(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097520
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20240711BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240711BHJP
B60C 11/01 20060101ALI20240711BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C11/13 C
B60C11/01 A
B60C11/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001017
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 慎吾
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB12
3D131BC12
3D131BC17
3D131BC22
3D131BC31
3D131BC37
3D131BC40
3D131BC44
3D131EB11V
3D131EB28W
3D131EB28X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB31Y
3D131EB32X
3D131EB32Y
3D131EB81V
3D131EB81W
3D131EB81X
3D131EB81Y
3D131EB82V
3D131EB82W
3D131EB82X
3D131EB82Y
3D131EC12V
3D131EC13V
3D131EC13W
3D131EC13X
3D131EC13Y
3D131EC14V
3D131EC14W
3D131EC14X
3D131GA03
(57)【要約】
【課題】悪路を走破する推進力を得ることができ、悪路を走行する際の排土性能も向上できるタイヤを提供すること。
【解決手段】タイヤ1が、軸方向第1側に設けられると共に周方向の全周に亘って周方向に延びる第1環状部41aを含む第1主溝40aと、軸方向第2側に設けられると共に、周方向の全周に亘って周方向に延びる第2環状部41bを含む第2主溝40bとを備える。軸方向における第1主溝40aと第2主溝40bの間に、周方向の全周に亘って前記周方向に延びる環状部を有する溝が存在しない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の第1側に設けられると共に、周方向の全周に亘って前記周方向に延在する第1環状部を含む第1主溝と、
前記軸方向の第2側に設けられると共に、前記周方向の全周に亘って前記周方向に延在する第2環状部を含む第2主溝と、を備え、
前記軸方向における前記第1主溝と前記第2主溝の間に、前記周方向の全周に亘って前記周方向に延在する環状部を有する溝が存在しない、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1主溝から前記軸方向の外側に延びると共に、前記周方向に間隔をおいて配置される複数の第1横溝と、前記第2主溝から前記軸方向の外側に延びると共に、前記周方向に間隔をおいて配置される複数の第2横溝と、を有し、
前記第1横溝が、溝幅が大きくなる第1溝幅拡大部を有すると共に、前記第2横溝が、溝幅が大きくなる第2溝幅拡大部を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1溝幅拡大部が、前記軸方向の第1側に位置する第1接地端よりも前記軸方向の外側に位置し、前記第2溝幅拡大部が、前記軸方向の第2側に位置する第2接地端よりも前記軸方向の外側に位置する、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1主溝の縁を画定するブロックに設けられた複数のサイプの全てが、前記第1主溝に連通し、
前記第2主溝の縁を画定するブロックに設けられた複数のサイプの全てが、前記第2主溝に連通する、請求項1から3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
主に公道を走ることが想定される一般的なタイヤは、排水性を重視するため縦溝が多くなっているが、オフロード用のタイヤは横溝を増やすことで、悪路を走破する推進力を得るようになっている。特許文献1には、軸方向の両側に略軸方向に延びると共に周方向に略等間隔に設けられた複数の横溝を有するオフロード用の空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タイヤは、軸方向の中央を除いた大部分に多数の横溝を設けているので、悪路(例えば、泥濘路)を走行するときの推進力を得ることができる。しかし、上記タイヤは、悪路を走行した際の排土性能を良好にしにくいという課題がある。そこで、本開示の目的は、悪路を走破する推進力を得ることができ、悪路を走行する際の排土性能も向上できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示に係る空気入りタイヤは、軸方向の第1側に設けられると共に、周方向の全周に亘って前記周方向に延在する第1環状部を含む第1主溝と、前記軸方向の第2側に設けられると共に、前記周方向の全周に亘って前記周方向に延在する第2環状部を含む第2主溝と、を備え、前記軸方向における前記第1主溝と前記第2主溝の間に、前記周方向の全周に亘って前記周方向に延在する環状部を有する溝が存在しない。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る空気入りタイヤによれば、悪路を走破する推進力を得ることができ、悪路を走行する際の排土性能も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤにおける径方向と軸方向を含む半断面図である。
