(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097533
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】土量算出装置、土量算出方法及び土量算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240711BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G06Q50/08
E02F9/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001039
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】本木 章平
(72)【発明者】
【氏名】宮田 岩往
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】吉野 修
(72)【発明者】
【氏名】黒田 卓也
【テーマコード(参考)】
2D015
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2D015HA03
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】施工履歴データに含まれる高さデータのバラツキを平滑化し、盛土量や切土量の算出精度を向上させる。
【解決手段】施工面を仮想的にメッシュで区画し、各メッシュの3次元座標データを記録した施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出する土量算出装置1であって、各メッシュの3次元座標データの高さデータから異常値を抽出して除去する異常値除去手段と、異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定する代替値設定手段と、を備え、異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出し、代替値設定手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工面を仮想的にメッシュで区画し、各メッシュの3次元座標データを記録した施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出する土量算出装置であって、
各メッシュの3次元座標データの高さデータから異常値を抽出して除去する異常値除去手段と、
前記異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定する代替値設定手段と、を備え、
前記異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出し、
前記代替値設定手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出することを特徴とする土量算出装置。
【請求項2】
前記異常値除去手段は、
所定の第1アルゴリズムに基づいて前記異常値を抽出する第1異常値除去手段と、
前記第1異常値除去手段の実行後、前記第1アルゴリズムとは異なる第2アルゴリズムに基づいて前記異常値を抽出する第2異常値除去手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の土量算出装置。
【請求項3】
前記第1異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータとの差分が所定の第1閾値よりも大きい場合に異常値であると判定し、
前記第1閾値は、最大切土勾配に基づいて設定されることを特徴とする請求項2に記載の土量算出装置。
【請求項4】
前記第2異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値との差分が所定の第2閾値よりも大きい場合に異常値であると判定し、
前記第2閾値は、任意に設定可能であることを特徴とする請求項2に記載の土量算出装置。
【請求項5】
前記代替値設定手段は、M個×N個のメッシュ範囲を設定し、前記メッシュ範囲を移動させながら、前記メッシュ範囲内に高さデータが除去されたメッシュが存在するかを判断し、高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、前記メッシュ範囲内の他のメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値を高さデータが除去されたメッシュの代替値として設定することを特徴とする請求項1に記載の土量算出装置。
【請求項6】
前記代替値設定手段の実行後、再び前記第2異常値除去手段を実行し、ここで高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、再び前記代替値設定手段を実行することを特徴とする請求項4に記載の土量算出装置。
【請求項7】
施工面を仮想的にメッシュで区画し、各メッシュの3次元座標データを記録した施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出する土量算出方法であって、
各メッシュの3次元座標データの高さデータから異常値を抽出して除去する異常値除去ステップと、
前記異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定する代替値設定ステップと、を備え、
前記異常値除去ステップは、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出し、
前記代替値設定ステップは、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出することを特徴とする土量算出方法。
【請求項8】
施工面を仮想的にメッシュで区画し、各メッシュの3次元座標データを記録した施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出する土量算出プログラムであって、
コンピュータを、
