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特開2024-97476材料試験機、及び材料試験機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097476
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】材料試験機、及び材料試験機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/02 20060101AFI20240711BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G01N3/02 Z
G01N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000949
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 博志
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB01
2G061DA07
(57)【要約】
【課題】材料試験の開始においてユーザの負担を軽減できるようにする。
【解決手段】材料試験機は、試験機本体と、前記試験機本体のユーザが安全な状態か否かを検知する検知部と、前記検知部の検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記試験機本体により材料試験を行う試験運転を開始する運転制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験機本体と、
前記試験機本体のユーザが安全な状態か否かを検知する検知部と、
前記検知部の検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記試験機本体により材料試験を行う試験運転を開始する運転制御部と、を備える、
材料試験機。
【請求項2】
前記試験機本体は、供試体に負荷を付与するクロスヘッドを備え、
前記運転制御部は、
前記試験運転の終了後、前記検知部の検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記クロスヘッドを、前記試験運転の開始時の位置である原点位置に戻すリターン運転を開始する、
請求項1に記載の材料試験機。
【請求項3】
前記試験運転における試験条件を示す試験条件データを記憶する記憶部を備え、
前記試験条件データには、材料試験を行う前記供試体の数が記録されており、
前記運転制御部は、
前記試験条件データに記録された前記供試体の数分、前記試験運転と前記リターン運転とを繰り返す、
請求項2に記載の材料試験機。
【請求項4】
前記試験運転における試験条件を示す試験条件データを記憶する記憶部と、
前記ユーザからの指示を受け付ける受付部と、を備え、
前記試験条件データには、前記原点位置が記録されており、
前記運転制御部は、
前記原点位置を指定する指定指示を前記受付部が受け付けていない場合、前記リターン運転において、前記クロスヘッドを、前記記憶部が記憶する前記試験条件データに記録された前記原点位置に戻し、
前記指定指示を前記受付部が受け付けている場合、前記リターン運転において、前記クロスヘッドを、前記受付部が受け付けた前記指定指示が示す前記原点位置に戻す、
請求項2又は3に記載の材料試験機。
【請求項5】
前記ユーザからの指示を受け付ける受付部を備え、
前記材料試験機の動作状態を第1状態又は第2状態に切り替え可能であり、
前記運転制御部は、
前記材料試験機の動作状態が前記第1状態である場合において、前記検知部の検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記試験運転を開始し、
前記材料試験機の動作状態が前記第2状態である場合において、前記試験運転の開始指示を前記受付部が受け付け、且つ、前記試験運転の開始を許可する許可指示を前記受付部が受け付けた場合、前記試験運転を開始する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の材料試験機。
【請求項6】
試験空間の前面に配された飛散防止カバーを備え、
前記検知部は、
前記飛散防止カバーが、前記試験空間の前面を閉塞している閉状態である場合、前記ユーザが安全な状態であると検知し、
前記飛散防止カバーが、前記試験空間の前面を閉塞していない開状態である場合、前記ユーザが安全な状態でないと検知する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の材料試験機。
【請求項7】
試験空間を含む所定空間への前記ユーザの身体の進入を検出するライトカーテンを備え、
前記検知部は、
前記ライトカーテンが前記所定空間への前記ユーザの身体の進入を検出していない場合、前記ユーザが安全な状態であると検知し、
前記ライトカーテンが前記所定空間への前記ユーザの身体の進入を検出している場合、前記ユーザが安全な状態でないと検知する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の材料試験機。
【請求項8】
試験機本体を備える材料試験機の制御方法であって、
前記試験機本体のユーザが安全な状態か否かを検知し、
検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記試験機本体により材料試験を行う試験運転を開始する、
