(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097473
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】鋼管杭打設用治具及び鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭
(51)【国際特許分類】
E02D 7/18 20060101AFI20240711BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20240711BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
E02D7/18
E02D7/20
E02D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000943
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健治
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041CB06
2D041DB02
2D050AA06
2D050CB21
2D050CB31
2D050EE03
(57)【要約】
【課題】鋼管杭を地中に振動させながら強制的に圧入する杭打機による鋼管杭の打設時に、鋼管杭の上端部に取り付けられる鋼管杭打設用治具及び鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭を提供する。
【解決手段】鋼管杭1と鋼管杭1の上端部に取り付けられた鋼管杭打設用治具2とから構成する。鋼管杭打設用治具2は、鋼管杭1の上端部に外接するキャップ状の治具本体3とキャップ状の治具本体3の上端部に取り付けられ、バイブロハンマBが備えるチャックCが挟持するチャッキングプレート4と、キャップ状の治具本体3の周壁部を鋼管杭1の周壁部に固定する複数の固定ボルト5を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打機による鋼管杭の打設時に、前記鋼管杭の上端部に取り付けられる鋼管杭打設用治具であって、前記鋼管杭の上端部に外接するキャップ状の治具本体と、前記治具本体の上端部に設けられ、前記杭打機が備えるチャックが掴むチャッキング部と、前記治具本体の周壁部を前記鋼管杭の周壁部に固定する複数の固定ボルトを備えていることを特徴とする鋼管杭打設用治具。
【請求項2】
請求項1記載の鋼管杭打設用治具において、前記チャッキング部は、前記鋼管杭の中心軸に対して偏心する位置に前記鋼管杭の中心を通る線と直交する線と平行に設けられていることを特徴とする鋼管杭打設用治具。
【請求項3】
鋼管杭と前記鋼管の上端部に取り付けられた鋼管杭打設用治具とからなる鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭であって、前記鋼管杭打設用治具は、前記鋼管杭の上端部に外接するキャップ状の治具本体と前記治具本体の上端部に設けられ、杭打機が備えるチャックが掴むチャッキング部と、前記キャップ状の治具本体の周壁部を前記鋼管杭の周壁部に固定する複数の固定ボルトを備えていることを特徴とする鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭。
【請求項4】
杭打機による鋼管杭の打設時に、前記鋼管杭の上端部に取り付けられる鋼管杭打設用治具であって、前記鋼管杭の上端部に
内接する断面略十字形の治具本体と、前記治具本体の上端部に設けられ、前記杭打機が備えるチャックが掴むチャッキング部を有し、前記治具本体は前記鋼管杭の内周壁に溶接によって固着されていることを特徴とする鋼管杭打設用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機による鋼管杭の打設時に、前記鋼管杭の上端部に取り付けられる鋼管杭打設用治具および当該鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭に関し、特に打設時に鋼管杭に振動を付与する振動機能と鋼管杭を地中に押し込む圧入機能を備えた杭打機による鋼管杭の打設に利用されるものである。
【背景技術】
【0002】
バイブロハンマを用いて鋼管杭を地中に打設する際、鋼管杭の上端部にバイブロハンマが備えるチャックが掴むチャッキングプレートまたはチャック治具が取り付けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、鋼管杭の上端部にチャッキングプレートが溶接固定されたチャッキングプレート付き鋼管杭(
図3参照)と、チャッキングプレート溶接時の残留応力による歪みの問題を解消したチャッキングプレート付き鋼管杭の製造方法の発明(
図1(A)-(D)参照)が記載されている。
【0004】
後者の製造方法の発明について簡単に説明すると、鋼管杭の端部内側にチャッキングプレートをその両端を前記鋼管の端部内周壁に溶接して取り付けた後、前記チャッキングプレートを両端溶接部以外の部分で一旦切断して前記鋼管杭端部の真円矯正を行い、しかる後、前記チャッキングプレートの切断部を溶接する。
【0005】
