(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097554
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】有価金属含有廃棄物中の有価金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/35 20220101AFI20240711BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20240711BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240711BHJP
C04B 7/38 20060101ALI20240711BHJP
B09B 101/30 20220101ALN20240711BHJP
【FI】
B09B3/35 ZAB
B09B5/00 N
C22B1/00 601
C04B7/38
B09B101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001086
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩希
(72)【発明者】
【氏名】明戸 剛
【テーマコード(参考)】
4D004
4K001
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AA43
4D004AC04
4D004BA05
4D004CA04
4D004CA09
4D004CA42
4D004CB13
4D004CC11
4K001BA22
4K001BA24
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有価金属含有廃棄物から有価金属を効率よく回収する方法を提供する。
【解決手段】(1)(工程A)有価金属含有廃棄物と、石灰石、珪石、粘土類及び鉱さいから選択される1以上のセメント原料とを含む混合物をローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離する工程、及び(工程B)前記混合物100質量部と10~100質量部の前記ミル排石とをローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル排石を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離した後、非磁着物を前記ローラーミルに戻して粉砕・分離する処理を所定時間繰り返し行う工程を含む、粉砕工程と、(2)工程Bで所定時間後に排出されたミル排石をローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離した後、ミル排石を前記ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離する処理を所定時間繰り返し行う循環工程を含む、有価金属含有廃棄物中の有価金属の回収方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記の工程A及び工程Bを含む粉砕工程と、
(工程A)有価金属含有廃棄物と、石灰石、珪石、粘土類及び鉱さいから選択される1以上のセメント原料とを含む混合物をローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離する工程
(工程B)前記ミル排石と前記混合物とを前記ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル排石を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離した後、非磁着物と前記混合物とを前記ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル排石を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離する処理を所定時間繰り返し行う工程であって、前記ミル排石の使用量が前記混合物100質量部に対して10~100質量部である工程
(2)工程Bで所定時間後に排出されたミル排石を前記ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離した後、ミル排石を前記ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離する処理を所定時間繰り返し行う循環工程
を含む、有価金属含有廃棄物中の有価金属の回収方法。
【請求項2】