材料試験機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機、及び材料試験機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが安全な状態において材料試験を行う材料試験機が知られている。例えば、特許文献1には、供試体の飛散を防止する飛散防止カバーを備えた材料試験機が開示されている。特許文献1が開示する材料試験機においては、飛散防止カバーが試験空間の前面を閉塞している場合に材料試験が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-100751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のような従来の材料試験機では、ユーザが安全な状態であっても、材料試験の開始の際に、試験開始の指示や試験開始を許可する指示などをユーザが材料試験機に対して行う必要があり、ユーザに負担がかかっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、材料試験の開始においてユーザの負担を軽減できる材料試験機、及び材料試験機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、試験機本体と、前記試験機本体のユーザが安全な状態か否かを検知する検知部と、前記検知部の検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記試験機本体により材料試験を行う試験運転を開始する運転制御部と、を備える、材料試験機に関する。
【0007】
本発明の第2の態様は、試験機本体を備える材料試験機の制御方法であって、前記試験機本体のユーザが安全な状態か否かを検知し、検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記試験機本体により材料試験を行う試験運転を開始する、材料試験機の制御方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、ユーザが試験開始の指示などを行わなくても、ユーザが安全な状態であると検知されたことを契機に、試験運転を開始できる。そのため、材料試験の開始においてユーザの負担を軽減できる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】引張試験機の構成の一例を示す図である。
図2】前方からみた引張試験機を示す平面図である。
図3】右側方からみた引張試験機を示す平面図である。
図4】スイッチパネルの構成の一例を示す図である。
図5】引張試験機の動作状態の遷移図である。
図6】引張試験機の動作を示すフローチャートである。
図7】引張試験機の動作を示すフローチャートである。
図8】引張試験機の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.引張試験機の構成]
図1は、本実施形態に係わる引張試験機1の構成の一例を示す図である。
本実施形態に係る引張試験機1は、試験片TPに試験力を与えて、試験片TPの引張強度や、試験片TPの破断強度などの性質を測定する材料試験を行う。なお、本実施形態の試験力は、引張力である。
引張試験機1は、「材料試験機」の一例に対応する。試験片TPは、「供試体」の一例に対応する。試験力は、「負荷」の一例に対応する。
【0012】
引張試験機1は、試験片TPに試験力を付与して引張試験を行う引張試験機本体2と、引張試験機本体2を制御する制御装置3と、を備える。
引張試験機本体2は、「試験機本体」の一例に対応する。
【0013】
図1図3の各々には、引張試験機本体2の構造を説明するために、互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸を図示している。Z軸は、鉛直方向に平行であり、X軸、及びY軸は、水平方向に平行である。X軸は、設置状態における引張試験機本体2の左右方向に平行であり、Y軸は、設置状態における引張試験機本体2の前後方向に平行である。X軸の正方向は、右方向を示し、Y軸の正方向は、前方向を示し、Z軸の正方向は、上方向を示す。
【0014】
[1-1.引張試験機本体の構成]
まず、図2及び図3を参照して、引張試験機本体2の構造について説明する。
図2は、前方からみた引張試験機1の平面図である。図3は、右側方からみた引張試験機1の平面図である。
【0015】
図2に示すように、引張試験機本体2は、機柱11と、機柱12と、天板13とで構成される門型の構造体を備える。機柱11及び機柱12の各々は、床面等の基礎に立設される。機柱11及び機柱12の各々は、引張試験機本体2の設置状態において、Z軸方向、すなわち、上下方向に延びる。機柱11及び機柱12の各々の上端には、天板13の両端が固定される。引張試験機本体2は、機柱11及び機柱12の間に配置されたテーブル14とクロスヘッド15を備える。引張試験機本体2においては、機柱11、機柱12、天板13、テーブル14、及びクロスヘッド15によって試験空間Sが形成される。試験空間Sは、機柱11、機柱12、天板13、テーブル14、及びクロスヘッド15に囲まれた空間である。
【0016】
テーブル14の上面には下つかみ具16が固定され、クロスヘッド15の下面には、上つかみ具17が固定される。上つかみ具17は、図1に示すように、試験片TPの上端を把持する。下つかみ具16は、図1に示すように、試験片TPの下端を把持する。試験片TPが上つかみ具17及び下つかみ具16によって把持された状態で、クロスヘッド15が上昇することによって、試験片TPには、引張荷重である試験力が付与される。
【0017】
図2及び図3で示すように、引張試験機本体2は、飛散防止カバー18を備える。飛散防止カバー18は、試験中の試験片TPの破断によって、試験片TPの一部が、ユーザに飛散することを防止するためのカバーである。飛散防止カバー18は、引張試験機本体2の前面に設けられる。飛散防止カバー18は、閉状態において試験空間Sの前面を閉塞する。本実施形態の飛散防止カバー18は、片開き式のカバーであり、カバー部材181とカバー部材181に設けられる取手182とを備える。カバー部材181は、透光性の部材で構成される。取手182は、飛散防止カバー18の開閉時にユーザに把持される。
【0018】
飛散防止カバー18の開閉は、機柱12に設けられた近接センサ19によって検出される。近接センサ19は、飛散防止カバー18の開状態である場合、飛散防止カバー18が開状態であることの値を示す開閉信号KGを、制御装置3に出力する。一方、近接センサ19は、飛散防止カバー18の閉状態である場合、飛散防止カバー18が閉状態であることの値を示す開閉信号KGを、制御装置3に出力する。なお、近接センサ19の設置位置は、図1及び図2に示す設置位置に限定されない。近接センサ19の設置位置は、飛散防止カバー18の開閉を検出できる位置であればよい。
【0019】
機柱12の前面には、リモコン20とスイッチパネル21とが設けられている。
リモコン20は、ユーザから操作を受け付け、受け付けた操作に対応する第1操作信号CG1を生成し、生成した第1操作信号CG1を制御装置3へ送信する。