また、特許文献2には、簡易な構造により製造が容易で、コストの低減化が可能とされる鋼管杭のチャック装置の発明が開示されている。簡単に説明すると、鋼管杭のチャック装置は、天板に透孔を有する受筒と、天板の透孔を挿通して上下動自在に設けられ、下部に下方に向けてすぼまる錐体部を有する拡開部材と、拡開部材のテーパー面と受筒内壁面との間に、受筒の径方向外方に移動可能に配置され、外側面が、チャックすべき鋼管杭の内壁面に食い込み可能な凹凸面に形成された複数のクサビ部材と、拡開部材の下部に設けられ、クサビ部を下側から保持する保持部材と、各クサビ部材を吊り下げ状態に保持すると共に、クサビ部材の受筒の径方向への移動をガイドするガイド部材と、ガイド部材と受筒の天板下面との間に配設された緩衝部材とを具備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07-133612号公報
【特許文献2】特開2019-002139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のチャッキングプレート付き鋼管杭(
図3参照)は、チャッキングプレート溶接時の残留応力によって鋼管杭の上端部に発生する歪みを矯正する必要があった。
【0008】
また、前記歪みの問題を解消したチャッキングプレート付き鋼管杭の製造方法の発明は、チャッキングプレートの溶接と切断工程があることから溶接技術者でなければ製造することがでず、また、歪みを完全に矯正できるか否かに問題があった。
【0009】
一方、特許文献2の鋼管杭のチャック装置は、拡開部材が下降することにより、くさび部材が受筒の径方向に移動してくさび部材表面の凹凸がチャックすべき鋼管杭の内周面に食い込むことにより鋼管杭の上端部に固定される構成になっているが、特に鋼管杭を地中に振動させながら強制的に圧入する杭打機による打設では、打設時の振動によって緩み簡単に離脱してしまうおそれがある。また、部品数が多く、各部材が設計通りに必ずしも作動しないことが考えられる。
【0010】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、構造が簡単で容易に製作することができ、また、簡単に取付けることができ、また特に鋼管杭を地中に振動させながら強制的に圧入する杭打機による打設であっても、簡単に離脱することがない鋼管杭打設用治具および鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭を提供することを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、杭打機による鋼管杭の打設時に、前記鋼管杭の上端部に取り付けられる鋼管杭打設用治具であって、前記鋼管杭の上端部に外接するキャップ状の治具本体と、前記治具本体の上端部に設けられ、前記杭打機が備えるチャックが掴むチャッキング部と、前記治具本体の周壁部を前記鋼管杭の周壁部に固定する複数の固定ボルトを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
前記治具本体は、前記鋼管杭の上端部に内接する平面視略十字形断面形状とすることも可能であり、この場合、治具本体は十字形断面形に設置された各フランジの先端部を前記鋼管杭の内周壁に溶接することにより前記鋼管杭の上端部に固定することができる。
【0013】
前記固定ボルトは、前記鋼管杭の上端周壁部に形成されたねじ孔にねじ込むことにより前記治具本体を前記鋼管杭の上端部に確実に固定することができ、杭打設時の振動による固定ボルトの緩みを防止することができる。
【0014】
また、前記治具本体は前記鋼管杭の上端部に外接するキャップ状に形成されていることで、たとえ固定ボルトが緩んだとしても鋼管杭の頭部から離脱することはない。
【0015】
また、治具本体が鋼管杭の上端部に内接する断面略十字形状に形成されていることで、チャッキング部溶接時の残留応力によって鋼管杭の上端部歪みが発生するのを防止することができる。
【0016】
なお、前記鋼管杭の上端周壁部に単にボルト孔(貫通孔)を形成し、その鋼管杭の内側部に固定ナットを取り付け、当該固定ナットに前記固定ボルトをねじ込むようにしてもよい。
【0017】
チャッキング部は鋳造などによって治具本体と一体に形成することができ、また治具本体の上端部に鋼板プレートを溶接してチャッキング部としてもよい。
【0018】
前記チャッキングプレートは、前記鋼管杭の中心軸に対して偏心する位置に前記鋼管杭の中心を通る軸線と直交する線と平行に取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の鋼管杭打設用治具は、鋼管杭の上端部に複数の固定ボルトによって簡単に取付け固定することができ、また、繰り返して用いることができるためきわめて経済的である。
【0020】
また、鋼管杭の上端部に外接するキャップ状に形成され、かつ前記鋼管杭の上端部に形成されたねじ孔にねじ込まれる固定ボルトにより鋼管杭の上端部に固定されているため、鋼管杭の上端部に簡単に固定することができ、また、打設時の激しい振動によって固定ボルトが緩んだとしても鋼管の上端部から簡単に離脱することはない等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】鋼管杭に振動を付与する振動機能と鋼管杭を地中に押し込む圧入機能を備えた杭打機による鋼管杭の打設方法を示す鋼管杭打設用治具および杭打機の側面図である。
【
図2】図(a),(b)は鋼管杭打設用治具および鋼管杭の斜視図である。
【
図3】本発明の他の実施形態を図示したものであり、図(a)は鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭、図(b),(c)はその拡大平面図、図(d)は杭頭部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1と
