IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大川 由夫の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097543
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ型コアレスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/22 20060101AFI20240711BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H02K9/22 A
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001066
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】523007535
【氏名又は名称】大川 由夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】大川 由夫
(72)【発明者】
【氏名】奥村 直史
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB20
5H605DD14
5H609BB19
5H609BB21
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609RR59
5H609RR61
5H609RR69
(57)【要約】      (修正有)
【課題】密閉構造の内部で生じた熱を外部に効率的に放出することができるアキシャルギャップ型コアレスモータを提供すること。
【解決手段】アキシャルギャップ型コアレスモータにおいて、ステータは、電線が平面視において略二等辺三角形状の環状に配置されて空芯コイルとして構成される複数の電線構造体73と、電線構造体73の外周部を上下から挟んで保持する巻線保持部と、電線構造体73の内面部と接して配置されるヒートパイプ構造体62と、を含み、巻線保持部は、非磁性であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で構成され、ヒートパイプ構造体62は、ヒートパイプ64A,64Bと、ヒートパイプを保持するヒートパイプ保持部63を含み、ヒートパイプ保持部63は、非磁性であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で構成され、巻線保持部はモータケースの内面と接した状態でモータケース内に配置されている。
【選択図】図35
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャルギャップ型コアレスモータであって、
ロータ及びステータと、
前記ロータ及び前記ステータを格納する、密閉構造に形成されたモータケースと、
を含み、
前記ステータは、電線が平面視において略二等辺三角形状の環状に配置されて空芯コイルとして構成される複数の電線構造体と、前記電線構造体の外周部を上下から挟んで保持する巻線保持部と、前記電線構造体の内面部と接して配置されるヒートパイプ構造体と、を含み、
前記巻線保持部は、非磁性であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で構成され、
前記ヒートパイプ構造体は、ヒートパイプと、前記ヒートパイプを保持するヒートパイプ保持部を含み、
前記ヒートパイプ保持部は、非磁性であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で構成され、
前記ヒートパイプは、その一部が前記ヒートパイプ保持部の内部に配置され、他の一部が前記巻線保持部と接して配置され、
前記巻線保持部は前記モータケースの内面と接した状態で前記モータケース内に配置されている、
アキシャルギャップ型コアレスモータ。
【請求項2】
前記ステータの平面視における中央部は空間であるステータ中央空間として構成されており、
前記ロータの回転軸の軸方向における位置において、前記ステータ中央空間に面する位置には、前記ロータの回転面と異なる方向の主面を有し、前記回転軸から乖離する方向に向かって延在する板状の羽根部材が形成されている、
請求項1に記載のアキシャルギャップ型コアレスモータ。
【請求項3】
前記回転軸が延在する方向における前記モータケースの寸法は、前記ロータ及び前記ステータを格納するために必要十分な寸法として規定されており、
前記モータケースは、相対的に上側に位置する上型モータケースと、相対的に下側に位置する下側モータケースで構成され、
前記上側モータケースの外縁部には、上側に向かって突出する複数の上側環状突出部が前記上側モータケースの前記回転軸が延在する方向の寸法を超えない範囲において同心円状に形成されており、
前記下側モータケースの外縁部には、下側に向かって突出する複数の下側環状突出部が前記下側モータケースの前記回転軸が延在する方向の寸法を超えない範囲において同心円状に形成されている、
請求項2に記載のアキシャルギャップ型コアレスモータ。
【請求項4】
前記ヒートパイプ保持部は、アルミニウム合金またはマグネシウム合金で形成されており、
前記巻線保持部は、前記ヒートパイプ保持部を形成するアルミニウム合金またはマグネシウム合金と同一以上の熱伝導率を有するアルミニウム合金またはマグネシウム合金で形成されており、
前記モータケースは、前記巻線保持部を構成する前記アルミニウム合金または前記マグネシウム合金と同一以上の熱伝導率を有するアルミニウム合金またはマグネシウム合金で形成されている、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のアキシャルギャップ型コアレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップ型コアレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータとステータとが回転軸に沿う方向において空隙を有するように対向して配置されたアキシャルギャップモータ(「アキシャルギャップ型モータ」とも呼ばれる)が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-116033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防塵及び/または防水のため、アキシャルギャップモータを密閉構造にすると