スイッチパネル21は、複数の操作スイッチSWを備える。なお、本実施形態では、スイッチパネル21が、機柱12においてリモコン20の右上方に設置されている場合を例示するが、スイッチパネル21の設置位置は、リモコン20の右上方に限定されず、リモコン20の下方でも左方でもよいし、機柱12でなくてよい。
【0020】
図4は、スイッチパネル21の構成の一例を示す図である。図4では、操作スイッチSWが出力する信号を図示するために便宜的に制御装置3を併せて図示している。
【0021】
本実施形態のスイッチパネル21は、操作スイッチSWとして、運転切替スイッチSW1、連動運転入りスイッチSW2、連動運転切りスイッチSW3、スタートスイッチSW4、リターンスイッチSW5、及びストップスイッチSW6を備える。なお、操作スイッチSWの設置態様は、図2及び図4で示す縦一列に限定されない。操作スイッチSWの設置態様は、N行M列に並べて設置される態様であればよい。ここで、N及びMは1以上の整数である。
【0022】
運転切替スイッチSW1は、引張試験機本体2の動作状態を、各個運転状態J3又は連動運転状態J5に移行可能にするためのスイッチである。運転切替スイッチSW1は、セレクタスイッチで構成される。各個運転状態J3とは、飛散防止カバー18の開閉と、引張試験機本体2の運転とが連動しない状態である。連動運転状態J5とは、飛散防止カバー18の開閉と、引張試験機本体2の運転とが連動する状態である。
【0023】
ユーザは、飛散防止カバー18の開閉と引張試験機本体2の運転とを連動させたくない場合、セレクタSRを、「各個」を選択している状態にし、飛散防止カバー18の開閉と引張試験機本体2の運転とを連動させる場合、セレクタSRを、「連動」を選択している状態にする。
運転切替スイッチSW1は、セレクタSRの状態に対応した値を示す選択信号CG21を制御装置3に出力する。具体的に、セレクタSRが「各個」を選択している場合の選択信号CG21は、セレクタSRが「各個」を選択していることの値を示す。また、セレクタSRが「連動」を選択している場合の選択信号CG21は、セレクタSRが「連動」を選択していることの値を示す。
連動運転状態J5は、「第1状態」の一例に対応する。各個運転状態J3は、「第2状態」の一例に対応する。
【0024】
連動運転入りスイッチSW2は、引張試験機1の動作状態を連動運転状態J5に移行させるためのスイッチである。連動運転入りスイッチSW2は、押下式のスイッチで構成される。連動運転入りスイッチSW2は、押下された場合に、押下されたことを示す第1押下信号CG22を制御装置3に出力する。
【0025】
連動運転切りスイッチSW3は、引張試験機1の動作状態が連動運転状態J5であることを取り止めるためのスイッチである。連動運転切りスイッチSW3は、押下式のスイッチで構成される。連動運転切りスイッチSW3は、押下された場合に、押下されたことを示す第2押下信号CG23を制御装置3に出力する。
【0026】
スタートスイッチSW4は、引張試験機本体2により材料試験を行う試験運転を開始するためのスイッチである。スタートスイッチSW4は、押下式のスイッチで構成される。スタートスイッチSW4は、押下された場合、押下されたことを示す第3押下信号CG24を制御装置3に出力する。
【0027】
リターンスイッチSW5は、押下式のスイッチであり、リターン運転を開始するためのスイッチである。リターン運転とは、試験運転を終了した後、クロスヘッド15の位置を、試験運転の開始時の位置である原点位置に戻す運転である。リターンスイッチSW5は、押下された場合、押下されたことを示す第4押下信号CG25を制御装置3に出力する。
【0028】
ストップスイッチSW6は、試験運転又はリターン運転を停止するためのスイッチである。ストップスイッチSW6は、押下式のスイッチで構成される。ストップスイッチSW6は、押下された場合、押下されたことを示す第5押下信号CG26を制御装置3に出力する。
【0029】
以下、選択信号CG21、第1押下信号CG22、第2押下信号CG23、第3押下信号CG24、第4押下信号CG25、及び第5押下信号CG26を区別しない場合、「第2操作信号」といい「CG2」の符号を付す。
【0030】
図1に戻って、引張試験機本体2の構成について説明する。
引張試験機本体2は、テーブル14と、一対のねじ棹22、及びねじ棹23と、クロスヘッド15と、ウォーム減速機24と、ウォーム減速機25と、サーボモータ26と、ロータリエンコーダ27と、ロードセル28と、を備える。
一対のねじ棹22、23は、テーブル14上に鉛直方向を向く状態で回転可能に立設される。クロスヘッド15は、ねじ棹22、23に沿って移動可能に構成される。ウォーム減速機24、ウォーム減速機25、サーボモータ26、及びロータリエンコーダ27は、クロスヘッド15を移動させて試験片TPに試験力を付与する。
ロードセル28は、試験片TPに与えられる引張荷重である試験力を測定し、測定した試験力の大きさを示す試験力測定信号SG1を制御装置3に出力するセンサである。
【0031】
ウォーム減速機24、及びウォーム減速機25は、一対のねじ棹22、及びねじ棹23の下端部に連結される。サーボモータ26は、ウォーム減速機24、及びウォーム減速機25の各々に連結される。
ロータリエンコーダ27は、サーボモータ26の回転量を測定し、回転量に応じたパルス数を示す回転測定信号SG2を制御装置3に出力するセンサである。
一対のねじ棹22、及びねじ棹23には、ウォーム減速機24、25を介して、サーボモータ26の回転が伝達される。そして、一対のねじ棹22、及びねじ棹23が同期して回転することによって、クロスヘッド15は、一対のねじ棹22、及びねじ棹23に沿って昇降する。
【0032】
[1-2.制御装置の構成]
次に、図1を参照して、制御装置3の構成について説明する。
制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサ31と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ32と、各種の周辺機器を接続するためのインターフェース回路と、を備える。メモリ32は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ装置を備えてもよい。
メモリ32は、「記憶部」の一例に対応する。
【0033】
メモリ32は、制御プログラム321を記憶する。
