(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097474
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】鋼杭打設用治具
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000944
(22)【出願日】2023-01-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日:令和 4年10月29日 公開場所:「虎ノ門・麻布台計画B-1計画」建築工事現場(東京都港区麻布台1丁目)
(71)【出願人】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正貴
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA12
2D050AA13
2D050BB01
2D050CB22
2D050CB31
2D050EE04
2D050EE14
(57)【要約】
【課題】鋼杭を地中に振動させながら強制的に圧入する杭打機による鋼杭の打設時に、鋼杭の上端部に取り付けて鋼杭上端部のチャックによる損傷を防止できる鋼杭打設用治具を提供する。
【解決手段】鋼杭イの上端部に設置され、杭打機Aが備えるチャックCが掴む治具本体2と、治具本体2と鋼杭イの側部に添え付けられ、治具本体2を鋼杭イの上端部に連結する連結板3,3と、連結板3,3を治具本体2と鋼杭イにそれぞれ連結する複数の連結ボルト4とから構成する。治具本体2の、チャックCが掴むチャッキング部5にチャッキング用補強板6を取り付ける。治具本体2に吊り孔9を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打機による鋼杭の打設時に、前記鋼杭の上端部に取り付けられる鋼杭打設用治具であって、前記鋼杭の上端部に設置され、前記杭打機が備えるチャックが掴む治具本体と、前記治具本体と前記鋼杭間の側部に添え付けられ、前記治具本体を前記鋼杭の上端部に連結する連結部材と、前記連結部材を前記治具本体と前記鋼杭にそれぞれ連結する複数の連結ボルトを備えていることを特徴とする鋼杭打設用治具。
【請求項2】
請求項1記載の鋼杭打設用治具において、前記治具本体の、前記チャックが掴む位置にチャッキング用補強部材が取り付けられていることを特徴とする鋼杭打設用治具。
【請求項3】
請求項1または2記載の鋼杭打設用治具において、前記治具本体に吊り孔が設けられていることを特徴とする鋼杭打設用治具。
【請求項4】
請求項1記載の鋼杭打設用治具において、前記治具本体は、前記鋼杭の上端部が連結される鋼杭連結部と、当該鋼杭連結部の上側に形成され、前記杭打機が備えるチャックが掴むチャッキング部を備えた部分とから構成され、かつ前記鋼杭連結部と前記チャッキング部を有する部分は脱着可能に接合されていることを特徴とする鋼杭打設用治具。
【請求項5】
請求項4記載の鋼杭打設用治具において、前記治具本体に吊り孔が設けられていることを特徴とする鋼杭打設用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイブロハンマを用いてH形鋼からなる鋼杭や鋼矢板(以下「鋼杭」)を地中に打設する際に、前記鋼杭の上端部に取り付けられる鋼杭打設用治具に関し、特に打設時に鋼杭に振動を付与する振動機能と鋼杭を地中に強制的に押し込む押込み機能を備えた杭打機による鋼杭の施工に用いられる。
【背景技術】
【0002】
バイブロハンマを用いて鋼杭を地中に打設する方法として、通常、バイブロハンマが備えるチャックによって鋼杭のウェブ上端部を掴み、バイブロハンマによって鋼杭に振動を与えながら地中に強制的に押し込む方法が一般に知られている。
【0003】
また、例えば、特許文献1には鋼矢板を圧入施工および圧入・引抜き施工する工法であって、鋼矢板の頭部を変形させることなく、簡単にチャックし固定して圧入および圧入・引抜き施工のできる鋼矢板の圧入および圧入・引抜き施工兼用補助具の発明が開示されている。
【0004】
簡単に説明すると、鋼矢板の変形防止兼用チャッキングプレートと、鋼矢板頭部断面に接触するように設けられた耐圧プレートと、該耐圧プレート上部に配設された押し込み用チャッキングプレートとから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06-74636号公報
【特許文献2】特開2000-104251号公報
