(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097482
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】空気マイクロメータの測定ヘッドおよび該測定ヘッドを備えた空気マイクロメータ
(51)【国際特許分類】
G01B 13/10 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
G01B13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000963
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】300033267
【氏名又は名称】ダイセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】森口 剛介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 耕太
【テーマコード(参考)】
2F066
【Fターム(参考)】
2F066AA23
2F066DD11
2F066FF08
2F066FF09
2F066HH02
2F066HH15
2F066JJ11
2F066KK03
2F066KK04
(57)【要約】
【課題】小径開口部および大径開口部の各内径を同時に測定することを可能にする空気マイクロメータの測定ヘッドを提供する。
【解決手段】測定対象物の小径開口部に挿入される小径測定ヘッド7に対し、測定対象物の大径開口部に挿入される大径測定ヘッド8を、パッキンを利用したフローティング機構9によって径方向への相対変位を可能に支持する。これにより、小径開口部と大径開口部との間に心ズレが生じている場合であっても、小径開口部に対する小径測定ヘッド7の挿入および大径開口部に対する大径測定ヘッド8の挿入が可能になる。その結果、小径開口部の内径の測定および大径開口部の内径の測定を同時に行うことが可能になる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の開口部に挿入されて該開口部の内面に向けて圧縮空気を吹き出すことにより前記開口部の内側の寸法を測定する構成とされた空気マイクロメータの測定ヘッドにおいて、
前記測定対象物には、内径寸法が互いに異なる複数種類の開口部が連続して形成されており、
前記各開口部のうち小径の開口部に挿入される小径測定ヘッドおよび大径の開口部に挿入される大径測定ヘッドを備え、前記小径測定ヘッドに対し前記大径測定ヘッドがフローティング機構によって径方向への相対変位が可能に支持されていることを特徴とする空気マイクロメータの測定ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の空気マイクロメータの測定ヘッドにおいて、
前記大径測定ヘッドの軸心部分には当該軸心に沿って貫通する貫通孔が設けられ、前記小径測定ヘッドが前記貫通孔に挿通されており、
前記フローティング機構は、前記小径測定ヘッドの外面と前記大径測定ヘッドの内面との間にパッキンが介在されて構成されていることを特徴とする空気マイクロメータの測定ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2記載の空気マイクロメータの測定ヘッドにおいて、
前記小径測定ヘッドはヘッドベース部材に支持されており、
前記ヘッドベース部材に対し前記小径測定ヘッドがフローティング機構によって径方向への相対変位が可能に支持されていることを特徴とする空気マイクロメータの測定ヘッド。
【請求項4】
請求項3記載の空気マイクロメータの測定ヘッドにおいて、
前記フローティング機構は、一対のレースを備え、一方のレースが前記小径測定ヘッドに固定され、他方のレースが前記ヘッドベース部材に固定されたスラストベアリングを備えて構成されていることを特徴とする空気マイクロメータの測定ヘッド。
【請求項5】
請求項2記載の空気マイクロメータの測定ヘッドにおいて、
前記小径測定ヘッドには、前記小径の開口部の内面に向けて空気を吹き出す小径測定用空気吹出孔が形成されており、前記大径測定ヘッドには、前記大径の開口部の内面に向けて空気を吹き出す大径測定用空気吹出孔が形成されていて、
前記小径測定ヘッドには、前記小径の開口部への挿入方向に沿う方向に延在して前記小径測定用空気吹出孔に繋がる小径測定用空気通路と、前記挿入方向に沿う方向に延在して前記大径測定用空気吹出孔に向けて測定用の空気を供給するための大径測定用上流側空気通路とが設けられており、
前記大径測定ヘッドには、前記挿入方向に沿う方向に延在して前記大径測定用空気吹出孔に繋がる大径測定用下流側空気通路が設けられており、
前記小径測定ヘッドおよび前記大径測定ヘッドそれぞれには、前記大径測定用上流側空気通路と大径測定用下流側空気通路とを連通させるように前記挿入方向に対して交差する方向に延在する連絡通路が設けられており、
前記パッキンは、前記挿入方向に沿う方向における前記連絡通路の両側にそれぞれ配設されていることを特徴とする空気マイクロメータの測定ヘッド。
【請求項6】
請求項1記載の測定ヘッドを備えた空気マイクロメータであって、
前記小径測定ヘッドから前記小径の開口部の内面に向けて圧縮空気を吹き出すことにより得られた前記小径の開口部の内側の寸法の測定結果、および、前記大径測定ヘッドから前記大径の開口部の内面に向けて圧縮空気を吹き出すことにより得られた前記大径の開口部の内側の寸法の測定結果をそれぞれ表示可能な表示部を備えていることを特徴とする空気マイクロメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気マイクロメータの測定ヘッドおよび該測定ヘッドを備えた空気マイクロメータに係る。特に、本発明は測定対象物の形状に応じた測定ヘッドの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1や特許文献2に開示されているような空気マイクロメータが知られている。この空気マイクロメータは、一定圧に制御された圧縮空気を測定ヘッドの空気吹出孔から吹き出し、この空気吹出孔の前に測定対象物を置いた場合に、該空気吹出孔と測定対象物との間隔の大小によって吹き出される空気量や背圧が変化することを利用して、その流量変化や圧力変化に応じてガラス管内を上下動するフロートを利用したアナログ表示を行ったり、前記変化を電気信号に変換して演算処理し、前記間隔の測定結果のデジタル表示を行ったりするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-349719号公報
