(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024097557
(43)【公開日】2024-07-19
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B60C13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001090
(22)【出願日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 慎吾
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA05
3D131BA07
3D131BB12
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC22
3D131DA09
3D131GA03
3D131GA13
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】良好な耐カット性能と、良好な低燃費性能の両方を実現できる空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】タイヤ最大幅位置12aを含む一体のサイドウォール用ゴム組成物19が、径方向の外方に位置する第1ゴム組成部19aと、第1ゴム組成部19aよりも径方向の内方に位置する第2ゴム組成部19bと、を備える。第1ゴム組成部19aの第1破断強度が、第2ゴム組成部19bの第2破断強度よりも大きくなっている。第1破断強度が17以上であって、第2破断強度が17未満であると好ましい。また、第1ゴム組成部19aの第1損失係数が、0.20より大きくて、第2ゴム組成部19bの第2損失係数が、0.20以下であると好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ最大幅位置を含む一体のサイドウォール用ゴム組成物が、径方向の外方に位置する第1ゴム組成部と、前記第1ゴム組成部よりも前記径方向の内方に位置する第2ゴム組成部と、を備え、
前記第1ゴム組成部の第1破断強度が、前記第2ゴム組成部の第2破断強度よりも大きい、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1破断強度が17以上であり、前記第2破断強度が17未満である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1ゴム組成部の第1損失係数が、0.20より大きく、前記第2ゴム組成部の第2損失係数が、0.20以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1ゴム組成部が、前記タイヤ最大幅位置を含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1ゴム組成部と前記第2ゴム組成部との界面が、軸方向の外側に行くにしたがって前記径方向の内側に変位する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとしては、特許文献1に記載されているものがある。この空気入りタイヤは、サイドウォールを構成するサイドウォール用ゴム組成物を、1層で構成している。そして、サイドウォール用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを30質量部以上、シリカを10質量部以下、及び脂肪酸アミドを0.1~10質量部、含有するようにしている。このようにして、サイドウォール用ゴム組成物を外傷に強い配合で構成し、空気入りタイヤをオフロードで好適に使用できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤ最大幅位置を含むサイドウォール用ゴム組成物の組成物配合を、外傷に強い配合にすると、耐カット性能は向上するが低燃費性能が下がる。他方、サイドウォール用ゴム組成物の組成物配合を、低燃費配合にすると、燃費性能は向上するが耐カット性能が低下する。
【0005】
