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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097454
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/038 20130101AFI20240711BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20240711BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20240711BHJP
【FI】
G06F3/038 320
G06F3/03 400F
G06F3/0354 445
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000912
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】武田 高司
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087AA02
5B087AC02
5B087BC03
5B087BC32
5B087DD02
(57)【要約】
【課題】非入力状態であっても媒体の非接触面に対する電子ペンの移動を検出する。
【解決手段】本発明の電子ペンは、情報処理装置と通信する電子ペンであって、第1光を発する光源と、光源から発せられた第1光の一部を媒体の入力面に向けて偏向し、入力面から反射される第2光の一部を偏向する第1光学部材と、第1光学部材によって偏向された第2光を受光する第1受光部材と、第1受光部材で受光された第2光の情報に基づいて電子ペンの移動を検出する検出部と、を備える。検出部は、電子ペンが媒体と隔離しているときに入力面に対する電子ペンの移動を検出し、電子ペンが媒体と接しているときに入力面に対する電子ペンの移動を検出するとともに、電子ペンの移動に対応する入力を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置と通信する電子ペンであって、
第1光を発する光源と、
前記光源から発せられた前記第1光の一部を媒体の入力面に向けて偏向し、前記入力面から反射される第2光の一部を偏向する第1光学部材と、
前記第1光学部材によって偏向された前記第2光を受光する第1受光部材と、
前記第1受光部材で受光された前記第2光の情報に基づいて電子ペンの移動を検出する検出部と、
を備え、
前記検出部は、電子ペンが前記媒体と隔離しているときに前記入力面に対する電子ペンの移動を検出し、電子ペンが前記媒体と接しているときに前記入力面に対する電子ペンの移動を検出するとともに、電子ペンの移動に対応する入力を検出する、
電子ペン。
【請求項2】
中心軸に沿って延在し、前記光源と、前記第1光学部材と、前記第1受光部材と、前記検出部を収容する収容部材を備え、
前記第1光学部材は前記入力面の法線に沿って前記第1光を前記入力面に向けて偏向し、
前記中心軸は前記法線と交差する、
請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記収容部材には、前記第1光学部材によって偏向された前記第1光が通る開口が形成され、
前記中心軸に直交する面内が前記中心軸を基準として第1領域と第2領域とに区画される場合に、前記第1光学部材によって偏向された前記第1光は前記第1領域における前記開口を通り、前記第1領域における前記開口の面積は前記第2領域における前記開口の面積よりも大きい、
請求項2に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記中心軸に平行な板面を有する基板を備え、
前記光源と前記第1受光部材は前記板面に配置され、
前記中心軸に直交する面内が前記中心軸を基準として第1領域と第2領域とに区画される場合に、前記基板は前記第1領域における前記収容部材に配置されている、
請求項2に記載の電子ペン。
【請求項5】
回転体と、
所定の向きにおいて、前記回転体を前記回転体が前記媒体と隔離している状態での第1位置と、前記回転体が前記媒体に接している状態での第2位置と、で移動可能に支持する支持部と、
を備え、
前記検出部は、前記回転体が前記第1位置にある場合に、電子ペンの移動を検出し、前記回転体が前記第2位置にある場合に、電子ペンの移動と電子ペンの移動に対応する入力とを検出する、
請求項1から4の何れか一項に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記支持部に設けられ、前記第1光学部材で偏向された前記第1光の別の一部を偏向する第2光学部材と、
前記第2光学部材で偏向された前記第1光を受光する第2受光部材と、
を備え、
前記検出部は前記第2受光部材における前記第1光の受光位置及び受光量に基づいて前記媒体に対する前記回転体の位置を検出する、
請求項5に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記第2光学部材は、前記回転体が前記第1位置にある場合に受光する前記第1光の受光量と前記回転体が前記第2位置にある場合に受光する前記第1光の受光量とが互いに異なるように、前記第1光の別の一部を偏向し、
前記検出部は、前記第2受光部材で受光される前記第1光の受光量に応じて前記回転体が前記第1位置及び前記第2位置の何れかの位置にあることを判定する、
請求項6に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記第1光学部材は中心軸上に配置され、
前記支持部は、前記回転体が前記第2位置にある場合に、前記回転体が前記中心軸上で前記媒体の前記入力面と接するように支持する、
請求項5に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記光源から発せられる前記第1光の少なくとも一部を前記第1光学部材に偏向する第3光学部材と、
前記第1光学部材が偏向した前記第1光を前記第2光学部材に向けて偏向する第4光学部材と、
を備え、
電子ペンが前記媒体に接しているときに、
前記第3光学部材は前記入力面に直交する方向で前記第1光学部材と重なるように配置され、
前記第4光学部材は前記入力面に直交する方向で前記第2光学部材と重なるように配置されている、
請求項6に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記第1光学部材は回折光学素子であり、
前記第1光学部材は、前記入力面によって拡散される前記第2光を集光し、前記第1光学部材に向けて偏向する、
請求項1から4の何れか一項に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手書きの文字や図を瞬時に電子データに変換し、コンピュータや携帯端末装置等の情報処理装置に保存し、必要に応じて情報処理装置で編集する技術が知られている。この技術では、例えば光を反射可能な入力面を有する媒体と、光源と受光素子又は撮像素子が内蔵された電子ペンが用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、照射部と受光部とを有し、回転軸によって回転自在に支持された撮像ユニットを備える電子ペンが開示されている。特許文献1に開示されている電子ペンでは、ペンの先端に配置されて入力面に沿って回転可能な回転体を有するペンチップが電子ペンの軸線に沿って移動することによって、照射部から媒体の入力面に光が照射される。媒体で反射される光が受光部で受光されることによって、入力面上でペンの先端が移動した経路が文字や図の情報として検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-141525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている電子ペンでは、回転体が媒体の入力面に接し、ペンチップが電子ペンの軸線に沿って基端側の位置に移動し、入力状態であるときのみ、ペンの先端が移動した経路や方向が検出される。しかしながら、回転体が媒体の入力面から離れ、ペンチップが電子ペンの軸線上の先端側の初期位置に移動し、非入力状態であるときには、ペンの先端が移動した経路や方向は検出されない。そのため、入力状態から一旦非入力状態になった後で再度入力状態になるとき、非入力状態におけるペンの先端の最後の位置に対して、その後の入力状態におけるペンの先端の最初の位置が正確に検出されず、結果として電子ペンで書かれた文字や図の情報が不正確である場合があった。そのため、非入力状態であっても媒体の入力面に対する移動を検出可能な電子ペンが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の電子ペンは、情報処理装置と通信する電子ペンであって、第1光を発する光源と、光源から発せられた第1光の一部を媒体の入力面に向けて偏向し、入力面から反射される第2光の一部を偏向する第1光学部材と、第1光学部材によって偏向された第2光を受光する第1受光部材と、第1受光部材で受光された第2光の情報に基づいて電子ペンの移動を検出する検出部と、を備える。検出部は、電子ペンが媒体と隔離しているときに入力面に対する電子ペンの移動を検出し、電子ペンが媒体と接しているときに入力面に対する電子ペンの移動を検出するとともに、電子ペンの移動に対応する入力を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の電子ペンの使用時の様子を説明するための概略図である。
図2】第1実施形態の電子ペンの構成を示す概略図である。
図3図2の電子ペンによって入力面に描かれる文字の一例を示す模式図である。
図4図2の電子ペンの要部の拡大図である。
図5図2の電子ペンの第2受光部材の概略図である。
図6】第1実施形態の電子ペンの構成を示す他の概略図である。
図7図6の電子ペンの要部の拡大図である。
図8図2及び図6の電子ペンの回転体の移動量と電子ペンにかかる筆圧との関係を示す模式図である。
図9図2及び図6の電子ペンの回転体の移動量と第2受光部材からの出力との関係を示す模式図である。
図10図2及び図6の電子ペンの回転体の移動量と電子ペンから出力されるパターンの形状との関係を示す模式図である。
図11】第2実施形態の電子ペンの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。各図面では、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を変えている場合がある。
