IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイロットインキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コンクリート養生シート 図1
  • 特開-コンクリート養生シート 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097553
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】コンクリート養生シート
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
E04G21/02 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001081
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三田 真之
(72)【発明者】
【氏名】海田 菜緒
(72)【発明者】
【氏名】恒川 智朗
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172EA01
2E172EA13
2E172HA03
(57)【要約】
【課題】 養生時の温度変化によるコンクリートの物理的性質の悪化を簡便且つ正確に判別できるコンクリート養生シートを提供する。
【解決手段】 支持体2表面に、色濃度-温度曲線に関してヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると発色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、色濃度-温度曲線に関して25℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色し、完全消色温度tが30~40℃である温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層3を設けてなるコンクリート養生シート1。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養生シート内部に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含有させるか、または、養生シート表面に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含む層を設けたコンクリート養生シートであって、前記可逆熱変色性材料は(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は、前記可逆熱変色性組成物を熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散した可逆熱変色性樹脂粒子であり、色濃度-温度曲線に関してヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると発色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、色濃度-温度曲線に関して25℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色し、完全消色温度tが30~40℃であるコンクリート養生シート。
【請求項2】
前記完全消色温度tが32~38℃である請求項1記載のコンクリート養生シート。
【請求項3】
養生シート内部に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含有させるか、または、養生シート表面に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含む層を設けたコンクリート養生シートであって、前記可逆熱変色性材料は(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は、前記可逆熱変色性組成物を熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散した可逆熱変色性樹脂粒子であり、色濃度-温度曲線に関してヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると発色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、色濃度-温度曲線に関して25℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色し、完全発色温度tが-5~5℃であるコンクリート養生シート。
【請求項4】
前記完全発色温度tが-5~3℃である請求項3記載のコンクリート養生シート。
【請求項5】
養生シート内部に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含有させるか、または、養生シート表面に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含む層を設けたコンクリート養生シートであって、前記可逆熱変色性材料は(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は、前記可逆熱変色性組成物を熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散した可逆熱変色性樹脂粒子であり、色濃度-温度曲線に関してヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると発色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、完全消色温度tが30~40℃であり、完全発色温度tが-5℃~5℃であるコンクリート養生シート。
【請求項6】
前記完全消色温度tが32~38℃であり、完全発色温度tが-5~3℃である請求項5記載のコンクリート養生シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート養生シートに関する。更に詳細には、養生中のコンクリートの温度管理を目視で行なうコンクリート用養生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを打設後、養生時にコンクリートの温度が高温になったり、冷え過ぎると、硬化コンクリートの物理的性質が悪化することがある。そのため、多点測定用の温度測定器を設置して養生時の温度管理をしている。しかしながら、このような温度測定器は高価で費用が嵩むと共に、多点を測定する際は操作が煩雑になることがあった。
そこで、可逆性の示温材料を用いて養生時の温度管理を行うことのできる養生シートが開示されているものの(例えば、特許文献1、2参照)、高温になって変色した後に温度が下がって元の色に戻ったり、冷え過ぎにより変色した後に温度が上がって元の色に戻ることで硬化コンクリートの物理的性質の悪化を判別できないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭47-41146号公報
【特許文献2】特開2013-159981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この種のコンクリート養生シートの従来の問題点を解決しようとするものであって、即ち、養生時に高温になったこと、或いは、冷え過ぎたことを視認でき、コンクリートの物理的性質の悪化を簡易且つ正確に判別することのできるコンクリート養生シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、養生シート内部に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含有させるか、または、養生シート表面に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含む層を設けたコンクリート養生シートであって、前記可逆熱変色性材料は(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は、前記可逆熱変色性組成物を熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散した可逆熱変色性樹脂粒子であり、色濃度-温度曲線に関してヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると発色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、色濃度-温度曲線に関して25℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色し、完全消色温度tが30~40℃であるコンクリート養生シート、或いは、養生シート内部に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含有させるか、または、養生シート表面に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含む層を設けたコンクリート養生シートであって、前記可逆熱変色性材料は(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は、前記可逆熱変色性組成物を熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