【特許文献2】特開2001-165642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空気マイクロメータは、一般的に測定対象物に形成されている単一内径の開口部の内径を測定するものとして開発が進められてきた。このため、測定ヘッドとしては、測定対象物の開口部の内径に対応する外径(開口部の内径よりも僅かに小さい外径)を有し、その外周面における周方向に亘る複数箇所に空気吹出孔が設けられた構成となっている。
【0005】
ところで、空気マイクロメータとして、複雑な形状の測定対象物に対しても開口部の内径を測定可能とするものの需要が高まっている。その一例として、測定対象物に、略同軸上に小径開口部と大径開口部とが軸心(中心線)に沿う方向で連続して成る開口部が形成されている場合に、これら小径開口部および大径開口部の各内径を同時に測定できる空気マイクロメータに対する需要がある。このように小径開口部および大径開口部の各内径を同時に測定できるようにすれば、各開口部の内径を測定するための測定作業の高効率化や測定に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0006】
この要求に応えるために、小径開口部に挿入されて該小径開口部の内径を測定するための小径測定ヘッドと、大径開口部に挿入されて該大径開口部の内径を測定するための大径測定ヘッドとを、互いの軸心同士を位置合わせして一体成形した測定ヘッドを採用することが考えられる。
【0007】
しかしながら、小径開口部と大径開口部とは必ずしも同軸上に形成されている保証はなく、製造誤差等に起因してこれら開口部には心ズレが生じている場合がある。このような心ズレが生じている場合、小径開口部に対して小径測定ヘッドを挿入しようとする際に、大径測定ヘッドの端面が大径開口部の開口縁に干渉してしまって各開口部に各測定ヘッドを挿入することができない可能性がある。この場合、各内径を同時に測定することが不可能となる。また、仮に各開口部に各測定ヘッドを挿入できたとしても、前記心ズレに起因して何れかの測定ヘッドの外周面と開口部の内周面とが摺接する状態となる可能性があり、この場合、測定精度に悪影響を与えてしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小径開口部および大径開口部の各内径を高い精度で同時に測定することを可能にする空気マイクロメータの測定ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、測定対象物の開口部に挿入されて該開口部の内面に向けて圧縮空気を吹き出すことにより前記開口部の内側の寸法を測定する構成とされた空気マイクロメータの測定ヘッドを前提とする。そして、前記測定対象物に、内径寸法が互いに異なる複数種類の開口部が連続して形成されている場合に、この空気マイクロメータの測定ヘッドは、前記各開口部のうち小径の開口部に挿入される小径測定ヘッドおよび大径の開口部に挿入される大径測定ヘッドを備え、前記小径測定ヘッドに対し前記大径測定ヘッドがフローティング機構によって径方向への相対変位が可能に支持されていることを特徴とする。
【0010】
この特定事項により、測定対象物の製造誤差等に起因して小径の開口部(以下、単に小径開口部という場合もある)と大径の開口部(以下、単に大径開口部という場合もある)との間に心ズレが生じている場合であっても、フローティング機構による大径測定ヘッドと小径測定ヘッドとの径方向での相対変位によって、小径開口部に対する小径測定ヘッドの挿入および大径開口部に対する大径測定ヘッドの挿入を行うことが可能になる。これにより、小径測定ヘッドの空気吹出孔から小径開口部の内面に向けての空気の吹き出しによる当該小径開口部の内径の測定、および、大径測定ヘッドの空気吹出孔から大径開口部の内面に向けての空気の吹き出しによる当該大径開口部の内径の測定を高い精度で同時に行うことが可能になる。
【0011】
また、前記大径測定ヘッドの軸心部分には当該軸心に沿って貫通する貫通孔が設けられ、前記小径測定ヘッドが前記貫通孔に挿通されており、前記フローティング機構は、前記小径測定ヘッドの外面と前記大径測定ヘッドの内面との間にパッキンが介在されて構成されている。
【0012】
この構成によれば、パッキンの弾性変形に伴って各測定ヘッド同士の間での径方向での相対変位が可能であるばかりでなく、小径測定ヘッドの外面と大径測定ヘッドの内面との間をパッキンによってシールすることも可能である。これにより、小径測定ヘッドと大径測定ヘッドとの間で測定用の空気を流通させる構成となっている場合、小径測定ヘッドの外面と大径測定ヘッドの内面との間の空間を経て測定用の空気が外部に漏れ出てしまうといったことを抑制でき、高い測定精度を得ることが可能である。また、パッキンによってフローティング機構を構築していることにより、このフローティング機構の小型化による省スペース化および低コスト化を図ることもできる。
【0013】
また、前記小径測定ヘッドはヘッドベース部材に支持されており、前記ヘッドベース部材に対し前記小径測定ヘッドがフローティング機構によって径方向への相対変位が可能に支持されている。
【0014】
この構成によれば、ヘッドベース部材に対する小径測定ヘッドの径方向での相対変位によって、小径開口部に対する小径測定ヘッドの挿入を容易に行うことが可能になる。これにより、各測定ヘッドを各開口部それぞれに挿入することがより確実に可能となり、小径開口部の内径および大径開口部の内径の同時測定を確実に行うことが可能になる。
【0015】
この場合のフローティング機構としては、一対のレースを備え、一方のレースが前記小径測定ヘッドに固定され、他方のレースが前記ヘッドベース部材に固定されたスラストベアリングを備えて構成されている。
【0016】