【0009】
[第1実施形態]
先ず、本発明の第1実施形態について、図1から図10を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態の電子ペン11の使用時の様子を説明するための概略図である。図2は、電子ペン11の構成を示す概略図であり、電子ペン11が媒体Bの入力面Pと隔離している状態の図である。図1に示すように、電子ペン11は、マン・マシン・インターフェース(Man Machine Interface;MMI)の一種であり、情報処理装置150に対して手書きの文字や図を入力するためのペン型の入力装置である。
【0010】
図1及び図2に示すように、電子ペン11は、使用者の手Hに把持され、媒体Bの入力面Pに対して文字や図を描くために用いられる。媒体Bは、照射光L1を反射可能な入力面Pを有する媒体であればよく、例えば紙、電子ペーパー、メモパッド等であり、特定の媒体に限定されない。電子ペン11は、情報処理装置150と通信し、入力面Pに描かれた電子ペン11の先端部の移動経路に関する情報を電気信号として情報処理装置150に送信する読み取り装置である。情報処理装置150で受信される電気信号は、被読み取り画像のパターンとして処理され、手Hで描かれた文字や図が出力、表示及び記録される。情報処理装置150は、例えばパーソナルコンピューターやタブレット端末である。
【0011】
始めに、電子ペン11の構造について説明する。
図2に示すように、電子ペン11は、収容部材20と、基板30と、光源32と、レンズ33と、第3光学部材45と、第1光学部材35と、第1受光部材36と、第4光学部材46と、第2光学部材37と、第2受光部材38と、回転体40と、支持部42と、検出部50と、を備える。
【0012】
以下の説明及び図面では、媒体Bの入力面Pに直交する方向をZ方向とする。Z方向に直交し、入力面Pに平行な一方向をX方向とする。X方向及びZ方向に直交し、入力面Pに平行な方向をY方向とする。
【0013】
収容部材20は、電子ペン11の外装及びホルダーを構成する部材であり、電子ペン11の中心軸JXに沿って長細く形成され、中空体である。収容部材20の軸線は、中心軸JXと重なっている。収容部材20は、不図示の基端部と、手Hに把持される把持部22と、先端部24と、を有する。先端部24は、手Hに把持された把持部22において媒体Bに対向する端部に接続され、基端部や把持部22と一体に形成されている。基端部や把持部22の断面積、すなわち中心軸JXに直交する面内での面積は、互いに同等である。先端部24の断面積は、中心軸JXに沿って把持部22から離れるにしたがって細くなっている。
【0014】
収容部材20の先端部24には、開口26が形成されている。開口26の縁で囲まれる開口面26p或いは開口面26pの延長面は、中心軸JXに交差する。中心軸JXに沿って見たとき、開口26の中心は、中心軸JXからずれている。
【0015】
収容部材20の材質は、例えば樹脂や金属であるが、手Hで把持可能な材質であれば、特に限定されない。収容部材20が金属で形成されている場合には、収容部材20の内壁面20nに、照射光L1を乱反射させないための光学的構造が設けられてもよく、照射光L1を乱反射させないための光学的処理が施されていてもよい。
【0016】
基板30は、収容部材20の内部空間Sに収容され、不図示の支持部材によって収容部材20の内壁面20nに支持されている。基板30は、板面30a,30bを有する。基板30の板面30a,30bは、中心軸JXに略平行であり、平坦面である。中心軸JX及び基板30の板面30a,30bに直交する平面内において、板面30aと板面30aに対向する収容部材20の内壁面20nとの離間距離は、板面30aと板面30bに対向する収容部材20の内壁面20nとの離間距離よりも短い。
【0017】
以下の説明及び図面では、中心軸JXに平行な方向を第1方向D1と称し、第1方向D1に沿って電子ペン11の基端から先端に向かう向きを第1の向きT1と称し、第1方向D1に沿って電子ペン11の先端から基端に向かう向きを第2の向きT2と称する場合がある。また、中心軸JX及び基板30の板面30a,30bに直交する平面内において、中心軸JXを含んで板面30a,30bに平行な仮想面を基準として一方の領域を第1領域R1とし、他方の領域を第2領域R2とする。
【0018】
開口26の第1領域R1の面積は、開口26の第2領域R2の面積よりも大きい。例えば、開口26の第2領域R2の面積は零に近く、中心軸JXが収容部材20の先端部24における開口26の縁に交差してもよく、開口面26pの近傍で開口面26pの延長面に交差してもよい。基板30は、第1領域R1の内部空間Sに配置されている。基板30は、例えばプリント基板である。
【0019】
光源32は、収容部材20の内部空間Sに収容され、基板30の板面30aに配置されている。光源32は、発光面32sを有し、発光面32sから照射光L1を発する。発光面32sからから射出される照射光L1は、光軸AX1を中心に発散する発散光である。照射光L1は、後述する特許請求の範囲に記載されている「第1光」に相当する。発光面32sは、光源32の本体において基板30の板面30aに接する、又は板面30aに対向する面とは反対側の面に設けられ、内部空間Sに露出している。光源32の発光面32sは、基板30の板面30a,30bと略平行である。
【0020】
光源32は、例えば半導体レーザー(Laser Diode;LD)や発光ダイオード(Light Emitting Diode;LED)であるが、好ましくは面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser;VCSEL)である。光源32として面発光レーザーが用いられることによって、媒体Bの入力面Pでのスペックルが発生し易く、入力面Pが光沢面のように極めて反射や散乱の強い光学面である場合でも入力面Pに形成される照射光L11の集光スポットSPの位置検出を可能とする。また、光源32として面発光レーザーが用いられることによって、光源32よりも後段の光学系における照射光L1の光軸AX1に交差する面内での照射光L1のビーム形状が略真円状になる。そのため、光源32よりも後段に配置される各光学素子において対称性が高まり、各光学素子の設計及び配置が容易になる。
【0021】
レンズ33は、収容部材20の内部空間Sに収容され、光源32の発光面32sから発せられる照射光L1の光路上に配置されている。レンズ33は、不図示の支持部材によって収容部材20の内壁面20nに支持されている。レンズ33は、光源32から入射する照射光L1を平行化する。レンズ33は、例えば両凸レンズであるが、照射光L1を平行化することができる光学素子であればよく、特に限定されない。
【0022】
第3光学部材45は、収容部材20の内部空間Sに収容されている。第3光学部材45は、光源32の発光面32sから発せられる照射光L1の光路上に配置され、詳しくはレンズ33から射出される照射光L1の光路上に配置されている。第3光学部材45は、例えばミラー34である。ミラー34は、平坦な反射面34c,34dを有し、反射面34cと反射面34dとの連結位置で屈折している。反射面34cは、中心軸JXに交差し、中心軸JXに対して傾斜している。反射面34cは、第1領域R1と第2領域R2に跨って配置されている。反射面34cは、レンズ33から射出される照射光L1を反射面34dに向けて反射する。反射面34dは、中心軸JXに略平行であり、反射面34cよりも第1の向きT1の前側すなわち先端側の内部空間Sに配置されている。反射面34dは、第2領域R2に配置されている。反射面34dは、反射面34cによって反射される照射光L1を収容部材20の先端部24及び開口26に向けて反射する。
【0023】
なお、ミラー34に替えて、反射面34cを有する第1ミラーと、反射面34dを有して第1ミラーとは別の第2ミラーが配置されてもよい。つまり、ミラー34は、レンズ33から射出された照射光L1が次に説明する第1光学部材35に所定の入射角で入射するように偏向する。なお、図2では、光源32から第1光学部材35までの照射光L1の経路について、照射光L1の光軸AX1のみが図示されている。
【0024】
第1光学部材35は、収容部材20の内部空間Sに収容されている。第1光学部材35は、光源32の発光面32sから発せられる照射光L1の光路上に配置され、詳しくはミラー34の反射面34dで反射される照射光L1の光路上に配置されている。第1光学部材35は、レンズ33で平行化されてミラー34の反射面34dから入射する照射光L1を第1領域R1の開口26に向けて偏向する。第1光学部材35は、照射光L1のうちの開口26に向けて偏向される照射光L11の光軸AX1に沿って照射光L1を集光する。また、第1光学部材35は、後述するように媒体Bの入力面Pから反射或いは散乱される検出光L2の少なくとも一部を偏向する。検出光L2は、後述する特許請求の範囲に記載されている「第2光」に相当する。
【0025】
第1光学部材35は、例えば薄い板状に形成された回折光学素子(Diffractive Optical Element;DOE)60である。回折光学素子60は、入射面60aと、射出面60bと、を有する。入射面60aと射出面60bは、互いに略平行であり、中心軸JXに交差し、中心軸JXに対して傾斜している。回折光学素子60は、入射する照射光L1の一部の照射光L11を透過し、開口26に向けて集光する。回折光学素子60は、入射する照射光L1の他の一部の照射光L12を後述する第2光学部材37に向けて偏向する。回折光学素子60による照射光L1及び検出光L2のふるまい等については、後に説明する。
【0026】
回折光学素子60は、例えば計算機ホログラム(Computer-Generated Hologram;CGH)である。回折光学素子60は、照射光L1及び後述する検出光L2に対する透光性を有する材質で形成されている。このような材質としては、例えば石英、光学ガラス、透明樹脂が挙げられる。
【0027】
第1受光部材36は、収容部材20の内部空間Sに収容されている。第1受光部材36は、入力面Pから反射されて第1光学部材35で偏向される検出光L2の光路上に配置されている。詳しくは、第1受光部材36は、基板30の板面30aにおいて第1光学部材35から検出光L2が照射される領域に配置されている。第1受光部材36は、第1領域R1に配置されている。
【0028】
第1受光部材36は、受光面36sを有する。受光面36sは、第1受光部材36の本体において基板30の板面30aに接する、又は板面30aに対向する面とは反対側の面に設けられ、内部空間Sに露出している。第1受光部材36の受光面36sは、基板30の板面30a,30bと略平行である。第1受光部材36は、第1光学部材35によって偏向される検出光L2を受光し、受光する検出光L2に基づいて入力面PにおけるX方向及びY方向の各位置情報に関する電気信号を生成する。
