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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097457
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B41J2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000915
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼部 本規
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸朗
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG01
2C057AG09
2C057AG44
2C057AG75
2C057AP32
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体の固化によるノズル詰まりを高精度に検出するとともに、液体の増粘の進行程度を判定する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、液体を吐出する第1ノズルと、第1ノズルから液体を吐出させるための圧力を発生させる第1圧力室と、第1ノズルと第1圧力室とを接続する第1個別流路と、を有し、第1ノズルは、第1ノズル部分と、第1ノズルの中心軸に沿う軸方向で第1ノズル部分よりも第1個別流路から遠い位置に設けられ、中心軸に直交する断面でみて第1ノズル部分の断面積よりも断面積の小さい第2ノズル部分と、を有し、第1ノズル部分の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第1凸部が設けられ、第2ノズル部分の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第2凸部が設けられ、複数の第1凸部と複数の第2凸部との形状および配置密度のうちの一方または両方が互いに異なる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する第1ノズルと、
前記第1ノズルから液体を吐出させるための圧力を発生させる第1圧力室を含み、前記第1ノズルと前記第1圧力室とを接続する第1個別流路と、を有し、
前記第1ノズルは、
第1ノズル部分と、
前記第1ノズルの中心軸に沿う軸方向で前記第1ノズル部分よりも前記第1個別流路から遠い位置に設けられ、前記中心軸に直交する断面でみて前記第1ノズル部分の断面積よりも断面積の小さい第2ノズル部分と、を有し、
前記第1ノズル部分の側壁には、前記軸方向に並ぶ複数の第1凸部が設けられ、
前記第2ノズル部分の側壁には、前記軸方向に並ぶ複数の第2凸部が設けられ、
前記複数の第1凸部と前記複数の第2凸部との形状および配置密度のうちの一方または両方が互いに異なる、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記複数の第1凸部の形状と前記複数の第2凸部の形状とが互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記複数の第1凸部の突出長さは、前記複数の第2凸部の突出長さよりも長い、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数の第1凸部の配置密度と前記複数の第2凸部の配置密度とが互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の第1凸部の配置密度は、前記複数の第2凸部の配置密度よりも大きい、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記複数の第1凸部の形状と前記複数の第2凸部の形状とが互いに異なるとともに、前記複数の第1凸部の配置密度と前記複数の第2凸部の配置密度とが互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1ノズル部分の側壁における前記複数の第1凸部の数と前記第2ノズル部分の側壁における前記複数の第2凸部の数とが互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
液体を吐出する第2ノズルと、
前記第2ノズルから液体を吐出させるための圧力を発生させる第2圧力室を含み、前記第2ノズルと前記第2圧力室とを接続する第2個別流路と、
前記第1個別流路および前記第2個別流路に共通に接続する共通流路と、をさらに有し、
前記第2ノズルは、
第3ノズル部分と、
前記軸方向で前記第3ノズル部分よりも前記第2個別流路から遠い位置に設けられ、前記中心軸に直交する断面でみて前記第3ノズル部分の断面積よりも断面積の小さい第4ノズル部分と、を有し、
前記第3ノズル部分の側壁には、前記軸方向に並ぶ複数の第3凸部が設けられ、
前記第4ノズル部分の側壁には、前記軸方向に並ぶ複数の第4凸部が設けられ、
前記複数の第3凸部と前記複数の第4凸部との形状および配置密度のうちの一方または両方が互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記複数の第1凸部と前記複数の第2凸部と前記複数の第3凸部と前記複数の第4凸部との形状または配置密度が互いに異なる、
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記複数の第1凸部のそれぞれは、前記第1ノズル部分の側壁の全周にわたり設けられ、
前記複数の第2凸部のそれぞれは、前記第2ノズル部分の側壁の全周にわたり設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの動作を制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターに代表される液体吐出装置に用いる液体吐出ヘッドでは、インク等の液体がノズルから吐出される。特許文献1では、ノズルの側壁にスキャロップ構造を設けることが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-2778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体吐出ヘッドでは、ノズルの気液界面においてインク溶媒が蒸発することにより、ノズル内でのインクの増粘によりノズル詰まりを発生させる場合がある。従来、このノズル詰まりを検知するための方法として、残留振動解析またはテストパッチ記録等が知られている。