(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009752
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】多葉性埋め込み形体を有する研磨層を有する化学機械平坦化パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20240116BHJP
C08J 9/32 20060101ALI20240116BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240116BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240116BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B24B37/24 C
C08J9/32 CFF
C08G18/00 F
C08G18/10
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023078369
(22)【出願日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】17/811,624
(32)【優先日】2022-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】バイニャン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ドナ・エム・オールデン
(72)【発明者】
【氏名】シェン-ファン・ツェン
【テーマコード(参考)】
3C158
4F074
4J034
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EB01
3C158EB10
3C158EB28
3C158EB29
4F074AA78
4F074CB62
4F074CB76
4F074CB79
4F074CB85
4F074DA56
4J034BA02
4J034BA06
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CC03
4J034CC12
4J034HA02
4J034HA11
4J034HC12
4J034HC71
4J034JA42
4J034NA09
4J034QC01
4J034RA19
5F057AA24
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057EB03
5F057EB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体基板又は磁気ディスクなどの基板を研磨し、平坦化するのに有用な研磨パッドを提供する。
【解決手段】イソシアネート末端化プレポリマーと硬化剤との反応生成物であるポリマーマトリックスを含む研磨層を含む、化学機械研磨のための研磨パッドであって、前記ポリマーマトリックスが硬質セグメント及び軟質セグメントを有し、予備膨張ポリマーマイクロスフェアから形成された多葉性ポリマーエレメントが前記ポリマーマトリックス中に存在する、研磨パッド。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート末端化プレポリマーと硬化剤との反応生成物であるポリマーマトリックスを含む研磨層を含む、化学機械研磨のための研磨パッドであって、前記ポリマーマトリックスが硬質セグメント及び軟質セグメントを有し、予備膨張ポリマーマイクロスフェアから形成された多葉性ポリマーエレメントが前記ポリマーマトリックス中に存在する、研磨パッド。
【請求項2】
前記多葉性ポリマーエレメントが前記予備膨張ポリマーマイクロスフェアの収縮した残余であり、前記研磨層がさらに、実質的に球形又は楕円形である形状を保持する前記予備膨張ポリマーマイクロスフェアの一部分によって形成された気孔を含む、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記多葉性ポリマーエレメントが三つ以上のローブを含む、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記予備膨張ポリマーマイクロスフェアの前記収縮した残余の少なくとも一部分が、残存する不規則な空所を含む、請求項2記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記多葉性ポリマーエレメントのローブの少なくとも一部分が、中心領域から突出する板状の突出部を含む、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記予備膨張ポリマーマイクロスフェアの0.1~20%が前記多葉性ポリマーエレメントを形成する、請求項2記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記予備膨張ポリマーマイクロスフェアが、ポリマーシェルの総重量に基づいて0.1重量%未満の塩素含量を有するポリマーシェルを流体充填コアの周囲に含み、前記流体が気体を含む、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記予備膨張ポリマーマイクロスフェアの収縮した残余が、走査型電子顕微鏡下、×50の倍率で検査したとき、穴又は裂け目を含まない、請求項2記載の研磨パッド。
【請求項9】
請求項1記載の研磨パッドを製造する方法であって、
撹拌タンク中でイソシアネート末端化プレポリマーと予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアとのプレブレンドを調製する工程、
前記プレブレンドの一部分を前記撹拌タンクの底部から導管に通して汲み上げ、前記撹拌タンクの上部領域に再循環させる工程、
前記プレブレンドの一部分を硬化剤と混合して混合物を形成する工程、
前記混合物を型に流し込む工程、及び