係る背景において、良好な耐カット性能が要求されるオフロードでの使用が想定されるタイヤにおいても燃費性能を向上させることが所望されている。そこで、本開示の目的は、良好な耐カット性能と、良好な燃費性能の両方を実現できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示に係る空気入りタイヤは、タイヤ最大幅位置を含む一体のサイドウォール用ゴム組成物が、径方向の外方に位置する第1ゴム組成部と、前記第1ゴム組成部よりも前記径方向の内方に位置する第2ゴム組成部と、を備え、前記第1ゴム組成部の第1破断強度が、前記第2ゴム組成部の第2破断強度よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る空気入りタイヤによれば、タイヤ側方における径方向の広い範囲を覆うサイドウォール用ゴム組成物において、悪路に接触し易い径方向外側部分を外傷に強いオフロード配合にすると同時に、悪路に接触し難い径方向内側部分を低燃費配合にすることができる。よって、良好な耐カット性能と、良好な低燃費性能の両方を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤにおける径方向と軸方向を含む半断面図である。
【
図2】
図1におけるサイドウォール周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ1における径方向と軸方向を含む半断面図である。
図1に示すように、空気入りタイヤ(以下、単に、タイヤという)1は、トレッド10、一対のショルダー11、一対のサイドウォール12、及び一対のビード13を備える。トレッド10は、軸方向の中央に配置され、路面に接地する接地面10aを含む。トレッド10は、例えば、架橋ゴムから成るトレッド用ゴム組成物で構成される。トレッド10の外周面には、複数の溝24が設けられる。複数の溝24は、路面とタイヤ1の間に入り込んだ雨水を排水して路面とタイヤ1の接地面積を確保する役割等を果たす。
【0011】
複数の溝24は、例えば、周方向に沿って延在する複数の主溝24aと、主溝24aに交差する方向に延びる複数の横溝(図示せず)とを含む。複数の溝24は、複数のブロックを区画する。
図1に示す例では、トレッド10は、ブロックとして、周方向に沿って複数設けられたショルダーブロック40A,40Bを有する。複数のショルダーブロック40A,40Bの夫々は、周方向に間隔をおいて一列に配置される。
【0012】
トレッド10は、更に、軸方向中央部に設けられたセンターリブ30と、複数のメディエイトブロック50A,50Bとを有する。複数のメディエイトブロック50Aは、センターリブ30とショルダーブロック40Aとの間において、周方向に間隔をおいて一列に配置される。また、複数のメディエイトブロック50Bは、センターリブ30とショルダーブロック40Bとの間において、周方向に間隔をおいて一列に配置される。また、センターリブ30は、周方向に沿ってタイヤ赤道上に設けられる。なお、本開示のタイヤが有する各種ブロックは、
図1に示すものに限らない。本開示のタイヤは、如何なる仕様の各種ブロックを有してもよい。
【0013】
ショルダー11、サイドウォール12、及びビード13は、タイヤ1の側面を形成する部分であって、タイヤ1の軸方向両側に設けられる。ショルダー11、サイドウォール12、及びビード13は、トレッド10の軸方向両端部から径方向内側に延びる。ショルダー11は、タイヤ1の肩部であり、トレッド10の軸方向両端から径方向内側に延びる。ショルダー11は、トレッド10と同様に、周方向に沿って環状に設けられる。タイヤ1の接地端Eをトレッド10とショルダー11の境界位置と定義してもよい。なお、接地端Eとは、タイヤ1が正規リムに装着されて内圧が正規内圧に調整され、正規荷重が負荷されたときに接地する部分の軸方向両端を意味する(正規リム等については、特開2020-131965号公報の記載と同様)。
【0014】
サイドウォール12は、タイヤ側面に存在し、タイヤ1が最も撓む箇所を含む。サイドウォール12は、スムーズに屈曲することで、衝撃や遠心力に耐える役割を担う。サイドウォール12は、ショルダー11とビード13の間に配置され、一体のサイドウォール用ゴム組成物19で構成される。サイドウォール12は、カーカス15を保護し、その伸びを防ぐ役割を果たす。サイドウォール12は、ショルダー11から径方向内側に延び、周方向に沿って環状に設けられる。サイドウォール12は、タイヤ1の軸方向外側に最も張り出したタイヤ最大幅位置12aを含み、外側に向かって凸となるように緩やかに湾曲している。
【0015】
ビード13は、サイドウォール12から径方向内側に延び、周方向に沿って環状に形成されている。ビード13は、ホイールのリムに固定される部分であり、タイヤ1の内周部を構成する。ビード13は、内側に向かって凸となるように緩やかに湾曲しており、サイドウォール12よりも軸方向内側に位置する。
【0016】
ビード13は、ビードコア26と、ビードフィラー27を備える。ビードコア26及びビードフィラー27は、軸方向両側に設けられる。ビードコア26は、束ねられた鋼線をゴムで被覆したリング状の部材である。また、ビードフィラー27は、硬質のゴムで構成され、ビード13の剛性を高める機能を有する。ビードフィラー27は、ビードコア26よりも径方向外側に配置される。
【0017】