また、メモリ32は、各個運転状態J3において引張試験機1が試験運転を実行する場合、各個用試験条件データ322を記憶する。各個用試験条件データ322は、各個運転状態J3において試験運転が実行される場合に読み出されるデータであって、試験運転における試験条件が記録されている。各個用試験条件データ322が示す試験条件には、試験力の計測値の目標値や原点位置が記録されている。複数の試験片TPを同じ試験条件で試験運転する場合、各個用試験条件データ322には、試験条件として、さらに試験片TPの本数が記録される。
また、メモリ32は、連動運転状態J5において引張試験機1が試験運転を実行する場合、連動用試験条件データ323を記憶する。連動用試験条件データ323は、連動運転状態J5において試験運転が実行される場合に読み出されるデータであって、試験運転における試験条件が記録されている。連動用試験条件データ323が示す試験条件には、試験力の計測値の目標値や、原点位置、L本以上の試験片TPの本数が記録されている。ここで、Lは2以上の整数である。
連動用試験条件データ323は、「試験条件データ」の一例に対応する。
【0034】
制御装置3には、試験力測定信号SG1と、回転測定信号SG2と、第1操作信号CG1と、第2操作信号CG2と、開閉信号KGと、が入力される。
【0035】
プロセッサ31は、制御プログラム321を実行することによって、検知部311、受付部312、状態遷移部313、及び運転制御部314として機能する。
【0036】
検知部311は、引張試験機1のユーザが安全な状態であるか否かを検知する。検知部311は、飛散防止カバー18が閉状態であることの値を示す開閉信号KGを近接センサ19が出力している場合、引張試験機1のユーザが安全な状態であると検知する。一方、検知部311は、飛散防止カバー18が開状態であることの値を示す開閉信号KGを近接センサ19が出力している場合、引張試験機1のユーザが安全な状態でないと検知する。検知部311は、所定周期で検知結果を運転制御部314に出力する。
【0037】
受付部312は、ユーザからの指示を受け付ける。
受付部312は、リモコン20から出力される第1操作信号CG1に基づいて、リモコン20を介してユーザからの指示を受け付ける。例えば、受付部312は、リモコン20を介して、クロスヘッド15の原点位置を指定する指定指示を受け付ける。
【0038】
受付部312は、連動運転入りスイッチSW2から第1押下信号CG22が出力された場合、連動運転状態J5に移行させる指示を受け付ける。
受付部312は、連動運転切りスイッチSW3から第2押下信号CG23が出力された場合、連動運転状態J5を取り止める指示を受け付ける。
受付部312は、スタートスイッチSW4から第3押下信号CG24が出力された場合、試験運転の開始指示を受け付ける。
受付部312は、リターンスイッチSW5から第4押下信号CG25が出力された場合、リターン運転の開始指示を受け付ける。
受付部312は、ストップスイッチSW6から第5押下信号CG26が出力された場合、試験運転又はリターン運転の停止指示を受け付ける。
受付部312は、引張試験機1が具備するスイッチであって、且つ、操作スイッチSW以外の図示せぬスイッチから信号が出力された場合、当該スイッチに対応する指示を受け付ける。
【0039】
状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を遷移させる。状態遷移部313は、図5に示す遷移図に沿って、引張試験機1の動作状態を遷移させる。
【0040】
図5は、引張試験機1の動作状態の遷移図である。
引張試験機1に電源が投入されると、引張試験機1の動作状態は、起動中状態J1となる。起動中状態J1は、引張試験機1の起動に係わる処理を実行する状態である。
【0041】
引張試験機1の起動に係わる処理が完了すると、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を起動中状態J1から待機中状態J2に遷移させる。待機中状態J2とは、不図示の運転準備入りスイッチが操作されることを待機する状態である。運転準備入りスイッチは、引張試験機1の動作状態を、引張試験機1の動力源を駆動可能な状態に遷移させる指示を行うためのスイッチである。運転準備入りスイッチは、引張試験機1の所定の位置に設けられる。運転準備入りスイッチは、スイッチパネル21のような機械式のスイッチでもよいし、リモコン20のディスプレイが表示するソフトウェアスイッチでもよい。
【0042】
状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態が待機中状態J2である場合に、受付部312が運転準備入りスイッチに対応する指示を受け付けると、セレクタSRの状態に応じて、引張試験機1の動作状態を各個運転状態J3又は連動運転準備状態J4に遷移させる。すなわち、状態遷移部313は、運転切替スイッチSW1が出力する選択信号CG21が示す値に応じて、引張試験機1の動作状態を各個運転状態J3又は連動運転準備状態J4に遷移させる。
具体的に、状態遷移部313は、受付部312が運転準備入りスイッチに対応する指示を受け付け、且つ、セレクタSRが「各個」を選択している場合、引張試験機1の動作状態を待機中状態J2から各個運転状態J3に遷移させる。一方、状態遷移部313は、受付部312が運転準備入りスイッチに対応する指示を受け付け、且つ、セレクタSRが「連動」を選択している場合、引張試験機1の動作状態を、待機中状態J2から、各個運転状態J3を介して連動運転準備状態J4に遷移させる。なお、状態遷移部313は、各個運転状態J3を介さずに、直接、引張試験機1の動作状態を待機中状態J2から連動運転準備状態J4に遷移させてもよい。連動運転準備状態J4については、後述する。
【0043】
引張試験機1の動作状態が各個運転状態J3である場合に、受付部312が運転準備切りスイッチに対応する指示を受け付けると、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を各個運転状態J3から待機中状態J2に遷移させる。運転準備切りスイッチは、引張試験機1の動作状態を待機中状態J2に遷移させる指示を行うためのスイッチである。運転準備切りスイッチは、引張試験機1の所定位置に設けられる。運転準備切りスイッチは、運転準備入りスイッチと同様、機械式のスイッチでもよいしソフトウェアスイッチでもよい。
