IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ APB株式会社の特許一覧

特開2024-97536電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法
<>
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図1
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図2
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図3A
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図3B
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図3C
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図4
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図5
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図6
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図7
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図8
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図9
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図10
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図11
  • 特開-電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097536
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240711BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001044
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】白石 圭祐
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB11
5H050GA01
5H050GA10
5H050GA26
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】電極組成物の形を精度良く整えつつ基材フィルムに対して供給すること。
【解決手段】電池用電極製造装置は、搬送部と、供給部とを備える。搬送部は、帯状の基材フィルムを搬送する。供給部は、回転するムービングベルトと、前記ムービングベルトと所定の距離を置いて配置される固定ガイドと、前記ムービングベルトと前記固定ガイドとの間に形成される空間の下側の開口部分を開閉するシャッタとを備え、搬送される前記基材フィルムに対して、活物質を含む電極組成物を供給する。供給部は、前記電極組成物の供給と停止とを繰り返すことにより、前記基材フィルムに対して前記電極組成物を間欠的に供給し、前記ムービングベルトの下端により、供給した前記電極組成物の表面を均し、前記電極組成物の供給を停止する際、前記ムービングベルトの下端を鉛直方向の上側に移動させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材フィルムを搬送する搬送部と、
回転するムービングベルトと、前記ムービングベルトと所定の距離を置いて配置される固定ガイドと、前記ムービングベルトと前記固定ガイドとの間に形成される空間の下側の開口部分を開閉するシャッタとを備え、搬送される前記基材フィルムに対して、活物質を含む電極組成物を供給する供給部とを備え、
前記供給部は、
前記電極組成物の供給と停止とを繰り返すことにより、前記基材フィルムに対して前記電極組成物を間欠的に供給し、
前記ムービングベルトの下端により、供給した前記電極組成物の表面を均し、
前記電極組成物の供給を停止する際、前記ムービングベルトの下端を鉛直方向の上側に移動させる、電池用電極製造装置。
【請求項2】
前記供給部は、前記電極組成物の供給を停止する際、前記ムービングベルトの下端を、前記鉛直方向の上側、及び、前記基材フィルムの搬送方向の下流側の方向に移動させる、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項3】
前記供給部は、
前記ムービングベルトの回転を停止させるとともに前記開口部分を前記シャッタで閉止することにより前記電極組成物の供給を停止させ、
前記ムービングベルトの回転の停止と前記シャッタによる閉止とが完了した時点において、前記ムービングベルトの下端を、前記搬送方向の速度成分が前記基材フィルムの搬送速度と同じになるように移動させ、且つ、前記鉛直方向の上側への移動を開始させる、請求項2に記載の電池用電極製造装置。
【請求項4】
前記供給部は、
前記ムービングベルトの回転を停止させるとともに前記開口部分を前記シャッタで閉止することにより前記電極組成物の供給を停止させ、
前記ムービングベルトの回転の停止と前記シャッタによる閉止とが完了する前に、前記ムービングベルトの下端について前記鉛直方向の上側及び前記搬送方向の下流側の方向への移動を開始させ、前記ムービングベルトの回転の停止と前記シャッタによる閉止とが完了した時点において、前記ムービングベルトの下端が、前記基材フィルム上に供給された前記電極組成物の前記搬送方向の上流側の端部よりも、前記搬送方向の下流側に位置するように移動させる、請求項2に記載の電池用電極製造装置。
【請求項5】
前記供給部は、圧電アクチュエータを用いて前記ムービングベルトの下端を移動させる、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項6】
前記電極組成物は、電解液を含侵した粘着性を持つゲル状のポリマで活物質粒子を被覆したものである、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項7】
回転するムービングベルトと、前記ムービングベルトと所定の距離を置いて配置される固定ガイドと、前記ムービングベルトと前記固定ガイドとの間に形成される空間の下側の開口部分を開閉するシャッタとを用いて、搬送される前記基材フィルムに対して、活物質を含む電極組成物を供給する電池用電極製造方法であって、
前記電極組成物の供給と停止とを繰り返すことにより、前記基材フィルムに対して前記電極組成物を間欠的に供給し、
前記ムービングベルトの下端により、供給した前記電極組成物の表面を均し、