前記型の中で前記混合物を硬化させる工程
を含む方法。
【請求項10】
金属、金属酸化物又は両方を含む基板を提供する工程、及び請求項1記載の研磨パッドを使用して前記基板を研磨する工程を含む研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、半導体基板又は磁気ディスクなどの基板を研磨し、平坦化するのに有用な研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械平坦化(CMP)は、三次元多層回路を正確に構築するために集積回路の構造物の層を平らにする、すなわち平坦化するために使用される研磨プロセスである。研磨される層は、多くの場合、下にある基板に堆積された薄膜(たとえば10,000オングストローム未満)である。CMPの目的は、ウェーハ表面上の過剰な材料を除去して、均一な厚みの極めて平らな層を生成することであり、この均一性は、ウェーハ領域全体にわたって広がる。除去速度の制御及び除去の均一性が最重要である。
【0003】
CMPは、基板(たとえばウェーハ)を研磨するために研磨パッド及び研磨流体(たとえばスラリー)を使用する。流体又はスラリーは通常、ナノサイズの粒子を含有する。研磨パッドは、回転するプラテンに取り付けることができる。基板(たとえばウェーハ)は、別個の回転手段を有することができる別個の固定具、すなわちキャリヤに取り付けることができる。研磨パッド及び基板は、制御された荷重の下、高い相対運動速度(すなわち、高い剪断速度)で互いに押し当てられる。スラリーが研磨パッドと基板との間に提供される。この剪断及びパッド/ウェーハ接合部に閉じ込められたスラリー粒子が基板表面を摩耗させて、基板からの材料の除去を生じさせる。
【0004】
研磨パッドは、複数の層;(a)ウェーハと接触して研磨作用を提供する上層(すなわち研磨層)、(b)パッド-ウェーハコンプライアンスを調節するために組み込まれる、より高い圧縮性の一つ以上のサブ層、及び(c)任意選択で、(a)と(b)を接合し、パッド全体を回転プラテンに取り付けるために使用される接着層を含むことができる。上にある研磨層が、CMPプロセスの成功にとってきわめて重要である。
【0005】
多くのCMPパッドにおける研磨層は、ポリオールをイソシアネートと反応させてイソシアネート末端化プレポリマーを形成したのち、硬化剤及びポリマー微小要素と混合することにより、それが、研磨層を形成するための反応を導くことによって形成される独立気泡ポリウレタンを含む。たとえば、米国特許第5,578,362号及び第10,391,606号を参照すること。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示されるものは、イソシアネート末端化プレポリマーと硬化剤との反応生成物であるポリマーマトリックスを含む研磨層を含む、化学機械研磨のための研磨パッドであって、ポリマーマトリックスが硬質セグメント及び軟質セグメントを有し、予備膨張ポリマーマイクロスフェアから形成された多葉性ポリマーエレメントがポリマーマトリックス中に存在する、研磨パッドである。
【0007】
同じく本明細書に開示されるものは、多葉性ポリマーエレメントを含むそのような研磨パッドを製造する方法であって、撹拌タンク中でイソシアネート末端化プレポリマーと予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアとのプレブレンドを調製する工程;プレブレンドの一部分を撹拌タンクの底部から導管に通して汲み上げ、撹拌タンクの上部領域に再循環させる工程;プレブレンドの一部分を硬化剤と混合して混合物を形成する工程;混合物を型に流し込む工程;型の中で混合物を硬化させる工程を含む方法である。
【0008】
さらに本明細書に開示されるものは、金属、金属酸化物又は両方を含む基板を提供する工程、及び本明細書に開示される研磨パッドを使用して基板を研磨する工程を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本明細書に開示される例示的な研磨層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図2】
図2は、比較用研磨層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図3】
図3は、本明細書に開示される例示的な研磨層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図4】
図4は、研磨層の形成に使用されるポリマーマイクロスフェアの一例の図である。
【
図5】
図5は、多葉性形態へと収縮したポリマーマイクロスフェアの一例の図である。
【
図6】
図6は、
図5の収縮したポリマーマイクロスフェアの断面図である。
【
図7】
図7は、曲線形状のローブ(葉状の突出部)を示す、収縮したポリマーマイクロスフェアの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明者らは、良好な研磨性能を有する研磨パッドを見いだした。パッドは、イソシアネート末端化プレポリマーと硬化剤との反応生成物であるポリマーマトリックスを含む研磨層を含み、ポリマーマトリックスは硬質セグメント及び軟質セグメントを有し、予備膨張ポリマーマイクロスフェアから形成された多葉性ポリマーエレメントがポリマーマトリックス中に存在する。研磨パッドは、多葉性ポリマーエレメントを有しない類似のパッドと比べて改善された研磨性能を示す。
【0011】
マトリックスポリマー
ポリマーマトリックスは好ましくはポリウレタンマトリックスである。本明細書の趣旨に関して、ポリウレタンは、ポリウレタン、ポリウレア及びポリウレタン-ウレアコポリマーを含む。これらのポリウレタンポリマーは、硬質セグメントと軟質セグメントとのブレンドで形成されている。硬質セグメント及び軟質セグメントは無定形(amorphous)のままであることが可能であるが、有利には、これらは硬質セグメント領域及び軟質セグメント領域へと組織化する。