【
図2】タイヤの一部を経方向外側から見たときの正面図である。
【
図3】タイヤを径方向に傾斜する方向から見たときの斜視図である。
【
図5】タイヤの周方向の一部を、タイヤの径方向に直交する平面に正射影したときの模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下の説明で、サイプ95とは、接地面に設けられる溝であって、溝幅が1mm以下の溝である。また、本開示は、下記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。例えば、以下において説明する実施形態や変形例の特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ1における径方向と軸方向を含む半断面図である。
図1に示すように、空気入りタイヤ(以下、単に、タイヤという)1は、トレッド10、一対のショルダー11、一対のサイドウォール12、及び一対のビード13を備える。トレッド10は、軸方向の中央に配置され、路面に接地する接地面10aを含む。トレッド10は、例えば、架橋ゴムから成るトレッド用ゴム組成物で構成される。トレッド10の外周面には、複数の溝40a,40bが設けられる。複数の溝40a,40bは、周方向に沿って延在する複数の主溝40a,40bと、主溝40a,40bに交差する方向に延びる複数の横溝を含む。溝40a,40bは、排水、排土、悪路から効果的に推進力を得る目的等で設けられる。複数の溝40a,40bは、複数のブロック50a,50b,56a,56b,80を区画する。タイヤ1における、溝構造、ブロック構造については、後で
図2~
図4を用いて詳細に説明する。
【0010】
ショルダー11、サイドウォール12、及びビード13は、タイヤ1の側面を形成する部分であって、タイヤ1の軸方向両側に設けられる。ショルダー11、サイドウォール12、及びビード13は、トレッド10の軸方向両端部から径方向内側に延びる。ショルダー11は、タイヤ1の肩部であり、トレッド10の軸方向両端から軸方向外側に張り出すと共に径方向内側に延びる。ショルダー11は、トレッド10と同様に、周方向に沿って環状に設けられる。タイヤ1の接地端E1,E2をトレッド10とショルダー11の境界位置と定義してもよい。なお、接地端E1,E2とは、タイヤ1が正規リムに装着されて内圧が正規内圧に調整され、正規荷重が負荷されたときに接地する部分の軸方向両端を意味する(正規リム等については、特開2020-131965号公報の記載と同様)。
【0011】
サイドウォール12は、タイヤ側面に存在し、タイヤ1が最も撓む箇所を含む。サイドウォール2は、スムーズに屈曲することで、衝撃や遠心力に耐える役割を担う。サイドウォール12は、ショルダー11とビード13の間に配置され、一体のサイドウォール用ゴム組成物で構成される。サイドウォール12は、カーカス15を保護し、その伸びを防ぐ役割を果たす。サイドウォール12は、ショルダー11から径方向内側に延び、周方向に沿って環状に設けられる。サイドウォール12は、タイヤ1の軸方向外側に最も張り出したタイヤ最大幅位置12aを含み、外側に向かって凸となるように緩やかに湾曲している。
【0012】
ビード13は、サイドウォール12から径方向内側に延び、周方向に沿って環状に形成されている。ビード13は、ホイールのリムに固定される部分であり、タイヤ1の内周部を構成する。ビード13は、内側に向かって凸となるように緩やかに湾曲しており、サイドウォール12よりも軸方向内側に位置する。
【0013】
ビード13は、ビードコア26と、ビードフィラー27を備える。ビードコア26及びビードフィラー27は、軸方向両側に設けられる。ビードコア26は、束ねられた鋼線をゴムで被覆したリング状の部材である。また、ビードフィラー27は、硬質のゴムで構成され、ビード13の剛性を高める機能を有する。ビードフィラー27は、ビードコア26よりも径方向外側に配置される。
【0014】
タイヤ1は、ゴムで被覆されたコード層であるカーカス15を備える。カーカス15は、例えば、2枚のカーカスプライにより構成され、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤ骨格を形成する、カーカス15は、周方向に対して直交する方向にカーカスコードが配置されたラジアル構造を有する。カーカス15は、上記トレッド用ゴム組成物、サイドウォール用ゴム組成物等の複数のゴム部材で被覆される。インナーライナー17は、空気圧を保持するためのゴム層であり、カーカス15の内周面に貼付される。
【0015】