前記工程Bにおいて、前記ミル排石を磁力選別に加え、渦電流選別に供する、請求項1記載の回収方法。
【請求項3】
前記粉砕工程前に、前記有価金属含有廃棄物を所定値以下の粒径に粉砕する粗粉砕工程、前記有価金属含有廃棄物及び/又はセメント原料を磁力選別する磁力選別工程、前記有価金属含有廃棄物を篩選別する粒度調整工程、前記有価金属含有廃棄物及び/又はセメント原料の水分含有量を低下させる乾燥工程、前記有価金属含有廃棄物を水洗する水洗工程、並びに前記前記有価金属含有廃棄物を渦電流選別する渦電流選別工程のうちの少なくとも1つを行う予備処理工程を含む、請求項1又は2記載の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価金属含有廃棄物中の有価金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却灰、廃プラスチック、シュレッダーダスト等の廃棄物がセメント原燃料として有効利用されている。これら廃棄物には、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉄、アルミニウム、クロム等の有価金属が含まれているため、資源の有効活用の観点から、これら有価金属の再利用を推進する技術が検討されている。
【0003】
従来、廃棄物からセメント原料や有価金属を回収する技術として、例えば、金属含有廃棄物を含む原料を竪型ローラーミルで粉砕し、セメント原料を含む第1粉砕物と、第1粉砕物よりも大きいサイズを有する第2粉砕物とに分離し、第2粉砕物から渦電流選別によって第2粉砕物よりも金属含有量が低い選別原料を得、当該選別原料を前記原料の一部として竪型ローラーミルで粉砕することで、竪型ローラーミル及びその下流側の製造設備の負荷を十分に低減しつつ、金属含有量が少ないセメント原料中間体を回収できることが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術によれば、渦電流選別で比較的大きい金属を回収することができるが、数mm以下の小さい金属を含む粒子を回収することは困難であり、また竪型ローラーミルは通常処理量が多く、発生する排石量も多いことから、渦電流選別では細粒の金属を回収することも難しい。加えて、ミル排石の循環を繰り返し行った場合、金属が過度に粉砕されてミル精粉側に移行するため、金属の回収が困難となる。このように、上記した従来技術は、セメント原料中間体の回収を主目的としたものであり、金属の回収に着目したものではない。
本発明の課題は、有価金属含有廃棄物から有価金属を効率よく回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、有価金属含有廃棄物及び特定のセメント原料を含む混合物を、ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル排石を原料の一部として使用し、前記混合物とともにローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル排石を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離した後、非磁着物を原料の一部として更に使用し、前記混合物とともにローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル排石を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離する処理を所定時間繰り返し行い、そしてローラーミルへの前記混合物の供給を停止し、所定時間後に排出されたミル排石をローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル排石をローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離する処理を所定時間繰り返し行うことで、ミル排石に有価金属が濃縮されるため、有価金属含有廃棄物から有価金属を効率よく回収できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔3〕を提供するものである。
〔1〕(1)下記の工程A及び工程Bを含む粉砕工程と、
(工程A)有価金属含有廃棄物と、石灰石、珪石、粘土類及び鉱さいから選択される1以上のセメント原料とを含む混合物をローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離する工程