小径測定ヘッドのフローティング機構としてスラストベアリングを採用したことにより、小径測定ヘッドのフローティング支持状態を長期間に亘って安定的に維持することができる。
【0017】
また、前述した構成の測定ヘッドを構成する小径測定ヘッドおよび大径測定ヘッドそれぞれの内部に設けられている空気通路の構成としては以下のものが挙げられる。つまり、前記小径測定ヘッドには、前記小径の開口部の内面に向けて空気を吹き出す小径測定用空気吹出孔が形成されており、前記大径測定ヘッドには、前記大径の開口部の内面に向けて空気を吹き出す大径測定用空気吹出孔が形成されている。また、前記小径測定ヘッドには、前記小径の開口部への挿入方向に沿う方向に延在して前記小径測定用空気吹出孔に繋がる小径測定用空気通路と、前記挿入方向に沿う方向に延在して前記大径測定用空気吹出孔に向けて測定用の空気を供給するための大径測定用上流側空気通路とが設けられている。また、前記大径測定ヘッドには、前記挿入方向に沿う方向に延在して前記大径測定用空気吹出孔に繋がる大径測定用下流側空気通路が設けられており、前記小径測定ヘッドおよび前記大径測定ヘッドそれぞれには、前記大径測定用上流側空気通路と大径測定用下流側空気通路とを連通させるように前記挿入方向に対して交差する方向に延在する連絡通路が設けられている。そして、前記パッキンは、前記挿入方向に沿う方向における前記連絡通路の両側にそれぞれ配設されている。
【0018】
この構成によれば、大径測定用上流側空気通路と大径測定用下流側空気通路とを連通させる連絡通路は、小径測定ヘッドの外面と大径測定ヘッドの内面との間の空間にも連通することになるが、この連絡通路の両側にパッキンが設けられていることにより、連絡通路から各測定ヘッド同士の間の空間を経て空気が外部に漏れ出てしまうといったことを抑制できる。つまり、パッキンに、フローティング機構としての機能と、空気が外部に漏れ出てしまうことを抑制するシール機能とを兼用させることができ、これら機能を省スペース化を図りながら実現することができる。
【0019】
また、前述した構成の測定ヘッドを備えた空気マイクロメータも本発明の技術的思想の範疇である。つまり、前記小径測定ヘッドから前記小径の開口部の内面に向けて圧縮空気を吹き出すことにより得られた前記小径の開口部の内側の寸法の測定結果、および、前記大径測定ヘッドから前記大径の開口部の内面に向けて圧縮空気を吹き出すことにより得られた前記大径の開口部の内側の寸法の測定結果をそれぞれ表示可能な表示部を備えた空気マイクロメータである。
【0020】
これにより、小径開口部および大径開口部の各内径を高い精度で同時に測定することを可能にする空気マイクロメータを実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、測定対象物に形成されている複数種類の開口部(内径寸法が互いに異なり且つ連続する複数種類の開口部)のうち小径開口部に挿入される小径測定ヘッドに対し、大径開口部に挿入される大径測定ヘッドをフローティング機構によって径方向への相対変位を可能に支持している。このため、測定対象物の製造誤差等に起因して小径開口部と大径開口部との間に心ズレが生じている場合であっても、小径開口部に対する小径測定ヘッドの挿入および大径開口部に対する大径測定ヘッドの挿入を行うことが可能になる。その結果、小径測定ヘッドの空気吹出孔から小径開口部の内面に向けての空気の吹き出しによる当該小径開口部の内径の測定、および、大径測定ヘッドの空気吹出孔から大径開口部の内面に向けての空気の吹き出しによる当該大径開口部の内径の測定を高い精度で同時に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る空気マイクロメータの全体構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る空気マイクロメータの制御系の概略を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る空気マイクロメータの測定ヘッドおよびその周辺を示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る小径測定ヘッドにおける小径測定ヘッドゲージ部の基端部およびその周辺を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は
図3におけるa-a線に沿った断面図であり、
図5(b)は
図3におけるb-b線に沿った断面図であり、
図5(c)は
図3におけるc-c線に沿った断面図であり、
図5(d)は
図3におけるd-d線に沿った断面図であり、
図5(e)は
図3におけるe-e線に沿った断面図である。
【
図6】
図6(a)は
図5(a)におけるf-f線に対応した位置での断面図であり、
図6(b)は
図5(a)におけるg-g線に対応した位置での断面図であり、
図6(c)は
図5(a)におけるh-h線に対応した位置での断面図である。
【
図7】
図7(a)は上下方向に空気を吹き出す上下方向吹き出し系の空気供給経路を説明するための概略図であり、
図7(b)は水平方向に空気を吹き出す水平方向吹き出し系の空気供給経路を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、2種類の測定ヘッドを備え、各測定ヘッドが共にフローティング機構によって支持されている構成を例に挙げて説明する。尚、本発明の技術的思想は、3種類以上の測定ヘッドを備え、各測定ヘッドが共にフローティング機構によって支持されている構成も含む。
【0024】
-空気マイクロメータの全体構成-
先ず、本発明に係る測定ヘッドを備えた空気マイクロメータの全体構成について簡単に説明する。
図1は、本実施形態に係る空気マイクロメータ1の全体構成を示す図である。この
図1に示すように、本実施形態に係る空気マイクロメータ1は、コンプレッサ等の空気圧発生源(図示せず)と、空気圧発生源より吐出された圧縮空気中のミストを捕集するミストセパレータ2と、空気圧発生源より吐出された圧縮空気を設定圧力に調整するレギュレータ3と、レギュレータ3を経て設定圧力の空気が供給される測定ヘッド4と、測定ヘッド4が測定対象物Wの開口部H1,H2に挿入された際に該測定ヘッド4を介して測定された圧力変化を電気信号に変換するとともに、変換された電気信号に基づいて演算処理し、演算結果を表示する制御装置5とを備えた構成となっている。