しかし、このような従来の方法では、ノズル詰まりがインクの増粘によるものなのか、それとも別の要因、例えば異物のノズル内への混入によるノズル詰まりなのかを切り分けて判断することは難しい。また、インクの増粘の進行程度を判定することも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示に係る液体吐出ヘッドの一態様は、液体を吐出する第1ノズルと、前記第1ノズルから液体を吐出させるための圧力を発生させる第1圧力室を含み、前記第1ノズルと前記第1圧力室とを接続する第1個別流路と、を有し、前記第1ノズルは、第1ノズル部分と、前記第1ノズルの中心軸に沿う軸方向で前記第1ノズル部分よりも前記第1個別流路から遠い位置に設けられ、前記中心軸に直交する断面でみて前記第1ノズル部分の断面積よりも断面積の小さい第2ノズル部分と、を有し、前記第1ノズル部分の側壁には、前記軸方向に並ぶ複数の第1凸部が設けられ、前記第2ノズル部分の側壁には、前記軸方向に並ぶ複数の第2凸部が設けられ、前記複数の第1凸部と前記複数の第2凸部との形状および配置密度のうちの一方または両方が互いに異なる。
【0006】
本開示に係る液体吐出装置の一態様は、前述の態様の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの動作を制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る液体吐出装置を模式的に示す構成図である。
図2】第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの分解斜視図である。
図3図2中のA-A線断面図である。
図4図3中のB-B線断面図である。
図5】参考例のノズルを示す断面図である。
図6】参考例のノズルでのノズル詰まりを説明するための図である。
図7】第1実施形態の第1ノズルを示す断面図である。
図8】第1実施形態の第2ノズルを示す断面図である。
図9】第1実施形態のノズルでのノズル詰まりを説明するための図である。
図10】第2実施形態の第1ノズルを示す断面図である。
図11】変形例1の第1ノズルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0009】
なお、以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。また、Z軸に沿う方向でみることを「平面視」という場合がある。
【0010】
ここで、典型的には、Z軸が鉛直軸であり、Z2方向が鉛直下方に相当する。ただし、Z軸は、鉛直軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.液体吐出装置の全体構成
図1は、第1実施形態に係る液体吐出装置100を模式的に示す構成図である。液体吐出装置100は、液体の一例であるインクを液滴として媒体Mに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体Mは、典型的には印刷用紙である。なお、媒体Mは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
【0012】
図1に示すように、液体吐出装置100は、液体容器10と、「制御部」の一例である制御ユニット20と、搬送機構30と、移動機構40と、液体吐出ヘッド50と、を有する。
【0013】
液体容器10は、インクを貯留する容器である。液体容器10の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器10に貯留されるインクの種類は任意である。
【0014】
制御ユニット20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、液体吐出装置100の各要素の動作を制御する。ここで、制御ユニット20は、液体吐出ヘッド50の動作を制御する。
【0015】
搬送機構30は、制御ユニット20による制御のもとで、媒体MをY2方向に搬送する。移動機構40は、制御ユニット20による制御のもとで、液体吐出ヘッド50をX1方向とX2方向とに往復させる。図1に示す例では、移動機構40は、液体吐出ヘッド50を収容する略箱型のキャリッジ41と、キャリッジ41が固定される搬送ベルト42と、を有する。なお、キャリッジ41に搭載される液体吐出ヘッド50の数は、1個に限定されず、複数個でもよい。また、キャリッジ41には、液体吐出ヘッド50のほかに、前述の液体容器10が搭載されてもよい。
【0016】
液体吐出ヘッド50は、制御ユニット20による制御のもとで、液体容器10から供給されるインクを複数のノズルのそれぞれからZ2方向に媒体Mに吐出する。この吐出が搬送機構30による媒体Mの搬送と移動機構40による液体吐出ヘッド50の往復移動とに並行して行われることにより、媒体Mの表面にインクによる画像が形成される。
【0017】
1-2.液体吐出ヘッドの全体構成
図2は、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド50の分解斜視図である。図3は、図2中のA-A線断面図である。図4は、図3中のB-B線断面図である。図2および図3に示すように、液体吐出ヘッド50は、流路基板51と圧力室基板52とノズル基板53と吸振体54と振動板55と複数の圧電素子56と封止板57とケース58と配線基板59とを有する。
【0018】
ここで、流路基板51よりもZ1方向に位置する領域には、圧力室基板52と振動板55と複数の圧電素子56とケース58と封止板57とが設置される。他方、流路基板51よりもZ2方向に位置する領域には、ノズル基板53と吸振体54とが設置される。液体吐出ヘッド50の各要素は、概略的にはY軸に沿う方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により互いに接合される。
【0019】
図2に示すように、ノズル基板53は、Y軸に沿う方向に配列される複数のノズルNが設けられる板状部材である。ノズル基板53は、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、ノズル基板53の製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
【0020】
ここで、図4に示すように、当該複数のノズルNのうち、任意の1つのノズルNが第1ノズルN-1であり、他の任意の1つのノズルNが第2ノズルN-2である。各ノズルNは、インクを通過させる貫通孔である。また、各ノズルNは、いわゆる二段構造を有する。具体的には、第1ノズルN-1は、断面積の互いに異なる第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2を有する。同様に、第2ノズルN-2は、断面積の互いに異なる第3ノズル部分Pa-3および第4ノズル部分Pb-4を有する。なお、ノズルNの詳細については、後に図5から図8に基づいて説明する。