(工程B)前記ミル排石と前記混合物とを前記ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル排石を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離した後、非磁着物と前記混合物とを前記ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル排石を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離する処理を所定時間繰り返し行う工程であって、前記ミル排石の使用量が前記混合物100質量部に対して10~100質量部である工程
(2)工程Bで所定時間後に排出されたミル排石を前記ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離した後、ミル排石を前記ローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離する処理を所定時間繰り返し行う循環工程
を含む、有価金属含有廃棄物中の有価金属の回収方法。
〔2〕前記工程Bにおいて、前記ミル排石を磁力選別に加え、渦電流選別に供する、前記〔1〕記載の回収方法。
〔3〕前記粉砕工程前に、前記有価金属含有廃棄物を所定値以下の粒径に粉砕する粗粉砕工程、前記有価金属含有廃棄物及び/又はセメント原料を磁力選別する磁力選別工程、前記有価金属含有廃棄物を篩選別する粒度調整工程、前記有価金属含有廃棄物及び/又はセメント原料の水分含有量を低下させる乾燥工程、前記有価金属含有廃棄物を水洗する水洗工程、並びに前記前記有価金属含有廃棄物を渦電流選別する渦電流選別工程のうちの少なくとも1つを行う予備処理工程を含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の回収方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有価金属含有廃棄物から有価金属を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の有価金属含有廃棄物中の有価金属の回収方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の有価金属含有廃棄物中の有価金属の回収方法について詳細に説明する。
図1に、本発明に係る有価金属の回収方法の好適な一実施形態のフローチャートを示す。
【0011】
本発明に係る有価金属の回収方法は、粉砕工程及び循環工程を必須の工程とするが、有価金属含有廃棄物から効率よく有価金属を回収するために、粉砕工程前において、少なくとも有価金属含有廃棄物を予備処理工程に供することが好ましい。
【0012】
〔予備処理工程〕
予備処理工程としては、例えば、粗粉砕工程、磁力選別工程、粒度調整工程、乾燥工程、水洗工程及び渦電流選別工程から選択される1又は2以上を挙げることができる。2以上行う場合、各工程を任意の順序で行うことが可能であり、一の工程を複数回行っても構わない。
【0013】
(有価金属含有廃棄物)
有価金属含有廃棄物(以下、単に「廃棄物」とも称する。)としては、例えば、焼却灰を挙げることができる。焼却灰には、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉄、アルミニウム、クロム等の有価金属が通常含まれている。
焼却灰としては、例えば、都市ゴミ、産業廃棄物、下水汚泥等を焼却炉で焼却した際に炉底に溜まる焼却主灰(ボトムアッシュ)、ストーカ式焼却炉の火格子の隙間から落下した落じん灰が好適に使用される。なお、焼却主灰には焼却した際の排ガス中の煤塵である焼却飛灰(フライアッシュ)が含まれていてもよい。産業廃棄物としては、例えば、廃自動車、廃家電、自動販売機、OA機器等のシュレッダーダスト、建築廃プラスチック、農業廃プラスチック、漁業廃プラスチック、海洋廃プラスチック等の廃プラスチックを挙げることができる。
【0014】
(粗粉砕工程)
本工程は、廃棄物を所定値以下の粒径に粗粉砕する工程である。これにより、廃棄物を解砕し、廃棄物に付着した有価金属を剥離することができる。
粗粉砕には、破砕機を使用することができる。破砕機としては、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、ロータリークラッシャーを挙げることができるが、これらに限定されない。粗粉砕は、2回以上行ってもよい。2回以上行う場合には、同一又は異なる破砕機を使用することができる。
粗粉砕後の廃棄物の粒径は、生産効率の観点から、最大粒径が、好ましくは40mm以下であり、更に好ましくは30mm以下である。ここでいう「最大粒径」とは、粗粉砕物のうち、最も大きな粗粉砕物を採取し、当該粗粉砕物の径が最大となる箇所を測定した値をいう。
【0015】
(磁力選別工程)
本工程は、廃棄物を磁力選別する工程である。本工程は、セメント原料にも行うことが可能であり、廃棄物及びセメント原料を含む混合物にも行っても構わない。