散した可逆熱変色性樹脂粒子であり、色濃度-温度曲線に関してヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると発色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、色濃度-温度曲線に関して25℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色し、完全発色温度tが-5~5℃であるコンクリート養生シート、或いは、養生シート内部に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含有させるか、または、養生シート表面に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含む層を設けたコンクリート養生シートであって、前記可逆熱変色性材料は(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は、前記可逆熱変色性組成物を熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散した可逆熱変色性樹脂粒子であり、色濃度-温度曲線に関してヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると発色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に発色状態となるヒステリシス特性を示し、完全消色温度tが30~40℃であり、完全発色温度tが-5℃~5℃であるコンクリート養生シートを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、養生時の温度変化によるコンクリートの物理的性質の悪化を簡便且つ正確に判別することのできるコンクリート養生シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
図2】本発明のコンクリート養生シートの一実施例を示す縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記コンクリート養生シートは、支持体である養生シート内部に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含有させるか、または、養生シート表面に温度変化により変色する可逆熱変色性材料を含む層を設けてなる。
支持体の材質は特に限定されるものではなく、合成紙、織布、不織布、編布等の布帛、天然又は合成皮革、プラスチック、ガラス、陶磁器、金属、木材、石材等が用いられる。また、形状としては平面状のものが好ましいが、凹凸状の形態であってもよい。
【0009】
前記可逆変色性材料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む加熱により消色する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に可逆熱変色性組成物を
分散した可逆熱変色性樹脂粒状体が用いられる。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料としては、特開昭60-264285号公報、特開平7-179777号公報、特開平8-39936号公報、国際公開第2014/200053号等に記載されているヒステリシス幅(ΔH)が25℃以上であり、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t~tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を適用できる(図1参照)。
【0010】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記tとt間の温度域であり、着色状態と消色状態のいずれかの状態を呈することができ、色濃度の差の大きい領域であるtとtの間の温度域が実質二相保持温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0011】
前記コンクリート養生シートのうち、色濃度-温度曲線に関して25℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色し、完全消色温度tが30~40℃であるコンクリート養生シートについて説明する。
コンクリートを打設後、養生時にコンクリートの温度が高温、具体的には、35℃以上になると凝結時間が短くなるため、強度が低下する虞がある。
そこで、完全消色温度tが30~40℃、好ましくは32~38℃の可逆熱変色性材料を用いることにより、養生時に35℃を越えた際は色変化により目視で判別できると共に、色濃度-温度曲線に関して25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を有することで温度が降下しても変色前の状態に戻り難く、35℃を越えた温度履歴がわかるようになる。
【0012】
前記コンクリート養生シートのうち、色濃度-温度曲線に関して25℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を示して変色し、完全発色温度tが-5~5℃であるコンクリート養生シートについて説明する。
コンクリートを打設後、養生時にコンクリートの温度が低温、具体的には、0℃以下になると水和反応に必要な水が凍結を生じるため、強度が低下する虞がある。
そこで、完全発色温度tが-5~5℃、好ましくは-5~3℃の可逆熱変色性材料を用いることにより、養生時に0℃以下になった際は色変化により目視で判別できると共に、色濃度-温度曲線に関して25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上のヒステリシス幅(ΔH)を有することで温度が上昇しても変色前の状態に戻り難く、0℃以下になった温度履歴がわかるようになる。
【0013】
前記コンクリート養生シートのうち、完全消色温度tが30~40℃であり、完全発色温度tが-5℃~5℃であるコンクリート養生シートについて説明する。
コンクリートを打設後、養生時にコンクリートの温度が高温、具体的には、35℃以上になると凝結時間が短くなるため、強度が低下する虞があり、養生時にコンクリートの温度が低温、具体的には、0℃以下になると水和反応に必要な水が凍結を生じるため、強度が低下する虞がある。
そこで、完全消色温度tが30~40℃、好ましくは32~38℃、完全発色温度tが-5~5℃、好ましくは-5~3℃の可逆熱変色性材料を用いることにより、養生時に高温になったこと、或いは、冷え過ぎたことを視認することができる。
前記コンクリート養生シートは、建設現場で使用してもよいし、プレキャストコンクリートを製造する工場内でプレキャストコンクリート用養生シートとして使用してもよい。
【0014】
以下に前記(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について具体的に化合物を例示する。
(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられる。
フタリド化合物としては、例えば、ジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、及びそれらの誘導体等が挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、及びそれらの誘導体が好ましい。
また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、及びそれらの誘導体が挙げられる。
以下に(イ)成分に用いることができる化合物を例示する。
3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、
3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-n-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-アセトアミド-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-プロピル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6-ビス(N-フェニル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3,6-ジメトキシフルオラン、
3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、
2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-クロロアミノ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-ジベンジルアミノ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-N-メチルアニリノ-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
6-ジエチルアミノ-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、