各メッシュの3次元座標データの高さデータから異常値を抽出して除去する異常値除去手段と、
前記異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定する代替値設定手段と、として機能させ、
前記異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出し、
前記代替値設定手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出することを特徴とする土量算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工現場の盛土量及び切土量を算出する土量算出装置、土量算出方法及び土量算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MC(マシンコントロールシステム)やMG(マシンガイダンスシステム)を搭載したICT建設機械が知られている。この種のICT建設機械では、3次元設計データを取り込むことにより、走行部、作業部などの自動制御(MC)や操作ガイド(MG)を行うことができる。また、ICT建設機械の施工履歴データを利用して施工現場の盛土量や切土量を算出する施工管理システムも提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、施工履歴データは、ICT建設機械の位置情報や姿勢情報に基づいて記録される施工面の3次元座標データである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ICT建設機械が取得する位置情報及び姿勢情報は、GNSS(衛星測位システム)の受信環境や機体振動に起因するバラツキを含んでおり、特に、高さ方向の座標データのバラツキが大きい。したがって、ICT建設機械の施工履歴データをそのまま利用した場合は、盛土量や切土量を適切に算出することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、施工面を仮想的にメッシュで区画し、各メッシュの3次元座標データを記録した施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出する土量算出装置であって、各メッシュの3次元座標データの高さデータから異常値を抽出して除去する異常値除去手段と、前記異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定する代替値設定手段と、を備え、前記異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出し、前記代替値設定手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出することを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の土量算出装置であって、前記異常値除去手段は、所定の第1アルゴリズムに基づいて前記異常値を抽出する第1異常値除去手段と、前記第1異常値除去手段の実行後、前記第1アルゴリズムとは異なる第2アルゴリズムに基づいて前記異常値を抽出する第2異常値除去手段と、を備えることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の土量算出装置であって、前記第1異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータとの差分が所定の第1閾値よりも大きい場合に異常値であると判定し、前記第1閾値は、最大切土勾配に基づいて設定されることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項2に記載の土量算出装置であって、前記第2異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値との差分が所定の第2閾値よりも大きい場合に異常値であると判定し、前記第2閾値は、任意に設定可能であることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項1に記載の土量算出装置であって、前記代替値設定手段は、M個×N個のメッシュ範囲を設定し、前記メッシュ範囲を移動させながら、前記メッシュ範囲内に高さデータが除去されたメッシュが存在するかを判断し、高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、前記メッシュ範囲内の他のメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値を高さデータが除去されたメッシュの代替値として設定することを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項4に記載の土量算出装置であって、前記代替値設定手段の実行後、再び前記第2異常値除去手段を実行し、ここで高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、再び前記代替値設定手段を実行することを特徴とする。
また、請求項7の発明は、施工面を仮想的にメッシュで区画し、各メッシュの3次元座標データを記録した施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出する土量算出方法であって、各メッシュの3次元座標データの高さデータから異常値を抽出して除去する異常値除去ステップと、前記異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定する代替値設定ステップと、を備え、前記異常値除去ステップは、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出し、前記代替値設定ステップは、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出することを特徴とする。