【0025】
測定ヘッド4は、自動機の測定ステージに固定された測定対象物Wに対して図示しない移動機構を介して進退するように設けられている。
【0026】
また、制御装置5は、
図2に示すように、測定対象物Wの開口部H1,H2に測定ヘッド4を挿入した際に測定された圧力変化を電気信号に変換する空気電気変換手段51と、空気電気変換手段51によって変換された電気信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換手段52と、アナログデジタル変換手段52によって変換されたデジタル信号が入力されるとともに、入力されたデジタル信号を、予め組み込まれたプログラムにしたがって演算処理するCPU、RAMおよびROMを含む測定データ演算手段53と、測定データ演算手段53において演算処理された結果を測定値として表示するLEDなどの測定データ表示手段54とを含んだ構成となっている。
【0027】
なお、詳細には図示しないが、制御装置5には、液晶モニタなどの表示装置や、キーボードなどの入力装置を別途接続することができ、入力装置を通して各種データなどを入力し、演算結果などを表示装置に表示することもできる。
【0028】
-測定ヘッドの構成-
次に、本実施形態の特徴である測定ヘッド4の構成について説明する。本実施形態に係る測定ヘッド4は、内径寸法が互いに異なる2種類の開口部H1,H2を有する測定対象物Wにおける前記各内径寸法の同時測定を可能に構成されたものである。
【0029】
ここで測定対象物Wについて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る測定ヘッド4を利用して測定される測定対象物Wは、中央部に2種類の開口部H1,H2を有している。具体的には、
図1に示すように、右側(測定ヘッド4が挿入される奥側)に位置する小径開口部H1と、該小径開口部H1の左側(測定ヘッド4が挿入される手前側)に連続し、該小径開口部H1の内径寸法よりも大径とされた大径開口部H2とを備えている。これら小径開口部H1および大径開口部H2は、略同軸上において軸心に沿う方向で連続して形成されたものである。言い換えると、これら小径開口部H1および大径開口部H2は、その内面形状(各開口部H1,H2の中心線に直交する鉛直方向に沿う方向での断面の内縁形状)における中心線が略一致した同軸上に形成されたものである。
【0030】
図3は、本実施形態に係る空気マイクロメータ1の測定ヘッド4およびその周辺を示す断面図である。この
図3では、中心線Oの上側が測定ヘッド4の上下方向での断面を示しており、中心線Oの下側が測定ヘッド4の水平方向での断面を示している。尚、この
図3では、必要に応じて(内部に形成されている空気通路等の見やすさ等を考慮して)断面を表すハッチングを部分的に省略している。
【0031】
尚、以下の説明では、測定対象物Wの開口部H1,H2に対して水平方向から測定ヘッド4を挿入することを前提とし、
図3における右側(測定対象物Wの開口部H1,H2に対して測定ヘッド4を挿入していく側)を先端側と呼び、該先端側とは反対側(
図3における左側)を基端側と呼ぶこととする。また、
図3に示すように測定ヘッド4を横置きとした場合(中心線Oの延在方向を水平方向とした場合)における鉛直方向上側を単に上側と呼び鉛直方向下側を単に下側と呼ぶこととする。更に、測定ヘッド4を横置きとした場合における当該測定ヘッド4の軸心周り(中心線O周り)の方向を周方向と呼ぶこととする。
【0032】
測定ヘッド4は、ヘッドベース部材6(
図3では、このヘッドベース部材6の先端側部分のみを示している)の先端部にスラストベアリング61,61を介して支持された小径測定ヘッド7と、該小径測定ヘッド7に対し、外周側において後述するフローティング機構9を介して支持された大径測定ヘッド8とを備えている。以下、ヘッドベース部材6、小径測定ヘッド7および大径測定ヘッド8それぞれについて具体的に説明する。
【0033】
(ヘッドベース部材)
ヘッドベース部材6は、基端側(
図3における左側)に位置する第1シャフト部材62と、該第1シャフト部材62の先端側にボルト締結された第2シャフト部材63とを有している。これらシャフト部材62,63の内部には、各測定ヘッド7,8に向けて測定用の空気(以下、単に空気という場合もある)を供給するための配管が挿通される空間Sが設けられている。
【0034】
第2シャフト部材63の外周部の2箇所(中心線Oに沿う方向で所定間隔を存した2箇所)にはスラストベアリング61,61が装着されている。これらスラストベアリング61,61は、ヘッドベース部材6に対して小径測定ヘッド7を支持するためのものである。具体的には、例えば各スラストベアリング61,61の各レースのうち、相手側のスラストベアリング61に対向する位置にあるレースが第2シャフト部材63に固定されている。
【0035】
(小径測定ヘッドの構成)
小径測定ヘッド7は、ヘッドベース部材6の第2シャフト部材63に対してスラストベアリング61,61を介して支持されており、複数の部材が一体的に組み付けられてユニット化された構成となっている。
【0036】
具体的に、小径測定ヘッド7は、基端側(ヘッドベース部材6に支持される側であって
図3における左側)から順に、被支持部71、円筒部72、小径測定ヘッド本体部73が一体的に組み付けられて構成されている。
【0037】
被支持部71は、スラストベアリング61,61のレースに固定されている。例えば各スラストベアリング61,61の各レースのうち、相手側のスラストベアリング61に対向する位置とは反対側の位置にあるレースに被支持部71は固定されている。このように各スラストベアリング61,61にあっては各レースのうち、一方のレースがヘッドベース部材6の第2シャフト部材63に固定され、他方のレースが小径測定ヘッド7の被支持部71に固定されている。一般にスラストベアリング61,61は、レース同士が径方向に僅かに相対移動(ガタによる相対変位)が可能となっている。このため、ヘッドベース部材6に対して小径測定ヘッド7は径方向に僅かに相対移動が可能(ヘッドベース部材6の軸心に対して小径測定ヘッド7の軸心が僅かに変位可能)となっている。これにより、スラストベアリング61,61はフローティング機構としての機能を有し、小径測定ヘッド7はヘッドベース部材6に対してフローティング状態で支持されていることになる。