【0029】
第1受光部材36は、例えば複数の種類のセンサが基板30の板面30aに平行な面内でマトリクス状に配置されたマトリクスセンサーであるが、イメージセンサー等であってもよい。
【0030】
第4光学部材46は、収容部材20の内部空間Sに収容されている。第4光学部材46は、第1光学部材35によって偏向される照射光L12の光路上に配置されている。第4光学部材46は、第1光学部材35から入射する照射光L12を偏向する。第4光学部材46は、例えばミラー62である。
【0031】
ミラー62は、第1光学部材35及び中心軸JXに対して基板30及び第1受光部材36とは反対側の領域に配置されている。すなわち、ミラー62は、第2領域R2に配置されている。例えば、ミラー62は、第1光学部材35を挟んで第1受光部材36と対向するように配置されている。ミラー62は、平坦な反射面62cを有する。反射面62cの延長面は、中心軸JXに交差し、基板30の板面30a及び回折光学素子60の入射面60a及び射出面60bの延長面とも交差する。反射面62cは、回折光学素子60によって偏向された照射光L12をミラー64に向けて反射する。
【0032】
第2光学部材37は、収容部材20の内部空間Sに収容されている。第2光学部材37は、第1光学部材35によって偏向される照射光L12の光路上に配置されている。第2光学部材37は、第4光学部材46を介して第1光学部材35から入射する照射光L12をさらに偏向する。第2光学部材37は、例えばミラー64である。
【0033】
ミラー64は、第1光学部材35及びミラー62よりも第1の向きT1の前側すなわち先端側の内部空間Sに配置されている。ミラー64は、第1領域R1及び第2領域R2に跨って配置されている。ミラー64は、平坦な反射面64cを有する。反射面64cは、中心軸JXに交差し、中心軸JXに対して傾斜している。反射面64cの延長面は、基板30の板面30a、回折光学素子60の入射面60a及び射出面60bの延長面及びミラー62の反射面62cの延長面と交差する。反射面64cは、ミラー62の反射面62cによって反射された照射光L12を第2受光部材38に向けて反射する。
【0034】
ミラー64は、後述するように回転体40が第1位置PO1と第2位置PO2との間で移動することに連動し、中心軸JXに対する反射面64cの姿勢を保った状態で移動するように構成されている。なお、ミラー64は、回転体40の移動に連動し、中心軸JXに対する反射面64cの姿勢を変えるように構成されてもよい。
【0035】
第2受光部材38は、収容部材20の内部空間Sに収容されている。第2受光部材38は、第1光学部材35によって偏向される照射光L12の光路上に配置されている。詳しくは、第2受光部材38は、第2光学部材37のミラー64の反射面64cで反射される照射光L12の光路上に配置されている。第2受光部材38は、第2光学部材37で偏向される照射光L12を受光し、照射光L12の受光量に応じた強さの電気信号と、第1方向D1における照射光L12の受光位置に関する電気信号と、を生成する。
【0036】
第2受光部材38は、例えば分割センサー66である。分割センサー66は、第1センサー71と、第2センサー72と、を有する。第1センサー71及び第2センサー72は、薄板状に形成されている。第1センサー71は、受光面71sを有する。第2センサー72は、受光面72sを有する。第1センサー71の第1の向きT1の後端すなわち基端は、基板30の第1の向きT1の前端すなわち先端に連結されている。第1センサー71の受光面71sは、基板30の板面30aと平行であり、且つ板面30aと面一になるように配置されている。
【0037】
第2センサー72は、第1センサー71よりも第1の向きT1の前側すなわち先端側の内部空間Sに配置されている。第2センサー72の基端は、第1センサー71の先端に対向し、第1センサー71の先端に対して間隔をあけて配置されている。第2センサー72の受光面72sは、基板30の板面30a及び第1センサー71の受光面71sと平行であり、且つ板面30aと面一になるように配置されている。
【0038】
第2光学部材37のミラー64の反射面64cで反射される照射光L12は、第2受光部材38の第1センサー71の受光面71s及び第2センサー72の受光面72sの何れか一方の受光面、或いは両方の受光面で受光される。照射光L12が受光面71s,72sによって受光される様子については、後に説明する。なお、図2では、第1光学部材35から第2受光部材38までの照射光L12の経路について、照射光L12の光軸に沿った経路のみが図示されている。
【0039】
回転体40は、収容部材20の第1の向きT1の前端部すなわち先端部に配置され、収容部材20の先端部24に支持されている。回転体40は、後述するように媒体Bの入力面Pに接触したときに、入力面Pに沿って回転する。回転体40は、入力面Pを構成する材質に対して摩擦係数が適度に小さい材質で形成されている。
【0040】
支持部42は、概ね収容部材20の内部空間Sに配置され、収容部材20の先端部24に支持されている。支持部42は、回転体40を第1位置PO1と第2位置PO2とで移動可能な状態で支持する。第1位置PO1は、媒体Bの入射面Pと隔離している状態の回転体40の位置である。第2位置PO2は、入射面Pに接している状態の回転体40の位置である。支持部42の先端、及び支持部42の先端に支持されている回転体40は、開口26を通って収容部材20の先端部24から外方へ突出している。
【0041】
支持部42の構造は、回転体40を入力面Pに沿って回転自在に支持し、回転体40を第1位置PO1と第2位置PO2とで移動可能な状態で支持する構造であれば、特に限定されない。例えば、支持部42は、本体81と、2つのストッパー82,82と、不図示の弾性体と、を有していてもよい。本体81には、回転体40が移動可能な不図示の穴が形成されている。回転体40の移動方向及び穴の延在方向は、第1光学部材35から開口26に向けて射出される照射光L11の光軸AX1に略平行である。入力面Pと隔離している回転体40は、本体81に接続された自然状態の弾性体によって第1位置PO1に支持されている。ストッパー82,82は、本体81に形成された穴の奥に配置され、入力面Pに接することによって回転体40が穴の奥に押し込まれ、弾性体が圧縮されたときに、回転体40を第2位置PO2に係止する。
【0042】
支持部42の本体81の基端側の端面に、第2光学部材37のミラー64の第1の向きT1の前端すなわち先端が接している。第2光学部材37のミラー64は、支持部42において回転体40を支持する先端部とは反対側の基端部に支持されている。ミラー64の反射面64cは、本体81の基端側の端面に対して傾斜している。
【0043】
検出部50は、収容部材20の内部空間Sに配置され、基板30の板面30aに配置されている。例えば、検出部50は、第1受光部材36に隣接し、第1受光部材36よりも第1の向きT1の後側すなわち基端側の板面30aに設けられている。検出部50は、第1受光部材36及び第2受光部材38と電気的に接続され、第1受光部材36及び第2受光部材38から個別に電気信号を受信する。検出部50は、第1受光部材36で受光される検出光L2の受光量等の情報を受信し、入力面Pに平行なXY平面での収容部材20の先端部24の移動を検出する。また、検出部50は、第2受光部材38で受光される照射光L12の受光量及び受光位置等の情報を受信し、回転体40の位置を検出するとともに、回転体40が入力面Pに接しているか否かを判別する。
【0044】
検出部50は、例えばプリント基板等からなる基板30の板面30a,30bに実装可能な集積回路やプロセッサである。なお、検出部50は、第1受光部材36及び第2受光部材38からの電気信号を受信することができれば、基板30の板面30a,30bの任意の位置に配置されてもよい。
【0045】
図示していないが、光源32、第1受光部材36、第2受光部材38及び検出部50を動作させ、各構成要素に適切な電力を供給するための電池や電源が照射光L1や検出光L2の光路の妨げにならない基板30の板面30a,30b又は内部空間Sに配置されてもよい。その場合には、次に悦明する制御部100から電池や電源を介して各構成要素に適切な電力が供給される。なお、電池や電源の重量は他の構成要素に比べて大きい。そのため、電池や電源が電子ペン11の基端よりも先端側、すなわち電子ペン11の把持部や先端部に配置されることが好ましい。
【0046】
図1に示すように、制御部100は、検出部50と有線又は無線で接続され、例えば検出部50と通信可能な環境に配置されている。制御部100は、検出部50で検出された入力面Pに対する照射光L11の移動に関する情報、及び回転体40の位置情報に基づいて、電子ペン11の使用者が入力面Pに描いたパターンを認識する。制御部100は、前述のように認識したパターンを液晶ディスプレイ等の表示装置180に出力する。
【0047】
制御部100は、例えば情報処理装置150であるコンピューターに内蔵されている。制御部100は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit;CPU)、各種データの一時記憶等に用いられるRAM(Random Acccess Memory)やフラッシュメモリー、強誘電体メモリー(Ferroelectric Randam Access Memory;FeRAM)等の不揮発性メモリーや画像解析用の処理装置によって構成されている。
【0048】
次に、電子ペン11によって媒体Bの入力面Pに描かれる文字や図が検出される原理について説明する。図3は、電子ペン11によって入力面Pに描かれる文字の一例を示す模式図である。図4は、図2に示す電子ペン11の要部の拡大図であり、入力面Pから隔離している状態の電子ペン11の先端部を拡大した図である。
【0049】
図3に示すように、例示する文字「に」には、描き始めの始点APと、中継点N1と、切断点G1,G2と、接触点C1,C2と、描き終わりの終点EPが含まれる。電子ペン11は、書き順に従えば、始点AP→中継点N1→切断点G1→接触点C1→切断点G2→接触点C2→終点EPが含まれる。
【0050】
(始点AP;描き出し前)