セメント原料としては、石灰石、珪石、粘土類及び鉱さいから選択される1以上を含むものであればよい。「石灰石」としては、主に天然の石灰石であるが、鋳物砂も包含される。「珪石」としては、天然の珪石の他に、鋳物砂がある。「粘土類」としては、例えば、建設発生土、上水汚泥、下水汚泥を挙げることができる。建設発生土としては、例えば、建設工事や土木工事に伴い副次的に発生する土砂や汚泥を挙げることができる。上水汚泥及び下水汚泥としては、例えば、汚泥単味のほか、これに生石灰又は石灰石を加えて乾粉化したものを挙げることができる。また、「鉱さい」とは、スラグの総称であり、例えば、高炉スラグ、製鋼スラグ、非鉄金属スラグを挙げることができる。
【0016】
焼却灰や建設発生土等には、釘、ボルト、針金、座金、ベアリング等の鉄、ステンレス鋼等の磁性金属が含まれているため、本工程に供することで、有価金属として磁性金属を回収し、ローラーミル内部の摩耗・破損・振動を低減することができる。
磁力選別は、磁力選別機を使用することができる。磁力選別機は、工業用の装置を使用することが可能であり、例えば、ドラム式、プーリー式及び吊下げ式のいずれでもよく、特に限定されない。
磁力選別機の表面磁束密度は、磁着物除去の観点から、好ましくは100~3000ガウスであり、より好ましくは150~2000ガウスであり、更に好ましくは200~1000ガウスである。
【0017】
(粒度調整工程)
本工程は、廃棄物を篩選別する工程である。これにより、廃棄物をローラーミルの操業条件に適合する大きさに調整し、ローラーミル内部の摩耗・破損・振動を低減することができる。
粒度調整には、篩選別機を使用することができる。篩選別機としては、工業用の装置を使用することが可能であり、例えば、振動式、面内運動式、回転式及び固定式のいずれでもよく、特に限定されない。
また、廃棄物を破砕機で粗粉砕した場合、破砕機に所望する篩目のスクリーンを装着するか、あるいはスクリーンを装着しない場合には、固定歯、回転歯、内壁等を所望するクリアランスに調整してもよい。
粒度調整後の廃棄物は、有価金属の回収効率、ローラーミル内部の摩耗・破損・振動の低減の観点から、最大粒径が、好ましくは40mm以下であり、更に好ましくは30mm以下である。ここでいう「最大粒径」とは、試料がすべて通過する篩の最小の目開きで表した粒径をいう。
【0018】
(乾燥工程)
本工程は、廃棄物を乾燥する工程である。本工程は、セメント原料にも行うことが可能であり、廃棄物及びセメント原料を含む混合物にも行っても構わない。廃棄物及び/又はセメント原料の水分含有量を低減することで、粉砕工程において粉砕機内で付着が発生せず、粉砕した微粉を気流で回収することができるため、安定して操業することができる。
廃棄物の水分含有量の調整は、廃棄物を乾燥機で乾燥し、水分を除去すればよい。セメント原料、廃棄物及びセメント原料を含む混合物に対しても同様に行うことができる。なお、乾燥機は、工業用の装置を使用することができる。
乾燥後の水分含有量は、粉砕工程における粉砕機内での付着防止、微粉の効率的回収の観点から、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下である。なお、水分含有量の下限値は特に限定されず、0質量%であっても構わない。ここで、本明細書において「水分含有量」とは、試料1kgを105℃で恒量になるまで乾燥し、質量減少量から算出した値をいう。
【0019】
(水洗工程)
本工程は、廃棄物を水洗する工程である。これにより、廃棄物中の塩素含有量を低減することができる。
水洗方法は、廃棄物と水とを接触させることができれば特に限定されないが、例えば、廃棄物を水槽に入れ攪拌する方法、廃棄物を水に浸漬させる方法、廃棄物に水を散布する方法を挙げることができる。
水としては、例えば、JIS A 5303付属書Cに規定される上水道水、該上水道水以外の水(例えば、河川水、湖沼水、井戸水、地下水、工業用水)を挙げることができる。
水の使用量は、廃棄物に対して、好ましくは0.5~5質量倍であり、より好ましくは0.75~4質量倍であり、更に好ましくは1~3質量倍である。なお、水の温度は適宜選択可能であるが、通常常温(20℃±15℃)である。
水洗後、水洗物を、例えば、脱水機を用いて上澄みと沈殿物とに分離し、沈殿物を回収すればよい。脱水機は、工業用の装置を使用することが可能であり、例えば、分離板型、円筒型、デカンター型等の遠心分離機、フィルタープレス、ベルトフィルターのいずれでもよい。また、水洗物を篩選別し、水分が多い篩下のみを脱水機で脱水しても構わない。なお、遠心分離の条件は、適宜選択することができる。
【0020】
(渦電流選別)