2-ジエチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ブチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ペンチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジメチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-n-ペンチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
3′,6′-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
2,6-ビス(2′-エトキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2′,4′-ジエトキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2-(4′-ジメチルアミノフェニル)-4-メトキシキナゾリン、
4,4′-エチレンジオキシ-ビス〔2-(4-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する化合物のほか、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、塩素原子等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0015】
前記(ロ)成分、即ち電子受容性化合物は、(イ)成分から電子を受け取り、(イ)成分の顕色剤として機能する化合物である。
前記電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群及びその誘導体、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して(イ)成分を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物があり、これらの中でも活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
活性プロトンを有する化合物及びその誘導体としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物及びその金属塩、カルボン酸及びその金属塩、好ましくは、芳香族カルボン酸、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、酸性リン酸エステル及びその金属塩、並びにアゾ-ル系化合物及びその誘導体、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体が挙げられ、これらの中でも、有効な熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
前記フェノール性水酸基を有する化合物はモノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、更にビス型、トリス型フェノール等およびフェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、少なくともベンゼン環を2以上有するものが好ましい。また、これら化合物は置換基を有していてもよく、置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等が挙げられる。
前記活性プロトンを有する化合物の金属塩が含む金属としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛およびモリブデン等が挙げられる。
【0016】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0017】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類を挙げることができる。
【0018】
また、色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を得るための(ハ)成分としては、5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0019】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシル等を挙げることができる。
【0020】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0021】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0022】
酸アミド類としては、ヘキサン酸アミド、ヘプタン酸アミド、オクタン酸アミド、ノナン酸アミド、デカン酸アミド、ウンデカン酸アミド、ラウリル酸アミド、トリデカン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ドコサン酸アミド等を挙げることができる。
【0023】
また、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物を用いることもできる。
【化1】
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0~2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は-(CHOCOR又は-(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0~2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1~3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】
式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10~24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12~22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0024】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1~3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1-ジフェニルメチル、ノナン酸1,1-ジフェニルメチル、デカン酸1,1-ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1-ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1-ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1-ジフェニルメチルを例示できる。
【0025】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(2,4-ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-〔4-(2-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0026】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】
(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0027】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
【化6】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、こはく酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステルを例示できる。
【0028】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(7)で示される化合物を用いることもできる。
【化7】
(式中、Rは炭素数4乃至22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4乃至22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。)
前記化合物としては、4-フェニル安息香酸デシル、4-フェニル安息香酸ラウリル、4-フェニル安息香酸ミリスチル、4-フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4-ビフェニル酢酸オクチル、4-ビフェニル酢酸ノニル、4-ビフェニル酢酸デシル、4-ビフェニル酢酸ラウリル、4-ビフェニル酢酸ミリスチル、4-ビフェニル酢酸トリデシル、4-ビフェニル酢酸ペンタデシル、4-ビフェニル酢酸セチル、4-ビフェニル酢酸シクロペンチル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4-ビフェニル酢酸ヘキシル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチルを例示できる。