【0038】
円筒部72は、被支持部71の先端側の端面にボルトB1によって締結された円筒形状の部材である。
【0039】
小径測定ヘッド本体部73は、基端側から順に、第1円柱部74、第2円柱部75、第3円柱部76、小径測定ヘッドゲージ部77が一体的に設けられている。
【0040】
第1円柱部74は、円筒部72の先端側の端面にボルトB2によって締結されている。この第1円柱部74は、円筒部72の外径と略同一の外径を有する大径部74aと、円筒部72の内径と略同一の外径を有する小径部74bとを備えている。小径部74bが円筒部72の内側に嵌め込まれ、大径部74aが円筒部72の先端側の端面にボルトB2によって締結されている。
【0041】
第2円柱部75は、第1円柱部74の先端側に連続し、該第1円柱部74の外径よりも僅かに小さい外径を有する円柱形状の部分である。
【0042】
第3円柱部76は、第2円柱部75の先端側に連続し、該第2円柱部75の外径よりも僅かに小さい外径を有する円柱形状の部分である。また、この第3円柱部76は、その先端側において僅かに大径に形成された円柱形状の係合円柱部76aを備えている。この係合円柱部76aは、小径測定ヘッド7に大径測定ヘッド8を係合するために利用される部分である。この係合状態については後述する。
【0043】
小径測定ヘッドゲージ部77は、第3円柱部76の先端側に連続し、該第3円柱部76の外径よりも小さい外径を有する円柱形状の部分である。この小径測定ヘッドゲージ部77は、基端側に位置する基端部78と、該基端部78の先端側に連続し且つ基端部78よりも僅かに小径とされた先端部79とを備えている。
【0044】
図4は、基端部78およびその周辺を示す断面図である。この
図4にあっても、中心線Oの上側が測定ヘッド4の上下方向での断面を示しており、中心線Oの下側が測定ヘッド4の水平方向での断面を示している。
【0045】
図4に示すように、基端部78には、小径測定ヘッドゲージ部77の軸心に沿う方向における2箇所に、全周囲に亘る凹陥部78a,78bが形成されている。以下では、これら凹陥部78a,78bのうち、基端側の凹陥部を第1凹陥部78aと呼び、先端側の凹陥部を第2凹陥部78bと呼ぶこととする。
【0046】
図3に示すように、小径測定ヘッドゲージ部77の先端部79の先端付近には、水平方向および上下方向それぞれに向けて空気を吹き出すための空気吹出孔(小径測定用空気吹出孔)7X,7Yが設けられている。
図3では、これら4方向の空気吹出孔のうち水平方向の一方側に空気を吹き出すための空気吹出孔7Xおよび上方向に空気を吹き出すための空気吹出孔7Yのみが現れている。つまり、小径測定ヘッドゲージ部77の先端部79の先端付近には、この
図3に現れている空気吹出孔7X,7Y以外に、水平方向の他方側に空気を吹き出すための空気吹出孔および下方向に空気を吹き出すための空気吹出孔も設けられている。これら空気吹出孔7X,7X,7Y,7Yに向けて空気を供給する空気供給通路については後述する。
【0047】
(大径測定ヘッドの構成)
図3および
図4に示すように、大径測定ヘッド8は、軸心部分に当該軸心(中心線O)に沿って貫通する貫通孔81が設けられている。この貫通孔81の内径寸法は、小径測定ヘッドゲージ部77の外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。つまり、この貫通孔81としては、
図4に示すように、小径測定ヘッドゲージ部77の基端部78に対応し且つ該基端部78の外径寸法よりも僅かに大きな内径寸法を有する基端側貫通孔81aと、小径測定ヘッドゲージ部77の先端部79に対応し且つ該先端部79の外径寸法よりも僅かに大きな内径寸法を有する先端側貫通孔81bとを有している。
【0048】
そして、このように構成された貫通孔81に小径測定ヘッドゲージ部77が挿通されている。これにより、小径測定ヘッドゲージ部77の基端部78は基端側貫通孔81aの内部に僅かな隙間を存した状態で挿入され、小径測定ヘッドゲージ部77の先端部79は先端側貫通孔81b内部に僅かな隙間を存した状態で挿入されていることになる。また、小径測定ヘッドゲージ部77の長さ寸法(中心線Oに沿う方向での長さ寸法)は大径測定ヘッド8の長さ寸法よりも所定寸法だけ長く(例えば2倍程度の長さに)設定されている。このため、
図3に示すように、大径測定ヘッド8の貫通孔81に小径測定ヘッドゲージ部77が挿通された状態にあっては、小径測定ヘッドゲージ部77の先端部分が大径測定ヘッド8よりも先端側に位置しており、空気吹出孔7X,7Yは、大径測定ヘッド8から外れた位置にある。これら小径測定ヘッドゲージ部77および大径測定ヘッド8の長さ寸法は、測定対象物Wの開口部H1,H2の形状に応じて予め設定されたものである。
【0049】
また、
図3に示すように、大径測定ヘッド8は、外径寸法が前記係合円柱部76aの外径寸法に略一致した大径測定ヘッド本体部82と、該大径測定ヘッド本体部82の先端側に連続し且つ大径測定ヘッド本体部82よりも僅かに大径とされたノズル部83とを備えている。
【0050】
図4に示すように、大径測定ヘッド本体部82における基端部近傍には、その周方向の全体に亘って凹陥されて成る係合溝82aが形成されている。
【0051】
小径測定ヘッド7と大径測定ヘッド8との係合状態としては、小径測定ヘッド7における係合円柱部76aの先端側の端面と、大径測定ヘッド8の基端側の端面とが当接され、小径測定ヘッド7の係合円柱部76aと大径測定ヘッド8の係合溝82aとに跨がって係合リング部材84が外装されて成る。つまり、係合リング部材84には、基端側の端部において内周側に向かって突出する基端側係止突起84a、および、先端側の端部において内周側に向かって突出する先端側係止突起84bがそれぞれ周方向の全体に亘って設けられており、基端側係止突起84aが係合円柱部76aの基端側の端面に当接し、先端側係止突起84bが係合溝82aに係合することにより、小径測定ヘッド7と大径測定ヘッド8とを係合している。
【0052】