【0044】
また、引張試験機1の動作状態が各個運転状態J3である場合において、アラームが発生した場合、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を各個運転状態J3から待機中状態J2に遷移させる。アラームの発生の要素としては、試験運転中に飛散防止カバー18が開状態になったことや、リターン運転中に飛散防止カバー18が開状態になったこと、その他の引張試験機1に係わる異常が検知されたことなどである。
【0045】
また、引張試験機1の動作状態が各個運転状態J3である場合に、セレクタSRが「連動」を選択した場合、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を各個運転状態J3から連動運転準備状態J4に遷移させる。より具体的には、引張試験機1の動作状態が各個運転状態J3である場合に、出力されている選択信号CG21の値が、セレクタSRが「連動」を選択していることの値に変化した場合、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を各個運転状態J3から連動運転準備状態J4に遷移させる。
【0046】
連動運転準備状態J4は、連動運転状態J5への遷移を待機する状態である。引張試験機1の動作状態が連動運転準備状態J4である場合に、受付部312が運転準備切りスイッチに対応する指示を受け付ける、又は、アラームが発生すると、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を連動運転準備状態J4から待機中状態J2に遷移させる。
【0047】
また、引張試験機1の動作状態が連動運転準備状態J4である場合、セレクタSRが「各個」を選択した場合、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を連動運転準備状態J4から各個運転状態J3に遷移させる。より具体的には、引張試験機1の動作状態が連動運転準備状態J4である場合に、出力されている選択信号CG21の値が、セレクタSRが「各個」を選択していることの値に変化した場合、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を連動運転準備状態J4から各個運転状態J3に遷移させる。
【0048】
また、引張試験機1の動作状態が連動運転準備状態J4である場合、受付部312が連動運転入りスイッチSW2に対応する指示を受け付けると、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を連動運転準備状態J4から連動運転状態J5に遷移させる。
【0049】
引張試験機1の動作状態が連動運転状態J5である場合、受付部312が運転準備切りスイッチに対応する指示を受け付ける、又は、アラームが発生すると、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を連動運転状態J5から待機中状態J2に遷移させる。
【0050】
また、引張試験機1の動作状態が連動運転状態J5である場合、セレクタSRが「各個」を選択した場合、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を連動運転状態J5から各個運転状態J3に遷移させる。
【0051】
また、引張試験機1の動作状態が連動運転状態J5である場合、受付部312が連動運転切りスイッチSW3に対応する指示を受け付けた場合、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を連動運転状態J5から連動運転準備状態J4に遷移させる。
【0052】
また、引張試験機1の動作状態が連動運転状態J5である場合、所定の条件が成立した場合、状態遷移部313は、引張試験機1の動作状態を連動運転状態J5から連動運転準備状態J4に遷移させる。本実施形態において所定の条件は、次のいずれかの条件である。
条件1:試験運転終了後、所定期間、飛散防止カバー18が開状態にならない。
条件2:試験運転終了において飛散防止カバー18が開状態になった後、所定期間、飛散防止カバー18が閉状態にならない。
条件3:リターン運転終了後、所定期間、飛散防止カバー18が開状態にならない。
条件4:リターン運転終了において飛散防止カバー18が開状態になった後、所定期間、飛散防止カバー18が閉状態にならない。
条件5:試験運転及びリターン運転を実行した回数が、連動用試験条件データ323に記録された試験片TPの数に到達した。
【0053】
図1の説明に戻り、運転制御部314は、引張試験機本体2のサーボモータ26をフィードバック制御して試験運転を実行する。運転制御部314は、例えば、ロードセル28が出力する試験力の計測値について位置制御を実行する。この場合には、運転制御部314は、試験力の計測値を試験力の目標値に一致させるように、変位計測値の指令値を演算し、当該指令値を示す指令信号を、図略のサーボアンプを介して、サーボモータ26に出力する。なお、変位計測値は、回転測定信号SG2に基づくクロスヘッド15の変位を示す。試験力の目標値は、試験力測定信号SG1に対応する試験力の計測値の目標値を示す。
【0054】
運転制御部314は、試験運転を実行後、引張試験機本体2のサーボモータ26を制御して、リターン運転を実行する。上述した通り、リターン運転は、クロスヘッド15の位置を原点位置に戻す運転である。運転制御部314は、各個用試験条件データ322又は連動用試験条件データ323に従った運転開始前に、リモコン20を介して受付部312が原点位置の指定指示を受け付けている場合、リターン運転において、クロスヘッド15を、受付部312が受け付けた指定指示が示す原点位置まで戻す。一方、運転制御部314は、各個用試験条件データ322又は連動用試験条件データ323に従った運転開始前に、リモコン20を介して受付部312が原点位置の指定指示を受け付けていない場合、リターン運転において、クロスヘッド15を、各個用試験条件データ322又は連動用試験条件データ323に記録された原点位置まで戻す。
【0055】
運転制御部314は、引張試験機1の動作状態が各個運転状態J3である場合、メモリ32から読み出した各個用試験条件データ322に従って試験運転を実行する。運転制御部314は、原点位置の指定指示を受付部312が受け付けていない場合、リターン運転において、各個用試験条件データ322に記録された原点位置まで、クロスヘッド15を戻す。
