙が収容されていてもよい。そして、どの用紙トレイ4から供給されたカット紙に記録するかに応じて、非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行わせてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態および変形例1では、異常ノズルが所定数以上の場合に、記録用紙の搬送方向の長さに応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ったが、これには限られない。
【0075】
変形例2では、上述の実施形態と同様のプリンタ1において、記録用紙Sへの記録時に、制御部80が
図10のフローチャートに沿って処理を行う。
【0076】
図10のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部80は、上述の実施形態と同様、S101,S102の処理を実行する。また、制御部80は、上述の実施形態と同様、S102で異常ノズルが所定数未満であると判断した場合には(S102:NO)、非補完記録処理を実行する(S105)。
【0077】
S102で異常ノズルが所定数以上であると判断した場合(S102:YES)、制御部80は受信した記録データに基づいて、1枚の記録用紙Sに記録を行うための記録データのデータ量が所定量以上であるか否かを判断する(S301)。上記データ量が所定量未満の場合には(S301:NO)、制御部80は、非補完記録処理を実行する(S105)。上記データ量が所定量以上の場合には(S301:YES)、制御部80は、補完記録処理を実行する(S106)。S105の非補完処理およびS106の補完記録処理の後、制御部80は、上述の実施形態と同様、S107,S108の処理を実行する。
【0078】
1枚の記録用紙Sに画像を記録するための記録データのデータ量が大きいときほど、この記録用紙Sへの記録に使用されるインクの量が多くなる可能性が高い。また、1枚の記録用紙Sに画像を記録するための記録データのデータ量が大きいときほど、記録時間が長くなる可能性が高い。そのため、変形例2と異なり、上記データ量の大きい記録データに基づいて記録を行うときに非補完記録によって記録を行うと、この非補完記録によって記録された画像の画質が悪く記録をやり直す場合に、最初の非補完記録によりインクが無駄に消費されるというデメリット、および、最初の非補完記録による無駄な記録時間が長くなるというデメリットが大きくなる。一方で、補完記録によって記録を行う場合には、非補完記録によって記録を行う場合よりも、記録をやり直さない場合の記録時間が長くなってしまうことがある。また、異常ノズルの数が多いほど非補完記録で記録を行ったときの画質が悪くなり、記録をやり直すことになる可能性が高い。
【0079】
そこで、変形例2では、異常ノズルが所定数以上である場合に、上記データ量が所定量以上の上記記録データに基づいて記録を行うときに補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが大きい場合に記録のやり直しを生じにくくすることができる。一方、異常ノズルが所定数以上である場合に、上記データ量が所定量未満の上記記録データに基づいて記録を行うときに、非補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが小さい場合に、記録時間を短くすることができる。
【0080】
変形例3では、上述の実施形態と同様のプリンタ1において、記録用紙Sへの記録時に、制御部80が
図11のフローチャートに沿って処理を行う。
【0081】
図11のフローチャートは、
図10のフローチャートにおけるS301をS401に置き換えたものである。S401において、制御部80は受信した記録データから算出される、1枚の記録用紙Sに記録を行うのに必要な記録時間が、所定時間以上であるか否かを判断する。上記記録時間が所定時間未満の場合には(S401:NO)、制御部80は、非補完記録処理を実行する(S105)。上記記録時間が所定時間以上の場合には(S401:YES)、制御部80は、補完記録処理を実行する(S106)。
【0082】
変形例3と異なり、1枚の記録用紙Sに画像を記録するのに必要な記録時間が長いときに非補完記録によって記録を行うと、この非補完記録によって記録された画像の画質が悪く記録をやり直す場合に、最初の非補完記録による無駄な記録時間が長くなるというデメリットが大きくなる。一方で、補完記録によって記録を行う場合には、非補完記録によって記録を行う場合よりも、記録をやり直さない場合の記録時間が長くなってしまうことがある。また、異常ノズルの数が多いほど非補完記録で記録を行ったときの画質が悪くなり、記録をやり直すことになる可能性が高い。
【0083】