【0012】
プレポリマーは、硬化剤との反応のために少なくとも二つのイソシアネート基を含む。換言するならば、各プレポリマーは少なくとも二つのイソシアネート末端基を有する。イソシアネート基はプレポリマー上の末端基であることができる。たとえば、プレポリマーが、分岐又はイソシアネートペンダント基を有しない直鎖状プレポリマーである場合、二つの末端イソシアネート末端基が存在することができる。
【0013】
プレポリマー系は、一つのプレポリマー又は二つ以上のプレポリマーの混合物を含むことができる。重量%未反応イソシアネート基(NCO)範囲は、プレポリマーとそのプレポリマーポリオールとのブレンドによって調節することができる。プレポリマー系は、任意選択で、より低分子量の種、たとえばモノマー、ダイマーなどを含むこともできる。
【0014】
プレポリマーは、多官能芳香族イソシアネート(たとえば芳香族ポリイソシアネート)及びプレポリマーポリオールから形成することができる。
【0015】
本明細書の趣旨に関して、プレポリマーポリオールという語は、ジオール、ポリオール、ポリオールジオール、それらのコポリマー及びそれらの混合物を含む。プレポリマーポリオールの例は、ポリエーテルポリオール、たとえばポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール及びそれらの混合物、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びそれらの混合物を含む。前述のポリオールは、低分子量ポリオール、たとえばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びそれらの混合物と混合していることができる。プレポリマーポリオールは、たとえば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール[PTMEG]、ポリエチレングリコール[PEG](ポリエチレンオキシド[PEO]とも知られる)、ポリプロピレンエーテルグリコール[PPG](ポリプロピレンオキシド[PPO]とも知られる)、エステル系ポリオール、たとえばエチレン又はブチレンアジペート、それらのコポリマー及びそれらの混合物を含む群から選択することができる。好ましくは、プレポリマーポリオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、それらのコポリマー及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0016】
多官能芳香族イソシアネートの例は、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4′-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、パラ-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、それらの混合物及びそれらの異性体を含む。多官能芳香族イソシアネートは、脂肪族イソシアネート、たとえばジシクロヘキシルメタン4,4′-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びシクロヘキサンジイソシアネートを20重量%未満有することができる。多官能芳香族イソシアネートは、脂肪族イソシアネートを15重量%未満又は12重量%未満有することができる。
【0017】
プレポリマーポリオールがPTMEG、そのコポリマー又はその混合物(たとえば、PTMEGとPPG又はPEGとの混合物)を含む場合、イソシアネート末端化反応生成物は、プレポリマーポリオールの総重量に基づいて2.0~30.0重量%又は6.0~10.0重量%の重量%未反応NCO範囲を有することができる。PTMEGファミリーポリオールの具体例は、以下のとおりである:LyondellBasellのPOLYMEG(登録商標)2900、2000、1000、650;Gantradeから市販されているPTMEGポリオール220、650、1000、1400、1800、2000及び3000;BASFのPolyTHF(登録商標)650、1000、2000、ならびにより低分子量の種、たとえば1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール及び1,4-ブタンジオール。プレポリマーポリオールがPPG/PO、そのコポリマー又はその混合物である場合、イソシアネート末端化反応生成物は、4.0~30.0重量%又は6.0~10.0重量%の重量%未反応NCO範囲を有することができる。PPGポリオールの具体例は、以下のとおりである:CovestroのArcol(登録商標)PPG-425、725、1000、1025、2000、2025、3025及び4000;DowのVoranol(登録商標)1010L、2000L及びP400;いずれもCovestroの製品ラインであるDesmophen(登録商標)1110BD、Acclaim(登録商標)ポリオール12200、8200、6300、4200、2200。プレポリマーポリオールがエステル、そのコポリマー又はその混合物である場合、イソシアネート末端化反応生成物は、6.5~13.0の重量%未反応NCO範囲を有することができる。エステルポリオールの具体例は、以下のとおりである:Polyurethane Specialities Company, Inc.のMillester 1、11、2、23、132、231、272、4、5、510、51、7、8、9、10、16、253;CovestroのDesmophen(登録商標)1700、1800、2000、2001KS、2001K2、2500、2501、2505、2601、PE65B;CovestroのRucoflex S-1021-70、S-1043-46、S-1043-55。
【0018】