、ステータを構成する電線から発生する熱がモータの外部に放出されにくいという問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題の解決を試みたものであり、密閉構造のアキシャルギャップモータの内部で生じた熱を効率的に外部に放出することができるアキシャルギャップ型コアレスモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、アキシャルギャップ型コアレスモータであって、ロータ及びステータと、前記ロータ及び前記ステータを格納する、密閉構造に形成されたモータケースと、を含み、前記ステータは、電線が平面視において略二等辺三角形状の環状に配置されて空芯コイルとして構成される複数の電線構造体と、前記電線構造体の外周部を上下から挟んで保持する巻線保持部と、前記電線構造体の内面部と接して配置されるヒートパイプ構造体と、を含み、前記巻線保持部は、非磁性であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で構成され、前記ヒートパイプ構造体は、ヒートパイプと、前記ヒートパイプを保持するヒートパイプ保持部を含み、前記ヒートパイプ保持部は、非磁性であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で構成され、前記ヒートパイプは、その一部が前記ヒートパイプ保持部の内部に配置され、他の一部が前記巻線保持部と接して配置され、前記巻線保持部は前記モータケースの内面と接した状態で前記モータケース内に配置されている、アキシャルギャップ型コアレスモータである。
【0007】
従来、アキシャルギャップモータに限らず、モータのステータコアは、磁気回路を形成するために鉄などの強磁性体で構成されている。あるいは、例えば、Fe-Si系合金粒子で形成される圧粉磁心で構成される場合もある。これに対して、第一の発明は、電線構造体の内面部と接して配置されるヒートパイプ構造体を含み、ヒートパイプは、その一部がヒートパイプ保持部の内部に接して配置され、他の一部が巻線保持部と接して配置される。ここで、巻線保持部は、非磁性であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で構成され、ヒートパイプ構造体を構成するヒートパイプ保持部も、非磁性であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で構成される。そして、巻線保持部は前記モータケースの内面と接した状態で前記モータケース内に配置されている。これにより、ステータの電線において発生した熱は、ヒートパイプ構造体、巻線保持部及びモータケースを介して効率よく外部に放出される。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記ステータの平面視における中央部は空間であるステータ中央空間として構成されており、前記ロータの回転軸の軸方向における位置において、前記ステータ中央空間に面する位置には、前記ロータの回転面と異なる方向の主面を有し、前記回転軸から乖離する方向に向かって延在する板状の羽根部材が形成されている、アキシャルギャップ型コアレスモータである。
【0009】
ステータの内側は平面視においてその外側よりも、モータケースまでの距離が大きいということもあり、モータの構造上、ステータ中央空間には電線で発生する熱が溜り易い。この点、第二の発明の構成によれば、回転軸が回転すると羽根部材によって気流が生じ、ステータ中央空間に溜まった熱を含む空気がモータケース全体に拡散され、モータケースを介して外部に排出される。
【0010】
第三の発明は、第二の発明の構成において、前記回転軸が延在する方向における前記モータケースの寸法は、前記ロータ及び前記ステータを格納するために必要十分な寸法として規定されており、前記モータケースは、相対的に上側に位置する上型モータケースと、相対的に下側に位置する下側モータケースで構成され、前記上側モータケースの外縁部には、上側に向かって突出する複数の上側環状突出部が前記上側モータケースの前記回転軸が延在する方向の寸法を超えない範囲において同心円状に形成されており、前記下側モータケースの外縁部には、下側に向かって突出する複数の下側環状突出部が前記下側モータケースの前記回転軸が延在する方向の寸法を超えない範囲において同心円状に形成されている、アキシャルギャップ型コアレスモータである。
【0011】
第三の発明の構成によれば、上側環状突出部と下側環状突出部の存在によって、上側モータケース及び下側モータケースの表面積が大きくなるから、一層効果的に、ステータの電線によって発生した熱を外部に放出することができる。しかも、上側環状突出部と下側環状突出部は、回転軸が延在する方向と直行する方向には突出せず、回転軸方向の寸法も所定の制限があるから、アキシャルギャップ型コアレスモータ全体の寸法には影響を与えない。
【0012】
第四の発明は、第一の発明乃至第三の発明のいずれかの構成において、前記ヒートパイプ保持部は、アルミニウム合金またはマグネシウム合金で形成されており、前記巻線保持部は、前記ヒートパイプ保持部を形成するアルミニウム合金またはマグネシウム合金と同一以上の熱伝導率を有するアルミニウム合金またはマグネシウム合金で形成されており、前記モータケースは、前記巻線保持部を構成する前記アルミニウム合金または前記マグネシウム合金と同一以上の熱伝導率を有するアルミニウム合金またはマグネシウム合金で形成されている、アキシャルギャップ型コアレスモータである。
【0013】
第四の発明の構成によれば、巻線保持部は、ヒートパイプ保持部を形成するアルミニウム合金またはマグネシウム合金と同一以上の熱伝導率を有するアルミニウム合金またはマグネシウム合金で形成されており、モータケースは、巻線保持部を構成するアルミニウム合金またはマグネシウム合金と同一以上の熱伝導率を有するアルミニウム合金またはマグネシウム合金で形成されている。このため、ステータの電線からヒートパイプ構造体を介して巻線保持部に伝導してきた熱が渋滞することなくモータケースに伝導する。これにより、一層効果的に、ステータの電線によって発生した熱を外部に放出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、密閉構造のアキシャルギャップ型コアレスモータの内部で生じた熱を外部に効率的に放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るアキシャルギャップ型コアレスモータを上方から視た概略斜視図である。