前記電極組成物の供給を停止する際、前記ムービングベルトの下端を鉛直方向の上側に移動させることを含む、電池用電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は高容量の二次電池であり、近年様々な用途で使用されている。リチウムイオン電池の電極は、活物質層、集電体層、セパレータ、及び、活物質層を封入する枠体等によって構成される(例えば、特許文献1参照)。リチウムイオン電池における活物質層は、例えば、帯状の基材フィルムに対して電極組成物を供給し、ロールプレス等によって圧縮することで形成することができる。
【0003】
基材フィルムに対して電極組成物を供給する手法として、特許文献2には、無端ベルトを用いて電極組成物の供給を行なうことについて記載されている。また、特許文献3は、集電体上にペースト状活物質を充填するベルト式ペースト充填機について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6633866号公報
【特許文献2】特開2020-161303号公報
【特許文献3】特開2002-231231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造効率の観点からは、帯状の基材フィルムを搬送しつつ、電極組成物や枠体の供給といった各種の工程を一連のラインとして行なうことが好ましい。また、製造効率の観点から、電極組成物の供給を行なう度に基材フィルムの搬送を停止したりせず、搬送される基材フィルムに対して電極組成物の供給を行なうことが好ましい。また、製造効率の観点から、電極組成物の供給時においては、電極組成物を所望の形状に整えた状態で基材フィルムに供給することが好ましい。
【0006】
しかしながら、搬送される基材フィルムに対して電極組成物を供給すると同時に電極組成物を所望の形状に整えることは容易ではない。特に、電極組成物が電解液を含んだ湿潤粉体である場合には挙動の制御が難しい。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電極組成物の形を精度良く整えつつ基材フィルムに対して供給することができる電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る電池用電極製造装置は、搬送部と、供給部とを備える。搬送部は、帯状の基材フィルムを搬送する。供給部は、回転するムービングベルトと、前記ムービングベルトと所定の距離を置いて配置される固定ガイドと、前記ムービングベルトと前記固定ガイドとの間に形成される空間の下側の開口部分を開閉するシャッタとを備え、搬送される前記基材フィルムに対して、活物質を含む電極組成物を供給する。供給部は、前記電極組成物の供給と停止とを繰り返すことにより、前記基材フィルムに対して前記電極組成物を間欠的に供給し、前記ムービングベルトの下端により、供給した前記電極組成物の表面を均し、前記電極組成物の供給を停止する際、前記ムービングベルトの下端を鉛直方向の上側に移動させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法によれば、電極組成物の形を精度良く整えつつ基材フィルムに対して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の電池用電極製造装置を用いて製造される電池の単セルの断面模式図である。
図2図2は、第1実施形態の電池用電極製造装置の概略図である。
図3A図3Aは、第1実施形態の電極組成物供給装置の一例を示す図である。
図3B図3Bは、第1実施形態の電極組成物供給装置の一例を示す図である。
図3C図3Cは、第1実施形態の電極組成物供給装置の一例を示す図である。
図4図4は、第1実施形態の電極組成物供給装置による制御の概要を示す図である。
図5図5は、第1実施形態の電極組成物供給装置による制御の概要を示す図である。
図6図6は、第1実施形態の電極組成物供給装置による制御の一例である。
図7図7は、第1実施形態の電極組成物供給装置の構成例である。
図8図8は、第1実施形態の電極組成物供給装置の構成例である。
図9図9は、第2実施形態の電極組成物供給装置による制御の一例である。
図10図10は、第2実施形態の電極組成物供給装置の構成例である。
図11図11は、第2実施形態の電極組成物供給装置の構成例である。
図12図12は、第2実施形態の電極組成物供給装置の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、第1実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、一部を省略して図示している場合がある。
【0012】
<組電池(二次電池)>
実施形態の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法は、例えば、リチウムイオン電池の製造に適用される。リチウムイオン電池は、複数のリチウムイオン単電池(単セル又は電池セルとも記載する)を組み合わせてモジュール化した組電池、或いは、このような組電池を複数組み合わせて電圧及び容量を調整した電池パックの形態で使用される。
【0013】
<単セル(電池セル)>
図1は、単セル10の断面模式図である。単セル10を複数組み合わせることで上記の組電池を作製することが可能である。例えば、単セル10は、2つの電極20(電池用電極)としての正極20a及び負極20bと、セパレータ30とを有する。
【0014】
セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間に配置される。組電池において、複数の単セル10は、正極20aと負極20bとを同方向に向けて積層される。
【0015】
セパレータ30には、電解質が保持される。これにより、セパレータ30は、電解質層として機能する。セパレータ30は、正極20a及び負極20bの電極活物質層22の間に配置され、これらが互いに接触することを抑制する。これにより、セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間の隔壁として機能する。
【0016】
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液またはゲルポリマ電解質等が挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0017】
正極20a及び負極20bは、それぞれ、集電体21と、電極活物質層22と、枠体35とを有する。電極活物質層22と集電体21とは、セパレータ30側からこの順に並ぶ。枠体35は、額縁状(環状)である。枠体35は、電極活物質層22の周囲を囲む。正極20aの枠体35と負極20bの枠体35とは、互いに溶着され一体化されている。以下の説明において、正極20a及び負極20bの電極活物質層22を互いに区別する場合、これらをそれぞれ正極活物質層22a、負極活物質層22bと呼ぶ。
【0018】
<正極集電体の具体例>