図1では、例示する文字「に」は入力される文章の途中に登場するが、文字「に」が入力される最初の文字である場合は、情報処理装置150の制御部100から光源32及び検出部50に動作開始の電気信号が供給される。光源32は、制御部100からの電気信号を受けて、照射光L1を発する。検出部50は、制御部100からの電気信号を受けて、第1受光部材36及び第2受光部材38の各々からの電気信号を受信する状態になる。すなわち、使用者が最初の文字や図を描き出す前に、電子ペン11は情報処理装置150と通信し、制御部100から光源32及び検出部50に電気信号が供給される。
【0051】
使用者が電子ペン11で文字「に」を描き出す直前では、図2に例示するように、回転体40は、媒体Bの入力面Pから隔離され、第1位置PO1にある。電子ペン11が使用者の手Hに把持されると、電子ペン11の中心軸JXは、Z方向に対して傾斜する。このとき、Z方向に平行なz軸と中心軸JXとがなす狭角θは概ね20°~25°程度であることが知られている。狭角θには個人差があるため、使用者によって狭角θは5°程度変化する。このように中心軸JXがz軸に対して狭角θで傾斜している描き出し前の状態において、収容部材20の先端部24に形成されている開口26の開口面26pは、入力面P及びXY平面に略平行である。また、描き出し前の状態において、回転体40の第1位置PO1と第2位置PO2との間の移動方向は、Z方向と略平行になる。また、描き出し前の状態では、Z方向において、入力面Pと開口面26pとの距離Δtが生じている。距離Δtは、2mm~5mm程度である。
【0052】
光源32から発せられる照射光L1は、レンズ33によって平行化され、第3光学部材45のミラー34の反射面34c,34dで順次反射され、第1光学部材35の回折光学素子60に入射面60aから入射する。回折光学素子60に入射する照射光L1のうちの照射光L11は、回折光学素子60によって入力面Pに向けて集光される。中心軸JXがz軸に対して狭角θで傾斜している状態では、ミラー34の反射面34dから射出される照射光L1及び第1光学部材35から射出されて入力面Pの近傍で集光する照射光L11の光軸AX1は、Z方向及びz軸と略平行である。
【0053】
第1光学部材35によって入力面Pの近傍で集光する照射光L11での焦点深度Δwは、中心軸JXがz軸に対して狭角θで傾斜している状態での第1位置PO1と第2位置PO2との距離Δsと距離Δtとの和である距離(Δs+Δt)よりも深い。焦点深度Δwの範囲内で照射光L11の集光スポットSPが入力面Pに照射されれば、集光スポットSPの検出光L2が第1受光部材36で受光されたときに、XY平面内での集光スポットSP及び回転体40の位置情報及び移動が所定の精度で検出される。
【0054】
図2及び図4に示すように、回転体40が第1位置PO1にあり、電子ペン11が入力面Pと隔離されていると認識されている状態では、照射光L11として、例えば焦点深度Δwの範囲内の第1光学部材35から相対的に遠い位置の集光スポットSPが入力面Pに照射される。照射光L11は、入力面Pによって反射される。入力面Pで反射或いは散乱される検出光L2は、照射光L11が集光する際の収束角と略同等の角度で集光スポットSPから発散し、第1光学部材35に向かって進む。すなわち、検出光L2は、入力面Pから、第1光学部材35から射出されて入力面Pに集光する照射光L11の進行方向と略平行に、且つ逆向きに、第1光学部材35へ進む。
【0055】
図2に示すように、入力面Pで反射或いは散乱される検出光L2は、第1光学部材35の回折光学素子60に射出面60bから入射し、平行化されるとともに、第1受光部材36に向けて偏向される。第1受光部材36によって偏向される検出光L2は、第1受光部材36の受光面36sに照射され、第1受光部材36に受光される。第1受光部材36は、受光する検出光L2の光学情報を電気信号に変換し、検出部50に送信する。
【0056】
検出部50は、第1受光部材36から受信する電気信号に基づいて、XY平面内における電子ペン11の先端部の位置を算出し、制御部100に送信する。電子ペン11の先端部は、回転体40、及び収容部材20の先端部24における開口26の縁の部分であって、照射光L11の集光スポットSPに連動する。
【0057】
制御部100は、検出部50から受信するXY平面内での集光スポットSPの位置情報を一定の時間間隔で記憶する。制御部100は、経過時間と電子ペン11の先端部の位置との対応関係を表すデータテーブルを作成する。
【0058】
上述のように、電子ペン11において、光源32と、ミラー34と、第1光学部材35と、第1受光部材36と、検出部50は、照射光L11の集光スポットSPのXY平面内における位置情報及び移動を検出する入力面内位置検出機構を構成している。入力面内位置検出機構は、制御部100から動作開始の電気信号が供給されていれば、回転体40が第1位置PO1にあり、描き出し前の状態であっても、XY平面における回転体40の位置及び集光スポットSPの位置を検出している。
【0059】
一方で、第1光学部材35の回折光学素子60に入射する照射光L1のうちの照射光L12は、回折光学素子60によって第4光学部材46のミラー62に向けて偏向され、第4光学部材46のミラー62の反射面62cに入射する。照射光L12は、ミラー62の反射面62cと第2光学部材37のミラー64の反射面64cで順次反射される。反射面64cで反射される照射光L12は、回転体40が第1位置PO1にあることに対応し、第2受光部材38の分割センサー66において第1センサー71の受光面71sと第2センサー72の受光面72sに跨って照射される。
【0060】
図5は、分割センサー66及び差動増幅回路85の構成を示す概略図である。図5に示すように、差動増幅回路85は、オペアンプ86と、判別部87と、を有する。分割センサー66の第1センサー71からの電気信号である電圧V1と第2センサー72からの電気信号である電圧V2は、オペアンプ86に入力される。オペアンプ86は、受光面71s,72sに照射光L12が照射されると、入力される電圧V1,V2の電圧差(V1-V2)に比例する電気信号VSを出力する。
【0061】
図5において、粗い破線で示されるL12[PO1]は、回転体40が第1位置PO1にあり、上述のようにミラー64の反射面64cで反射されて第1センサー71の受光面71sと第2センサー72の受光面72sに跨って照射される照射光L12の照射領域を表している。粗い破線で示すように照射光L12の中心が第1方向D1において受光面71s,72sの中間位置と重なる場合には、互いに同等の電圧V1,V2が差動増幅回路85のオペアンプ86に入力される。この場合、オペアンプ86は、略零の電圧差|V1-V2|に比例する電気信号VSを出力する。つまり、オペアンプ86には、第1センサー71の受光面71sに照射される照射光L12の面積に比例する電圧E1と、第2センサー72の受光面72sに照射される照射光L12の面積に比例する電圧E2が入力される。オペアンプ86は、受光面71s,72sの各々に照射される照射光L12の面積及び光量の差に比例する電気信号VSを出力する。回転体40が第1位置PO1にあるときにオペアンプ86から出力される電気信号VSの電圧値を、基準電圧VSTDとする。
【0062】
判別部87は、オペアンプ86からの電気信号VSを受信する。判別部87は、電気信号VSと基準電圧VSTDとの差が所定値以内であれば、回転体40が第1位置PO1にある、或いは第1位置PO1にあるとみなせる状態と判断し、電子ペン11が入力面Pから隔離していると判別する。差動増幅回路85の判別部87は、電子ペン11が入力面Pから隔離していることを表す電気信号を出力する。なお、差動増幅回路85は、分割センサー66とともに第2受光部材38に内蔵されていてもよく、検出部50に内蔵されていてもよい。差動増幅回路85が第2受光部材38に内蔵されている場合は、判別部87は、電子ペン11が入力面Pから隔離していることを表す電気信号を検出部50に送信する。
【0063】
検出部50は、電子ペン11が入力面Pから隔離していることを表す非接触信号を制御部100に送信する。制御部100は、前述のように経過時間と電子ペン11の先端部の位置とのデータテーブルの作成を実行するが、検出部50から受信する非接触信号に従い、電子ペン11の先端部の移動経路からのパターンの算出及び表示装置180への出力指示は行わない。
【0064】
上述のように、電子ペン11において、光源32と、第3光学部材45と、第1光学部材35と、第2光学部材37と、第2受光部材38と、検出部50は、媒体Bの入力面Pに対する接触状態を検出する接触状態検出機構を構成している。接触状態検出機構は、制御部100から動作開始の電気信号が供給されていれば、回転体40の位置を検出し、電子ペン11の先端部の移動を文字や図の情報として出力するべきか否かの判断の基になる電気信号を発信している。
【0065】
(始点AP→中継点N1;描き込み中)
図6は、電子ペン11の構成を示す概略図であり、電子ペン11が媒体Bの入力面Pと接している状態の図である。図7は、図6に示す電子ペン11の要部の拡大図であり、入力面Pに接している状態の電子ペン11の先端部を拡大した図である。使用者が電子ペン11で文字「に」を描き出すと、先ず媒体Bの入力面Pにおける始点APの近傍の位置において、回転体40は、入力面Pに近づき、第1位置PO1から第2位置PO2に移動し、入力面Pに接する。
【0066】
図6及び図7に示すように、電子ペン11は使用者の手Hに把持され、電子ペン11の中心軸JXは、Z方向に対して文字「に」の描き出し前と同様の狭角θで傾斜している。但し、前述の傾斜姿勢を保ったうえで、回転体40及び第2光学部材37のミラー64を除く電子ペン11の各構成要素と使用者の手Hは、Z方向の後方に、すなわちz軸に沿って入力面Pに近づくように距離(Δs+Δt)だけ移動する。
【0067】
光源32から発せられる照射光L1は、電子ペン11が入力面Pと隔離されていると認識されている前述の状態と同様に、レンズ33によって平行化され、ミラー34の反射面34c,34dで順次反射される。回折光学素子60に入射する照射光L1のうちの照射光L11は、回折光学素子60によってz軸と略平行に偏向され、入力面Pに向けて集光される。
【0068】
但し、上述のように光源32、ミラー34、第1光学部材35は、Z方向で文字「に」の描き出し前よりも入力面Pに距離(Δs+Δt)だけ近づく。そのため、入力面Pと交差する集光スポットSPの位置は、照射光L11の光路において、文字「に」の描き出し前よりも距離(Δs+Δt)だけ第1光学部材35に近づく。電子ペン11が入力面Pと接していると認識されている状態では、照射光L11として、例えば焦点深度Δwの範囲内の第1光学部材35から相対的に近い位置の集光スポットSPが入力面Pに照射される。照射光L11は、入力面Pによって反射される。入力面Pで反射される検出光L2は、照射光L11が集光する際の収束角と略同等の角度で集光スポットSPから一旦集光した後に発散し、第1光学部材35に向かって進む。すなわち、電子ペン11が入力面Pと接していると認識されている状態においても、検出光L2は、入力面Pから照射光L11の進行方向と略平行に、且つ逆向きに、第1光学部材35へ進む。