図2】アキシャルギャップ型コアレスモータを下方から視た概略斜視図である。
図3】アキシャルギャップ型コアレスモータを上方から視た概略平面図である。
図4】アキシャルギャップ型コアレスモータの概略側面図である。
図5】アキシャルギャップ型コアレスモータの分解側面図である。
図6】アキシャルギャップ型コアレスモータの上方からの分解斜視図である。
図7】アキシャルギャップ型コアレスモータの下方からの分解斜視図である。
図8】複数のヒートパイプ保持部がアキシャルギャップ型コアレスモータにおいて環状に配置される状態を示す概念図である。
図9】複数のヒートパイプがアキシャルギャップ型コアレスモータにおいて環状に配置される状態を示す概念図である。
図10】複数のヒートパイプ構造体がアキシャルギャップ型コアレスモータにおいて環状に配置される状態を示す概念図である。
図11】ヒートパイプ構造体の外観を示す図である。
図12】ヒートパイプ構造体の外観を示す図である。
図13】ヒートパイプ構造体の外観を示す図である。
図14】ヒートパイプ構造体の外観を示す図である。
図15】ヒートパイプ構造体の外観を示す図である。
図16】ヒートパイプ構造体の外観を示す図である。
図17】ヒートパイプ構造体の外観を示す図である。
図18】ヒートパイプ構造体の外観を示す図である。
図19】ヒートパイプ構造体の外観を示す図である。
図20】ヒートパイプ構造体の外観及び内部構造を示す図である。
図21】ヒートパイプ構造体の外観及び内部構造を示す図である。
図22】ヒートパイプ構造体の外観及び内部構造を示す図である。
図23】複数の電線構造体がアキシャルギャップ型コアレスモータにおいて環状に配置される状態等を示す概念図である。
図24】電線構造体の各部分を説明するための概念図である。
図25】回転軸を示す概略斜視図である。
図26】回転軸を示す概略平面図である。
図27】回転軸を示す概略底面図である。
図28】磁石保持部を示す概略斜視図である。
図29】磁石及び磁石保持部を示す概略斜視図である。
図30】下側モータケース、磁石及び磁石保持部を示す概略斜視図である。
図31】電線構造体が下側巻線保持部に配置され、下側モータケースに配置された状態を示す概略斜視図である。
図32】回転軸が、ステータ中央空間に羽根部材が位置する状態で下側モータケースに配置された状態を示す概略斜視図である。
図33】上側巻線保持部が、下側巻線保持部との間に電線構造体の外周部を挟んだ状態で下側モータケースに配置された状態を示す概略斜視図である。
図34】ヒートパイプ構造体のヒートパイプ保持部が電線構造体の内面部と接する状態であり、かつ、ヒートパイプが上側巻線保持部と接する状態で、下側モータケースに配置された状態を示す概略斜視図である。
図35】ヒートパイプ抑え部材が、ヒートパイプ及び上側巻線保持部と接する状態で、下側モータケースに配置された状態を示す概略斜視図である。
図36】上側の磁石及び磁石保持部が回転軸に固定された状態を示す概略斜視図である。
図37】ベアリングが回転軸に固定された状態を示す概略斜視図である。
図38】上側モータケースが下側モータケースに固定された状態を示す概略斜視図である。
図39】下側プロぺラ固定部材及び上側プロペラ固定部材が回転軸に固定される直前の状態を示す概略斜視図である。
図40】アキシャルギャップ型コアレスモータを回転軸に沿う方向に切断した断面であり、回転軸の中心を含む断面の概略断面図である。
図41図40の概略断面図の部分拡大図である。
図42】アキシャルギャップ型コアレスモータを回転軸に沿う方向に切断した断面であり、回転軸の中心を含む断面の概略断面図であり、図40とは異なる面の概略断面図である。
図43】アキシャルギャップ型コアレスモータを回転軸に沿う方向に切断した断面であり、回転軸の中心を含む断面の概略断面図であり、図40及び図41とは異なる面の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以下の説明においては、同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
【0017】
<アキシャルギャップ型コアレスモータ10の外観について>
図1図2図3及び図4に示すように、アキシャルギャップ型コアレスモータ10(以下、「モータ10」と呼ぶ)の外部は、主としてモータケース12で構成される。モータケース12は、上側モータケース20と下側モータケース30で構成される。本明細書において、上側モータケース20が位置する方向を「上側」と呼び、下側モータケース30が位置する方向を「下側」と呼ぶ。上側モータケース20と下側モータケース30の関係において、上側モータケース20は相対的に上側に位置し、下側モータケース30は相対的に下側に位置する。上側モータケース20と下側モータケース30が係合して、密閉構造のモータケース12が構成される。密閉構造により、防塵及び防水機能が実現する。
【0018】
モータ10の回転軸の長手方向に沿った方向(図1の矢印z方向。以下、「回転軸方向」と呼ぶ。)及び周方向(図1の矢印y方向。回転軸方向に直行する方向である。)の寸法(外部形状及び内部形状)は、後述のロータ50A及び50B(図5図6及び図7参照)及びステータ70(図5図6及び図7参照)を格納するために必要十分な寸法として規定されている。
【0019】
上側モータケース20及び下側モータケース30の素材は、熱伝導率が鉄よりも高い素材が選択される。具体的には、上側モータケース20及び下側モータケース30は、アルミニウム合金で形成されている。上側モータケース20及び下側モータケース30を形成するアルミニウム合金は、例えば、2000系であり、さらに具体的には、例えば、A2017(T4)である。なお、本実施形態とは異なり、上側モータケース20及び下側モータケース30をマグネシウム合金で構成してもよい。マグネシウム合金は、例えば、ASTMで、AZ31,AZ61,AZ91,ZK60であるが,これらに限定されない。
【0020】
上側モータケース20の外縁部20baには、上側に向かって突出する複数の上側環状突出部22(図40乃至図43参照)が上側モータケース20の回転軸方向の寸法を超えない範囲において形成されている。複数の上側環状突出部22は、同心円状に形成されている。
【0021】
下側モータケース30の外縁部30baには、下側に向かって突出する複数の下側環状突出部32(図40乃至図43参照)が下側モータケース30の回転軸方向の寸法を超えない範囲において形成されている。複数の下側環状突出部32は、同心円状に形成されている。
【0022】