タイヤ1は、トレッド10とカーカス15との間にベルト16を備える。ベルト16は、周方向に張られた補強帯であり、カーカス15を強く締めつけてトレッド10の剛性を高める。ベルト16は、例えば、スチールコードにゴムをトッピングしたスチールベルトを2つ重ねた2層構造を有する。しかし、積層されるスチールベルトの数は、2つに限らず、また、スチールベルトに替えて、アラミド繊維を用いたタイヤコードを含むベルト等を用いてもよい。又は、ベルトは、1層のみで構成してもよい。ベルト16を設けることで、タイヤ1の剛性を確保でき、トレッド10と路面の接地状態を良好なものにできる。
【0016】
タイヤ1は、ベルト16とトレッド10との間にベルト補強材18を備える、ベルト補強材18は、例えば、2層構造を有し、2つのキャッププライを含む。キャッププライは、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成され、トッピングゴムにより被覆される。ベルト補強材18は、耐久性の向上や、走行時のロードノイズの低減等の目的のために設置される。なお、積層されるキャッププライの数は、2つに限らない。ベルト補強材18は、軸方向に関して、トレッド10に径方向に重なる位置の全域とショルダー11の一部領域に配置される。ベルト補強材18の軸方向外側の端22は、ベルト16よりも軸方向外側に延出している。
【0017】
カーカス15を構成するカーカスプライは、一対のビードコア26に架け渡されるように配置される。カーカスプライは、軸方向内側からビードコア26に架け渡され、ビードコア26及びビードフィラー27を包むようにサイドウォール12側に折り返される。
図1に示す例では、カーカスプライの端であるプライ端15Eが、各サイドウォール12の軸方向内側に位置している。カーカス15が2枚のカーカスプライを含む場合、一般的には、もう1枚のカーカスプライのプライ端は各ビード13に位置する。
【0018】
タイヤ1は、オフロードでの使用が想定されている。サイドウォール12は、径方向外側にサイドプロテクタ35を有する。サイドプロテクタ35は、サイドウォール12において軸方向外方に隆起(突出)する部分である。サイドプロテクタ35は、車両が悪路を走行している際にタイヤ側方に飛んできた石等の異物が本体に衝突して本体が損傷することを抑制する。
【0019】
図2は、タイヤ1の一部を経方向外側から見たときの正面図であり、
図3は、タイヤ1を径方向に傾斜する方向から見たときの斜視図である。
図2に示すように、タイヤ1は、赤道CLに対して非対称の構造を有するが、赤道CLに対して軸方向第1側に位置する第1構造4は、軸方向第2側に位置する第2構造8と同一である。より詳しくは、第1構造4を180°反転させて逆向きにすると、第2構造8に一致する。
【0020】
タイヤ1は、軸方向第1側に設けられると共に、周方向の全周に亘って周方向に平行に延びる第1環状部41aを含む第1主溝40aと、軸方向第2側に設けられると共に、周方向の全周に亘って周方向に平行に延びる第2環状部41bを含む第2主溝40bと、を備える。タイヤ1には、軸方向における第1主溝40aと第2主溝40bの間に、周方向の全周に亘って周方向に平行に延びる環状部を有する溝が存在しない。
【0021】
換言すると、第1主溝40aは、タイヤ幅方向断面を周方向視した際に、ブロック50a,50b,56a,56b,80(第1主溝40aの溝壁面)によってふさがれずに、延びる先が見通せる部分(所謂、シースルー部・領域)を有する。また、第2主溝40bも、タイヤ幅方向断面を周方向視した際に、ブロック50a,50b,56a,56b,80(第2主溝40bの溝壁面)によってふさがれずに、延びる先が見通せる部分を有する。また、タイヤ1には、タイヤ幅方向断面を周方向視した際に、ブロック50a,50b,56a,56b,80によってふさがれずに、延びる先が見通せる部分を含む溝が、軸方向における第1主溝40aと第2主溝40bの間に存在しない。
【0022】
なお、軸方向第1側と、軸方向第2側とは、同一の構造でなくてもよい。例えば、赤道CLから第1主溝までの軸方向の平均距離は、赤道CLから第2主溝までの軸方向の平均距離と異なってもよい。また、タイヤは、方向性タイヤ(ユニディレクショナルパターンタイヤ)でもよく、例えば、サイドプロテクタは、タイヤを車両に適切に装着した状態で車両の幅方向外側のサイドウォールのみに存在してもよい。
【0023】
タイヤ1は、複数の縦溝と複数の横溝とを有する。本明細書では、縦溝を周方向に傾斜する最大角度部分が45°以下であって、周方向に部分的に設けられる溝として定義する。また、横溝を、軸方向に傾斜する最大角度が45°未満であって、周方向に部分的に設けられる溝として定義する。主溝40a,40b、複数の縦溝、及び複数の横溝は、複数のブロック50a,50b,56a,56b,80を画定する。タイヤ1は、軸方向第1側の端部に周方向に沿うように配置された複数のショルダーブロック50aを有し、軸方向第2側の端部に周方向に沿うように配置された複数のショルダーブロック50bを有する。
【0024】
以下では、先ず、第1主溝40aと、複数のショルダーブロック50aの構造について説明する。第1構造4は、第2構造8と同一であるので、第2主溝40bと、ショルダーブロック50bの構造については、説明を省略する。