【0069】
その後、電子ペン11が入力面Pと隔離されていると認識されている状態と同様に、入力面Pで反射或いは散乱される検出光L2は、第1光学部材35の回折光学素子60に射出面60bから入射し、平行化されるとともに、第1受光部材36に向けて偏向される。第1受光部材36によって偏向される検出光L2は、第1受光部材36の受光面36sに照射され、第1受光部材36に受光される。第1受光部材36は、受光する検出光L2の光学情報を電気信号に変換し、検出部50に送信する。
【0070】
検出部50は、第1受光部材36から受信する電気信号に基づいて、XY平面内における電子ペン11の先端部の位置を算出する。検出部50は、情報処理装置150と通信し、XY平面内における電子ペン11の先端部の位置に関する情報を制御部100に送信する。
制御部100は、検出部50から受信する電気信号に基づいて、経過時間と電子ペン11の先端部の位置との対応関係を表すデータテーブルにデータを追加する。
【0071】
入力面内位置検出機構は、制御部100から動作開始の電気信号が供給され、回転体40が第2位置PO2にあり、描き込み中の状態において、XY平面における回転体40の位置及び集光スポットSPの位置を検出している。
【0072】
一方で、第1光学部材35の回折光学素子60に入射する照射光L1のうちの照射光L12は、電子ペン11が入力面Pと隔離されていると認識されている前述の状態と同様に、回折光学素子60によって第4光学部材46のミラー62に向けて偏向され、ミラー62の反射面62cに入射する。照射光L12は、ミラー62の反射面62cと第2光学部材37のミラー64の反射面64cで順次反射される。
【0073】
但し、上述のように第2光学部材37のミラー64は、回転体40が第2位置PO2に移動することに連動し、Z方向において、文字「に」の描き出し前、すなわち電子ペン11が入力面Pと隔離されていると認識されている状態に比べてよりもミラー62に距離Δsだけ近づく。このとき、ミラー64の反射面64cの中心軸JX及びz軸に対する姿勢は、電子ペン11が入力面Pと隔離されていると認識されている状態から維持されている。そのため、反射面64cで反射される照射光L12は、回転体40が第2位置PO2にあることに対応し、第2受光部材38の分割センサー66において第1センサー71の受光面71sに照射され、第2センサー72の受光面72sには殆ど照射されない。
【0074】
図5を参照して説明したように、分割センサー66の第1センサー71は電圧V1に対応する電気信号を出力し、分割センサー66の第2センサー72は電圧V2に対応する電気信号を出力する。図5において、一点鎖線で示されるL12[PO2]は、回転体40が第2位置PO2にあり、上述のようにミラー64の反射面64cで反射されて第1センサー71の受光面71sに照射される照射光L12の照射領域を表している。一点鎖線で示すように、照射光L12の全体が第1方向D1において受光面71sに含まれる場合には、照射光L12の光量に応じた電圧V1と略零である電圧V2が差動増幅回路85のオペアンプ86に入力される。この場合、第1センサー71の受光面71sに照射される照射光L12の面積と第2センサー72の受光面72sに照射される照射光L12の面積との差が最も大きくなるので、電圧差|V1-V2|は最大値に近い値になる。オペアンプ86は、電圧差|V1-V2|の最大値に比例する電気信号VSを出力する。このときの電気信号VSの電圧値は、基準電圧VSTDとよりも大きい。電気信号VSと基準電圧VSTDとの差は、前述の所定値を超える。
【0075】
判別部87は、電気信号VSと基準電圧VSTDと差が所定値を超えていることから、回転体40が第2位置PO2にある、或いは第2位置PO2にあるとみなせる状態と判断し、電子ペン11が入力面Pに接していると判別する。差動増幅回路85の判別部87は、電子ペン11が入力面Pに接していることを表す電気信号を出力する。差動増幅回路85が第2受光部材38に内蔵されている場合は、判別部87は、電子ペン11が入力面Pに接していることを表す電気信号を検出部50に送信する。
【0076】
検出部50は、情報処理装置150と通信し、電子ペン11が入力面Pから隔離していることを表す接触信号を制御部100に送信する。制御部100は、前述のように経過時間と電子ペン11の先端部の位置とのデータテーブルの作成を継続する。また、制御部100は、検出部50から受信する接触信号に従い、XY平面内での電子ペン11の先端部の移動経路の情報に基づいて、使用者が書き込んだ文字や図のパターンを算出し、表示装置180へ出力し、表示装置180に対して出力指示を行う。図1に示すように、表示装置180は、制御部100から受信した文字や図のパターンを画像情報として表示する。
【0077】
使用者が電子ペン11を手Hで把持し、回転体40を入力面Pに接触させた状態で電子ペン11の先端部を入力面Pにおける始点APから中継点N1に移動させる間、上記説明した入力面内位置検出機構及び接触状態検出機構の動作、及び電子ペン11と情報処理装置150との通信が継続される。表示装置180には、始点APから中継点N1に繋がり、略一定の太さのパターンが表示される。
【0078】
(中継点N1→切断点G1;描き込み中)
使用者が電子ペン11を手Hで把持し、回転体40を入力面Pに接触させた状態を継続し、電子ペン11の先端部を入力面Pにおける中継点N1から切断点G1に移動させる間では、始点APから中継点N1までの間の入力面内位置検出機構及び接触状態検出機構の動作、及び電子ペン11と情報処理装置150との通信が同様に行われる。
【0079】
但し、始点APから中継点N1までの間では、使用者の手Hが電子ペン11を媒体Bの入力面Pに略一定の力で押し当て、回転体40が第2位置PO2から殆ど動かない。ところが、文字「に」を描く様子から推察されるように、中継点N1から切断点G1まで移動する間に、使用者の手Hが電子ペン11を入力面Pに押し当てる力すなわち筆圧が弱まる場合がある。
【0080】
図8は、電子ペン11にかかる筆圧と回転体40の第1位置PO1から第2位置PO2までの移動量すなわち距離との関係を示す模式図である。図8に示すように、回転体40が第1位置PO1にある状態での電子ペン11にかかる筆圧が最も小さく、回転体40が第1位置PO1にある状態での電子ペン11にかかる筆圧が最も大きい。また、回転体40が第1位置PO1から第2位置PO2に移動するにしたがって、電子ペン11にかかる筆圧が増大する。逆に、回転体40が第2位置PO2から第1位置PO1に移動するにしたがって、電子ペン11にかかる筆圧が減少する。なお、図8に示す回転体40の位置「PO1」は、回転体40の先端が入力面Pに接し、第1位置PO1にあり、且つ回転体40が入力面Pによって第2位置PO2に向かって押し込まれていない状態を表す。
【0081】
図5を参照するとわかるように、回転体40が第1位置PO1から第2位置PO2まで連続して移動する場合には、第2受光部材38の分割センサー66に入射する照射光L12の照射領域が粗い破線で示すL12[PO1]から一点鎖線で示すL12[PO2]へと第1方向D1に沿って第2の向きT2に移動する。回転体40が第1位置PO1から第2位置PO2まで連続して移動すると、第1センサー71の受光面71sに照射される照射光L12の照射面積は連続的に増え、照射光L12の全てが受光面71sに照射されると、一定になる。一方で、第2センサー72の受光面72sに照射される照射光L12の照射面積は連続的に減り、照射光L12の全てが受光面71sに照射されると、略零になる。したがって、回転体40が第1位置PO1から第2位置PO2まで連続して移動すると、受光面71sに照射される照射光L12の照射領域の面積及び光量と受光面72sに照射される照射光L12の照射領域の面積及び光量との差は、徐々に増大した後に、略一定になる。
【0082】
図9は、回転体40の移動量すなわち位置の変化と差動増幅回路85のオペアンプ86から出力される電気信号VSの電圧値との関係を示す模式図である。図9に示すように、回転体40が第1位置PO1から第2位置PO2まで連続して移動すると、電気信号VSの電圧値は、徐々に増大し、照射光L12の全てが受光面71sに照射されるところで略一定になる。
【0083】
図10は、回転体40の移動量と電子ペン11から出力される文字や図のパターンとの関係を示す模式図である。図8から図10に示すように、電子ペン11にかかる筆圧が増大すると、回転体40が第1位置PO1から第2位置PO2に移動し、第2受光部材38の分割センサー66の第1センサー71で受光する照射光L12の照射領域及び光量が一旦増大する。逆に、電子ペン11にかかる筆圧が減少すると、回転体40が第2位置PO2から第1位置PO1に移動し、その途中から、第2受光部材38の分割センサー66の第1センサー71で受光する照射光L12の照射領域及び光量が減少するとともに、第2センサー72で受光する照射光L12の照射領域及び光量が増大する。
【0084】
検出部50は、第2受光部材38から第1センサー71の受光面71sへの照射光L12の照射領域の面積及び照射光L12の光量に比例した大きさの電気信号を受信する。検出部50は、受信した電気信号を、電子ペン11にかかる筆圧及び入力面Pに描かれる文字や図の太さの情報として制御部100に送信する。制御部100は、検出部50から受信する電気信号に基づいて、入力面Pに描かれる文字や図の太さを算出し、算出した太さのパターンを表示装置180に表示する。
【0085】
上述のように、電子ペン11の先端部が中継点N1から切断点G1まで移動する間に、電子ペン11にかかる筆圧が弱まる場合には、その途中から、第1センサー71の受光面71sに照射される照射光L12の面積及び照射光L12の光量が減少する。その結果、図3に例示するように、電子ペン11の先端部の中継点N1から切断点G1までの移動に対応するパターンは、切断点G1に近づくにしたがって細くなる。表示装置180には、中継点N1から切断点G1に近づくにしたがって細くなるパターンが表示される。
【0086】
(切断点G1→接触点C1;描き込み停止、移動中)