下側環状突出部32は、外縁部30baを貫通する貫通孔30bs及びその周辺部分において、途切れている。貫通孔30bsには、外部の電源からステータ70(図5乃至図7参照)に電力を供給するリード線(図示せず)が配置される。リード線を配置した状態の貫通孔30bsは、例えば、シリコンパテを使用して隙間が閉鎖され、モータケース12の密閉構造が維持されるようになっている。
【0023】
<モータ10を構成する部品について>
図5図6及び図7を参照して、モータ10を構成する部品について説明する。モータ10は、主要な構成要素として、ステータ70及びロータ50A及び50Bを備える。ステータ70は環状に形成されており、ロータ50A及び50Bは円盤状に構成されている。ロータ50A及び50Bは、円柱状に形成された回転軸60に固定され、回転軸方向においてステータ70の両側、すなわち、ステータ70の上下に配置されている。ロータ50A及び50B、及び、ステータ70は、モータケース12に格納される。回転軸60は、上側のベアリング48A及び下側のベアリング48Bを介してモータケース12固定されており、モータケース12に対して回転可能になっている。上側モータケース20の内周面20dにはネジが形成されており、下側モータケース30の外周面30cにもネジが形成されており、内周面20dのネジと外周面30cのネジが螺合することによって、上側モータケース20と下側モータケース30が一体化して、モータケース12を構成する。
【0024】
ステータ70は、巻線保持部71、複数の電線構造体73、ヒートパイプ構造体62及びヒートパイプ抑え部材66を含んで構成される。モータ10において、ヒートパイプ構造体62は電線構造体73の内面部に接して配置される。本実施形態において、ヒートパイプ構造体62と電線構造体73は、それぞれ、24個存在する。
【0025】
巻線保持部71は、相対的に上側に位置する上側巻線保持部72と、相対的に下側に位置する下側巻線保持部74で構成される。電線構造体73は、電線が環状に配置されて空芯コイルとして構成される。上側巻線保持部72と下側巻線保持部74は、上下から電線構造体73の外周部を挟んだ状態で、ステータ固定用ネジ77で互いに接続され、固定される。ステータ固定用ネジ77は、非磁性体の材料で形成され、具体的には、例えば、チタンで形成される。
【0026】
ヒートパイプ構造体62は、ヒートパイプ64(図11乃至図22参照)と、ヒートパイプ64を保持するヒートパイプ保持部63(図11乃至図22参照)を含む。ヒートパイプ保持部63は、非磁性であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で構成される。ヒートパイプ保持部63は、本実施形態において、例えば、マグネシウム合金で構成される。マグネシウム合金は、例えば、ASTMで、AZ31,AZ61,AZ91,ZK60であるが,これらに限定されない。なお、本実施形態とは異なり、ヒートパイプ保持部63をアルミニウム合金で形成してもよい。なお、本実施形態とは異なり、ヒートパイプ保持体63を形成する素材は、樹脂に熱伝導率が鉄よりも高い金属粉を含ませた樹脂と金属の混合材料でもよい。
【0027】
ヒートパイプ64は、その一部(以下、「埋没部64a」(図9参照)と呼ぶ。)がヒートパイプ保持部63の内部に接して配置され、他の一部(以下、「露出部64b」(図9参照)と呼ぶ。)は、ヒートパイプ保持部63から露出して配置される。露出部64bの一部は上側巻線保持部72と接して配置される。また、露出部64bの一部は、ヒートパイプ抑え部材66(以下、「抑え部材66」と呼ぶ。)と接して固定される。すなわち、露出部64bの一部は、上側巻線保持部72と抑え部材66の双方に接した状態で、双方の間に挟まれて固定される。上側巻線保持部72と抑え部材66は、露出部64bを挟んだ状態において、複数のネジ68で互いに固定される。
【0028】
上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66は、非磁性体であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属で形成されている。具体的には、上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66は、アルミニウム合金で形成されている。上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66を構成するアルミニウム合金は、熱伝導率が大きい材料が望ましく、例えば、2000系であり、さらに具体的には、例えば、A2017(T4)である。上側巻線保持部72及び下側巻線保持部74は、絶縁性を確保する処理として、アルマイトコーティングがなされている。
【0029】
ここで、上側モータケース20及び下側モータケース30、上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66、及び、ヒートパイプ保持部63の素材の関係について説明する。これらのいずれの素材も非磁性体であり、かつ、鉄よりも熱伝導率が高い金属である。これらの素材は熱伝導率と重量(比重)に着目して決定され、特に熱伝導率に着目して決定される。本実施形態において、アルミニウム合金は、マグネシウム合金よりも比重が大きいが、熱伝導率が大きいものを採用する。電線構造体73で生じた熱は、ヒートパイプ64を除外して考えると、まず、ヒートパイプ保持部63へ伝導し、その後、上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66へ伝導し、その後、上側モータケース20及び下側モータケース30へ伝導する。熱の伝導を円滑に進行させるためには、伝導の後段の部材の素材は、伝導の前段の素材よりも熱伝導率が大きいのが好ましい。この点、本実施形態においては、上側モータケース20及び下側モータケース30、及び、上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66は、アルミニウム合金で形成され、ヒートパイプ保持部63はマグネシウム合金で形成されるから、電線構造体73で生じた熱を円滑にモータ10の外部に放出することができる。
【0030】