また、大径測定ヘッド8の貫通孔81(より具体的には基端側貫通孔81a)の内面には、大径測定ヘッド8の中心線Oに沿う方向における2箇所に、全周囲に亘る凹陥部81c,81dが形成されている。以下では、これら凹陥部81c,81dのうち、基端側の凹陥部を第1凹陥部81cと呼び、先端側の凹陥部を第2凹陥部81dと呼ぶこととする。第1凹陥部81cは、小径測定ヘッド7と大径測定ヘッド8との係合状態において、小径測定ヘッドゲージ部77における第1凹陥部78aに対向した位置(径方向で対向した位置)に形成されている。また、第2凹陥部81dは、小径測定ヘッド7と大径測定ヘッド8との係合状態において、小径測定ヘッドゲージ部77における第2凹陥部78bに対向した位置(径方向で対向した位置)に形成されている。
【0053】
図3に示すように、ノズル部83の先端付近には、水平方向および上下方向それぞれに向けて空気を吹き出すための空気吹出孔(大径測定用空気吹出孔)8X,8Yが設けられている。
図3では、これら4方向の空気吹出孔のうち水平方向の一方側に空気を吹き出すための空気吹出孔8Xおよび上方向に空気を吹き出すための空気吹出孔8Yのみが現れている。つまり、ノズル部83の先端付近には、この
図3に現れている空気吹出孔8X,8Y以外に、水平方向の他方側に空気を吹き出すための空気吹出孔および下方向に空気を吹き出すための空気吹出孔も設けられている。これら空気吹出孔8X,8X,8Y,8Yに向けて空気を供給する空気供給通路については後述する。
【0054】
そして、
図4に示すように、大径測定ヘッド8の貫通孔81(より具体的には基端側貫通孔81a)の内面には、大径測定ヘッド8の軸心に沿う方向における4箇所に全周囲に亘るパッキン装着溝85a~85dが形成されている。このパッキン装着溝85a~85dの形成位置は、第1凹陥部81cの両側(軸心に沿う方向での両側)および第2凹陥部81dの両側(軸心に沿う方向での両側)となっている。以下では、これらパッキン装着溝85a~85dのうち、第1凹陥部81cの基端側のパッキン装着溝を第1パッキン装着溝85aと呼び、第1凹陥部81cの先端側のパッキン装着溝を第2パッキン装着溝85bと呼ぶこととする。また、第2凹陥部81dの基端側のパッキン装着溝を第3パッキン装着溝85cと呼び、第2凹陥部81dの先端側のパッキン装着溝を第4パッキン装着溝85dと呼ぶこととする。
【0055】
これらパッキン装着溝85a~85dそれぞれには、フローティング機構9を構成するゴム製のパッキン91~94が装着されている。各パッキン91~94としてはU字パッキン(断面がU字型のパッキン)が適用されている。各パッキン91~94は、凹陥部81c,81dの配設位置に向けて開放するように(断面のU字形状の開放方向が凹陥部81c,81dの配設位置に向かうように)装着されている。つまり、第1パッキン装着溝85aおよび第3パッキン装着溝85cにそれぞれ装着されているパッキン91,93は先端側に向けて開放するように配置されている。逆に、第2パッキン装着溝85bおよび第4パッキン装着溝85dにそれぞれ装着されているパッキン92,94は基端側に向けて開放するように配置されている。各パッキン91~94の内周面は小径測定ヘッド7の小径測定ヘッドゲージ部77の外周面の周方向の全体に亘って当接している。また、各パッキン91~94の外周面は大径測定ヘッド8の内周面の周方向の全体(パッキン装着溝85a~85dの底面の周方向の全体)に亘って当接している。また、前述したように、大径測定ヘッド8の貫通孔81の内径寸法は、小径測定ヘッド7の小径測定ヘッドゲージ部77の外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。このため、大径測定ヘッド8は、各パッキン91~94によって小径測定ヘッド7に弾性的に支持され、小径測定ヘッド7に対してフローティングされた状態で支持されている。つまり、小径測定ヘッド7に対し大径測定ヘッド8が径方向への相対変位が可能に支持された構成となっている。
【0056】
-空気通路の構成-
次に、各測定ヘッド7,8の内部に形成されている空気通路について説明する。
【0057】
前述したように、小径測定ヘッド7の小径測定ヘッドゲージ部77の先端部分には上下方向および左右方向に向けてそれぞれ空気を吹き出す4個の空気吹出孔7X,7Yが形成されている。また、大径測定ヘッド8のノズル部83にも上下方向および左右方向に向けてそれぞれ空気を吹き出す4個の空気吹出孔8X,8Yが形成されている。本実施形態に係る空気マイクロメータ1では、各空気吹出孔7X,7Y,8X,8Yに個別に空気が供給され、それぞれから空気を吹き出した状態において測定された圧力変化に基づいて小径開口部H1の内径および大径開口部H2の内径それぞれを測定するようになっている。以下、各空気吹出孔7X,7Y,8X,8Yに空気を供給する空気通路について具体的に説明する。
【0058】
ヘッドベース部材6の内部に設けられている空間Sには、小径測定ヘッド7に対する2系統(上下方向に空気を吹き出す系統および水平方向に空気を吹き出す系統)それぞれに空気を供給するための配管、および、大径測定ヘッド8に対する2系統(上下方向に空気を吹き出す系統および水平方向に空気を吹き出す系統)それぞれに空気を供給するための配管が挿通されている。そして、これら配管が継手部材100X,100Yを介して各空気通路に接続されている。
【0059】
図5(a)は
図3におけるa-a線に沿った断面図であり、
図5(b)は
図3におけるb-b線に沿った断面図であり、
図5(c)は
図3におけるc-c線に沿った断面図であり、
図5(d)は
図3におけるd-d線に沿った断面図であり、
図5(e)は
図3におけるe-e線に沿った断面図である。また、
図6(a)は
図5(a)におけるf-f線に対応した位置での断面図であり、
図6(b)は
図5(a)におけるg-g線に対応した位置での断面図であり、
図6(c)は
図5(a)におけるh-h線に対応した位置での断面図である。これら
図5および
図6にあっても、内部に形成されている空気通路等の見やすさ等を考慮して断面を表すハッチングを省略している。更に、
図7(a)は上下方向に空気を吹き出す上下方向吹き出し系の空気供給経路を説明するための概略図であり、
図7(b)は水平方向に空気を吹き出す水平方向吹き出し系の空気供給経路を説明するための概略図である。
【0060】