【0056】
運転制御部314は、引張試験機1の動作状態が連動運転状態J5である場合、メモリ32から読み出した連動用試験条件データ323に従って試験運転を実行する。運転制御部314は、検知部311の検知結果が、ユーザが安全な状態でないとの結果から、ユーザが安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、試験運転を開始する。また、運転制御部314は、試験運転後、検知部311の検知結果が、ユーザが安全な状態でないとの結果から、ユーザが安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、リターン運転を開始する。運転制御部314は、原点位置の指定指示を受付部312が受け付けていない場合、リターン運転において、メモリ32から読み出した連動用試験条件データ323に記録された原点位置まで、クロスヘッド15を戻す。
【0057】
[2.引張試験機の動作]
次に、本実施形態に係わる引張試験機1の動作について説明する。
まず、図6を参照して、各個運転状態J3における引張試験機1の動作について説明する。
図6は、引張試験機1の動作を示すフローチャートFAである。各個運転状態J3においては、試験片TPごとに、図6に示す動作が繰り返される。
【0058】
ユーザが飛散防止カバー18を開く(ステップSX1)と、検知部311は、ユーザが安全な状態でないと検知する(ステップSA1)。
【0059】
次いで、ユーザが試験片TPを取り付け(ステップSX2)、ユーザが飛散防止カバー18を閉める(ステップSX3)と、検知部311は、ユーザが安全な状態であると検知する(ステップSA2)。
【0060】
次いで、ユーザがスタートスイッチSW4を押下する(ステップSX3)と、受付部312は、スタートスイッチSW4に対応する指示を受け付ける(ステップSA3)。
【0061】
次いで、運転制御部314は、試験運転を開始してよいかの問い合わせをユーザに対して行う(ステップSA4)。例えば、ステップSA4において、運転制御部314は、試験運転を開始してよいかを問い合わせる情報をリモコン20に表示させる。
【0062】
運転制御部314は、試験運転の開始を許可する許可指示を受付部312が受け付けたか否かを判定する(ステップSA5)。例えば、試験運転の開始を許可する操作がリモコン20になされた場合、受付部312は、試験運転の開始を許可する許可指示を受け付ける。そして、ステップSA5において、運転制御部314は、当該許可指示を受付部312が受け付けたと判定する。
【0063】
許可指示を受付部312が受け付けたと判定した場合(ステップSA5:YES)、運転制御部314は、試験運転を開始する(ステップSA6)。
【0064】
次いで、運転制御部314は、ステップSA6で開始した試験運転を終了する(ステップSA7)。
【0065】
試験運転の終了後、ユーザが飛散防止カバー18を開く(ステップSX5)と、検知部311は、ユーザが安全な状態でないと検知する(ステップSA8)。
【0066】
次いで、ユーザが試験片TPを取り外す(ステップSX6)し、ユーザが飛散防止カバー18を閉める(ステップSX7)と、検知部311は、ユーザが安全な状態であると検知する(ステップSA9)。
【0067】
次いで、ユーザがリターンスイッチSW5を押下する(ステップSX8)と、受付部312は、リターンスイッチSW5に対応する指示を受け付ける(ステップSA10)。
【0068】
次いで、運転制御部314は、リターン運転を開始してよいかの問い合わせをユーザに対して行う(ステップSA11)。例えば、ステップSA11において、運転制御部314は、リターン運転を開始してよいかを問い合わせる情報をリモコン20に表示させる。
【0069】
運転制御部314は、リターン運転の開始を許可する許可指示を受付部312が受け付けたか否かを判定する(ステップSA12)。例えば、リターン運転の開始を許可する操作がリモコン20になされた場合、受付部312は、リターン運転の開始を許可する許可指示を受け付ける。そして、ステップSA12において、運転制御部314は、当該許可指示を受付部312が受け付けたと判定する。
【0070】
次いで、運転制御部314は、許可指示を受付部312が受け付けたと判定した場合(ステップSA12:YES)、リターン運転を開始する(ステップSA13)。
【0071】
次いで、運転制御部314は、ステップSA13で開始したリターン運転を終了する(ステップSA14)。
【0072】
次に、連動運転状態J5における引張試験機1の動作について説明する。
図7は、連動運転状態J5における引張試験機1の動作を示すフローチャートFBである。なお、引張試験機1は、図7に示すフローチャートFBのループを、連動運転切りスイッチSW3が押下された場合、又は、上述した所定の条件が成立した場合に抜ける。
【0073】
ユーザが飛散防止カバー18を開く(ステップSY1)と、検知部311は、ユーザが安全な状態でないと検知する(ステップSB1)。
【0074】
次いで、ユーザが試験片TPを取り付け(ステップSY2)、ユーザが飛散防止カバー18を閉める(ステップSY3)と、検知部311は、ユーザが安全な状態であると検知する(ステップSB2)。
【0075】
次いで、運転制御部314は、試験運転を開始する(ステップSB3)。
【0076】
次いで、運転制御部314は、ステップSB3で開始した試験運転を終了する(ステップSB4)。
【0077】
試験運転の終了後、ユーザが飛散防止カバー18を開く(ステップSY4)と、検知部311は、ユーザが安全な状態でないと検知する(ステップSB5)。
【0078】
次いで、ユーザが試験片TPを取り外す(ステップSY5)し、ユーザが飛散防止カバー18を閉める(ステップSY6)と、検知部311は、ユーザが安全な状態であると検知する(ステップSB6)。
【0079】
次いで、運転制御部314は、リターン運転を開始する(ステップSB7)。
【0080】
次いで、運転制御部314は、ステップSB7で開始したリターン運転を終了する(ステップSB8)。
【0081】