【0029】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(8)で示される化合物を用いることもできる。
【化8】
(式中、Rは炭素数3乃至18のアルキル基、炭素数3乃至18の脂肪族アシル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至3のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、メチル基のいずれかを示し、Zは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
前記化合物としては、4-ブトキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ペンチルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-テトラデシルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェノキシエチルとドデカン酸とのエステル、バニリン酸フェノキシエチルのドデシルエーテルを例示できる。
【0030】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(9)で示される化合物を用いることもできる。
【化9】
(式中、Rは炭素数4乃至22のアルキル基、炭素数4乃至22のアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。)
前記化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸オクチルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ヘプチルのp-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ドデシルのo-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシルメチルの安息香酸エステルを例示できる。
【0031】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(10)で示される化合物を用いることもできる。
【化10】
(式中、Rは炭素数3乃至18のアルキル基、炭素数6乃至11のシクロアルキルアルキル基、炭素数5乃至7のシクロアルキル基、炭素数3乃至18のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至3のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
前記化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸ノニルのフェノキシエチルエーテル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルのフェノキシエチルエーテル、p-ヒドロキシ安息香酸ウンデシルのフェノキシエチルエーテル、バニリン酸ドデシルのフェノキシエチルエーテルを例示できる。
【0032】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(11)で示される化合物を用いることもできる。
【化11】
(式中、Rは炭素数3乃至8のシクロアルキル基又は炭素数4乃至9のシクロアルキルアルキル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステルを例示できる。
【0033】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(12)で示される化合物を用いることもできる。
【化12】
(式中、Rは炭素数3乃至17のアルキル基、炭素数3乃至8のシクロアルキル基、炭素数5乃至8のシクロアルキルアルキル基を示し、Xは水素原子、炭素数1乃至5のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールジエチレングリコールエーテルとラウリン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールトリエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとオクタン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとノナン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとデカン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0034】
前記可逆熱変色性組成物の各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1~100、好ましくは0.1~50、より好ましくは0.5~20、(ハ)成分1~800、好ましくは5~200、より好ましくは10~100の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
ここで、前記可逆熱変色性組成物中に非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈することもできる。
前記一般染料、顔料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料、無機顔料、有機顔料、着色樹脂顔料、二酸化チタン等が挙げられる。
【0035】
なお、各成分は各々2種以上の化合物の混合であってもよく、更には機能に支障のない範囲で光安定剤を添加することができる。
前記光安定剤としては、(イ)成分の光反応による励起状態によって生ずる光劣化を防止する紫外線吸収剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、カロチン類、色素類、アミン類、フェノール類、ニッケル錯体類、スルフィド類等の一重項酸素消光剤、オキシドジスムスターゼとコバルト、及びニッケルの錯体等のスーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等、酸化反応を抑制する化合物が挙げられ、0.3~24質量%、好ましくは0.8~16質量%の割合で配合される。なかでも、前記紫外線吸収剤と、酸化防止剤及び/又は一重項酸素消光剤を併用した系にあっては、耐光性の向上に特に効果的である。
【0036】
前記可逆熱変色性組成物は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂中に分散したり、或いは、マイクロカプセルに内包することによって可逆熱変色性材料として用いられる。
なお、マイクロカプセル化は、公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。
前記カプセルの材質としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。
更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料は、内包物/壁膜=7/1~1/1(質量比)の範囲であることが好ましく、壁膜の比率が前記範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができ、より好適には、内包物/壁膜=6/1~1/1(質量比)である。
【0037】
前記可逆熱変色性材料は、粒子径0.1~30μm、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは0.5~10μmの範囲が実用性を満たす。
なお、粒子径および平均粒子径の測定は、マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「マックビュー」を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の粒子径および平均粒子径として測定した値である。また、全ての粒子或いは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合には、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、製品名:Multisizer 4e)を用いてコールター法により等体積球相当の粒子の粒子径および平均粒子径として測定することも可能である。
さらに、コールター法による測定装置を用いて計測した数値を基にしてキャリブレーションしたレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-960V2、株式会社堀場製作所製)を用いて、体積基準の粒子径および平均粒子径(メジアン径)を測定しても良い。
【0038】
前記可逆熱変色性材料は、バインダー樹脂を含む水性又は油性ビヒクル中に分散させてインキ、塗料などの着色液の色材として適用され、汎用の印刷乃至塗布手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、インクジェット印刷等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の手段により支持体に可逆熱変色層を形成することができる。
なお、前記着色液中には、前述の非熱変色性の染料、顔料等の着色剤、光安定剤を配合することもできる。