また、請求項8の発明は、施工面を仮想的にメッシュで区画し、各メッシュの3次元座標データを記録した施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出する土量算出プログラムであって、コンピュータを、各メッシュの3次元座標データの高さデータから異常値を抽出して除去する異常値除去手段と、前記異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定する代替値設定手段と、として機能させ、前記異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出し、前記代替値設定手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出するので、高さデータの異常値を適切に除去できる。また、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出するので、高さデータの異常値を適切な代替値に置き換えることができる。その結果、施工履歴データに含まれる高さデータのバラツキを平滑化し、盛土量や切土量の算出精度を向上させることができる。
また、請求項2の発明によれば、所定の第1アルゴリズムに基づいて異常値を抽出する第1異常値除去手段と、第1異常値除去手段の実行後、第1アルゴリズムとは異なる第2アルゴリズムに基づいて異常値を抽出する第2異常値除去手段と、を備えるので、異なるアルゴリズムによる二段階の処理で異常値をより適切に除去することができる。
また、請求項3の発明によれば、第1異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータとの差分が所定の第1閾値よりも大きい場合に異常値であると判定し、第1閾値は、最大切土勾配に基づいて設定されるので、周囲に位置するメッシュから見て明らかに異常と思われる高さデータを確実に除去できる。
また、請求項4の発明によれば、第2異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値との差分が所定の第2閾値よりも大きい場合に異常値であると判定し、第2閾値は、任意に設定可能なので、要求される高さデータの平滑度に応じた異常値の除去処理が可能になる。また、第1異常値除去手段によって明らかに異常と思われる高さデータを除去した後に第2異常値除去手段を実行することで、第2異常値除去手段の処理精度を高めることができる。
また、請求項5の発明によれば、代替値設定手段は、M個×N個のメッシュ範囲を設定し、メッシュ範囲を移動させながら、メッシュ範囲内に高さデータが除去されたメッシュが存在するかを判断し、高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、メッシュ範囲内の他のメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値を高さデータが除去されたメッシュの代替値として設定するので、高さデータが除去されたメッシュに適切な代替値を設定できる。
また、請求項6の発明によれば、代替値設定手段の実行後、再び第2異常値除去手段を実行し、ここで高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、再び代替値設定手段を実行するので、第2異常値除去手段及び代替値設定手段の繰り返しによって、要求される高さデータの平滑度を確実に達成することができる。
また、請求項7の発明によれば、請求項1の発明と同等の効果が得られる。
また、請求項8の発明によれば、請求項1の発明と同等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る土量算出装置の入力データ及び出力データを示す図である。
【
図2】土量算出装置の全体的な処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】(a)は第1異常値除去手段による処理の一例を示す図、(b)は最大切土勾配を示す図である。
【
図4】第2異常値除去手段による処理の一例を示す図である。
【
図5】代替値設定手段による処理の一例を示す図である。
【
図6】代替値設定手段の具体的な処理手順を示す図である。
【
図7】第2異常値除去手段及び代替値設定手段を繰り返す場合の処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1において、1は土量算出装置であって、該土量算出装置1は、コンピュータと専用の土量算出プログラムと、を備えて構成されており、コンピュータで土量算出プログラムを実行すると、施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出することが可能になる。
【0009】
具体的に説明すると、土量算出装置1は、施工現場の施工前の地形を3次元座標データで示す地形データと、施工による最終的な地形を3次元座標データで示す設計データと、ICT建設機械による施工面を3次元座標データで示す施工履歴データと、を入力し、これらの入力データに基づいて算出した盛土量及び切土量を含む土量算出データを出力する。土量算出データは、1日単位、1週間単位、1ヶ月単位、1年単位などで蓄積され、施工現場の進捗管理、コスト管理などに利用される。
【0010】
土量算出装置1は、ハードウェア(コンピュータ)とソフトウェア(土量算出プログラム)との協働により実現される機能構成として、異常値除去手段と、代替値設定手段と、土量算出手段と、を備える。なお、以下の説明では、異常値除去手段による処理を異常値除去処理と称し、代替値設定手段による処理を代替値設定処理と称し、土量算出手段による処理を土量算出処理と称する場合がある。
【0011】
図3~
図7に示すように、施工履歴データは、施工面を仮想的にメッシュで区画し、各メッシュの3次元座標データを記録したデータであり、土量算出手段は、施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出する。ただし、施工履歴データの高さデータには、GNSS(衛星測位システム)の受信環境や機体振動に起因するバラツキが含まれるため、異常値除去手段及び代替値設定手段によって施工履歴データを平滑化する処理を行う。
【0012】