以上のように、連動運転状態J5においては、ユーザが指示を行うことなく、試験運転及びリターン運転を開始できる。よって、試験運転の開始、及びリターン運転の開始においてユーザの負担を軽減できる。また、飛散防止カバー18の開閉に連動して試験運転の開始及びリターン運転の開始が行われるため、連動運転状態J5においては、飛散防止カバー18の開閉に引張試験機1の運転が連動しなかった場合、ユーザが、飛散防止カバー18の連動に係わる機構に不具合が発生していることを速やかに把握できる。
【0082】
[3.第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図8は、第2実施形態に係わる引張試験機1の構成を示す図である。
第2実施形態と第1実施形態とを比較し、第2実施形態に係わる引張試験機1は、飛散防止カバー18の代わりに、ライトカーテン41を備える。
【0083】
ライトカーテン41は、複数の光電センサによって構成され、複数の並行な光線RLを発する投光部411と、投光部411が発する光線を受光する受光部412とを備える。なお、図8では、光線RLとして破線の矢印で示している。当該破線の矢印は光線RLが進む方向を示している。よって、図8の例では、投光部411が、投光部411より下方に設置された受光部412に向かって光線RLを発している場合を示している。なお、光線RLが進む方向は、上方に向かう方向でもよい。
【0084】
ライトカーテン41は、試験空間Sの前面を、投光部411が発する複数の光線RLで覆えるように、引張試験機本体2に設置される。試験空間Sの前面から試験空間Sに手などの部位が進入する場合、投光部411が発する光線RLの一部は、当該部位によって遮蔽され受光部412に届かない。試験空間Sの前面から試験空間Sに手などの部位が進入しない場合、投光部411が発する光線RLの全ては、当該部位によって遮蔽されることなく受光部412に届く。よって、ライトカーテン41は、受光部412の受光態様に応じて、試験空間Sへのユーザの身体の進入を検出できる。ライトカーテン41は、制御装置3に接続し、受光部412の受光態様に応じて、光線RLが遮蔽されたことを示す信号、又は、光線RLが遮蔽されていないことを示す信号を制御装置3に出力する。
【0085】
第2実施形態と第1実施形態と比較し、第2実施形態に係わる検知部311は、ライトカーテン41が出力する信号に応じて、ユーザが安全な状態であるか否かを検知する。第2実施形態の検知部311は、ライトカーテン41が、光線が遮断されたことを示す信号を出力している場合、ユーザが安全な状態でないと検知する。また、第2実施形態の検知部311は、ライトカーテン41が、光線が遮断されていないことを示す信号を出力している場合、ユーザが安全な状態であると検知する。第2実施形態の検知部311は、検知結果を所定周期で運転制御部314に出力する。
【0086】
[4.その他の実施形態]
なお、各実施形態に係る引張試験機1は、あくまでも本発明に係る材料試験機の態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形および応用が可能である。
【0087】
例えば、上述した各実施形態では、「材料試験機」が引張試験機1である場合について説明したが、これに限定されない。「材料試験機」が、例えば、疲労試験機、圧縮試験機、曲げ試験機、ねじり試験機等でもよい。
【0088】
上述した第2実施形態では、試験空間Sへのユーザの身体の進入を検出するライトカーテン41を引張試験機1が具備する構成である。他の実施形態の引張試験機1は、試験空間Sを含む所定空間へのユーザの身体の進入を検出するライトカーテン41を備えてもよい。所定空間としては、引張試験機本体2によってユーザが影響を受け得る空間であり、例えば、引張試験機本体2を基準とした所定範囲の空間である。この他の実施形態では、ライトカーテン41が、ユーザの身体が所定空間へ進入されると推定される位置に設けられる。例えば、この他の実施形態では、引張試験機本体2の前面より所定距離前方の位置にライトカーテン41が設けられる。
【0089】
例えば、上述した各実施形態では、「供試体」として試験片TPである場合について説明したが、「供試体」は試験片TPに限定されず、試験対象となる物体であればよい。
【0090】
例えば、上述した各実施形態では、引張試験機1の動力源としてサーボモータ26を例示したが、これに限定されず、引張試験機1の動力源は、例えば油圧ポンプでもよい。
【0091】
例えば、上述した各実施形態では、引張試験機1が、動作状態を各個運転状態J3又は連動運転状態J5に切り替え可能な構成である場合を例示した。他の実施形態では、引張試験機1が、動作状態として各個運転状態J3を具備しない構成としてもよい。
【0092】
また、図1に示した各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアで実現してもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0093】
また、図6、及び図7に示すフローチャートの処理単位は、引張試験機1の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。これらフローチャートに示す処理単位の分割の仕方や名称によって制限されることはなく、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0094】
プロセッサ31に実行させる制御プログラム321は、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録しておくことも可能である。
記録媒体としては、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリデバイスを用いることができる。具体的には、フレキシブルディスク、HDD、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD、Blu-ray(登録商標) Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。
また、記録媒体は、制御装置3が備える内部記憶装置であるRAM、ROM、HDD等の不揮発性記憶装置であってもよい。また、制御プログラム321を制御装置3と異なる他の装置等に記憶させておき、制御装置3は、当該他の装置から制御プログラム321をダウンロードしてもよい。
【0095】