【0021】
流路基板51は、インクの流路を形成するための板状部材である。図2および図3に示すように、流路基板51には、開口部R1と複数の供給流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。
【0022】
開口部R1は、複数のノズルNにわたり連続するように、Z軸に沿う方向でみた平面視で、Y軸に沿う方向に延びる長尺状の貫通孔である。他方、供給流路Raおよび連通流路Naそれぞれは、ノズルNごとに個別に設けられる貫通孔である。複数の供給流路Raのそれぞれは、開口部R1に連通する。流路基板51は、前述のノズル基板53と同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路基板51の製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
【0023】
圧力室基板52は、複数のノズルNに対応する複数の圧力室Cが形成される板状部材である。各圧力室Cは、対応するノズルNからインクを吐出させるための圧力を発生させるための空間である。ここで、図4に示すように、当該複数の圧力室Cのうち、第1ノズルN-1に対応する圧力室Cが第1圧力室C-1であり、第2ノズルN-2に対応する圧力室Cが第2圧力室C-2である。また、圧力室Cは、前述の供給流路Raおよび連通流路Naとともに、ノズルNごとに個別流路PPを構成する。このように各個別流路PPは、圧力室Cと供給流路Raと連通流路Naとを含んでおり、圧力室Cとこれに対応するノズルNとを接続する。ここで、ノズルNごとに設けられる複数の個別流路PPのうち、第1ノズルN-1に対応する個別流路PPが第1個別流路PP-1であり、第2ノズルN-2に対応する個別流路PPが第2個別流路PP-2である。
【0024】
圧力室Cは、流路基板51と振動板55との間に位置し、当該圧力室C内に充填されるインクに圧力を付与するためのキャビティと称される空間である。複数の圧力室Cは、Y軸に沿う方向に配列される。各圧力室Cは、圧力室基板52の両面に開口する孔52aで構成されており、X軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。各圧力室CのX2方向での端は、対応する供給流路Raに連通する。一方、各圧力室CのX1方向での端は、対応する連通流路Naに連通する。圧力室基板52は、前述のノズル基板53と同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、圧力室基板52のそれぞれの製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
【0025】
圧力室基板52のZ1方向を向く面には、振動板55が配置される。振動板55は、弾性的に変形可能な板状部材である。振動板55は、図4に示すように、弾性膜55aと絶縁膜55bとを有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。弾性膜55aは、例えば、酸化シリコン(SiO)で構成されており、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。絶縁膜55bは、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)で構成されており、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。なお、振動板55は、弾性膜55aおよび絶縁膜55bの積層による構成に限定されず、例えば、単層で構成されてもよいし、3層以上で構成されてもよい。
【0026】
振動板55のZ1方向を向く面には、互いに異なるノズルNまたは圧力室Cに対応する複数の圧電素子56が配置される。各圧電素子56は、駆動信号の供給により変形する受動素子であり、X軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の圧電素子56は、複数の圧力室Cに対応するようにY軸に沿う方向に配列される。圧電素子56の変形に連動して振動板55が振動すると、圧力室C内の圧力が変動することにより、インクがノズルNから吐出される。
【0027】
各圧電素子56は、図4に示すように、第1電極56aと圧電体56bと第2電極56cとを有し、この順でこれらがZ1方向に積層される。第1電極56aは、圧電素子56ごとに互いに離間して配置される個別電極であり、第1電極56aには、制御ユニット20から駆動信号が供給される。第2電極56cは、複数の圧電素子56にわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極であり、第2電極56cには、例えば、定電位が供給される。これらの電極の金属材料としては、例えば、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銅(Cu)等の金属材料が挙げられ、これらのうち、1種を単独でまたは2種以上を合金または積層等の態様で組み合わせて用いることができる。圧電体56bは、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)等の圧電材料で構成される。圧電体56bは、複数の圧電素子56にわたり一体で設けられており、図2に示すように、圧電体56bには、互いに隣り合う各圧力室Cの間隙に平面視で対応する領域に、圧電体56bを貫通する貫通孔56b1がX軸に沿う方向に延びて設けられる。なお、圧電体56bは、圧電素子56ごとに個別に設けられてもよい。
【0028】
図2および図3に示すように、ケース58は、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するためのケースであり、流路基板51のZ1方向を向く面に接着剤等により接合される。ケース58は、例えば、樹脂材料で構成されており、射出成形により製造される。ケース58には、収容部R2と導入口IHとが設けられる。収容部R2は、流路基板51の開口部R1に対応する外形の凹部である。導入口IHは、収容部R2に連通する貫通孔である。開口部R1および収容部R2による空間は、インクを貯留するリザーバーである共通流路Rとして機能する。共通流路Rには、液体容器10からのインクが導入口IHを介して供給される。
【0029】