タイヤ1は、ゴムで被覆されたコード層であるカーカス15を備える。カーカス15は、例えば、2枚のカーカスプライにより構成され、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤ骨格を形成する、カーカス15は、周方向に対して直交する方向にカーカスコードが配置されたラジアル構造を有する。カーカス15は、上記トレッド用ゴム組成物、サイドウォール用ゴム組成物19等の複数のゴム部材で被覆される。インナーライナー17は、空気圧を保持するためのゴム層であり、カーカス15の内周面に貼付される。
【0018】
タイヤ1は、トレッド10とカーカス15との間にベルト16を備える。ベルト16は、周方向に張られた補強帯であり、カーカス15を強く締めつけてトレッド10の剛性を高める。ベルト16は、例えば、スチールコードを含むスチールベルトで構成されて2層構造を有し、2つのスチールベルトを含む。しかし、積層されるベルトの数は、2つに限らず、また、スチールベルトに替えて、アラミド繊維を用いたタイヤコードを含むベルト等を用いてもよい。又は、ベルトは、1層のみで構成してもよい。ベルト16を設けることで、タイヤ1の剛性を確保でき、トレッド10と路面の接地状態を良好なものにできる。
【0019】
タイヤ1は、ベルト16とトレッド10との間にベルト補強材18を備える、ベルト補強材18は、例えば、2層構造を有し、2つのキャッププライを含む。キャッププライは、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成され、トッピングゴムにより被覆される。ベルト補強材18は、耐久性の向上や、走行時のロードノイズの低減等の目的のために設置される。なお、積層されるキャッププライの数は、2つに限らない。ベルト補強材18は、軸方向に関して、トレッド10に径方向に重なる位置の全域とショルダー11の一部領域に配置される。ベルト補強材18の軸方向外側の端22は、ベルト16よりも軸方向外側に延出している。
【0020】
カーカス15を構成するカーカスプライは、一対のビードコア26に架け渡されるように配置される。カーカスプライは、軸方向内側からビードコア26に架け渡され、ビードコア26及びビードフィラー27を包むようにサイドウォール12側に折り返される。
図1に示す例では、カーカスプライの端であるプライ端15Eが、各サイドウォール12に位置している。カーカス15が2枚のカーカスプライを含む場合、一般的には、もう1枚のカーカスプライのプライ端は各ビード13に位置する。
【0021】
タイヤ1は、オフロードでの使用が想定されている。サイドウォール12は、径方向の外側に軸方向に突出するサイドプロテクタ35を有する。サイドプロテクタ35は、車両が悪路を走行している際に本体が損傷することを抑制する。サイドプロテクタは、軸方向内側に窪む凹部(図示せず)を有してもよい。そのような凹部を設けると、車両が泥濘地を走行するときのトラクションを大きくでき、車両が悪路を走行する際の駆動力を大きくすることができる。
【0022】
図2は、
図1におけるサイドウォール12周辺の拡大断面図である。
図2に示すように、サイドウォール用ゴム組成物19は、第1ゴム組成部19aと、第2ゴム組成部19bを貼り合わせて作製されている。第1ゴム組成部19aは、径方向の外方に位置し、第1破断強度を有する。また、第2ゴム組成部19bは、第1ゴム組成部19aよりも径方向の内方に位置し、第1破断強度よりも小さい第2破断強度を有する。また、第1ゴム組成部19aは、第1損失係数を有し、第2ゴム組成部19bは、第1損失係数よりも小さい第2損失係数を有する。
【0023】
本実施形態では、径方向の外方に位置して大きな破断強度を有する第1ゴム組成部19aが、タイヤ最大幅位置12aを含む領域に配置される。また、第1ゴム組成部19aと第2ゴム組成部19bとの界面(接合面)29は、軸方向の外側に行くにしたがって径方向の内側に変位している。なお、第1破断強度が17以上であって、第2破断強度が17未満になっていると、優れた耐カット性能や優れた耐チッピング性能を実現できて好ましい。また、第1損失係数が0.20より大きくなっていて、第2損失係数が0.20未満になっていると、優れたな耐カット性能を実現した上で、更に、優れた低燃費性能も実現できて好ましい。
【0024】
なお、破断強度(耐破壊特性)は、JIS K6251に準拠して、引張試験(ダンベル状3号形)を実施して引っ張り強さを測定することで求めた。破断強度が大きい程、補強性に優れることを示す。また、損失係数(tanδ)の測定は、JIS K6394に準拠して、周波数10Hz、静歪み10%、動歪み2%、温度70℃の条件で損失係数tanδを測定することで求めた。tanδが小さい程、発熱しにくいこと、すなわち、低発熱性能(低燃費性)に優れることを表す。
【0025】