[5.態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0096】
(第1項)
一態様に係わる材料試験機は、試験機本体と、前記試験機本体のユーザが安全な状態か否かを検知する検知部と、前記検知部の検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記試験機本体により材料試験を行う試験運転を開始する運転制御部と、を備える。
【0097】
第1項に記載の材料試験機によれば、ユーザが試験開始の指示などを行わなくても、ユーザが安全な状態であると検知されたことを契機に、試験運転を開始できる。そのため、材料試験の開始においてユーザの負担を軽減できる。
【0098】
(第2項)
第1項に記載の材料試験機において、前記試験機本体は、供試体に負荷を付与するクロスヘッドを備え、前記運転制御部は、前記試験運転の終了後、前記検知部の検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記クロスヘッドを、前記試験運転の開始時の位置である原点位置に戻すリターン運転を開始する。
【0099】
第2項に記載の材料試験機によれば、ユーザが運転開始の指示などを行わなくても、ユーザが安全な状態であると検知されたことを契機に、リターン運転を開始できる。そのため、リターン運転の開始においてユーザの負担を軽減できる。
【0100】
(第3項)
第2項に記載の材料試験機において、前記試験運転における試験条件を示す試験条件データを記憶する記憶部を備え、前記試験条件データには、材料試験を行う前記供試体の数が記録されており、前記運転制御部は、前記試験条件データに記録された前記供試体の数分、前記試験運転と前記リターン運転とを繰り返す。
【0101】
第3項に記載の材料試験機によれば、ユーザが運転開始の指示などを行わなくても、複数の供試体の各々の試験で試験運転とリターン運転とを開始できる。よって、複数の供試体について試験する場合におけるユーザの負担を軽減できる。
【0102】
(第4項)
第2項又は第3項に記載の材料試験機において、前記試験運転における試験条件を示す試験条件データを記憶する記憶部と、前記ユーザからの指示を受け付ける受付部と、を備え、前記試験条件データには、前記原点位置が記録されており、前記運転制御部は、前記原点位置を指定する指定指示を前記受付部が受け付けていない場合、前記リターン運転において、前記クロスヘッドを、前記記憶部が記憶する前記試験条件データに記録された前記原点位置に戻し、前記指定指示を前記受付部が受け付けている場合、前記リターン運転において、前記クロスヘッドを、前記受付部が受け付けた前記指定指示が示す前記原点位置に戻す。
【0103】
第4項に記載の材料試験機によれば、ユーザから指定した原点位置を優先してリターン運転を行う。よって、次に試験される供試体の取り付けが容易になるため、リターン運転の開始においてユーザの負担を軽減できると共に、次の試験の準備におけるユーザの負担を軽減できる。
【0104】
(第5項)
第1項から第4項のいずれか一項に記載の材料試験機において、前記ユーザからの指示を受け付ける受付部を備え、前記材料試験機の動作状態を第1状態又は第2状態に切り替え可能であり、前記運転制御部は、前記材料試験機の動作状態が前記第1状態である場合において、前記検知部の検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記試験運転を開始し、前記材料試験機の動作状態が前記第2状態である場合において、前記試験運転の開始指示を前記受付部が受け付け、且つ、前記試験運転の開始を許可する許可指示を前記受付部が受け付けた場合、前記試験運転を開始する。
【0105】
第5項に記載の材料試験機によれば、第1状態と第2状態とを切り替え可能であるため、試験運転の開始の契機を、ユーザが所望する試験の態様に応じて設定できる。
【0106】
(第6項)
第1項から第5項のいずれか一項に記載の材料試験機において、試験空間の前面に配された飛散防止カバーを備え、前記検知部は、前記飛散防止カバーが、前記試験空間の前面を閉塞している閉状態である場合、前記ユーザが安全な状態であると検知し、前記飛散防止カバーが、前記試験空間の前面を閉塞していない開状態である場合、前記ユーザが安全な状態でないと検知する。
【0107】
第6項に記載の材料試験機によれば、ユーザが安全な状態であるか否かを、飛散防止カバーの開閉状態に応じて適正に検知できる。よって、飛散防止カバーの開閉に連動させて、適正に試験運転を開始できる。
【0108】
(第7項)
第1項から第5項のいずれか一項に記載の材料試験機において、試験空間を含む所定空間への前記ユーザの身体の侵入を検出するライトカーテンを備え、前記検知部は、前記ライトカーテンが前記所定空間への前記ユーザの身体の侵入を検出していない場合、前記ユーザが安全な状態であると検知し、前記ライトカーテンが前記所定空間への前記ユーザの身体の侵入を検出している場合、前記ユーザが安全な状態でないと検知する。
【0109】
第7項に記載の材料試験機によれば、ユーザが安全な状態であるか否かを、ライトカーテンの検出結果に応じて適正に検知できる。よって、ライトカーテンの検出結果に連動させて、適正に試験運転を開始できる。
【0110】
(第8項)
別の一態様に係わる材料試験機の制御方法は、試験機本体を備える材料試験機の制御方法であって、前記試験機本体のユーザが安全な状態か否かを検知し、検知結果が安全な状態でないとの結果から安全な状態であるとの結果に切り替わった場合、前記試験機本体により材料試験を行う試験運転を開始する。
【0111】
第8項の材料試験機の制御方法によれば、第1項の材料試験機と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0112】
1 引張試験機(材料試験機)
2 引張試験機本体(試験機本体)
3 制御装置
15 クロスヘッド
18 飛散防止カバー
31 プロセッサ
32 メモリ(記憶部)
41 ライトカーテン
311 検知部
312 受付部
313 状態遷移部
314 運転制御部
321 制御プログラム
322 各個用試験条件データ
323 連動用試験条件データ(試験条件データ)
J3 各個運転状態(第2状態)
J5 連動運転状態(第1状態)
S 試験空間
TP 試験片(供試体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8