なお、本実施形態とは異なり、上側モータケース20及び下側モータケース30を形成するアルミニウム合金と、上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66を構成するアルミニウム合金とを異なる種類のアルミニウム合金としてもよい。具体的には、上側モータケース20、下側モータケース30を形成するアルミニウム合金として、上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66を構成するアルミニウム合金を形成するアルミニウム合金の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有するものを採用してもよい。例えば、上側モータケース20及び下側モータケース30を形成するアルミニウム合金として2017(O)を採用し、上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66を構成するアルミニウム合金として2017(T4)を採用してもよい。あるいは、本実施形態とは異なり、上側モータケース20及び下側モータケース30をマグネシウム合金で形成し、上側巻線保持部72、下側巻線保持部74及び抑え部材66をそれよりも熱伝導率が小さいマグネシウム合金で形成するようにしてもよい。
【0031】
巻線保持部71は、モータケース12の内面と接した状態でモータケース12内に配置される。具体的には、下側巻線保持部74は下側モータケース30の内面に接した状態で配置され、上側巻線保持部72は抑え部材66を介して上側モータケース20の内面に接した状態で配置される。
【0032】
ロータ50Aは、磁石51A及び上側磁石保持部52Aで構成される。磁石51Aは上側磁石保持部52Aに固定される。ロータ50Bは、磁石51B及び下側磁石保持部52Bで構成される。磁石51Bは下側磁石保持部52Bに固定される。
【0033】
磁石保持部52A及び52Bは、磁性を有する材料で、略円盤状に形成され、中央部に貫通孔を有する。磁石保持部52A及び52Bを構成する材料は、例えば、フェライト系の材料であり、さらに具体的には、例えば、SUS430である。
【0034】
磁石51A及び51Bは、希土類磁石であり、略円盤状に形成されており、中央部に貫通孔を有する。希土類磁石は、例えば、ネオジウム・鉄・ボロンで構成される磁性材料を含むボンド磁石である。磁石51A及び51Bは、図5乃至図7の矢印z1方向から視た平面視において、等間隔の角度において、複数の部分に分割されている。本実施形態において、磁石51A及び51Bは24の部分に分割されており、各部分の間には、溝が形成されている。磁石51A及び51Bの分割された各部分は、回転軸方向の一方の側に現れる磁極が周方向において交互に異なるように着磁されている。すなわち、磁石51A及び51Bは、回転軸方向の一方の側において、N極の部分、S極の部分、N極の部分というように、交互に異なる磁極の部分で構成される。また、磁石51A及び51Bにおいて分割された部分は、回転軸方向の一方の側に現れる磁極がN極である場合、その反対側である回転軸方向の他方の側に現れる磁極がS極となるように着磁されている。
【0035】
上側磁石保持部52Aはベアリング48Aの内周側に圧入されて固定され、下側磁石保持部52Bはベアリング48Bの内周側に圧入されて固定される。ベアリング48Aは上側モータケース20の内側に固定され、ベアリング48Bは下側モータケース30の内側に固定される。また、磁石保持部52A及び52Bは、回転軸60に固定される。回転軸60は、軸固定用チップ80及び軸固定ネジ82によって、回転可能な状態で下側モータケース30に固定される。
【0036】
上側モータケース20と下側モータケース30とは、下側モータケース30の外周面30cに形成されたネジと、上側モータケース20の内周面20dに形成されたネジ(図示せず)が係合することによって、互いに固定される。これにより、上側モータケース20と下側モータケース30とが密着し、密閉構造を形成する。
【0037】
上側モータケース20の上方において、下側プロペラ固定用部材40がネジ41(図6及び図7参照)によって回転軸60に固定される。下側プロペラ固定用部材40と上側プロペラ固定用部材42との間にプロペラ(図示せず)を挟んだ状態で、ネジ44によって、下側プロペラ固定用部材40と上側プロペラ固定用部材42が固定され、プロペラも固定される。
【0038】
<ヒートパイプ構造体62について>
図8乃至図10を参照して、ヒートパイプ構造体62について説明する。図8は、複数のヒートパイプ保持部63がモータ10において環状に配置される状態を示す概念図である。ヒートパイプ保持部63は、略三角柱状に形成されている。より正確には、平面視において角を丸めた二等辺三角形の三角柱状の形状である。ヒートパイプ保持部63は、電線構造体73と同数存在し、本実施形態において、24個存在する。
【0039】
各ヒートパイプ保持部63は、保持部本体63Aと、保持部本体63Aに形成された複数の円柱状の孔部で形成される。本実施形態においては、保持部本体63Aに、2本の円柱状の孔部63B1及び63B2が形成されている。孔部63B1及び63B2が延在する方向と直行する方向の断面は円形である。
【0040】
孔部63B1及び63B2は、一方が他方よりも上方に位置し、一方が保持部本体63Aの一方の側面に偏った位置に形成され、他方が保持部本体63Aの他方の側面に偏った位置に形成されている。本実施形態において、孔部63B1は孔部63B2よりも上方に位置する。孔部63B1は、保持部本体63Aの一方の側面63aに偏った位置に形成されている。孔部63B2は、他方の側面63bに偏った位置に形成されている。孔部63B1は、開口である入口63B1aが外周面63c(図16も参照)に形成され、出口63B1bが側面63a(図11も参照)に形成されている。入口63B1aの開口面は、完全な円形ではなく、側面63a側において円形の一部が欠けた形状に構成されている。本実施形態においては、孔部63B1が延在する方向は、側面63aと平行ではなく、入口63B1aから出口63B1bに向かうほど、側面63aに近づく方向である。なお、本実施形態とは異なり、孔部63B1が延在する方向は、側面63aと平行に構成してもよい。
【0041】
同様に、孔部63B2は、開口である入口63B2aが外周面63c(図16も参照)に形成され、出口63B2bが側面63b(図11も参照)に形成されている。入口63B2aの開口面は、完全な円形ではなく、側面63b側において円形の一部が欠けた形状に構成されている。本実施形態においては、孔部63B2が延在する方向は、側面63bと平行ではなく、入口63B2aから出口63B2bに向かうほど、側面63bに近づく方向である。なお、本実施形態とは異なり、孔部63B2が延在する方向は、側面63bと平行に構成してもよい。
【0042】