正極集電体層21aを構成する正極集電体としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015/005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層21aを構成する正極集電体は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0019】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0020】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、特に限定されない。また、導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択されれば特に限定されない。導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
【0021】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0022】
正極集電体層21aの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体層21aとして用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。正極集電体層21aは、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0023】
<正極活物質の具体例>
正極活物質層22aは、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層22aが非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22aに応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22aの破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22aは、正極活物質層22aを、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22aにする等の方法で得ることができる。なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0024】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物、金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0025】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0026】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015/005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0027】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。導電剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0028】
正極活物質層22aには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調節したもの、及び、特開平10-255805号公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱等を使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。したがって、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0029】
正極活物質層22aには、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの(例えば、リン酸エステル、ニトリル化合物等及びこれらの混合物等)等が使用できる。例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液を用いることができる。
【0030】
正極活物質層22aには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0031】
正極活物質層22aの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0032】
実施形態において、正極活物質層22aを形成するために供給される正極組成物は、正極活物質と非水電解液を含んでなる湿潤粉体であってもよい。また、湿潤粉体はペンデュラー状態又はファニキュラー状態であることがより好ましい。
【0033】
湿潤粉体における非水電解液の割合は、特に限定されないが、ペンデュラー状態又はファニキュラー状態とするためには、正極の場合には非水電解液の割合を湿潤粉体全体の0.5~15重量%とすることが望ましい。
【0034】
<負極集電体の具体例>
負極集電体層21bを構成する負極集電体としては、正極集電体で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層21bは、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。負極集電体層21bの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0035】
<負極活物質の具体例>
負極活物質層22bは、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層22bを得る方法等は、正極活物質層22aが非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22aを得る方法と同様である。
【0036】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物等を用いることができるが、特に限定されない。
【0037】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0038】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0039】
負極活物質層22bは、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層22aに含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0040】
負極活物質層22bには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極活物質層22aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0041】