図3に示すように、複数のショルダーブロック50aは、複数の第1側第1ショルダーブロック51aと、複数の第1側第2ショルダーブロック52aを有し、第1側第1ショルダーブロック51aと、第1側第2ショルダーブロック52aは、周方向に交互に配置される。なお、軸方向の各側に配置される、複数のショルダーブロックは、複数の同一のショルダーブロックのみで構成されてもよく、互いに異なる3以上のショルダーブロックを含んでもよい。
【0025】
第1側第1ショルダーブロック51aと、それに周方向の第1側(
図2の紙面における縦方向上側に一致)に隣り合う第1側第2ショルダーブロック52aとの間には、第1側第1横溝42aが存在し、第1側第2ショルダーブロック52aと、それに周方向第1側に隣り合う第1側第1ショルダーブロック51aとの間には、第1側第2横溝43aが存在する。複数の第1側第1横溝42aと複数の第1側第2横溝43aとは、複数の第1横溝20aを構成する。第1側第1横溝42aと第1側第2横溝43aの夫々は、第1主溝40aに連通し、第1主溝40aから軸方向の第1側領域に延在する。
【0026】
図2に示すように、第1側第1横溝42aと第1側第2横溝43aの夫々は、軸方向に対して鋭角をなして周方向第2側(紙面の縦方向下側)に傾斜する方向に延在している。第1側第1横溝42aは、軸方向外側に行くにしたがって溝幅が末広がりに大きくなる溝幅拡大部45aを有する。また、第1側第2横溝43aも、軸方向外側に行くにしたがって溝幅が末広がりに大きくなる溝幅拡大部46aを有する。
図3に示す斜視図において、第1側第1横溝42aは、略L字状の形状を有し、軸方向第1側の端部に周方向第1側に突出する三角形状の周方向突出部47aを有し、軸方向第1側の開口の周方向幅が大きくなっている。
【0027】
第1側第1横溝42aの溝幅拡大部45aは、2段構造となっている。第1側第1横溝42aの溝幅拡大部45aは、軸方向の単位長さあたりの最大の溝幅拡大率が第1溝幅拡大率である軸方向内側部分48aと、軸方向内側部分48aから軸方向外側に延びると共に、軸方向の単位長さあたりの最小の溝幅拡大率が第1溝幅拡大率よりも大きい第2溝幅拡大率となっている軸方向外側部分49aとを含む。他方、第1側第2横溝43aは、1段構造となっており、第1側第2横溝43aの溝幅拡大部46aは、軸方向外側の端に行くにしたがって溝幅が徐々に広くなっている。
【0028】
図3に示すように、タイヤ1は、サイドウォール12に周方向に間隔をおいて配置される複数のサイドプロテクタ35を有する。サイドプロテクタ35は、第1側第2ショルダーブロック52aに繋がって径方向内側に延びる第1部分35aと、第1側第1ショルダーブロック51aに繋がって径方向内側に延びる第2部分35bとを含む。
図3に示すように、第1部分35aは、径方向外側かつ周方向第2側の端部に三角形の形状の窪み70を有する。その結果、第1部分35aの周方向第2側と、第2部分35bの周方向第1側と、周方向に延在する環状のリブ57とで画定された第1凹部58は、径方向の外側領域の周方向幅が大きくなっている。第1凹部58は、径方向内側の端が径方向内側に開口している。
【0029】
第1側第1横溝42aの溝幅拡大部45aにおける軸方向外側端の周方向幅は、第1凹部58の径方向外側端の周方向幅と略等しく、溝幅拡大部45aにおける軸方向外側端の周方向の存在範囲は、第1凹部58の径方向外側端の周方向の存在範囲と略等しくなっている。溝幅拡大部45aにおける軸方向外側端と、第1凹部58の径方向外側端は、環状のリブ57を介して径方向に対向している。
【0030】
第1部分35aの周方向第2側の縁は、径方向内側に行くにしたがって周方向第2側に変位する径方向上側縁部と、略径方向内側に延びる径方向下側縁部とを含む。他方、第2部分35bの周方向第1側の縁は、径方向内側に行くにしたがって周方向第2側に変位する第1部分と、第1部分に繋がると共に径方向内側に延在する第2部分と、第2部分に繋がると共に径方向内側に行くにしたがって周方向第2側に変位する第3部分とを有する。
【0031】
第2部分35bは、径方向の外側に位置すると共に径方向内側に行くにしたがって肉厚が小さくなる傾斜肉部39aと、傾斜肉部39aの径方向内側の縁に繋がると共に傾斜肉部39aの径方向内側の縁の肉厚と略同一の肉厚を有する土台部39bとを有する。
【0032】
第1部分35aの周方向第1側と、第2部分35bの周方向第2側と、周方向に延在する環状のリブ57とで画定された第2凹部59は、略径方向に延在する窪みとなっている。窪みの周方向第1側の深さは、径方向内側に行くにしたがって浅くなっている。第1側第2横溝43aの軸方向外側の縁の周方向長さと、第2凹部59の径方向外側の縁の周方向長さは、略同じ長さで、第1側第2横溝43aの軸方向外側の縁と、第2凹部59の径方向外側の縁は、周方向の略同じ範囲に存在している。第1側第2横溝43aの軸方向の外側の縁と、第2凹部59の径方向外側の縁は環状のリブ57を介して径方向に対向している。
【0033】
上記ショルダーブロック50a及びサイドプロテクタ35の構成において、第1側第1横溝42aは、軸方向に対して鋭角をなして傾斜する方向に延在しているため、タイヤ1が回転すると、第1側第1横溝42aに入り込んだ異物、例えば、泥、水、小石等は、径方向外側に移動し、溝幅拡大部45aを介して軸方向外側に円滑に移動する。
【0034】