図9は、複数のヒートパイプ64がモータ10において環状に配置される状態を示す概念図である。ヒートパイプ64は、ヒートパイプ64Aとヒートパイプ64Bが組みになって構成される。ヒートパイプ64は、ヒートパイプ保持部63と同数存在し、本実施形態において、24組存在する。ヒートパイプ64A及び64Bが延在する方向と直行する方向の断面は円形である。ヒートパイプ64A及び64Bの断面の直径は、孔部63B1及び63B2の直径と実質的に同一である。
【0043】
上述のヒートパイプ64は、埋没部64aと露出部64bに区別される。ヒートパイプ64Aとヒートパイプ64Bは、保持部本体63Aにおいて、一方の埋没部64aが他方の埋没部64aよりも上方に位置し、一方の埋没部64aが保持部本体63Aの一方の側面に偏って位置し、他方の埋没部64aが保持部本体63Aの他方の側面に偏って位置する。本実施形態においては、保持部本体63Aに配置されたときに、ヒートパイプ64Aの埋没部64aはヒートパイプ64Bの埋没部64aよりも上方に位置する。そして、ヒートパイプ64A埋没部64aは側面63aに偏って位置し、ヒートパイプ64B埋没部64aは側面63bに偏って位置する。
【0044】
ヒートパイプ64A及び64Bは、管状の放熱用部材であり、一般的に「ヒートパイプ」と呼ばれる。ヒートパイプは、金属で形成された細長い管状の部品であり、開口部は存在しない。銅やアルミなど熱伝導率が高い金属などで作った管の中に、作動液と呼ぶ少量の液体(純水など)が密封されたもので、管の内側には毛細管構造(ウィック)が作られている。管の中は、作動液とその蒸気以外が含まれないよう真空状態になっており、作動液の蒸発・凝縮が起きやすくなっている。ヒートパイプの一端を熱源に密着させて熱を得ると、その部分にある作動液が蒸発して気体となり、熱を潜熱として吸収して、パイプの低温部に移動する。低温部に移動した作動液は凝縮し、熱を放出して液体に戻る。この仕組みによって高温部の熱を低温部に運ぶ(伝える)働きをする。液体となった作動液は、ウィックの毛細管現象によって元の熱源部分に戻っていく。作動液の気化と液化、移動は非常に高速で、かつ連続的に起こる。このように、管の中に封入された液体(作動液)が気体になるときに吸収、または気体が液体になるときに放出する熱エネルギー(潜熱)を利用して、ある場所の熱を離れた別の場所に高速で伝えることができる。
【0045】
図10は、複数のヒートパイプ構造体62がモータ10に配置される状態を示す概念図である。図10に示すように、ヒートパイプ64がヒートパイプ保持部63に保持されてヒートパイプ構造体62が構成される。そして、複数のヒートパイプ構造体62は、モータ10において、環状に配置される。複数のヒートパイプ構造体62が環状に配置され、中央部は空間62sとして構成される。複数のヒートパイプ構造体62の配置において、空間62sの側を「内周側」と呼び、空間62sと反対の側を「外周側」と呼ぶ。ヒートパイプ64の露出部64bの外周側の部分は上側巻線保持部72と抑え部材66と接して配置される(図34及び図35参照)。
【0046】
ヒートパイプ64Aはヒートパイプ保持部63の孔部63B1(図8参照)に配置され、ヒートパイプ64Bは孔部63B2に配置される。上述のように、ヒートパイプ64A及び64Bの断面の直径は、孔部63B1及び63B2の直径と実質的に同一であるから、埋没部64aはヒートパイプ保持部63の内部に接して配置される。
【0047】
このとき、ヒートパイプ64Aの埋没部64aの先端部は出口63B1bからわずかに露出する。また、ヒートパイプ64Bの埋没部64aの先端部は出口63B2bからわずかに露出する。
【0048】
また、上述のように、入口63B1a及び63B2aの断面形状は、完全な円形ではなく、それぞれ、側面63a及び63b側の位置において円形の一部が欠けた形状である。このため、ヒートパイプ64A及び64Bの埋没部64aは、外周面63c(図8参照)近傍において、わずかに側方に露出する。具体的には、ヒートパイプ64Aの埋没部64aは、外周面63c(図8参照)近傍において、側面63aにわずかに露出する。また、ヒートパイプ64Bの埋没部64aは、外周面63c(図8参照)近傍において、側面63bにわずかに露出する。
【0049】
図11乃至図19は、ヒートパイプ構造体62の外観を示す図である。図11は、ヒートパイプ構造体62を内周側の上方から視た概略斜視図である。図12は、ヒートパイプ構造体62を上方から視た概略平面図である。図13は、ヒートパイプ構造体62を外周側の上方から視た概略斜視図である。図14は、ヒートパイプ構造体62を内周側から視た概略正面図である。図15は、ヒートパイプ構造体62を、ヒートパイプ64Bが紙面手前になるように配置して視た概略側面図である。図16は、ヒートパイプ構造体62を外周側から視た概略背面図である。図17は、ヒートパイプ構造体62を内周側の下方から視た概略斜視図である。図18は、ヒートパイプ構造体62を下方から視た概略底面図である。図19は、ヒートパイプ構造体62を外周側の下方から視た概略斜視図である。
【0050】
図20は、ヒートパイプ構造体62の外観及び内部構造を外周側の上方から視た概略斜視図である。図21は、ヒートパイプ構造体62の外観及び内部構造を、ヒートパイプ64Bが紙面手前になるように配置して視た概略側面図である。図22は、ヒートパイプ構造体62の外観及び内部構造を外周側の下方から視た概略斜視図である。
【0051】
図20乃至図22に示すように、ヒートパイプ64Aは、ヒートパイプ保持部63の内部の相対的に上方の位置において、一方の側面63a(図11参照)に偏って配置されている。ヒートパイプ64Bは、ヒートパイプ保持部63の内部の相対的に下方の位置において、他方の側面63bに偏って配置されている。このように、ヒートパイプ保持部63の内部において、ヒートパイプ64Aとヒートパイプ64Bが乖離した位置に配置されることによって、ヒートパイプ64が電線構造体73で発生した熱を効率的に吸収することが可能になる。
【0052】
<電線構造体73について>
図23及び図24を参照して、電線構造体73について説明する。図23は複数の電線構造体73がモータ10において環状に配置される状態等を示す概念図である。電線が環状に配置されて、個々の電線構造体73が形成される。なお、本明細書に添付の図において、個々の電線の記載は省略している。電線構造体73を構成する電線は、例えば、銅線であり、具体的には、エナメル線である。電線構造体73は、磁石51A及び51Bが分割されている数と同数存在し、本実施形態においては、24個存在する。24個の電線構造体73で形成される環状の中央部は空間となっている。これは、ステータ70の空間でもある。この空間をステータ中央空間70sと呼ぶ。