負極活物質層22bには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、正極活物質層22aの任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0042】
負極活物質層22bの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0043】
実施形態において、負極活物質層22bを形成するために供給される負極組成物は、負極活物質と非水電解液を含んでなる湿潤粉体であってもよい。また、湿潤粉体はペンデュラー状態又はファニキュラー状態であることがより好ましい。
【0044】
湿潤粉体における非水電解液の割合は、特に限定されないが、ペンデュラー状態又はファニキュラー状態とするためには、負極の場合には非水電解液の割合を湿潤粉体全体の0.5~25重量%とすることが望ましい。
【0045】
<セパレータの具体例>
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液又はゲルポリマ電解質等が挙げられる。セパレータ30は、これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータ30の形態としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0046】
<枠体の具体例>
枠体35としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、例えば、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。枠体35を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。より具体的には、枠体35としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0047】
<電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法>
次に、第1実施形態の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法(以下、製造方法と略して呼ぶ)について説明する。例えば、電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法では、まず正極20a及び負極20bが製造される。正極20aの製造方法と負極20bの製造方法とは、主に電極活物質層22に含まれる電極活物質が異なる。ここでは、電極20の製造方法として、正極20a及び負極20bの製造方法をまとめて説明する。
【0048】
図2は、電池用電極製造装置1000の概略図である。例えば、電池用電極製造装置1000は、チャンバ100、搬送装置200、電極組成物供給装置300、枠体供給装置400及びプレス装置500を含む。搬送装置200は、搬送部の一例である。電極組成物供給装置300は、供給部の一例である。なお、以下では、帯状の基材フィルムが帯状の集電体21Bである場合を一例として説明する。
【0049】
チャンバ100は、内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。チャンバ100の内部は、図示しない減圧ポンプにより大気圧よりも減圧される。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約101kPa)である。
【0050】
例えば、チャンバ100の外部に集電体ロール21Rが配置され、集電体ロール21Rから引き出された帯状の集電体21Bが、スリットを通してチャンバ100の内部に搬送される。以下、帯状の集電体21Bを集電体21Bと記載する場合がある。なお、集電体21Bは、上述した集電体21が所定の形状に切り出される前のものである。集電体21Bは、搬送方向Daに沿って所定の速度で搬送される。以下では、集電体21Bが搬送される方向を下流側Da1、その反対方向を上流側Da2として説明する。なお、集電体ロール21Rが配置されるチャンバ100の外部空間は、常圧であってもよいし、チャンバ100と異なるチャンバによって減圧されていてもよい。
【0051】
なお、図2に示す通り、鉛直方向Dbにおける上側をDb1、鉛直方向Dbにおける下側をDb2とする。搬送方向Da及び鉛直方向Dbに対して直交する方向は、集電体21B、及び、集電体21Bに載置される電極組成物22cの幅方向に対応する。
【0052】
搬送装置200は、集電体21Bを、搬送方向Daの下流側Da1に搬送する。例えば、搬送装置200は、集電体21Bを下側から支持するベルトコンベアである。なお、後述の電極組成物供給装置300による電極組成物22cの供給が行なわれた後、搬送装置200は、電極組成物22cを載せた集電体21Bを搬送することとなる。また、後述の枠体供給装置400による枠体35の供給が行なわれた後、搬送装置200は、枠体35及び電極組成物22cを載せた集電体21Bを搬送することとなる。
【0053】
電極組成物供給装置300は、図2に示す通り、チャンバ100内で搬送される集電体21B上に電極組成物22cを供給する。電極組成物22cは、少なくとも活物質(正極活物質又は負極活物質)を含む物質である。後述するプレス装置500によって電極組成物22cを圧縮することにより、電極活物質層22(正極活物質層22a、負極活物質層22b)が形成される。
【0054】
ここで、電極組成物供給装置300の具体的な構成としては様々なものが考えられるが、電極組成物の形を精度良く整えた状態で供給する手法として、ムービングベルト、固定ガイド及びシャッタを用いる方法が考えられる。
【0055】
以下、電極組成物供給装置300の一例として、図3Aに示す電極組成物供給装置310について説明する。電極組成物供給装置310は、固定ガイド311と、ムービングベルト312と、シャッタ313とを備える。
【0056】
ムービングベルト312は、例えば、輪状部材312aと、輪状部材312aを駆動する駆動ローラ312b及び駆動ローラ312cとから構成される。なお、ムービングベルト312が備える駆動ローラの数については特に限定されるものではない。図3Aに示す通り、電極組成物供給装置310は、搬送方向Daの下流側Da1に搬送される集電体21Bに対して電極組成物22cを供給する。以下、固定ガイド321、ムービングベルト322及びシャッタ323から構成される部分を、フィーダーとも記載する。
【0057】
図3Aに示すように、固定ガイド311とムービングベルト312とは、所定の距離を置いて配置される。固定ガイド311とムービングベルト312との位置関係について特に限定されるものではないが、以下では、固定ガイド311がムービングベルト312より搬送方向Daの上流側Da2に配置される例について説明する。電極組成物22cは、固定ガイド311とムービングベルト312との間に形成される空間内に保持される。当該空間の下側の開口部分は、シャッタ313により開閉される。なお、図3Aは開口部分が開いた状態を示しており、この時、集電体21Bに対して電極組成物22cが供給される。