図2は、本発明の一実施形態を図示したものであり、
図1は、鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭が、鋼管杭に振動を付与する振動機能と鋼管杭を地中に押し込む圧入機能を備えた杭打機によって打設される方法を示す側面図、
図2(a),(b)は鋼管杭の上端部に取り付けられる鋼管杭打設用治具および鋼管杭上端部の斜視図である。
【0023】
図において、鋼管杭1の上端部に鋼管杭打設用治具2が取り付けられている。鋼管杭打設用治具2は、鋼管杭1の上端部に外接するキャップ状の治具本体3と、治具本体3の上端部に形成され、杭打機AのバイブロハンマBが備えるチャックCが挟持するチャッキング部(以下「チャッキングプレート」)4と、治具本体3の周壁を鋼管杭1の上端部周壁に固定する複数の固定ボルト5を備えている。
【0024】
治具本体3は、鋼管杭1上端の外周壁面に沿って周方向に連続する円筒状の円筒部3aと円筒部3aの上端部を塞ぐ天板部3bとを有し、鋼管1の上端部に嵌合可能な、真下に開口するキャップ状に形成されている。
【0025】
また、円筒部3aの周壁部に固定ボルト5が貫通する複数のボルト孔3cが円筒部3aの周方向に等間隔に形成されている。
【0026】
チャッキングプレート4は、天板部3b上端部の、鋼管杭1の中心軸線と直交する水平線上に取り付けられている。また、チャッキングプレート4は、厚での鋼板プレートを天板部3bの上端部に溶接することにより治具本体3と一体に形成されている。
【0027】
なお、チャッキングプレート4は、天板部3b上端部の、鋼管杭1の中心軸線Lと直交する水平線L
1に対して偏心する位置に、水平線L
1と平行に取り付けられてもよい(
図2(b)参照)。
【0028】
固定ボルト5は、円筒部3aの各ボルト孔3cより鋼管杭1上端の周壁部に形成された各ねじ孔1aにねじ込まれている。
【0029】
なお、ねじ孔1aに代えてを固定ボルト5が貫通可能なボルト孔とし、当該各ボルト孔の内側に固定ボルト5がねじ込まれる固定ナット(図省略)が取り付けられてもよい。
【0030】
このような構成において、鋼管杭打設用治具2は鋼管杭1の上端部に脱着可能に取り付けられている。また、鋼管杭打設用治具2を備えた鋼管杭は、杭打機AのリーダDに沿って立て付けられ、そして、バイブロハンマBによって振動を付与されながら、リーダDを介し押込み用油圧シリンダーEによって地中に強制的に圧入される。
【0031】
また、地中に圧入された鋼管杭1の上端部に新たに鋼管杭を継ぐ際は、固定ボルト5を抜き取って鋼管杭打設用治具2を取り外す。
【0032】
図3(a)-(d)は、本発明の他の実施形態を図示したものであり、
図3(a)は、鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭の側面図、
図3(b),(c)はその拡大平面図、そして、
図3(d)は鋼管杭打設用治具を備えた鋼管杭の頭部拡大縦断面図である。
【0033】
図において、鋼管杭打設用治具6は鋼管杭1の上端部に内接する治具本体7と治具本体7の上端部に形成され、バイブロハンマBのチャックCが挟持するチャッキング部(以下「チャッキングプレート」)8を備えている。
【0034】
治具本体7は、鋼管杭1の上端部内周に内接する断面略十字形断面形に形成され、かつ治具本体7を形成する各フランジ7aと7bの先端部が鋼管杭1の内周壁にそれぞれ内接している。
【0035】
また、各フランジ7aと7bの先端部は鋼管杭1の内周壁に溶接によってそれぞれ固定されている。また、フランジ7aの上端側が上方に延長することによりバイブロハンマBが備えるチャックCがチャックするチャッキングプレート8を形成している。
【0036】
なお、図示する治具本体7は、両側縁端部が鋼管杭1の内周壁に内接する一枚の主プレート(フランジ7a)と当該主プレート(フランジ7a)の両側に対称に取り付けられ、先端部が鋼管杭1の内周壁に内接する一対の補強プレート(フランジ7b)とから断面略十字形状に形成されている。また、主プレートと補強プレートの先端部は鋼管杭1の内周壁に溶接されている。また、補強プレートは主プレートの両側に放射状に取り付けられてもよい(
図3(c)参照)。
【0037】
また、主プレート7aの上端側部が上方に延長することによりチャッキングプレート8を形成している。
【0038】
このような構成において、鋼管杭打設用治具2を備えた鋼管杭1は、杭打機Aが備えるリーダDに沿って立て付けられ、バイブロハンマBによって振動を付与されながら、リーダDを介し押込み用油圧シリンダーEによって地中に強制的に押し込まれる。
【0039】
また、地中に押し込まれた鋼管杭1の上端部に新たに鋼管杭を継ぐ際は、鋼管杭1の上端部分を鋼管杭打設用治具6の下端部分において軸直角方向に水平に切断して除去する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、鋼管杭の上端部に鋼管杭打設用治具を容易に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 鋼管杭
1a ねじ孔
2 鋼管杭打設用治具
3 キャップ状の治具本体
3a 円筒部
3b 天板部
3c ボルト孔
4 チャッキングプレート(チャッキング部)
5 固定ボルト
6 鋼管杭打設用治具
7 治具本体
7a フランジ
7b フランジ
8 チャッキングプレート(チャッキング部)
A 杭打機
B バイブロハンマ
C チャック
D リーダ
E 押込み用シリンダー