【0053】
図23及び図24に示すように、個々の電線構造体73は、ステータ中央空間70sに面する先端部73a、側壁部73b及び外周部73cで構成される。側壁部73bの外面を側壁外面部73baとし、側壁部73bの内面部を側壁内面部73bbとする。側壁内面部73bbは内面部の一例である。
【0054】
図23及び図24に示すように、電線構造体73の外径は、先端部73aを頂点とする、略三角柱状である。具体的には、平面視において角を丸めた二等辺三角形の三角柱状の形状であり、中央部は開口空間73sとなっている。平面視における二等辺三角形の底辺は、円弧となっている。
【0055】
隣り合う電線体構造体73の側壁外面部73baは、互いに接した状態で、複数の電線構造体73が配置される。
【0056】
電線構造体73は、例えば、電線構造体73の内形と実質的に同一の外形を有する成型用部材(図示せず)を準備し、その成型用部材に対して、電線を複数回数巻き付けた後、引き抜くことによって形成する。成型用部材に電線を複数回数巻き付けて、引き抜く前、あるいは、引き抜いた後に、ベークライト等の樹脂によって、電線を固定するようにしてもよい。電線構造体73は空芯コイルである。すべての電線構造体73が結線されて巻線を構成する。電線構造体73の側壁内面部73bbが、各ヒートパイプ保持部63の側面63a及び63bに接して配置される。言い換えると、各ヒートパイプ保持部63は、その側面63a及び63bが電線構造体73の側壁内面部73bbに接した状態で、電線構造体73に配置される。
【0057】
<回転軸60について>
図25乃至図27を参照して、回転軸60について説明する。図25は、回転軸60を示す斜視図である。図26は、回転軸60を示す平面図である。図27は、回転軸60を示す底面図である。
【0058】
図25乃至図27に示すように、回転軸60は、軸部本体60aと複数の羽根部材60b1等が一体に構成される。本実施形態において、羽根部材は、羽根部材60b1乃至60b5の5か所、形成されている。軸部本体60aは、上部60a1、中央部60a2と下部60a3を有する。中央部60a2は、上部60a1と下部60a3の間に位置する部分である。
【0059】
図25に示すように、上部60a1には、切欠き部60c1が形成され、下側プロペラ固定用部材40との関係で位置決めする。中央部60a2には、切欠き部60c2が形成され、上側磁石保持部52Aとの関係で位置決めする。中央部60a2と下部60a3に亘って、切欠き部60c3が形成され、下側磁石保持部52Bとの関係で位置決めする。切欠き部60c1、60c2及び60c3は、周方向において、図25に示されている位置の反対側にも形成されている。
【0060】
羽根部材60b1乃至60b5は、モータ10に配置された状態において、ロータ50A及び50Bの回転面と異なる方向の主面を有し、回転軸60から乖離する方向に向かって延在する板状の部材である。本実施形態において、羽根部材60b1乃至60b5の主面は、ロータ50A及び50Bの回転面と直行する方向である。また、羽根部材60b1乃至60b5は、モータ10において、上述のステータ中央空間70sに対応する位置に配置されるようになっている。
【0061】
<下側磁石保持部52B及び磁石51Bについて>
図28は、下側磁石保持部52Bを示す図である。なお、上側磁石保持部52A及び磁石51Aは、下側磁石保持部52B及び磁石51Bと同一構造であるから、説明を省略する。図28及び図5乃至図7に示すように、下側磁石保持部52Bは、円盤状の磁石保持本体部52bと、円筒部52a(図7参照)が一体に形成されて構成される。上側磁石保持部52Bの中央部は、貫通孔52sが形成されており、貫通孔52sを画する内壁が、回転軸60と係合する。図28に示すように、磁石保持本体部52bの内側には、複数の線状突出部52dが放射状に形成されており、磁石51Bの分割された部分間の溝と係合し、図29に示すように、磁石51Bを固定することができるように構成されている。また、突起52cが、回転軸60の切欠き60c3(図25参照)と係合し、互いに位置決めされる。
【0062】
<モータ10の組み立て工程の概略的な概念>
図30乃至図39を参照して、モータ10の組み立て工程の概略的な概念について説明する。図30は、下側モータケース30、磁石51B及び磁石保持部52Bを示す概略斜視図である。下側モータケース30は、全体として扁平な円柱状に形成されている。下側モータケース30の外周面30cには、ネジが形成されている。下側モータケース30の内周面30dの下端部から、中央が開口した環状面30aが中央方向に延在して形成されている。下側モータケース30に、磁石保持部52Bに保持された磁石51Bを配置した状態において、環状面30aの開口から磁石51Bが露出するように構成されている。
【0063】
図31は、電線構造体73が下側巻線保持部74に配置され、下側モータケース30に配置された状態を示す概略斜視図である。
【0064】
図32は、回転軸60が、ステータ70の中央空間70sに羽根部材60b1等が位置する状態で下側モータケース30に配置された状態を示す概略斜視図である。
【0065】
図33は、上側巻線保持部72が、下側巻線保持部74との間に電線構造体73の外周部73c(図24参照)を挟んだ状態で下側モータケース30に配置された状態を示す概略斜視図である。詳細には、環状に配置された複数の電線構造体73の外周部73cが、上側巻線保持部72と下側巻線保持部74の間に挟まれた状態で固定される。上側巻線保持部72の上面72aには、中央側から外周側へ向かって放射状に延在する溝である下側溝部72a1及び72a2が形成されている。下側溝部72a1及び72a2が延在する方向における断面は半円形である。上側巻線保持部72において、下側溝部72a1及び72a2の位置は、図33に示すように、各電線構造体73の外周部73cに対応する位置に配置可能なように形成されている。
【0066】
図34は、ヒートパイプ構造体62のヒートパイプ保持部63が電線構造体73の側壁内面部73bb(図24参照)と接する状態であり、かつ、ヒートパイプ64の一部が上側巻線保持部72の上面72aと接する状態で、下側モータケース30に配置された状態を示す概略斜視図である。図33及び図34に示すように、ヒートパイプ64Aの露出部64bは下側溝部72a1に配置され、ヒートパイプ64Bの露出部64bは下側溝部72a2に配置される。
【0067】