【0058】
より具体的には、電極組成物22cは、固定ガイド311とムービングベルト312との間に形成される空間内で、当該空間の下側の開口部分に向けて搬送される。ここで、固定ガイド311は、その形状により、電極組成物22cの搬送方向を調整することができる。具体的には、図3Aに示す固定ガイド311は、円弧状の曲面部分を備える。鉛直方向Dbに沿って搬送された電極組成物22cは、固定ガイド311の曲面部分において、搬送方向Daの下流側Da1に向かうように搬送方向が調整される。これにより、搬送方向Daの下流側Da1に向かって搬送される集電体21Bに対して、電極組成物22cをスムーズに供給することが可能となる。なお、図3Aでは、固定ガイド311が円弧状の曲面部分を備える例を示すが、このような曲面部分を設けないこととしてもよい。例えば、固定ガイド311のうちムービングベルト312に対向する面について、平面としてもよい。
【0059】
また、電極組成物22cの供給時、ムービングベルト312は回転する。具体的には、ムービングベルト312は、輪状部材312aのうち固定ガイド311に対向する面が鉛直方向Dbの下側Db2に向かうように、輪状部材312aを回転させる。即ち、図3Aにおいて、ムービングベルト312は、輪状部材312aを反時計回りに回転させる。これにより、固定ガイド311との間の空間に保持される電極組成物22cに対して下側Db2の力を加え、当該空間内で電極組成物を詰まらせることなく、当該空間の下側の開口部分まで電極組成物22cをスムーズに搬送することができる。
【0060】
例えば、ムービングベルト312は、輪状部材312aを、集電体21Bと同じ速度で回転させる。或いは、ムービングベルト312は、輪状部材312aを、集電体21Bより遅い速度で回転させてもよい。例えば、ムービングベルト312は、輪状部材312aを、集電体21Bの速度に対して数%程度遅い速度で回転させる。輪状部材312aを集電体21Bと同じ速度で回転させる場合、集電体21B上に供給される電極組成物22cの終端部(上流側Da2の端部)に隆起が発生するケースがあるところ、輪状部材312aを集電体21Bより遅い速度で回転させることにより、このような隆起の発生を予防することができる。
【0061】
電極組成物22cの供給時、シャッタ313は、図3Aに示したように、固定ガイド311とムービングベルト312との間に形成される空間の下側の開口部分を開いた状態とする。一方で、電極組成物22cの供給を停止する際、シャッタ313は、図3Bに示すように、当該開口部分を閉じた状態とする。これにより、シャッタ313は、不適切なタイミングで電極組成物22cが落下することを防止するとともに、集電体21B上に供給される電極組成物22cの終端部(上流側Da2の端部)をきれいにカットすることができる。
【0062】
更に、ムービングベルト312の下端と集電体21Bとの距離を調整することにより、ムービングベルト312に均しローラとしての機能を持たせることができる。即ち、ムービングベルト312は、集電体21B上に供給される電極組成物22cの厚さを、ムービングベルト312の下端と集電体21Bとの距離で一定となるよう揃えるとともに、表面を滑らかにすることができる。
【0063】
上述した通り、搬送される集電体21Bに対して、電極組成物22cを供給すると同時に所望の形状に整えることは容易ではない。特に、電極組成物22cが電解液を含んだ湿潤粉体である場合には挙動の制御が難しい。更に、電極組成物22cは、電解液を含侵した粘着性を持つゲル状のポリマで活物質粒子を被覆した湿潤粉体の場合がある。このような電極組成物22cは、粒子同士が相互に粘着するため、粉落ちを減少させることができる一方で、湿り気及び粘着性を有することにより、挙動の制御が特に難しくなる。このような湿潤紛体についても、電極組成物供給装置310によれば、搬送される集電体21Bに対して形を整えつつ供給することが可能となる。
【0064】
但し、電極組成物供給装置310においては、図3Cに示すように、集電体21B上に供給した電極組成物22cから上流側Da2の位置に、電極組成物22cがこぼれてしまう場合がある。以下、所定の位置と異なる位置にこぼれた電極組成物22cを、電極組成物22c’とも記載する。
【0065】
具体的には、電極組成物22cの供給を停止する際、電極組成物供給装置310は、シャッタ313を閉止するとともに、ムービングベルト312の回転を停止させる。これは、シャッタ313を閉止した状態でムービングベルト312を回転させ続けると、固定ガイド311とムービングベルト312との間に形成される空間内において電極組成物22cの行き場がなくなり、押し固まってしまうためである。但し、ムービングベルト312の回転を停止させるためには必要な制動時間があるため、電極組成物22cの供給を停止するに先立って、減速を開始する必要がある。この時、集電体21B上に供給されて搬送される電極組成物22cとムービングベルト312の下端との間に速度差及び摩擦が生じることにより、電極組成物22cの一部が崩れ、図3Cに示すように、上流側Da2の位置に電極組成物22c’がこぼれてしまう場合がある。
【0066】
ここで、第1実施形態の電極組成物供給装置300は、例えば図4に示すように、電極組成物22cの供給を停止する際にムービングベルトの下端を上側Db1に移動させることにより、ムービングベルトとの摩擦によって集電体21B上に供給した電極組成物22cが崩れてしまうことを回避することができる。即ち、電極組成物22cの供給を停止する際、搬送される電極組成物22cとムービングベルトの下端との間に速度差が生じるとしても、これらを引き離しておくことで摩擦を回避し、電極組成物22cが崩れないようにすることができる。
【0067】
或いは、第1実施形態の電極組成物供給装置300は、図5に示すように、電極組成物22cの供給を停止する際に、ムービングベルトの下端を上側Db1及び下流側Da1の方向に移動させることにより、集電体21B上に供給した電極組成物22cが崩れてしまうことを回避することができる。即ち、電極組成物22cの供給を停止する際、搬送される電極組成物22cとムービングベルトの下端との間に速度差が生じるとしても、これらを引き離しておくことで、電極組成物22cが崩れないようにすることができる。また、ムービングベルトの下端を下流側Da1の方向に移動させることにより、ムービングベルトの下端と搬送される電極組成物22cとの間の速度差を小さくし、より確実に電極組成物22cが崩れないようにすることができる。
【0068】
例えば、電極組成物供給装置300は、ムービングベルトの回転の停止とシャッタによる閉止とが完了した時点において、ムービングベルトの下端を、搬送方向Daの速度成分が集電体21Bの搬送速度と同じになるように移動させ、且つ、上側Db1への移動を開始させる。
【0069】