破断強度の調整や損失係数(tanδ)の調整を行うことができる多数の手法が知られている。例えば、サイドウォール用ゴム組成物における硫黄のゴム成分を増大させると、破断強度を大きくできる。また、環状で断面が三角形のゴム製のフィラーである「エイペックス」を増加させるとサイドウォールの破断強度を増大させることができる。また、充填剤の配合量を減らすことで、損失係数(tanδ)を低減することができる。第1破断強度が17以上であって、第1損失係数が0.20より大きな第1ゴム組成部19aは、破断強度や損失係数の公知の調整手法を用いることで容易に作製できる。また、第2破断強度が17未満であって、第2損失係数が0.20未満の第2ゴム組成部19bも、破断強度や損失係数の公知の調整手法を用いることで容易に作製できる。
【0026】
次に、サイドウォール用ゴム組成物19の作製方法について説明する。サイドウォール用ゴム組成物19は、例えば、第1ゴム組成部19aの元となる第1未加硫ゴムの押出成形を行う第1押出成形装置部と、第2ゴム組成部19bの元となる第2未加硫ゴムの押出成形を行う第2押出成形装置部を含む押出成形装置で作製されることができる。各押出成形装置部は、内部にスクリューを具えた押出機の先端に、押出機から送給されたゴム材料を定量押出しするギアポンプと、ゴム材料を成形用口金まで案内して成形用口金の内側端に繋がるゴム供給通路とを含む。各押出成形装置部のゴム供給通路は、成形用口金の内側端で合流する。各押出成形装置部のゴム供給通路の成形用口金の内側端における開口形状を、
図2に示す第1ゴム組成部19aと第2ゴム組成部19bの界面の形状に対応するように調整する。
【0027】
2種類の未加硫ゴムは、例えば、成形用口金で統合されて一体のシート状のゴムとなり、回転支持体に向かって押し出される。押し出されたゴムを回転支持体に連続したまま巻き付け、その回転支持体を成形機にセットしてシート状のゴムを繰り出しながら成形する。このようにして、2種類の未加硫ゴムを統合して、サイドウォール用ゴム組成物19の元となる筒状ゴムを作製する。
【0028】
その後、通常のタイヤ作製方法と同様に、当該筒状ゴムを、インナーライナー、サイドウォール、ビード、チェーファー、パッド、及びトレッド等の加硫前のゴム材に貼り合わせて生タイヤ(グリーンタイヤ)を作製する。その後、生タイヤを加硫成型すると、サイドウォール用ゴム組成物19が2つの異なるゴム組成部19a,19bを含むタイヤを製造することができる。なお、第1ゴム組成部19aと第2ゴム組成部19bの元ゴム材を互いに独立に押出成形装置で作製し、その後、適切に貼り合わせて生タイヤ(グリーンタイヤ)を作製することで、サイドウォール用ゴム組成物19が2つの異なるゴム組成部19a,19bを含むタイヤを製造してもよい。
【0029】
本願発明者は、サイドウォール用ゴム組成物を、1層の低燃費配合のゴム組成物のみで作製した場合、1層の外傷に強い配合のゴム組成物のみで作製した場合、及び上記実施形態で説明した、低燃費配合のゴム組成物と外傷に強い配合のゴム組成物とを組み合わせた2層のゴム組成物で作製した場合の夫々でタイヤを作製した。そして作製した各タイヤにおいて、転がり抵抗係数(RRC)、横剛性(Ky)、縦剛性(Kz)を測定した。表1に測定結果を示す。
【0030】
なお、転がり抵抗係数(RRC)は、タイヤの荷重に対する抵抗の比率(単位荷重あたりの転がり抵抗)であり、転がり抵抗は、タイヤが転がるときに、進行方向と逆向きに生じる抵抗力である。転がり抵抗係数が低いほど燃費を低減することができる。また、2層構造のサイドウォール用ゴム組成物は、上記低燃費配合のゴム組成物と、上記外傷に強い配合のゴム組成物を、タイヤ最大幅位置で接合して作製した。また、転がり抵抗係数(RRC)、横剛性(Ky)、縦剛性(Kz)は、低燃費配合のタイヤでの値を100とした場合の比で示している。
【0031】
【表1】
2層構造のサイドウォール用ゴム組成物を用いたタイヤは、サイドウォール用ゴム組成物を1層の低燃費配合のゴム組成物のみで形成したタイヤよりも外傷に強い。また、表1に示すように、2層構造のサイドウォール用ゴム組成物を用いた場合、外傷に強い配合の1層のみのサイドウォール用ゴム組成物を用いた場合との比較において、転がり抵抗係数を2.8%((106-103)/106=0.0283・・・)以上低減できた。したがって、2層構造のサイドウォール用ゴム組成物を用いたタイヤを作製すれば、互いにトレードオフの関係にある、良好な耐カット性能と、良好な低燃費性能の両方を実現できることを確認できた。
【0032】
以上、本開示のタイヤ1では、タイヤ最大幅位置12aを含む一体のサイドウォール用ゴム組成物19が、径方向の外方に位置する第1ゴム組成部19aと、第1ゴム組成部19aよりも径方向の内方に位置する第2ゴム組成部19bと、を備える。また、第1ゴム組成部19aの第1破断強度が、第2ゴム組成部19bの第2破断強度よりも大きくなっている。