吸振体54は、共通流路R内の圧力変動を吸収するための要素である。吸振体54は、例えば、弾性変形可能な可撓性のシート部材であるコンプライアンス基板である。ここで、吸振体54は、流路基板51の開口部R1と複数の供給流路Raとを閉塞して共通流路Rの底面を構成するように、流路基板51のZ2方向を向く面に配置される。
【0030】
封止板57は、複数の圧電素子56を保護するとともに圧力室基板52および振動板55の機械的な強度を補強する構造体である。封止板57は、振動板55の表面に例えば接着剤により接合される。封止板57には、複数の圧電素子56を収容する凹部が設けられる。
【0031】
圧力室基板52または振動板55のZ1方向を向く面には、配線基板59が接合される。配線基板59は、制御ユニット20と液体吐出ヘッド50とを電気的に接続するための複数の配線が形成される実装部品である。配線基板59は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板である。配線基板59には、圧電素子56を駆動するための駆動回路60が搭載される。駆動回路60は、各圧電素子56を駆動するための駆動信号を配線基板59を介して各圧電素子56に選択的に供給する。
【0032】
1-3.第1ノズルおよび第2ノズルの詳細
以下、まず、第1ノズルN-1および第2ノズルN-2の説明に先立ち、図5および図6に基づいて、参考例のノズルN-Xについて簡単に説明する。
【0033】
図5は、参考例のノズルN-Xを示す断面図である。ノズルNの参考例であるノズルN-Xは、図5に示すように、第1ノズル部分Paと、第1ノズル部分Paに対してZ2方向の位置に設けられる第2ノズル部分Pbと、を有する。なお、ノズルNの中心軸Azは、ノズルNからのインクの吐出方向に沿う軸線である。本実施形態では、ノズルNからのインクの吐出方向がZ2方向であるため、中心軸AzはZ軸に平行な軸線である。以下、中心軸Azに沿う方向を軸方向という場合がある。
【0034】
中心軸Azに直交する断面でみて、第2ノズル部分Pbの断面積は、第1ノズル部分Paの断面積よりも小さい。このように第1ノズル部分Paの断面積を大きくすることにより、個別流路PPからノズルN-Xへのインクの供給効率を高めることができる。また、第1ノズル部分Paの断面積を大きくすることにより、ノズルN-X内のインクのメニスカスが毛細管現象により個別流路PPに向けて引き込まれることにより気泡の混入を低減することもできる。また、第2ノズル部分Pbの断面積を小さくすることにより、ノズルN-Xからのインクの吐出速度を速めたりサテライトと呼ばれる副次的な液滴の発生を抑制したりすることができ、この結果、ノズルN-Xからのインクの吐出特性を高めることができる。
【0035】
第1ノズル部分Paの側壁には、軸方向に並ぶ複数の第1凸部53aが設けられる。図5に示す例では、複数の第1凸部53aのそれぞれが第1ノズル部分Paの全周にわたり設けられる。第2ノズル部分Pbの側壁には、軸方向に並ぶ複数の第2凸部53bが設けられる。図5に示す例では、複数の第2凸部53bのそれぞれが第2ノズル部分Pbの全周にわたり設けられる。
【0036】
参考例では、複数の第1凸部53aと複数の第2凸部53bとの形状および配置密度のそれぞれが互いに同一である。具体的には、複数の第1凸部53aのそれぞれの突出長さHaは、複数の第2凸部53bのそれぞれの突出長さHbに等しい。複数の第1凸部53a間に形成される凹部の幅Waは、複数の第2凸部53b間に形成される凹部の幅Wbに等しい。複数の第1凸部53aの配置間隔Laは、複数の第2凸部53bの配置間隔Lbに等しい。
【0037】
図6は、参考例のノズルN-Xでのノズル詰まりを説明するための図である。ノズルN-Xの第1ノズル部分Paにおけるインクの増粘に伴う固化によりノズル詰まりが生じた場合、図6中左上側に示すように、インクの固化物である固化物Sa-Xが発生する。固化物Sa-Xの表面には、第1凸部53aの形状が転写される。すなわち、固化物Sa-Xの表面には、第1凸部53aの転写形状をなす凹部が形成される。ここで、当該凹部の深さDcは、前述の突出長さHaに等しい。隣り合う当該凹部同士の間に形成される凸部の幅Wcは、前述の幅Waに等しい。当該凹部の配置間隔Lcは、前述の配置間隔Laに等しい。
【0038】
一方、ノズルN-Xの第2ノズル部分Pbにおけるインクの増粘に伴う固化によりノズル詰まりが生じた場合、図6中左下側に示すように、インクの固化物である固化物Sb-Xが発生する。固化物Sb-Xの表面には、第2凸部53bの形状が転写される。すなわち、固化物Sb-Xの表面には、第2凸部53bの転写形状をなす凹部が形成される。ここで、当該凹部の深さDdは、前述の突出長さHbに等しい。隣り合う当該凹部同士の間に形成される凸部の幅Wdは、前述の幅Wbに等しい。当該凹部の配置間隔Ldは、前述の配置間隔Lbに等しい。参考例では、複数の第1凸部53aと複数の第2凸部53bとの形状および配置密度のそれぞれが互いに同一であるため、固化物Sa-Xの表面形状と固化物Sb-Xの表面形状とが互いに同一である。
【0039】
このように、固化物Sa-X、Sb-Xの表面には、ノズルN-Xの側壁の形状が転写されるので、固化物Sa-X、Sb-XをノズルN-Xの逆洗等により取り出した後、固化物Sa-X、Sb-Xを観察することにより、ノズルN-Xにおけるインクの増粘によるノズル詰まりを高精度に検出することができる。
【0040】
しかし、固化物Sa-Xの表面形状と固化物Sb-Xの表面形状とが互いに同一であるため、固化物Sa-X、Sb-Xを観察しても、ノズルN-Xでのインクの増粘箇所が第1ノズル部分Paおよび第2ノズル部分Pbのうちの一方または両方なのかを特定することができない。特に、図6中右側に示すように、固化物Sa-Xの個片化した固化物Sa1-Xと固化物Sb-Xの個片化した固化物Sb1-Xとを比較することになるため、このような特定は難しい。
【0041】
そこで、本実施形態のノズルNは、以下に述べる第1ノズルN-1および第2ノズルN-2のように構成される。
【0042】
図7は、第1実施形態の第1ノズルN-1を示す断面図である。図7に示すように、第1ノズルN-1は、第1ノズル部分Pa-1と、第1ノズル部分Pa-1に対してZ2方向の位置に設けられる第2ノズル部分Pb-2と、を有する。
【0043】
ここで、中心軸Azに直交する断面でみて、第2ノズル部分Pb-2の断面積は、第1ノズル部分Pa-1の断面積よりも小さい。このような第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2の断面積の大小関係を有することにより、前述のノズルN-Xと同様、第1個別流路PP-1から第1ノズルN-1へのインクの供給効率を高めたり、第1ノズルN-1からのインクの吐出特性を高めたりすることができる。
【0044】