好ましくは、プレポリマー反応生成物は、未反応NCOを2.0~30.0重量%、4~13重量%、5~11重量%又は6~10重量%有する。この未反応NCO範囲内の適切なプレポリマーの例は、COIM USA, Inc.製のImuthane(登録商標)プレポリマーPST-80A、PST-85A、PST-90A、PST-95A、PET-85A、PET-90A、PET-91A、PET-93A、PET-95A、PET-60D、PET-70D、PET-75D、PHP-80A、PHP-85A、PHP-60D、PHP-75D、PHP-80D、PPT-80A、PPT-90A、PPT-95A、PPT-65D、PPT-75D、PCM-95A、PCM-75D、APC-504、APC-722及びAPI-470ならびにLanxess製のAdiprene(登録商標)プレポリマーLFG740D、LF700D、LF750D、LF751D、LF753D、L325、LF600D、LFG963A及びLF950Aを含む。加えて、上述したもの以外の他のプレポリマーのブレンドを使用して、ブレンドの結果として適切な%未反応NCOレベルに到達することもできる。上述のプレポリマーの多く、たとえばLFG740D、LF700D、LF750D、LF751D、LF753D、LF600D、LFG963A、LF950A、PST-80A、PST-85A、PST-90A、PST-95A、PET-85A、PET-90A、PET-91A、PET-93A、PET-95A、PET-60D、PET-70D、PET-75D、PHP-80A、PHP-85A、PHP-60D、PHP-75D、PHP-80D、PPT-80A、PPT-90A、PPT-95A、PPT-65D、PPT-75D、PCM-95A及びPCM-75Dは、遊離トルエンジイソシアネート(TDI)モノマーを0.1重量%未満しか有さず、従来のプレポリマーよりも一貫したプレポリマー分子量分布を有する低遊離イソシアネートプレポリマーであり、したがって、優れた研磨特性を有する研磨パッドの形成を容易にする。この改善されたプレポリマー分子量一貫性及び低遊離イソシアネートモノマーが、より規則的なポリマー構造を与え、改善された研磨パッド一貫性に寄与する。大部分のプレポリマーの場合、低遊離イソシアネートモノマーは、好ましくは0.5重量%未満である。さらには、通常はより高いレベルの反応(すなわち、各端部をジイソシアネートによって蓋をされた二つ以上のポリオール)及びより高いレベルの遊離トルエンジイソシアネートプレポリマーを有する「従来の」プレポリマーは、同様な結果を出すはずである。加えて、低分子量ポリオール添加物、たとえばジエチレングリコール、ブタンジオール及びトリプロピレングリコールは、プレポリマー反応生成物の重量%未反応NCOの制御を容易にする。
【0019】
一例として、プレポリマーは、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びジオールを有するポリテトラメチレングリコールの反応生成物であることができる。もっとも好ましくは、ジオールは1,4-ブタンジオール(BDO)である。好ましくは、プレポリマー反応生成物は、未反応NCOを6~10重量%有する。この未反応NCO範囲を有する適切なポリマーの例は、以下を含む:COIM USAのImuthane 27-85A、27-90A、27-95A、27-52D、27-58D及びAnderson Development CompanyのAndur(登録商標)IE-75AP、IE80AP、IE90AP、IE98AP、IE110APプレポリマー。
【0020】
硬化剤は、イソシアネート末端化プレポリマー(又はオリゴマー)と反応するのに適した多官能(たとえば二官能)硬化剤を含むことができる。たとえば、多官能アミン(たとえばジアミン)硬化剤を使用することができる。ポリアミン硬化剤の例は、アルキルチオトルエンジアミン(たとえばジメチルチオトルエンジアミン[DMTDA]、ジエチルチオトルエンジアミン[DETDA];モノメチルチオトルエンジアミン、モノエチルチオトルエンジアミン又はそれらの二つ以上の組み合わせ)、アルキルクロロトルエンジアミン(たとえばジメチルクロロトルエンジアミン、ジエチルクロロトルエンジアミン、4-クロロ-3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン)、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシドジ-p-アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシドモノ-p-アミノベンゾエート;ポリプロピレンオキシドジ-p-アミノベンゾエート;ポリプロピレンオキシドモノ-p-アミノベンゾエート、イソブチル4-クロロ-3,5-ジアミノベンゾエート;5-tert-ブチル-2,4-及び3-tert-ブチル-2,6-トルエンジアミン;5-tert-アミル-2,4-及び3-tert-アミル-2,6-トルエンジアミンならびにクロロトルエンジアミン;4,4′-メチレン-ビス-o-クロロアニリン[MbOCA]、4,4′-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)[MCDEA];1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン;4,4′-メチレン-ビス-アニリン;メチレン-ビス-メチルアントラニレート[MBNA]を含む。
【0021】