図6を用いてより具体的に説明する。まず、電極組成物供給装置300は、図6の(1)に示すように、ムービングベルトの駆動を停止する。即ち、電極組成物供給装置300は、ムービングベルトにおける輪状部材を回転させるための動力の供給を停止し、輪状部材の回転について減速を開始させる。同時に、電極組成物供給装置300は、シャッタの閉止を開始し、ムービングベルトの下端について下流側Da1への加速を開始させる。なお、図6では、ムービングベルトの駆動停止とシャッタの閉止開始とを同時に行なうものとして説明するが、これらは必ずしも同時でなくともよい。例えば、シャッタの閉止を先に開始し、シャッタが所定量閉まってから、ムービングベルトの駆動を停止してもよい。これにより、電極組成物22c’の飛散を低減することができる。その後の(2)は、ムービングベルトにおける輪状部材は減速を続け、シャッタは閉止途中で、ムービングベルトの下端は下流側Da1へ加速中の状態である。この時、ムービングベルトは、ブレーキをかけて減速するようにしてもよい。なお、(1)から(5)までの一連の処理において、集電体21Bは、下流側Da1へ等速で移動を続ける。
【0070】
図6の(3)は、ムービングベルトにおける輪状部材が回転を停止し、シャッタの閉止が完了した状態を示す。この時、ムービングベルトの下端は、下流側Da1へ、集電体21Bと等速で移動している。即ち、(3)において、ムービングベルトの下端と集電体21B上に供給された電極組成物22cとは接しており、且つ、ムービングベルトにおける輪状部材の回転は停止している。しかしながら、供給された電極組成物22cとムービングベルトの下端との間で速度差はなくなっているか、或いは十分に小さくなっており、電極組成物22cが崩れてしまうことは回避される。また、(4)において、ムービングベルトの下端は、上側Db1への加速を開始する。即ち、(4)において、ムービングベルトの下端と、集電体21B上に供給された電極組成物22cとは接していないため、電極組成物22cが崩れてしまうことは回避される。そして、(5)では、集電体21B上に供給された電極組成物22cが下流側Da1へ搬送されてムービングベルトの下方に位置しない状態となった後、ムービングベルトの下端は、上流側Da2及び下側Db2の方向へ移動して、(1)の位置に戻る。
【0071】
なお、図6は一例であり、制御の詳細については種々の変形が可能である。例えば、(3)と(4)とを分けて別のステップとして示したが、これらは統合してもよい。即ち、ムービングベルトの下端は、(3)と同時に、上側Db1への加速を開始してもよい。即ち、ムービングベルトの下端について、搬送方向Daへの移動と鉛直方向Dbへの移動とは順に行なわれてもよいし、これら2つの方向を合成した斜め方向への移動が行なわれることとしてもよい。ただし、図6に示したように、シャッタの閉止が完了する(3)の段階まで、ムービングベルトの下端が供給された電極組成物22cに接触した状態となっており、後の(4)の段階でこれらが離れるように制御することにより、供給された電極組成物22cにおけるより広い範囲を、ムービングベルトで均すことができる。また、(3)では、搬送方向Daにおいてムービングベルトの下端が集電体21Bと等速で移動するものとして説明したが、速度差が小さくなっていれば十分であり、厳密に等速になっていなくともよい。
【0072】
図6に示した制御を実現するための具体的な構成例として、図7の電極組成物供給装置320について説明する。電極組成物供給装置320は、固定ガイド321、ムービングベルト322、シャッタ323、ホルダ324及び駆動装置325を備える。固定ガイド321、ムービングベルト322及びシャッタ323については、電極組成物供給装置310の固定ガイド311、ムービングベルト312及びシャッタ313と同様の構成であるため、説明を省略する。即ち、固定ガイド321、ムービングベルト322及びシャッタ323は、フィーダーを構成する。
【0073】
ホルダ324は、固定ガイド321、ムービングベルト322及びシャッタ323(即ち、フィーダー)を保持する部材である。ホルダ324は、図7に示す支点により支えられている。支点は、地面等に対する位置が固定される。ホルダ324は、図7に示す通り、スライド溝を有する。ホルダ324は、スライド溝内に支点が嵌合した状態で、且つ、フィーダーと一体となった状態で、支点で保持される。
【0074】
ここで、ホルダ324は、スライド溝内の支点に対して、スライド溝に沿って移動することができる。この時、ホルダ324及びフィーダーは、一体となって、支点に対してスライド移動する。例えば、駆動装置325は、ホルダ324又はフィーダーに対して、搬送方向Daの下流側Da1への力を付与することにより、図7左図に示す位置から右図に示す位置まで、ホルダ324及びフィーダーを移動させる。駆動装置325は、例えば圧電アクチュエータである。
【0075】
図7では、左図の位置から右図の位置まで、スライド溝に沿ってフィーダー全体が移動することにより、ムービングベルト322の下端を、鉛直方向Dbの上側Db1、及び、搬送方向Daの下流側Da1の方向に移動させることができる。即ち、電極組成物供給装置320は、スライド溝に沿ってフィーダー全体を移動させることにより、ムービングベルト322の下端を移動させて、図5及び図6に示した制御を実現することができる。なお、電極組成物供給装置320においては、スライド溝の形状や方向を変化させることにより、ムービングベルト322の下端を移動させる方向を変化させることができる。例えば、スライド溝の形状を鉛直方向Dbに対して平行な直線状にすることで、図4に示した制御を実現することも可能である。
【0076】
図6に示した制御を実現するための他の構成例として、図8の電極組成物供給装置330について説明する。電極組成物供給装置330は、固定ガイド331、ムービングベルト332、シャッタ333及び駆動装置335を備える。固定ガイド331、ムービングベルト332及びシャッタ333については、電極組成物供給装置310の固定ガイド311、ムービングベルト312及びシャッタ313と同様の構成であるため、説明を省略する。即ち、固定ガイド331、ムービングベルト332及びシャッタ333は、フィーダーを構成する。
【0077】
図8において、フィーダーは、固定ガイド321上の一点で支点により支持されている。フィーダーは、支点を回転軸として、一体的に回転することができる。例えば、駆動装置335は、フィーダーのうち支点より下側Db2の位置に対して、搬送方向Daの下流側Da1への力を付与することにより、図8左図に示す状態から右図に示す状態まで、フィーダーを回転させる。駆動装置335は、例えば圧電アクチュエータである。
【0078】
図8では、左図の状態から右図の状態まで、フィーダー全体が回転することにより、ムービングベルト332の下端を、鉛直方向Dbの上側Db1、及び、搬送方向Daの下流側Da1の方向に移動させることができる。即ち、電極組成物供給装置330は、フィーダー全体を回転させることにより、ムービングベルト332の下端を移動させて、図5及び図6に示した制御を実現することができる。なお、電極組成物供給装置330においては、フィーダーに対する支点の位置を変化させることにより、ムービングベルト322の下端を移動させる方向を変化させることができる。