第1ノズル部分Pa-1の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第1凸部53a-1が設けられる。図7に示す例では、複数の第1凸部53a-1のそれぞれが第1ノズル部分Pa-1の全周にわたり設けられる。一方、第2ノズル部分Pb-2の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第2凸部53b-2が設けられる。図7に示す例では、複数の第2凸部53b-2のそれぞれが第2ノズル部分Pb-2の全周にわたり設けられる。なお、複数の第1凸部53a-1のうちの少なくとも1つが第1ノズル部分Pa-1の周方向での一部に設けられてもよいし、複数の第2凸部53b-2のうちの少なくとも1つが第2ノズル部分Pb-2の周方向での一部に設けられてもよい。
【0045】
第1ノズルN-1では、複数の第1凸部53a-1と複数の第2凸部53b-2との配置密度が互いに異なる。ここで、「配置密度」とは、単位面積あたりまたは単位長さあたりに存在する数である。また、第1ノズルN-1では、複数の第1凸部53a-1と複数の第2凸部53b-2との形状が互いに異なるともいえる。このような第1ノズルN-1は、例えば、第1ノズル部分Pa-1と第2ノズル部分Pb-2との形成条件または形成方法等を互いに異ならせることにより得られる。なお、第1ノズルN-1の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、ボッシュプロセス等のドライエッチング法、レーザー加工等が挙げられる。
【0046】
本実施形態では、複数の第1凸部53a-1の配置密度が複数の第2凸部53b-2の配置密度よりも大きい。ここで、複数の第1凸部53a-1の配置間隔Laは、複数の第2凸部53b-2の配置間隔Lbよりも小さい。これにより、複数の第1凸部53a-1の配置密度を複数の第2凸部53b-2の配置密度よりも大きくすることができる。
【0047】
図7に示す例では、複数の第1凸部53a-1のそれぞれの突出長さHaは、複数の第2凸部53b-2のそれぞれの突出長さHbに等しい。複数の第1凸部53a-1間に形成される凹部の幅Waは、複数の第2凸部53b-2間に形成される凹部の幅Wbに等しい。なお、複数の第1凸部53a-1および複数の第2凸部53b-2について、突出長さHaおよび突出長さHbが高いに異なってもよいし、幅Waおよび幅Wbが互いに異なってもよい。
【0048】
また、複数の第1凸部53a-1間に形成される凹部と複数の第2凸部53b-2間に形成される凹部とのそれぞれの断面形状がU字状をなす。なお、これらの凹部の断面形状は、図7に示す例に限定されず、任意であり、互いに異なってもよい。
【0049】
さらに、第1ノズル部分Pa-1の側壁における複数の第1凸部53a-1の数と第2ノズル部分Pb-2の側壁における複数の第2凸部53b-2の数とが互いに異なる。図7に示す例では、第1ノズル部分Pa-1の側壁における複数の第1凸部53a-1の数が第2ノズル部分Pb-2の側壁における複数の第2凸部53b-2の数よりも多い。なお、第1ノズル部分Pa-1の側壁における複数の第1凸部53a-1の数は、第2ノズル部分Pb-2の側壁における複数の第2凸部53b-2の数以下であってもよい。
【0050】
図8は、第1実施形態の第2ノズルN-2を示す断面図である。図8に示すように、第2ノズルN-2は、第3ノズル部分Pa-3と、第3ノズル部分Pa-3に対してZ2方向の位置に設けられる第4ノズル部分Pb-4と、を有する。
【0051】
ここで、中心軸Azに直交する断面でみて、第4ノズル部分Pb-4の断面積は、第3ノズル部分Pa-3の断面積よりも小さい。このような第3ノズル部分Pa-3および第4ノズル部分Pb-4の断面積の大小関係を有することにより、前述のノズルN-Xと同様、第2個別流路PP-2から第2ノズルN-2へのインクの供給効率を高めたり、第2ノズルN-2からのインクの吐出特性を高めたりすることができる。
【0052】
第3ノズル部分Pa-3の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第3凸部53a-3が設けられる。図8に示す例では、複数の第3凸部53a-3のそれぞれが第3ノズル部分Pa-3の全周にわたり設けられる。一方、第4ノズル部分Pb-4の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第4凸部53b-4が設けられる。図8に示す例では、複数の第4凸部53b-4のそれぞれが第4ノズル部分Pb-4の全周にわたり設けられる。なお、複数の第3凸部53a-3のうちの少なくとも1つが第3ノズル部分Pa-3の周方向での一部に設けられてもよいし、複数の第4凸部53b-4のうちの少なくとも1つが第4ノズル部分Pb-4の周方向での一部に設けられてもよい。
【0053】
第2ノズルN-2では、複数の第3凸部53a-3と複数の第4凸部53b-4との配置密度が互いに異なる。また、第2ノズルN-2では、複数の第3凸部53a-3と複数の第4凸部53b-4との形状が互いに異なるともいえる。このような第2ノズルN-2は、第1ノズルN-1と同様、例えば、第3ノズル部分Pa-3と第4ノズル部分Pb-4との形成条件または形成方法等を互いに異ならせることにより得られる。
【0054】
本実施形態では、複数の第3凸部53a-3の配置密度が複数の第4凸部53b-4の配置密度よりも大きい。ここで、複数の第3凸部53a-3の配置間隔Laは、複数の第4凸部53b-4の配置間隔Lbよりも小さい。これにより、複数の第3凸部53a-3の配置密度を複数の第4凸部53b-4の配置密度よりも大きくすることができる。
【0055】
しかも、複数の第3凸部53a-3の配置密度と複数の第4凸部53b-4の配置密度とのそれぞれは、前述の複数の第1凸部53a-1の配置密度と複数の第2凸部53b-2の配置密度とのそれぞれと異なる。また、複数の第3凸部53a-3の形状と複数の第4凸部53b-4の形状とのそれぞれは、前述の複数の第1凸部53a-1の形状と複数の第2凸部53b-2の形状とのそれぞれと異なるともいえる。
【0056】
図8に示す例では、複数の第3凸部53a-3のそれぞれの突出長さHaは、複数の第4凸部53b-4のそれぞれの突出長さHbに等しい。複数の第3凸部53a-3間に形成される凹部の幅Waは、複数の第4凸部53b-4間に形成される凹部の幅Wbに等しい。なお、複数の第3凸部53a-3および複数の第4凸部53b-4について、突出長さHaおよび突出長さHbが高いに異なってもよいし、幅Waおよび幅Wbが互いに異なってもよい。
【0057】