以下、小径測定ヘッド7の空気通路(空気吹出孔7X,7Yに向けて空気を供給するための通路)および大径測定ヘッド8の空気通路(空気吹出孔8X,8Yに向けて空気を供給するための通路)それぞれについて説明する。
【0061】
(小径開口部測定用の空気通路)
図5(a)および
図7(a)に示すように、各継手部材100X,100Y,200X,200Yのうち、上側の継手部材100Yが、小径測定ヘッド7において上下方向に空気を吹き出す空気吹出孔7Y,7Yに向けて空気を供給するためのものである。また、
図5(a)および
図7(b)における左側の継手部材100Xが、小径測定ヘッド7において水平方向に空気を吹き出す空気吹出孔7X,7Xに向けて空気を供給するためのものである。
【0062】
上側の継手部材100Yに繋がる空気通路(小径測定用空気通路)110は、第2円柱部75の内部において該第2円柱部75の中心部に向かって延在し、上下方向で2系統に分岐されている(
図5(b)、
図6(a)および
図7(a)を参照)。そのうち上側の空気通路111は、第3円柱部76の内部および小径測定ヘッドゲージ部77の内部を先端側に向かって延在し(
図3、
図5(c)~(e)および
図7(a)を参照)、上側に開放する空気吹出孔7Yに繋がっている(
図3および
図7(a)を参照)。
【0063】
一方、下側の空気通路112は、第3円柱部76の内部および小径測定ヘッドゲージ部77の内部を先端側に向かって延在し(
図5(c)~(e)および
図7(a)を参照)、下側に開放する空気吹出孔7Yに繋がっている(
図7(a)を参照)。これにより、この上側の継手部材100Yに繋がる空気通路110は、他の空気通路に連通されることなく空気吹出孔7Y,7Yに空気を供給することが可能となっている。
【0064】
また、左側の継手部材100Xに繋がる空気通路(小径測定用空気通路)120は、第2円柱部75の内部において該第2円柱部75の中心部に向かって延在し、水平方向で2系統に分岐されている(
図5(b)、
図6(b)および
図7(b)を参照)。具体的には、空気通路110の分岐位置よりも先端側の位置において分岐されている。そのうち水平方向の一方側の空気通路121は、第3円柱部76の内部および小径測定ヘッドゲージ部77の内部を先端側に向かって延在し(
図3、
図5(c)~(e)および
図7(b)を参照)、水平方向の一方側に開放する空気吹出孔7Xに繋がっている(
図3および
図7(b)を参照)。
【0065】
一方、水平方向の他方側の空気通路122は、第3円柱部76の内部および小径測定ヘッドゲージ部77の内部を先端側に向かって延在し(
図5(c)~(e)および
図7(b)を参照)、水平方向の他方側に開放する空気吹出孔7Xに繋がっている(
図7(b)を参照)。これにより、この左側の継手部材100Xに繋がる空気通路120は、他の空気通路に連通されることなく空気吹出孔7X,7Xに空気を供給することが可能となっている。
【0066】
(大径開口部測定用の空気通路)
図5(a)および
図7(a)に示すように、各継手部材100X,100Y,200X,200Yのうち、下側の継手部材200Yが、大径測定ヘッド8において上下方向に空気を吹き出す空気吹出孔8Y,8Yに空気を供給するためのものである。また、
図5(a)および
図7(b)における右側の継手部材200Xが、大径測定ヘッド8において水平方向に空気を吹き出す空気吹出孔8X,8Xに空気を供給するためのものである。
【0067】
下側の継手部材200Yに繋がる空気通路(大径測定用上流側空気通路)210は、先端側に向かって延在すると共に、第2円柱部75の内部において該第2円柱部75の中心部に向かって延在し(
図5(b)および
図7(a)を参照)、その後、小径測定ヘッドゲージ部77の基端部78の内部まで達している。また、この基端部78には、内周側が空気通路210に連通し、外周側が第1凹陥部78aに開放する内側連絡通路211が設けられている(
図5(d)および
図7(a)を参照)。また、大径測定ヘッド8の内部における上部には、一端が上側の空気吹出孔8Yに連通し、他端が大径測定ヘッド8の基端部近傍まで達する空気通路(大径測定用下流側空気通路)212が形成されている(
図5(e)および
図7(a)を参照)。そして、この大径測定ヘッド8の内部には、外周側が空気通路212に連通し、内周側が第1凹陥部81cに開放する外側連絡通路213が形成されている(
図4、
図5(d)および
図7(a)を参照)。これにより、空気通路210と上側の空気吹出孔8Yとが、内側連絡通路211、第1凹陥部78aと第1凹陥部81cとの間の空間、外側連絡通路213、および、空気通路212によって連通されている。
【0068】
一方、大径測定ヘッド8の内部における下部には、一端が下側の空気吹出孔8Yに連通し、他端が大径測定ヘッド8の基端部近傍まで達する空気通路(大径測定用下流側空気通路)214が形成されている(
図5(e)および
図7(a)を参照)。そして、この大径測定ヘッド8の内部には、外周側が空気通路214に連通し、内周側が第1凹陥部81cに開放する外側連絡通路215が形成されている(
図5(d)および
図7(a)を参照)。これにより、空気通路210と下側の空気吹出孔8Yとが、内側連絡通路211、第1凹陥部78aと第2凹陥部81cとの間の空間、外側連絡通路215、および、空気通路214によって連通されている。
【0069】
また、右側の継手部材200Xに繋がる空気通路(大径測定用上流側空気通路)220は、先端側に向かって延在すると共に、第2円柱部75の内部において該第2円柱部75の中心部に向かって延在し(
図5(b)および
図7(b)を参照)、その後、小径測定ヘッドゲージ部77の基端部78の内部まで達している。また、この基端部78には、内周側が空気通路220に連通し、外周側が第2凹陥部78bに開放する内側連絡通路221が設けられている(
図5(e)および
図7(b)を参照)。また、大径測定ヘッド8の内部における水平方向の一方側には、一端が水平方向の一方側の空気吹出孔8Xに連通し、他端が大径測定ヘッド8の基端部近傍まで達する空気通路(大径測定用下流側空気通路)222が形成されている(
図7(b)を参照)。そして、この大径測定ヘッド8の内部には、外周側が空気通路222に連通し、内周側が第2凹陥部81dに開放する外側連絡通路223が形成されている(
図4、
図5(e)および