ここで、溝幅拡大部45aは、軸方向外側に行くにしたがって溝幅が大きくなっているので、溝幅拡大部45aに到達した異物は、溝からの排出が促進される。したがって、タイヤ1の排土性を向上させることができる。なお、溝幅拡大部45aは、第1側第1横溝42aの如何なる箇所に設けられてもよいが、接地端E1よりも軸方向の外側に設けられると好ましい。そのようにすると、排土性能を向上させるだけでなく、接地面積を大きくできるので、摩擦力を大きくでき、制動性能を高くできる。よって、互いにトレードオフの関係にある、良好な排土性能と、良好な制動性能の両方を実現できるという顕著な作用効果を獲得できる。
【0035】
更に述べると、溝幅拡大部45aにおける軸方向外側端と、第1凹部58の径方向外側端とは、径方向に対向しているので、第1側第1横溝42aに入り込んだ空気を、第1側第1横溝42a、第1凹部58を介して径方向内側に円滑に流動させることができる。よって、タイヤ1の放熱性を高くできるので、その空気の流れでタイヤ1を効果的に冷却することができ、タイヤ1の耐久性を高くできる。
【0036】
また、同様に、第1側第2横溝43aも、軸方向に対して鋭角をなして傾斜する方向に延在しているため、タイヤ1が回転すると、第1側第2横溝43aに入り込んだ異物、例えば、泥、水、小石等が、径方向外側に移動し、溝幅拡大部46aを介して軸方向外側に円滑に移動する。
【0037】
ここで、溝幅拡大部46aも、軸方向外側に行くにしたがって溝幅が大きくなっているので、溝幅拡大部46aに到達した異物は、溝からの排出が促進される。したがって、タイヤ1の排土性を向上させることができる。なお、溝幅拡大部46aも、第1側第2横溝43aの如何なる箇所に設けられてもよいが、接地端E1よりも軸方向外側に設けられると好ましい。溝幅拡大部46aをそのように設けると、排土性能を向上させるだけでなく、接地面積を大きくできるので、摩擦力を大きくでき、制動性能を高くできる。よって、互いにトレードオフの関係にある、良好な排土性能と、良好な制動性能の両方を実現できるという顕著な作用効果を獲得できる。
【0038】
また、第1側第2横溝43aの軸方向外側の縁と、第2凹部59の径方向外側の縁は径方向に対向している。したがって、第1側第2横溝43aに入り込んだ空気も、第1側第2横溝43a、第2凹部59を介して径方向内側に円滑に流動させることができ、第2凹部59の深さが浅い箇所を介して径方向内側に流すことができる。よって、第2凹部59に入り込んだ空気の流れでも、放熱性を高くできる。その結果、タイヤ1を効果的に冷却することができ、タイヤ1の耐久性を高くできる。更には、第2凹部59は、周囲を囲まれた窪みとなっている。サイドプロテクタ35にそのような窪みを設けると、車両が泥濘地を走行するときのトラクションを大きくでき、車両が悪路を走行する際の駆動力を大きくできる。
【0039】
図4は、
図2の部分拡大正面図である。
図4に示すように、タイヤ1は、更に、第1主溝40aの軸方向中央側の縁を画定する複数の第1側メディエイトブロック54aと、第2主溝40bの軸方向中央側の縁を画定する複数の第2側メディエイトブロック54bと、複数のセンターブロック80とを備える。複数の第1側メディエイトブロック54aは、複数の第1メディエイトブロック55aと、複数の第2メディエイトブロック56aとを有する。第1メディエイトブロック55aと、第2メディエイトブロック56aは、周方向に交互に配置される。
【0040】
第1メディエイトブロック55aは、タイヤ1の軸方向の略中心位置から軸方向外側に行くにしたがって周方向第1側に変位する第1縁61、第1縁61の軸方向外側の先端から軸方向外側に行くにしたがって周方向第2側に変位する第2縁62、及び第2縁62の軸方向外側の先端から周方向第2側に行くにしたがって僅かに軸方向内側に変位する第3縁63を有する。また、第1メディエイトブロック55aは、第3縁63の周方向第2側の縁から周方向第2側に行くにしたがって軸方向内側に変位する第4縁64、第4縁64の軸方向内側の端から軸方向内側に行くにしたがって周方向第1側に変位する第5縁65、及び第5縁65に設けられて第4縁64に略平行に延びる凹部66を介して連なって軸方向内側に行くにしたがって周方向第1側に変位する第6縁67を有する。
【0041】
第1縁61と第2縁62は、鈍角で交差し、第2縁62と第3縁63も、鈍角で交差し、第3縁63と第4縁64も、鈍角で交差する。また、第4縁64と第5縁65は、直角よりも僅かに大きな鈍角で交差し、第6縁67と第1縁61は、鋭角で交差する。また、第1メディエイトブロック55aの凹部66は、周方向第2側の縁の長さが周方向第1側の縁の長さよりも小さくなっている。その結果、第5縁65の延長線は、凹部66の周方向第2側の縁の中央部に交差する。
【0042】
第2メディエイトブロック56aは、第1メディエイトブロック55aの第4縁64に間隔をおいて略平行に延在すると共に第4縁64と略同じ長さを有する第1縁71、第1縁71の軸方向外側の端から周方向第2側に行くにしたがって軸方向内側に変位する第2縁72、第2縁72の軸方向外側の端から周方向第2側に行くにしたがって軸方向内側に変位する第3縁73を有する。また、第2メディエイトブロック56aは、第3縁73の周方向第2側の端に凹部74を介して連なると共に、周方向第2側に行くにしたがって軸方向内側に変位する第4縁75、第4縁75の周方向第2側の端から軸方向内側に行くにしたがって周方向第1側に変位し、第1メディエイトブロック55aの第2縁62に間隔をおいて略平行に延在する第5縁76、第5縁76の軸方向内側の端から周方向第2側に行くにしたがって軸方向外側に変位する第6縁77を有する。第2メディエイトブロック56aの凹部74は、第5縁76と略平行に延在する。