また、複数の第3凸部53a-3間に形成される凹部と複数の第4凸部53b-4間に形成される凹部とのそれぞれの断面形状がU字状をなす。なお、これらの凹部の断面形状は、図8に示す例に限定されず、任意であり、互いに異なってもよい。
【0058】
さらに、第3ノズル部分Pa-3の側壁における複数の第3凸部53a-3の数と第4ノズル部分Pb-4の側壁における複数の第4凸部53b-4の数とが互いに異なる。図8に示す例では、第3ノズル部分Pa-3の側壁における複数の第3凸部53a-3の数が第4ノズル部分Pb-4の側壁における複数の第4凸部53b-4の数よりも多い。なお、第3ノズル部分Pa-3の側壁における複数の第3凸部53a-3の数は、第4ノズル部分Pb-4の側壁における複数の第4凸部53b-4の数以下であってもよい。
【0059】
図9は、第1実施形態のノズルNでのノズル詰まりを説明するための図である。図9では、第1ノズルN-1でのノズル詰まりが示される。以下、第1ノズルN-1でのノズル詰まりについて代表的に説明するが、第2ノズルN-2でのノズル詰まりについても、第1ノズルN-1と同様である。
【0060】
前述のような第1ノズルN-1をノズルNとして用いると、第1ノズルN-1の第1ノズル部分Pa-1におけるインクの増粘に伴う固化によりノズル詰まりが生じた場合、図9中左上側に示すように、インクの固化物である固化物Saが発生する。固化物Saの表面には、第1凸部53a-1の形状が転写される。ここで、当該凹部の深さDcは、前述の第1ノズルN-1の吐出長さHaに等しい。隣り合う当該凹部同士の間に形成される凸部の幅Wcは、前述の第1ノズルN-1の幅Waに等しい。当該凹部の配置間隔Lcは、前述の第1ノズルN-1の配置間隔Laに等しい。
【0061】
一方、第1ノズルN-1の第2ノズル部分Pb-2におけるインクの増粘に伴う固化によりノズル詰まりが生じた場合、図9中左下側に示すように、インクの固化物である固化物Sbが発生する。固化物Sbの表面には、第2凸部53b-2の形状が転写される。ここで、当該凹部の深さDdは、前述の第1ノズルN-1の突出長さHbに等しい。隣り合う当該凹部同士の間に形成される凸部の幅Wdは、前述の第1ノズルN-1の幅Wbに等しい。当該凹部の配置間隔Ldは、前述の第1ノズルN-1の配置間隔Lbに等しい。ここで、複数の第1凸部53a-1と複数の第2凸部53b-2との形状および配置密度のそれぞれが互いに異なるため、固化物Saの表面形状と固化物Sbの表面形状とが互いに異なる。
【0062】
このように、固化物Sa、Sbの表面には、第1ノズルN-1の側壁の形状が転写されるので、固化物Sa、Sbを第1ノズルN-1の逆洗等により取り出した後、固化物Sa、Sbを観察することにより、第1ノズルN-1におけるインクの増粘によるノズル詰まりを高精度に検出することができる。すなわち、ある固化物の表面に第1ノズルN-1の側壁の形状が転写されていれば、第1ノズルN-1においてインクの増粘によるノズル詰まりが発生したことが検知される。
【0063】
しかも、固化物Saの表面形状と固化物Sbの表面形状とが互いに異なるため、固化物Sa、Sbを観察することにより、第1ノズルN-1でのインクの増粘箇所が第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2のうちの一方または両方なのかを特定することができる。すなわち、ある固化物の表面を観察したとき、第1ノズル部分Pa-1の側壁の形状が転写されていれば、第1ノズル部分Pa-1においてインクの増粘によるノズル詰まりが発生したことが検知され、一方、第2ノズル部分Pa-2の側壁の形状が転写されていれば、第2ノズル部分Pa-2においてインクの増粘によるノズル詰まりが発生したことが検知される。
【0064】
同様に、ある固化物の表面に第2ノズルN-2の側壁の形状が転写されていれば、第2ノズルN-2においてインクの増粘によるノズル詰まりが発生したことが検知される。ここで、複数の第1凸部53a-1と複数の第2凸部53b-2と複数の第3凸部53a-3と複数の第4凸部53b-4との形状および配置密度のそれぞれが互いに異なるため、インク詰まりの発生ノズルが第1ノズルN-1なのか第2ノズルN-2なのかを特定することもできるし、第2ノズルN-2でのインクの増粘箇所が第3ノズル部分Pa-3および第4ノズル部分Pb-4のうちの一方または両方なのかを特定することもできる。
【0065】
以上のように、液体吐出ヘッド50は、第1ノズルN-1と第1個別流路PP-1とを有する。第1ノズルN-1は、「液体」の一例であるインクを吐出する。第1個別流路PP-1は、第1圧力室C-1を含み、第1ノズルN-1と第1圧力室C-1とを接続する。第1圧力室C-1は、第1ノズルN-1からインクを吐出させるための圧力を発生させる。
【0066】
そのうえで、第1ノズルN-1は、第1ノズル部分Pa-1と、第1ノズルN-1の中心軸Azに沿う軸方向で第1ノズル部分Pa-1よりも第1個別流路PP-1から遠い位置に設けられる第2ノズル部分Pb-2と、を有する。ここで、中心軸に直交する断面でみて、第2ノズル部分Pb-2の断面積は、第1ノズル部分Pa-1の断面積よりも小さい。第1ノズル部分Pa-1の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第1凸部53a-1が設けられる。第2ノズル部分Pb-2の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第2凸部53b-2が設けられる。しかも、複数の第1凸部53a-1と複数の第2凸部53b-2との形状および配置密度のうちの一方または両方が互いに異なる。
【0067】
以上の液体吐出ヘッド50では、複数の第1凸部53a-1が第1ノズル部分Pa-1の側壁に設けられるとともに、複数の第2凸部53b-2が第2ノズル部分Pb-2の側壁に設けられるので、第1ノズルN-1におけるインクの増粘に伴う固化によりノズル詰まりが生じた場合、その固化物の表面に複数の第1凸部53a-1と複数の第2凸部53b-2のうちの一方または両方の形状が転写される。このため、第1ノズルN-1のノズル詰まりが生じた場合、当該固化物の表面を観察することにより、そのノズル詰まりがインクの増粘によるものであるのか、それとも別の要因、例えば第1ノズルN-1への異物の混入によるものなのかを判別することができる。したがって、第1ノズルN-1でのインクの固化によるノズル詰まりを高精度に検出することができる。
【0068】
しかも、複数の第1凸部53a-1と複数の第2凸部53b-2との形状および配置密度のうちの一方または両方が互いに異なるので、当該固化物の表面を観察することにより、液体の増粘箇所が第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2のうちの一方または両方であるかを特定することができる。この結果、インクの増粘の進行程度を判定することができる。