多官能アミン硬化剤とともに、又は多官能アミン硬化剤なしで、他の多官能硬化剤、たとえばジオール、トリオール、テトラオール又はヒドロキシ末端化イソシアネートを使用することもできる。適切なジオール、トリオール及びテトラオールの群は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、低分子量ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3-ビス-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン、1,3-ビス-{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、レソルシノール-ジ-(ベータ-ヒドロキシエチル)エーテル、ヒドロキノン-ジ-(ベータ-ヒドロキシエチル)エーテル及びそれらの混合物を含む。好ましいヒドロキシ末端化イソシアネートとしては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3-ビス-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン、1,3-ビス-{2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン、1,4-ブタンジオール及びそれらの混合物がある。
【0022】
硬化剤に対するプレポリマーの比は、化学量論比にしたがって決定することができる。本明細書中で使用される場合、反応混合物の「化学量論比」(Stoich)とは、プレポリマー中の遊離NCO基に対する硬化剤中の(遊離OH+遊離NH2基)のモル当量(たとえば、100×(硬化剤ブレンド中のアミン及びヒドロキシル基のモル数/プレポリマー中のNCO基のモル数))を指す。化学量論比は、たとえば、80%~120%、好ましくは87%~105%の範囲であることができる。
【0023】
硬化剤とイソシアネート官能性プレポリマーとの重合反応ののち、得られるポリマーは硬質相及び軟質相(又は、硬質セグメント及び軟質セグメント)を含む。硬質相は、規則的又はランダムに配設され、パッキングされて硬質セグメント領域を形成することができる。
【0024】
ポリマーマイクロスフェア
予備膨張ポリマーマイクロスフェアは流体を充填される。流体は液体であることができる。流体は、気体又は気体と液体との組み合わせであることもできる。流体が液体を含む場合、好ましい流体は水、たとえば偶発的な不純物しか含有しない蒸留水である。本出願の趣旨に関して、マイクロスフェアという語は、完璧とはいえない球形を有するシェルを含む。たとえば、これらのシェルは、切開し、SEMで見たとき半球形(semi-hemispherical)に見える形を有する。流体が気体を含む場合、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素又はそれらの組み合わせが好ましい。一部のマイクロスフェアの場合、気体は有機気体、たとえばイソブタンであってもよい。好ましくは、流体は、イソブタン、イソペンタン又はイソブタンとイソペンタンとの組み合わせである。ポリマーマイクロスフェア中に閉じ込められたイソブタンは、ポリマーシェル中の内圧に依存して、室温(25℃)以上で気体である。ポリマーマイクロスフェア中に閉じ込められたイソペンタンは、室温で液体と気体との混合物である。約30℃以上の温度で、イソペンタンは、ポリマーシェル中の内圧に依存して、気体になる。
【0025】
ポリマーシェルは流体を保持し;通常、気体を加圧下に保持する。ポリマーシェルは、塩素フリー又は実質的に塩素フリーであることができる。実質的に塩素フリーとは、シェルが、ポリマーシェルの総重量に基づいて塩素を0.1重量未満、0.05重量%未満又は0.01重量%未満しか含まないことを意味する。ポリマーシェルの具体例はポリアクリロニトリル/メタクリロニトリルシェルを含む。さらに、これらのシェルは、無機粒子、たとえばシリケート、カルシウム含有又はマグネシウム含有粒子を組み込んでいてもよい。これらの粒子はポリマーマイクロスフェアの分離を促進する。予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、プレポリマーと合わせる前に、体積平均直径範囲又は分布まで膨張させたものである。この体積平均直径は、以下の式:
【数1】
(式中、D
iは、所与のサイズの粒子の直径であり、v
iは、そのサイズの粒子の出現回数である)
から計算することができる。一般的な体積平均直径は、5~200ミクロン、10~100ミクロン、15~50ミクロン又は17~45ミクロンの範囲である。たとえば、体積平均直径は約20ミクロン又は40ミクロンであることができる。
【0026】
予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、プレポリマー、硬化剤及び予備膨張ポリマーマイクロスフェアの重量に基づいて0.5重量%以上、0.75重量%以上、1重量%以上、1.25重量%以上、1.5重量%以上、1.75重量%以上又は2重量%以上の量で混合物に加えることができる。予備膨張ポリマーマイクロスフェアの量はまた、同時に、プレポリマー、硬化剤及び予備膨張ポリマーマイクロスフェアの重量に基づいて7重量%以下、5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下又は3.0重量%以下であることができる。便宜上、予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、硬化剤の添加の前に、プレポリマーとプレブレンドすることができる。
【0027】
予備膨張ポリマーマイクロスフェアは、ポリマーシェルの中又は上に無機粒子を含まない、又は実質的に含まないことができる。
【0028】
本明細書に開示される研磨層は、1g/cm3以下、0.9g/cm3以下、0.8g/cm3以下又は0.7g/cm3以下の比重を有することができる。比重は一般に、少なくとも0.5g/cm3であることができる。本明細書中で使用される比重とは、試料の体積あたりの重量であり、たとえば、ASTM D1622-08(2008)に記載されているように測定することができる。そのような研磨層は、同時に、単峰性又は多峰性(たとえば二峰性、三峰性など)の孔径分布を有することができる。
【0029】
硬化した研磨層中の気孔の体積平均サイズは、約5ミクロン~約200ミクロン又は10~約100ミクロンの範囲であることができる。
【0030】
多葉性ポリマーエレメント