【0043】
第1縁71と、第2縁72は、鈍角で交差し、第2縁72と、第3縁73も、鈍角で交差する。また、第4縁75は、略第3縁73の延長線上に位置し、第4縁75と第5縁76は、鋭角で交差する。また、第5縁76と、第6縁77は、鈍角で交差し、第6縁77と、第1縁71も、鈍角で交差する。第2メディエイトブロック56aにおいて最も軸方向内側に位置する箇所は、第5縁76と第6縁77が交差する交差点88であり、この交差点88の軸方向位置は、第1メディエイトブロック55aの凹部66の周方向第1側の縁の中央部の軸方向位置と略同じになっている。第1メディエイトブロック55aにおける軸方向の中心よりも軸方向内側に位置する箇所の大部分は、第2メディエイトブロック56aよりも軸方向内側に位置している。
【0044】
第1メディエイトブロック55aの第2縁62において第2メディエイトブロック56aの第5縁76よりも軸方向外側に突出している突出部69、第1メディエイトブロック55aの第3縁63、第2メディエイトブロック56aの第2縁72、第2メディエイトブロック56aの第3縁73、第2メディエイトブロック56aの第4縁75、及び第2メディエイトブロック56aの凹部74の内面は、第1主溝40aの軸方向内側の縁を画定している。
【0045】
第1メディエイトブロック55aの第2縁62と、第2メディエイトブロック56aの第5縁76は、軸方向に行くにしたがって周方向第2側に変位する第1側第3横溝78を画定し、第1メディエイトブロック55aの第4縁75と、第2メディエイトブロック56aの第1縁71は、軸方向に行くにしたがって周方向第1側に変位する第1側第4横溝79を画定する。よって、周方向に間隔をおいて一列に配置される複数の第1側メディエイトブロック54aの間には、軸方向に行くにしたがって周方向第2側に変位する第1側第3横溝78と、軸方向に行くにしたがって周方向第1側に変位する第1側第4横溝79が、周方向に交互に現れる。第1側第3横溝78と、第1側第4横溝79をこのように構成することで、車両が悪路を走行する際や悪路をバックする際に悪路から大きな推進力を獲得できるようにしている。
【0046】
第1側第3横溝78の延長線上に第1側第1横溝42aが存在している、また、突出部69は、第1側第3横溝78に入り込んだ異物や空気を第1側第1横溝42aに案内するように、第1側第1横溝42aの周方向第2側の縁の方に延在し、当該周方向第2側の縁の方に突出している。
図4に示すように、第1構造4の第1メディエイトブロック55aの第6縁67と、第2構造8の第1メディエイトブロック55bの第6縁67とは、間隔をおいて略平行に配置される。また、第1構造4の第6縁67の全ては、第2構造8の第6縁67の全てに、第6縁67の延在方向に直交する方向に重なるように対向する。
【0047】
その結果、4つの第1メディエイトブロック55aと、2つの第2メディエイトブロック56aとが、略6角形のスペースを画定する。より詳しくは、2つの第1メディエイトブロック55aの第5縁65、2つの第1メディエイトブロック55aの第1縁61、及び2つの第2メディエイトブロック56aの第6縁77が、略6角形の凹部81を画定する。また、第1構造4の第1メディエイトブロック55aの凹部66の第6縁側の縁と、第2構造8の第1メディエイトブロック55aの第1縁61とが、略同一直線上に位置する。
【0048】
タイヤ1は、周方向に間隔をおいて等間隔に配置される複数の略6角形の凹部81を有する。また、第1構造4の第6縁67と、第2構造8の第6縁67とは、縦溝82を画定する。周方向に隣り合う略6角形の凹部81同士は、縦溝82によって連通する。縦溝82の延在方向の中心は、タイヤ1の軸方向の中心を通過する。縦溝82は、周方向第1側に行くにしたがって、軸方向第2側に変位する。
【0049】
タイヤ1は、更に、複数のセンターブロック80を備える。センターブロック80は、2つの第1メディエイトブロック55aの第5縁65、2つの第1メディエイトブロック55aの第1縁61、及び2つの第2メディエイトブロック56aの第6縁77に間隔をおいて略平行に配置される6つの縁を有する。換言すれば、2つの第1メディエイトブロック55aの第5縁65、2つの第1メディエイトブロック55aの第1縁61、2つの第2メディエイトブロック56aの第6縁77と、センターブロック80の環状縁とは、略六角形の環状溝83を画定する。
【0050】
センターブロック80は、2つの直線形状の凹部84を有する。凹部84は、縦溝であり、先端に行くにしたがって軸方向中央側に変位する。凹部84の開口の少なくとも一部は、環状溝83の一部を介して第1側第3横溝78の軸方向内側の開口に、凹部84の延在方向に対向する。6つの溝78,78,79,79,82,82が、環状溝83から延びる。2つの横溝78,79は、環状溝83と第1構造4の第1主溝40aとを連通させる。また、他の2つの横溝78,79は、環状溝83と第2構造8の第2主溝40bとを連通させる。また、1つの縦溝82は、環状溝83とその環状溝83の周方向第1側に存在する環状溝83とを連通させる。また、他の1つの縦溝82は、環状溝83とその環状溝83の周方向第2側に存在する環状溝83とを連通させる。
【0051】