【0069】
ここで、第1ノズルN-1でのインクの増粘は、主に、第1ノズルN-1の気液界面でのインク溶媒の蒸発に起因する。このため、第1ノズルN-1内のインクは、第2ノズル部分Pb-2、第1ノズル部分Pa-1の順に増粘する。したがって、第2ノズル部分Pb-2のみでインクの増粘が生じた場合、第1ノズルN-1でのインクの増粘がそれほど進行していないと判定することができる。また、第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2の両方でインクの増粘が生じた場合、第1ノズルN-1でのインクの増粘が比較的進行していると判定することができる。
【0070】
本実施形態では、前述のように、複数の第1凸部53a-1の配置密度と複数の第2凸部53b-2の配置密度とが互いに異なる。このため、インクの増粘に伴う固化物の表面に形成された凹部の配置密度を観察することにより、インクの増粘箇所が第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2のうちの一方または両方であるかを特定することができる。
【0071】
また、前述のように、複数の第1凸部53a-1の配置密度は、複数の第2凸部53b-2の配置密度よりも大きい。このため、第1ノズルN-1からのインクの吐出特性を良好にしつつ、複数の第1凸部53a-1の配置密度と複数の第2凸部53b-2の配置密度とを互いに異ならせることができる。
【0072】
これに対し、複数の第2凸部53b-2の配置密度が複数の第1凸部53a-1の配置密度よりも大きい場合、第2ノズル部分Pb-2の断面積が第1ノズル部分Pa-1の断面積よりも小さいため、第2凸部53b-2の配置密度を大きすぎると、第1ノズルN-1でのインクの流れに悪影響を与える可能性がある。一方、第2凸部53b-2の配置密度を小さくすると、複数の第2凸部53b-2の配置密度が複数の第1凸部53a-1の配置密度よりも大きい場合、第1凸部53a-1の配置密度がさらに小さくなるので、第1ノズルN-1の断面積等の態様によっては、インクの増粘に伴う固化物の表面に増粘箇所を特定し得る形状を転写させることが難しい。
【0073】
さらに、前述のように、複数の第1凸部53a-1の形状と複数の第2凸部53b-2の形状とが互いに異なるとともに、複数の第1凸部53a-1の配置密度と複数の第2凸部53b-2の配置密度とが互いに異なる。このため、複数の第1凸部53a-1の配置密度を複数の第2凸部53b-2の配置密度よりも小さくしても、複数の第1凸部53a-1の突出長さを複数の第2凸部53b-2の突出長さよりも長くすることにより、第1ノズルN-1からのインクの吐出特性を良好にしつつ、増粘に伴う固化物の表面に増粘箇所を特定し得る形状を転写させることができる。
【0074】
また、前述のように、第1ノズル部分Pa-1の側壁における複数の第1凸部53a-1の数と第2ノズル部分Pb-2の側壁における複数の第2凸部53b-2の数とが互いに異なる。このため、インクの増粘に伴う固化物の表面に形成された凹部の数を観察することにより、インクの増粘箇所が第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2のうちの一方または両方であるかを特定することができる。また、複数の第1凸部53a-1の配置密度と複数の第2凸部53b-2の配置密度とを互いに異ならせることが容易であるという利点もある。
【0075】
さらに、前述のように、液体吐出ヘッド50は、第2ノズルN-2と第2個別流路PP-2と共通流路Rとをさらに有する。第2ノズルN-2は、インクを吐出する。第2個別流路PP-2は、第2圧力室C-2を含み、第2ノズルN-2と第2圧力室C-2とを接続する。第2圧力室C-2は、第2ノズルN-2からインクを吐出させるための圧力を発生させる。共通流路Rは、第1個別流路PP-1および第2個別流路PP-2に共通に接続する。第2ノズルN-2は、第3ノズル部分Pa-3と、軸方向で第3ノズル部分Pa-3よりも第2個別流路PP-2から遠い位置に設けられる第4ノズル部分Pb-4と、を有する。ここで、中心軸に直交する断面でみて、第4ノズル部分Pb-4の断面積は、第3ノズル部分Pa-3の断面積よりも小さい。
【0076】
そのうえで、第3ノズル部分Pa-3の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第3凸部53a-3が設けられる。第4ノズル部分Pb-4の側壁には、軸方向に並ぶ複数の第4凸部53b-4が設けられる。複数の第3凸部53a-3と複数の第4凸部53b-4との形状および配置密度のうちの一方または両方が互いに異なる。このため、インクの増粘に伴う固化物の表面に形成された凹部の形状または配置密度を観察することにより、インクの増粘箇所が第3ノズル部分Pa-3および第4ノズル部分Pb-4のうちの一方または両方であるかを特定することができる。
【0077】
また、前述のように、複数の第1凸部53a-1と複数の第2凸部53b-2と複数の第3凸部53a-3と複数の第4凸部53b-4との形状または配置密度が互いに異なる。このため、第1ノズルN-1および第2ノズルN-2のうちノズル詰まりの発生したノズルを特定するとともに、インクの増粘の進行程度を判定することができる。
【0078】
さらに、前述のように、複数の第1凸部53a-1のそれぞれは、第1ノズル部分Pa-1の側壁の全周にわたり設けられる。複数の第2凸部53b-2のそれぞれは、第2ノズル部分Pb-2の側壁の全周にわたり設けられる。このため、第1ノズルN-1の側壁の周方向での任意の位置に対応する固化物を観察しても、インクの増粘箇所が第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2のうちの一方または両方であるかを特定することができる。
【0079】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0080】
図10は、第2実施形態の第1ノズルN-1Aを示す断面図である。本実施形態の第1ノズルN-1Aは、突出長さHa、配置間隔Lbおよび幅Wbのそれぞれが異なること以外は、第1実施形態の第1ノズルN-1と同様に構成される。
【0081】
本実施形態では、突出長さHaおよび突出長さHbが互いに異なる。このため、複数の第1凸部53a-1の形状と複数の第2凸部53b-2の形状とが互いに異なる。図10に示す例では、突出長さHaが突出長さHbよりも長い。また、配置間隔Laおよび配置間隔Lbが互いに等しいとともに、幅Waおよび幅Wbが互いに等しい。なお、配置間隔Laおよび配置間隔Lbが互いに異なってもよいし、幅Waおよび幅Wbが互いに異なってもよい。