続いて、使用者は、電子ペン11の先端部を切断点G1から接触点C1に動かす。この間、図2及び図4に示すように、使用者は、電子ペン11を手Hで把持しているが、回転体40を入力面Pから隔離させる。回転体40は、第1位置PO1に移動する。光源32から発せられる照射光L1のうちの照射光L11の入力面Pにおける集光スポットSPは、焦点深度Δwの範囲内にある。そのため、電子ペン11の先端部が切断点G1から接触点C1に移動する間に、始点APから切断点G1までと同様の入力面内位置検出機構の動作、始点APにおいて文字「に」を描き出す前と同様の接触状態検出機構の動作、及び上述の各状態における電子ペン11と情報処理装置150との通信が同様に行われる。
【0087】
具体的には、電子ペン11の先端部が切断点G1から接触点C1に移動する間に、照射光L11の集光スポットSPは、図3に二点鎖線の矢印で示すように切断点G1から接触点C1に移動する。検出部50は、第1受光部材36から受信する電気信号に基づいて、XY平面内における電子ペン11の先端部の位置を算出する。検出部50は、情報処理装置150と通信し、XY平面内における電子ペン11の先端部の位置に関する情報を制御部100に送信する。
【0088】
制御部100は、検出部50から受信する電気信号に基づいて、経過時間と電子ペン11の先端部の位置との対応関係を表すデータテーブルにデータを追加する。この間のデータテーブルにおける経過時間と電子ペン11の先端部の位置との対応関係は、切断点G1から接触点C1を示す。例えば、電子ペン11の先端部が切断点G1から接触点C1に移動する間のデータテーブルにおいて、最初のデータの経過時間は、使用者が電子ペン11で描き込みを開始した時刻から電子ペン11が切断点G1に到着するまでの経過時間を表す。最初のデータの電子ペン11の先端部の位置は、XY平面内での切断点G1に対応する相対座標値を表す。同様に、電子ペン11の先端部が切断点G1から接触点C1に移動する間のデータテーブルにおいて、最後のデータの経過時間は、使用者が電子ペン11で描き込みを開始した時刻から電子ペン11が接触点C1に到着するまでの経過時間を表す。最後のデータの電子ペン11の先端部の位置は、XY平面内での接触点C1に対応する相対座標値を表す。
【0089】
また、電子ペン11の先端部が切断点G1から接触点C1に移動する間に、差動増幅回路85の判別部87は、電子ペン11が入力面Pから隔離していることを表す電気信号を発信する。検出部50は、電子ペン11が入力面Pから隔離していることを表す非接触信号を制御部100に送信する。制御部100は、前述のように経過時間と電子ペン11の先端部の位置とのデータテーブルの作成を実行するが、検出部50から受信する非接触信号に従い、電子ペン11の先端部の移動経路からのパターンの算出及び表示装置180への出力指示は行わない。
【0090】
(接触点C1→切断点G2;描き込み中)
続いて、使用者は、電子ペン11を手Hで把持している状態で、先ずXY平面内の接触点C1において、回転体40を入力面Pに接触させ、第1位置PO1から第2位置PO2に移動させる。その後、電子ペン11の先端部を接触点C1から切断点G2に動かす。接触点C1において回転体40が第2位置PO2に移動してから電子ペン11の先端部が接触点C1から切断点G2に移動する間、図6及び図7に示すように、光源32から発せられる照射光L1のうちの照射光L11の入力面Pにおける集光スポットSPは、焦点深度Δwの範囲内にある。そのため、電子ペン11の先端部が接触点C1から切断点G2に移動する間に、始点APから中継点N1又は切断点G1までと同様の入力面内位置検出機構の動作、接触状態検出機構の動作、及び上述の各状態における電子ペン11と情報処理装置150との通信が行われる。
【0091】
(切断点G2→接触点C2;描き込み停止、移動中)
続いて、使用者は、電子ペン11を手Hで把持している状態で、先ずXY平面内の切断点G2において、回転体40を第2位置PO2から第1位置PO1に移動させ、入力面Pから隔離する。その後、電子ペン11の先端部を切断点G2から接触点C2に動かす。切断点G2において回転体40が第1位置PO1に移動してから電子ペン11の先端部が切断点G2から接触点C2に移動する間に、切断点G1から接触点C1までと同様の入力面内位置検出機構の動作、接触状態検出機構の動作、及び上述の各状態における電子ペン11と情報処理装置150との通信が行われる。
【0092】
(接触点C2→終点EP;描き込み中)
続いて、使用者は、電子ペン11を手Hで把持している状態で、先ずXY平面内の接触点C2において、回転体40を入力面Pに接触させ、第1位置PO1から第2位置PO2に移動させる。その後、電子ペン11の先端部を接触点C2から終点EPに動かす。接触点C2において回転体40が第2位置PO2に移動してから電子ペン11の先端部が接触点C2から終点EPに移動する間に、始点APから中継点N1又は切断点G1までと同様の入力面内位置検出機構の動作、接触状態検出機構の動作、及び上述の各状態における電子ペン11と情報処理装置150との通信が行われる。
【0093】
文字「に」が入力される最後の文字である場合は、情報処理装置150の制御部100から光源32及び検出部50に動作終了の電気信号が供給される。光源32は、制御部100からの電気信号を受けて、照射光L1の射出を停止する。検出部50は、制御部100からの電気信号を受けて、第1受光部材36及び第2受光部材38の各々からの電気信号を受信しない状態になる。すなわち、使用者が最後の文字や図を描き出した後、又は文字や図の描き出しを中断する場合に、電子ペン11は情報処理装置150と通信し、制御部100から光源32及び検出部50へ動作停止を示す電気信号が供給される。
【0094】
以上の動作によって、電子ペン11を用いて文字「に」をはじめとする任意の文字や図が描かれ、表示装置180等によって可視化される。
【0095】
以上説明した第1実施形態の電子ペン11は、情報処理装置150と通信する電子ペンであって、光源32と、第1光学部材35と、第1受光部材36と、検出部50と、を備える。光源32は、照射光L1を発する。第1光学部材35は、光源から発せられた照射光L11の一部である照射光L11を射出口である開口26を通して媒体Bの入力面Pに向けて偏向し、入力面Pから反射される検出光L2の一部を偏向する。第1受光部材36は、第1光学部材35によって偏向された検出光L2を受光する。検出部50は、第1受光部材36で受光された検出光L2の情報に基づいて電子ペン11の先端部の移動を検出する。検出部50は、電子ペン11の先端部に配置された回転体40が媒体Bと隔離しているときに、入力面Pに対する電子ペン11の先端部の移動を検出する。検出部50は、電子ペン11の先端部が媒体Bと接しているときに、入力面Pに対する電子ペン11の先端部の移動を検出するとともに、電子ペン11の先端部の移動に対応する入力を検出する。
【0096】
第1実施形態の電子ペン11では、回転体40を含む先端が媒体Bの入力面Pに接し、収容部材20の先端部24に形成された開口26の縁部が入力面Pに対してZ方向で所定の距離以下の間隔に配置されると、電子ペン11の先端部が入力面Pと接している状態、すなわち電子ペン11が媒体Bに接している状態であることが検出される。所定の距離は、電子ペン11の使用者が文字や図を描いているときに、収容部材20の把持部22を把持し、中心軸JXがz軸に対して狭角θで傾斜している姿勢において、収容部材20の開口26の縁部と入力面PとのZ方向での標準的な離間距離であり、例えば0mm~1mmである。電子ペン11が媒体Bに接している状態では、第1光学部材35から射出される照射光L11が入力面Pに対してZ方向に沿って略垂直に照射される。また、入力面P上での照射光L11の集光スポットSPは、第1光学部材35の焦点深度の範囲内に形成される。照射光L11のうちの少なくとも一部の光は、入力面Pで反射又は散乱され、検出光L2として、入力面Pに対してZ方向に沿って略垂直に、且つ照射光L11とは逆向きに照射される。そのため、検出光L2は、第1光学部材35に入射し、第1光学部材35によって第1受光部材36に照射され、第1受光部材36に受光される。第1受光部材36に受光される検出光L2に基づいて、入力面Pに平行なXY平面内での照射光L11の集光スポットSPの位置から、電子ペン11の先端部の位置情報が生成される。検出部50は、電子ペン11の先端部の位置情報と入力のON状態を表す接触信号とを検出する。
【0097】
第1実施形態の電子ペン11では、回転体40を含む先端が媒体Bの入力面Pから隔離し、収容部材20の先端部24に形成された開口26の縁部が入力面Pに対してZ方向で所定の距離を超える間隔に配置されると、電子ペン11の先端部が入力面Pから隔離している状態、すなわち電子ペン11が媒体Bから隔離している状態であることが検出される。例えば、文字や図の切断点から接触点までの間では、収容部材20の開口26の縁部と入力面PとのZ方向での離間距離は、例えば2mm~4mmである。電子ペン11が媒体Bから隔離している状態においても、第1光学部材35から射出される照射光L11が入力面Pに対してZ方向に沿って略垂直に照射される。また、照射光L11の集光スポットSPは、好ましくは第1光学部材35の焦点深度の範囲内で移動する。照射光L11のうちの少なくとも一部の光は、入力面Pで反射又は散乱され、検出光L2として、入力面Pに対してZ方向に沿って略垂直に、且つ照射光L11とは逆向きに照射される。そのため、電子ペン11が媒体Bから隔離している状態であっても、検出光L2は、電子ペン11が媒体Bと接している状態と同様に、第1光学部材35に入射し、第1光学部材35によって第1受光部材36に照射され、第1受光部材36に受光される。第1受光部材36に受光される検出光L2に基づいて、電子ペン11の先端部の位置情報が生成される。検出部50は、電子ペン11の先端部の位置情報と入力のOFF状態を表す非接触信号とを検出する。
【0098】
したがって、第1実施形態の電子ペン11によれば、検出部50は、電子ペン11が媒体Bとは離れている場合に、電子ペン11の先端部の移動のみを検出することができる。また、検出部50は、電子ペン11が媒体Bに接する場合に、電子ペン11の先端部の移動を検出し、電子ペン11の先端部の移動に対応する入力を検出し、接触信号を受け付ける。
【0099】
第1実施形態の電子ペン11では、中心軸JXに沿って延在する収容部材20を備える。収容部材20には、中心軸JXに沿って延在し、光源32と、第1光学部材35と、第1受光部材36と、検出部50が収容されている。第1光学部材35は、z軸すなわち入力面Pの法線に沿って照射光L11を入力面Pに向けて偏向する。このとき、中心軸JXは、z軸と交差する。
【0100】