本明細書に開示される研磨パッドは、多葉性ポリマーエレメントを有する研磨層を含む。多葉性ポリマーエレメントは、収縮又は部分的に収縮した予備膨張ポリマーマイクロスフェアの残余であることができる。本明細書中で使用される場合、収縮とは、ポリマーマイクロスフェア中にあった流体の少なくとも一部分が漏出した、又は除去されていることをいう。これは、形態における視覚的変化を生じさせることができる。
図4は、シェル42を有する、実質的に球形の予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェア41の一例を示す。
図5は、ローブ(葉状の突出部)53を有するシェル52を有する収縮したポリマーマイクロスフェア51の一例を示す。
図6は、シェル52及びローブ53を有する収縮したポリマーマイクロスフェア51の断面図を示す。断面図において、ローブが実質的に板状の突出部の形態にあり得ることが見てとれる。板状とは、構造が、長さ及び幅と比べて相対的に小さい厚さを有することを意味する。板状は、実質的に平面であることができる。しかし、
図7は、シェル62及びローブ63を有し、そのローブが曲がっている、収縮したポリマーマイクロスフェア61の第二の例の断面図を示す。ローブは板状(長さ及び幅に対して厚さが小さい)であることができるが、この例では、板状構造は曲がっている。
【0031】
理論によって拘束されることを望まないが、多葉性ポリマーエレメントの形成は、以下に記載されるように加工されるとき、実質的に塩素フリーであるポリマーシェルを有する予備膨張ポリマーマイクロスフェアの使用の結果として起こることができる。
【0032】
多葉性ポリマーエレメントはポリマーマトリックス中に分散される。加えて、収縮していない、又はつぶれていない予備膨張ポリマーマイクロスフェアがポリマーマトリックス中に分散され、それにより、多孔性研磨層中に気孔を形成することができる。収縮していない、又はつぶれていない予備膨張ポリマーマイクロスフェアによって形成される気孔は一般に球形である。しかし、ときには、気孔はわずかに変形して、楕円形又は実質的に球形の気孔を形成することもある。また、ときには、気孔は、収縮の実質的な証拠を示さない、いくぶん不規則な形であることもできる。
【0033】
ポリマーマトリックス中の多葉性ポリマーエレメントの出現率は、プレブレンド中の予備膨張ポリマーマイクロスフェアの全初期添加量の割合として測定することができる。通常、予備膨張ポリマーマイクロスフェアの大多数は、ローブを形成するのに十分な量に収縮しない。たとえば、予備膨張ポリマーマイクロスフェアの0.1~20%又は0.5~15%又は1~10%が収縮して、多葉性ポリマーエレメントを形成することができる。
【0034】
多葉性ポリマーエレメントは三つ以上のローブ又は四つ以上のローブを含む。一般に、多葉性ポリマーエレメントは、10未満もしくは七つ未満又は五つ以下のローブを有するであろう。多葉性ポリマーエレメントは、残存する空所を含むことができる。たとえば、予備膨張ポリマーマイクロスフェアの収縮した残余の一部分は、残存する不規則な形状の空所を含むことができる。多葉性ポリマーエレメントのローブの一部分は、中心領域から突出する板状の突出部を含む。板状の突出部は、完全に平坦又は平面である必要はない。板状の突出部は、予備膨張ポリマーマイクロスフェアのシェルであった、収縮後に互いに接触する二つの縁を含むことができる。
【0035】
多葉性ポリマーエレメント、たとえば予備膨張ポリマーマイクロスフェアの収縮した残余は、走査型電子顕微鏡下、×50の倍率で検査したとき、穴又は裂け目の証拠を示さないことができる。拘束されることを望まないが、この例において、予備膨張ポリマーマイクロスフェア中の流体は、シェルを破裂させた、又はシェル中の比較的大きな穴を通って漏出したのではなく、外に放散したものと考えられる。
【0036】
多葉性ポリマーエレメント、たとえば予備膨張ポリマーマイクロスフェアの収縮した残余は、約20~約200ミクロンの最大寸法(たとえば、一つのローブの先端から別のローブの最遠端まで)を有することができる。
【0037】
多葉性ポリマーエレメントは、非収縮の、又は実質的に球形のポリマーマイクロスフェアとで相互分散していることができる。たとえば、場合によっては、研磨層内で、非収縮の、又は実質的に球形のポリマーマイクロスフェアが、隣接する多葉性ポリマーエレメントのローブ又は板状部の間に部分的に位置していることもできる。たとえば
図1を参照すること。多葉性ポリマーエレメントどうしの間又は多葉性ポリマーエレメントと予備膨張ポリマーマイクロスフェア(収縮していない、又は実質的に球形のままである)との間の距離は、予備膨張ポリマーマイクロスフェアの体積平均直径の3倍未満、予備膨張ポリマーマイクロスフェアの体積平均直径の2倍未満又は予備膨張ポリマーマイクロスフェアの体積平均直径未満であることができる。多葉性ポリマーエレメントどうしの間又は多葉性ポリマーエレメントと予備膨張ポリマーマイクロスフェアとの間の距離は、400ミクロン未満、300ミクロン未満、200ミクロン未満、100ミクロン未満、60ミクロン未満、50ミクロン未満、40ミクロン未満又は30ミクロン未満であることができる。
【0038】
製造方法、研磨パッドの他の特徴及び用途
研磨層を作製する方法は、プレポリマー(又はオリゴマー)とポリマーマイクロスフェア(たとえば、流体を充填された予備膨張ポリマーマイクロスフェア)とのプレブレンドを調製する工程を含むことができる。プレポリマー(又はオリゴマー)を容器中でポリマーマイクロスフェアと合わせることができる。容器は、スターラ又は他の撹拌装置を備えていることができる。容器は、容器の底部近くから流れを取り出すための出口と、再循環のために流れを容器の上部に戻すためのポンプとを備えていることができる。十分な流量を保証するために、プレブレンドを加熱することができる。たとえば、プレブレンドは、タンク中、40~80℃又は45~70℃又は50~60℃の範囲の温度に維持することができる。次いで、プレブレンドを別個のミキサに提供して、コントロールミキシングによって硬化剤と混合する(たとえばピンミキサ中)。また、必要ならば、硬化剤を、ミキサへの送り出しの前に、その融解温度よりも高く加熱することもできる。ミキシングヘッドから、プレブレンドと硬化剤とを合わせた混合物を型に送り込み、個々の研磨層を作製する、又は個々の研磨層を形成するためにカットすることができるポリマーブロックを作製する。型に充填したのち、混合物を適切な硬化温度、たとえば約100~120℃で硬化させることができる。