軸方向中央に存在するのが横溝78,79のみであると、旋回時に車両が横に滑り易くなる虞がある。これに対し、本実施形態のタイヤ1のように、縦溝82、及び縦溝である凹部84が、軸方向中央に存在すると、縦溝82及び凹部84のエッジ効果によって、車両が旋回時に横に滑り難くなって好ましい。なお、本実施形態では、主溝40a,40bと、略六角形の各環状溝83が、2つの横溝78,79を介して連通していた。しかし、主溝に1以上の横溝を介して連通するのは、六角形以外の形状を有する環状溝でもよい。
【0052】
図4に示すように、複数のショルダーブロック50aの軸方向内側の縁は、第1主溝40aの軸方向外側の縁を画定する。各ショルダーブロック50aの軸方向内側の縁は、周方向の両側端部が軸方向外側に窪んでいる。その窪み90の深さは、第1主溝40aの底の深さよりも浅くなっている。また、第2メディエイトブロック56aの軸方向外側縁の周方向中央部には、軸方向内側に行くにしたがって周方向第1側に変位する細長い窪み93が設けられる。
【0053】
本開示のタイヤ1は、オフロードでの使用が想定されているにも拘わらず、主要な溝を横溝で構成する既存のオフロード用タイヤと異なり、環状部41a,41bを含む主溝(周方向延在溝)40a,40bを有する。したがって、主溝(周方向延在溝)40a,40bの形成によって、泥濘路等の悪路走行中に地面から受けるグリップが小さくなる虞がある。
【0054】
しかし、タイヤ1では、第2メディエイトブロック56aの軸方向外側の縁に横溝である細長い窪み93が設けられると共に、ショルダーブロック50aの軸方向内側の縁に、グリップを大きくできる軸方向に窪む窪み90が多数設けられる。よって、悪路走行中に地面から受けるグリップを大きくすることができる。また、窪み90の深さを浅くすることで、タイヤ1の剛性も大きくできて、操安性を良好なものにできる。更には、各ショルダーブロック50aの軸方向内側の縁の周方向の両側端部に窪み90を設けることで、異物が第1側第1横溝42aや第1側第2横溝43aに移動し易くなり、排土性も良好なものにできる。また、縦溝82は、延在方向の両端部に深さが浅い肉厚部91a,91bを有し、第1側第3横溝78は、延在方向の中央部に深さが浅い肉厚部92を有する。そのような肉厚部91a,91b,92を設けることで、タイヤ1の剛性を大きくできて、操安性を良好なものにできる。
【0055】
図4に示すように、第1主溝40aの縁は、複数のショルダーブロック50a及び複数の第1側メディエイトブロック54aで画定される。各ショルダーブロック50aに設けられた複数のサイプ95aの全ては、第1主溝40aに連通している。また、各第1側メディエイトブロック54aに設けられた複数のサイプ95aの全ても、第1主溝40aに連通している。換言すると、第1主溝40aに連通する複数のサイプ95aが存在する一方、第1主溝40aに接地面10aのみを介して第1主溝40aに間隔をおいて位置するサイプが存在しないようになっている。
【0056】
各サイプ95aは、第1主溝40aに連結する連結部と、連結部の第1主溝側40aとは反対側の端から先端まで延在する先端側部と、を含む。連結部及び先端側部の夫々は、略同一の深さを有している。また、連結部の深さは、先端側部の深さよりも浅くなっている。なお、主溝の縁を画定するブロックに設けられた全てのサイプが、主溝に連通していると好ましいが、主溝の縁を画定するブロックに設けられた複数のサイプが、主溝に連通していない1以上のサイプを含んでもよい。また、タイヤは、主溝に連結すると共に深さが全長で略同一の1以上のサイプを有してもよい。
【0057】
図5は、タイヤ1の周方向の一部を、タイヤ1の径方向に直交する平面に正射影したときの模式平面図である。以下では、
図5を用いながら、本開示のタイヤ1で特に重要な構成、及びその構成から導出される作用効果について説明する。
【0058】
タイヤ1は、軸方向第1側に設けられると共に、周方向の全周に亘って周方向に平行に延びる第1環状部41aを含む第1主溝40aと、軸方向第2側に設けられると共に、周方向の全周に亘って周方向に平行に延びる第2環状部41bを含む第2主溝40bと、を備える。軸方向における第1主溝40aと第2主溝40bの間に、周方向の全周に亘って前記周方向に平行に延びる環状部を有する溝が存在しない。
【0059】
従来、オフロードでの使用が想定されているタイヤは、主要な溝を横溝で構成し、悪路を走行するときの推進力を得るようにしている。しかし、そのようなタイヤは、悪路(例えば、泥濘路)を走行した際の排土性能を良好にし難い。
【0060】
係る背景において、本開示のタイヤ1によれば、軸方向の中央部に周方向の全周に亘って周方向に平行に延びる環状部を有する溝が存在しない。したがって、タイヤ1の軸方向の中央部か泥濘路等の悪路から大きな推進力を得ることができ、タイヤ1をオフロードで好適に使用することができる。更には、タイヤ1の軸方向端部に環状部41a,41bを有する主溝40a,40bを設ける。したがって、土、泥、水等の異物を主溝40a,40bを介して効率的に排出し易く、排土性能を向上できる。よって、互いにトレードオフの関係にある、良好な制動性能と、良好な排土性能との両方を実現できるという顕著な作用効果を奏するタイヤ1を作製できる。
【0061】
なお、