【特許文献3】実開平07-23029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、鋼杭の上端部には通常、鋼杭を吊り上げるための吊り孔と、杭どうしを接合するボルト孔が形成されているため、特に打設時に鋼杭に振動を付与する振動機能と鋼杭を地中に強制的に押し込む押込み機能を備えた杭打機による施工では、鋼杭の上端部をバイブロハンマが備えるチャックによって直接掴み、振動を与えることにより鋼杭頭部が損傷してしまうという課題があった。
【0007】
また、吊り孔を設けることによる鋼杭上端部の強度低下を招くという課題もあった。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、鋼杭頭部を損傷させることなく、地中に確実に打設できる鋼杭打設用治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、杭打機によって鋼杭を打設する際に、前記鋼杭の上端部に取り付けられる鋼杭打設用治具であって、前記鋼杭の上端部に設置され、前記杭打機が備えるチャックが掴む治具本体と、前記治具本体と前記鋼杭の側部に添え付けられ、前記治具本体を前記鋼杭の上端部に連結する連結部材と、前記連結部材を前記治具本体と前記鋼杭にそれぞれ連結する複数の連結ボルトを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
治具本体の形状は、特に限定されるものではないが、断面略H形状とすることにより市販のH形鋼材より容易に製作することができて好ましい。
【0011】
また、前記治具本体のチャッキング部(前記チャックが掴むウェブ上端部分)にチャッキング用補強部材を取り付けることにより、前記治具本体の消耗を回避することができる。チャッキング補強部材としては鋼板でよく、溶接またはボルト止めによって取り付けることができる。
【0012】
また、治具本体に前記鋼杭を吊るための吊り孔を設けることにより、鋼杭頭部に吊り孔を設けることによる鋼杭頭部の強度低下を防止することがでる。
【0013】
また、前記治具本体を前記鋼杭の上端部が連結される鋼杭連結部と、当該鋼杭連結部の上側に形成され、前記杭打機が備えるチャックが掴むチャッキング部を備えた部分とから構成し、かつ前記鋼杭連結部と前記チャッキング部を有する部分を接合ボルト等によって脱着可能に接合することにより、鋼杭の断面サイズに合わせて鋼杭連結部を付け替えることにより一台の鋼杭打設用治具で径の異なる複数種類の鋼杭に自由に対応することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鋼管杭打設用治具を用いることにより、特に打設時に鋼杭に振動を付与する振動機能と鋼杭を地中に強制的に押し込む押込み機能を備えた杭打機によって施工する際に、鋼杭の上端部がバイブロハンマのチャックによって損傷するのを防止することができる。
【0015】
また、杭頭部に吊り孔を設けることによる鋼杭上端部の強度低下を防止することができる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態を図示したものであって、H形鋼からなる鋼杭と、鋼杭の上端部に取り付けられる鋼杭打設用治具であり、図(a)は治具取付け前の正面図、図(b)は治具取付け後の正面図、図(c)は図(b)におけるX-X線断面図である。
【
図2】図(a),(b),(c)は鋼杭打設用治具の他の実施形態を示す正面図である。
【
図3】鋼杭打設用治具が取り付けられた鋼杭が、杭打機によって打設される方法を示す側面図である。
【
図4】鋼杭打設用治具が取り付けられた鋼杭頭部を示す側面図である。
【
図5】図(a),(b)は鋼杭打設方法の従来例を示す鋼杭頭部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1-
図4は、本発明の一実施形態を図示したものであり、
図1(a),(b),(c)は、H形鋼からなる鋼杭(以下「鋼杭」)と鋼杭の上端部に取り付けられる鋼杭打設用治具であって、図(a)は治具取付け前の正面図、図(b)は治具取付け後の正面図、そして
図1(c)は
図1(b)におけるX-X線断面図である。
【0018】
また、
図2(a),(b),(c)は鋼杭打設用治具の他の実施形態を示す正面図、
図3,4は、鋼杭打設用治具が取り付けられた鋼杭が、鋼杭に振動を付与する振動機能と鋼杭を地中に押し込む押込み機能を備えた杭打機によって打設される方法を図示したものであり、
図3はその全体を示す側面図、
図4はその要部を示す側面図である。
【0019】
図において、鋼杭イの上端部に鋼杭打設用治具1が取り付けられている。鋼杭打設用治具1は、鋼杭イの上端部に設置された治具本体2と、治具本体2を鋼杭イの上端部に連結する複数の連結部材(以下「連結板」)3,3および複数の連結ボルト4とから構成されている。
【0020】