前記可逆熱変色層は、ベタ印刷されたものに限らず、文字、数字、記号、図柄等の可逆熱変色像であってもよい。
前記可逆熱変色性材料は、バインダー樹脂中に0.5~40質量%、好ましくは1~30質量%含有させることができる。0.5質量%未満の配合量では鮮明な熱変色効果を視覚させ難いし、40質量%を越えると過剰であり、消色状態にあって残色がみられることがある。
また、可逆熱変色層は接着層を介して支持体に貼着することもできる。
【0039】
更に、前記可逆熱変色層上には透明性を損なわない範疇で透明性金属光沢性、虹彩性、ホログラム性等の光学的性状を示す光輝層や保護層を設けたり、光安定剤層を設けることもできる。
前記光安定剤層は紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤から選ばれる光安定剤を分散状態に固着した層である。
なお、老化防止剤、帯電防止剤、極性付与剤、揺変性付与剤、消泡剤等を必要に応じて各層に添加して機能を向上させることもできる。
【0040】
前記支持体が布帛、皮革、木材等の浸透性を有する材質の場合、可逆熱変色性材料を含む着色液中に支持体を含浸させ、支持体中に可逆熱変色性材料を内在させて実用に供したり、前記支持体がプラスチック、ガラス、陶磁器、金属の場合、可逆熱変色性材料を支持体中に分散させて成形して実用に供したり、可逆熱変色性材料を用いて形成された繊維を用いた布帛を作製して実用に供することができる。
【実施例0041】
以下に本発明のコンクリート養生シートの実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド2.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4.0部、1,1-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン4.0部、(ハ)成分としてデカン酸-1,1-ジフェニルメチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が3μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが-45℃、発色開始温度tが-30℃、消色開始温度tが20℃、完全消色温度tが30℃、ヒステリシス幅ΔHが62.5℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0042】
コンクリート養生シートの作製(図2参照)
白色の不織布からなる支持体2表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層3を設けてコンクリート養生シート1を得た。
前記コンクリート養生シートは、-45℃以下に冷却して可逆熱変色層を青色にした後、夏場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、30℃未満の環境下では完全に消色することなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、30℃以上の環境下では可逆熱変色層は無色になり、支持体による白色が視認されて、再び30℃未満になっても白色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0043】
実施例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド2.0部、(ロ)成分として1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン6.0部、(ハ)成分としてヘキサデカン酸2-フェニルエチルオキシフェニルメチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が3μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが-14℃、発色開始温度tが-2℃、消色開始温度tが21℃、完全消色温度tが33℃、ヒステリシス幅ΔHが35℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0044】
コンクリート養生シートの作製
白色の不織布からなる支持体中に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料32部、ウレタン系エマルジョン60部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを含浸させた後、乾燥させてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、-14℃以下に冷却して支持体中の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を青色にした後、夏場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、33℃未満の環境下では完全に消色することなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、33℃以上の環境下では可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は無色になり、支持体による白色が視認されて、再び33℃未満になっても白色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0045】
実施例3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド2.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4.0部、1,1-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン4.0部、(ハ)成分としてテトラデカン酸-1,1-ジフェニルメチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が3μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが-35℃、発色開始温度tが-20℃、消色開始温度tが28℃、完全消色温度tが36℃、ヒステリシス幅ΔHが59.5℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0046】
コンクリート養生シートの作製
白色のポリエステルトリコット生地からなる支持体表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料25部、アクリル樹脂エマルジョン50部、消泡剤1部、水系インキ用増粘剤10部、エチレンイミン系架橋剤4部、水10部を均一に分散させて得たスクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、-35℃以下に冷却して可逆熱変色層を青色にした後、夏場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、36℃未満の環境下では完全に消色することなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、36℃以上の環境下では可逆熱変色層は無色になり、支持体による白色が視認されて、再び36℃未満になっても白色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0047】
実施例4
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2-(ジブチルアミノ)-8-(ジペンチルアミノ)-4-メチル-スピロ〔5H-〔1〕ベンゾピラノ〔2,3-g〕ピリミジン-5,1’(3’,H)-イソベンゾフラン〕-3-オン2.0部、(ロ)成分として1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン6.0部、(ハ)成分としてミリスチン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が3μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが-6℃、発色開始温度tが8℃、消色開始温度tが25℃、完全消色温度tが39℃、ヒステリシス幅ΔHが31℃であり、温度変化によりピンク色から無色に色変化した。
【0048】
コンクリート養生シートの作製
厚さ12μmの透明ポリエチレンテレフタレート製のプラスチックフィルムからなる支持体裏面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料54部、アクリル系樹脂エマルジョン(固形分40%)44部、消泡剤2部を混合したグラビア用インキを用いて、250メッシュのグラビア版にて全面にベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、-6℃以下に冷却して可逆熱変色層をピンク色にした後、夏場のコンクリートの養生時にフィルムを外側にして実用に供したところ、39℃未満の環境下では完全に消色することなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、39℃以上の環境下では可逆熱変色層は無色になり、支持体による透明の状態が視認されて、再び39℃未満になっても透明の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0049】