そこで、変形例3では、異常ノズルが所定数以上である場合に、上記記録時間が所定時間以上であることを示す記録データに基づいて記録を行うときに、補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが大きくなる場合に記録のやり直しを生じにくくすることができる。一方、異常ノズルが所定数以上である場合に、上記時間が所定時間未満であることを示す記録データに基づいて記録を行うときに、非補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが小さい場合に、記録時間を短くすることができる。
【0084】
変形例4では、上述の実施形態と同様のプリンタ1において、記録用紙Sへの記録時に、制御部80が
図12のフローチャートに沿って処理を行う。
【0085】
図12のフローチャートは、
図10のフローチャートにおけるS301をS501に置き換えたものである。S501において、制御部80は受信した記録データから算出される、1枚の記録用紙Sに記録を行うのに使用されるインク量が、所定量以上であるか否かを判断する。上記インク量が所定量未満の場合には(S501:NO)、制御部80は、非補完記録処理を実行する(S105)。上記インク量が所定量以上の場合には(S501:YES)、制御部80は、補完記録処理を実行する(S106)。
【0086】
変形例4と異なり、1枚の記録用紙Sに記録するのに必要なインク量が多いときに非補完記録によって記録を行うと、この非補完記録によって記録された画像の画質が悪く記録をやり直す場合に、最初の非補完記録によってインクが無駄に消費されるというデメリットが大きくなる。一方で、補完記録によって記録を行う場合には、非補完記録によって記録を行う場合よりも、記録をやり直さない場合の記録時間が長くなってしまうことがある。また、異常ノズルの数が多いほど非補完記録で記録を行ったときの画質が悪くなり、記録をやり直すことになる可能性が高い。
【0087】
そこで、変形例4では、異常ノズルが所定数以上である場合に、1枚の記録用紙Sに記録するのに必要なインク量が所定量以上であることを示す記録データに基づいて記録を行うときに、補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが大きくなるときに記録のやり直しを生じにくくすることができる。一方、異常ノズルが所定数以上である場合に、上記インク量が所定量未満であることを示す記録データに基づいて記録を行うときに、非補完記録によって記録を行う。これにより、上記デメリットが小さい場合に、記録時間を短くすることができる。
【0088】
また、上述の実施形態では、異常ノズルが所定数以上であり、記録用紙Sの搬送方向の長さが所定長さ以上である場合に、一律に補完記録によって記録を行わせたが、これには限られない。
【0089】
変形例5では、上述の実施形態と同様のプリンタ1において、記録用紙Sへの記録時に、制御部80が
図13のフローチャートに沿って処理を行う。
【0090】
図13のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部80は、上述の実施形態と同様、S101~S104の処理を実行する。また、制御部80は、上述の実施形態と同様、S102で異常ノズルが所定数未満であると判断した場合には(S102:NO)、非補完記録処理を実行する(S105)。また、制御部80は、上述の実施形態と同様、S104で記録用紙Sの搬送方向の長さが所定長さ未満であると判断した場合には(S104:NO)、非補完記録処理を実行する(S105)。
【0091】
S104で記録用紙Sの搬送方向の長さが所定長さ以上であると判断した場合には(S104:YES)、制御部80は、
図14に示すような選択画面110を表示させるための表示信号を表示部69に送信する(S601)。
【0092】
図14に示すように、選択画面110は、メッセージ部111と、2つの選択部112,113とを有する。ここで、選択画面110は、操作部68(
図5参照)が表示部69に設けられたタッチパネルである場合の例である。なお、変形例5では、選択画面110が、本発明の「オブジェクト」に相当する。
【0093】
メッセージ部111には、異常ノズルの数が多いため補完記録を行わないと画質が悪くなる可能性があること、および、補完記録を行うと記録時間が長くなることをユーザに知らせたうえで、ユーザに補完記録を行うか否かを選択させるためのメッセージが表示される。
【0094】
選択部112は、操作部68としてのタッチパネルが設けられた表示部69の、ユーザが補完記録を行うことを選択する場合に操作する位置を示す。ユーザが操作部68としてのタッチパネルが設けられた表示部69の選択部112が示す部分を操作すると、補完記録を行うことを選択したことを示す選択信号が制御部80に送信される。
【0095】
選択部113は、操作部68としてのタッチパネルが設けられた表示部69の、ユーザが補完記録を行わないことを選択する場合に操作する位置を示す。ユーザが操作部68としてのタッチパネルが設けられた表示部69の選択部113が示す部分を操作すると、補完記録を行わないことを選択したことを示す選択信号が制御部80に送信される。
【0096】