異常値除去手段は、各メッシュの3次元座標データの高さデータから異常値を抽出して除去するための機能構成であり、具体的には、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出して除去する。
【0013】
本実施形態の異常値除去手段には、所定の第1アルゴリズムに基づいて異常値を抽出する第1異常値除去手段と、第1異常値除去手段の実行後、第1アルゴリズムとは異なる第2アルゴリズムに基づいて異常値を抽出する第2異常値除去手段と、が含まれる。
【0014】
第1異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータとの差分が所定の第1閾値よりも大きい場合に異常値であると判定して除去する。第1閾値は、最大切土勾配に基づいて設定されるものであり、詳細は後述する。
【0015】
第2異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値との差分が所定の第2閾値よりも大きい場合に異常値であると判定して除去する。第2閾値は、任意に設定可能であり、その詳細は後述する。
【0016】
代替値設定手段は、第1異常値除去手段及び第2異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定するための機能構成であり、具体的には、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出する。例えば、本実施形態の代替値設定手段は、M個×N個のメッシュ範囲を設定し、メッシュ範囲を移動させながら、メッシュ範囲内に高さデータが除去されたメッシュが存在するかを判断し、高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、メッシュ範囲内の他のメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値を高さデータが除去されたメッシュの代替値として設定する。なお、代替値設定手段による処理の詳細は後述する。
【0017】
本実施形態の土量算出装置1では、代替値設定手段の実行後、再び第2異常値除去手段を実行し、ここで高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、再び代替値設定手段を実行する。例えば、本実施形態の土量算出装置1は、
図2に示すように、施工履歴データなどの各種データを入力した後(S1)、第1異常値除去処理を実行する(S2)。つぎに、土量算出装置1は、第2異常値除去処理を実行した後(S3)、高さデータを除去したメッシュがあるか否かを判断し(S4)、この判断結果がYESの場合は、代替値設定処理を実行する(S5)。そして、土量算出装置1は、代替値設定処理の実行後、ステップS3に戻って第2異常値除去処理を再び実行し、ここで高さデータを除去したメッシュが存在する場合は、再びステップS5の代替値設定処理を再び実行する。つまり、本実施形態の土量算出装置1は、高さデータを除去したメッシュがなくなるまで、第2異常値除去処理及び代替値設定処理を繰り返す。その後、土量算出装置1は、盛土量及び切土量を算出する土量算出処理を実行するとともに(S6)、土量算出処理により算出した土量算出データの保存及び出力(表示、印刷など)を行って一連の処理を終了する。
【0018】
つぎに、第1異常値除去処理、第2異常値除去処理及び代替値設定処理の詳細について、
図3~
図7を参照して説明する。
【0019】
第1異常値除去処理は、周囲に位置するメッシュの高さデータとの差分が所定の第1閾値よりも大きい場合に異常値であると判定して除去する。第1閾値は、最大切土勾配に基づいて設定される。例えば、一般的な硬岩の最大切土勾配を1:0.3とすると、第1閾値は、メッシュサイズ×3.5(厳密には3.33・・・)であり、メッシュサイズが0.5mの場合は、1.75となる。
【0020】
図3に示す例では、周囲に位置するメッシュの高さデータとの差分が所定の第1閾値よりも大きい高さデータ(5.0と6.0)を有するメッシュが2つ存在し、これらの高さデータを除去している。この場合に、該第1異常値除去処理においては、隣接するメッシュの高さデータ同士を比較して異常値と判断される高さデータを除去するものであって、比較対象領域全体のメッシュの高さデータの平均値との比較によって除去するものではない。そして隣接する二つのメッシュの高さデータを比較したときの差分が第1閾値を越える場合に、何れのメッシュの高さデータが異常値であるかの判断をする必要があるが、この判断は、比較する二つのメッシュの高さデータと、該各二つのメッシュの周囲のメッシュの高さデータと比較をし、比較する二つのメッシュのうち、第1閾値を越える周囲のメッシュの数が多い方のメッシュが異常であると判断する。
なお、比較する周囲のメッシュは、所定方向に隣接する1つのメッシュでもよいし、隣接する複数のメッシュであってもよく、その選択は必要において適宜設定することができる。例えば、隣接する8つのメッシュと比較を行い、異常値との判断結果が所定数以上の場合に異常値であると判定するようにしてもよい。
【0021】
第2異常値除去処理は、周囲に位置するメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値との差分が所定の第2閾値よりも大きい場合に異常値であると判定して除去する。第2閾値は、任意に設定される。例えば、第2閾値は、メッシュサイズ×任意の設定値であり、メッシュサイズが0.5mで、任意の設定値が0.5の場合、第2閾値は、0.25となる。
【0022】
図4に示す例では、周囲に位置するメッシュの高さデータの平均値が3.0であり、算出した平均値との差分が所定の第2閾値である0.25よりも大きい高さデータ(4.0)を有するメッシュが1つ存在し、この高さデータを除去している。