本工程は、廃棄物を渦電流選別する工程である。焼却灰にはアルミニウム、亜鉛等の非磁性金属が含まれているため、本工程に供することで、有価金属として非磁性金属を回収し、ローラーミル内部の摩耗・破損・振動を低減することができる。
渦電流選別は、渦電流選別機を使用することができる。渦電流選別機は、工業用の装置を使用することが可能であり、例えば、回転磁石式、直行ベルトコンベヤ式及び回転円筒式のいずれでもよく、特に限定されない。
回転磁石体の回転数は、セメント原料の高品位向上の観点から、好ましくは1500rpm以上であり、より好ましくは2500rpm以上であり、更に好ましくは3500rpm以上である。なお、回転磁石体の回転数の上限値は、通常5000rpm以下であり、更に好ましくは4800rpm以下である。
【0021】
予備処理工程としては使用する原料の種類に応じて適宜選択可能であるが、有価金属の回収効率の観点から、粗粉砕工程、磁力選別工程、粒度調整工程及び乾燥工程から選択される1以上が好ましく、粗粉砕工程、磁力選別工程及び乾燥工程から選択される1以上がより好ましい。また、セメント原料として粘土類を使用する場合には、当該粘土類と混合する前に廃棄物のみを予備処理工程に供することが好ましい。この場合、
図1に示されるように、廃棄物を粗粉砕工程、磁力選別工程、粒度調整工程及び水洗工程から選択される1以上に供した後、粘土類を投入し、磁力選別工程、渦電流選別工程、粒度調整工程及び乾燥工程から選択される1以上に供することが好ましい。
【0022】
〔(1)粉砕工程〕
粉砕工程は、
図1に示されるように、工程Aと工程Bから構成され、工程Aを行った後、工程Bを行う。
(工程A)
工程Aは、廃棄物及びセメント原料を含む混合物をローラーミルで粉砕してミル精粉とミル排石とに分離する工程である。ここで、本明細書において「精粉」とは、粉砕時に気流によって排出される微粉をいい、また「排石」とは、粉砕により気流で排出される粉体とならない粒状、塊状の固体をいう。
【0023】
本工程においては、例えば、廃棄物及びセメント原料を原料供給部に搬送し、原料供給部によって廃棄物及びセメント原料をローラーミルに供給して粉砕する。これにより、気流に乗ってローラーミルから排出されるミル精粉と、ローラーミルの下部の排出部より排出されるミル排石とに分離される。ミル排石は、ミル精粉よりも粒径が大きいうえ、有価金属を多く含んでいる。そのため、ローラーミルから排出されたミル排石は、循環経路を介して原料供給部に搬送される。他方、ミル精粉は、吸引ファンに導かれた気体とともにサイクロンで捕集され、セメント原料中間体として回収される。
【0024】
廃棄物及びセメント原料を含む混合物は、粉砕時に両者がローラーミル内に共存した状態にあればよく、予め混合物を調製してローラーミルに投入しても、廃棄物とセメント原料を別々にローラーミルに投入してもよい。なお、セメント原料中の各成分の割合は適宜選択することが可能であり、廃棄物及びセメント原料はローラーミルへの搬送路で混合してもよい。
【0025】
混合物中の廃棄物の含有量は、有価金属の回収効率の観点から、乾燥質量で、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。
【0026】
ローラーミルとしては、複数個のローラと回転するテーブルとの間で混合物を圧縮、剪断しながら粉砕する装置であれば特に限定されず、例えば、工業用の竪型ローラーミルを使用することができる。被粉砕物は上部のセパレータで分級され、ミル精粉を得ると共に、粒径の大きい被粉砕物は再びローラとテーブルで粉砕される。テーブルの周囲にはダムリングが設けられ、ダムリングを超えて落下して排出されるのがミル排石である。
【0027】
処理量は、廃棄物の種類や製造スケール等により適宜設定可能であるが、有価金属の回収効率の観点から、好ましくは15~400t/hであり、より好ましくは50~300t/hであり、更に好ましくは150~250t/hである。
【0028】
(工程B)
工程Bは、工程Aで得られたミル排石を原料の一部として使用し、上記した混合物とともにローラーミルに再投入し粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、分離されたミル排石を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離する。そして、分離された非磁着物を原料の一部として更に使用し、上記した混合物とともにローラーミルに再投入し粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、分離されたミル排石を磁力選別して磁着物と非磁着物とに分離する処理を所定時間繰り返し行う。このように、ミル排石から磁力選別により分離された非磁着物を原料の一部として使用し、上記した混合物とともに、ローラーミルによる粉砕と磁力選別とを組み合わせて所定時間繰り返し処理することで、金、銅等の金属が非磁着物に濃縮され、鉄、クロム等を含む磁性金属は磁着物として回収される。これにより、ミル精粉側への金属の移行が抑制されるため、ミル精粉として高品位のセメント原料中間体を回収することもできる。