図35は、抑え部材66が、ヒートパイプ64及び上側巻線保持部72と接する状態で、下側モータケース30に配置された状態を示す概略斜視図である。抑え部材66の下面66bには、中央側から外周側へ向かって放射状に延在する溝である上側溝部66cが形成されている(図7参照)。上側溝部66cが延在する方向における断面は半円形である。下面66bの上側溝部66cを除いた部分は、上側巻線保持部72の上面72aの下側溝部72a1及び72a2を除いた部分と接した状態で固定される。
【0068】
上側溝部66cは、上側巻線保持部72の下側溝部72a1及び72a2と対応する位置に形成されている。下側溝部72a1及び72a2と上側溝部66cとで、円筒状の空間が形成され、その円筒状の空間の内壁に接した状態で、ヒートパイプ64が固定される。下側溝部72a1及び72a2と上側溝部66cとで形成される円筒状の空間が延在する方向における断面の直径は、ヒートパイプ64の直径と実質的に同一である。
【0069】
図36は、磁石保持部52Aが磁石51Aを保持した状態で、回転軸60に固定された状態を示す概略斜視図である。
【0070】
図37は、ベアリング48Aが回転軸60に固定された状態を示す概略斜視図である。
【0071】
図38は、上側モータケース20が下側モータケース30に固定された状態を示す概略斜視図である。上述のように、上側モータケース20の内周面20dにはネジが形成されており、下側モータケース30の外周面30cにもネジが形成されており、内周面20dのネジと外周面30cのネジが螺合することによって、上側モータケース20と下側モータケース30が一体化する。
【0072】
図39は、下側プロぺラ固定部材40及び上側プロペラ固定部材42が回転軸60に固定される直前の状態を示す概略斜視図である。
【0073】
<放熱等について>
図35図40乃至図43を参照して、電線構造体73において発生した熱の放熱等について説明する。図40は、モータ10を回転軸60に沿う方向に切断した断面であり、回転軸60の中心を含む断面の概略断面図である。図41図40の概略断面図の部分拡大図である。図42は、モータ10を回転軸60に沿う方向に切断した断面であり、回転軸60の中心を含む断面の概略断面図であり、図40とは異なる面の概略断面図である。図43は、モータ10を回転軸60に沿う方向に切断した断面であり、回転軸60の中心を含む断面の概略断面図であり、図40及び図41とは異なる面の概略断面図である。
【0074】
図40乃至図43に示すように、電線構造体73と磁石51A及び磁石51Bとの間には、空隙(ギャップ)以外には磁束の障害となるものは存在しない。これにより、電線構造体73が空芯コイルであっても、モータ10の機能に十分な磁束を作用させることができる。電線構造体73の詳細な構造は、例えば、米国特許US7045924B2(Asignee:Okayama Giken Co.,Ltd.,)に記載の技術を適用することができる。
【0075】
図40乃至図43に示すように、電線構造体73の外周部73c(図24参照)は、上側巻線保持部72と下側巻線保持部74との間に挟まれているから、外周部73cで生じた熱は上側巻線保持部72と下側巻線保持部74に伝導する。
【0076】
図41に示すように、下側巻線保持部74は、その外面74aが、下側モータケース30の環状面30aに接した状態で、下側モータケース30に配置される。このため、電線構造体73から下側巻線保持部74に伝導した熱は、下側モータケース30に伝導し、外部に放出される。そして、下側モータケース30の外縁部30baには、下側に向かって突出する複数の下側環状突出部32が形成されているから、熱は効率的に外部に放出される。
【0077】
電線構造体73の側壁内面部73bb(図24参照)は、ヒートパイプ保持部63と接しているから、ヒートパイプ保持部63に伝導する。そして、その熱は、ヒートパイプ保持部63に配置されているヒートパイプ64によって、ヒートパイプ保持部63の外側へ送られ、上側巻線保持部72及び抑え部材66に伝導する。さらに、ヒートパイプ64は、その一方の先端部が出口63B1b及び63B2b(図8参照)からわずかに露出して、直接的に電線構造体73の側壁内面部73bbと接する。さらに、ヒートパイプ64は、入口63B1a及び63B2a(図8参照)からわずかに側方に露出して、直接的に電線構造体73の側壁内面部73bbと接する。このため、ヒートパイプ64は、出口63B1b及び63B2b、及び、入口63B1a及び63B2aにおいては、電線構造体73と直接接し、電線構造体73で生じた熱を露出部64b側へ送ることができる。
【0078】
上側モータケース20と下側モータケース30が固定されたとき、抑え部材66は、その上面66aが、上側モータケース20の環状面20aに接した状態となる。このため、電線構造体73から上側巻線保持部72に伝導した熱は、抑え部材66を介して上側モータケース20に伝導し、外部に放出される。そして、上側モータケース20の外縁部20baには、上側に向かって突出する複数の上側環状突出部22が形成されているから、熱は効率的に外部に放出される。さらに、ヒートパイプ64によって、電線構造体73において生じた熱は、速やかに上側巻線保持部72及び抑え部材66に送られ、上側モータケース20から放出される。
【0079】
そして、回転軸60が回転することによって、羽根部材60b1等によって外周部方向への気流が発生し、さらに、電線構造体73の先端部73aに当たり、先端部73aから生じた熱をモータ10全体に拡散させる。これにより、熱は、ステータ中央空間70sに滞留することなく、上側モータケース20及び下側モータケース30を介して効率的に外部へ放出される。
【0080】
モータ10の上述の構成により、ステータ70の電線において発生した熱は、上側巻線保持部72、ヒートパイプ構造体62、下側巻線保持部74及びモータケース12を介して、効率的に外部に放出される。さらに、回転軸60の羽根部材60b1等によって、ステータ70の電線において発生した熱がモータ10の全体に拡散され、モータケース12を介して、効率的に外部に放出される。
【0081】
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
10 アキシャルギャップ型コアレスモータ
12 モータケース
20 上側モータケース
30 下側モータケース
60 回転軸
60b1,60b2、60b3、60b4、60b5 羽根部材
62 ヒートパイプ構造体
64 ヒートパイプ
66 ヒートパイプ抑え部材
70 ステータ
72 上側巻線保持部
73 電線構造体
74 下側巻線保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43