図7(b)を参照)。これにより、空気通路220と水平方向の一方側の空気吹出孔8Xとが、内側連絡通路221、第2凹陥部78bと第2凹陥部81dとの間の空間、外側連絡通路223、および、空気通路222によって連通されている。
【0070】
一方、大径測定ヘッド8の内部における水平方向の他方側には、一端が水平方向の他方側の空気吹出孔8Xに連通し、他端が大径測定ヘッド8の基端部近傍まで達する空気通路(大径測定用下流側空気通路)224が形成されている(
図7(b)を参照)。そして、この大径測定ヘッド8の内部には、外周側が空気通路224に連通し、内周側が第2凹陥部81dに開放する外側連絡通路225が設けられている(
図5(e)および
図7(b)を参照)。これにより、空気通路220と水平方向の他方側の空気吹出孔8Xとが、内側連絡通路221、第2凹陥部78bと第2凹陥部81dとの間の空間、外側連絡通路225、および、空気通路224によって連通されている。
【0071】
以上の構成により、各空気吹出孔7X,7Y,8X,8Yに個別に空気が供給され、それぞれから空気を吹き出した状態において測定された圧力変化に基づいて小径開口部H1の内径および大径開口部H2の内径それぞれが測定されることになる。具体的には、前記測定データ表示手段54には、小径測定ヘッド7の空気吹出孔7X,7Yから小径開口部H1の内面に向けて圧縮空気を吹き出すことにより得られた該小径開口部H1の内径寸法の測定結果、および、大径測定ヘッド8の空気吹出孔8X,8Yから大径開口部H2の内面に向けて圧縮空気を吹き出すことにより得られた該大径開口部H2の内径寸法の測定結果をそれぞれ表示可能な表示部が備えられており、この表示部に、測定結果としての小径開口部H1の内径寸法および大径開口部H2の内径寸法がそれぞれ表示されることになる。
【0072】
-実施形態の効果-
以上説明したように、本実施形態では、測定対象物Wに形成されている小径開口部H1に挿入される小径測定ヘッド7に対し、大径開口部H2に挿入される大径測定ヘッド8を複数のパッキン91~94で構成されるフローティング機構9によって径方向への相対変位を可能に支持している。このため、測定対象物Wの製造誤差等に起因して小径開口部H1と大径開口部H2との間に心ズレが生じている場合であっても、小径開口部H1に対する小径測定ヘッド7の挿入および大径開口部H2に対する大径測定ヘッド8の挿入を行うことが可能になる。その結果、小径測定ヘッド7の空気吹出孔7X,7Yから小径開口部H1の内面に向けての空気の吹き出しによる当該小径開口部H1の内径の測定、および、大径測定ヘッド8の空気吹出孔8X,8Yから大径開口部H2の内面に向けての空気の吹き出しによる当該大径開口部H2の内径の測定を高い精度で同時に行うことが可能になる。
【0073】
また、本実施形態では、小径測定ヘッド7の外面と大径測定ヘッド8の内面との間をパッキン91~94によってシールすることも可能である。具体的には、
図4に示すように、第1凹陥部78aと第1凹陥部81cとの間の空間は、その両側に位置するパッキン91,92によってシールされ、第2凹陥部78bと第2凹陥部81dとの間の空間は、その両側に位置するパッキン93,94によってシールされ、各空間は外部から遮断されている。これにより、小径測定ヘッド7の外面と大径測定ヘッド8の内面との間の空間を経て測定用の空気が外部に漏れ出てしまうといったことを抑制でき、高い測定精度を得ることが可能である。また、パッキン91~94によってフローティング機構9を構築していることにより、このフローティング機構9の小型化による省スペース化および低コスト化を図ることもできる。
【0074】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0075】
例えば、前記実施形態では、ヘッドベース部材6に対する小径測定ヘッド7のフローティング機構としてスラストベアリング61を利用していた。本発明はこれに限らず、この小径測定ヘッド7のフローティング機構についてもパッキンを利用してもよい。
【0076】
また、前記実施形態では、測定対象物Wの開口部H1,H2に対して水平方向から測定ヘッド4を挿入するものとしていた。本発明はこれに限らず、測定対象物Wの開口部H1,H2に対して鉛直方向から測定ヘッド4を挿入するものであってもよい。
【0077】
また、前記実施形態では、各パッキン91~94としてはU字パッキンを適用していた。本発明はこれに限らず、種々の形状のパッキンを適用することが可能である。例えば、V型やL型のパッキンや、所謂ラビリンスシール型のパッキンを適用するようにしてもよい。また、前記実施形態では、第1凹陥部81cの両側(中心線Oに沿う方向での両側)および第2凹陥部81dの両側それぞれにパッキンを1個ずつ配設するようにしていた。本発明はこれに限らず、各凹陥部81c,81dの両側それぞれに複数個のパッキンを配設するようにしてもよい。
【0078】
また、本発明に係るフローティング機構(パッキン91~94を利用してフローティング状態で測定ヘッドを支持する機構)9については、複数種類の測定ヘッド7,8を備えた空気マイクロメータ1に限らず、単一の測定ヘッドを備えた空気マイクロメータ(単一内径の開口部の内径を測定するための空気マイクロメータ)に対しても適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、測定対象物に形成された小径開口部および大径開口部それぞれの内径の測定を同時に行うことが可能な空気マイクロメータの測定ヘッドに適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 空気マイクロメータ
4 測定ヘッド
6 ヘッドベース部材
61 スラストベアリング
7 小径測定ヘッド
7X,7Y 空気吹出孔(小径測定用空気吹出孔)
8 大径測定ヘッド
81 貫通孔
8X,8Y 空気吹出孔(大径測定用空気吹出孔)
9 フローティング機構
91~94 パッキン
110,120 空気通路(小径測定用空気通路)
210,220 空気通路(大径測定用上流側空気通路)
212,214,222,224 空気通路(大径測定用下流側空気通路)
211,221 内側連絡通路(連絡通路)
213,215,223,225 外側連絡通路(連絡通路)
W 測定対象物
H1 小径開口部
H2 大径開口部