なお、操作部68が、筐体2に設けられたボタンである場合には、選択部112の代わりに、例えば、ユーザが補完記録を行わないことを選択する場合に操作するボタンを示すメッセージ等を表示させる。ユーザがこのボタンを操作すると、補完記録を行うことを選択したことを示す選択信号が制御部80に送信される。
【0097】
また、操作部68が、筐体2に設けられたボタンである場合には、選択部113の代わりに、例えば、ユーザが補完記録を行わないことを選択する場合に操作するボタンを示すメッセージ等を表示させる。ユーザがこのボタンを操作すると、補完記録を行わないことを選択したことを示す選択信号が制御部80に送信される。
【0098】
図13に戻って、制御部80は、S601で表示信号を送信した後、選択信号を受信するまで待機する(S602:NO)。そして、制御部80は、選択信号を受信したときに(S602:YES)、選択信号が補完記録を行うことを選択したことを示すものであるか否かを判断する(S603)。
【0099】
選択信号が補完記録を行うことを選択したことを示すものである場合(S603:YES)、制御部80は、補完記録処理を実行する(S106)。選択信号が補完記録を行わないことを選択したことを示すものである場合(S603:NO)、制御部80は、非補完記録処理を実行する(S105)。
【0100】
変形例5では、搬送方向の長さが所定長さ以上の記録用紙Sへの記録を行うときでも、ユーザが望む場合には、非補完記録で記録を行うことによって、記録時間を極力短くすることができる。
【0101】
また、変形例5では、搬送方向の長さが所定長さ未満の記録用紙Sに記録を行うときには、上記選択画面110を表示部69に表示させることなく、非補完記録によって記録を行う。これにより、記録時間を短くすることができる。また、この場合、補完記録で記録を行うか否かをユーザに選択させることなく非補完記録で記録を行った結果、補完記録で記録をやり直すことになる場合があるが、搬送方向の長さの短い記録用紙Sへの記録であるため、上述の実施形態で説明したデメリットは小さい。
【0102】
変形例5では、制御部80は、プリンタ1の表示部69に選択画面110を表示させ、プリンタ1の操作部68の操作に基づいて選択信号を受信したが、これには限られない。例えば、制御部80は、プリンタ1に接続された図示しないPC、スマートフォン等の外部装置に、選択画面を表示させるための信号を送信し、ユーザが外部装置を操作したことに基づいて外部装置から選択信号を受信してもよい。
【0103】
また、変形例5では、異常ノズルが所定数以上あり、記録用紙Sの搬送方向の長さが所定長さ未満の長さの場合に、選択画面を表示させることなく、非補完記録で記録を行わせたが、これには限られない。変形例5では、異常ノズルが所定数以上あり、記録用紙Sの搬送方向の長さが所定長さ未満の長さの場合に、補完記録を行うか否かを選択させるための選択画面を表示させ、選択画面に基づく選択結果に応じて、補完記録および非補完記録のいずれかで記録を行わせるようにしてもよい。
【0104】
また、変形例5で説明したのと同様に、変形例1において、ロール紙Srへの記録を行うときに、補完記録を行うか否かをユーザに選択させるための選択画面を表示させ、選択画面に基づくユーザの選択結果に応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ってもよい。
【0105】
同様に、変形例2において、1枚の記録用紙Sへの記録を行うための記録データのデータ量が所定量以上の場合に、補完記録を行うか否かをユーザに選択させるための選択画面を表示させ、選択画面に基づくユーザの選択結果に応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ってもよい。
【0106】
同様に、変形例3において、1枚の記録用紙Sへの記録に必要な記録時間が所定時間以上の場合に、補完記録を行うか否かをユーザに選択させるための選択画面を表示させ、選択画面に基づくユーザの選択結果に応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ってもよい。
【0107】
同様に、変形例4において、1枚の記録用紙Sへの記録に使用されるインク量が所定量以上の場合に、補完記録を行うか否かをユーザに選択させるための選択画面を表示させ、選択画面に基づくユーザの選択結果に応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ってもよい。
【0108】
また、上述の実施形態では、異常ノズルが所定数以上である場合に、記録用紙の搬送方向の長さに応じて非補完記録および補完記録理のいずれかによって記録を行ったが、異常ノズルの数によらず、記録用紙の搬送方向の長さに応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ってもよい。
【0109】
同様に、変形例1において、異常ノズルの数によらず、ロール紙Srへの記録であるかカット紙Scへの記録であるかに応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ってもよい。
【0110】