図5において、点線y1と点線y2で囲まれた各環状部41a,41bの軸方向長さX1が、軸方向第1側の接地端E1と軸方向第2側の接地端E2との間の軸方向長さX2の3%以上であれば主溝40a,40bで良好な排土性能を獲得し易くて好ましい。また、X1がX2の20%以下であると、良好な制動性能を実現し易くて好ましい。
【0062】
また、タイヤ1は、第1主溝40aから軸方向外側に延びると共に、周方向に間隔をおいて配置される複数の第1横溝20aと、第2主溝40bから軸方向外側に延びると共に、周方向に間隔をおいて配置される複数の第2横溝20bと、を有してもよい。そして、第1横溝20aが、溝幅が大きくなる第1溝幅拡大部45a,46aを有すると共に、第2横溝20bが、溝幅が大きくなる第2溝幅拡大部45b,46bを有してもよい。
【0063】
本構成によれば、タイヤ1の回転によって、第1横溝20aや第2横溝20bを軸方向外側に移動した異物を溝幅拡大部45a,46a,45b,46bで効果的に排出できる。よって、排土性能を更に向上できる。
【0064】
また、第1溝幅拡大部45a,46aが、軸方向第1側に位置する第1接地端E1よりも軸方向外側に位置し、第2溝幅拡大部45b,46bが、軸方向第2側に位置する第2接地端E2よりも軸方向外側に位置してもよい。
【0065】
本構成によれば、制動性能に寄与するタイヤの接地面積を下げずに排土性能を向上させることができる。よって、制動性能と排土性能の両方に優れるタイヤ1を作製できる。
【0066】
なお、第1側第1横溝42aが、軸方向外側に行くにしたがって溝幅が末広がりに大きくなる第1溝幅拡大部45aを有し、第1側第2横溝43aが、軸方向外側に行くにしたがって溝幅が末広がりに大きくなる第1溝幅拡大部46aを有する場合について説明した。また、第1溝幅拡大部45a,46aが、軸方向第1側に位置する第1接地端E1よりも軸方向外側に位置する場合について説明した。しかし、第1側第1横溝及び第1側第2横溝のうちの少なくとも一方は、溝幅が略一定の第1部分と、第1部分から軸方向外側に延びる第2部分を含んでもよい。そして、第2部分が第1部分に段部を介して連なり、第2部分の溝幅が、略一定であって、第1部分の溝幅よりも広くてもよい。すなわち、第1側第1横溝及び第1側第2横溝のうちの少なくとも一方は、特定箇所で段部を介して溝幅が広がる部分を含んでもよく、溝幅拡大部は、特定箇所に局所的に存在してもよい。また、軸方向第1側に位置する第1溝幅拡大部は、軸方向第1側の接地端よりも軸方向内側に位置する部分を含んでもよい。又は、第1側第1横溝及び第1側第2横溝の両方が、軸方向外側の溝幅が大きくなる溝幅拡大部を含んでいなくてもよい。
【0067】
また、
図4に示すように、第1主溝40aの縁を画定するブロック50a,54aに設けられた複数のサイプ95aの全てが、第1主溝40aに連通してもよい。また、第2主溝40bの縁を画定するブロック50b,54bに設けられた複数のサイプ95bの全てが、第2主溝40bに連通してもよい。換言すると、第1主溝40aに連通する複数のサイプ95aが存在する一方、第1主溝40aに接地面(踏面)のみを介して第1主溝40aに間隔をおいて位置するサイプが存在しなくてもよい。また、第2主溝40bに連通する複数のサイプ95bが存在する一方、第2主溝40bに接地面のみを介して第2主溝40bに間隔をおいて位置するサイプが存在しなくてもよい。
【0068】
本構成によれば、接地面10aの剛性を下げることができるので、タイヤ1に作用する力(入力)を抑制できる。したがって、耐チッピング(微小欠損)性能を上げることができる。なお、チッピング性能は、路面から付ける重力によって左右され、接地面の形状に影響を受けるが、岩石の路面を登るとき等は、ブロック剛性が高い方がよい。よって、サイプ95a,95bにおける主溝40a,40b側部分の深さを、サイプ95a,95bにおける先端側の深さよりも浅くすると、ブロック剛性が必要以上に低下することを抑制できて好ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 タイヤ、 2 サイドウォール、 4 第1構造、 8 第2構造、 10 トレッド、 10a 接地面、 11 ショルダー、 12 サイドウォール、 12a タイヤ最大幅位置、 13 ビード、 15 カーカス、 15E プライ端、 16 ベルト、 17 インナーライナー、 18 ベルト補強材、 20a 第1横溝、 20b 第2横溝、 26 ビードコア、 27 ビードフィラー、 35 サイドプロテクタ、 40a 第1主溝、 40b 第2主溝、 41a 第1環状部、 41b 第2環状部、 42a 第1側第1横溝、 43a 第1側第2横溝、 45a,46a 第1溝幅拡大部、 45b,46b 第2溝幅拡大部、 50a,50b ショルダーブロック、 51a 第1側第1ショルダーブロック、 52a 第1側第2ショルダーブロック、 54a 第1側メディエイトブロック、 54b 第2側メディエイトブロック、 55a,55b 第1メディエイトブロック、 56a,56b 第2メディエイトブロック、 57 リブ、 58 第1凹部、 59 第2凹部、 66,74,81,84 凹部、 69 突出部、 70,90,93 窪み、 78 第1側第3横溝、 79 第1側第4横溝、 80 センターブロック、 82 縦溝、 83 環状溝、 91a,91b,92 肉厚部、 95a,95b サイプ、 E1 第1接地端、 E2 第2接地端。