【0079】
図2に戻って説明を続ける。枠体供給装置400は、搬送される集電体21Bに対して枠体35を供給する。例えば、枠体供給装置400は、ロボットアームを有し、事前に製造された枠体35を、搬送される集電体21B上の所定の位置に配置する。或いは、枠体供給装置400は、集電体21Bの上で枠体35を製造してもよい。一例を挙げると、集電体21Bを基材とし、ディスペンサーやコーター等によって集電体21B上に所定の材料を所定の形状に吐出又は塗布することで、集電体21B上に枠体35を形成することができる。
【0080】
なお、第1実施形態の電極組成物供給装置300によれば、電極組成物22cの形を精度良く整えた状態で集電体21Bに供給するとともに、供給した電極組成物22cが崩れることも回避することができる。これにより、枠体35と集電体21Bとの間に余分な電極組成物22c’が混入することを防ぎ、ひいてはリチウムイオン電池の品質を向上させることができる。
【0081】
プレス装置500は、集電体21Bに供給された電極組成物22cを圧縮する。例えば、プレス装置500は、図2に示す通り、上部ローラ501及び下部ローラ502を有する。プレス装置500は、上部ローラ501及び下部ローラ502により、集電体21Bに供給された電極組成物22cを挟み込んで圧縮する。即ち、プレス装置500は、電極組成物22cに対するロールプレスを実行する。なお、図2では、枠体供給装置400による枠体35の供給後にプレス装置500による電極組成物22cの圧縮が行なわれるケースを示すが、プレス装置500による電極組成物22cの圧縮後、枠体供給装置400による枠体35の供給を行なうこととしてもよい。
【0082】
上述した通り、実施形態では、電極組成物供給装置300による電極組成物22cの供給や、プレス装置500による電極組成物22cの圧縮といった各工程を、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ100内で実行する。これにより、電極組成物22cの内部に空気が残留することが防止でき、電極活物質層22の均一性を向上することができる。
【0083】
プレス装置500による圧縮工程の後、図1に示したセパレータ30が更に供給され、単セル10が作製される。セパレータ30の供給は、搬送方向Daに沿って搬送される集電体21B及び電極組成物22cに対して連続的に行なわれてもよいし、集電体21Bや電極組成物22cを所定単位に分割した後、枚葉に行なってもよい。
【0084】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、ムービングベルトの下端を鉛直方向Dbの上側Db1及び搬送方向Daの下流側Da1の方向に移動させるケースにおいて、ムービングベルトの回転の停止とシャッタによる閉止とが完了した時点で、ムービングベルトの下端を、搬送方向Daの速度成分が集電体21Bの搬送速度と同じになるように移動させる例について説明した。
【0085】
第2実施形態では、同様のケースにおいて、ムービングベルトの回転の停止とシャッタによる閉止とが完了する前に、ムービングベルトの下端について鉛直方向Dbの上側Db1及び搬送方向Daの下流側Da1の方向への移動を開始させ、ムービングベルトの回転の停止とシャッタによる閉止とが完了した時点において、ムービングベルトの下端が、集電体21B上に供給された電極組成物22cの搬送方向Daの上流側Da2の端部よりも、下流側Da1に位置するように移動させる。
【0086】
図9を用いてより具体的に説明する。まず、電極組成物供給装置300は、図9の(1)に示すように、ムービングベルトの駆動を停止し、シャッタの閉止を開始する。なお、(1)から(3)までの一連の処理において、集電体21Bは、下流側Da1へ等速で移動を続ける。(2)において、電極組成物供給装置300は、ムービングベルトの下端について、上側Db1及び下流側Da1への移動を開始する。なお、シャッタの閉止が完了する直前に(2)の移動を開始すると、集電体21B上に供給された電極組成物22cとシャッタとが接触するおそれがあるため、余裕を持って(2)の移動を開始することが好ましい。
【0087】
図9の(3)は、ムービングベルトにおける輪状部材が回転を停止し、シャッタの閉止が完了した状態を示す。この時、ムービングベルトの下端は、上側Db1に移動して、集電体21B上に供給された電極組成物22cとは接しない状態となっている。これにより、供給した電極組成物22cが崩れてしまうことが回避される。
【0088】
また、図9の(3)においてムービングベルトの下端は、集電体21B上に供給された電極組成物22cの上流側Da2の端部よりも、下流側Da1に位置している。ここで、図3A図3Cに示した電極組成物供給装置310等において、ムービングベルトには電極組成物22cが付着している場合があり、余分な電極組成物22c’として集電体21B上に落下してしまうケースがある。これに対し、図9の制御によれば、ムービングベルトに付着した電極組成物22cが落下するとしても、集電体21B上に供給された電極組成物22cの上に落下することとなるため、リチウムイオン電池の品質には影響を与えないか、或いは与える影響を軽減することができる。
【0089】
なお、図9は一例であり、制御の詳細については種々の変形が可能である。例えば、(1)と(2)とを分けて別のステップとして示したが、これらは統合してもよい。即ち、ムービングベルトの下端は、ムービングベルトの駆動が停止し、シャッタの閉止が開始されるとともに、上側Db1及び下流側Da1への移動を開始してもよい。
【0090】
図9に示した制御を実現するための具体的な構成例として、図10の電極組成物供給装置340について説明する。電極組成物供給装置340は、固定ガイド341、ムービングベルト342、シャッタ343、ホルダ344、部材345a、部材345b及び駆動装置346を備える。固定ガイド341、ムービングベルト342及びシャッタ343については、電極組成物供給装置310の固定ガイド311、ムービングベルト312及びシャッタ313と同様の構成であるため、説明を省略する。即ち、固定ガイド341、ムービングベルト342及びシャッタ343は、フィーダーを構成する。
【0091】
ホルダ344は、フィーダーを保持する部材である。ホルダ344は、部材345a及び部材345bにより、2点で支持されている。部材345a及び部材345bの各々は、支点を回転軸として回転可能である。部材345a及び部材345bが支点を回転軸に回転することにより、ホルダ344及びフィーダーは、2点で支持されたまま平行移動することができる。例えば、駆動装置346は、ホルダ344又はフィーダーに対して、搬送方向Daの下流側Da1への力を付与することにより、図10左図に示す位置から右図に示す位置まで、ホルダ344及びフィーダーを移動させる。駆動装置346は、例えば圧電アクチュエータである。