【0029】
本工程においては、例えば、工程Aでローラーミルから排出されたミル排石を循環経路を介して原料供給部に戻し、原料供給部によってミル排石を上記した混合物とともにローラーミルに供給して粉砕することで、気流に乗ってローラーミルから排出されるミル精粉と、ローラーミルの下部の排出部より排出されるミル排石とに分離する。次いで、ミル精粉をセメント原料中間体として回収する一方、分離されたミル排石を磁力選別部に搬送し、磁力選別部によってミル排石を磁力選別機に供給して磁力選別し磁着物と非磁着物とに分離する。以降において、非磁着物を循環経路を介して原料供給部に戻し、原料供給部によって非磁着物を上記した混合物とともにローラーミルに供給し粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル精粉をセメント原料中間体として回収する一方、分離されたミル排石を磁力選別部に搬送し、磁力選別部によってミル排石を磁力選別機に供給して磁力選別し磁着物と非磁着物とに分離する処理を所定時間繰り返し行う。
【0030】
ミル排石の使用量は、混合物100質量部に対して10~100質量部であるが、有価金属の濃縮の観点から、好ましくは30~100質量部であり、より好ましくは50~100質量部であり、更に好ましくは70~100質量部である。なお、ミル排石及び混合物の使用量は、乾燥質量を基準とする。また、ミル排石及び混合物の使用量は、ローラーミルの容量に応じて適宜設定することができる。
【0031】
磁力選別は、磁力選別機を使用することができる。磁力選別機の具体的構成は、予備処理工程において説明したとおりである。
【0032】
本工程においては、有価金属の回収効率の観点から、ミル排石を磁力選別に加え、更に渦電流選別して磁性金属と非磁性金属とに分離してもよい。これにより、粒径の大きいアルミニウム合金、銅合金、亜鉛合金、ステンレス鋼等を除去できるため、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、クロム等の有価金属を効率よく回収することができる。
磁力選別と渦電流選別は、任意の順序で行うことができるが、非磁性金属の効率的除去の観点から、磁力選別により分離された非磁着物を渦電流選別することが好ましい。この場合、上記において説明した非磁着物に代えて、渦電流選別により分離された磁性金属について、ローラーミルによる粉砕と、磁力選別・渦電流選別とを組み合わせて所定時間繰り返し行えばよい。このように渦電流選別を組み合わせて循環粉砕することで、金が濃縮され、金の回収量を向上させることができる。
渦電流選別は、渦電流選別機を使用することができる。渦電流選別機の具体的構成は、予備処理工程において説明したとおりである。
【0033】
処理時間は、製造スケール等により適宜設定可能であるが、長すぎると有価金属のミル精粉側への散逸量が増加し、短すぎるとミル排石の発生量が多くなり、セメント原料中間体回収量や有価金属濃縮量が不十分となる。かかる観点から、処理時間は、好ましくは1~20日であり、より好ましくは1~15日であり、更に好ましくは1~10日であり、より更に好ましくは2~5日である。
【0034】
本工程で使用する混合物の各具体的構成は、工程Aにおいて説明したとおりである。
【0035】
〔(2)循環工程〕
本工程は、ローラーミルへの上記した混合物の供給を停止し、工程Bで所定時間後に排出されたミル排石をローラーミルに再投入して粉砕しミル精粉とミル排石とに分離する。以降において、分離されたミル排石をローラーミルに再投入して粉砕しミル精粉とミル排石とに分離する処理を所定時間繰り返し行う。このように、ミル排石をローラーミルで所定時間循環粉砕することで、ミル排石に金属が濃縮される。ここで、本明細書において「循環粉砕」とは、被粉砕物をローラーミルに投入して粉砕する処理を繰り返し行うことをいう。
【0036】
本工程においては、例えば、工程Bでローラーミルから排出されたミル排石を、循環経路を介して原料供給部に戻し、原料供給部によってミル排石をローラーミルに供給して粉砕する。これにより、気流に乗ってローラーミルから排出されるミル精粉と、ローラーミルの下部の排出部より排出されるミル排石とに分離される。次いで、ミル精粉をセメント原料中間体として回収する一方、分離されたミル排石を、循環経路を介して原料供給部に戻し、原料供給部によってミル排石をローラーミルに供給して粉砕しミル精粉とミル排石とに分離する。以降においても、分離されたミル排石を、循環経路を介して原料供給部に戻し、原料供給部によってミル排石をローラーミルに供給して粉砕する処理を所定時間繰り返し行う。