治具本体2は、鋼杭イとほぼ同一径のH形断面形に形成され、ウェブ2aの上端部が、杭打機AのバイブロハンマBが備えるチャックCが掴むチャッキング部5になっている。
【0021】
チャッキング部5の両側部、すなわちウェブ2aの上端両側部にチャッキング用補強板6,6が添え付けられている。チャッキング用補強板6,6はウェブ2aの両側部に溶接または取付けボルトによって取り付けられ、特にボルト付けの補強板は必要に応じて取り換えることができる。
【0022】
また、ウェブ2aおよびフランジ2bの中間部より下方部分に複数の連結孔7が上下・横方向に等間隔に形成され、鋼杭イの上端部を連結する鋼杭連結部8になっている。
【0023】
さらに、チャッキング5と鋼杭連結部8との間に複数の吊り孔9が形成され、治具本体2を鋼杭イの上端部に吊って据え付ける際等に吊りワイヤー(図省略)の結束部として用いられる。
【0024】
連結板3,3は、縦長の長方形板状に形成され、鋼杭連結部8の両側部、すなわちウェブ2aおよびフランジ2bの両側部と鋼杭イのウェブロおよびフランジハの上端両側部にそれぞれ双方を跨いで添え付けられている。
【0025】
また、連結板3,3の上端側部に複数の連結孔(図省略)が治具本体2のウェブ2aおよびフランジ2bに形成された各連結孔7と対応して形成されている。そして、互いに対応する各連結孔間に連結ボルト4が締め付けられることにより、連結板3,3の上端側部が治具本体2の鋼杭連結部8の両側部に脱着可能に固定されている。
【0026】
また、連結板3,3の下端側部に複数の連結孔(図省略)が鋼杭イのウェブロおよびフランジハに形成された各連結孔ニに対応して形成されている。
【0027】
そして、互いに対応する各連結孔間に連結ボルト4が締め付けられることにより、連結板3,3の下端側部が鋼杭イのウェブロおよびフランジハの上端両側部に固定されている(
図1(a),(b)、
図4参照)。
【0028】
なお、鋼杭イのウェブロおよびフランジハの上端部に形成された連結孔ニは、軸方向に連続して打設される鋼杭イどうしを連結するために形成された連結孔を利用することができる。
【0029】
このような構成により鋼杭打設用治具1は、鋼杭イの上端部に脱着可能に取り付けられている(
図1,4参照)。また、鋼杭打設用治具1が取り付けられた鋼杭イは、杭打機AのリーダDに沿って立て付けられ、そして、バイブロハンマBによって振動を付与されながら、リーダDを介し押込み用油圧シリンダーEによって地中に強制的に圧入される(
図3参照)。
【0030】
図2(a),(b),(c)は、鋼杭打設用治具の他の実施形態を図示したものであり、
図2(a)に図示する鋼杭打設用治具は、鋼杭イより断面サイズの小さい鋼杭を打設するのに用いられる。具体的に説明すると、治具本体2のウェブ2aが正面視ほぼ羽子板形状に形成され、またウェブ2aの両側縁端部にフランジ2b,2bがウェブ2aの羽子板形状に沿って形成され、小幅をなす下方部分が鋼杭連結部8になっている。
【0031】
なお、製作に際しては、鋼杭連結部8とチャッキング部5を有する上側部分を別々に形成し、両者を溶接することにより容易に製作することができる。
【0032】
図2(b)に図示する鋼杭打設用治具は、鋼杭イより断面サイズの小さい鋼杭を打設するのに用いられる。具体的に説明すると、チャッキング部5の両側に位置するフランジ2b,2bの両側縁端部にバイブロハンマBのチャックCがぶつからないように切欠き部2cが形成されている。
【0033】
図2(c)に図示する鋼杭打設用治具は、一種類の鋼杭打設用治具によって断面サイズの異なる複数種類の鋼杭に自由に対応できるようにしたものである。
【0034】
具体的に説明すると、チャッキング部5を有する上側部分と鋼杭連結部8が別々に形成され、かつ両者が複数の接合ボルト9によって脱着可能に接合されている。
【0035】
なお、接合ボルト10は、鋼杭連結部8とチャッキング部5を有する上側部分の対向面に取り付けられた接合フランジ2cと接合フランジ8a間に締め付けられている。
【0036】
そして、鋼杭イの断面サイズに合わせて鋼杭連結部8を付け替えることにより一台の鋼杭打設用治具で径の異なる複数種類の鋼杭イに自由に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、鋼杭の上端部に鋼杭打設用治具を容易に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 鋼杭打設用治具
2 治具本位
2a ウェブ
2b フランジ
2c 接合フランジ
3連結板(連結部材)
4 連結ボルト
5 チャッキング部
6 チャッキング用補強板
7 連結孔
8 鋼杭連結部
8a 接合フランジ
9 吊り孔
10 接合ボルト
A 杭打機
B バイブロハンマ
C チャック
D リーダ
E 押込み用シリンダー
イ 鋼杭
ロ ウェブ
ハ フランジ
ニ 連結孔