【0092】
図10では、左図の位置から右図の位置まで、フィーダー全体が移動することにより、ムービングベルト342の下端を、鉛直方向Dbの上側Db1、及び、搬送方向Daの下流側Da1の方向に移動させることができる。即ち、電極組成物供給装置340は、フィーダー全体を移動させることにより、ムービングベルト342の下端を移動させて、図9に示した制御を実現することができる。なお、電極組成物供給装置340においては、フィーダーに対する部材345a及び部材345bの長さを変化させることにより、ムービングベルト342の下端を移動させる方向を変化させることができる。
【0093】
なお、図10に示した構成の変形例として、図11に示すように、紛体受け347を更に設けることとしてもよい。これにより、ムービングベルト342に付着した電極組成物22cが落下する場合に、集電体21Bや電極組成物22cの上に落下することを回避し、リチウムイオン電池の品質に影響を与えないようにすることができる。
【0094】
図9に示した制御を実現するための他の構成例として、図12の電極組成物供給装置350について説明する。電極組成物供給装置350は、固定ガイド351、ムービングベルト352、シャッタ353、ホルダ354及び駆動装置355を備える。固定ガイド351、ムービングベルト352及びシャッタ353については、電極組成物供給装置310の固定ガイド311、ムービングベルト312及びシャッタ313と同様の構成であるため、説明を省略する。即ち、固定ガイド351、ムービングベルト352及びシャッタ353は、フィーダーを構成する。
【0095】
ホルダ354は、フィーダーを保持する部材である。また、ホルダ354は、図12に示す一点の支点により支持されており、フィーダーと一体となった状態で、支点を回転軸として回転することができる。例えば、駆動装置355は、ホルダ354のうち支点より下側Db2の位置に対して、搬送方向Daの下流側Da1への力を付与することにより、
ホルダ354及びフィーダーを、図12の反時計回りに回転させる。駆動装置355は、例えば圧電アクチュエータである。
【0096】
図12では、フィーダー全体を反時計回りに回転することにより、ムービングベルト352の下端を、鉛直方向Dbの上側Db1、及び、搬送方向Daの下流側Da1の方向に移動させることができる。即ち、電極組成物供給装置350は、フィーダー全体を回転させることにより、ムービングベルト352の下端を移動させて、図9に示した制御を実現することができる。なお、電極組成物供給装置350においては、ホルダ354の長さを
変化させることにより、ムービングベルト352の下端を移動させる方向を変化させることができる。
【0097】
なお、図12には、ブレーキ356a及びブレーキ356bを図示している。当該ブレーキにより、ムービングベルト352における輪状部材の回転を停止させるための制動時間の長さを制御することができる。同様のブレーキを、上述した電極組成物供給装置310、320、330、340の各々が備えることとしても構わない。
【0098】
また、これまで、駆動装置325、駆動装置335、駆動装置346、駆動装置355といった駆動装置の例として圧電アクチュエータについて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、駆動装置としてカム機構を設け、モータ等で発生させた動力を適宜伝搬させるようにしても構わない。但し、図9に示した制御を実現するためには比較的短時間での加速が要求されるため、圧電アクチュエータ等の瞬発的な力を付与できる構成を採用することが好ましい。
【0099】
上述した実施形態では、電極組成物22cが供給される帯状の基材フィルムが帯状の集電体21Bであるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図2に示した帯状の集電体21Bに代えて、帯状のセパレータシートや、帯状の離形フィルムを基材フィルムとしてもよい。なお、帯状のセパレータシートは、後にトリミングすることで、図1に示したセパレータ30を形成することができる。
【0100】
例えば、セパレータシートを基材フィルムとする場合、セパレータシート上に電極組成物22cを供給し、電極組成物22cにおけるセパレータシートと反対側の面に集電体21Bを供給し、セパレータシート及び集電体21Bを所定の形状にトリミングし、更に、枠体35を供給することで、正極20a又は負極20bを作製することができる。
【0101】
また、離形フィルムを基材フィルムとする場合、離形フィルム上に電極組成物22cを供給し、電極組成物22cにおける離形フィルムと反対側の面に集電体21Bを供給し、離形フィルムを回収した後、集電体21Bと反対側の面にセパレータシートを供給し、集電体21B及びセパレータシートを所定の形状にトリミングし、更に、枠体35を供給することで、正極20a又は負極20bを作製することができる。なお、セパレータシートを供給して後にトリミングすることに代え、電極組成物22cに対してセパレータ30を供給することとしても構わない。
【0102】
或いは、離形フィルム上に電極組成物22cを供給し、電極組成物22cにおける離形フィルムと反対側の面にセパレータシートを供給し、離形フィルムを回収した後、セパレータシートと反対側の面に集電体21Bを供給し、セパレータシート及び集電体21Bを所定の形状にトリミングし、更に、枠体35を供給することで、正極20a又は負極20bを作製することができる。なお、集電体21Bを供給して後にトリミングすることに代え、所定の形状にトリミングされた集電体21を電極組成物22cに対して供給することとしても構わない。
【0103】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。更に、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0104】
10:単セル
20:電極
20a:正極
20b:負極
21:集電体
21a:正極集電体層
21b:負極集電体層
21B:帯状の集電体
21R:集電体ロール
22:電極活物質層
22a:正極活物質層
22b:負極活物質層
22c:電極組成物
30:セパレータ
35:枠体
100:チャンバ
200:搬送装置
300、310、320、330、340、350:電極組成物供給装置
311、321、331、341、351:固定ガイド
312、322、332、342、352:ムービングベルト
312a:輪状部材
312b、312c:駆動ローラ
313、323、333、343、353:シャッタ
324、344、354:ホルダ
325、335、346、355:駆動装置
345a、345b:部材
347:紛体受け
400:枠体供給装置
500:プレス装置
501:上部ローラ
502:下部ローラ
1000:電池用電極製造装置
Da:搬送方向
Da1:下流側
Da2:上流側
Db:鉛直方向
Db1:上側
Db2:下側
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12