【0037】
処理時間は、製造スケール等により適宜設定可能であるが、有価金属の回収効率の観点から、好ましくは10~60分であり、より好ましくは15~50分であり、更に好ましくは20~40分である。
【0038】
〔回収工程〕
本工程においては、所定時間後に分離されたミル排石を回収する。これにより、有価金属、とりわけ金、銅等の貴金属の濃縮物を回収することができる。なお、鉄等の磁性金属は、工程Bの磁力選別において磁着物として主に回収され、鉄鋼原料として利用することができる。
【0039】
このようにして、有価金属含有廃棄物中から有価金属を効率よく回収することができる。また、粉砕時に回収されたミル精粉は金属含有量が低減されているため、本発明はセメント原料中間体の回収方法としても有用である。
【実施例0040】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
1.嵩密度の分析
5Lの容器に充填される試料量を測定し、1m3当たりの質量(t)を算出した。
【0042】
2.金属成分の分析
金属成分の分析はマット融解による前処理を行った分析対象物を100μm以下に粉砕したものに対し、表1に示す方法で分析を行った。
【表1】
【0043】
実施例1
図1に示すフローチャートにしたがって焼却主灰を処理した。具体的には、以下のとおりである。なお、本実施例で使用した原料は、次のとおりである。
(1)有価金属含有廃棄物:都市ごみ焼却主灰
(2)セメント原料 :粘土類、珪石、石灰石及び鉱さい
【0044】
〔予備処理工程〕
焼却主灰と粘土類とを混合し、乾燥機にて水分含有量4質量%以下まで乾燥して乾燥物を得た。
【0045】
〔粉砕工程〕
(工程A)
乾燥質量割合で、14質量%の乾燥物と、5質量%の珪石、2質量%の石灰石及び79質量%の鉱さいを原料供給部への搬送上で合流させて混合物を調製した。混合物中の焼却主灰の割合は、乾燥質量で4質量%であった。次いで、混合物を竪型ローラーミルに投入して粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル精粉をセパレータに通過させてサイクロンで回収し、堅型ローラーミルの下部からミル排石を回収した。なお、ミル精粉は、セメント原料中間体として使用される。
(工程B)
工程Aで回収したミル排石と、工程Aで調製した混合物とを竪型ローラーミルに再投入して粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル精粉を上記と同様にセメント原料中間体として回収し、堅型ローラーミルの下部からミル排石を回収した。次いで、回収したミル排石を吊下げ型磁力選別機(有効磁束密度300G)にて磁着物と非磁着物とに分離し、磁性金属の一部を磁着物として回収した。以降、回収した非磁着物を、工程Aで調製した混合物とともに竪型ローラーミルに再投入して粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル精粉を上記と同様にセメント原料中間体として回収し、堅型ローラーミルの下部からミル排石を回収した後、ミル排石を吊下げ型磁力選別機(有効磁束密度300G)にて磁着物と非磁着物とに分離する処理を3日間繰り返し行った。なお、ミル排石の使用量は、いずれも混合物100質量部に対して99質量部であった。
【0046】
〔循環粉砕〕
工程Bで3日後に回収したミル排石を竪型ローラーミルに再投入して粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル精粉を上記と同様にセメント原料中間体として回収し、堅型ローラーミルの下部からミル排石を回収した。以降、回収したミル排石を竪型ローラーミルに再投入して粉砕してミル精粉とミル排石とに分離し、ミル精粉を上記と同様にセメント原料中間体として回収し、竪型ローラーミルの下部からミル排石を回収する処理を30分間繰り返し行った。
そして、30分後に回収したミル排石について、金、銅、鉄及びクロムの分析を行った。その結果を表2に示す。
【0047】
比較例1
予備処理工程において焼却主灰を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作により処理を行った。そして、30分後に回収したミル排石について、金、銅、鉄及びクロムの分析を行った。その結果を表2に示す。
【0048】
【0049】
表2に示されるように、実施例1は比較例1よりも有価金属の品位が高いことから、有価金属含有廃棄物及びセメント原料を含む混合物を、粉砕工程及び循環工程に供することで、有価金属含有廃棄物から高品位の有価金属を効率よく回収できることがわかる。