第1実施形態の電子ペン11によれば、上述の構成を備えるため、収容部材20の把持部22が把持され、中心軸JXがz軸に対して狭角θで傾斜している姿勢において、第1光学部材35から入力面Pへの照射光L11の進行方向と入力面Pから第1光学部材35への検出光L2の進行方向とを揃えることができる。照射光L11の進行方向と検出光L2の進行方向が互いに揃うとは、好ましくは各進行方向がz軸に重なり、入力面Pに直交する状態を表す。但し、照射光L11の進行方向と検出光L2の進行方向が互いに揃う状態には、例えば照射光L11の進行方向と検出光L2の進行方向がz軸を中心に例えば5°以内で互いに逆側へ狭角をなしても、検出光L2が第1光学部材35によって第1受光部材36に偏向され、第1受光部材36に受光される状態も含まれる。このことによって、検出部50は、電子ペン11が媒体Bとは離れている場合に、電子ペン11の先端部の移動のみを検出することができる。
【0101】
第1実施形態の電子ペン11では、収容部材20には、第1光学部材35によって偏向された照射光L11が通る開口26が形成されている。中心軸JXに直交する面内が中心軸JXを基準として第1領域R1と第2領域R2とに区画される場合に、第1光学部材35によって偏向された照射光L11は、第1領域R1における開口26を通る。第1領域R1における開口26の面積は、第2領域R2における開口26の面積よりも大きい。
【0102】
第1実施形態の電子ペン11によれば、上述の構成を備えるため、照射光L11及び検出光L2が通る開口26が中心軸JXに対して第1領域R1と第2領域R2で非対称に形成されている。そのため、使用者が収容部材20の把持部22を把持し、中心軸JXがz軸に対して狭角θで傾斜している姿勢にするとき、照射光L11及び検出光L2を通す開口26の領域を大きく確保し、面積の大きい方の領域すなわち第1領域R1における開口26に照射光L11及び検出光L2を円滑に通すことができる。このことによって、検出光L2の検出精度及び電子ペン11の先端部の位置情報の精度を高めることができる。
【0103】
なお、照射光L11及び検出光L2を円滑に通すことができれば、照射光L11及び検出光L2が通る開口26が中心軸JXに対して第1領域R1と第2領域R2で対称に形成され、第1領域R1における開口26の面積と第2領域R2における開口26の面積が互いに同等であってもよい。
【0104】
第1実施形態の電子ペン11では、中心軸JXに平行な板面30aを有する基板30を備える。光源32と第1受光部材36は、基板30の板面30aに配置されている。中心軸JXに直交する面内が中心軸JXを基準として第1領域R1と第2領域R2とに区画され、基板30は、第1領域R1における収容部材20の内部空間Sに配置されている。
【0105】
第1実施形態の電子ペン11によれば、上述の構成を備えるため、使用者が収容部材20の把持部22を把持し、中心軸JXがz軸に対して狭角θで傾斜している姿勢にするとき、基板30の板面30aをz軸に対して狭角θで傾斜させる。その結果、基板30と光源32や第1受光部材36を含めて板面30aに配置されている構成要素との重量をz軸に対して中心軸JXが傾斜する側の領域に寄せて、電子ペン11の使い心地を高めることができる。また、光源32から発せられる照射光L1,L11を偏向する領域として、基板30の板面30aと中心軸JXとの間の第1領域R1と第2領域R2とを確保し、収容部材20の内部空間Sにおける光学系の設計の自由度を高めることができる。
【0106】
第1実施形態の電子ペン11では、回転体40と、支持部42と、を備える。回転体40の一部は、収容部材20の先端部24から突出している。支持部42は、所定の向きにおいて、回転体40を回転体40が媒体Bと隔離している状態での第1位置PO1と、回転体40が媒体Bに接している状態での第2位置PO2と、で移動可能に支持する。所定の向きは、例えば中心軸JXに交差する方向に沿って電子ペン11の先端から基端に向かう向きであり、中心軸JXをz軸に対して狭角θで傾斜させるときにZ方向の前方に向く向きである。検出部50は、回転体40が第1位置PO1にある場合に、電子ペン11の先端部の移動を検出し、回転体40が第2位置PO2にある場合に、電子ペン11の先端部の移動と電子ペン11の先端部の移動に対応する入力とを検出する。
【0107】
第1実施形態の電子ペン11によれば、上述の構成を備えるため、回転体40が収容部材20の先端部24に支持部42を介して支持され、回転体40が第1位置PO1と第2位置PO2とで移動することによって、媒体Bの入力面Pから隔離しているのか、入力面Pに接しているのかということを判別することができる。
【0108】
なお、図示していないが、第1実施形態の電子ペン11には、回転体40の変形例として、入力面Pに沿って回転しないが、入力面Pに対して摩擦を発生させない材質で形成されている部材が配置されてもよい。この部材の先端は、例えば入力面Pに向けて突出する凸曲面であってもよく、中心軸JXをz軸に対して狭角θで傾斜させるときに入力面Pに平行な平坦面であってもよい。
【0109】
また、第1実施形態の電子ペン11には、回転体40の他の変形例として、タクタイルスイッチや圧力センサーが設けられ、入力面Pに対する接触状態又は非接触状態と電子ペン11にかかる筆圧が検出されてもよい。さらに、第1実施形態の電子ペン11には、回転体40の他の変形例として、光学センサーが設けられ、入力面Pに対する接触状態又は非接触状態が検出され、入力面Pと光学センサーとの離間距離に基づいて電子ペン11にかかる筆圧が検出されてもよい。
【0110】
第1実施形態の電子ペン11では、第2光学部材37と、第2受光部材38と、を備える。第2光学部材37は、支持部42に設けられ、第1光学部材35で偏向された照射光L1の別の一部である照射光L12を偏向する。第2受光部材38は、第2光学部材37で偏向された照射光L12を受光する。検出部50は、第2受光部材38における照射光L12の受光量に基づいて媒体Bに対する回転体40の位置を検出する。
【0111】
第1実施形態の電子ペン11によれば、上述の構成を備えるため、照射光L1において照射光L11とは別の一部の照射光L12を、回転体40と連動するミラー64を含む第2光学部材37で偏向し、第2受光部材38で受光することができる。その結果、収容部材20の内部空間Sに、回転体40が第1位置PO1及び第2位置PO2の何れの位置にあるのかということを検出する光学系を効率良く配置することができる。
【0112】
第1実施形態の電子ペン11では、第2光学部材37は、回転体40が第1位置PO1にある場合に受光する照射光L12の受光量と回転体40が第2位置PO2にある場合に受光する照射光L12の受光量とが互いに異なるように、照射光L1の別の一部である照射光L12を偏向する。検出部50は、第2受光部材38で受光される照射光L12の受光量に応じて回転体40が第1位置PO1及び第2位置PO2の何れかの位置にあることを判定する。
【0113】
第1実施形態の電子ペン11では、例えば回転体40が第1位置PO1にあるときに、第2光学部材37のミラー64が第2受光部材38の分割センサー66の第1センサー71と第2センサー72の両方に照射光L12を偏向する。回転体40が第2位置PO2にあるときに、第2光学部材37のミラー64が第2受光部材38の分割センサー66の第1センサー71のみに照射光L12を偏向する。すなわち、回転体40が第1位置PO1にあるときと第2位置PO2にあるときでは、分割センサー66の第1センサー71での照射光L12の受光量と第2センサー72での照射光L12の受光量とは、互いに異なる。第1実施形態の電子ペン11によれば、上述の構成を備えるため、分割センサー66の第1センサー71及び第2センサー72の各々での照射光L12の受光量の差を検出することで、回転体40の位置を容易に検出及び判別することができる。
【0114】
第2受光部材38として分割センサー66及び差動増幅回路85が用いられることによって、受光面36sで受光されるノイズ成分が削除され、検出光L2に基づく電子ペン11の先端部の位置検出の精度が向上する。
【0115】
また、第1実施形態の電子ペン11によれば、回転体40の第1位置PO1と第2位置PO2との間の連続的な移動をミラー64の連続した動き及び第2受光部材38における照射光L12の受光位置及び受光量の連続的な変化に反映させることができる。分割センサー66の第1センサー71及び第2センサー72の各々での照射光L12の受光量の差を連続値として検出することによって、電子ペン11にかかる筆圧を検出される文字や図の出力のパターンの太さや形状に反映し、自然な描き心地が得られる。
【0116】
なお、分割センサー66の第1センサー71での照射光L12の受光量と第2センサー72での照射光L12の受光量とを互いに異ならせるために、例えば回転体40が第1位置PO1にあるときに、第2光学部材37のミラー64が第2受光部材38の分割センサー66の第2センサー72のみに照射光L12を偏向してもよい。この場合には、回転体40が第2位置PO2にあるときに、第2光学部材37のミラー64が第2受光部材38の分割センサー66の第1センサー71と第2センサー72の両方に照射光L12を偏向してもよい。さらに、回転体40が第1位置PO1から第2位置PO2に移動するときに、第2光学部材37のミラー64が第2受光部材38の分割センサー66の第1センサー71及び第2センサー72のうちの一方のセンサーから他方のセンサーに第1方向D1に沿って照射光L12を偏向してもよい。前述の何れの変更を行っても、分割センサー66の第1センサー71及び第2センサー72の各々での照射光L12の受光量の差を検出することで、回転体40の位置を容易に検出及び判別することができる。
【0117】
第1実施形態の電子ペン11では、第1光学部材35は中心軸JX上に配置されている。支持部42は、回転体40が第2位置PO2にある場合に、回転体40が中心軸JX上で媒体Bの入力面Pと接するように支持することが好ましい。
【0118】
第1実施形態の電子ペン11によれば、回転体40が第2位置PO2にあるときに、電子ペン11の先端部において媒体Bの入力面Pに接触する基準の位置を中心軸JX上に配置し、使用者が文字や図を描くときの電子ペン11の姿勢を安定させることができる。
【0119】
第1実施形態の電子ペン11は、第3光学部材45であるミラー34と、第4光学部材46であるミラー62と、を備える。第3光学部材45は、光源32から発せられる照射光L1の少なくとも一部を第1光学部材35に偏向する。第4光学部材46は、第1光学部材35が偏向した照射光L12を第2光学部材37に向けて偏向する。回転体40が第2位置PO2にあり、電子ペン11が媒体Bに接するときに、第3光学部材45の少なくとも一部は、Z方向で第1光学部材35と重なるように配置されている。また、第4光学部材46は、Z方向で第2光学部材37と重なるように配置されている。
【0120】