実施例5
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド1.5部、(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてラウリン酸-1,1-ジフェニルメチル45.0部、ミリスチン酸デシル5.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が6μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが-25℃、発色開始温度tが-15℃、消色開始温度tが27℃、完全消色温度tが33℃、ヒステリシス幅ΔHが47.0℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0050】
コンクリート養生シートの作製
白色の不織布からなる支持体表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、-25℃以下に冷却して可逆熱変色層を青色にした後、夏場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、33℃未満の環境下では完全に消色することなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、33℃以上の環境下では可逆熱変色層は無色になり、支持体による白色が視認されて、再び33℃未満になっても白色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0051】
実施例6
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド1.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてアジピン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が3μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが4℃、発色開始温度tが14℃、消色開始温度tが77℃、完全消色温度tが85℃、ヒステリシス幅ΔHが72℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0052】
コンクリート養生シートの作製
白色の不織布からなる支持体表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、85℃以上に加温して可逆熱変色層を消色させた後、冬場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、4℃を越える環境下では可逆熱変色層が完全に発色した状態が視認されることなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、4℃以下の環境下では可逆熱変色層は完全に発色して青色になり、再び4℃を越える温度になっても青色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0053】
実施例7
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン1.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分として4-フェニルフェノールジエチレングリコールエーテルとラウリン酸とのジエステル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が2μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが1℃、発色開始温度tが7℃、消色開始温度tが39℃、完全消色温度tが49℃、ヒステリシス幅ΔHが40℃であり、温度変化により黒色から無色に色変化した。
【0054】
コンクリート養生シートの作製
白色の不織布からなる支持体中に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料32部、ウレタン系エマルジョン60部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを含浸させた後、乾燥させてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、49℃以上に加温して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を消色させた後、冬場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、1℃を越える環境下では可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が完全に発色した状態が視認されることなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、1℃以下の環境下では可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は完全に発色して黒色になり、再び1℃を越える温度になっても黒色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0055】
実施例8
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド1.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分として1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が5μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが-1℃、発色開始温度tが9℃、消色開始温度tが47℃、完全消色温度tが69℃、ヒステリシス幅ΔHが54℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0056】
コンクリート養生シートの作製
白色のポリエステルトリコット生地からなる支持体表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料25部、アクリル樹脂エマルジョン50部、消泡剤1部、水系インキ用増粘剤10部、エチレンイミン系架橋剤4部、水10部を均一に分散させて得たスクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、69℃以上に加温して可逆熱変色層を消色させた後、-1℃を越える環境下では可逆熱変色層が完全に発色した状態が視認されることなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、-1℃以下の環境下では可逆熱変色層は完全に発色して青色になり、再び-1℃を越える温度になっても青色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0057】
実施例9
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド1.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分として1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が5μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが-4℃、発色開始温度tが4℃、消色開始温度tが62℃、完全消色温度tが82℃、ヒステリシス幅ΔHが72℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0058】
コンクリート養生シートの作製
厚さ12μmの透明ポリエチレンテレフタレート製のプラスチックフィルムからなる支持体裏面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料54部、アクリル系樹脂エマルジョン(固形分40%)44部、消泡剤2部を混合したグラビア用インキを用いて、250メッシュのグラビア版にて全面にベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、82℃以上に加温して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を消色させた後、冬場のコンクリートの養生時にフィルムを外側にして実用に供したところ、-4℃を越える環境下では可逆熱変色層が完全に発色した状態が視認されることなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、-4℃以下の環境下では可逆熱変色層は完全に発色して青色になり、再び-4℃を越える温度になっても青色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0059】
実施例10