【0082】
以上の第2実施形態によっても、インクの固化によるノズル詰まりを高精度に検出するとともに、インクの増粘の進行程度を判定することができる。本実施形態では、前述のように、複数の第1凸部53a-1の形状と複数の第2凸部53b-2の形状とが互いに異なる。このため、インクの増粘に伴う固化物の表面に形成された凹部の形状を観察することにより、インクの増粘箇所が第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2のうちの一方または両方であるかを特定することができる。
【0083】
また、前述のように、複数の第1凸部53a-1の突出長さHaは、複数の第2凸部53b-2の突出長さHbよりも長い。このため、第1ノズルN-1からのインクの吐出特性を良好にしつつ、複数の第1凸部53a-1の形状と複数の第2凸部53b-2の形状とを互いに異ならせることができる。
【0084】
これに対し、複数の第2凸部53b-2の突出長さHbが複数の第1凸部53a-1の突出長さHaよりも長い場合、第2ノズル部分Pb-2の断面積が第1ノズル部分Pa-1の断面積よりも小さいため、第2凸部53b-2の突出長さHbを長くしすぎると、第1ノズルN-1でのインクの流れに悪影響を与える可能性がある。一方、第2凸部53b-2の突出長さHbを短くすると、複数の第2凸部53b-2の突出長さHbが複数の第1凸部53a-1の突出長さHaよりも長い場合、第1凸部53a-1の突出長さHaがさらに小さくなるので、第1ノズルN-1の断面積等の態様によっては、インクの増粘に伴う固化物の表面に増粘箇所を特定し得る形状を転写させることが難しい。
【0085】
3.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0086】
3-1.変形例1
第1凸部53a-1と第2凸部53b-2と第3凸部53a-3と第4凸部53b-4とのそれぞれの断面形状は、前述の各形態に限定されず、任意である。
【0087】
図11は、変形例1の第1ノズルN-1Bを示す断面図である。変形例1の第1ノズルN-1Bは、第2凸部53b-2の断面形状が異なること以外は、第2実施形態の第1ノズルN-1Aと同様に構成される。
【0088】
変形例1では、複数の第1凸部53a-1間に形成される凹部の断面形状がU字状をなすのに対し、複数の第2凸部53b-2間に形成される凹部の断面形状がV字状をなす。このため、複数の第1凸部53a-1の形状と複数の第2凸部53b-2の形状とが互いに異なる。図10に示す例では、突出長さHaおよび突出長さHbが互いに等しい。また、配置間隔Laおよび配置間隔Lbが互いに等しい。幅Waおよび幅Wbが互いに等しい。なお、突出長さHaおよび突出長さHbが互いに異なってもよいし、配置間隔Laおよび配置間隔Lbが互いに異なってもよいし、幅Waおよび幅Wbが互いに異なってもよい。
【0089】
以上の変形例1によっても、インクの固化によるノズル詰まりを高精度に検出するとともに、インクの増粘の進行程度を判定することができる。
【0090】
3-2.変形例2
前述の各形態では、ノズルNが第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2の2つの部分で構成されるか、ノズルNが第3ノズル部分Pa-3および第4ノズル部分Pb-4の2つの部分で構成される態様が例示されるが、この態様に限定されない。
【0091】
ここで、第1ノズル部分Pa-1および第2ノズル部分Pb-2を含むか、または、第3ノズル部分Pa-3および第4ノズル部分Pb-4を含んでいれば、ノズルNが軸方向での位置の異なる3つ以上の部分で構成されてもよい。例えば、第1ノズル部分Pa-1または第3ノズル部分Pa-3に対してZ1方向の位置に第1ノズル部分Pa-1または第3ノズル部分Pa-3と異なる断面積の部分がノズルNに設けられてもよい。
【0092】
3-3.変形例3
前述の各形態では、第1ノズルおよび第2ノズルの2種のノズルNが例示されるが、液体吐出ヘッドの有する複数のノズルが3種以上のノズルで構成されてもよい。
【0093】
3-4.変形例4
前述の各形態では、同一ヘッドで共通流路を共有するノズルとして第1ノズルおよび第2ノズルを設ける態様が例示されるが、この態様に限定されず、第1ノズルおよび第2ノズルが互いに異なるヘッドに設けられてもよいし、同一ヘッドに設けられても第1ノズルおよび第2ノズルが共通流路を共有しなくてもよい。
【0094】
3-5.変形例5
前述の各形態では、液体吐出ヘッド50を搭載するキャリッジ41を往復させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示するが、複数のノズルNが媒体Mの全幅にわたり分布するライン方式の液体吐出装置にも本開示を適用することが可能である。
【0095】
3-6.変形例6
前述の各形態で例示する液体吐出装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本開示の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0096】
10…液体容器、20…制御ユニット、30…搬送機構、40…移動機構、41…キャリッジ、42…搬送ベルト、50…液体吐出ヘッド、51…流路基板、52…圧力室基板、52a…孔、53…ノズル基板、53a…第1凸部、53a-1…第1凸部、53a-3…第3凸部、53b…第2凸部、53b-2…第2凸部、53b-4…第4凸部、54…吸振体、55…振動板、55a…弾性膜、55b…絶縁膜、56…圧電素子、56a…第1電極、56b…圧電体、56b1…貫通孔、56c…第2電極、57…封止板、58…ケース、59…配線基板、60…駆動回路、100…液体吐出装置、Az…中心軸、C…圧力室、C-1…第1圧力室、C-2…第2圧力室、Dc…深さ、Dd…深さ、IH…導入口、La…配置間隔、Lb…配置間隔、Lc…配置間隔、Ld…配置間隔、M…媒体、N…ノズル、N-1…第1ノズル、N-1A…第1ノズル、N-1B…第1ノズル、N-2…第2ノズル、N-X…ノズル、Na…連通流路、PP…個別流路、PP-1…第1個別流路、PP-2…第2個別流路、Pa…第1ノズル部分、Pa-1…第1ノズル部分、Pa-3…第3ノズル部分、Pb…第2ノズル部分、Pb-2…第2ノズル部分、Pb-4…第4ノズル部分、R…共通流路、R1…開口部、R2…収容部、Ra…供給流路、Sa…固化物、Sa-X…固化物、Sa1-X…固化物、Sb…固化物、Sb-X…固化物、Sb1-X…固化物、Wa…幅、Wb…幅、Wc…幅、Wd…幅。
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