【0039】
研磨層に加えて、本明細書に開示される研磨パッドは、サブパッド又はベースパッドの一つ以上の層を含むことができる。研磨層をサブパッド又はベースパッドに取り付けるために接着層を使用することができる。
【0040】
研磨層は、溝、凹み、一段高い要素などの形態にあるマクロテクスチャをテクスチャ加工されることができる。
【0041】
本明細書に開示される研磨パッドは、金属、誘電材料(たとえば金属酸化物)又は両方を含む基板を研磨するために、好ましくは研磨スラリーとともに使用することができる。
【実施例0042】
研磨層の製造及び特性評価
プレポリマーと予備膨張ポリマーマイクロスフェアとのプレブレンドを、タンクの底部から再循環流をタンクの上部に近い位置まで汲み上げる再循環ループを有する撹拌タンク(ここで、再循環させ、撹拌しながら1~3時間保持する)の中で調製する。ブレンドを52℃に加熱してプレブレンドの十分な流量を保証する。再循環ループ中で濾過しながらプレブレンドを真空下でガス抜きする。研磨層を形成する準備ができると、プレブレンドと硬化剤をコントロールミキシングによって混合する。硬化剤は、その融解温度よりも高く予熱される芳香族ジアミンである。硬化剤が4,4′-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MbOCA)であるときは、116℃に予熱することができる。硬化剤がジメチルチオ-トルエンジアミン(DMTDA)であるときは、46℃に予熱することができる。ミキシングヘッドを出たのち、混合物を直径86.4cm(34インチ)の円形型の中に3分間かけて分注して、約8cm(3インチ)の全注入厚さを得る。分注した混合物を15分間ゲル化させたのち、型を硬化オーブンに入れる。次いで、硬化オーブン中、以下のサイクルを使用して型を硬化させた。オーブン設定温度で周囲温度から104℃まで30分間昇温、次いでオーブン設定温度104℃で15.5時間保持。
【0043】
ポリマーマイクロスフェアの添加量は、0.8g/cm3、又は研磨層部分の全体積に基づいて32体積%の目標類似研磨層密度に制御される。研磨層の成分は表1に記載するとおりである。
【0044】
【0045】
実施例1及び2の走査型電子顕微鏡写真がそれぞれ
図1及び3に示され、図中、予備膨張ポリマーマイクロスフェアのつぶれた、又は収縮した残余を示す葉状構造が観察される。対照的に、同じプレポリマー及び硬化剤を使用しているものの、シェルの総重量に基づいて約30重量%の量で塩素をシェル中に含む予備膨張ポリマーマイクロスフェアを使用した比較例1は、多葉性構造を示さなかった。
図2を参照すること。同様に、比較例2のSEMは多葉性構造を示さなかった。
【0046】
パッドの製造及び試験
上記のように作製した厚さ約2mmの研磨層を機械加工して溝を設けた。研磨評価のために、反応性ホットメルト接着剤を使用して各研磨層をサブパッドに取り付けた。
【0047】
第一の試験として、コロイダルシリカ砥粒を2重量%含有する低pH酸化物スラリーを使用して、実施例1及び比較例1の研磨層を有するパッドを試験した。パッドをコンディショニングしたのち、3.5psi(0.024MPa)のダウンフォース、毎分80回転のプラテン速度、毎分81回転のヘッド速度及び60秒の研磨時間で研磨を実施した。スラリー流量は300ml/minであった。九つのダミーウェーハ及び三つのTEOS(テトラエチルオルトシリケート)誘導酸化ケイ素モニタウェーハを試験した。実施例1及び比較例1にしたがって、パッドからの結果を表2に示す。実施例1のパッドは、驚くことに、同じ構成の比較例1よりも高いTEOS誘導酸化物除去速度だけでなく、より少ないスクラッチ及びチャターマークを実証した。
【0048】
【0049】
第二の試験として、コロイダルシリカ砥粒を2重量%含有し、さらに過酸化水素を2.5重量%含有する低pHタングステンスラリーを使用して、実施例1及び比較例1の研磨層を有するパッドを試験した。パッドをコンディショニングしたのち、4.7psi(0.033MPa)のダウンフォース、毎分80回転のプラテン速度、毎分81回転のヘッド速度及び60秒の研磨時間で研磨を実施した。スラリー流量は100ml/minである。タングステンウェーハ、TEOS誘導酸化ケイ素ウェーハ及び窒化ケイ素(SiN)ウェーハを試験して、個々のウェーハタイプごとに除去速度を測定した。TEOS誘導酸化物ウェーハから、スクラッチ及びチャターマークの欠陥を測定した。実施例1及び比較例1にしたがって、パッドからの結果を表3及び4に示す。実施例1のパッドは、驚くことに、同じ構成の比較例1よりも高いタングステン除去速度だけでなく、より少ないTEOS誘導酸化物ウェーハ上のスクラッチ及びチャターマークを実証した。
【0050】
【0051】
【0052】
第三の試験として、コロイダルシリカ砥粒を16重量%含有する高pH酸化物スラリーを使用して、実施例2及び比較例2の研磨層を有するパッドを試験した。パッドをコンディショニングしたのち、5psi(0.034MPa)のダウンフォース、毎分93回転のプラテン速度、毎分87回転のヘッド速度及び60秒の研磨時間で研磨を実施した。スラリー流量は250ml/minである。九つのダミーウェーハ及び三つのTEOS誘導酸化ケイ素モニタウェーハを試験した。実施例2及び比較例2にしたがって、パッドからの結果を表5に示す。実施例2のパッドは、同じ構成の比較例2と同程度のTEOS誘導酸化物除去速度と、より少ないTEOS誘導酸化物ウェーハ上のスクラッチ及びチャターマークとを実証した。
【0053】
【0054】
本開示はさらに以下の態様を包含する。
【0055】