【0033】
燃費性能には、タイヤ1のゴムの発熱が寄与する。係る背景において、本開示によれば、タイヤ側方における径方向の広い範囲を覆うサイドウォール用ゴム組成物19において、悪路に接触し易い径方向外側部分を外傷に強いオフロード配合にできると同時に、悪路に接触し難いビード周辺の径方向内側部分を発熱しにくい低燃費配合にすることができる。よって、互いにトレードオフの関係にある、良好な耐カット性能と、良好な低燃費性能の両方を実現できる。
【0034】
また、第1破断強度が17以上であって、第2破断強度が17未満でもよい。本構成によれば、優れた耐カット性能や優れた耐チッピング性能を実現し易くて好ましい。また、第1ゴム組成部19aの第1損失係数が、0.20より大きくて、第2ゴム組成部19bの第2損失係数が、0.20以下でもよい。本構成によれば、優れた低燃費性能を実現し易い。
【0035】
また、第1ゴム組成部19aが、タイヤ最大幅位置12aを含んでもよい。本構成によれば、オフロードでの走行に強いタイヤ1を実現できる。なお、軸方向を含む断面において、第1ゴム組成部19aの外周面が、接地端Eとタイヤ最大幅位置12aとの間の最小の長さの0%よりも大きくて15%以下の長さ、タイヤ最大幅位置12aから径方向下側まで延在していると、外傷に強くて燃費も低減し易いタイヤ1を作製できる。
【0036】
また、第1ゴム組成部19aと第2ゴム組成部19bとの界面29が、軸方向の外側に行くにしたがって径方向の内側に変位してもよい。
【0037】
サイドウォール12の軸方向の外周面は、悪路走行中に小石等の異物が衝突する虞があるので、破断強度が大きい第1ゴム組成部19aで覆われることが好ましい。他方、低燃費配合の第2ゴム組成部19bは、サイドウォール12の外周面に存在しなくても低燃費を実現できる。よって、本構成のように、第1ゴム組成部19aと第2ゴム組成部19bとの界面29が、軸方向の外側に行くにしたがって径方向の内側に変位すると、外傷に強くて、低燃費を効果的に実現できるタイヤ1を作製できる。
【0038】
更には、タイヤ最大幅位置12a付近は、タイヤ1において撓みが大きい箇所であり、軸方向の力を受け易い箇所である。ここで、第1ゴム組成部と第2ゴム組成部との界面(接合面)が軸方向に平行に広がっていた場合、軸方向の応力を受けて剥がれ易くなる虞がある。
【0039】
そのような背景において、本構成によれば、第1ゴム組成部19aと第2ゴム組成部19bとの界面29が、軸方向の外側に行くにしたがって径方向の内側に変位するようになっているので、界面が軸方向に平行に広がっている場合との比較で、界面29の面積を大きくできて、界面の強度を大きくできる。
【0040】
更には、第1ゴム組成部19aと第2ゴム組成部19bとの界面29が、軸方向の外側に行くにしたがって径方向の内側に変位するようになっているので、軸方向の力を受けたとしても、第1ゴム組成部19aが第2ゴム組成部19bに軸方向に押圧されることになり、界面29が剥がれにくい。よって、それらの相乗効果により、界面29の強度を格段に大きくできる。
【0041】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、第1破断強度が17以上であり、第2破断強度が17未満である場合について説明したが、第1破断強度は、第2破断強度よりも大きければ如何なる値でもよい。また、第1損失係数が、0.20より大きく、第2損失係数が、0.20以下である場合について説明したが、第1損失係数は、第2損失係数よりも大きければ如何なる値でもよい。
【0043】
また、第1ゴム組成部19aが、タイヤ最大幅位置12aを含む場合について説明した。しかし、第2ゴム組成部が、タイヤ最大幅位置を含んでもよい。また、第1ゴム組成部19aと第2ゴム組成部19bとの界面29が、軸方向の外側に行くにしたがって径方向の内側に変位する場合について説明したが、第1ゴム組成部と第2ゴム組成部との界面は、軸方向の外側に行くにしたがって径方向の内側に変位しなくてもよく、例えば、軸方向に略平行に広がっていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 タイヤ、 2 サイドウォール、 10 トレッド、 10a 接地面、 11 ショルダー、 12 サイドウォール、 12a タイヤ最大幅位置、 13 ビード、 15 カーカス、 15E プライ端、 16 ベルト、 17 インナーライナー、 18 ベルト補強材、 19 サイドウォール用ゴム組成物、 19a 第1ゴム組成部、 19b 第2ゴム組成部、 24 溝、 26 ビードコア、 27 ビードフィラー、 29 界面、 35 サイドプロテクタ、 E 接地端。