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン1.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸p-ベンジル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が6μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが3℃、発色開始温度tが10℃、消色開始温度tが38℃、完全消色温度tが45℃、ヒステリシス幅ΔHが35.0℃であり、温度変化により黒色から無色に色変化した。
【0060】
コンクリート養生シートの作製
白色の不織布からなる支持体表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、45℃以上に加温して可逆熱変色層を消色させた後、冬場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、3℃を越える環境下では可逆熱変色層が完全に発色した状態が視認されることなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、3℃以下の環境下では可逆熱変色層は完全に発色して黒色になり、再び3℃を越える温度になっても黒色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0061】
実施例11
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド1.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸ベンジル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が6μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが5℃、発色開始温度tが10℃、消色開始温度tが26℃、完全消色温度tが35℃、ヒステリシス幅ΔHが26℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0062】
コンクリート養生シートの作製
白色の不織布からなる支持体表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、5℃以下に冷却して可逆熱変色層を青色にした後、夏場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、35℃未満の環境下では完全に消色することなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、35℃以上の環境下では可逆熱変色層は無色になり、支持体による白色が視認されて、再び35℃未満になっても白色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0063】
また、前記コンクリート養生シートを35℃以上に加温して可逆熱変色層を消色させた後、冬場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、5℃を越える環境下では可逆熱変色層が完全に発色した状態が視認されることなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、5℃以下の環境下では可逆熱変色層は完全に発色して青色になり、再び5℃を越える温度になっても青色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0064】
実施例12
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として6-(エチルイソブチルアミノ)ベンゾフルオラン3.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン6.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸n-ヘプチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が1μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが1℃、発色開始温度tが8℃、消色開始温度tが26℃、完全消色温度tが33℃、ヒステリシス幅ΔHが25℃であり、温度変化によりピンク色から無色に色変化した。
【0065】
コンクリート養生シートの作製
白色の不織布からなる支持体表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、1℃以下に冷却して可逆熱変色層をピンク色にした後、夏場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、33℃未満の環境下では完全に消色することなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、33℃以上の環境下では可逆熱変色層は無色になり、支持体による白色が視認されて、再び33℃未満になっても白色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0066】
また、前記コンクリート養生シートを33℃以上に加温して可逆熱変色層を消色させた後、冬場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、1℃を越える環境下では可逆熱変色層が完全に発色した状態が視認されることなく、硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していないことを目視により判別することができた。
その一方、1℃以下の環境下では可逆熱変色層は完全に発色してピンク色になり、再び1℃を越える温度になってもピンク色の状態は維持されることから硬化時にコンクリートの物理的性質が悪化していることを目視により判別することができた。
【0067】
比較例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド1.0部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてベヘニン酸-3,5,5-トリメチルヘキシル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が5μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが29℃、発色開始温度tが31℃、消色開始温度tが32℃、完全消色温度tが34℃、ヒステリシス幅ΔHが2℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0068】
コンクリート養生シートの作製
白色の不織布からなる支持体表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、可逆熱変色層が青色を呈しており、夏場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、34℃以上の環境下では可逆熱変色層は無色になり、支持体による白色が視認されるものの29℃以下になると青色に戻るため、硬化時に高温になってコンクリートの物理的性質が悪化したことを目視により判別することができなかった。
【0069】
比較例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド1.5部、(ロ)成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸-3-メチルブチル25.0部、パルミチン酸-2-メチル-1-ペンチル25.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤50.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散して攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に攪拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が6μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが-5℃、発色開始温度tが4℃、消色開始温度tが-3℃、完全消色温度tが6℃、ヒステリシス幅ΔHが1℃であり、温度変化により青色から無色に色変化した。
【0070】
コンクリート養生シートの作製
白色の不織布からなる支持体表面に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ウレタン系エマルジョン62部、増粘剤2部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.5部、架橋剤5部を均一に分散してなる可逆熱変色性インキを120メッシュのスクリーン版を用いてベタ印刷を行い、乾燥硬化させて可逆熱変色層を設けてコンクリート養生シートを得た。
前記コンクリート養生シートは、可逆熱変色層が無色であり、冬場のコンクリートの養生時に実用に供したところ、-5℃以下の環境下では可逆熱変色層は完全に発色して青色になるものの、6℃以上になると無色に戻るため、硬化時に低温になってコンクリートの物理的性質が悪化したことを目視により判別することができなかった。
【符号の説明】
【0071】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 コンクリート養生シート
2 支持体
3 可逆熱変色層
図1
図2