同様に、変形例2において、異常ノズルの数によらず、1枚の記録用紙Sへの記録を行うための記録データのデータ量に応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ってもよい。
【0111】
同様に、変形例3において、異常ノズルの数によらず、1枚の記録用紙Sへの記録に必要な記録時間に応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ってもよい。
【0112】
同様に、変形例4において、異常ノズルの数によらず、1枚の記録用紙Sへの記録に使用されるインク量に応じて非補完記録および補完記録のいずれかによって記録を行ってもよい。
【0113】
上述の実施形態では、補完記録において、1つのラスタラインRを形成する複数のドットDを複数回の記録パスで記録することによって、異常ノズル10からのインクの吐出を、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出によって補完したが、これには限られない。
【0114】
変形例6では、制御部80が、上述の実施形態で説明したのと同様にして非補完記録処理を行う。一方で、変形例6では、上述の実施形態とは異なり、制御部80は、補完記録処理において、記録データを、走査方向および搬送方向における解像度がより高い画像を記録することを指示するものに変換する。そして、
図15(a)に示すように、各記録パスにおいて、走査方向におけるインクの着弾位置の間隔を非補完記録処理のときよりも短くするとともに、ノズル10からのインクの吐出量を非補完記録処理よりも少なくする。記録パスでの走査方向におけるインクの着弾位置の間隔を非補完記録よりも短くするには、例えば、記録パスでのノズル10からインクを吐出させる時間間隔を非補完記録処理のときよりも短くする、あるいは、記録パスでのキャリッジ2の移動速度を非補完記録処理のときよりも遅くする。
【0115】
また、変形例6では、補完記録において、Mを1以上の奇数として、搬送動作における記録用紙Sの搬送量B3を、ノズル列9におけるノズル10同士の間隔Aの(M/2)倍の長さとする。なお、
図15(a)では、M=3の場合を示している。
【0116】
これにより、変形例6では、補完記録において、非補完記録よりも走査方向および搬送方向の解像度が高い画像が記録される。そして、この場合には、異常ノズルがある場合に、記録用紙Sの非補完記録で記録した場合に異常ノズルに対応するドットDが形成されない領域の一部に、異常ノズルでない他のノズル10から吐出されたインクによって形成されるドットDが配置されることになる。すなわち、異常ノズルからのインクの吐出を、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出によって補完することができる。これにより、
図7(a)と
図15(a)とを比較すればわかるように、補完記録で記録を行うと、非補完記録で記録を行うよりも白スジWの搬送方向の長さが短くなり、白スジWが目立ちにくくなる。ここで、変形例6でも、補完記録により記録用紙Sに記録を行う場合には、非補完記録により記録用紙Sに記録を行う場合より、記録パスの回数が多くなるため、記録時間が長くなる。
【0117】
なお、変形例6では、補完記録において、非補完記録のときよりも、走査方向および搬送方向の両方の解像度を高くしたが、これには限られない。変形例6の補完記録において、非補完記録のときよりも、走査方向および搬送方向のうち搬送方向の解像度のみを高くしてもよい。
【0118】
変形例7では、制御部80は、上述の実施形態で説明したのと同様にして非補完記録処理を実行する。一方で、変形例7では、上述の実施形態とは異なり、補完記録処理において、
図15(b)に示すように、記録パスでの異常ノズルと搬送方向の上流側および下流側に隣接するノズル10からのインクの吐出量を、非補完記録処理のときよりも多くすることによって、当該ノズル10から吐出されるインクによって形成されるドットDの大きさを大きくする。これにより、異常ノズルと搬送方向に隣接するノズル10から吐出されたインクによって形成されたドットDの一部が、記録用紙Sの、異常ノズルに対応するドットDが形成されなかった領域にはみ出す。すなわち、異常ノズルからのインクの吐出が、異常ノズルでないノズル10からのインクの吐出によって補完される。その結果、
図7(a)と
図15(b)とを比較すればわかるように、白スジWの搬送方向の長さが短くなり、白スジWが目立ちにくくなる。
【0119】
また、変形例7では、補完記録において、異常ノズルと搬送方向の上流側および下流側に隣接するノズル10からのインクの吐出量を、非補完記録のときよりも多くしたがこれには限られない。補完記録において、異常ノズルと搬送方向の上流側および下流側に隣接するノズル10のうち片方のノズル10からのインクの吐出量のみを、非補完記録のときよりも多くしてもよい。
【0120】