態様1:イソシアネート末端化プレポリマーと硬化剤との反応生成物であるポリマーマトリックスを含む研磨層を含む、化学機械研磨のための研磨パッドであって、ポリマーマトリックスが硬質セグメント及び軟質セグメントを有し、予備膨張ポリマーマイクロスフェアから形成された多葉性ポリマーエレメントがポリマーマトリックス中に存在する、研磨パッド。
【0056】
態様2:多葉性ポリマーエレメントが予備膨張ポリマーマイクロスフェアの収縮した残余であり、研磨層がさらに、実質的に球形又は楕円形である形状を保持する予備膨張ポリマーマイクロスフェアの一部分によって形成された気孔を含む、態様1の研磨パッド。
【0057】
態様3:多葉性ポリマーエレメントが三つ以上のローブを含む、態様1又は2の研磨パッド。
【0058】
態様4:予備膨張ポリマーマイクロスフェアの収縮した残余の少なくとも一部分が、残存する不規則な空所を含む、前記態様のいずれかの研磨パッド。
【0059】
態様5:多葉性ポリマーエレメントのローブの少なくとも一部分が、中心領域から突出する板状の突出部を含む、前記態様のいずれかの研磨パッド。
【0060】
態様6:予備膨張ポリマーマイクロスフェアの0.1~20%が多葉性ポリマーエレメントを形成する、前記態様のいずれかの研磨パッド。
【0061】
態様7:予備膨張ポリマーマイクロスフェアが、ポリマーシェルの総重量に基づいて0.1重量%未満の塩素含量を有するポリマーシェルを流体充填コアの周囲に含み、流体が気体を含む、前記態様のいずれかの研磨パッド。
【0062】
態様8:予備膨張ポリマーマイクロスフェアの収縮した残余が、走査型電子顕微鏡下、×50の倍率で検査したとき、穴又は裂け目を含まない、前記態様のいずれかの研磨パッド。
【0063】
態様9:予備膨張ポリマーマイクロスフェアが、5~2000ミクロン、好ましくは10~100ミクロン、より好ましくは15~50ミクロン、もっとも好ましくは17~45ミクロンの体積平均直径を有する、前記態様のいずれかの研磨パッド。
【0064】
態様10:多葉性ポリマーエレメントが、300ミクロン未満、好ましくは200ミクロン未満、より好ましくは100ミクロン未満の最大寸法を有する、前記態様のいずれかの研磨パッド。
【0065】
態様11:多葉性ポリマーエレメントどうしの間又は多葉性ポリマーエレメントと予備膨張ポリマーマイクロスフェアとの間の距離が、400ミクロン未満、好ましくは300ミクロン未満、より好ましくは200ミクロン未満、さらに好ましくは100ミクロン未満、なおさらに好ましくは70ミクロン未満、なおさらに好ましくは50ミクロン未満、もっとも好ましくは30ミクロン未満である、前記態様のいずれかの研磨パッド。
【0066】
態様12:前記態様のいずれかの研磨パッドを製造する方法であって、撹拌タンク中でイソシアネート末端化プレポリマーと予備膨張させた流体充填ポリマーマイクロスフェアとのプレブレンドを調製する工程;プレブレンドの一部分を撹拌タンクの底部から導管に通して汲み上げ、撹拌タンクの上部領域に再循環させる工程、プレブレンドの一部分を硬化剤と混合して混合物を形成する工程、混合物を型に流し込む工程、型の中で混合物を硬化させる工程を含む方法。
【0067】
態様13:予備膨張ポリマーマイクロスフェアの0.1~20%、好ましくは0.5~15%又はより好ましくは1~10%が収縮して多葉性ポリマーエレメントを形成する、態様12の方法。
【0068】
態様14:予備膨張ポリマーマイクロスフェアが、ポリマーシェルの総重量に基づいて0.1重量%未満の塩素含量を有するポリマーシェルを流体充填コアの周囲に含み、流体が気体を含む、態様12又は13の方法。
【0069】
態様15:プレブレンドが、プレブレンドと硬化剤との総重量に基づいて0.5~7重量%、好ましくは0.75~5重量%、より好ましくは1~4.5重量%、さらに好ましくは1.25~4重量%、なおさらに好ましくは1.5~3.5重量%、もっとも好ましくは1.75~3重量%の予備膨張ポリマーマイクロスフェアを含む、態様12~14のいずれか一つの方法。
【0070】
態様16:予備膨張ポリマーマイクロスフェアが、10~100ミクロン、好ましくは15~50ミクロン又はより好ましくは17~45ミクロンの体積平均直径を有する、態様12~15のいずれか一つの方法。
【0071】
態様17:金属、金属酸化物又は両方を含む基板を提供する工程、及び態様1~11の研磨パッドを使用して基板を研磨する工程を含む研磨方法。
【0072】
態様18:パッドと基板との間に研磨スラリーを提供する工程をさらに含む、態様17の方法。
【0073】
本明細書に開示されるすべての範囲は終点を含み、終点は、独立して、互いに組み合わせ可能である(たとえば、「25重量%以下、又はより具体的には5重量%~20重量%」の範囲は、「5重量%~25重量%」の範囲の終点及びすべての中間値を含む、など)。そのうえ、述べられる上限及び下限を組み合わせて範囲を形成することもできる(たとえば、「少なくとも1重量%又は少なくとも2重量%」と「10又は5重量%以下」とを組み合わせて、「1~10重量%」又は「1~5重量%」又は「2~10重量%」又は「2~5重量%」の範囲を形成することもできる)。
【0074】
本開示は、択一的に、本明細書に開示される適切な構成要素を含むこともできるし、それらからなることもできるし、それらから本質的になることもできる。本開示は、追加的又は代替的に、従来技術の組成物に使用される、又は他のやり方では本開示の機能又は目的の達成にとって必要ではない構成要素、材料、成分、補助剤又は種を含まない、又は実質的に含まないように調合されることもできる。
【0075】
引用されるすべての特許、特許出願及び他の参考文献は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。しかし、本出願におけるある語が、組み入れられる参考文献中の語と矛盾する、又は相容れないならば、本出願からの語が、組み入れられる参考文献からの相容れない語よりも優先する。
【0076】
本明細書中で別段の指定がない限り、すべての試験規格は、本出願の出願日の時点又は、優先権が主張されるならば、試験規格が記されている最先の優先権出願の出願日の時点で効力のある最新の規格である。