第1実施形態の電子ペン11において、回転体40が第2位置PO2にあり、使用者が把持することによって中心軸JXがz軸に対して狭角θで傾斜するときに、光源32から射出される照射光L1を第3光学部材45のミラー34でz軸に対して略平行に偏向し、第1光学部材35に入射させることができる。同様に、回転体40が第2位置PO2にあるとき、第1光学部材35によって偏向される照射光L12を第4光学部材46でz軸に対して略平行に偏向し、第2光学部材37に入射させることができる。第1実施形態の電子ペン11によれば、より小径の収容部材20に第1光学部材35、第2光学部材37、第3光学部材45及び第4光学部材46を配置することができる。
【0121】
第1実施形態の電子ペン11では、第1光学部材35は、回折光学素子60であり、例えば計算機ホログラムである。第1実施形態の電子ペン11によれば、1つの回折光学素子60を用いて、入射する照射光L1の一部を照射光L11として入力面Pに焦点深度Δwの範囲内で集光するとともに、照射光L1の他の一部を照射光L12として照射光L11とは異なる方向に偏向する第1光学部材35を実現することができる。したがって、電子ペン11の光学系の小型化を図ることができる。
【0122】
なお、変形例として、第1光学部材35は、例えば入射する照射光L1の一部を照射光L11として入力面Pに集光する集光機能を有する光学素子と照射光L1の他の一部を照射光L12として平行化された状態を維持して照射光L11とは異なる方向に偏向する偏光機能を有する光学素子との積層体であってもよい。
【0123】
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について、図11を用いて説明する。
なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する構成には対応する第1実施形態の構成と同じ符号を付し、第1実施形態と重複する説明を省略する。第2実施形態では、第1実施形態とは異なる構成や内容について説明する。
【0124】
図11は、第2実施形態の電子ペン12の構成を示す概略図であり、電子ペン11が媒体Bの入力面Pと接している状態の図である。図11に示すように、第2実施形態の電子ペン12は、第1実施形態の電子ペン11と同様の構成を備える。但し、第2実施形態の電子ペン12は、第1光学部材35として回折光学素子91及び屈折レンズ92を備える。
【0125】
回折光学素子91は、第3光学部材45のミラー34の反射面34dで反射される照射光L1の一部を照射光L11として透過する。回折光学素子91は、ミラー34の反射面34dで反射される照射光L1の他の一部を照射光L12として第4光学部材46に向けて偏向する。回折光学素子91は、媒体Bの入力面Pで反射される検出光L2を第1受光部材36に向けて反射する。回折光学素子91は、例えば計算機ホログラム又は回折格子等である。
【0126】
屈折レンズ92は、回折光学素子91から射出される照射光L11を媒体Bの入力面Pに向けて集光させる。屈折レンズ92は、入力面P上の照射光L11の集光スポットSPから反射される検出光L2を回折光学素子91に向けて偏向し、第1受光部材36の受光面36sに集光する。
【0127】
第2実施形態の電子ペン12によって媒体Bの入力面Pに描かれる文字や図が検出される原理は、第1光学部材35の屈折レンズ92によって検出光L2が第1受光部材36に集光されること以外は第1実施形態の電子ペン11の原理と同様である。
【0128】
以上説明した第2実施形態の電子ペン12は、第1実施形態の電子ペン11と同様の構成を備えるため、第1実施形態の電子ペン11と同様の作用効果を奏する。
【0129】
また、第2実施形態の電子ペン12では、第1光学部材35は、入力面Pによって拡散される検出光L2を集光し、第1受光部材36に向けて偏向する。第2実施形態の電子ペン12によれば、検出光L2の光学系が結像光学系であるため、例えば媒体Bの入力面Pの粗さや入力面Pで発生するスペックルを第1受光部材36で検出することができる。
【0130】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0131】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)情報処理装置と通信する電子ペンであって、第1光を発する光源と、前記光源から発せられた前記第1光の一部を媒体の入力面に向けて偏向し、前記入力面から反射される第2光の一部を偏向する第1光学部材と、前記第1光学部材によって偏向された前記第2光を受光する第1受光部材と、前記第1受光部材で受光された前記第2光の情報に基づいて電子ペンの移動を検出する検出部と、を備え、前記検出部は、電子ペンが前記媒体と隔離しているときに前記入力面に対する電子ペンの移動を検出し、電子ペンが前記媒体と接しているときに前記入力面に対する電子ペンの移動を検出するとともに、電子ペンの移動に対応する入力を検出する、電子ペン。
【0132】
付記1の構成により、検出部は、電子ペンが媒体とは離れている場合に、電子ペンの先端部の移動のみを検出することができる。また、検出部は、電子ペンが媒体に接する場合に、電子ペンの先端部の移動を検出し、電子ペンの先端部の移動に対応する入力を検出し、接触信号を受け付けることができる。
【0133】
(付記2)中心軸に沿って延在し、前記光源と、前記第1光学部材と、前記第1受光部材と、前記検出部を収容する収容部材を備え、前記第1光学部材は前記入力面の法線に沿って前記第1光を前記入力面に向けて偏向し、前記中心軸は前記法線と交差する、付記1の電子ペン。
【0134】
付記2の構成により、中心軸が入力面に直交する軸に対して所定の狭角で傾斜している姿勢において、第1光学部材から入力面への第1光の進行方向と入力面から第1光学部材への第2光の進行方向とを揃えることができる。
【0135】
(付記3)前記収容部材には、前記第1光学部材によって偏向された前記第1光が通る開口が形成され、前記中心軸に直交する面内が前記中心軸を基準として第1領域と第2領域とに区画される場合に、前記第1光学部材によって偏向された前記第1光は前記第1領域における前記開口を通り、前記第1領域における前記開口の面積は前記第2領域における前記開口の面積よりも大きい、付記2の電子ペン。
【0136】
付記3の構成により、第2光の検出精度及び電子ペンの先端部の位置情報の精度を高めることができる。
【0137】
(付記4)前記中心軸に平行な板面を有する基板を備え、前記光源と前記第1受光部材は前記板面に配置され、前記中心軸に直交する面内が前記中心軸を基準として第1領域と第2領域とに区画される場合に、前記基板は前記第1領域における前記収容部材に配置されている、付記2又は3の電子ペン。
【0138】
付記4の構成により、基板及び基板に配置されている構成要素との重量を入力面に直交する軸に対して中心軸が傾斜する側の領域に寄せて、電子ペンの使い心地を高めることができる。また、基板の板面と中心軸との間の領域とを確保し、収容部材の内部空間における光学系の設計の自由度を高めることができる。
【0139】
(付記5)回転体と、所定の向きにおいて、前記回転体を前記回転体が前記媒体と隔離している状態での第1位置と、前記回転体が前記媒体に接している状態での第2位置と、で移動可能に支持する支持部と、を備え、前記検出部は、前記回転体が前記第1位置にある場合に、電子ペンの移動を検出し、前記回転体が前記第2位置にある場合に、電子ペンの移動と電子ペンの移動に対応する入力とを検出する、付記1から4の何れか1つの電子ペン。
【0140】
付記5の構成により、回転体が第1位置と第2位置とで移動することによって、媒体の入力面から隔離しているのか、或いは入力面に接しているのかということを容易に判別することができる。
【0141】
(付記6)前記支持部に設けられ、前記第1光学部材で偏向された前記第1光の別の一部を偏向する第2光学部材と、前記第2光学部材で偏向された前記第1光を受光する第2受光部材と、を備え、前記検出部は前記第2受光部材における前記第1光の受光位置及び受光量に基づいて前記媒体に対する前記回転体の位置を検出する、付記5の電子ペン。
【0142】
付記6の構成により、収容部材の内部空間に、回転体の位置を検出する光学系を効率良く配置することができる。
【0143】
(付記7)前記第2光学部材は、前記回転体が前記第1位置にある場合に受光する前記第1光の受光量と前記回転体が前記第2位置にある場合に受光する前記第1光の受光量とが互いに異なるように、前記第1光の別の一部を偏向し、前記検出部は、前記第2受光部材で受光される前記第1光の受光量に応じて前記回転体が前記第1位置及び前記第2位置の何れかの位置にあることを判定する、付記6の電子ペン。
【0144】
付記7の構成により、第1光の受光量の差を検出することで、回転体の位置を容易に検出し、回転体の位置を判別することができる。
【0145】
(付記8)前記第1光学部材は中心軸上に配置され、前記支持部は、前記回転体が前記第2位置にある場合に、前記回転体が前記中心軸上で前記媒体の前記入力面と接するように支持する、付記5から7の何れか1つの電子ペン。
【0146】
付記8の構成により、電子ペンの先端部において媒体の入力面に接触する基準の位置を中心軸上に配置し、使用者が文字や図を描くときの電子ペンの姿勢を安定させることができる。
【0147】
(付記9)前記光源から発せられる前記第1光の少なくとも一部を前記第1光学部材に偏向する第3光学部材と、前記第1光学部材が偏向した前記第1光を前記第2光学部材に向けて偏向する第4光学部材と、を備え、電子ペンが前記媒体に接しているときに、前記第3光学部材は前記入力面に直交する方向で前記第1光学部材と重なるように配置され、前記第4光学部材は前記入力面に直交する方向で前記第2光学部材と重なるように配置されている、付記6又は7の電子ペン。
【0148】
付記9の構成により、第2光の光学系が結像光学系であるため、媒体の入力面の粗さや入力面で発生するスペックルを第1受光部材で検出することができる。
【0149】
(付記10)前記第1光学部材は回折光学素子であり、前記第1光学部材は、前記入力面によって拡散される前記第2光を集光し、前記第1光学部材に向けて偏向する、付記1から9の何れか1つの電子ペン。
【0150】
付記10の構成により、第1光学部材を容易に多機能化し、電子ペン11の光学系の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0151】
11,12…電子ペン、32…光源、35…第1光学部材、36…第1受光部材、150…情報処理装置、B…媒体、P…入力面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11