また、変形例7では、搬送方向の最も上流のノズル10が異常ノズルである場合に、搬送方向の最も下流のノズル10を、搬送方向の最も上流のノズル10と隣接するノズル10とみなして、非補完記録のときよりもインクの吐出量を多くしてもよい。また、変形例7では、搬送方向の最も下流のノズル10が異常ノズルである場合に、搬送方向の最も上流のノズル10を、搬送方向の最も下流のノズル10と隣接するノズル10とみなして、非補完記録のときよりもインクの吐出量を多くしてもよい。
【0121】
また、補完記録において、以上の説明したのと異なる方法で、異常ノズルからのインクの吐出を、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出で補完してもよい。
【0122】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド14に吐出駆動を行わせたときの、ノズル10からキャップ71内に配置された電極76における電圧の変化に応じて信号処理回路78から出力される信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定したが、これには限られない。
【0123】
例えば、電極76の代わりに、鉛直方向に延びており、キャリッジ2がメンテナンス位置に位置している状態でノズル10の下方の空間と対向する電極を設けてもよい。そして、信号処理回路78から、キャリッジ2をメンテナンス位置に位置させた状態で吐出駆動を行ったときの上記電極の電圧の変化に応じた信号を出力するようにし、この信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定しもよい。
【0124】
あるいは、例えば、キャリッジ2がメンテナンス位置等の所定位置に位置している状態で、ノズル10から吐出されたインクを直接検出し、検出結果に応じた信号を出力する光センサを設けてもよい。そして、この光センサから出力される信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0125】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路を接続し、キャリッジを検査位置に移動させた状態でノズルからインクを吐出させるための動作を行わせたときに電圧検出回路から出力された信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0126】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0127】
また、プリンタ1において各ノズル10が異常ノズルであるかを確認するためのテストパターンを記録させ、このテストパターンの記録結果に基づいて異常ノズルであるか否かを判定してもよい。この場合、例えば、ユーザにテストパターンの記録結果に基づいてプリンタの操作部68、あるいは、プリンタに接続された図示しないPC、スマートフォン等の外部装置を操作させることによって、制御部80にテストパターンの記録結果の信号を入力させてもよい。あるいは、プリンタ1が記録用紙Sに記録された画像を読み取るスキャナを備えている場合に、記録したテストパターンをスキャナに読み取らせることによって、テストパターンの記録結果の信号を入力させてもよい。
【0128】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド14の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせて、異常ノズルであるか否かを判定したが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド14の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせて異常ノズルであるか否かを判定してもよい。そして、それ以外のノズル10については、上記一部のノズル10についての判定結果に基づいて異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0129】
また、以上の例では、インクの吐出量が不足しているノズル10を異常ノズルと判定したが、これには限られない。例えばインクの吐出方向や吐出速度に異常があるノズル10を異常ノズルと判定してもよい。
【0130】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙の全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0131】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Sに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録する記録装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0132】
1: プリンタ
4:用紙トレイ
10:ノズル
16,17:搬送ローラ
14:インクジェットヘッド
43:ピックアップローラ
69:表示部
80:制御部
100:プリンタ
101:ロール紙ホルダ
102:ロール紙供給ローラ
110:選択画面