因みに第2異常値除去処理において第2閾値を算出するために選択されるメッシュとして、本実施の形態では比較判断されるメッシュの周囲(四周)に位置する8つのメッシュの高さデータを採用しているが、周囲に位置するメッシュとしては、周囲に位置する8つのメッシュに限定されず、任意の周囲(例えば下側を除く3周、上下2周、上側1周等)に隣接するメッシュとしてもよいし、例えば四周に隣接する8つのメッシュである場合、一つ置きとして4つのメッシュとしてもよい。そしてその選択は必要において適宜設定することができ、この場合、例えば第1異常値除去処理において選択したメッシュを選択してもよいし、他のメッシュを選択して採用してもよい。
さらには周囲に位置するメッシュとして、前述した周囲(四周)に隣接する8つのメッシュの高さデータに、その外周に隣接する16のメッシュの高さデータを加えたもの、その場合に、前記外周の16のメッシュのうち、上下に隣接する6つのメッシュの高さデータ、一つ置きのメッシュの高さデータを加えたものとしてもよく、さらには前記外周のメッシュの高さデータの寄与率を考慮して、例えば1/2に評価したものを加算する等、これらの選択は必要において適宜設定することができる。
【0023】
代替値設定処理は、
図5に示すように、第1異常値除去手段及び第2異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定する。代替値は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて算出する。
【0024】
例えば、本実施形態の代替値設定処理は、
図6に示すように、3個×3個のメッシュ範囲を設定し、メッシュ範囲を対象範囲の左下から右方向に1メッシュずつ移動させながら、メッシュ範囲内に高さデータが除去されたメッシュが存在するかを判断する。また、メッシュ範囲が対象範囲の右端に達したら、1メッシュだけ上方にずらし、再び左から右方向に1メッシュずつ移動させながら、メッシュ範囲内に高さデータが除去されたメッシュが存在するかを判断する。このようにして、対象範囲の全域で高さデータが除去されたメッシュを検索する。そして、高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、メッシュ範囲内の他のメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値を高さデータが除去されたメッシュの代替値として設定する。
【0025】
図7は、第2異常値除去処理及び代替値設定処理を繰り返す場合の処理例であり、メッシュサイズ0.5m、任意の設定値0.3により、第2閾値を0.15とした場合を示している。土量算出装置1は、所定のメッシュ範囲を対象とし(
図7の上段左側)、第2異常値除去処理による異常値の除去を行った後(
図7の上段中央)、代替値設定処理を実行する(
図7の上段右側)。その後、再び第2異常値除去処理及び代替値設定処理を実行する(
図7の下段)。これにより、すべてのメッシュの高さデータが第2閾値内に収まるように平滑化させることができる。
【0026】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、施工面を仮想的にメッシュで区画し、各メッシュの3次元座標データを記録した施工履歴データを利用して施工現場の盛土量及び切土量を算出する土量算出装置1であって、各メッシュの3次元座標データの高さデータから異常値を抽出して除去する異常値除去手段を備え、この異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて高さデータの異常値を抽出するので、高さデータの異常値を適切に除去できる。
【0027】
また、土量算出装置1は、異常値除去手段によって高さデータが除去されたメッシュに高さデータの代替値を設定する代替値設定手段を備え、この代替値設定手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータに基づいて代替値を算出するので、高さデータの異常値を適切な代替値に置き換えることができる。その結果、施工履歴データに含まれる高さデータのバラツキを平滑化し、盛土量や切土量の算出精度を向上させることができる。
【0028】
また、異常値除去手段は、所定の第1アルゴリズムに基づいて異常値を抽出する第1異常値除去手段と、第1異常値除去手段の実行後、第1アルゴリズムとは異なる第2アルゴリズムに基づいて異常値を抽出する第2異常値除去手段と、を備えるので、異なるアルゴリズムによる二段階の処理で異常値をより適切に除去することができる。
【0029】
また、第1異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータとの差分が所定の第1閾値よりも大きい場合に異常値であると判定し、第1閾値は、最大切土勾配に基づいて設定されるので、周囲に位置するメッシュから見て明らかに異常と思われる高さデータを確実に除去できる。
【0030】
また、第2異常値除去手段は、周囲に位置するメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値との差分が所定の第2閾値よりも大きい場合に異常値であると判定し、第2閾値は、任意に設定可能なので、要求される高さデータの平滑度に応じた異常値の除去処理が可能になる。また、第1異常値除去手段によって明らかに異常と思われる高さデータを除去した後に第2異常値除去手段を実行することで、第2異常値除去手段の処理精度を高めることができる。
【0031】
また、代替値設定手段は、M個×N個のメッシュ範囲を設定し、メッシュ範囲を移動させながら、メッシュ範囲内に高さデータが除去されたメッシュが存在するかを判断し、高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、メッシュ範囲内の他のメッシュの高さデータの平均値を算出し、算出した平均値を高さデータが除去されたメッシュの代替値として設定するので、高さデータが除去されたメッシュに適切な代替値を設定できる。
【0032】
また、土量算出装置1は、代替値設定手段の実行後、再び第2異常値除去手段を実行し、ここで高さデータが除去されたメッシュが存在する場合は、再び代替値設定手段を実行するので、第2異常値除去手段及び代替値設定手段の繰り返しによって、要求される高さデータの平滑度を確実に達成することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 土量算出装置